(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0041】
1. 第1実施形態
1.1. 荷電粒子線装置の構成
まず、第1実施形態に係る荷電粒子線装置について、図面を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態に係る荷電粒子線装置1000を模式的に示す図である。
【0042】
荷電粒子線装置1000は、
図1に示すように、電子線源(荷電粒子線源)102と、集束レンズ104と、対物レンズ106と、中間レンズ108と、投影レンズ110と、撮像部112と、位置決め装置100と、を含む。
【0043】
なお、ここでは、荷電粒子線装置1000が、透過電子顕微鏡(TEM)である例について説明する。また、
図1では、試料ホルダー20が試料室1に挿入されている状態を図示している。また、
図1では、便宜上、位置決め装置100を簡略化して図示している。
【0044】
電子線源102は、電子線EBを発生させる。電子線源102は、陰極から放出された電子を陽極で加速し電子線EBを放出する。電子線源102として用いられる電子銃は特に限定されず、例えば熱電子放出型や、熱電界放出型、冷陰極電界放出型などの電子銃を用いることができる。
【0045】
集束レンズ104は、電子線源102の後段(電子線EBの下流側)に配置されている。集束レンズ104は、電子線源102で発生した電子線EBを集束して、試料Sに照射するためのレンズである。集束レンズ104は、複数のレンズ(図示せず)を含んで構成されていてもよい。
【0046】
対物レンズ106は、集束レンズ104の後段に配置されている。対物レンズ106は、試料Sを透過した電子線EBで結像するための初段のレンズである。
【0047】
対物レンズ106は、図示はしないが、上部磁極(ポールピースの上極)、および下部磁極(ポールピースの下極)を有している。対物レンズ106では、上部磁極と下部磁極との間に磁場を発生させて電子線EBを集束させる。試料ホルダー20によって試料Sは、上部磁極と下部磁極との間に配置される。
【0048】
中間レンズ108は、対物レンズ106の後段に配置されている。投影レンズ110は、中間レンズ108の後段に配置されている。中間レンズ108および投影レンズ110は、対物レンズ106によって結像された像をさらに拡大し、撮像部112に結像させる。
【0049】
撮像部112は、投影レンズ110によって結像された像(電子顕微鏡像または電子回折図形)を撮影する。撮像部112は、例えば、デジタルカメラである。撮像部112は、撮影した電子顕微鏡像や電子回折図形の情報を出力する。撮像部112が出力した電子顕微鏡像や電子回折図形の情報は、画像処理部(図示せず)で処理されて表示部(図示せず)に表示される。表示部は、例えば、CRT、LCD、タッチパネル型ディスプレイなどである。
【0050】
荷電粒子線装置1000の鏡筒は、図示の例では、除振機114を介して架台116上
に設置されている。
【0051】
位置決め装置100は、試料ホルダー(物体)20を、位置決めするための装置である。位置決め装置100は、試料ホルダー20を位置決めすることで、試料室1において試料Sを位置決めすることができる。すなわち、位置決め装置100は、試料ホルダー20を移動および静止させることにより、試料Sを試料室1の所望の位置へ移動および静止させることができる。
【0052】
図2は、荷電粒子線装置1000の要部を模式的に示す図である。なお、
図2には、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、Z軸を図示している。図示の例において、Z軸方向は、試料室1を通過する電子線(図示しない)の進行方向である。
【0053】
位置決め装置100は、
図2に示すように、支持部(シフター)10と、試料ホルダー(物体)20と、Oリング30と、駆動部(X駆動部40およびY駆動部50)と、を含む。位置決め装置100は、さらに、
図1に示す制御部60を含む。
【0054】
なお、
図2では、位置決め装置100の使用状態、すなわち、試料ホルダー20を支持部10に装着した状態を図示している。以下、位置決め装置100の使用状態について説明する。
【0055】
試料室1は、
図2に示すように、壁部(鏡筒内壁)2によって囲まれている。支持部10は、壁部2を貫通するように設けられた保持部材4によって保持されている。支持部10は、試料室1に連通する孔12を有しており、試料ホルダー20は、この孔12に移動可能に挿入されている。試料ホルダー20にはOリング30が装着され、試料ホルダー20と支持部10との間が気密に封止されている。X駆動部40は、試料ホルダー20をX軸方向に移動させることができる。Y駆動部50は、支持部10を回動させることにより試料ホルダー20の先端部をY軸方向に移動させることができる。
【0056】
試料室1は、減圧状態に維持可能である。試料室1は、公知の真空ポンプ(図示しない)によって真空排気されることにより減圧状態に維持される。試料室1には、試料ホルダー20によって試料Sが導入される。そして、試料室1において、試料Sに電子線が照射される。
【0057】
保持部材4は、壁部2を貫通するように設けられている。保持部材4には、支持部10が挿入されている。保持部材4の試料室1側には、球面軸受部6が設けられている。球面軸受部6は、その内面が球面状に形成されている。
【0058】
支持部10は、管状の部材であり、試料室1に連通する孔12を有している。図示の例では、孔12は、X軸方向に貫通している。孔12の形状は、例えば、円柱状であり、孔12の中心軸(図示しない)は、X軸と平行である。孔12には、試料ホルダー20が装着される。これにより、試料ホルダー20は、Y軸方向およびZ軸方向の移動が規制され、X軸方向に直線的に移動可能となる。
【0059】
支持部10の内側には、試料ホルダー20を支持するベアリング14が設けられている。図示の例では、ベアリング14は、支持部10の両端部(孔12の両開口付近)に設けられている。ベアリング14は、試料ホルダー20のX軸方向への移動を円滑にすることができる。なお、ベアリング14の位置および数は、
図2に示す例に限定されず、試料ホルダー20を直線的に移動可能に支持できる位置および数であればよい。
【0060】
支持部10は、試料室1側の端部に、球面部16を有する。球面部16の表面は、中心
が孔12の中心軸上にある球面状に形成されている。球面部16は、球面軸受部6により支持される。球面軸受部6は、その内面が球面部16の表面に接するように形成されている。これにより、球面部16は、球面軸受部6に摺動可能に支持される。そのため、支持部10は、球面部16の中心を回動中心として、回動することができる。球面部16と球面軸受部6との間には、試料室1を気密に封止するためのOリング19が設けられている。
【0061】
試料ホルダー20は、円筒の棒状の部材である。試料ホルダー20の先端部には、試料Sを保持するための試料保持部22が設けられている。試料保持部22は、図示はしないが、例えば、試料Sをねじの締め付けにより固定してもよいし、試料Sをリング状のばねを用いて押さえることにより固定してもよい。試料ホルダー20の後端部には、幅広部24が設けられている。幅広部24の幅(直径)は、例えば、支持部10の孔12の径よりも大きい。
【0062】
試料ホルダー20には、Oリング30が装着されている。図示の例では、試料ホルダー20の外周面には、溝が周設されており、当該溝内にOリング30が装着されている。Oリング30は、支持部10の内面と接して、支持部10と試料ホルダー20との間を気密に封止している。Oリング30は、試料ホルダー20の移動に伴って、支持部10の孔12内を摺動する。Oリング30の材質は、例えば、ゴムなどの粘弾性材料である。
【0063】
試料ホルダー20は、支持部10の孔12に移動可能に装着される。試料ホルダー20は、支持部10によって移動可能(摺動可能)に支持されている。試料ホルダー20は、試料ホルダー20の長手方向がX軸に平行となるように支持部10によって支持される。試料ホルダー20は、
図2に示すように、試料室1(真空部)と外部(大気部)との間を貫くように配置される。
【0064】
位置決め装置100の駆動部は、図示の例では、X駆動部40およびY駆動部50を含んで構成されている。駆動部40,50は、試料ホルダー20を移動および静止させる。駆動部40,50が、試料ホルダー20を移動および静止させることにより、試料Sを試料室1の所望の位置へ移動および静止させる。
【0065】
X駆動部40は、試料ホルダー20をX軸に沿って(X軸方向に)移動させる。ここで、試料ホルダー20をX軸に沿って移動させるとは、例えば、試料ホルダー20の少なくとも一部をX軸に沿って移動させることをいう。図示の例では、X駆動部40は、少なくとも試料ホルダー20の試料保持部22をX軸に沿って移動させる。X駆動部40は、
図2に示すように、レバー42と、Xモーター44と、平歯車対46と、X送りねじ48と、を含んで構成されている。
【0066】
レバー42は、試料ホルダー20が大気圧で引き込まれることを防止しつつ、試料ホルダー20をX軸方向に支持する。レバー42は、軸43を回転中心とするてこ式のレバーである。レバー42の試料室1側の端部には、ベアリング42aが設けられ、ベアリング42aを介して試料ホルダー20を支持している。ベアリング42aは、YZ平面内を転動することができる。そのため、後述する試料ホルダー20(試料保持部22)のY軸方向への移動が円滑になる。レバー42の試料室1側とは反対側の端部には、X送りねじ48が当接している。
【0067】
X送りねじ48は、Xモーター44の回転によって、X軸方向に直線的に移動する。このX送りねじ48の移動により、レバー42は、軸43を回転中心として回転し、試料ホルダー20をX軸方向に直線的に移動させる。平歯車対46は、Xモーター44の回転をX送りねじ48に伝達する。ベローズ49は、試料室1を減圧状態に保ちつつ、レバー4
2の移動を円滑にすることができる。
【0068】
荷電粒子線装置1000では、壁部2に挿入されたX駆動部支持用ブロック41によってXモーター44が支持されている。また、X駆動部支持用ブロック41には、ネジ孔41bが設けられている。ネジ孔41bには、X送りねじ48が螺合し、X送りねじ48は、ネジ孔41bを貫通している。
【0069】
Y駆動部50は、試料ホルダー20をY軸に沿って(Y軸方向に)移動させる。ここで、試料ホルダー20をY軸に沿って移動させるとは、例えば、試料ホルダー20の少なくとも一部をY軸に沿って移動させることをいう。図示の例では、Y駆動部50は、少なくとも試料ホルダー20の試料保持部22をY軸に沿って移動させる。Y駆動部50は、Yモーター54と、平歯車対56と、Y送りねじ58と、戻しばね59と、を含んで構成されている。
【0070】
Y送りねじ58の先端は、
図2に示すように、支持部10の+Y軸方向側の外周面に接している。支持部10の−Y軸方向側の外周面には、戻しばね59が設けられている。支持部10は、戻しばね59によって、+Y軸方向に付勢されている。
【0071】
Y送りねじ58は、Yモーター54の回転によって、Y軸方向に直線的に移動する。このY送りねじ58の移動により、支持部10は、球面部16の中心を回動中心として回動する。これにより、試料ホルダー20の先端(試料保持部22)をY軸方向に直線的に移動させることができる。平歯車対56は、Yモーター54の回転をY送りねじ58に伝達する。
【0072】
なお、位置決め装置100の駆動部は、さらに、試料ホルダー20の先端(試料保持部22)をZ軸方向に移動させるZ駆動部(図示せず)を含んで構成されていてもよい。Z駆動部は、Y駆動部50と同様の構成であってもよい。また、位置決め装置100は、試料SをX軸まわりに傾斜させる機構(図示しない)を有していてもよい。
【0073】
制御部60(
図1参照)は、駆動部40,50を制御する。制御部60は、
図2の例では、Xモーター44およびYモーター54に制御信号を送ることで、駆動部40および駆動部50を動作させる。
【0074】
制御部60は、専用回路によって実現して後述される制御を行うように構成されていてもよい。また、制御部60は、例えばCPU(Central Processing Unit)がROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の記憶装置に記憶された制御プログラムを実行することによってコンピューターとして機能し、後述される制御を行うように構成されていてもよい。
【0075】
制御部60は、例えば、試料保持部22の目標位置(目標座標)を記憶し、駆動部40,50を制御して、目標位置まで試料保持部22を移動させる。
【0076】
また、制御部60は、X駆動部40を制御して、振幅が時間の経過とともに小さくなるように試料ホルダー20をX軸に沿って振動させる。例えば、制御部60は、X駆動部40を制御して、所定の位置を中心として試料ホルダー20の+X軸方向への移動および−X軸方向への移動を繰り返し行い、徐々に移動量を小さくして当該所定の位置で試料ホルダー20を静止させる。
【0077】
また、制御部60は、Y駆動部50を制御して、振幅が時間の経過とともに小さくなる
ように試料ホルダー20をY軸に沿って振動させる。例えば、制御部60は、Y駆動部50を制御して、所定の位置を中心として試料ホルダー20の+Y軸方向への移動および−Y軸方向への移動を繰り返し行い、徐々に移動量を小さくして当該所定の位置で試料ホルダー20を静止させる。
【0078】
制御部60は、例えば、位置決め装置100に設けられたスイッチ(図示せず)が押されることにより、駆動部40,50を制御して試料ホルダー20を振動させる制御を開始する。
【0079】
図3は、制御部60の動作の一例を説明するための図である。
図3では、横軸は、試料ホルダー(試料S)の移動軸(X軸またはY軸)であり、縦軸は、時間である。
【0080】
視野探しで導入される大きな応力に対して、制御部60は、その応力を除去するように現在位置を中心として試料ホルダー20を振動させる。大きな応力を完全に除去するには、試料ホルダー20を最初にある程度大きく移動させることが必要となる。
【0081】
ここで、駆動部40,50が試料ホルダー20を移動させることにより導入される応力には最大値が存在する。すなわち、駆動部40,50が試料ホルダー20を大きく移動させても導入される応力は所定値(最大応力)よりは大きくならない。そのため、制御部60は、まず、その最大応力を導入できる最小の移動量で試料ホルダー20を移動させる。すなわち、制御部60では、
図3に示す初期振幅Aは、最大応力を導入できる最小の移動量に設定される。
【0082】
この過程(初期振幅Aで試料ホルダー20を移動させる過程)で当初の応力が除去される代わりに新たに応力が導入されるが、次に前回よりも小さな移動量で移動させることでその応力を除去する。除去すると同時にここでも新たに応力が導入されるが、小さくなった移動量の分だけ、前回よりも応力が小さくなる。このように、制御部60は、初期振幅Aで移動させた後、前回の移動量よりも小さい移動量であって、前回の移動で導入された応力を除去できる移動量で試料ホルダー20を移動させる。なお、試料ホルダー20の移動量と応力の減少は、すべり量の減少と相殺される。制御部60は、これを繰り返し行い、最後は制御部60が制御できる最小の移動量まで移動量を狭めていき、停止させる。その結果、応力が限りなく小さな状態となり、ドリフトを低減できる。
【0083】
なお、試料ホルダー20を移動させる速度は、応力の除去への影響が小さい。そのため、制御部60が試料ホルダー20を移動させる速度は、特に限定されない。
【0084】
また、制御部60は、例えば、試料ホルダー20を初期振幅Aで振動させることができない場合、すなわち、例えば試料ホルダー20の現在の位置と駆動部40,50で試料ホルダー20を移動できるリミットの位置との間の距離が初期振幅Aよりも小さい場合、表示部にエラーメッセージを表示して、試料ホルダー20を振動させる制御を行わない。
【0085】
また、制御部60は、試料ホルダー20を初期振幅Aで振動させることができない場合に、初期振幅Aの値を小さくして、試料ホルダー20を振動させてもよい。例えば、初期振幅Aの値を、試料ホルダー20の現在の位置と駆動部40,50で試料ホルダー20を移動できるリミットの位置との間の距離としてもよい。
【0086】
1.2. 荷電粒子線装置の動作
次に、第1実施形態に係る荷電粒子線装置1000の動作について説明する。ここでは、荷電粒子線装置1000の動作の一例として、試料Sの観察時において、試料ホルダー20のドリフトを抑制するための動作を、
図1〜
図3を参照しながら説明する。
【0087】
ユーザーは所望の視野を探すために、試料Sの移動を行う。ユーザーは、例えば、制御部60を介して、駆動部40,50を動作させることにより、試料ホルダー20を移動させて、試料Sの移動を行う。
【0088】
ユーザーは、所望の視野が決まった後、試料ホルダー20(試料S)を静止させて、位置決め装置100のスイッチ(図示せず)を押す。これにより、制御部60は、試料ホルダー20を振動させる制御を開始する。
【0089】
制御部60は、まず、X駆動部40を制御して、初期視野を中心として、振幅が時間の経過とともに小さくなるように試料ホルダー20をX軸に沿って振動させる。
【0090】
具体的には、制御部60は、X駆動部40を制御して、視野探しで導入された大きな応力が除去されるように大きく試料ホルダー20の移動(−X軸方向の移動)を行い、その後、同じ移動量だけ戻して(+X軸方向に移動させて)、視野を初期視野に戻す。すなわち、試料ホルダー20は、往復運動をする(1回目の往復運動)。このとき、視野探しにて導入された応力は除去されるが、その代わりに、初期視野に戻るための移動時に発生する応力が新たに導入される。
【0091】
次に、制御部60は、X駆動部40を制御して、前回(1回目の往復運動)とは反対方向(+X軸方向)に、前回よりも小さい移動量で試料ホルダーを移動させ、その後、同じ移動量だけ戻して(−X軸方向に移動させて)、視野を初期視野に戻す(2回目の往復運動)。このときの移動量は、前回(1回目の往復運動)で導入された応力を除去できる程度の大きさである。このときも、1回目の往復運動で導入された応力を除去する代わりに、初期視野に戻るための移動時に発生する応力が新たに導入されるが、移動量が小さくなった分だけ応力は小さくなる。1回目の往復運動に比べて、2回目の往復運動にて減少する移動量と応力は、すべり面のすべり量の減少と相殺される。
【0092】
制御部60は、上記の動作を繰り返し行い、制御部60が制御できる最小の移動量まで移動量を狭めていき、その後、試料ホルダー20を静止させる。
【0093】
次に、制御部60は、Y駆動部50を制御して、初期視野を中心として、振幅が時間の経過とともに小さくなるように試料ホルダー20をY軸に沿って振動させる。制御部60は、Y駆動部50に対しても、上記のX駆動部40と同様の制御を行う。そして、制御部60は、制御を終了する。
【0094】
この結果、Oリング30や、駆動部40,50に導入される応力を限りなく小さな状態とすることができ、ドリフトを低減することができる。そして、ユーザーは、所望の視野(初期視野)で観察や分析を行うことができる。
【0095】
なお、ここでは、制御部60がX駆動部40を制御して試料ホルダー20をX軸に沿って振動させた後に、Y駆動部50を制御して試料ホルダー20をY軸に沿って振動させる場合について説明したが、制御部60は、Y駆動部50を制御して試料ホルダー20をY軸に沿って振動させた後に、X駆動部40を制御して試料ホルダー20をX軸に沿って振動させてもよい。また、制御部60は、X駆動部40およびY駆動部50の両方を同時に制御して、試料ホルダー20をX軸に沿って振動させつつ、Y軸に沿って振動させてもよい。
【0096】
図4は、応力解放ありの場合および応力解放なしの場合のドリフト速度の変化を示したグラフである。
図4に示すグラフでは、制御部60が上述した試料ホルダー20を振動さ
せる制御を行った場合(応力解放あり)と、上述した制御を行わなかった場合(応力解放なし)とを比較している。
図4に示すグラフから、制御部60が上述した試料ホルダー20を振動させる制御を行うことにより、ドリフトが抑制されることがわかる。
【0097】
荷電粒子線装置1000は、例えば、以下の特徴を有する。
【0098】
荷電粒子線装置1000では、試料ホルダー(物体)20と、物体を移動させる駆動部40,50と、駆動部40,50を制御する制御部60と、を含み、制御部60は、駆動部40,50を制御して、振幅が時間の経過とともに小さくなるように試料ホルダー20を振動させる。そのため、荷電粒子線装置1000では、上述のように、試料ホルダー20のドリフトを抑制することができる。したがって、荷電粒子線装置1000では、例えば、撮影時間を長くすることができ、電子顕微鏡像や電子回折図形の空間分解能、およびS/N比を向上させることができる。さらに、荷電粒子線装置1000では、分析時間を長くすることができ、分析の空間分解能、およびS/N比を向上させることができる。
【0099】
荷電粒子線装置1000では、試料ホルダー20には、支持部10に接するOリング30が装着され、駆動部(例えばX駆動部40)は、試料ホルダー20を第1軸(例えばX軸)に沿って移動させ、制御部60は、駆動部(X駆動部40)を制御して、第1軸に沿って試料ホルダー20を振動させる。そのため、荷電粒子線装置1000では、第1軸の方向(例えばX軸方向)における試料ホルダー20のドリフトを抑制することができる。また、荷電粒子線装置1000では、Oリング30に導入された応力を解放(除去)することができ、Oリング30に起因するドリフトを抑制することができる。
【0100】
荷電粒子線装置1000では、駆動部(例えばY駆動部50)は、試料ホルダー20を第1軸と直交する第2軸(例えばY軸)に沿って移動させ、制御部60は、駆動部(Y駆動部50)を制御して、第2軸に沿って試料ホルダー20を振動させる。そのため、荷電粒子線装置1000では、第2軸の方向(例えばY軸方向)における試料ホルダー20のドリフトを抑制することができる。
【0101】
荷電粒子線装置1000では、制御部60は、駆動部40,50を制御して、試料ホルダー20を所定の位置を中心として振動させた後に、前記所定の位置で静止させる。そのため、荷電粒子線装置1000では、例えば、ドリフトが抑制された状態で所望の視野における観察、あるいは分析を行うことができる。
【0102】
1.3. 変形例
次に、第1実施形態に係る荷電粒子線装置1000の変形例について説明する。以下に説明する変形例に係る荷電粒子線装置(荷電粒子線装置1100,1200,1300)において、上述した荷電粒子線装置1000の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0103】
(1)第1変形例
まず、第1変形例に係る荷電粒子線装置について、図面を参照しながら説明する。
図5は、第1変形例に係る荷電粒子線装置1100を模式的に示す図である。なお、
図5では、便宜上、位置決め装置100を簡略化して図示している。
【0104】
荷電粒子線装置1100では、
図5に示すように、画像解析部70を含む。
【0105】
画像解析部70は、専用回路によって実現して後述される処理を行うように構成されていてもよい。また、画像解析部70は、例えばCPU(Central Processing Unit)がROM(Read Only Memory)やRAM(Rand
om Access Memory)等の記憶装置に記憶された制御プログラムを実行することによってコンピューターとして機能し、後述される処理を行うように構成されていてもよい。
【0106】
画像解析部70は、制御部60が試料ホルダー20を振動させる前に取得された第1画像(初期視野)、および制御部60が試料ホルダーを振動させた後に取得された第2画像に基づいて、試料ホルダー20の位置ずれの情報を取得する。
【0107】
第1画像および第2画像は、撮像部112で撮像される。撮像部112は、撮像した第1画像および第2画像の情報を出力する。第1画像および第2画像は、例えば、試料Sの電子顕微鏡像である。画像解析部70は、この第1画像および第2画像の情報を受けて、第1画像と第2画像の相互相関処理を行い、試料ホルダー20(試料S)の位置ずれの情報を取得する。ここで、試料ホルダー20(試料S)の位置ずれの情報とは、例えば、制御部60が試料ホルダー20を振動させる前の試料ホルダー20(試料S)の位置と、制御部60が試料ホルダー20を振動させた後の試料ホルダー20(試料S)の位置と、を結ぶベクトルの大きさと向きである。
【0108】
制御部60は、画像解析部70で取得した試料ホルダー20の位置ずれの情報に基づいて、駆動部40,50を制御して、試料ホルダー20を、第1画像(初期視野)が取得された位置に移動させる。
【0109】
次に、第1変形例に係る荷電粒子線装置1100の動作について説明する。ここでは、荷電粒子線装置1100の動作の一例として、試料Sの観察時において、試料ホルダー20のドリフトを抑制するための動作を、
図2および
図5を参照しながら説明する。なお、上述した荷電粒子線装置1000の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0110】
ユーザーは所望の視野を探すために、試料Sの移動を行う。ユーザーは、例えば、制御部60を介して、駆動部40,50を動作させることにより、試料ホルダー20を移動させて、試料Sの移動を行う。
【0111】
ユーザーは、所望の視野が決まった後、試料ホルダー20(試料S)を静止させて、位置決め装置100のスイッチ(図示せず)を押す。これにより、制御部60は、試料ホルダー20を振動させる制御を開始する。また、画像解析部70は、試料ホルダー20の位置ずれの情報を取得するための処理を開始する。
【0112】
まず、画像解析部70は、撮像部112を用いて試料Sの現在(制御部60が試料ホルダー20を振動させる前)の観察視野(初期視野)の撮像を行い、第1画像の情報を取得する。
【0113】
ここで、画像解析部70は、第1画像を表示部に表示させる。画像解析部70は、制御部60が試料ホルダー20を振動させている間、第1画像を表示部に表示させる。例えば、制御部60が試料ホルダー20を振動させている間に、撮像部112がリアルタイムに撮像した画像を表示部に表示させると、視野が高速に切り替わり、画面がちらつく。画像解析部70が、第1画像を表示部に表示させることで、この画面のちらつきを防ぐことができる。
【0114】
次に、制御部60は、X駆動部40を制御して、初期視野を中心として、振幅が時間の経過とともに小さくなるように試料ホルダー20をX軸に沿って振動させる。
【0115】
次に、制御部60は、Y駆動部50を制御して、初期視野を中心として、振幅が時間の経過とともに小さくなるように試料ホルダー20をY軸に沿って振動させる。
【0116】
次に、画像解析部70は、撮像部112を用いて試料Sの現在(試料ホルダー20を振動させた後)の観察視野の撮像を行い、第2画像の情報を取得する。
【0117】
次に、画像解析部70は、第1画像と第2画像との相互相関処理を行い、試料ホルダー20の位置ずれの情報を取得する。そして、画像解析部70は、処理を終了する。
【0118】
制御部60は、画像解析部70の計算結果にしたがって、駆動部40,50を制御し、試料ホルダー20(試料S)を移動させる。これにより、初期視野に戻すことができる。そして、制御部60は、制御を終了する。このとき、荷電粒子線装置1100のオートフォーカスシステム(図示せず)により自動で焦点あわせを行ってもよい。
【0119】
この結果、Oリング30や、駆動部40,50に導入される応力を限りなく小さな状態とすることができ、ドリフトを低減することができる。そして、ユーザーは、所望の視野(初期視野)で観察や分析を行うことができる。
【0120】
荷電粒子線装置1100では、画像解析部70は、制御部60が試料ホルダー20を振動させる前に取得された第1画像、および制御部60が試料ホルダー20を振動させた後に取得された第2画像に基づいて、試料ホルダー20の位置ずれの情報を取得し、制御部60は、画像解析部70で取得された試料ホルダー20の位置ずれの情報に基づいて、駆動部40,50を制御して、試料ホルダー20を、第1画像が取得された位置に移動させる。そのため、荷電粒子線装置1100では、制御部60が試料ホルダー20を振動させても、試料ホルダー20の位置を振動させる前の位置に正確に戻すことができる。したがって、荷電粒子線装置1100では、例えば、制御部60が試料ホルダー20を振動させても、観察視野を、試料ホルダー20を振動させる前の視野(初期視野)に正確に戻すことができる。
【0121】
(2)第2変形例
次に、第2変形例に係る荷電粒子線装置について、図面を参照しながら説明する。
図6は、第2変形例に係る荷電粒子線装置1200を模式的に示す図である。なお、
図6では、便宜上、位置決め装置100を簡略化して図示している。
【0122】
荷電粒子線装置1200は、
図6に示すように、ビームブランキング部103を含む。
【0123】
ビームブランキング部103は、偏向器103aと、絞り103bと、を含んで構成されている。偏向器103aおよび絞り103bは、図示の例では、電子線源102と集束レンズ104との間に配置されている。偏向器103aは、電子線EBを偏向させる。偏向器103aは、磁場を発生させて電子線EBを偏向させる偏向コイルであってもよいし、電場を発生させて電子線EBを偏向させる静電偏向板であってもよい。偏向器103aで偏向された電子線EBは、絞り103bによって遮断される。これにより、絞り103bより後段(下流側)には、電子線EBが進行しない。
【0124】
ビームブランキング部103は、制御部60が試料ホルダー20を振動させている間に、電子線源102から放出された電子線EBを遮断する。ビームブランキング部103は、例えば、制御部60が試料ホルダー20の振動させる制御を開始してから、試料ホルダー20を振動させる処理を終了するまでの間、電子線EBを遮断する。
【0125】
制御部60は、例えば、駆動部40,50を制御して、試料ホルダー20を振動させる
制御を開始する際に、偏向器103aを動作させるためのブランキング信号を出力する。偏向器103aは、このブランキング信号を受けて、電子線EBを偏向させて電子線EBを遮断する。また、制御部60は、駆動部40,50を制御して、試料ホルダー20を振動させる制御を終了する際に、ブランキング解除信号を出力する。偏向器103aは、このブランキング解除信号を受けて、電子線EBの偏向を中止し、電子線EBは、絞り103bを通過する。
【0126】
荷電粒子線装置1100では、ビームブランキング部103が、制御部60が試料ホルダー20を振動させている間に電子線源102から放出された電子線EBを遮断する。これにより、例えば、電子線EBが照射されることによる試料Sに加わるダメージを低減させることができる。
【0127】
(3)第3変形例
次に、第3変形例に係る荷電粒子線装置について、図面を参照しながら説明する。
図7は、第3変形例に係る荷電粒子線装置1300を模式的に示す図である。なお、
図7では、便宜上、位置決め装置100を簡略化して図示している。
【0128】
荷電粒子線装置1300は、
図7に示すように、試料ホルダー20が試料室1に導入されたことを検出する物体検出部72を含む。
【0129】
物体検出部72は、例えば、試料ホルダー20の位置を検出するためのセンサー(図示せず)を含んで構成され、当該センサーを用いて試料ホルダー20(試料保持部22)が試料室1に導入されたことを検出する。センサーは、例えば、試料室1や支持部10の孔12(
図2参照)に配置される。物体検出部72は、試料ホルダー20が試料室1に導入されたことを検出すると、制御部60が試料ホルダー20を振動させる制御を開始するための開始信号を出力する。
【0130】
制御部60は、物体検出部72によって試料ホルダー20が試料室1に導入されたことが検出された場合に、駆動部40,50を制御して、試料ホルダー20を振動させる制御を開始する。具体的には、制御部60は、物体検出部72から出力された開始信号を受けて、試料ホルダー20を振動させる制御を開始する。
【0131】
また、制御部60は、例えば、試料ホルダー20が試料室1に導入されてから、電子線源102から電子線EBが試料Sに照射されるまでの間に、試料ホルダー20を振動させる制御を終了させる。これにより、試料ホルダー20のドリフトを、効率よく抑制することができる。
【0132】
荷電粒子線装置1300では、物体検出部72は、試料ホルダー20が試料室1に導入されたことを検出し、物体検出部72によって試料ホルダー20が試料室1に導入されたことが検出された場合に、制御部60は、駆動部40,50を制御して、振幅が時間の経過とともに小さくなるように試料ホルダー20を振動させる。そのため、試料ホルダー20を試料室1に導入する際に生じる応力を解放(除去)することができる。したがって、荷電粒子線装置1300によれば、試料ホルダー20のドリフトを抑制することができる。
【0133】
(4)第4変形例
次に、第4変形例に係る荷電粒子線装置について説明する。上述した荷電粒子線装置1000の例では、制御部60において、初期振幅A(
図3参照)は、駆動部40,50が試料ホルダー20を移動させることにより導入される最大応力に設定されていた。
【0134】
これに対して、本変形例では、初期振幅Aは、試料ホルダー20が試料室1に導入されてから制御部60が試料ホルダー20を振動させる制御を開始するまでの試料ホルダー20の移動量に応じて設定される。例えば、制御部60は、
図3に示す視野探しにおいて試料ホルダー(試料S)が移動した距離をモニターし、当該距離に応じて、初期振幅Aを決定する。
【0135】
本変形例によれば、制御部60は、試料ホルダー20の移動距離に応じて振動の振幅の大きさを決定するため、導入された応力に応じて初期振幅Aを設定することができ、効率よく試料ホルダー20のドリフトを抑制することができる。例えば、本変形例によれば、導入された応力が小さい場合、初期振幅Aが前記最大応力に設定されている場合と比べて、初期振幅Aを小さくすることができ、短い時間で試料ホルダー20のドリフトを抑制することができる。
【0136】
2. 第2実施形態
次に、第2実施形態に係る荷電粒子線装置について、図面を参照しながら説明する。なお、上述した荷電粒子線装置1000の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0137】
図8は、第2実施形態に係る荷電粒子線装置2000の要部を模式的に示す図である。なお、
図8は、
図2に対応している。以下、第2実施形態に係る荷電粒子線装置2000において、上述した第1実施形態に係る荷電粒子線装置1000の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0138】
第1実施形態に係る荷電粒子線装置1000の例では、
図2に示すように、X駆動部40は、Xモーター44の回転によってX送りねじ48を移動させ、このX送りねじ48の移動によってレバー42が軸43を回転中心として回転し、試料ホルダー20を移動させていた。
【0139】
これに対して、第2実施形態に係る荷電粒子線装置2000では、
図8に示すように、X駆動部240は、Xモーター244の回転によってX送りねじ248を移動させ、このX送りねじ248の移動によって位置決め用スライダー242を直線的に移動させ、試料ホルダー20を移動させる。
【0140】
X駆動部240は、試料ホルダー20をX軸方向(X軸に沿って)に移動させる。X駆動部240は、位置決め用スライダー242と、Xモーター244と、平歯車対246と、X送りねじ248と、を含んで構成されている。
【0141】
荷電粒子線装置2000では、壁部2には、X駆動部支持用ブロック241が挿入されている。X駆動部支持用ブロック241には、X軸と平行なスライダー収容孔241aが設けられている。スライダー収容孔241aには、位置決め用スライダー242がX軸方向に移動可能に収容されている。スライダー収容孔241aの端(大気側の端)には、ネジ孔241bが設けられている。ネジ孔241bには、X送りねじ248が螺合し、X送りねじ248は、ネジ孔241bを貫通している。
【0142】
X送りねじ248の一方(+X軸方向側)の端部は、位置決め用スライダー242に当接している。また、X送りねじ248の他方(−X軸方向側)の端部には、平歯車対246を構成する一方の歯車が固着されている。平歯車対246を構成する他方の歯車は、Xモーター244の軸に固着されている。したがって、Xモーター244を回転させると、平歯車対246を介して、X送りねじ248がX軸方向に直線的に移動する。このX送りねじ248の移動により、位置決め用スライダー242がX軸方向に移動する。試料ホル
ダー20は、位置決め用スライダー242の移動に伴って、X軸方向に移動する。
【0143】
位置決め用スライダー242は、試料ホルダー20が大気圧で引き込まれることを防止しつつ、試料ホルダー20をX軸方向に支持している。位置決め用スライダー242の+X軸方向側の端部は、すり鉢状の凹部が設けられている。試料ホルダー20の先端部には、球状部(例えばルビーの球)が設けられており、当該球状部が位置決め用スライダー242の凹部に当接している。位置決め用スライダー242には、Oリング243が装着されている。Oリング243は、X駆動部支持用ブロック241の内面と接して、X駆動部支持用ブロック241と位置決め用スライダー242との間を気密に封止している。
【0144】
第2実施形態に係る荷電粒子線装置2000によれば、第1実施形態に係る荷電粒子線装置1000と同様の作用効果を奏することができる。また、上述した第1実施形態に係る荷電粒子線装置1000における変形例は、第2実施形態に係る荷電粒子線装置2000においても同様に適用される。
【0145】
3. 第3実施形態
次に、第3実施形態に係る荷電粒子線装置について、図面を参照しながら説明する。なお、上述した荷電粒子線装置1000の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0146】
図9は、第3実施形態に係る荷電粒子線装置3000の要部を模式的に示す図である。なお、
図9は、
図2に対応している。また、
図9では、便宜上、試料ホルダー20およびX駆動部340以外の部材の図示を省略している。以下、第3実施形態に係る荷電粒子線装置3000において、上述した第1実施形態に係る荷電粒子線装置1000の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0147】
第1実施形態に係る荷電粒子線装置1000の例では、
図2に示すように、X駆動部40は、Xモーター44の回転によってX送りねじ48を移動させ、このX送りねじ48の移動によってレバー42が軸43を回転中心として回転し、試料ホルダー20を移動させていた。
【0148】
これに対して、第3実施形態に係る荷電粒子線装置3000では、
図9に示すように、X駆動部340は、Xモーター344の回転によってX送りねじ348を移動させ、このX送りねじ348の移動によってレバー342が軸343を回転中心として回転し、レバー342に当接した試料ホルダー20に設けられた突出部26を介して、試料ホルダー20を移動させる。
【0149】
試料ホルダー20には、試料ホルダー20の長手方向(軸の方向)と直交する方向に突出した突出部26が設けられている。突出部26は、試料ホルダーを支持部(図示せず)の孔に挿入したときに、レバー342に当接する。図示の例では、突出部26は、試料ホルダー20の長手方向(X軸方向)において、幅広部24側(大気側)に設けられている。すなわち、試料ホルダー20の長手方向において、突出部26と幅広部24との間の距離は、突出部26と試料保持部22との間の距離よりも小さい。
【0150】
X駆動部340は、試料ホルダー20をX軸方向(X軸に沿って)に移動させる。X駆動部340は、
図9に示すように、レバー342と、Xモーター344と、平歯車対346と、X送りねじ348と、を含んで構成されている。
【0151】
レバー342は、試料ホルダー20が大気圧で引き込まれることを防止しつつ、試料ホルダー20をX軸方向に支持する。レバー342は、軸343を回転中心とするてこ式の
レバーである。レバー342の一方の端部には、試料ホルダー20の突出部26が当接している。レバー42の他方の端部には、X送りねじ48が当接している。
【0152】
X送りねじ348は、Xモーター344の回転によって、X軸方向に直線的に移動する。このX送りねじ348の移動により、レバー342は、軸343を回転中心として回転し、試料ホルダー20をX軸方向に直線的に移動させる。平歯車対346は、Xモーター344の回転をX送りねじ348に伝達する。
【0153】
荷電粒子線装置3000では、例えば、保持部材4(
図2参照)に、X駆動部支持用ブロック341が設けられている。Xモーター344は、X駆動部支持用ブロック341によって支持されている。また、X駆動部支持用ブロック341には、ネジ孔341bが設けられている。ネジ孔341bには、X送りねじ348が螺合し、X送りねじ348は、ネジ孔341bを貫通している。
【0154】
第3実施形態に係る荷電粒子線装置3000によれば、第1実施形態に係る荷電粒子線装置1000と同様の作用効果を奏することができる。また、上述した第1実施形態に係る荷電粒子線装置1000における変形例は、第3実施形態に係る荷電粒子線装置3000においても同様に適用される。
【0155】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0156】
例えば、上述した実施形態および変形例では、荷電粒子線装置が透過電子顕微鏡である例について説明したが、本発明に係る荷電粒子線装置は、例えば、走査透過電子顕微鏡(STEM)、走査電子顕微鏡(SEM)、集束イオンビーム装置(FIB)等であってもよい。また、本発明に係る荷電粒子線装置において、荷電粒子線は電子線に限定されず、例えばイオンビームであってもよい。
【0157】
また、例えば、上述した実施形態および変形例では、物体が試料ホルダーである例について説明したが、物体はこれに限定されない。例えば、物体は、コンデンサー絞り、対物絞り、制限視野絞り等として用いられる可動絞り等であってもよい。また、例えば、物体は、真空外(鏡筒の外)から位置の調整が可能な位相板(位相差像を得るために電子波の位相に変化を与える板)等であってもよい。また、例えば、物体は、電子線バイプリズムワイヤーであってもよい。
【0158】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0159】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。