(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記荷電粒子源と前記第1の走査部及び前記第2の走査部との間に、前記偏向によって生じる前記荷電粒子ビームのビーム形状の歪みを補正する非点補正器を、さらに備える
請求項3に記載の3次元積層造形装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態の例について、添付図面を参照しながら説明する。なお、各図において共通の構成要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0018】
<1.第1の実施の形態>
[3次元積層造形装置の構成]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る3次元積層造形装置の構成例を示す概略斜視図である。
図1において、3次元積層造形装置50のステージ3の移動方向(鉛直方向)をZ方向とし、Z方向に垂直な第1の方向をX方向、Z方向及びX方向に垂直な第2の方向をY方向とする。
【0019】
3次元積層造形装置50は、
図1に示すように、粉末試料が供給されて造形物が形成される試料室12と、荷電粒子源から放出された荷電粒子を収束させる荷電粒子鏡筒11と、荷電粒子鏡筒11等と接続された造形制御装置30(
図3参照)を有する。荷電粒子鏡筒11は、試料室12の側面13に設けられる。この試料室12の側面13には、荷電粒子鏡筒11が放出する荷電粒子が通過するよう開口が設けられている。荷電粒子鏡筒11は、荷電粒子を放出するものであればよい。荷電粒子としては、例えば電子又はイオン等が適用される。以下では、荷電粒子が電子である場合を例として説明する。
【0020】
また、3次元積層造形装置50は、磁力線14(磁界)がある一定の方向に一様に存在するような不図示の磁場発生機を備える。試料室12の側面13に配置された荷電粒子鏡筒11は、磁力線14の方向に対して垂直かつX方向(
図1の右から左)に放出する電子ビーム15の光軸を持つ。
【0021】
また、3次元積層造形装置50は、
図1には記載していないが
図8と同じように造形枠台6と、造形枠台6のほぼ中央部の下方に形成された竪穴のピット4と、ピット4の内壁に摺接しZ方向(鉛直方向)に駆動するステージ3を備える。ステージ3は、試料室12の側面13に入射する電子ビーム15の光軸よりも下側に配置される。造形枠台6は、円筒形状又は角筒形状である。また、図示を省略しているが
図8と同じようにステージ3の下面に接続されたZ駆動レール7と、Z駆動レール7をZ方向に駆動させるZ駆動機構8を備える。Z駆動機構8には、例えばラック&ピニオンやボールねじ等が用いられる。
【0022】
試料室12の内部には、粉末供給部として、粉末試料が充填される不図示の漏斗が設けられている。漏斗は、ステージ3の上方でステージ3の上面と平行な方向に移動可能に構成されている。3次元積層造形装置50は、漏斗を移動させて、ステージ3の上面に粉末試料を一層ずつ敷き詰める。なお、粉末供給部として漏斗を用いるが、ステージ3に粉末試料を敷き詰められるものであればこの例に限られない。
【0023】
図2は、3次元積層造形装置50に搭載された荷電粒子鏡筒11の構成例を示す概略図である。
荷電粒子鏡筒11は、電子を放出する荷電粒子源21と、中間レンズ22と、対物レンズ24とを備える。中間レンズ22は、例えば4極レンズから構成され、電場又は磁場を用いて電子ビームにレンズ作用させる。対物レンズ24は、電場又は磁場を用いて、中間レンズ22からレンズ作用を受けた電子ビームをステージ3上の粉末試料(試料面)に収束させる。また、中間レンズ22と対物レンズ24の間に配置され、試料面上で歪のあるビーム形状を円形に補正する非点補正器23とを備える。さらに、電子ビームを磁力線14と平行な方向に偏向しY方向を走査するY偏向部であるY走査部25(第2の走査部の一例)を備える。また、第1のX偏向部26(第1の偏向部の一例)と第2のX偏向部27(第2の偏向部の一例)を有し、電子ビームを磁力線14と垂直な方向に2段階で偏向し、X方向を走査するX走査部28(第1の走査部の一例)とを備える。
【0024】
[3次元積層造形装置の制御系]
図3は、3次元積層造形装置50の制御系(造形制御装置30)を示すブロック図である。
造形制御装置30は、荷電粒子鏡筒11等と電気的に接続されている(
図1参照)。造形制御装置30は、通信インターフェース(
図3では「通信I/F」と表記している)31、ROM(Read Only Memory)32、RAM(Random Access Memory)33、CPU(Central Processing Unit)34、Z駆動制御部35、磁場制御部36、荷電粒子源制御部37、Y走査制御部38、X走査制御部39を備える。
【0025】
通信インターフェース31は、図示しない通信ネットワークを介して、所定の形式に従った情報の送受信を行なうインターフェースである。例えば、通信インターフェース31としてシリアルインターフェースが適用される。
【0026】
ROM32は、CPU34が実行する造形プログラムや造形物のパラメータ等を記憶する不揮発性の記憶部である。RAM33は、データを一時的に記憶する揮発性の記憶部であり、作業領域として使用される。なお、ROM32に記憶される造形プログラムや造形物のパラメータ等のデータを、不揮発性の大容量記憶装置に記憶するようにしてもよい。
【0027】
CPU34は、ROM32に記憶された造形プログラムをRAM33に読み出し、この造形プログラムに従い、各部の処理及び動作を制御する。CPU34は、システムバスを介して、各部と相互にデータを送信及び/又は受信可能に接続されている。CPU34、ROM32及びRAM33は、制御部の一例である。
【0028】
Z駆動制御部35は、CPU34の制御の下、Z駆動機構8の動作を制御する。
【0029】
磁場制御部36は、CPU34の制御の下、不図示の磁場発生器を駆動して試料室12の内部に発生させる磁力線14の方向と強さを調整する。
【0030】
荷電粒子源制御部37は、CPU34の制御の下、荷電粒子源21から出射する荷電粒子(例えば電子)の量と速度を制御する。
【0031】
Y走査制御部38は、CPU34の制御の下、Y走査部25を駆動して電子ビームをY方向に偏向して走査する。また、X走査制御部39は、第1のX偏向部26と第2のX偏向部27から構成されるX走査部28を駆動して、電子ビームをX方向に2段階で偏向して走査する。
【0032】
上記構成の3次元積層造形装置50において、粉末試料が充填された漏斗が、ステージ3の上をステージ3上面と平行に移動することで、ステージ3上に所定厚さで1層ずつ粉末試料が敷き詰められる。ステージ3上に粉末試料が1層敷き詰められた後、荷電粒子鏡筒11の荷電粒子源21から出力された電子ビーム15が、この粉末試料に対して照射され、照射位置の粉末試料が溶融及び凝固する。荷電粒子鏡筒11内のY走査部25及びX走査部28により電子ビーム15を偏向することで、この粉末層の粉末試料が溶融する位置が設定され、所定の2次元形状の造形物が形成される。3次元積層造形装置50は、この1層ごとの粉末試料の敷き詰め工程と、1層ごとの粉末試料の溶融及び凝固工程を繰り返し行い、立体形状の造形物を作成する。
【0033】
[3次元積層造形装置の走査の概要]
次に、
図2を参照して、3次元積層造形装置50の動作を説明する。
図2は、3次元積層造形装置50を磁力線14がY方向の、試料室12の手前側から奥側に向かう方向から見た状態を示している。一般に、磁束密度Bが一様に存在する空間内で、電荷eを持ち速度vで運動する電子は、式(1)に従い円運動する。Fは向心力である。
【0035】
電子の速度vは荷電粒子鏡筒11で加速される電圧Vで決まり、電子の質量をmとして相対論効果を無視した場合、式(2)が成り立つ。
【0037】
一方、半径Rかつ速度vで円運動している時の電子の向心力Fは式(3)で表される。また、式(1)と式(3)から、式(4)が得られる。
【0039】
よって、式(4)と式(2)から、半径Rについての式(5)が得られる。式(5)より、加速電圧V及び磁束密度Bが決まれば、電荷eの電子が受ける向心力Fは一定となり、電子の円運動の半径Rは一定となる。したがって、半径Rが試料室12の内部空間の高さより低くなるように、加速電圧V及び磁束密度Bを決定する。
【0041】
ここで、ステージ3の上面の高さを試料室12の下面に合わせ、試料室12内は一様に試料室12の手前側から奥側に向かって磁束密度Bの磁界がかかっているものとする。荷電粒子鏡筒11からレンズ作用を受けた電子は、試料室12の側面13から(
図2の右側から左側へ向かって)入射する。該電子は試料室12内に入射後、円運動をする。一例としてこの円運動の中心をOaとする。仮に、円運動の中心Oaがステージ3の上面と同じ面上にあれば、Oaを中心に円運動した電子ビーム15aはステージ3の上面に垂直に入射することになる(荷電粒子鏡筒11から遠い着地点16A)。
【0042】
このような円軌道Raをとるためには、電子の試料室12への入射角(荷電粒子鏡筒側の側面13における入射点aでの)が円軌道Raの接線の方向となるように、荷電粒子鏡筒11内のX走査部28によって、電子をX方向に2段階で偏向することによって実現できる。なお、上記説明では、円運動の中心Oaがステージ3の上面と同じ面上にある場合を想定したが、より正確には、円運動の中心Oaがステージ3の上面に敷き詰められた所定厚さの粉末試料(造形面)と同じ面上にあることとする。それにより、Oaを中心に円運動した電子ビーム15aは、ステージ3の上面の粉末試料(造形面)に垂直に入射する。
【0043】
さらに、磁束密度B及び加速電圧Vが同じで、電子をステージ3の上面に垂直に入射するためには、円軌道の中心がステージ3の上面にあればよい。荷電粒子鏡筒11に近い着地点16Bに電子が垂直に照射される円軌道は円軌道Rbであり、その時の中心はObとなる。また、その時の試料室12の側面13への入射点はbである。入射点bでの入射角が円軌道Rbの入射点bでの接線方向になるように、円軌道Raの場合と同様にして、X走査部28によって、電子をX方向に2段階で偏向すればよい。それにより、Obを中心に円運動した電子ビーム15bは、ステージ3の上面の粉末試料(造形面)に垂直に入射する。
【0044】
例えば、
図2の着地点16A及び16BがそれぞれX方向の走査領域の端である場合には、着地点16A及び16Bの間がX方向の走査領域となる。このとき、加速電圧V及び磁束密度Bは一定のままでX走査部28によって試料室12への入射条件(入射角と入射位置)を整えるだけで、電子ビーム15をステージ3の上面に垂直に照射した状態でX方向に走査できる。
【0045】
すなわち、CPU34は、試料室12内に入射した電子ビーム15の電子に、試料室12内の磁界の磁束密度と荷電粒子源21の加速電圧に応じた半径の向心力が発生している状態において、試料室12の側面13への入射位置及び入射角が、向心力による電子の円軌道Ra、Rbの入射位置での接線と一致するように、X走査部28(第1のX偏向部26と第2のX偏向部27)の駆動を制御する。
【0046】
なお、試料室12内の磁力線14による磁界によって電子ビーム15はX方向に収束作用を受け、ビーム形状が少し歪むが、荷電粒子鏡筒11内の対物レンズ24と非点補正器23のレンズ強度を調整することにより、ビーム形状を円形に補正することができる。
【0047】
Y方向の走査については、CPU34がY走査制御部38に指令を出し、荷電粒子鏡筒11内のY走査部25によって電子ビーム15をY方向に偏向すればよい。その際に生じるビーム形状の歪は、X方向の場合と同様にして、対物レンズ24と非点補正器23のレンズ強度を調整することで円形に補正することができる。以下の説明では、電子ビーム15a及び15bなど、荷電粒子鏡筒11が放出する電子ビームを特に区別しない場合には、電子ビーム15と表記する。
【0048】
[荷電粒子の偏向]
図4は、3次元積層造形装置50の荷電粒子鏡筒11から出射される電子の軌道線を示した模式図である。
図4において、光軸L上を右から平行に出射された電子を第1のX偏向部26及び第2のX偏向部27で偏向し、電子の試料室12の側面13での入射点Zと入射角(π/2−θ
O)を制御する。
図4の例では、電子は、第1のX偏向部26により第1の偏向点41において第1の偏向角θ
1で下方に偏向された後、第2のX偏向部27により第2の偏向点42において第2の偏向角θ
2で上方に偏向され、試料室12の側面13の入射点Zに入射角(π/2−θ
O)で入射する。角度θ
Oは、第2の偏向点42と入射点Zを結ぶ線分と光軸Lに平行な線分とが成す角度である。角度θ
O、角度θ
1及び角度θ
2は、式(6)、式(7)の関係がある。
【0050】
ここで、磁界中における試料面上の位置Oを中心とする円軌道45の半径をR、入射点Zまでの回転角をθとする。また、試料室12の側面13から第1のX偏向部26までの距離をr
1、第2のX偏向部27までの距離をr
2とする。また、ステージ3上の試料面から光軸Lまでの距離をAとする。第1の偏向角θ
1と第2の偏向角θ
2との関係は、式(8)、式(9)で表される。
【0052】
試料室12へ入射した電子のX方向への到達位置は、試料室12の側面13からR(1+cosθ)となり、最大で2R(=Xmax)、最小で0となる。ただし、実際には、回転角θを0から2πまでとることは偏向角度の大きさから不可能である。入射点ZのZ方向における移動範囲Zmは、Zm=R−h=R(1−sinθ)となる。hは、試料面から入射点Zまでの高さである。
【0053】
[3次元積層造形装置の動作]
次に、上述のように構成された3次元積層造形装置50による造形物を造形する動作を説明する。
3次元積層造形装置50のCPU34が、ROM32から造形プログラムを読み出して実行し、造形制御装置30内の各部を制御することにより造形物が形成される。
【0054】
3次元積層造形装置50では、まず電子ビームの照射により、ステージ3及びその周囲の雰囲気を余熱する。次に、CPU34は、Z駆動制御部35に指令を出し、Z駆動機構8により、ステージ3をピット4が形成された不図示の造形枠台の上面よりZ方向に所定の距離ΔZ分下がった位置に配置する。そして、CPU34は、不図示の漏斗により、厚さΔZ分の粉末試料をステージ3に敷き詰める。
【0055】
次に、CPU34は、ROM32等に予め準備された3次元構造物のデータから、3次元構造物をΔZ間隔でスライスした2次元形状のデータを取得する。そして、2次元形状のデータに基づいて、荷電粒子源制御部37に指令を出し、粉末試料の粉末層に対し荷電粒子源21から電子ビームを出射する。このとき、CPU34は、Y走査制御部38及びX走査制御部39に指令を出し、Y走査部25及びX走査部28を通過する電子ビームを偏向し、電子ビームを粉末試料の粉末層のX方向及びY方向に走査する。
【0056】
1層分の粉末層が溶融及び凝固した後、CPU34は、Z駆動制御部35に指令を出し、Z駆動機構8によりステージ3をΔZ分下げる。次に、CPU34は、不図示の漏斗により、厚さΔZ分の粉末試料を直前に敷き詰められた粉末層(下層)の上に敷き詰める。そして、CPU34は、荷電粒子源制御部37に指令を出し、新たに敷き詰められた粉末層に相当する2次元形状に対応する領域の粉末試料に電子ビーム15を照射し、粉末試料を溶融及び凝固させる。このように、1層ごとの粉末試料の敷き詰め工程と、1層ごとの粉末試料の溶融及び凝固工程を繰り返し行い、立体形状の造形物を作成することができる。
【0057】
上述した第1の実施の形態によれば、荷電粒子鏡筒11が試料室12の側面に横置きに取り付けられるため、限られた空間で粉末層の走査領域のY方向(ステージ3及び電子ビームの光軸と垂直な方向)の幅を大きく取れる。それゆえ、大きな3次元積層造形物を造形することが可能である。
また、荷電粒子ビームが試料面に対して垂直に照射されるため、走査領域内の各照射位置で照射条件が一定である。
また、走査領域の端であっても荷電粒子ビームが垂直に照射されるので、溶融解深さ方向(Z方向)の精度は一定に保たれる。
また、荷電粒子鏡筒が試料室の側面に横置きに取り付けられるため、試料室が大きくなっても荷電粒子鏡筒のメンテナンス性がよい。
また、試料室の高さに、従来のような走査領域の数倍の高さを要求されないため、3次元積層造形装置全体を小型化することができる。
【0058】
<2.第2の実施の形態>
以下、
図5及び
図6を参照して、本発明の第2の実施の形態を説明する。
上述した第1の実施の形態において、荷電粒子ビームを精度よく走査するためには、偏向角に対する偏向量の線形性も重要である。本実施の形態は、この線形性を考慮した構成である。
【0059】
図5は、余弦波(cosθ)の波形図を示す。
仮に、θをπ/3から2π/3で採ると、余弦波からほぼ直線の領域を採れることがわかる。
図4において、回転角θが60°<θ<120°のとき、X方向の走査領域は、0.5R<R(1+cosθ)<1.5R(Xmax)となる。全幅でいうとRとなる。
【0060】
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る電子ビームの軌道線を表した模式図であり、回転角θが60°<θ<120°の範囲における電子ビームの軌道を示している。ただし、
図6では、式(10)に示すように、θ=60°における試料面から光軸Lまでの距離Aを√3R/2としている。このときθ
O=30°である。
【0062】
図6の例では、回転角θが120°のとき、X走査部28に入射した電子は、第1のX偏向部26により第1の偏向点51において第1の偏向角で上方に偏向された後、第2のX偏向部27により第2の偏向点52において第2の偏向角で下方に偏向され、試料室12の側面13の入射点Z(試料面からの距離A)に入射角30°で斜め上方に入射する。そして、入射点Zに入射した電子は、円軌道57に沿って円運動し、試料面の着地点56に垂直に入射する。
回転角θが90°のとき、同様にして、電子は、第1の偏向点51から第2の偏向点53を経て、試料室12の側面13の入射点Z(試料面からの距離R)に入射角90°で入射する。そして、入射点Zに入射した電子は、円軌道59に沿って円運動し、試料面の着地点58に垂直に入射する。
回転角θが60°のとき、同様にして、電子は、第1の偏向点51から第2の偏向点54を経て、試料室12の側面13の入射点Z(試料面からの距離A)に入射角30°で斜め下方に入射する。そして、入射点Zに入射した電子は、円軌道61に沿って円運動し、試料面の着地点60(Xmax)に垂直に入射する。
【0063】
距離Aを、式(8)のAに代入すると、式(11)に示すtanθ
1が導出される。これは、第1の偏向角θ
1が、試料室12の側面13から第1のX偏向部26及び第2のX偏向部27までの距離r1とr2との差分と、側面13から第2のX偏向部27までの距離r2との比で決まることを示している。そして、式(9)のθに60°を挿入し、tanθ
1に式(11)の右辺を代入することにより、第2の偏向角θ
2に対するtanθ
2の式を得ることができる。このtanθ
2も、距離r
1とr
2で表される。
【0065】
図6の場合には、入射点Zの移動範囲Zmも、Zm=R−A=R(1−sinθ)=(2−√3)R/2となり、小さい移動量とすることができる。またθ=60°の時、θo=30°となり、偏向角も小さくできる。したがって、回転角θが、π/3<θ<2π/3の範囲にあることが望ましい。
【0066】
上述した第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態による作用、効果に加えて、回転角θの範囲をπ/3<θ<2π/3とした場合には、電子ビーム15の試料室12の側面13への入射点Zの移動範囲が小さく、安定した偏向を実現できる。
【0067】
<3.第3の実施の形態>
第1及び第2の実施の形態に係る荷電粒子鏡筒11は1つである必要はなく、同時に複数個を配置及び使用しても差し支えない。
【0068】
図7は、第3の実施の形態に係る2つの荷電粒子鏡筒が磁力線の方向に並べて配置された3次元積層造形装置の概略断面図を示す。
【0069】
3次元積層造形装置70は、不図示の造形枠台と、造形枠台の中央部に形成された竪穴のピット4wと、ピット4wの内壁に摺接しZ方向(鉛直方向)に駆動するステージ3wを備える。このピット4wとステージ3wは、第1及び第2の実施の形態に係るピット4w及びステージ3wよりも、Y方向の幅が長い。3次元積層造形装置70は、2つの荷電粒子鏡筒11a及び11bを、試料室12wの側面13wに、磁力線14の方向(Y方向)に並べて配置することによって、より大きな3次元積層造形物を積層造形することができる。なお、
図7の例では、荷電粒子鏡筒の数を2つとしたが、3以上であってもよい。
【0070】
上述した第3の実施の形態によれば、複数の荷電粒子鏡筒によって、各荷電粒子鏡筒で走査できる範囲を積層造形することで、より大きな積層造形物を可能とする。その際、隣り合う各々の荷電粒子鏡筒による走査範囲の端を重複し、走査範囲の一部を相互に共有する。それにより、各々の荷電粒子鏡筒により造形された造形物の一部が重なり合い、各々の造形物が接続して大きな造形物が造形される。
【0071】
上述した第3の実施の形態によれば、第1及び第2の実施の形態による作用、効果に加えて、次のような作用、効果が得られる。大きな積層造形物に対しては、荷電粒子鏡筒を複数個、試料室の側面に水平方向に配置すればいいので、高さ方向に大きくならず、小型化及びメンテナンス性の向上を実現できる。
【0072】
<4.変形例>
なお、上述した第1及び第2の実施の形態において、粉末試料として金属粉末を用いたが、樹脂やその他の材料からなる粉末でもよい。望ましくは高融点の粉末試料であるとよい。
【0073】
以上、本発明は上述した各実施の形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の変形例、応用例を取り得ることは勿論である。
例えば、上記した実施の形態例は本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態例の構成の一部を他の実施の形態例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態例の構成に他の実施の形態例の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態例の構成の一部について、他の構成の追加、置換、削除をすることが可能である。