(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
タイヤの接地面の変位を測定して前記接地面の山部と溝部の判別を可能とする距離データを生成する変位測定部と、前記接地面を撮影して接地面画像データを生成する撮像部と、前記距離データと前記接地面画像データを合成して合成画像データを生成する距離画像合成部と、前記合成画像データのうち前記接地面の前記溝部の領域からひび割れを検出するために抽出された評価領域を2値化処理して2値化接地面画像データを生成する2値化処理部と、前記2値化接地面画像データのうち白画像データ領域又は黒画像データ領域の面積を演算して第1の面積データを生成する面積演算部と、前記第1の面積データを出力する出力部と、を有することを特徴とするタイヤ劣化評価装置。
前記白画像データ領域又は黒画像データ領域の第1の面積データを、劣化を評価するために予め定められた第1の評価閾値データで評価して第1の評価ランクデータを生成する評価部を備え、前記出力部は前記第1の評価ランクデータを出力することを特徴とする請求項1記載のタイヤ劣化評価装置。
請求項1又は請求項2に記載のタイヤ劣化評価装置と、被評価対象のタイヤを保持するタイヤ保持部と、このタイヤ保持部を可動とする駆動部と、前記タイヤを前記タイヤ劣化評価装置の変位測定部で測定可能な位置及び撮像部で撮影可能な位置に前記タイヤ保持部を移動及び姿勢を制御する制御部と、を有することを特徴とするタイヤ劣化評価システム。
前記タイヤ劣化評価装置の撮像部は、前記タイヤの接地面を撮影して接地面画像データを生成する接地面撮像部と、前記タイヤの側面を撮影して側面画像データを生成する側面撮像部と、を有し、前記2値化処理部は、前記側面画像データのうちひび割れを検出するために抽出された評価領域を2値化処理して2値化側面画像データを生成し、前記面積演算部は前記2値化接地面画像データに関する第1の面積データの他に前記2値化側面画像データのうち白画像データ領域又は黒画像データ領域の面積を演算して第2の面積データを生成し、前記出力部は、前記第1の面積データ及び/又は前記第2の面積データを出力することを特徴とする請求項3記載のタイヤ劣化評価システム。
タイヤの接地面の変位を測定して前記接地面の山部と溝部の判別を可能とする距離データを生成する変位測定工程と、前記接地面を撮影して接地面画像データを生成する撮像工程と、前記距離データと前記接地面画像データを合成して合成画像データを生成する距離画像合成工程と、前記合成画像データのうち前記接地面の前記溝部の領域からひび割れを検出するために抽出された評価領域を2値化処理して2値化接地面画像データを生成する2値化処理工程と、前記2値化接地面画像データのうち白画像データ領域又は黒画像データ領域の面積を演算して第1の面積データを生成する面積演算工程と、前記白画像データ領域又は黒画像データ領域の第1の面積データを、劣化を評価するために予め定められた第1の評価閾値データで評価して第1の評価ランクデータを生成する評価工程と、前記第1の面積データ及び/又は前記第1の評価ランクデータを出力する出力工程と、を有することを特徴とするタイヤ劣化評価方法。
被評価対象のタイヤを保持するタイヤ保持工程と、前記タイヤの接地面の変位を測定可能な位置あるいは前記接地面を撮影可能な位置に前記タイヤを移動及び姿勢制御する制御工程を前工程として有することを特徴とする請求項6記載のタイヤ劣化評価方法。
コンピュータによって、タイヤ劣化評価のために実行されるプログラムであって、タイヤの接地面の変位を測定して前記接地面の山部と溝部の判別を可能とする距離データを生成する変位測定工程と、前記接地面を撮影して接地面画像データを生成する撮像工程と、前記距離データと前記接地面画像データを合成して合成画像データを生成する距離画像合成工程と、前記合成画像データのうち前記接地面の前記溝部の領域からひび割れを検出するために抽出された評価領域を2値化処理して2値化接地面画像データを生成する2値化処理工程と、前記2値化接地面画像データのうち白画像データ領域又は黒画像データ領域の面積を演算して第1の面積データを生成する面積演算工程と、前記白画像データ領域又は黒画像データ領域の第1の面積データを、劣化を評価するために予め定められた第1の評価閾値データで評価して第1の評価ランクデータを生成する評価工程と、前記第1の面積データ及び/又は前記第1の評価ランクデータを出力する出力工程と、を実行させることを特徴とするタイヤ劣化評価プログラム。
被評価対象のタイヤを保持するタイヤ保持工程と、前記タイヤの接地面の変位を測定可能な位置あるいは前記接地面を撮影可能な位置に前記タイヤを移動及び姿勢制御する制御工程を前工程として実行させることを特徴とする請求項8記載のタイヤ劣化評価プログラム。
【背景技術】
【0002】
今日の自動車リサイクル産業では自動車中古部品市場の縮小が危惧されており、中古部品の利用促進は長年の課題であった。日本国内では新品志向が強く、使い捨ての考えが多い。特にタイヤは消耗品であり需要が多い為、新品交換のサイクルが早い。不要になった廃タイヤの発生量は年間約100万トンと言われているが、その中には使用可能なものも多数存在する。処分方法は様々であるが、焼却処分時に発生する内分泌撹乱作用を有すると疑われる化学物質による環境への影響は、人体への影響も懸念されている。
このような背景には、使用済・中古タイヤに関する定量的な測定に基く明確な評価基準が存在していない為、使用者の独断や、点検作業員の目視による曖昧な判定基準によって使用可能であるにも関わらず処分する場合が多いということがある。
従って、明確な品質基準と劣化評価システムを設けることによれば、使用済・中古タイヤの流通サイクルをより延ばすことが可能になると考えられる。
これまで、タイヤの品質に関する検査や摩耗の評価については、いくつか特許出願がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、「タイヤ偏摩耗管理方法」という名称で、タイヤの偏摩耗の検出から、対応策の決定までを自動的に行う装置が開示されている。
この発明では、スキャナによりタイヤ形状を読み込み、同一タイヤの新品時形状と比較をして、差分形状を求め、その差分形状に基づいて偏摩耗データベースを検索し、偏摩耗の有無と種類を判断し、その偏摩耗を調査した後には、対応策データベースを検索することによって抽出されたタイヤ位置交換方法及びその他の対応策の指示が表示される。従って、作業者の経験や知識によらず、しかも労力を軽減することが可能である。
【0004】
また、特許文献2には、「タイヤ摩耗監視装置」という名称で、タイヤのトレッド層の底部にトレッドゴム層とは異なる色の摩耗監視用異色ゴム部材を埋設して、そのトレッド面の摩耗を画像監視することで、走行中の車両のタイヤ摩耗の監視を可能とするとともに、タイヤの交換時期を容易に把握することが可能である。
【0005】
さらに、特許文献3には、「タイヤ検査方法および装置」という名称で、タイヤ画像から不良部分を、熟練を有することなく簡単かつ短時間に発見でき、正確かつ効率的に検査可能な技術が開示されている。
この発明は、タイヤをレーザー式非破壊検査機及びCCDカメラ等でそれぞれ撮像して得られる白黒濃淡基調の画像信号に基づいてタイヤの良・不良を検査するにあたり、画像信号に基づいて不良部分を検出し、不良部分をマーキングして画像信号をモニタに表示するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示される技術では、タイヤの摩耗は測定・評価は可能であるものの中古のタイヤ劣化の現れには摩耗のみならずひび割れがあるが、そのひび割れについては測定・評価ができないという課題があった。
また、特許文献2に開示される技術でも、トレッド部の摩耗によってその底部に予め埋設された異色のゴム部材を露出させるので、トレッド面の監視画像によって車両が走行中でもタイヤ摩耗を監視可能であるものの、やはり、タイヤのゴム材自身の経年劣化に伴って生じるひび割れについては測定・監視ができないという課題があった。
さらに、特許文献3に開示される技術では、被検タイヤのトップインナー間にエアーが混入している場合には、2値化された場合にその部分が白レベルになり、その部分を不良部分としてマーキングすることで不良部分の検出が容易であるものの、被検タイヤは新品のタイヤであり、使用や経年に伴うひび割れなどを生じる劣化に関する測定・評価ができないという課題があった。
【0008】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、使用済の中古タイヤの劣化をタイヤの使用によって摩耗していない領域、すなわち、接地面の山部ではなく、車両走行による摩耗や損傷による影響を受け難い溝部に生じているひび割れを測定することで、よりタイヤの材質に対する劣化を精度高く評価するタイヤ劣化評価装置とそのシステム、その方法及びそのプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明であるタイヤ劣化評価装置は、タイヤの接地面の変位を測定して前記接地面の山部と溝部の判別を可能とする距離データを生成する変位測定部と、前記接地面を撮影して接地面画像データを生成する撮像部と、前記距離データと前記接地面画像データを合成して合成画像データを生成する距離画像合成部と、前記合成画像データのうち前記接地面の前記溝部の領域からひび割れを検出するために抽出された評価領域を2値化処理して2値化接地面画像データを生成する2値化処理部と、前記2値化接地面画像データのうち白画像データ領域又は黒画像データ領域の面積を演算して第1の面積データを生成する面積演算部と、前記第1の面積データを出力する出力部と、を有することを特徴とするタイヤ劣化評価装置とを有するものである。
上記構成のタイヤ劣化評価装置では、変位測定部がタイヤの接地面の変位を測定して距離データを得ることでタイヤの接地面における山部と溝部の判別を可能とする作用を有する。また、撮像部がタイヤの接地面を撮影して画像データを得て、距離画像合成部が距離データと画像データを合成し、その合成された画像データにおいて溝部の領域から評価領域を抽出しつつ、溝部の領域における評価領域で2値化処理することで、溝部に生じているひび割れの面積を測定するように作用する。
溝部は通常の車両走行時では道路面に接触しないため、その領域にはタイヤの材質であるゴムの摩耗によらない経年劣化の現れとなるひび割れが生じる可能性が高い。従って、特にこの溝部におけるひび割れを測定するために、接地面の変位を測定しつつ、さらに接地面を撮影して、距離データと接地面画像データを合成する。そして、溝部の領域から評価領域を抽出し、その評価領域の範囲で接地面画像データを2値化処理して、ひび割れを検出するのである。溝部は道路面に接触しておらず、生じているひび割れでは内部のゴムの色が見えているため、通常は黒色として測定される。従って、本発明のタイヤ劣化評価装置では、2値化処理後の黒画像データ領域の面積を演算し、それを出力することでタイヤの劣化評価を定量的に実施するように作用するのである。
なお、2値化処理自体は既に知られた処理であるので詳細には説明しないが、画像信号を閾値によって白画像データと黒画像データに分けるので、タイヤの材質あるいは2値化処理の閾値によってひび割れは必ずしも黒画像データとはならない可能性もある。すなわち、白画像データがひび割れとなる場合もある。また、2値化処理に白黒反転処理も含める場合もあるので、白画像データと黒画像データのいずれもひび割れに関するデータとなり得る。
また、本発明では変位測定部と撮像部を分けているが、例えば特開2011−179925号公報で開示されているような距離画像センサを採用する場合には、距離画像センサは、変位測定部と撮像部の機能を併せるものであると考えられるので、たとえ距離画像センサを採用しても本発明の範囲から外れるものではない。
【0010】
また、請求項2に記載の発明であるタイヤ劣化評価装置は、請求項1に記載のタイヤ劣化評価装置において、前記白画像データ領域又は黒画像データ領域の第1の面積データを、劣化を評価するために予め定められた第1の評価閾値データで評価して第1の評価ランクデータを生成する評価部を備え、前記出力部は前記第1の評価ランクデータを出力することを特徴とするものである。
上記構成のタイヤ劣化評価装置では、請求項1に記載の発明の作用に加えて、評価部が、第1の評価閾値データを用いて白画像データ領域又は黒画像データ領域の第1の面積データをランク評価するように作用する。
【0011】
そして、請求項3に記載の発明であるタイヤ劣化評価システムは、請求項1又は請求項2に記載のタイヤ劣化評価装置と、被評価対象のタイヤを保持するタイヤ保持部と、このタイヤ保持部を可動とする駆動部と、前記タイヤを前記タイヤ劣化
評価装置の変位測定部で測定可能な位置及び撮像部で撮影可能な位置に前記タイヤ保持部を移動及び姿勢を制御する制御部と、を有するものである
上記構成のタイヤ劣化評価システムでは、請求項1又は請求項2に記載の発明であるタイヤ劣化評価装置を備えつつ、被評価対象であるタイヤを保持しつつ、それを可動として、制御部で移動、姿勢制御するように作用させて、タイヤ劣化評価装置を固定可能とするように作用する。また、本発明においては、請求項1又は請求項2に記載のタイヤ劣化評価装置の作用はそのまま踏襲するものである。
【0012】
さらに、請求項4に記載の発明であるタイヤ劣化評価システムは、請求項3に記載のタイヤ劣化評価システムにおいて、前記タイヤ劣化評価装置の撮像部は、前記タイヤの接地面を撮影して接地面画像データを生成する接地面撮像部と、前記タイヤの側面を撮影して側面画像データを生成する側面撮像部と、を有し、前記2値化処理部は、前記側面画像データのうちひび割れを検出するために抽出された評価領域を2値化処理して2値化側面画像データを生成し、前記面積演算部は前記2値化接地面画像データに関する第1の面積データの他に前記2値化側面画像データのうち白画像データ領域又は黒画像データ領域の面積を演算して第2の面積データを生成し、前記出力部は、前記第1の面積データ及び/又は前記第2の面積データを出力することを特徴とするものである。
上記構成のタイヤ劣化評価システムでは、請求項3に記載の発明の作用に加えて、撮像部が接地面撮像部と側面撮像部を備えて、タイヤの接地面のみならず側面を撮影し接地面画像データの他に側面画像データを得て、接地面と同様にひび割れを測定し2値化処理して、接地面の溝部におけるひび割れに関する第1の面積データ及び/又は側面のひび割れに関する第2の面積データを出力するように作用する。
【0013】
請求項5に記載の発明であるタイヤ劣化評価システムは、請求項2に記載のタイヤ劣化評価装置と、被評価対象のタイヤを保持するタイヤ保持部と、このタイヤ保持部を可動とする駆動部と、前記タイヤを前記タイヤ劣化
評価装置の変位測定部で測定可能な位置及び撮像部で撮影可能な位置に前記タイヤ保持部を移動及び姿勢制御する制御部と、を有し、前記タイヤ劣化評価装置の撮像部は、前記タイヤの接地面を撮影して接地面画像データを生成する接地面撮像部と、前記タイヤの側面を撮影して側面画像データを生成する側面撮像部と、を有し、前記2値化処理部は、前記側面画像データのうちひび割れを検出するために抽出された評価領域を2値化処理して2値化側面画像データを生成し、前記面積演算部は前記2値化接地面画像データに関する第1の面積データの他に、前記2値化側面画像データのうち白画像データ領域又は黒画像データ領域の面積を演算して第2の面積データを生成し、前記評価部は、前記第1の評価ランクデータの他に、前記第2の面積データを、劣化を評価するために予め定められた第2の評価閾値データで評価して第2の評価ランクデータを生成し、前記出力部は、前記第1の面積データ及び/又は前記第2の面積データ並びに前記第1の評価ランクデータ及び/又は第2の評価ランクデータを出力することを特徴とするものである。
上記構成のタイヤ劣化評価システムでは、請求項2に記載の発明の作用を有しながら、さらに、請求項4に記載される発明と同様に、撮像部が接地面撮像部と側面撮像部を備えて、タイヤの接地面のみならず側面を撮影し接地面画像データの他に側面画像データを得て、接地面と同様にひび割れを測定し2値化処理して、接地面の溝部におけるひび割れに関する第1の面積データと側面のひび割れに関する第2の面積データを生成するように作用する。さらに、評価部が接地面の溝部における第1の面積データに対する第1の評価ランクデータに加えて側面における第2の面積データに対する第2の評価ランクデータを用いてランク評価するように作用する。
【0014】
請求項6記載の発明であるタイヤ劣化評価方法は、タイヤの接地面の変位を測定して前記接地面の山部と溝部の判別を可能とする距離データを生成する変位測定工程と、前記接地面を撮影して接地面画像データを生成する撮像工程と、前記距離データと前記接地面画像データを合成して合成画像データを生成する距離画像合成工程と、前記合成画像データのうち前記接地面の前記溝部の領域からひび割れを検出するために抽出された評価領域を2値化処理して2値化接地面画像データを生成する2値化処理工程と、前記2値化接地面画像データのうち白画像データ領域又は黒画像データ領域の面積を演算して第1の面積データを生成する面積演算工程と、前記白画像データ領域又は黒画像データ領域の第1の面積データを、劣化を評価するために予め定められた第1の評価閾値データで評価して第1の評価ランクデータを生成する評価工程と、前記第1の面積データ及び/又は前記第1の評価ランクデータを出力する出力工程と、を有するものである。
上記構成のタイヤ劣化評価方法は、請求項2に記載の発明を方法発明として捉えたものであるので、その作用は請求項2に記載の発明と同様である。
【0015】
そして、請求項7に記載の発明であるタイヤ劣化評価方法は、請求項6に記載のタイヤ劣化評価方法において、被評価対象のタイヤを保持するタイヤ保持工程と、前記タイヤの接地面の変位を測定可能な位置あるいは前記接地面を撮影可能な位置に前記タイヤを移動及び姿勢制御する制御工程を前工程として有することを特徴とするものである。
上記構成のタイヤ劣化評価方法は、請求項3に記載される発明のうち請求項2を引用する発明を方法発明として捉えたものであるので、その作用は請求項3に記載の発明のうち請求項2を引用する発明と同様である。
【0016】
請求項8に記載の発明であるタイヤ劣化評価プログラムは、コンピュータによって、タイヤ劣化評価のために実行されるプログラムであって、タイヤの接地面の変位を測定して前記接地面の山部と溝部の判別を可能とする距離データを生成する変位測定工程と、前記接地面を撮影して接地面画像データを生成する撮像工程と、前記距離データと前記接地面画像データを合成して合成画像データを生成する距離画像合成工程と、前記合成画像データのうち前記接地面の前記溝部の領域からひび割れを検出するために抽出された評価領域を2値化処理して2値化接地面画像データを生成する2値化処理工程と、前記2値化接地面画像データのうち白画像データ領域又は黒画像データ領域の面積を演算して第1の面積データを生成する面積演算工程と、前記白画像データ領域又は黒画像データ領域の第1の面積データを、劣化を評価するために予め定められた第1の評価閾値データで評価して第1の評価ランクデータを生成する評価工程と、前記第1の面積データ及び/又は前記第1の評価ランクデータを出力する出力工程と、を実行させるものである。
上記構成のタイヤ劣化評価プログラムでは、請求項6に記載したタイヤ劣化評価方法をプログラム発明として捉えた発明であるので、その作用は請求項6に記載される発明の作用と同様である。
【0017】
請求項9に記載の発明であるタイヤ劣化評価プログラムは、請求項8記載のタイヤ劣化評価プログラムおいて、被評価対象のタイヤを保持するタイヤ保持工程と、前記タイヤの接地面の変位を測定可能な位置あるいは前記接地面を撮影可能な位置に前記タイヤを移動及び姿勢制御する制御工程を前工程として実行させることを特徴とするものである。
上記構成のタイヤ劣化評価プログラムは、請求項7に記載したタイヤ劣化評価方法をプログラム発明として捉えた発明であるので、その作用は請求項7に記載される発明の作用と同様である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1に記載のタイヤ劣化評価装置では、タイヤの接地面の溝部に発生しているひび割れを測定可能であるため、タイヤゴムの摩耗によらない経年劣化を定量的に評価することが可能である。また、変位測定部によって接地面の変位を測定して距離データを得ながら、撮像部で接地面画像データを得て、距離データと合成するので、接地面の溝部を検出可能であり、溝部に発生するひび割れを精度良く測定することができる。
さらに、溝部の領域で評価領域を予め定めてひび割れの面積を測定しているので、2値化処理で得られた白画像データあるいは黒画像データのいずれかの領域の面積を演算すれば、全体の割合を求めることも可能である。
【0019】
本発明の請求項2に記載のタイヤ劣化評価装置では、請求項1に記載の発明の効果に加えて、評価ランクデータが生成されるため、タイヤの劣化に対する評価をランク付けすることが可能であり、ランクに分別することが可能である。このようにランクに分別可能であれば、タイヤの劣化状態に応じてタイヤをランク分けすることができ、中古タイヤの流通市場における価格の目安として利用価値が高くなるという効果が期待できる。さらに、評価ランクのための第1の評価閾値データの細分化の程度によってランクの分別度合いも変化させることができ、市場における価格の他、タイヤ交換の目安などのメンテナンスの指標としても利用価値が高くなるという効果がある。従って、タイヤの安全性や経済性を高めることが可能である。
【0020】
本発明の請求項3記載のタイヤ劣化評価システムでは、請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加えて、タイヤを保持して移動、姿勢制御するタイヤ保持部や駆動部、制御部を備えることで、多数のタイヤの劣化評価を自動で連続的に行うことができる。
また、姿勢制御可能であるので、タイヤ劣化の評価のためのひび割れの測定についても常に一定のタイヤの位置で実施することが可能であり、評価の質のバラツキを抑制することができ、従って、劣化評価の精度を高めることが可能である。
【0021】
本発明の請求項4に記載のタイヤ劣化評価システムにおいても、請求項3に記載の発明と同様の効果を発揮することが可能である。
さらに、タイヤの接地面画像データに加えて側面画像データを用いてひび割れの面積を演算可能であるので、タイヤ全体に亘ってより精度の高いタイヤ劣化評価を実施することが可能である。タイヤの側面も接地面における溝部と同様にタイヤの使用時に接地しないものの、ひび割れはタイヤの内圧が高い状態でないと撮影できないことも多く、しかも側面は縁石などで傷が付く可能性もあって、画像処理によるひび割れの測定、演算という観点から精度的には必ずしも高いとは言えない可能性もあるが、タイヤ接地面とは異なる部位でのひび割れの測定となるので、タイヤ劣化評価全体としての精度の向上に資する可能性がある。
【0022】
本発明の請求項5に記載のタイヤ劣化評価システムにおいても請求項3や請求項4の発明と同様の効果を発揮することができる。
さらに、請求項4に記載の発明と同様にタイヤの側面をも撮影して側面画像データと第2の面積データを得て、評価部ではタイヤの接地面の溝部における第1の面積データを用いて得られる第1の評価ランクデータと第2の面積データを用いて得られる第2の評価ランクデータの両方を示すことが可能である。従って、請求項4と同様にタイヤの劣化評価全体としての精度を向上させることが可能である。
【0023】
本発明の請求項6に記載のタイヤ劣化評価方法は、請求項2に記載の発明を方法発明として捉えたものであるので、その効果は請求項2に記載の発明の効果と同様である。
【0024】
本発明の請求項7に記載のタイヤ劣化評価方法は、請求項3に記載される発明のうち請求項2を引用する発明を方法発明として捉えたものであるので、その効果は請求項3に記載の発明のうち請求項2を引用する発明の効果と同様である。
【0025】
本発明の請求項8に記載のタイヤ劣化評価プログラムでは、請求項6に記載したタイヤ劣化評価方法をプログラム発明として捉えた発明であるので、その効果は請求項6に記載される発明の効果と同様である。
【0026】
本発明の請求項9記載のタイヤ劣化評価プログラムは、請求項7に記載したタイヤ劣化評価方法をプログラム発明として捉えた発明であるので、その効果は請求項7に記載される発明の効果と同様である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明の第1の実施の形態に係るタイヤ劣化評価装置について
図1乃至
図4を参照しながら説明する。(特に、請求項1、請求項2、請求項6、請求項8に記載の発明に対応)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るタイヤ劣化評価装置のブロック図である。
図2は本発明の第1の実施の形態に係るタイヤ劣化評価装置によって実行されるタイヤ劣化評価のフロー図である。本図は、本願発明のタイヤ劣化評価方法およびコンピュータを用いて実行するプログラムに対してはその実行工程を表すものでもあり、この図を参照しながらタイヤ劣化評価装置1におけるデータ処理の流れを説明することはタイヤ劣化評価方法およびプログラムの実施の形態について説明することと同義である。なお、
図2において、工程に関する記載を覆うようにして破線で示しているのは
図1に示されるタイヤ劣化評価装置1の構成要素であり、符号を同一としている。
また、
図3は本発明の第1の実施の形態に係るタイヤ劣化評価装置によって得られる距離データと画像データの合成、評価領域の抽出、2値化処理の実行を説明するための概念図である。
図4の(a)は本発明の第1の実施の形態に係る
タイヤ劣化評価装置によって得られる画像データの概念図、(b)はその画像データの中で評価領域を説明するための概念図、(c)は評価領域で2値化処理された2値化画像データの概念図である。
図1において、タイヤ劣化評価装置1は、変位測定部4、撮像部5、処理部3、出力部2及びデータベース群として、処理データベース6と評価データベース7から構成されている。このタイヤ劣化評価装置1は、これらの構成要素を一体にして評価者が手に取って中古タイヤの接地面の表面に近づけることで評価可能な携帯型の装置を想定することができる。あるいは一体でなくとも変位測定部4と撮像部5をセンサとして分離して別体に設けて、有線又は無線でデータを処理部3に送信する場合のような装置としても可能である。
【0029】
以下、
図2乃至
図4も参照しながら説明する。
タイヤ劣化評価装置1の変位測定部4は、タイヤのいわゆるトレッドパターンが形成されている接地面に対して垂直に配置され、接地面に形成されるトレッドパターンの山部と溝部を判別可能にその凹凸を計測するものである。具体的には、変位測定部4との間の距離データとして測定される。従って、山部と溝部のそれぞれの距離データの差分を取れば、山部に対する溝部の深さ、あるいは溝部に対する山部の高さを得ることが可能である。すなわち、いわゆる残溝を得ることができる。変位測定部4として用いられるセンサとしては、レーザー光や赤外線等の電磁波や超音波を放射しその反射波を検知して測距するセンサを用いることが可能である。また、変位測定部4はタイヤの接地面を走査するように構成されればタイヤの幅に亘ってトレッドパターンの山部と溝部の判別を可能とする距離測定を行うことができる。この変位測定部4を用いてタイヤの接地面上における変位を測定するのがステップS1の変位測定工程である。
【0030】
本実施の形態において、タイヤ接地面の変位測定を行うのは、残っている溝の深さ(残溝)を定量的に測定することはもちろんであるが、タイヤの接地面にあるトレッドパターンの溝部において、ひび割れや亀裂の測定を行うためである。このように溝部を選択して測定を行う理由について説明する。本願発明が取り扱う中古タイヤは新品のタイヤとは異なり、接地面が使用によって摩耗が進行している。従って、経年劣化によるひび割れが生じ難く、その一方で接地面の山部には使用に伴って突発的な傷や欠けが発生することもある。これらの傷や欠けもタイヤの品質に大きく関わるので、その検知はもちろん重要であるが、経年使用自体によるゴム材料の純粋な劣化に伴うひび割れや亀裂を検知しようとすると誤差を生じ易く、経年劣化評価に対する高い精度を担保することが困難である。
そこで、通常の使用をしても地面に接することのない接地面の溝部に発生するひび割れや亀裂に着目して、その溝部に発生するひび割れや亀裂で経年劣化を評価することにしたのである。
その溝部を正確に選択可能とするためにはトレッドパターンの山部と溝部を判別可能に変位を測定する必要があるのである。
【0031】
撮像部5は、タイヤ接地面をトレッドパターンを含めて撮影するものであり、既に周知なCCDセンサやCMOSセンサを用いることが可能である。この撮像部5も走査させる機能を持たせてもよいが、撮像素子は平面的に画像を取り込むことが可能であるので走査させる機能は必要ない場合が多い。この撮像部5を用いてタイヤの接地面を撮影するのが、ステップS3の被測定対象撮像工程である。
処理部3の測距演算部8は、変位測定部4で得られるアナログデータをA/D変換しながら、距離データ15を生成し、読み出し可能に処理データベース6に格納するものであり、その工程がステップS2の測距演算工程である。距離データ15の具体的なイメージとしては、
図3に表現される5層のデータのうち、最も上層に示されるものである。距離データ15には、タイヤ山部61とタイヤ溝部60がその境界部62を挟んで判別可能な距離データが含まれている。また、タイヤ山部61とタイヤ溝部60の距離との差分としての残った溝の深さ(残溝)に関するデータも含まれる。なお、タイヤ山部61におけるハッチングはタイヤ溝部60に比較して高い領域を便宜的に表現するものである。
本実施の形態では、変位測定部4と測距演算部8を別に設けたが、これを一体として両方の機能を備えた変位測定部4としてもよい。その場合には、ステップS1とステップS2を併せて変位測定工程とすればよい。
画像処理部9は、撮像部5で得られるアナログデータをA/D変換しながら、画像データ16を生成し、読み出し可能に処理データベース6に格納するものであり、その工程がステップS4の画像処理工程である。画像データ16の具体的なイメージとしては同様に
図3に上から2番目の層として符号16で示されるとおりである。この画像データ16によれば、タイヤ山部61は走行中に路面に接地するため、傷63や欠け65が生じている。これに対して走行中にも路面に接地しないタイヤ溝部60には純粋な経年劣化の結果としてのひび割れ64が発生している。
実際の中古タイヤの表面は
図4(a)に示されるとおりである。この写真では見え難いかもしれないが、中央に水平に形成される溝部にひび割れが生じている。しかしながら、タイヤの山部においては摩擦によってひび割れや亀裂が発生していないように見えると同時に、路面との接地によって生じた細かな傷等が観察できる。
画像処理部9も同様に撮像部5と一体にして両方の機能を備えた撮像部5としてもよい。その場合にはステップS3とステップS4を併せて被測定対象撮像工程としてもよい。また、ステップS1,2とステップS3,4はこの順序で実行されなくともよく、ステップS3,4を実行し、その後にステップS1,2を実行してもよい。
さらに、本実施の形態では距離データ15と画像データ16を変位測定部4と撮像部5という別個のセンサを用いて得たが、前述のとおり、これらの2つの機能を兼ね備えた距離画像センサ等を設けて、1つのセンサから距離データ15と画像データ16のデータを取得するようにしてもよい。
【0032】
処理部3の距離画像合成部10は、測距演算部8で得られる距離データ15と画像処理部9で得られる画像データ16を合成し合成画像データ17を生成して、読み出し可能に処理データベース6に格納するものであり、その工程がステップS5の距離画像合成工程である。合成画像データ17の具体的なイメージは
図3の中央の層に符号17で示されるとおりである。この合成画像データ17では、距離データ15に含まれる情報と画像データ16に含まれる情報が重畳して存在している。距離データ15と画像データ16の合成は、例えば予め変位測定部4と撮像部5で計測、撮影される領域を同等に定めておくことで、それらを単純に合成するような方法や共通のマーカ等を持たせてそれを一致させることで位置決めを行って合成する方法や両方のデータを処理して、共通箇所を抽出しそれを一致させるようにして合成する方法などいずれの方法でもよい。また、一般的に既に知られた画像合成手法を用いてもよい。
なお、距離画像センサを用いる場合には、この距離画像合成部10は、その機能がその距離画像センサに予め備えられているので設ける必要はなく、ステップS1からステップS5まで併せて1つの工程として捉えることが可能である。
【0033】
評価領域抽出部11は、合成画像データ17の中から接地面の溝部を選択して、その溝部において評価領域を抽出して決定するものであり、その工程がステップS6の評価領域抽出工程である。合成画像データ17には、接地面に関する画像データ16とその接地面における高低に関する距離データ15が含まれているので、その中から低い距離データ15の箇所を接地面の溝部として選択して、その溝部において評価領域を抽出することが可能である。
溝部を選択して評価領域を抽出した状態を概念的に示すのが
図3の上から4層目の合成画像データ17上の評価領域66である。この評価領域66は予めその評価領域抽出部11にデータとして格納しておき、その評価領域66の広さが収容可能なタイヤ溝部60を検索して定められるとよい。あるいはタイヤ溝部60内において、境界部62にかからないように最大に広げるように変更されるようにしておいてもよい。本実施の形態においては評価領域66は矩形に示されているが、その形状は矩形に限らず円形、楕円形、他の多角形いずれの形状でもよい。
また、この評価領域66が画像内で示される領域における面積については距離データ15等を用いて演算されてもよい。この評価領域66の面積を演算することで、評価領域66内の画像データ16を2値化する際に、黒画像データと白画像データのいずれかの面積を演算して、この評価領域66の面積から減することで、他方の画像データの面積を得ることができる。また、いずれかの面積を演算した後に、評価領域66に対する割合を演算することも可能である。
図4(b)は、画像データ16上ではあるが、評価領域66を概念的に示すものである。
【0034】
2値化処理部12は、合成画像データ17において溝部において抽出された評価領域内の画像データ16を、予め定めた閾値によって白黒の2階調に変換する2値化処理を実施して2値化画像データ18を生成し、読み出し可能に処理データベース6に格納するものであり、この工程が、ステップS7の2値化処理工程である。2値化画像データ18の具体的なイメージは、
図3の最下層に符号18で示す2値化画像データ18である。評価領域66の内部のみ2値化処理されており、その内部に存在していたひび割れ64が2値化ひび割れ67となって示されている。本実施の形態では、タイヤ溝部60に存在するひび割れ64を周囲よりも濃い黒状態として表現して、2値化処理しているが、周囲よりも薄い黒状態の場合には、ひび割れは2値化後に白画像データとして得られる可能性もある。また、本実施の形態では画像処理の段階で反転させることなく2値化処理を実施しているが、その前の段階で白黒反転させて2値化処理を行ってもよい。
図4(c)は
図4(b)で抽出された評価領域66における画像データを2値化処理したものである。また、この写真は白黒反転させてから2値化処理したものである。従って、白く見える部分(白画像データ領域)が2値化ひび割れ67の領域となる。
【0035】
さらに、面積演算部13は、2値化画像データ18のうち、黒画像データと白画像データの一方又は両方の面積を演算して面積データ19を生成し、読み出し可能に処理データベース6に格納するものであり、この工程がステップS8の面積演算工程である。この面積データ19は、予め評価領域の面積を面積演算部13自体がデータとして備えている場合には、黒画像データと白画像データのうち一方を演算することで、評価領域の面積との差分で他方を演算することが可能である。また、面積演算部13は黒画像データの領域と白画像データの領域の互いに対する面積比や評価領域66に対する面積比等の演算も可能である。
評価部14は、予め評価データベース7に格納されている評価閾値データ20を読み出して、面積演算部13で得られた面積データ19を評価して評価ランクデータ21を生成して読み出し可能に評価データベース7に格納するものであり、その工程がステップS9の評価工程である。評価閾値データ20は、面積データ19の大きさによる閾値とランクが対応付けられたデータであり、評価部14はその評価閾値データ20と面積データ19を比較することでランク付けが可能となっている。
評価部14によって示されるランク付けは、タイヤの劣化状態に応じてタイヤをランクに分別することができ、指標として理解が容易であるという効果を発揮する。従って、例えば中古タイヤの流通市場における価格の目安としての利用価値やタイヤ交換の目安としての利用価値が高くなり、中古タイヤの安全性や経済性を高めることが可能である。評価閾値データ20におけるそれぞれの閾値の間隔を広げたり狭めたりすることでランクを大雑把にも詳細にも変更することができるので、用途に応じたランク付けが可能である。なお、ランクはA、B等のアルファベット、甲、乙、適、否等の漢字、1、2等の数字のいずれでもよい。
【0036】
出力部2は、処理部3に含まれる各部で実行されたそれぞれの処理内容の結果を直接出力データ22として出力したり、各データベースからデータを読み出して出力データ22として外部へ出力するものであり、その工程がステップS10の出力工程である。出力部2の具体例としては、CRT、液晶、プラズマあるいは有機ELなどによるディスプレイ装置、あるいはプリンタ装置などの出力装置、さらには外部装置への伝送を行うためのトランスミッタなどの発信装置などが考えられる。もちろん、外部装置への伝送のための出力に対するインターフェースのようなものであってもよい。
処理データベース6は、処理部3によって処理された距離データ15、画像データ16、合成画像データ17、2値化画像データ18及び面積データ19を読み出し可能に格納するデータベースである。
評価データベース7は、評価部14によるタイヤ劣化評価に用いる評価閾値データ20と評価後の評価ランクデータ21を読み出し可能に格納するデータベースである。
以上説明したとおり、本実施の形態に係るタイヤ劣化評価装置1によれば、タイヤの接地面の山部と溝部を判別して、タイヤの使用による摩耗の影響を受けない溝部におけるひび割れや亀裂を測定することが可能である。従って、経年劣化の影響で生じるひび割れや亀裂のみを測定することができ、定量的な劣化評価を実施することができる。さらに、評価部によってランク評価も可能であることは既に述べたとおりである。なお、本実施の形態では発明を装置として捉えたもので説明したが、その装置を用いてデータを処理する工程は方法発明やコンピュータを実行するためのプログラム発明として捉えることができ、その作用や効果については既に述べた装置発明と同様である。また、これから説明する第2の実施の形態に係るシステム発明においても同様である。
【0037】
次に、
図5乃至
図7を参照しながら、本発明の第2の実施の形態に係るタイヤ劣化評価システムについて説明する。(特に、請求項3乃至請求項5、請求項7、請求項9に記載の発明に対応)
第2の実施の形態に係るタイヤ劣化評価システム1aは、第1の実施の形態で示されたタイヤ劣化評価装置1をロボット等も含めたシステムに組み込んだ実施の形態である。
図5は本発明の第2の実施の形態に係るタイヤ劣化評価システムのブロック図であり、
図6は第2の実施の形態に係るタイヤ劣化評価システムの構成概念図である。
図7は本発明の第2の実施の形態に係るタイヤ劣化評価システムによって実行されるタイヤ劣化評価のフロー図である。本
図7も本願発明のタイヤ劣化評価方法およびコンピュータを用いて実行するプログラムに対してはその実行工程を表すものでもあり、この図を参照しながらタイヤ劣化評価システム1aにおけるデータ処理の流れを説明することはタイヤ劣化評価方法およびプログラムの実施の形態について説明することと同義である。
図5及び
図6において、タイヤ劣化評価システム1aによって測定されるタイヤ40は、タイヤ保持部41、駆動部42及び制御部43を備えるタイヤ掴みロボット50に対して用いられる。本実施の形態では、このタイヤ掴みロボット50をタイヤ劣化評価システム1aには含めない構成としているが、これらを含めた構成としてもよいことは言うまでもない。
【0038】
以下、
図7も参照しながら説明する。
タイヤ劣化評価システム1aでは、入力部30を備えており、タイヤ製造データ32やタイヤ仕様データ33等のタイヤ情報を入力データ37として読み出し可能に入力データベース31に対して入力するが、その工程がステップS1のタイヤ情報入力工程である。なお、タイヤ製造データ32とは、タイヤメーカや製造年月日、タイヤ商品名等のデータを意味し、そのタイヤの製造や製造元に関するデータを指す。タイヤ仕様データ33とは、タイヤの寸法や扁平率、タイヤ形式(用途)等のデータを意味し、そのタイヤの仕様に関するデータを指す。
入力部30の具体例としては、キーボード、マウス、ペンタブレット、光学式の読取装置あるいはコンピュータ等の解析装置や計測機器等から通信回線を介してデータを受信する受信装置など単独あるいは複数種類の装置からなり目的に応じた使い分けが可能な装置が考えられる。また、タイヤ劣化評価システム1aへの入力に対するインターフェースのようなものであってもよい。
また、タイヤ40は予めタイヤラック54に並べられており、センサ支柱57によって支持される側面撮像部5bによってその側面の画像を撮影するが、その工程がステップS2である。
【0039】
次に、タイヤラック54に並べられているタイヤ40に対してタイヤ保持部41が駆動部42や制御部43の作用によって接近して、このタイヤ40を固定するが、この工程がステップS3のタイヤ固定工程である。本実施の形態においては、
図6に示されるように、タイヤ掴みロボット50は、タイヤ40のホイール44をタイヤ保持部41によって保持する支持シャフト53を端部に備えており、タイヤ40を固定することができる。
さらに、駆動部42や制御部43によってアーム51や関節52を動作させながら、センサ支柱55に設置される接地面撮像部5aやセンサ支柱55から延設された梁56によって支持される変位測定部4によってタイヤ40の接地面の測定が可能なように姿勢も制御する。この工程がステップS4のタイヤ移動・姿勢制御工程である。
なお、タイヤ劣化評価システム1aでは、変位測定部4に加えて、撮像部が接地面撮像部5aと側面撮像部5bに分けられているが、いずれもセンサ支柱55やセンサ支柱57に固定されるものであり、被測定・評価対象であるタイヤ40を移動させたり、姿勢制御することでひび割れの測定や評価を行う。また、これらを構成するセンサは既に述べた撮像部5のセンサと同様である。
従って、
図7ではステップS4としてタイヤ移動・姿勢制御工程を示しているが、その後のステップS5,6やステップS7,8の工程の前段階においてもそれぞれこのステップS4と同様の工程が存在している。
また、ステップS4以降のステップS5乃至ステップS14においては、タイヤ劣化評価装置1と比較して、タイヤ劣化評価システム1aに特有の工程及び構成要素について説明し、その他の工程や構成要素については同様であることから省略する。
【0040】
ステップS5の変位測定部4による変位測定は、タイヤ40の接地面の他、側面(サイドウォール部)においても測定するとよい。すなわち、処理データベース6における距離データ15には、タイヤ接地面とタイヤ側面に対する距離データの両方が含まれる。接地面ではトレッドパターンによる凹凸が生じているが、タイヤ40の側面においてもタイヤの仕様やメーカ名やブランド名等が凸状に形成されていると共に、ホイールとタイヤの境界部、具体的にはホイールの最外周のフランジの縁部分も判別可能である。従って、接地面の溝部のみならず、同様に路面に接触しない側面であって、仕様や何らかも文字等あるいはホイールとの境界部ではない平面部を判別可能であり、その部分におけるひび割れや亀裂等も測定することが可能となる。
さらに、タイヤ劣化評価システム1aにおいては、接地面撮像部5aとして側面撮像部5bとは別個に接地面を独立して撮影するセンサを備えている。なお、画像処理部9は、ステップS8として接地面撮像部5aのみならず、側面撮像部5bによって撮影された画像においても同様に独立に処理を行う。処理の内容はタイヤ劣化評価装置1における画像処理部9と同様である。従って、処理データベース6にはタイヤ接地面とタイヤ側面に対する画像データの両方が別個独立に含まれる。
また、ステップS9における距離画像合成部10による距離画像合成においても同様にタイヤ接地面とタイヤ側面における距離データ15と画像データ16の合成処理を独立に行う。処理の内容はタイヤ劣化評価装置1における距離画像合成部10と同様である。従って、処理データベース6にはタイヤ接地面とタイヤ側面に対する合成画像データの両方が独立に含まれる。
以下の評価領域抽出部11によるステップS10の評価領域抽出工程、2値化処理部12によるステップS11の2値化処理工程、面積演算部13によるステップS12の面積演算工程、評価部14によるステップS13の評価工程、さらに出力部2によるステップS14の出力工程も同様である。従って、タイヤ接地面に関するデータや評価のみ出力することも可能であるし、タイヤ側面に関するデータや評価のみ出力することも可能であるし、いずれも出力することも可能である。
なお、本実施の形態では、変位測定部4による変位測定や接地面撮像部5a及び側面撮像部5bを用いた撮影時には、前述のとおり、それぞれ駆動部42及び制御部43によるステップS4のタイヤ移動・姿勢制御工程が実行されるので、測定や撮影範囲を特定の範囲とすることが可能である。従って、距離画像合成部10による合成画像データ17の生成については予め制御しておくことで、距離データ15や画像データ16をソフトウェアによる処理ではなく、ハードウェアによって合成のための位置決めも可能である。
また、評価部14による評価工程に用いられる評価閾値データ20は、タイヤ接地面における面積データ19に基づく評価とタイヤ側面における面積データ19に基づく評価を独立に実施可能とすべく異なるデータを用いてもよい。また、タイヤ接地面に対する評価ランクとタイヤ側面に対する評価ランクを例えば10段階の数字として、その平均値を求めてタイヤ接地面とタイヤ側面の評価を併せて総合的な評価ランクとするようにしてもよい。
【0041】
さらに、本実施の形態においては、タイヤ側面においても接地面と同様に変位を測定したが、タイヤ側面の凹凸は接地面の凹凸に比較すると小さいので、距離データの精度が担保できない場合も考えられる。その場合にはタイヤ側面については変位測定部4を用いることなく、接地面のみタイヤ劣化評価装置1と同様に測定、評価する。側面については変位を測定することなく、側面撮像部5bによって画像データのみ取得し、評価領域66を抽出してその領域内で2値化処理及び面積演算を行い劣化を評価するとよい。また、特にタイヤ側面におけるひび割れの測定ではタイヤの内圧を高めることでよりひび割れを強調して測定することができるのでタイヤの内圧についても測定時に条件を定めておくなど必要がある。
また、タイヤ側面の画像データに対する評価領域66の抽出方法として、側面撮像部5bによって撮影された側面の画像データ16のみから例えば評価データベース7に予め境界データ35を格納しておき、これとの比較でホイールや文字等の領域との判別を行い、境界データ35に含まれない領域で評価領域66を抽出するようにしてもよい。すなわち、評価領域抽出部11が側面の画像データ16を境界データ35を用いて画像処理しながら評価領域66を抽出する方法がある。
【0042】
次に、タイヤ劣化評価システム1aの評価部14における評価の変形例について説明する。既に説明したとおり、本実施の形態においては入力部30を介してタイヤ製造データ32を入力しているので、タイヤ劣化評価システム1aでは、処理部3に計時部34を設けており、計時部34は測定・評価を実施している時を認識しているので、タイヤ製造データ32に含まれる製造時期の差分を取り、タイヤの使用期間が演算可能である。従って、それを経年劣化データ36として生成して読み出し可能に評価データベース7に格納し、評価部14は、これを単なる時間経過に伴う経年劣化として評価に取り入れることが可能である。また、評価データベース7に格納される評価閾値データ20として、この時間経過に伴う経年劣化に対する閾値を含めることで、この経年劣化についてもランク付けを行うことが可能である。
なお、タイヤ劣化評価システム1aにおいては、タイヤ接地面とタイヤ側面の両方のひび割れの面積及び製造日からの使用期間に関するデータが得られるので、これらをそれぞれ独立に示して定量的な評価に供することも可能であるし、例えばタイヤ接地面と側面のひび割れの面積については、前述のように平均値を取ったりあるいは重み付けのための係数との乗算を評価部14が実行することで、接地面と側面を独立別個に劣化評価することも可能であるし、接地面と側面の双方を加味した総合的な劣化評価とすることも可能である。さらに、これに単純な時間に係る経年劣化を加味してから総合評価としてもよい。
次に、実際に測定された場合の出力部2による出力例を表1に示し、それをランク付け評価した結果を表2に示す。
【0045】
表1において、タイヤ幅、扁平率、リム径はタイヤ仕様データ33から得られるものであり、溝深さは変位測定部4による接地面の溝部の測定に基くものであり、溝幅は変位測定部4あるいは撮像部5(接地面撮像部5a)による接地面の溝部の測定に基くものである。また、溝部のひび割れ測定面積や黒面積、白面積は面積演算部13によって得られるものであり、溝部ひび割れ面積比も溝部・ひび割れ測定面積に対する黒面積(ひび割れ領域の面積)の比として面積演算部13によって演算されたものである。
さらに、製造年(年)はタイヤ製造データ32に含まれるデータであり、計時部34によって得られる現在年(年)との差分を取って、経年劣化(単純時間による)をして4年を表示している。もちろん、この経年劣化については製造年が詳細なデータとして得られれば、現在時は年月日で得られるので詳細に表示させることが可能である。
次に、表2において、溝深さは表1において5.3mmと十分であったので評価ランクとして「S」が表示され、溝部・ひび割れ面積比は28.5%として十分であったことから「A」ランク、同様にサイド部・ひび割れ面積比も30.0%として十分であったことから「A」ランクとなっている。さらに、単純な時間経過に対する経年劣化は4年であることから評価は少し下がり「B」ランクとなっている。これらを総合した評価としては「A」ランクが付されている。この総合評価時は、それぞれの評価に対して重み付けのための係数を設定して総合的に判断してもよいし、それぞれの評価のランクに点数を付して、合計点や平均点で総合評価に対する閾値を設定してもよい。
これらの表に示したデータや評価はタイヤ1本毎に実施されているので、車単位での表とすればタイヤ4本分で4列データや評価となるし、あるいは4本のデータの平均をとって全体の評価としてもよい。
【0046】
以上説明したとおり、タイヤ劣化評価システム1aにおいては、タイヤ掴みロボット50と相まって、多数のタイヤを自動的に連続的に測定、評価することができる。さらに、タイヤ接地面のみならずタイヤ側面における溝部(平面部)においてひび割れや亀裂の評価を行うことで、タイヤ接地面のみの場合よりも精度を向上させる可能性を高めることができる。