(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283521
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】車両用灯具のハウジング補強構造
(51)【国際特許分類】
F21S 41/00 20180101AFI20180208BHJP
F21S 43/00 20180101ALI20180208BHJP
F21S 45/00 20180101ALI20180208BHJP
F21V 15/01 20060101ALI20180208BHJP
F21W 103/00 20180101ALN20180208BHJP
F21W 104/00 20180101ALN20180208BHJP
F21W 105/00 20180101ALN20180208BHJP
F21W 102/00 20180101ALN20180208BHJP
【FI】
F21S8/10 141
F21S8/10 340
F21V15/01 370
F21W101:10
F21W101:12
F21W101:14
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-10496(P2014-10496)
(22)【出願日】2014年1月23日
(65)【公開番号】特開2015-138705(P2015-138705A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092853
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮一
(72)【発明者】
【氏名】中島 一穂
(72)【発明者】
【氏名】阿部 隆
【審査官】
津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭58−153127(JP,U)
【文献】
特開2004−088575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/00
F21S 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングとその開口部を覆うレンズによって画成される灯室内に少なくとも光源を収容して成る車両用灯具の前記ハウジングの補強構造であって、
前記ハウジングに形成された谷部に補強リブを架設することによって当該ハウジングを補強する車両用灯具のハウジング補強構造において、
前記ハウジングは、不透明樹脂によって一体成形されており、前記開口部の周縁に、透明樹脂によって一体成形された前記レンズの周縁が溶着によって固定されており、
前記ハウジングに形成された谷部に横方向に延びる薄いプレート状の補強リブが架設されており、
前記補強リブを前記ハウジングに形成された前記谷部の最大高さまで延ばし、該補強リブの幅方向中央部にピン状部を高さ方向に沿って一体に形成し、
前記補強リブの先端部の厚さが、前記補強リブの根元部の厚さよりも薄く、
前記ピン状部の根元部を前記ハウジングのレンズ溶着部に落としたことを特徴とする車両用灯具のハウジング補強構造。
【請求項2】
ハウジングとその開口部を覆うレンズによって画成される灯室内に少なくとも光源を収容して成る車両用灯具の前記ハウジングの補強構造であって、
前記ハウジングに形成された谷部に補強リブを架設することによって当該ハウジングを補強する車両用灯具のハウジング補強構造において、
前記ハウジングは、不透明樹脂によって一体成形されており、前記開口部の周縁に、透明樹脂によって一体成形された前記レンズの周縁が溶着によって固定されており、
前記レンズの裏面にはレンズカット部を含み、
前記ハウジングに形成された谷部に横方向に延びる薄いプレート状の補強リブが架設されており、
前記補強リブを前記ハウジングに形成された前記谷部の最大高さまで延ばし、該補強リブの幅方向中央部にピン状部を高さ方向に沿って一体に形成し、
前記補強リブの先端部の厚さが、前記補強リブの根元部の厚さよりも薄く、
前記ピン状部の根元部を前記レンズカット部に落としたことを特徴とする車両用灯具のハウジング補強構造。
【請求項3】
ハウジングとその開口部を覆うレンズによって画成される灯室内に少なくとも光源を収容して成る車両用灯具の前記ハウジングの補強構造であって、
前記ハウジングに形成された谷部に補強リブを架設することによって当該ハウジングを補強する車両用灯具のハウジング補強構造において、
前記ハウジングは、不透明樹脂によって一体成形されており、前記開口部の周縁に、透明樹脂によって一体成形された前記レンズの周縁が溶着によって固定されており、
前記レンズの裏面にはレンズ合わせ部を含み、
前記ハウジングに形成された谷部に横方向に延びる薄いプレート状の補強リブが架設されており、
前記補強リブを前記ハウジングに形成された前記谷部の最大高さまで延ばし、該補強リブの幅方向中央部にピン状部を高さ方向に沿って一体に形成し、
前記補強リブの先端部の厚さが、前記補強リブの根元部の厚さよりも薄く、
前記ピン状部の根元部を前記レンズ合わせ部に落としたことを特徴とする車両用灯具のハウジング補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具の谷間が形成されたハウジングの補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヘッドランプやリアコンビネーションランプ等の車両用灯具は、ハウジングとその開口部を覆うアウタレンズによって画成される灯室内に少なくとも光源を収容して構成されるが、斯かる車両用灯具のハウジングには谷部が形成されているものがある。このような谷部が形成されたハウジングにおいては、谷部によって強度と剛性が低下するため、この谷部に補強リブを架設することによってハウジングの強度と剛性を高めることが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−266615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、
図7と
図8にハウジングの従来の補強構造を示すが、ハウジングの成形時の補強リブによる意匠面でのヒケの発生を抑えるために、
図7に示すようにハウジング102の谷部102aに高さの低い補強リブ107を架設した場合には、ハウジング102の谷部102aの補強リブ107によって補強されない範囲(
図7のa部分)が大きくなり、ハウジング102の強度と剛性を補強リブ107によって十分に高めることができないという問題がある。
【0005】
そこで、
図8に示すように補強リブ107の高さを高くすると、成形時の金型の抜き勾配の関係から補強リブ107の先端部(
図8のb部分)の厚さが薄くなり、成形時のショート(充填不良)によって補強リブ107の先端部に亀裂が発生し、補強リブ107によるハウジング102の補強効果を期待することができないという問題が発生する。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、補強リブの割れを防ぎつつ、該補強リブの高さを高くしてハウジングの補強効果を高めることができる車両用灯具のハウジング補強構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、ハウジングとその開口部を覆うレンズによって画成される灯室内に少なくとも光源を収容して成る車両用灯具の前記ハウジングの補強構造であって、
前記ハウジングに形成された谷部に補強リブを架設することによって当該ハウジングを補強する車両用灯具のハウジング補強構造において、
前記ハウジングは、不透明樹脂によって一体成形されており、前記開口部の周縁に、透明樹脂によって一体成形された前記レンズの周縁が溶着によって固定されており、
前記ハウジングに形成された谷部に横方向に延びる薄いプレート状の補強リブが架設されており、
前記補強リブを前記ハウジングに形成された前記谷部の最大高さまで延ばし、該補強リブの幅方向中央部にピン状部を高さ方向に沿って一体に形成し
、
前記補強リブの先端部の厚さが、前記補強リブの根元部の厚さよりも薄く、
前記ピン状部の根元部を前記ハウジングのレンズ溶着部に落としたことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は
、ハウジングとその開口部を覆うレンズによって画成される灯室内に少なくとも光源を収容して成る車両用灯具の前記ハウジングの補強構造であって、
前記ハウジングに形成された谷部に補強リブを架設することによって当該ハウジングを補強する車両用灯具のハウジング補強構造において、
前記ハウジングは、不透明樹脂によって一体成形されており、前記開口部の周縁に、透明樹脂によって一体成形された前記レンズの周縁が溶着によって固定されており、
前記レンズの裏面にはレンズカット部を含み、
前記ハウジングに形成された谷部に横方向に延びる薄いプレート状の補強リブが架設されており、
前記補強リブを前記ハウジングに形成された前記谷部の最大高さまで延ばし、該補強リブの幅方向中央部にピン状部を高さ方向に沿って一体に形成し、
前記補強リブの先端部の厚さが、前記補強リブの根元部の厚さよりも薄く、
前記ピン状部の根元部を前記
レンズカット部に落としたことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は
、ハウジングとその開口部を覆うレンズによって画成される灯室内に少なくとも光源を収容して成る車両用灯具の前記ハウジングの補強構造であって、
前記ハウジングに形成された谷部に補強リブを架設することによって当該ハウジングを補強する車両用灯具のハウジング補強構造において、
前記ハウジングは、不透明樹脂によって一体成形されており、前記開口部の周縁に、透明樹脂によって一体成形された前記レンズの周縁が溶着によって固定されており、
前記レンズの裏面にはレンズ合わせ部を含み、
前記ハウジングに形成された谷部に横方向に延びる薄いプレート状の補強リブが架設されており、
前記補強リブを前記ハウジングに形成された前記谷部の最大高さまで延ばし、該補強リブの幅方向中央部にピン状部を高さ方向に沿って一体に形成し、
前記補強リブの先端部の厚さが、前記補強リブの根元部の厚さよりも薄く、
前記ピン状部の根元部を
前記レンズ合わせ部に落としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
発明によれば、ハウジングの谷部に架設された補強リブによるハウジングの補強効果を高めるために補強リブの高さを高くした結果、ハウジングの成形時の金型の抜き勾配の関係から補強リブの先端部の厚さが薄くなっても、補強リブはこれに形成されたピン状部によって補強されるため、該補強リブの厚さの薄い先端部に亀裂が発生することがなく、補強リブによるハウジングの補強効果が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係るハウジング補強構造を備える車両用灯具要部の背面図である。
【
図6】補強リブのピン状部が落ちる箇所(外観上見えない箇所)の例を示す部分断面図である。
【
図7】車両用灯具の従来のハウジング補強構造を示す部分断面図である。
【
図8】車両用灯具の従来のハウジング補強構造を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は本発明に係るハウジング補強構造を備える車両用灯具要部の背面図、
図2は
図1のA−A線断面図、
図3は
図2のB部拡大詳細図、
図4は
図1のC部拡大詳細図、
図5は
図4のD−D線断面図である。
【0014】
図1に示す車両用灯具1は、車両の後部左右に配置されるリアコンビネーションランプであって、
図2に示すように、ハウジング2とその開口部を覆うアウタレンズ3によって画成された灯室4内に、不図示の光源と、該光源から出射される光を車両後方(
図2の下方)に向けて反射させるリフレクタ5と、該リフレクタ5の周囲の隙間を覆うエクステンション6等を収容して構成されている。
【0015】
上記ハウジング2は、不透明樹脂によって一体成形されており、その車両後方に向かって開口する開口部の周縁に、透明樹脂によって一体成形された前記アウタレンズ3の周縁が振動溶着、超音波溶着、レーザー溶着等によって固定されている。尚、前記エクステンション6は、不透明樹脂によって一体成形されている。
【0016】
ところで、前記ハウジング2や前記アウタレンズ3等は、樹脂の射出成形によって製造されるが、本実施の形態に係る車両用灯具1においては、
図1〜
図3に示すように、ハウジング2には構造的に谷部2aが上下方向に沿って形成されている。このハウジング2に形成された谷部2aは、ハウジング2の強度と剛性を低下させる要因となるため、谷部2aには、
図3〜
図4に詳細に示すような、横方向に延びる薄いプレート状の補強リブ7が架設されている。
【0017】
上記補強リブ7は、谷部2aを補強してハウジング2全体の強度と剛性を高めるが、その厚さが厚いとハウジング2の射出成形時に意匠面2bにヒケが発生するため、その高さ(車両前後方向の長さ)を高く設定することができず、該補強リブ7による谷部2aの補強には限界がある(
図7参照)。
【0018】
一方、谷部2aを十分補強するために補強リブ7の高さを高くすると、成形時のヒケの発生を抑えるために補強リブ7の厚さを薄くしなければならない。このように補強リブ7の厚さを薄くすると、
図5に示すように、成形時の金型の抜き勾配の関係から補強リブ7の先端部(上端部)の厚さが薄くなるため、薄い先端部に亀裂が発生して補強リブ7による補強効果が期待できなくなってしまう(
図7参照)。
【0019】
そこで、本実施の形態においては、
図2〜
図4に示すように、補強リブ7を薄くしてハウジング2の谷部2aの最大高さまで延ばしてその高さを高くするとともに、該補強リブ7の幅方向中央部に円柱状のピン状部7aを高さ方向(
図2及び
図3の上下方向)に一体に形成した。
【0020】
而して、上述のようにハウジング2の谷部2aに架設された補強リブ7の幅方向中央にピン状部7aを高さ方向に沿って一体に形成すると、補強リブ7全体の強度と剛性がピン状部7aによって高められるため、成形時のハウジング2の意匠面2b(
図2参照)のヒケを抑えるために補強リブ7を薄くしても、該補強リブ7に亀裂が発生することがなく、ハウジング2に高い外観品質を確保しつつ、補強リブ7による補強効果を高めることができる。又、補強リブ7の厚さを薄くしても、該補強リブ7の高さを最大限まで高くすることができるため、ハウジング2の強度と剛性を補強リブ7によって高めることができ、車両用灯具1の耐振動性や耐衝撃性を高めることができる他、組立時にハウジング2の変形が抑えられるために車両用灯具1の組立性が高められる。
【0021】
ところで、本実施の形態のように補強リブ7にピン状部7aを一体に形成すると、このピン状部7a自体が駄肉形状となるが、ピン状部7aの根元部は、ハウジング2のアウタレンズ3との溶着部(ハウジング2の厚肉になっている開口部周縁)2cに落ちるため、このピン状部7aが車両用灯具1の外観品質の低下を招くことがない。尚、ピン状部7aが落ちる箇所は、必ずしもハウジング2のアウタレンズ3との溶着部2aに限ることはなく、インナレンズとの溶着部であっても良く、ピン状部7aが外観上見えない箇所であれば車両用灯具1の外観品質がピン状部7aによって害されることはない。ここで、ピン状部7aが外観上見えない箇所としては、
図6に示す箇所が考えられる。即ち、
図6は補強リブのピン状部が落ちる箇所(外観上見えない箇所)の例を示す部分断面図であり、ハウジング2の複数の補強リブ7にそれぞれ形成されたピン状部7aを、インナレンズ8の裏面に施されたレンズカット部8aと重なる箇所、2枚のインナレンズ8,9の合わせ部と重なる箇所、インナレンズ9の裏面に突設されたリブ状の突起9aと重なる箇所に落とす構成を採用することができる。
【0022】
尚、以上の実施の形態では、補強リブ7に円柱状のピン状部7aを形成した例について説明したが、ピン状部7aの形状は円柱状に限らず任意であって、四角柱状、或いは多角柱状のものであっても良い。又、以上は本発明をリアコンビネーションランプに設けられるハウジングの補強構造に対して適用した形態について説明したが、本発明は、谷部を有するハウジングを備える他の任意の車両用灯具のハウジング補強構造に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0023】
1 車両用灯具(リアコンビネーションランプ)
2 ハウジング
2a ハウジングの谷部
2b ハウジングの意匠面
3 アウタレンズ
4 灯室
5 リフレクタ
6 エクステンション
7 補強リブ
7a 補強リブのピン状部