【実施例】
【0089】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
【0090】
合成したベンズイミダゾリノン誘導体の分子構造は、核磁気共鳴装置(
1H−NMR、商品名「ECA400」、日本電子社製、溶剤:テトラヒドロフラン−d8)を使用して同定した。また、樹脂微粒子の重量平均分子量は、GPC(東ソー社製、商品名「HLC8220」、カラム:TSK−GEL4000HXL、TSK−GEL3000HXL、TSK−GEL2000HXL、カラムオーブン温度:40.0℃)を使用して測定した。
【0091】
<中間体1の合成>
撹拌シール、撹拌棒、滴下漏斗、セプタムラバー、窒素導入管、及び温度計を取り付けた1Lの4つ口フラスコに、5−アミノ−2−ベンズイミダゾリノン15部(0.1モル)及び9%希塩酸138部(0.34モル)を入れて5℃以下に冷却した。18.7%亜硝酸ナトリウム水溶液37部(0.1モル)を氷冷しながら滴下し、ジアゾニウム塩溶液を調製した。一方、メチルアセトアセテート12部(0.1モル)に、エタノール230部、及び36.5%酢酸ナトリウム水溶液126部(0.56モル)を加えて撹拌し、5℃以下に冷却して溶液を調製した。調製した溶液にジアゾニウム塩溶液をゆっくり滴下し、氷冷下で30分、さらに室温で1時間撹拌した。その後、生成した析出物をろ取し、水洗及び乾燥して中間体1を得た(収率97%)。
【0092】
<中間体2の合成>
撹拌シール、撹拌棒、還流冷却管、セプタムラバー、窒素導入管、及び温度計を取り付けた1Lの4つ口フラスコに、イオン交換水47部、水酸化ナトリウム20部を入れて撹拌した。水酸化ナトリウムが完全に溶解したことを確認した後、メタノール94部を加えて撹拌した。中間体1 138部(0.5モル)を加え、室温で2時間撹拌した。その後、メタノールを留去するとともに、生成した析出物をろ取し、水洗及び乾燥して中間体2を得た(収率98%)。
【0093】
<ベンズイミダゾリノン誘導体1の合成>
撹拌シール、撹拌棒、滴下漏斗、セプタムラバー、窒素導入管、及び温度計を取り付けた1Lの4つ口フラスコに、上記で得た中間体2 12.0部(0.04モル)及びピリジン170部を入れ、中間体1をピリジンに溶解させて5℃以下に冷却した。次いで、メタクリロイルクロリド16.7部(0.16モル)をピリジン90部に溶解させたものを滴下して1時間撹拌した。その後、水200部を添加して反応を停止させ、遠心分離による分離及び水洗を行って、前記式(1−1)で表されるベンズイミダゾリノン誘導体1を得た(収率70%)。
【0094】
<中間体3の合成>
メチルアセトアセテートをマロン酸ジメチル13部(0.1モル)に変更したこと以外は、前述の「中間体1の合成」と同様の方法により中間体2を合成した(収率97%)。
【0095】
<中間体4の合成>
中間体1を中間体3 146部(0.5モル)に変更したこと以外は、前述の「中間体2の合成」と同様の方法により中間体4を合成した(収率98%)。
【0096】
<ベンズイミダゾリノン誘導体2の合成>
中間体2を中間体4 9.9部(0.04モル)に変更したこと、及びメタクリルクロリドの量を33.4部(0.32モル)に変更したこと以外は、前述の「ベンズイミダゾリノン誘導体1の合成」と同様の方法により、前記式(1−2)で表されるベンズイミダゾリノン誘導体2を合成した(収率50%)。
【0097】
<ベンズイミダゾリノン誘導体3の合成>
メタクリルクロリドをアクリロイルクロリド14.5部(0.16モル)に変更したこと以外は、前述の「ベンズイミダゾリノン誘導体1の合成」と同様の方法により、前記s記(1−3)で表されるベンズイミダゾリノン誘導体3を合成した(収率70%)。
【0098】
<ベンズイミダゾリノン誘導体4の合成>
メタクリルクロリドをアクリロイルクロリド29.0部(0.32モル)に変更したこと以外は、前述の「ベンズイミダゾリノン誘導体2の合成>と同様の方法により、前記式(1−4)で表されるベンズイミダゾリノン誘導体4を合成した(収率50%)。
【0099】
<ベンズイミダゾリノン誘導体5の合成>
メチルアセトアセテートをアセチルアセトン10部(0.1モル)に変更したこと以外は、前述の「中間体1の合成」と同様の方法によりベンズイミダゾリノン誘導体5を合成した(収率98%)。
【0100】
<ベンズイミダゾリノン誘導体の界面活性能の確認>
ビーカーに、ベンズイミダゾリノン誘導体1 0.2115部(0.6410ミリモル)、n−ブチルアクリレート 17.1116部(133.4758ミリモル)、スチレン8.6079部(82.6491ミリモル)、アクリル酸4.3073部(59.7738ミリモル)、及び超純水100部を入れ、撹拌混合して懸濁液を得た。一方、別のビーカーに超純水200部を入れ、その先が液面に接触するように電気伝導度計(商品名「ES−12」、HORIBA社製)を設置した後、撹拌しながら懸濁液を滴下した。滴下と同時に、縦軸に電気伝導度計の値、及び横軸にベンズイミダゾリノン誘導体1の混合溶液中の濃度をプロットしたグラフを作成した。その結果、作成したグラフには変曲点があり、ベンズイミダゾリノン誘導体1の界面活性能を確認することができた。また、横軸の値(=CMC:Critical Micelle Concentration(臨界ミセル濃度))は0.60%であった。
【0101】
ベンズイミダゾリノン誘導体1をベンズイミダゾリノン誘導体2 0.2564部(0.6410ミリモル)に変更したこと以外は、前述のベンズイミダゾリノン誘導体1の場合と同様にして界面活性能を確認した。その結果、ベンズイミダゾリノン誘導体2の界面活性能を確認することができた。また、ベンズイミダゾリノン誘導体2の臨界ミセル濃度は0.40%であった。
【0102】
ベンズイミダゾリノン誘導体1をベンズイミダゾリノン誘導体3 0.2026部(0.6410ミリモル)に変更したこと以外は、前述のベンズイミダゾリノン誘導体1の場合と同様にして界面活性能を確認した。その結果、ベンズイミダゾリノン誘導体3の界面活性能を確認することができた。また、ベンズイミダゾリノン誘導体3の臨界ミセル濃度は0.59%であった。
【0103】
ベンズイミダゾリノン誘導体1をベンズイミダゾリノン誘導体4 0.2385部(0.6410ミリモル)に変更したこと以外は、前述のベンズイミダゾリノン誘導体1の場合と同様にして界面活性能を確認した。その結果、ベンズイミダゾリノン誘導体4の界面活性能を確認することができた。また、ベンズイミダゾリノン誘導体4の臨界ミセル濃度は0.39%であった。
【0104】
<ベンズイミダゾリノン誘導体の
(メタ)アクリロイルオキシ基の反応性の確認>
撹拌シール、撹拌棒、還流冷却管、セプタムラバー、窒素導入管、及び温度計を取り付けた300mLの4つ口フラスコに、ベンズイミダゾリノン誘導体1 0.2115部(0.6410ミリモル)及びイオン交換水284.24部を入れ、加熱したオイルバスに設置して撹拌した。内温が80℃で安定したところで、イオン交換水20部に溶解させた過硫酸カリウム0.1603部(0.5931ミリモル)を加え、4時間加熱した。得られた液からエバポレーションにより水を留去して測定用試料を調製した。調製した測定用試料につき、重DMFを用いてNMR測定を行ったところ、ベンズイミダゾリノン誘導体1の
メタクリロイルオキシ基は80℃で反応していないことを確認した。
【0105】
ベンズイミダゾリノン誘導体1をベンズイミダゾリノン誘導体2 0.2564部(0.6410ミリモル)に変更したこと以外は、前述のベンズイミダゾリノン誘導体1の場合と同様にして
メタクリロイルオキシ基の反応性を確認した。その結果、ベンズイミダゾリノン誘導体2の
メタクリロイルオキシ基は80℃で反応していないことを確認した。
【0106】
ベンズイミダゾリノン誘導体1をベンズイミダゾリノン誘導体3 0.2026部(0.6410ミリモル)に変更したこと以外は、前述のベンズイミダゾリノン誘導体1の場合と同様にして
アクリロイルオキシ基の反応性を確認した。その結果、ベンズイミダゾリノン誘導体3の
アクリロイルオキシ基は80℃で反応していないことを確認した。
【0107】
ベンズイミダゾリノン誘導体1をベンズイミダゾリノン誘導体4 0.2385部(0.6410ミリモル)に変更したこと以外は、前述のベンズイミダゾリノン誘導体1の場合と同様にして
アクリロイルオキシ基の反応性を確認した。その結果、ベンズイミダゾリノン誘導体4の
アクリロイルオキシ基は80℃で反応していないことを確認した。
【0108】
<樹脂微粒子分散体の調製>
(実施例1)
撹拌シール、撹拌棒、還流冷却管、セプタムラバー、窒素導入管、及び温度計を取り付けた300mLの4つ口フラスコに、ベンズイミダゾリノン誘導体1 0.2115部(0.6410ミリモル)、n−ブチルアクリレート17.1116部(133.4758ミリモル)、スチレン8.6079部(82.6491ミリモル)、及びアクリル酸4.3073部(59.7738ミリモル)を入れた。撹拌混合した後、撹拌しながらイオン交換水284.24部を加えて窒素フローを開始した。30分窒素置換した後、加熱したオイルバスに設置し、内温が80℃で安定したところで、イオン交換水20部に溶解させた過硫酸カリウム0.1603部(0.5931ミリモル)を加えて重合を開始した。なお、重合状況をゲル浸透クロマトグラフィー及びNMRでモニタリングしながら重合を行った。得られた反応液を分画分子量16,000の限外濾過膜(東洋濾紙社製)でろ過した。ろ液をNMR測定し、反応しなかった残モノマーのピークが検出されなくなるまで水を交換してろ過する精製を行った。得られた精製物の酸価を測定(測定溶媒:THF)したところ、112mgKOH/gであった。また、精製物をエバポレーターで濃縮した後、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を加えてpHを8に調整し、樹脂微粒子分散体1(固形分濃度:10%)を得た。得られた樹脂微粒子分散体1中の樹脂微粒子を構成する樹脂の重量平均分子量は200,000であった。
【0109】
(実施例2)
ベンズイミダゾリノン誘導体1をベンズイミダゾリノン誘導体2 0.2564部(0.6410ミリモル)に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして、樹脂微粒子分散体2(固形分濃度:10%)を得た。得られた樹脂微粒子分散体2中の樹脂微粒子を構成する樹脂の酸価は112mgKOH/gであり、重量平均分子量は200,000であった。
【0110】
(実施例3)
ベンズイミダゾリノン誘導体1をベンズイミダゾリノン誘導体3 0.2026部(0.6410ミリモル)に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして、樹脂微粒子分散体3(固形分濃度:10%)を得た。得られた樹脂微粒子分散体3中の樹脂微粒子を構成する樹脂の酸価は112mgKOH/gであり、重量平均分子量は200,000であった。
【0111】
(実施例4)
ベンズイミダゾリノン誘導体1をベンズイミダゾリノン誘導体4 0.2385部(0.6410ミリモル)に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして、樹脂微粒子分散体4(固形分濃度:10%)を得た。得られた樹脂微粒子分散体4中の樹脂微粒子を構成する樹脂の酸価は112mgKOH/gであり、重量平均分子量は200,000であった。
【0112】
(実施例5)
2−メタクリロイルオキシエチルサクシネート28.9632部(152.9268ミリモル)のみをモノマーとして用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、樹脂微粒子分散体5(固形分濃度:10%)を得た。得られた樹脂微粒子分散体5中の樹脂微粒子を構成する樹脂の酸価は244mgKOH/gであり、重量平均分子量は200,000であった。
【0113】
(実施例6)
10−ウンデシレン酸4.3043部(23.3743ミリモル)のみをモノマーとして用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、樹脂微粒子分散体6(固形分濃度:10%)を得た。得られた樹脂微粒子分散体6中の樹脂微粒子を構成する樹脂の酸価は304mgKOH/gであり、重量平均分子量は200,000であった。
【0114】
(実施例7)
n−ブチルアクリレート28.0000部(218.4087ミリモル)のみをモノマーとして用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、樹脂微粒子分散体7(固形分濃度:10%)を得た。得られた樹脂微粒子分散体7中の樹脂微粒子を構成する樹脂の酸価は0mgKOH/gであり、重量平均分子量は200,000であった。
【0115】
(実施例8)
スチレン28.0000部(268.8430ミリモル)のみをモノマーとして用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、樹脂微粒子分散体7(固形分濃度:10%)を得た。得られた樹脂微粒子分散体7中の樹脂微粒子を構成する樹脂の酸価は0mgKOH/gであり、重量平均分子量は200,000であった。
【0116】
(実施例9)
スチレン14.0000部(134.4215ミリモル)及びn−ブチルアクリレート14.0000部(109.2043ミリモル)をモノマーとして用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、樹脂微粒子分散体9(固形分濃度:10%)を得た。得られた樹脂微粒子分散体9中の樹脂微粒子を構成する樹脂の酸価は0mgKOH/gであり、重量平均分子量は200,000であった。
【0117】
(実施例10)
過硫酸カリウムの量を2.2674部(8.38779ミリモル)に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして、樹脂微粒子分散体10(固形分濃度:10%)を得た。得られた樹脂微粒子分散体10中の樹脂微粒子を構成する樹脂の酸価は112mgKOH/gであり、重量平均分子量は1,000であった。
【0118】
(実施例11)
過硫酸カリウムの量を0.0926部(0.3424ミリモル)に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして、樹脂微粒子分散体11(固形分濃度:10%)を得た。得られた樹脂微粒子分散体11中の樹脂微粒子を構成する樹脂の酸価は112mgKOH/gであり、重量平均分子量は600,000であった。
【0119】
(実施例12)
過硫酸カリウムの量を3.2066部(11.8621ミリモル)に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして、樹脂微粒子分散体12(固形分濃度:10%)を得た。得られた樹脂微粒子分散体12中の樹脂微粒子を構成する樹脂の酸価は112mgKOH/gであり、重量平均分子量は500であった。
【0120】
(実施例13)
過硫酸カリウムの量を0.0889部(0.329ミリモル)に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして、樹脂微粒子分散体13(固形分濃度:10%)を得た。得られた樹脂微粒子分散体13中の樹脂微粒子を構成する樹脂の酸価は112mgKOH/gであり、重量平均分子量は650,000であった。
【0121】
(実施例14)
実施例1で得た樹脂微粒子分散体1に水を添加して、樹脂微粒子分散体14(固形分濃度:3.0%)を得た。得られた樹脂微粒子分散体14中の樹脂微粒子を構成する樹脂の酸価は112mgKOH/gであり、重量平均分子量は200,000であった。
【0122】
(実施例15)
実施例1で得た樹脂微粒子分散体1をエバポレーションして、樹脂微粒子分散体15(固形分濃度:30%)を得た。得られた樹脂微粒子分散体15中の樹脂微粒子を構成する樹脂の酸価は112mgKOH/gであり、重量平均分子量は200,000であった。
【0123】
(実施例16)
実施例1で得た樹脂微粒子分散体1に水を添加して、樹脂微粒子分散体16(固形分濃度:2.5%)を得た。得られた樹脂微粒子分散体16中の樹脂微粒子を構成する樹脂の酸価は112mgKOH/gであり、重量平均分子量は200,000であった。
【0124】
(実施例17)
実施例1で得た樹脂微粒子分散体1をエバポレーションして、樹脂微粒子分散体17(固形分濃度:31%)を得た。得られた樹脂微粒子分散体17中の樹脂微粒子を構成する樹脂の酸価は112mgKOH/gであり、重量平均分子量は200,000であった。
【0125】
(実施例18)
アクリル酸をメタクリル酸4.3073部(50.0325ミリモル)に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして、樹脂微粒子分散体18(固形分濃度:10%)を得た。得られた樹脂微粒子分散体18中の樹脂微粒子を構成する樹脂の酸価は93mgKOH/gであり、重量平均分子量は200,000であった。
【0126】
(実施例19)
スチレンを4−ビニルトルエン8.6079部(72.8372ミリモル)に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして、樹脂微粒子分散体19(固形分濃度:10%)を得た。得られた樹脂微粒子分散体19中の樹脂微粒子を構成する樹脂の酸価は112mgKOH/gであり、重量平均分子量は200,000であった。
【0127】
(実施例20)
n−ブチルアクリレートをメタクリル酸メチル17.1116部(170.9109ミリモル)に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして、樹脂微粒子分散体20(固形分濃度:10%)を得た。得られた樹脂微粒子分散体20中の樹脂微粒子を構成する樹脂の酸価は112mgKOH/gであり、重量平均分子量は200,000であった。
【0128】
(実施例21)
実施例1で得た樹脂微粒子分散体1を濃縮しながら徐々にグリセリン152.12部を添加し、水をグリセリンに置換した樹脂微粒子分散体21(固形分濃度:10%)を得た。得られた樹脂微粒子分散体21中の樹脂微粒子を構成する樹脂の酸価は112mgKOH/gであり、重量平均分子量は200,000であった。なお、樹脂微粒子分散体21の固形分濃度は、グリセリン置換前の質量とグリセリン置換後の質量に基づき、以下の式より算出した。
固形分濃度[%]
=置換前の固形分濃度10.0%×(置換後の質量[g]/置換前の質量[g])
【0129】
(比較例1)
ベンズイミダゾリノン誘導体1をベンズイミダゾリノン誘導体5 0.1667部(0.6410ミリモル)に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして、樹脂微粒子分散体22(固形分濃度:10%)を得た。得られた樹脂微粒子分散体22中の樹脂微粒子を構成する樹脂の酸価は112mgKOH/gであり、重量平均分子量は200,000であった。
【0130】
(比較例2)
アクリル酸26.7583部(371.3336ミリモル)のみをモノマーとして用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして樹脂微粒子分散体を調製しようとしたが、樹脂微粒子の形成を確認することができなかった。なお、得られた樹脂の酸価は779mgKOH/gであり、重量平均分子量は200,000であった。
【0131】
実施例1〜21、比較例1及び2で得た樹脂微粒子分散体の詳細を表1に示す。
【0132】
【0133】
<樹脂微粒子分散体の評価>
(色材への吸着性)
[測定用の試料調製]
イオン交換水17部及び樹脂微粒子分散体1 4部を混合して溶液(S)を得た。得られた溶液(S)に、カーボンブラック(商品名「CAB−O−JET400」、キャボット社製、固形分濃度:15%)5.3部を加えて30分間超音波分散を行った。室温で1時間静置した後、遠心分離によって上澄み液を回収した。そして、溶液(S)及び上澄み液を測定用の試料とした。また、樹脂微粒子分散体の種類及び量、並びにイオン交換水の量を表2に示すようにしたこと以外は、上記と同様にして、それぞれの樹脂微粒子分散体についての測定用の試料を調製した。なお、樹脂微粒子分散体23については樹脂微粒子の形成が確認できなかったため、測定用の試料を調製しなかった。
【0134】
[吸着率の測定及び算出]
調製した溶液(S)及び上澄み液にそれぞれイオン交換水を加えて20倍に希釈し、測定用溶液(溶液(S)希釈液、上澄み希釈液)を得た。各測定用溶液の420nmにおける吸光度を測定し、下記式(I)より、それぞれの樹脂微粒子分散体の色材への吸着率を算出した。
吸着率(%)=(1−j/k)×100 ・・・(I)
j:上澄み希釈液の吸光度
k:溶液(S)希釈液の吸光度
【0135】
[評価基準]
算出したそれぞれの樹脂微粒子分散体の吸着率から、以下に示す評価基準にしたがって色材への吸着性を評価した。評価結果を表2に示す。
○:吸着率80%以上
×:吸着率80%未満
【0136】
(分散安定性)
それぞれの樹脂微粒子分散体について、樹脂微粒子の体積累積中位径を測定した後、80℃の温度条件下、密閉状態で2週間保存した。保存後の樹脂微粒子分散体中の樹脂微粒子の体積累積中位径を測定し、下記式(II)より、それぞれの樹脂微粒子分散体の粒子径増加率を算出した。算出したそれぞれの樹脂微粒子分散体の粒子径増加率から、以下に示す評価基準にしたがって分散安定性を評価した。評価結果を表2に示す。なお、樹脂微粒子の体積累積中位径の測定には、ナノ粒子粒度分布測定器(商品名「UPA−EX250」、日機装社製)を使用した。
粒子径増加率(%)={(A−B)/B}×100 ・・・(II)
A:保存後の樹脂微粒子の体積累積中位径
B:保存前の樹脂微粒子の体積累積中位径
◎:粒子径増加率が5%以下
○:粒子径増加率が5%超10%以下
△:粒子径増加率が10%超30%以下
×:粒子径増加率が30%超
【0137】
【0138】
表2に示す評価結果から明らかなように、実施例1〜21の樹脂微粒子分散体の色材への吸着性と分散安定性は、いずれも良好であった。一方、比較例1の樹脂微粒子分散体については、色材への吸着性が不良であった。また、比較例2については、樹脂微粒子の形成が確認できなかったため、評価不能であった。
【0139】
<インクの調製>
(実施例22)
グリセリン10部、ジエチレングリコール20部、及びイオン交換水35部を混合し、1mol/L水酸化カリウム水溶液を加えてpH7に調整したものを、撹拌した樹脂微粒子分散体1 15部に滴下した。十分に撹拌した後、撹拌したカーボンブラック(商品名「CAB−O−JET400」、キャボット社製、固形分濃度:15%)20部に滴下した。1mol/L水酸化カリウム水溶液を加えてpH9に調整した後、孔径1.2μmのフィルターでろ過してインク1を得た。
【0140】
(実施例23)
カーボンブラックをピグメントブルー15:4(商品名「CAB-O-JET450C」、キャボット社製、固形分濃度:15%)に変更したこと以外は、前述の実施例22と同様にしてインク2を得た。
【0141】
(実施例24)
カーボンブラックをピグメントイエロー74(商品名「CAB−O−JET470Y」、キャボット社製、固形分濃度:15%)に変更したこと以外は、前述の実施例22と同様にしてインク3を得た。
【0142】
(実施例25)
カーボンブラックをピグメントレッド122(商品名「CAB−O−JET465M」、キャボット社製、固形分濃度:15%)に変更したこと以外は、前述の実施例22と同様にしてインク4を得た。
【0143】
(実施例26)
樹脂微粒子分散体1を樹脂微粒子分散体2に変更したこと以外は、前述の実施例22と同様にしてインク5を得た。
【0144】
(実施例27)
樹脂微粒子分散体1を樹脂微粒子分散体3に変更したこと以外は、前述の実施例22と同様にしてインク6を得た。
【0145】
(実施例28)
樹脂微粒子分散体1を樹脂微粒子分散体4に変更したこと以外は、前述の実施例22と同様にしてインク7を得た。
【0146】
(実施例29)
樹脂微粒子分散体1を樹脂微粒子分散体5に変更したこと以外は、前述の実施例22と同様にしてインク8を得た。
【0147】
(実施例30)
樹脂微粒子分散体1を樹脂微粒子分散体6に変更したこと以外は、前述の実施例22と同様にしてインク9を得た。
【0148】
(実施例31)
樹脂微粒子分散体1を樹脂微粒子分散体7に変更したこと以外は、前述の実施例22と同様にしてインク10を得た。
【0149】
(実施例32)
樹脂微粒子分散体1を樹脂微粒子分散体8に変更したこと以外は、前述の実施例22と同様にしてインク11を得た。
【0150】
(実施例33)
樹脂微粒子分散体1を樹脂微粒子分散体9に変更したこと以外は、前述の実施例22と同様にしてインク12を得た。
【0151】
(実施例34)
樹脂微粒子分散体1を樹脂微粒子分散体10に変更したこと以外は、前述の実施例22と同様にしてインク13を得た。
【0152】
(実施例35)
樹脂微粒子分散体1を樹脂微粒子分散体11に変更したこと以外は、前述の実施例22と同様にしてインク14を得た。
【0153】
(実施例36)
樹脂微粒子分散体1を樹脂微粒子分散体12に変更したこと以外は、前述の実施例22と同様にしてインク15を得た。
【0154】
(実施例37)
樹脂微粒子分散体1を樹脂微粒子分散体13に変更したこと以外は、前述の実施例22と同様にしてインク16を得た。
【0155】
(実施例38)
イオン交換水を用いなかったこと、及び樹脂微粒子分散体1を樹脂微粒子分散体14 50部に変更したこと以外は、前述の実施例22と同様にしてインク17を得た。
【0156】
(実施例39)
イオン交換水を45部用いたこと、及び樹脂微粒子分散体1を樹脂微粒子分散体15 5部に変更したこと以外は、前述の実施例22と同様にしてインク18を得た。
【0157】
(実施例40)
イオン交換水を用いなかったこと、及び樹脂微粒子分散体1に代えて、60部から50部となるまでエバポレーションで濃縮した樹脂微粒子分散体16 50部を用いたこと以外は、前述の実施例22と同様にしてインク19を得た。
【0158】
(実施例41)
イオン交換水を45.16部用いたこと、及び樹脂微粒子分散体1を樹脂微粒子分散体17 4.8部に変更したこと以外は、前述の実施例22と同様にしてインク20を得た。
【0159】
(実施例42)
樹脂微粒子分散体1を樹脂微粒子分散体18に変更したこと以外は、前述の実施例22と同様にしてインク21を得た。
【0160】
(実施例43)
樹脂微粒子分散体1を樹脂微粒子分散体19に変更したこと以外は、前述の実施例22と同様にしてインク22を得た。
【0161】
(実施例44)
樹脂微粒子分散体1を樹脂微粒子分散体20に変更したこと以外は、前述の実施例22と同様にしてインク23を得た。
【0162】
(実施例45)
グリセリンを2.6部用いたこと、イオン交換水を28部用いたこと、及び樹脂微粒子分散体1を樹脂微粒子分散体21に変更したこと以外は、前述の実施例22と同様にしてインク24を得た。
【0163】
(比較例3)
樹脂微粒子分散体1を樹脂微粒子分散体22に変更したこと以外は、前述の実施例22と同様にしてインク25を得た。
【0164】
(比較例4)
樹脂微粒子分散体1を樹脂微粒子分散体23に変更したこと以外は、前述の実施例22と同様にしてインク26を得た。
【0165】
<インクの評価>
(分散安定性)
前述の「樹脂微粒子分散体の評価」における「分散安定性」と同様の方法により、インクの分散安定性を評価した。評価結果を表3に示す。
【0166】
(耐擦過性)
各インクをインクジェット記録装置に搭載し、100%デューティーのベタ画像を被記録媒体に印字した後、24時間25℃で放置した。被記録媒体の印字面を2×10
4N/m
2の荷重をかけたシルホン紙により50回擦過した。そして、シルホン紙への印字部分(ベタ画像)の転写状態を目視で確認し、以下に示す評価基準にしたがって画像の耐擦過性を評価した。評価結果を表3に示す。なお、インクジェット記録装置としては、熱エネルギーを付与してインクを吐出させるサーマル方式のインクジェット記録装置(商品名「P−660CII」、キヤノンファインテック社製)を用いた。また、被記録媒体としては、普通紙(商品名「GF−500」、キヤノン社製)を用いた。
○:画像の擦れがなく、シルボン紙への付着もない
△:画像の擦れはないが、シルボン紙への付着がある
×:画像の擦れが若干ある
−:吐出不可又は測定不可
【0167】
【0168】
実施例22〜45のインクは、分散安定性と印字後の耐擦過性が良好であった。一方、比較例3のインクは印字後の耐擦過性が不良であり、インクとして使用不能なものであった。