(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
細胞操作チャンバ内に形成される清浄操作空間において処理された細胞が入れられた培養容器が載置され、培養室側に設けられた培養棚まで前記培養容器を搬送する搬送装置へ受け渡される培養容器搬送トレイであって、
細胞が入れられる培養容器が載置される載置面と位置決め穴とを有する本体部と、
を備えている培養容器搬送トレイと、
前記位置決め穴に挿入される位置決めピンを有する培養棚と、
を備えた細胞培養装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の培養容器用アダプタでは、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示された培養容器用アダプタでは、ロボット等の自動機による搬送が行われる前に、処置室に設けられたグローブに手を入れた状態で細胞が入れられた容器に前処理を行った後、搬送装置側の所定の位置へ処置者の手によって、培養容器を受け渡す必要がある。
【0005】
しかし、処置者がグローブを介して手によって搬送装置の所定の位置に正確に培養容器を載置することは困難である。仮に、所定の位置からずれた位置へ載置された場合には、培養容器内に入れられた細胞を含む液体が容器外へこぼれたり波立ったり、搬送ロボットが搬送に失敗する等の不具合が生じるおそれがある。
本発明の課題は、細胞が入れられた培養容器を細胞操作チャンバ側からインキュベータ側へ搬送する搬送装置に対して、精度よく所定の位置へ載置することが可能な培養容器搬送トレイおよびこれを備えた細胞培養装置、搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る培養容器搬送トレイは、細胞操作チャンバ内に形成された清浄操作空間において処理された細胞が入れられた培養容器が載置され、培養室側に設けられた培養棚まで培養容器を搬送する搬送装置へ受け渡される培養容器搬送トレイであって、本体部と、係止部と、を備えている。本体部は、細胞が入れられる培養容器が載置される載置面を有する。係止部は、搬送装置側に設けられた溝部に係止される。
【0007】
ここでは、処置者がグローブ等を介して各種処理を行う清浄操作空間を有する細胞操作チャンバと、細胞の培養空間を有する培養室(インキュベータ)とを備えた細胞培養システムにおいて用いられるとともに、細胞操作チャンバにおいて処理が行われた細胞が入れられた培養容器を搬送するための培養容器搬送トレイに、位置決め用の係止部を設けている。
【0008】
ここで、処置者が前処理を行う清浄操作空間を有する細胞操作チャンバには、アイソレータ、バイオハザードキャビネット等が含まれる。上記清浄操作空間には、滅菌または除染された空間や、清浄度の高いクリーンルーム等が含まれる。また、上記培養容器には、例えば、シャーレ等の容器が含まれる。
これにより、細胞操作チャンバの下流側に配置された搬送装置の所定の位置に、人の手によって培養容器搬送トレイを載せる際には、搬送装置側の溝部へ係止部を係止させるように置くことで、容易に、搬送装置側における培養容器搬送トレイの位置決めを行うことができる。
【0009】
この結果、細胞が入れられた培養容器を細胞操作チャンバ側からインキュベータ側へ搬送する搬送装置に対して、精度よく所定の位置へ載置することで、培養容器内に入れられた細胞を含む液体が容器外へこぼれたり波立ったりする等の不具合の発生を防止することができる。
第2の発明に係る培養容器搬送トレイは、第1の発明に係る培養容器搬送トレイであって、培養室側に設けられたロボットハンドによって把持される把持部を、さらに備えている。
【0010】
ここでは、培養室(インキュベータ)側に設けられたロボットハンド(自動搬送装置)によって把持される把持部を設けている。
ここで、上記把持部は、ロボットハンドによるハンドリングがしやすいように、例えば、本体部の端部に設けられていればよい。
これにより、ロボットハンドは、搬送装置側に設けられた溝部に係止部が係止された状態で所定の位置に精度よく載置された培養容器搬送トレイを、容易に把持することができる。
【0011】
第3の発明に係る培養容器搬送トレイは、第2の発明に係る培養容器搬送トレイであって、係止部は、把持部の近傍に設けられている。
ここでは、位置決め用の係止部を、ロボットハンドによって把持される把持部の近傍に設けている。
これにより、ロボットハンドは、位置決め用に設けられた係止部の近傍を把持して搬送することができるため、位置決め用の係止部によって正確な位置に載置された培養容器搬送トレイをより正確に把持することができる。また、係止部を把持側に設けることで、搬送装置側の溝部に係止部が正確に係止されているか否かを視認することができる。
【0012】
第4の発明に係る培養容器搬送トレイは、第1から第3の発明のいずれか1つに係る培養容器搬送トレイであって、本体部は、培養棚に設けられた位置決めピンが挿入される位置決め穴を有している。
ここでは、培養棚に設けられた位置決めピンが挿入される位置決め穴を設けている。
これにより、培養容器搬送トレイを培養棚に載置する際には、位置決めピンが挿入される位置決め穴によって位置決めを行うことで、より正確に培養棚の所定の位置へ培養容器搬送トレイを載置することができる。
【0013】
第5の発明に係る培養容器搬送トレイは、第4の発明に係る培養容器搬送トレイであって、培養室側に設けられたロボットハンドによって把持される把持部を、さらに備えている。位置決め穴は、把持部の近傍に配置されている。
ここでは、培養棚に設けられた位置決めピンが挿入される位置決め穴を、上述した把持部の近傍に設けている。
【0014】
これにより、ロボットハンドは、位置決め用に設けられた位置決めピンの近傍を把持して搬送し、培養棚に載置することができると共に、位置決めピンによって正確な位置に載置された培養容器搬送トレイをより正確に把持することができる。
第6の発明に係る培養容器搬送トレイは、第1から第5の発明のいずれか1つに係る培養容器搬送トレイであって、本体部上に載置される培養容器の種類ごとに異なる形状が形成された突出部をさらに備えている。
【0015】
ここでは、培養容器搬送トレイが、載置面に載置される培養容器の種類ごとに異なる形状の突出部を有している。
ここで、上記突出部の形状が異なるとは、培養容器の種類によって、突出量が異なる、突出の有無、突出部の間隔、突出部の形状(円弧状、三角形、四角形等)が異なる等、が含まれる。
【0016】
これにより、培養容器搬送トレイに載せられた細胞が入れられた培養容器を、誤って所望の培養棚以外の位置へ搬送されてしまうことを防止することができる。
第7の発明に係る培養容器搬送トレイは、第1から第6の発明のいずれか1つに係る培養容器搬送トレイであって、本体部の載置面上に立設されており、本体部上に載置される培養容器を保持する複数の容器保持用ロッドを、さらに備えている。
【0017】
ここでは、培養容器が載置される載置面に、棒状の容器保持用ロッドを複数設けている。
ここで、上記容器保持用ロッドには、例えば、シャーレ等の平面視において略円形の培養容器の外周面の一部に当接する位置に複数設けられた円柱状の棒状部材等が含まれる。
これにより、載置面上に載置された培養容器が培養容器搬送トレイから落下しないように保持することができる。
【0018】
第8の発明に係る培養容器搬送トレイは、第7の発明に係る培養容器搬送トレイであって、培養容器は、平面視において円形形状を有する。複数の容器保持用ロッドは、本体部における四隅と、本体部に載置された複数の培養容器の間に本体部の中央部寄りにオフセットされた位置と、に配置されている。
ここでは、上記容器保持用ロッドを、本体部の四隅と、平面視において円形の培養容器の間における本体部の中央部寄りにオフセットされた位置と、にそれぞれ配置している。
【0019】
これにより、平面視において円形の培養容器が載置された場合でも、培養容器を側方から挟み込むようにして、培養容器搬送トレイ上において安定して保持することができる。
第9の発明に係る培養容器搬送トレイは、第1から第8の発明のいずれか1つに係る培養容器搬送トレイであって、本体部に載置される培養容器の種類に関する情報を、無線を介して送信する無線タグが取り付けられる無線タグ取付部を、さらに備えている。
【0020】
ここでは、培養容器搬送トレイに、培養容器の種類に関する情報を送信する無線タグを取り付けるための無線タグ取付部を設けている。
これにより、培養容器搬送トレイ上に載置された培養容器の種類を正確に管理して、培養空間における所望の棚に確実に培養容器を搬送することができる。
第10の発明に係る培養容器搬送トレイは、第9の発明に係る培養容器搬送トレイであって、無線タグ取付部は、通信障害防止用の切欠き部を有している。
【0021】
ここでは、無線タグ取付部の少なくとも一部に、無線タグによる通信を妨害する要因となる金属フレーム等の一部を切り欠いた切欠き部を設けている。
これにより、無線タグによる通信を確実に行うことで、培養空間における所望の棚に確実に培養容器を搬送することができる。
第11の発明に係る搬送装置は、第1から第10の発明のいずれか1つに係る培養容器搬送トレイと、係止部が係止される溝部と、を備えている。
【0022】
ここでは、上述した培養容器搬送トレイを用いて培養容器を所定の位置へ搬送する搬送装置において、培養容器搬送トレイ側の係止部が係止される溝部を設けている。
これにより、搬送装置側における所定の位置に溝部を設けておくだけで、培養容器搬送トレイを所定の位置に精度よく載置することができる。
第12の発明に係る細胞培養装置は、第4または第5の発明に係る培養容器搬送トレイと、位置決め穴に挿入される位置決めピンを有する培養棚と、を備えている。
【0023】
ここでは、上述した培養容器搬送トレイが載置される培養棚を備えた細胞培養装置において、培養容器搬送トレイ側の位置決め穴に挿入される位置決めピンを設けている。
これにより、培養棚における所定の位置に、位置決めピンを立設するだけで、培養容器搬送トレイを所定の位置に精度よく載置することができる。
第13の発明に係る搬送装置は、第6の発明に係る培養容器搬送トレイと、突出部を検出して培養容器の種別を判定する種別検出部と、を備えている。
【0024】
ここでは、培養容器の種類ごとに異なる形状を有する培養容器搬送トレイの突出部を検出する種別検出部を、搬送装置側に設けている。
ここで、種別検出部には、例えば、押圧センサや近接センサ、突出部の形状を読み取る画像処理部等が含まれる。
これにより、培養容器搬送トレイが搬送装置に受け渡された状態で、培養容器搬送トレイの載置面に載せられた培養容器の種類を判別することができる。この結果、培養空間における所望の棚に確実に培養容器を搬送することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る培養容器搬送トレイによれば、細胞が入れられた培養容器を細胞操作チャンバ側からインキュベータ側へ搬送する搬送装置に対して、精度よく所定の位置へ載置することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の一実施形態に係る搬送トレイ(培養容器搬送トレイ)51,52(
図5(a)〜
図6(b)等参照)を用いて細胞が入れられた培養容器11を搬送する連結ボックス(搬送装置)4を備えた細胞培養システム1について、
図1〜
図9(b)を用いて説明すれば以下の通りである。
なお、以下の説明において登場する清浄操作空間には、滅菌または除染された空間や、清浄度の高いクリーンルーム等が含まれる。
【0028】
(細胞培養システム1全体の構成)
本実施形態に係る細胞培養システム1は、清浄操作空間S1内において前処理された細胞の培養を行うシステムであって、
図1に示すように、アイソレータ(細胞操作チャンバ)2と、インキュベータ3と、連結ボックス4と、を備えている。
(アイソレータ2)
アイソレータ2は、細胞操作チャンバの一例であって、
図1に示すように、外気と隔離された清浄操作空間S1を内部に形成している。
【0029】
清浄操作空間S1は、アイソレータ2の上部および下部に設置されたHEPAフィルタを介して流入してきた清浄空気を上から下に循環させることにより、一定レベル以上の清浄度が維持されている。
なお、清浄度は、一般には清浄度グレードと呼ばれる指標で表される。培養細胞の処理に使用されるアイソレータ2内は、グレードAを担保することが必要であると言われている。
(i)グレードA:製品への汚染リスクを高いレベルで防ぐ必要のある作業を行う局所的
な区域である。
(ii)グレードB:製品への汚染リスクを比較的高いレベルで防ぐ必要のある作業を行う多目的な区域である。
(iii)グレードC,D:製品への汚染リスクが比較的高い作業を行う区域である。
【0030】
なお、各グレードの定義については、以下を参照。
独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)
無菌医薬品製造区域の環境モニタリング法(http://www.pmda.go.jp/public/pubcome_201012/file/028-1012.pdf)
アイソレータ2と外部空間の間には、パスボックス20が設けられている。パスボックス20には、開閉扉2aを介して外部から各種物品がアイソレータ2内の清浄操作空間S1の清浄度を保ったまま搬入される。
【0031】
具体的には、パスボックス20には、図示しない内部扉、エアレーションファン、エアレーションフィルタを備えている。そして、内部扉と、開閉扉2aとは同時に開放できない構造になっている。
各種物品をパスボックス20内に搬入する際には、開閉扉2aを開放して各種物品を搬入した後、開閉扉2aを閉鎖すると、エアレーションファンの動作によってエアレーションフィルタを介して清浄空気が流入し、パスボックス20内および各種物品の表面を清浄する。その後、内部扉が開放されて、グローブ22a,22bを介して各種物品がアイソレータ2内に搬入され、内部扉が閉鎖される。
【0032】
なお、開閉扉21は、取っ手21aを有しており、ユーザは取っ手21aを持って開閉扉21を開閉する。
具体的には、アイソレータ2内の清浄操作空間S1では、インキュベータ3において培養される細胞に対する培地への播種、培地交換、継代等の各種処理が行われる。
アイソレータ2の周囲は、グレードCまたはDの清浄度を有している。そして、アイソレータ2の周囲は、人の作業および菌の繁殖を防止するために、概ね20〜25℃、かつ低湿度になる様に管理されている。アイソレータ2内の清浄操作空間S1も、その周囲空間に対しては密閉されているが、ほぼ同一の温度、湿度となる。
【0033】
アイソレータ2内において行われる処理は、予め無菌処理された道具や容器等を用いて行われる。これらの道具、容器等は、上述したように、パスボックス20を経由して清浄操作空間S1の清浄度を保ったままアイソレータ2内へ搬入される。
また、アイソレータ2では、処置者によって細胞の前処理等が実施された後、
図3に示すように、連結ボックス4内に設けられた搬送機構42の所定の位置へ、グローブ22a,22bを介して手渡しで培養容器等が載置された搬送トレイ51,52が載置される。
【0034】
なお、本実施形態では、処置者がグローブ22b等を介して手渡しで培養容器等が載置された搬送トレイ51,52を載置する位置は、
図3に示す搬送機構42の載置台42b上である。培養容器等が載置された搬送トレイ51,52が手渡しされる連結ボックス4内の構成については、後段にて詳述する。
(インキュベータ3)
インキュベータ3は、
図1に示すように、連結ボックス4を介してアイソレータ2から搬送トレイ51,52上に載置された培養容器に入れられた状態で開口部3a(
図2参照)を介して受け取った細胞の培養を行う培養空間S2を内部に形成する。インキュベータ3内の培養空間S2の温度は、例えば、ヒト細胞の場合であれば、細胞の培養を促すために、アイソレータ2内の清浄操作空間S1よりも高い温度(約37℃)であって、かつ高湿度になるように管理されている。
【0035】
また、インキュベータ3は、
図2に示すように、培養棚31a,31bと、搬送機構32と、を備えている。
培養棚31a,31bは、培養容器11,12(
図5(b)、
図6(b)等参照)が保持された搬送トレイ51,52が載置される棚であって、
図2に示すように、正面視において、インキュベータ3の左側面、右側面に沿って複数配置されている。
【0036】
なお、
図2に示す例では、インキュベータ3内の左側面に設けられた培養棚31aに大型の搬送トレイ52が配置され、右側面に設けられた培養棚31bに小型の搬送トレイ51が配置される。
培養棚31aは、
図2に示すように、連結ボックス4側から各種容器等が搬送されてくる開口部3aが形成された側面とは反対側の側面に取り付けられており、鉛直方向に沿って複数設けられている。
【0037】
培養棚31bは、培養棚31aよりも載置面積が小さい棚であって、
図2に示すように、開口部3aが形成された側面における開口部3aの上下に複数設けられている。
培養棚31a,31bは、それぞれ後述する搬送トレイ51,52の位置決め穴51e,51eに挿入される位置決めピン72f,72fを、搬送トレイ51,52が搬入される手前側に有している(
図10(a)および
図10(b)参照)。
【0038】
このように、培養棚31a,31bにおいては、位置決めピン72f,72fだけを用いて搬送トレイ51,52の位置決めを行うことで、構成を簡素化することができる。さらに、培養棚31a,31bの正面に壁部を設けていないため、搬送機構32によって搬送トレイ51,52を搬送する際に、位置決めピン72f.72fの高さ分だけ持ち上げて搬入・搬出を行うことができるため、培養棚31a,31bの上下のクリアランスを必要以上に確保する必要がない。
【0039】
搬送機構32は、例えば、多関節ロボットであって、連結ボックス4側から搬送されてくる培養容器を搬送トレイ51,52ごと受け取って、所望の位置まで搬送する。搬送機構32は、搬送部32a、爪部材32b、取付部32c、ガイドレール32dを有している。
搬送部32aは、鉛直方向に沿って移動可能、かつ6軸で駆動されるロボットアームであって、
図2に示すように、開口部3aを介して連結ボックス4側から搬送されてくる培養容器が載置された搬送トレイ51,52を受け取って培養棚31a,31bへと搬送する。また、搬送部32aは、
図4(a)〜
図4(c)に示すように、ロボットアームの手先部分に、搬送トレイ51,52をつかんで搬送するための爪部材32bを有している。
【0040】
爪部材32bは、
図4(a)〜
図4(c)に示すように、本体部32ba、突起部32bb、接続部32bcを有している。
本体部32baは、
図4(a)〜
図4(c)に示すように、平面視において略U字状の平面部材であって、接続部32bcを介して搬送部32aと接続されている。
突起部32bbは、上述した各種トレイ(搬送トレイ51,52)の把持部51c,52cに形成された穴部に下方から挿入される部材であって、
図4(b)および
図4(c)に示すように、本体部32baの略U字状の先端部の上面から上向きに突出している。
【0041】
これにより、インキュベータ3内における搬送トレイ51,52の搬送は、2つの突起部32bb,32bbが搬送トレイ51,52の把持部51c,52cの穴部に下方から挿入・支持された状態で行われる。
接続部32bcは、
図4(b)および
図4(c)に示すように、略円柱状の部材であって、搬送部32aのロボットアームの手先部分に装着され、搬送部32aと爪部材32bとを連結する。
【0042】
取付部32cは、
図2に示すように、ロボットアームとしての搬送部32aを、インキュベータ3の側面(
図2に示す正面に配置された側面)に取り付けるための部材であって、ガイドレール32dに沿って鉛直方向において移動する。
挿入部32caは、取付部32cの面から突出する部分であって、
図2に示すように、ガイドレール32dに挿入された状態でガイドレール32dに鉛直方向に誘導される。
【0043】
ガイドレール32dは、
図2に示すように、鉛直方向に沿って形成された誘導溝であって、搬送部32aが取り付けられた取付部32cの挿入部32caが挿入された状態で移動することで、ロボットアームとしての搬送部32aを鉛直方向に沿って移動させることができる。なお、搬送部32aを鉛直方向において移動させる機構については、説明を省略する。
【0044】
(連結ボックス4)
連結ボックス4は、アイソレータ2とインキュベータ3との間において、細胞が導入された培養容器や各種道具等の物品を受け渡しするために設けられている。また、連結ボックス4は、
図1に示すように、アイソレータ2とインキュベータ3との間に設置されている。
【0045】
具体的には、連結ボックス4は、アイソレータ2の清浄操作空間S1内で前処理された細胞が入れられた培養容器11等が載置された搬送トレイ51,52を、無菌状態を維持したまま、インキュベータ3の培養空間S2へと受け渡す搬送機構42(
図3参照)を有している。
なお、本実施形態では、
図5(b)等に示すように、培養容器11として、シャーレのような一端が開口した円筒状の容器を用いているが、容器としては他の形状を有するものであってもよい。
【0046】
搬送機構42は、連結ボックス4において、アイソレータ2およびインキュベータ3の間において搬送される各種物品を受け渡す機構であって、各種容器等が上面に載置される搬送トレイ51,52(
図5(a)〜
図6(b)参照)を搬送する。搬送機構42は、回転軸42aを中心に回転可能な載置台42bを有している。
これにより、開口部4bあるいは開口部4c付近において回転軸42aを中心にして載置台42bを回転させることで、アイソレータ2側、あるいはインキュベータ3側に載置台42bを近づけることができる。よって、例えば、アイソレータ2において、細胞が入れられた培養容器11を載せた搬送トレイ52等を、グローブ22bを介して手で載置台42b上に載せる作業が容易になる。
【0047】
また、アイソレータ2側から搬送トレイ51,52が受け渡しされる位置にある状態において、
図8(a)に示すように、載置台42bにおけるアイソレータ2側の端部には、前壁部42cが設けられている。また、載置台42bにおける載置面の幅方向における両端には、側壁部42d,42dが設けられている。
なお、
図8(b)に示すように、載置台42bの載置面における幅方向における両端であって、前壁部42cに近接した位置に、位置決めピン42f,42fが設けられていてもよい。
【0048】
前壁部42cは、アイソレータ2側から処置者の手によって搬送トレイ51,52を搬送機構42に受け渡す際にアイソレータ2側から見て前面として形成された面であって、
図8(a)に示すように、溝部42ca,42caを有している。
溝部42ca,42caは、前壁部42cに対して上方から凹状(例えば、U字状)に切り欠かれた部分であって、後述する搬送トレイ51,52の係止部51d,52dが係止される。これにより、搬送トレイ51,52は、アイソレータ2側から搬送機構42の載置台42bへと受け渡された際に、載置台42d上における所定の位置に位置合わせされた状態で正確に置かれる。また、溝部42ca,42caと係止部51d,52dとの嵌合によって位置決めを行うため、作業者から見て正確に載置されているか、容易に視認することができる。
【0049】
側壁部42d,42dは、載置台42bにおける長手方向に沿って、短手方向における両端に設けられた側壁として形成された面であって、
図8(a)に示すように、それぞれ切欠き部42eを有している。
切欠き部42eは、側壁部42d,42dの長手方向におけるほぼ中央部分に形成されており、後述する無線タグ62の通信が側壁部42d,42dによって妨害されないようにするために設けられている。
【0050】
なお、通常は、上述した係止部51d,52dと溝部42ca,42caとの係合だけでも搬送トレイ51,52の位置決めは可能であり、作業性もよい(
図8(a)参照)。しかしながら、載置場所の位置精度を高める必要がある場合には、さらに位置決めピンが設けられていてもよい(
図8(b)参照)。
位置決めピン42fは、載置台42bの載置面における前壁部42cに近接した位置から鉛直上向きに突出した円柱状の部材であって、
図7(a)および
図7(b)に示すように、搬送トレイ51,52が載置台42b上に載せられると、搬送トレイ51,52に設けられた位置決め穴51e,52eに挿入される。これにより、搬送トレイ51,52は、係止部51d,52dと溝部42caとの係合に加えて、位置決めピン42fと位置決め穴51e,52eとの係合を併用することで、搬送機構42における載置台42bに対して、より正確な位置に搬送トレイ51,52を載置することができる。
【0051】
また、連結ボックス4は、アイソレータ2側において前処理された細胞が入れられ処置者から手渡しで受け取った培養容器が載置された搬送トレイ51,52について、インキュベータ3へ受け渡す前の段階で搬送トレイ51,52の種類を判別するトレイ検知部(種別検出部)50(
図9(a)および
図9(b)参照)を有している。
トレイ検知部50は、
図9(a),
図9(b)に示すように、搬送機構42に取り付けられており、3つのセンサ部SW1〜SW3を有している。なお、トレイ検知部50の2つのセンサ部SW1〜SW3を用いた種別判定については、後段にて詳述する。
【0052】
(搬送トレイ51,52)
ここで、本実施形態では、アイソレータ2からインキュベータ3に対して搬送されてくる培養容器として、2種類の培養容器11,12が用いられている。そして、この2種類の培養容器は、それぞれ異なる搬送トレイ51,52に載せられて搬送される。
具体的には、本実施形態では、
図5(a)および
図5(b)に示すように、平面視において略長方形の培養容器を搬送するための搬送トレイ51、および平面視において略円形の複数の培養容器11を搬送するための搬送トレイ52が用いられている。
【0053】
なお、搬送トレイ51によって搬送される培養容器には、
図5(a)および
図6(a)に示すように、細胞が入れられる複数の窪み(穴)12aを有するウェルプレート12等が含まれる。一方、搬送トレイ52によって搬送される大きい培養容器には、
図5(b)および
図6(b)に示すように、上面が開口した円筒状の培養容器11(例えば、シャーレ(ガラス製の平皿))等が含まれる。
【0054】
また、培養容器に入れられる物としては、培養空間S2において培養される細胞だけでなく、培養空間S2内を加湿するための加湿水等であってもよい。
(搬送トレイ51)
搬送トレイ51は、
図5(a)および
図6(a)に示すように、本体部51aと、連結部51bと、把持部51cと、係止部51d、位置決め穴51e、無線タグ取付部51fを有している。
【0055】
本体部51aは、培養容器(ウェルプレート12)が載せられる載置面を有している。本体部51aは、平面視において略長方形状のフレーム部分によって形成されており、その内側に開口部分を有している。
突出部51aa,51abは、本体部51aのフレーム部分の内側における搬送トレイ51の長手方向において互いに対向する位置から内側に突出している。そして、突出部51aa,51abは、後述するセンサ部SW1〜SW3によって検出される。
【0056】
具体的には、搬送トレイ51は、
図9(a)に示すように、センサ部SW1〜SW3のうち、センサ部SW1,SW2によって検出される。
連結部51bは、本体部51aと把持部51cとを連結する部分であって、
図6(a)に示すように、略鉛直方向に沿って配置される平板部分である。そして、連結部51bにおける培養容器が載置される側とは反対側の面には、係止部51dが設けられている。
【0057】
把持部51cは、インキュベータ3側のロボットアーム(搬送機構32)によって把持される部分であって、連結部51bを介して本体部51aと接続されている。把持部51cは、
図6(a)に示すように、略水平方向に沿って配置される平板部分である。
また、把持部51cは、平板部分に2つ設けられた円筒部51ca,51caと、円筒部51ca,51caの中心に形成された挿入孔51cb,51cbとを有している。
【0058】
円筒部51ca,51caは、
図6(a)に示すように、中心部分に貫通穴(挿入孔51cb,51cb)が形成された樹脂性の円筒状部材であって、把持部51cの幅方向両端に形成された貫通穴に固定されている。
挿入孔51cb,51cbは、ロボットアーム(搬送機構32)の操作側先端に取り付けられる爪部材32b(
図4(a)〜
図4(c)等参照)が下方から挿入される。これにより、搬送トレイ51は、連結ボックス4からインキュベータ3側に受け渡された後、ロボットアーム(搬送機構32)によって把持部51cが把持され、インキュベータ3内における所望の位置まで搬送される。
【0059】
係止部51d,51dは、
図5(a)および
図6(a)に示すように、連結部51bにおける培養容器が載置される側とは反対側の面から突出するように2つ設けられており、断面視において、細幅部分と太幅部分とによって構成される略T字型形状を有している。また、係止部51d,51dは、把持部51c,51cの直下、かつ近傍に設けられている。さらに、係止部51d,51dは、連結ボックス4に設けられた搬送機構42の載置台42b上に搬送トレイ51が載置されると、
図7(a)に示すように、載置台42b側に設けられた溝部42ca,42ca内に細幅部分が挿入されて係止される。
【0060】
これにより、搬送トレイ51を載置台42bに対して幅方向および長手方向に位置決めを行うことができる。
ここで、係止部51d,51dは、連結部51bにおける培養容器11,12が載置される側とは反対側の面から突出するように2つ設けられている。よって、搬送トレイ51を載置台42bに対して長手方向にずらした位置に載置しようとすると、係止部51d,51dの太幅部が前壁部42cと接触するため、長手方向に大幅にずらさないと載置することができない。これにより、誤った載置を防止できるため、センサ部SW1〜SW3における検出を、より確実に行うことができる。
【0061】
本実施形態の搬送トレイ51は、アイソレータ2における細胞の前処理が完了した後、細胞が入れられた培養容器(ウェルプレート12等)を載せた状態で、処置者の手で、連結ボックス4側の搬送機構42の載置台42b上へ置かれる。
このとき、細胞の培養を行う培養容器は、傾けたり振動を与えたりすると、細胞を含む液体がこぼれたり波立ったりする等の不具合が発生するおそれがある。このため、インキュベータ3内に設けられた培養棚31a,31bに搬送されるまで、培養容器を正確に扱うことが重要である。
【0062】
特に、本実施形態の細胞培養システム1では、
図1に示すように、アイソレータ2のグローブ22bに手を入れた状態で、処置者から見て左側に配置された連結ボックス4側へ搬送トレイ51を受け渡す際には、左手主導の操作となる。このため、大多数の処置者にとって利き手ではない側の手を使う作業となるため、載置台42bの所定の位置へ正確に搬送トレイ51を置くことは容易ではない。
【0063】
本実施形態の搬送トレイ51では、上述したように、載置台42b上へ載置された際には、係止部51d,51dがアイソレータ2側の処置者から視認可能な位置において、載置台42bの溝部42ca,42caに係止される。
これにより、係止部51d,51dを用いることで、搬送トレイ51を、載置台42b上における所定の位置に正確に載置することができる。よって、搬送トレイ51上に置かれた培養容器を傾けることなく、正確に所定の位置に置くことができる。
【0064】
位置決め穴51e,51eは、本体部51aの載置面における幅方向両端であって、把持部51cに近接する位置にそれぞれ形成されており、載置面を貫通している。また、位置決め穴51e,51eは、培養棚31a,31b上に搬送トレイ51が載置されると、
図10(a)に示すように、培養棚31a,31b上に設けられた位置決めピン72f,72fが挿入される。
【0065】
本実施形態の搬送トレイ51では、上述したように、載置台42b上へ載置された際には、係止部51d,51dと溝部42ca,42caとの係合を、培養棚31a,31bへ載置した場合には位置決めピン72f,72fと位置決め穴51e,51eとの係合を用いている。より正確な位置決めを行う場合は、載置台42bに位置決めピン42f,42fを設けて、係止部51d,51dによる位置決めと併用してもよい(
図8(b)参照)。
【0066】
これにより、搬送トレイ51を、載置台42bおよび培養棚31a,31b上における所定の位置にさらに正確に載置することができる。
無線タグ取付部51fは、培養容器(ウェルプレート12)に入れられた細胞の種類やインキュベータ3に搬入された日付等の各種情報を無線通信を介して提供する無線タグ(RFID(Radio Frequency IDentification))62が取り付けられている。そして、無線タグ取付部51fは、本体部51aの側壁部分の一部を切り欠いた切欠き部51faを有している。
【0067】
切欠き部51faは、本体部51aの側壁部分が無線タグ62の通信を妨害しないようにするために設けられた凹状の部分であって、無線タグ62の大部分が側面から見て露出するように形成されている。
これにより、例えば、図示しない読み取り機の前を搬送トレイ51が通過した際に、無線タグ62から送信されてくる細胞等に関する情報を確実に取得することができる。
【0068】
(搬送トレイ52)
搬送トレイ52は、細胞が入れられる培養容器として、シャーレ等の培養容器11が載せられるトレイであって、
図5(b)および
図6(b)に示すように、本体部52aと、連結部52bと、把持部52cと、係止部52d、位置決め穴52e、無線タグ取付部52fを有している。
【0069】
本体部52aは、上面に培養容器11が載せられる部分であって、内側に開口部分を有しており、平面視において略長方形状のフレーム部分によって形成されている。また、本体部52aは、
図7(a)に示す搬送トレイ51の本体部51aと比較して、長手方向における寸法が特に長く、幅方向における寸法も僅かに長い。
突出部52aa,52abは、本体部52aのフレーム部分の内側における搬送トレイ52の長手方向において互いに対向する位置から内側に突出している。そして、突出部52aa,52abは、後述するセンサ部SW1〜SW3によって検出される。
【0070】
具体的には、搬送トレイ52は、
図9(b)に示すように、センサ部SW1〜SW3のうち、センサ部SW1,SW3によって検出される。センサ部SW1〜SW3には、例えば、近接スイッチを用いることができる。
突出部52aa,52abは、本体部52aが搬送トレイ51の本体部51aよりも長手方向に長い。よって、突出部52aa,52abは、
図9(a)に示す搬送トレイ51の突出部51aa,51abよりも間隔が大きくなるように配置されている。
【0071】
これにより、搬送トレイ51,52が載置台42b上に載置された際には、突出部51aa,51ab、突出部52aa,52abを検出するセンサ部SW1〜SW3が異なる。具体的には、
図9(b)に示すように、センサ部SW1〜SW3のうち、センサ部SW1,SW3だけに検出される。よって、搬送トレイ51,52のいずれかが載置されているかを容易に判別することができる。
【0072】
本実施形態では、以上のように、培養容器(搬送トレイ51,52)の種別を判別するために、複数のセンサ部SW1〜SW3を含むトレイ検知部50が設けられている。
これにより、上述したように、いずれかの搬送トレイ51,52が搬送機構42上に載置されたことをセンサ部SW1が検出状態となることで検知することができる。さらに、どの搬送トレイ51,52が載置されたかを、センサ部SW2,SW3の検出状態によって判別することができる。
【0073】
なお、本実施形態では、培養容器(搬送トレイ51,52)の種別を判別する方法として、容器底面の形状の違いと、検出センサを使用する場合を例に説明したが、培養容器の種類を判別することができる構成であれば、同様に実施可能である。
判別方法としては、例えば、容器の形状を透過光などの光学的手段を用いて検出する方法や、RFIDとその非接触読取装置やバーコードとバーコードリーダシステムを用いた培養物の検体管理システムと連携して判別する方法などがある。
【0074】
連結部52bは、本体部52aと把持部52cとを連結する部分であって、
図6(b)に示すように、略鉛直方向に沿って配置される平板部分である。そして、連結部52bにおける培養容器が載置される側とは反対側の面には、係止部52dが設けられている。
把持部52cは、
図5(a)等に示す搬送トレイ51の把持部51cと同じ大きさ・形状を有している。把持部52cは、インキュベータ3側のロボットアーム(搬送機構32)によって把持される部分であって、連結部52bを介して本体部52aと接続されている。把持部52cは、
図6(b)に示すように、略水平方向に沿って配置される平板部分である。
【0075】
また、把持部52cは、把持部51cと同様に、平板部分に2つ設けられた円筒部52ca,52caと、円筒部52ca,52caの中心に形成された挿入孔52cb,52cbとを有している。
円筒部52ca,52caは、
図6(b)に示すように、中心部分に貫通穴(挿入孔52cb,52cb)が形成された樹脂性の円筒状部材であって、把持部52cの幅方向両端に形成された貫通穴に固定されている。
【0076】
挿入孔52cb,52cbは、ロボットアーム(搬送機構32)の操作側先端に取り付けられる爪部材32b(
図4(a)〜
図4(c)等参照)が下方から挿入される。これにより、搬送トレイ52は、連結ボックス4からインキュベータ3側に受け渡された後、ロボットアーム(搬送機構32)によって把持部52cが把持され、インキュベータ3内における所望の位置まで搬送される。
【0077】
係止部52d,52dは、
図5(b)および
図6(b)に示すように、連結部52bにおける培養容器11が載置される側とは反対側の面から突出するように2つ設けられており、断面視において、細幅部分と太幅部分とによって構成される略T字型形状を有している。また、係止部52d,52dは、把持部52c,52cの直下、かつ近傍に設けられている。さらに、係止部52d,52dは、連結ボックス4に設けられた搬送機構42の載置台42b上に搬送トレイ52が載置されると、
図7(b)に示すように、載置台42b側に設けられた溝部42ca,42ca内に細幅部分が挿入されて係止される。
【0078】
これにより、搬送トレイ51を載置台42bに対して幅方向および長手方向に位置決めを行うことができる。
ここで、係止部52d,52dは、連結部52bにおける培養容器11,12が載置される側とは反対側の面から突出するように2つ設けられている。よって、搬送トレイ52を載置台42bに対して長手方向にずらした位置に載置しようとすると、係止部52d,52dの太幅部が前壁部42cと接触するため、長手方向に大幅にずらさないと載置することができない。これにより、誤った載置を防止できるため、センサ部SW1〜SW3における検出を、より確実に行うことができる。
【0079】
本実施形態の搬送トレイ52は、アイソレータ2における細胞の前処理が完了した後、細胞が入れられた培養容器11を載せた状態で、処置者の手で、連結ボックス4側の搬送機構42の載置台42b上へ置かれる。
そして、上述したように、搬送トレイ52が載置台42b上へ載置された際には、係止部52d,52dがアイソレータ2側の処置者から視認可能な位置において、載置台42bの溝部42ca,42caに係止される。
【0080】
これにより、係止部52d,52dを用いることで、搬送トレイ52を、載置台42b上における所定の位置に正確に載置することができる。よって、搬送トレイ51と同様に、搬送トレイ52上に置かれた培養容器を傾けることなく、正確に所定の位置に置くことができる。
位置決め穴52e,52eは、本体部52aの載置面における幅方向両端であって、把持部52cに近接する位置にそれぞれ形成されており、載置面を貫通している。また、位置決め穴52e,52eは、培養棚31a,31b上に搬送トレイ52が載置されると、
図10(b)に示すように、載置台42b上に設けられた位置決めピン72f,72fが挿入される。
【0081】
本実施形態の搬送トレイ52では、上述したように、載置台42b上へ載置された際には、係止部52d,52dと溝部42ca,42caとの係合を、培養棚31a,31bに載置された際には、位置決めピン72f,72fと位置決め穴52e,52eとの係合とを用いている。より正確な位置決めを行う場合は、載置台42bに位置決めピン42f,42fを設けて、係止部52d,52dによる位置決めと併用してもよい。
【0082】
これにより、搬送トレイ52を、載置台42bおよび培養棚31a,31b上における所定の位置にさらに正確に載置することができる。
無線タグ取付部52fは、培養容器11に入れられた細胞の種類や培養容器11がインキュベータ3に搬入された日付等の各種情報を無線通信を介して提供する無線タグ(RFID(Radio Frequency IDentification))62が取り付けられている。そして、無線タグ取付部52fは、本体部52aの幅方向における端部に固定されている。
【0083】
ここで、シャーレ等の培養容器11が載せられる本体部52aには、上述した搬送トレイ51の本体部51aのように、側壁部が設けられていない。これにより、搬送トレイ52では、無線タグ62の側面を覆う部材が存在しないため、図示しない読み取り機の前を搬送トレイ52が通過した際に、無線タグ62から送信されてくる細胞等に関する情報を確実に取得することができる。
【0084】
また、係止部52d,52dは、搬送トレイ52の無線タグ取り付け側の側面(
図5(b)における図面下側)からの距離が、係止部51d,51dの搬送トレイ51の無線タグ取り付け側の側面(
図5(a)における図面下側)からの距離と同一になるように構成されている。これにより、載置台42bに幅寸法の異なる搬送トレイ51,52を溝部42ca,42caによって位置決めした場合には,無線タグ62と図示しない読み取り機との距離を同一とすることができ、より確実に無線タグ62から送られてくる情報を取得することができる。
【0085】
さらに、搬送トレイ52の本体部52aの載置面上には、
図5(b)および
図6(b)に示すように、6本の容器保持用ロッド61a〜61fが立設されている。
容器保持用ロッド61a〜61dは、本体部52aの載置面における四隅に、頭頂部から挿入されたビスによって固定されている。容器保持用ロッド61e,61fは、本体部52aの載置面における長手方向におけるほぼ中央であって、幅方向において内寄りの位置、中央寄りにオフセットされた位置に設けられている。
【0086】
これにより、搬送トレイ52では、載置面上に置かれた2つの培養容器11の外周部分を、それぞれ4本の容器保持用ロッド61a,61b,61e,61fおよび容器保持用ロッド61c,61d,61e,61fによって保持することができる。なお、本実施形態では、搬送トレイ52上に培養容器11が2つ載置された例を挙げて説明したが、2つ以上の培養容器11を保持することも可能である。
【0087】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態では、搬送トレイ51によって搬送される培養容器としてウェルプレート、搬送トレイ52によって搬送される培養容器としてシャーレを用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0088】
例えば、各種搬送トレイによって搬送される培養容器は、上記と逆であってもよいし、別の種類の培養容器であってもよい。あるいは、搬送トレイによって搬送される培養容器の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。
(B)
上記実施形態では、培養容器(搬送トレイ)の種別を判別するトレイ検知部50を、連結ボックス4内に設けた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0089】
例えば、連結ボックスから容器を受け取るインキュベータ内に、トレイ検知部を設けてもよい。
この場合には、
図2等に示すロボットアーム(搬送機構32)の先端部分に容器検知部を設ければよい。
これにより、インキュベータ内において容器を受け取る際に、受け取った容器の種別を判別することができるため、細胞が入れられた培養容器を誤って所望の棚以外の場所へ誤搬送してしまうことを防止することができるという、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0090】
(C)
上記実施形態では、アイソレータ2、インキュベータ3、および連結ボックス4を含む細胞培養システム1を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、細胞培養システムの設置環境が、上述したグレードAまたはBである場合には、アイソレータの代わりに、バイオハザードキャビネット(細胞操作チャンバ)を設けた細胞培養システムとしてもよい。
【0091】
この場合には、細胞培養システムを設置する環境がグレードCまたはDであれば、アイソレータを使用する必要があるが、環境がグレードBであれば、バイオハザードキャビネットを使用することができる。