(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
二酸化塩素ガス発生反応の反応停止剤として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムのいずれかのアルカリ性物質を用いることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の二酸化塩素ガス発生装置。
前記反応容器の下方には、混合溶液の回収タンクが設置され、前記回収タンクには、前記反応容器の下面に接続された排液配管の下端が接続され、前記排液配管には、通電時に閉となり、停電時に開となる開閉バルブが設けられ、前記回収タンクには炭酸塩もしくは炭酸水素塩のアルカリ性物質からなる反応停止剤が入れられ、
前記反応容器の底部に溜められた混合溶液の液面よりも上方と、前記回収タンクに回収された混合溶液の液面よりも上方とは、連結管によって連通していることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の二酸化塩素ガス発生装置。
前記連結管の口径は、反応容器の容積に相当する気積量を1分で通過させる際、面風速が1m/sから20m/sの範囲となることを特徴とする、請求項6または7に記載の二酸化塩素ガス発生装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態について説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
図1に示すように、本発明の実施の形態にかかる二酸化塩素ガス発生装置1は、密閉された反応容器10を備えており、この反応容器10の外部には、亜塩素酸塩溶液タンク11と酸性液タンク12が設けられている。亜塩素酸塩溶液タンク11には、例えば亜塩素酸ナトリウム水溶液などの亜塩素酸塩溶液aが充填されている。反応容器10と亜塩素酸塩溶液タンク11は、亜塩素酸塩溶液供給配管13で接続され、亜塩素酸塩溶液供給配管13には、送液ポンプ14と電磁バルブ15が設置されている。電磁バルブ15が開き、送液ポンプ14が稼働すると、亜塩素酸塩溶液タンク11内の亜塩素酸塩溶液aが亜塩素酸塩溶液供給配管13を通って反応容器10に供給される。
【0015】
酸性液タンク12には、例えば例えばリンゴ酸、クエン酸、硫酸などの酸性液bが充填されている。反応容器10と酸性液タンク12は、酸性液供給配管20で接続され、酸性液供給配管20には、送液ポンプ21と電磁バルブ22が設置されている。電磁バルブ22が開き、送液ポンプ21が稼働すると、酸性液タンク12内の酸性液bが酸性液供給配管20を通って反応容器10に供給される。
【0016】
反応容器10の内部には、小容器25が設置されている。亜塩素酸塩溶液供給配管13の出口と酸性液供給配管20の出口は、いずれも反応容器10の内部において小容器25の上方に位置している。このため、上述のように送液ポンプ14の稼働で反応容器10内に供給された亜塩素酸塩溶液aと送液ポンプ21の稼働で反応容器10内に供給された酸性液bは、最初に小容器25に供給され、小容器25内で亜塩素酸塩溶液aと酸性液bが混合された後、両者の混合溶液cが小容器25から溢れ出て、反応容器10の底部に溜められる。小容器25の容積は、例えば亜塩素酸塩溶液aと酸性液bが小容器25に供給されてから混合溶液cとなって小容器25から溢れ出るまでの時間が1分程度の大きさとなるように設定される。また、小容器25は、反応容器10の底部に溜められた混合溶液cの液面よりも上方に配置されている。
【0017】
反応容器10の内部には、反応容器10の底部に溜められた混合溶液cを撹拌する攪拌機30と、混合溶液cの温度を測定する温度計31が設けられている。反応容器10の底部に溜められた混合溶液c中には、温調機構35の伝熱管36の一部が露出している。伝熱管36は熱交換器37と反応容器10の間で熱媒を循環させる閉回路を構成しており、ポンプ38の稼働によって、伝熱管36中を熱媒が循環させられるようになっている。
【0018】
また、熱交換器37には、冷温熱源機42との間で熱源を循環させる熱源回路39が接続されており、熱源回路39に設けられたポンプ40の稼働によって、冷温熱源機42で温調された熱源が、熱源回路39を通って熱交換器37に供給されている。熱交換器37では、冷温熱源機42で温調された熱源と熱交換することにより、伝熱管36中の熱媒が温調され、こうして温調された熱媒が伝熱管36中を循環して反応容器10の底部に溜められた混合溶液cと熱的に接触するようになっている。
【0019】
伝熱管36に設けられたポンプ38の稼働は、ポンプ調節機構41で制御されており、ポンプ調節機構41には、温度計31によって測定された反応容器10の底部に溜められた混合溶液cの温度が入力されている。ポンプ調節機構41は、温度計31から入力された混合溶液cの温度に基づいて、ポンプ38の稼働を制御して伝熱管36中を循環する熱媒流量が調整され、これにより反応容器10の底部に溜められた混合溶液cが所望の温度に保たれる。
【0020】
反応容器10の下方には、混合溶液cの回収タンク45が設置されている。回収タンク45には、反応容器10の下面に接続された排液配管46の下端が接続されており、排液配管46には開閉バルブ47が設けられている。開閉バルブ47を開くことにより、反応容器10の底部に溜められた混合溶液cが自重で排液配管46を通って回収タンク45に回収される。
【0021】
反応容器10の上面には、吸込み管50と吐出管51が接続されている。これら吸込み管50と吐出管51は、いずれも反応容器10の底部に溜められた混合溶液cの液面よりも上方において開口している。これら吸込み管50と吐出管51には、例えば塩ビ管が用いられる。吸込み管50には、風量計52が設置されている。また、吐出管51には、送風機53と二酸化塩素ガス濃度計54が設置されている。送風機53の稼働によって外部の空気が吸込み管50を通って反応容器10の内部上方に取り込まれ、反応容器10の内部上方の雰囲気(二酸化塩素ガスd)が吐出管51を通って外部に吐出される。その際、吸込み管50を通って外部から反応容器10の内部上方に取り込まれる空気の風量が風量計52で測定されて、ポンプ調節機構55に入力されている。また、反応容器10の内部上方から外部に吐出される二酸化塩素ガスdの濃度が二酸化塩素ガス濃度計54で測定されて、ポンプ調節機構55に入力されている。
【0022】
以上のように構成された二酸化塩素ガス発生装置1において、電磁バルブ15が開いて送液ポンプ14が稼働することにより、亜塩素酸塩溶液タンク11内の亜塩素酸塩溶液aが亜塩素酸塩溶液供給配管13を通って反応容器10に供給される。また、電磁バルブ22が開いて送液ポンプ21が稼働することにより、酸性液タンク12内の酸性液bが酸性液供給配管20を通って反応容器10に供給される。こうして、反応容器10では、亜塩素酸塩溶液aと酸性液bが混合され、両者の化学反応し、二酸化塩素ガス(ClO2)dが発生する。この場合、発生した二酸化塩素ガスdは、まず混合溶液c中に溶存し、反応が進むにつれて混合溶液c中の溶存ガス濃度が上昇し、やがて気液界面の濃度差を推進力として溶存ガス分子は薬液表面上部の気相側へ移行する。なお、亜塩素酸塩溶液aは例えば亜塩素酸ナトリウム水溶液であり、酸性液bは例えばリンゴ酸溶液であり、反応式は次のとおりである。
5NaClO2+2HOOC-CH(OH)-CH2-COOH→2NaOOC-CH(OH)-CH2-COONa+4ClO2+NaCl+2H2O
【0023】
ここで、反応容器10の内部において、亜塩素酸塩溶液aと酸性液bは最初に小容器25に供給されて混合される。小容器25は例えば反応容器10内の混合溶液cの液面よりその周壁の上端が位置するようにする。小容器25では、未反応同志の亜塩素酸塩溶液aと酸性液bがお互いの濃度がまだ高いフレッシュな状態で混合されるため、効率よく二酸化塩素ガスdを発生させることができる。亜塩素酸塩溶液aと酸性液bが小容器25に供給されてから混合溶液cとなって小容器25から溢れ出るまでの時間は1分程度に設定されているので、小容器25では、ほぼ1分程度の間、高い効率で亜塩素酸塩溶液aと酸性液bが反応し、高濃度の二酸化塩素ガスdを発生させることができる。
【0024】
こうして、小容器25内で亜塩素酸塩溶液aと酸性液bが混合されて効率よく二酸化塩素ガスdを発生させた後、両者の混合溶液cは小容器25から溢れ出て、反応容器10の底部に溜められる。小容器25で混合された亜塩素酸塩溶液aと酸性液b(混合溶液c)は1分程度で反応容器10の底部に受け渡され、入れ替わりが速いため、小容器25では常に新鮮な最も高濃度の状態で亜塩素酸塩溶液aと酸性液bを反応させることができる。もしも小容器25が無く、亜塩素酸塩溶液aと酸性液bを最初から反応容器10の底部で受け止めた場合、供給されたフレッシュな状態の亜塩素酸塩溶液aと酸性液bが、反応容器10の底部に既に溜められている反応が進んだ混合溶液cですぐに希釈されてしまい、効率よく二酸化塩素ガスdを発生させることができなくなる。
【0025】
なお、反応容器10の底部に受け止められた混合溶液cの温度は温度計31によって測定され、ポンプ調節機構41に入力される。そして、ポンプ調節機構41は混合溶液cの温度に基づいてポンプ38の稼働を制御し、伝熱管36中を循環する熱媒流量が調整される。こうして、反応容器10の底部に溜められた混合溶液cは、温調機構35によって反応に適した温度に温調される。さらに攪拌機30で撹拌され、混合溶液cの反応が促進される。二酸化塩素ガスdの生成速度は混合溶液cの温度が高いほど速く、混合溶液cの温度が低いほど遅くなるため、温調機構35によって周囲の温度環境の影響を排除し、所定の生成速度を確保する。混合溶液cの温度は10℃から60℃が望ましく、20℃から40℃がより望ましい。なお50℃以上の高温でも構わないが、あまり高温になると反応容器10等の材質や構造を高温に耐えうるものにする必要がある。なお、亜塩素酸溶液タンク11と酸性液タンク12に温調機構を設けるなどして、亜塩素酸塩溶液aと酸性液bの一方を高温、他方を低温として、両者の混合溶液cが所望の温度となるようにしても良い。
【0026】
そして、反応容器10の内部に二酸化塩素ガスdが溜められた状態で、送風機53の稼働によって外部の空気が吸込み管50を通って反応容器10の内部上方に取り込まれ、反応容器10の内部上方の雰囲気(二酸化塩素ガスd)が吐出管51を通って外部に吐出される。反応容器10の内部では、小容器25に溜められた混合溶液cの液面および反応容器10の底部に溜められた混合溶液cの液面から気相部分に二酸化塩素ガスdが移動していく。反応容器10の上面に接続された吸込み管50と吐出管51を通じて反応容器10の内部の気相部分が通気されることにより、反応容器10の気相部分に移動した二酸化塩素ガスdが、曝気(エアレーション)されることなく、随時連続的に吐出管51から外部に運び出される。
【0027】
なお、反応容器10の内部では、小容器25に溜められた混合溶液cの液面から気相部分に二酸化塩素ガスdが移動する際、および、反応容器10の底部に溜められた混合溶液cの液面から気相部分に二酸化塩素ガスdが移動する際に、気液界面の濃度差によって同様に、それらの液面から気相部分に水分子が移動する。しかし、水分子の場合、本発明の温度範囲ならびに混合溶液cの液面の表面積と通気風量の比率では移行量は微小であり、反応容器10から外部に運び出される二酸化塩素ガスdは、ほとんど湿度上昇しない。
【0028】
その結果、酸性ミストの混合が少なく低湿度な二酸化塩素ガスdを反応容器10の内部から取り出すことができる。こうして、二酸化塩素ガスdを例えば医薬品や食品の製造、医療行為などが行われる無菌あるいは準無菌が要求される室内、アイソレータ等の空間や空間内表面など供給することにより、所望の箇所の消毒、微生物の除染などを行うことができる。取り出される二酸化塩素ガスdは低湿度であるため、消毒、微生物の除染などに利用する二酸化塩素ガスdの湿度コントロールがしやすく、腐食のリスクを回避でき、二酸化塩素ガスdの濃度と湿度の最適な組み合わせ条件を実現できる。
【0029】
以上、本発明の実施の形態の一例を説明したが、本発明は例示した形態に限定されない。亜塩素酸塩溶液aとしては亜塩素酸ナトリウム水溶液の他、亜塩素酸カリウム水溶液、亜塩素酸カルシウム水溶液等の亜塩素酸のアルカリ金属塩あるいはアルカリ土類金属塩の水溶液が望ましい。また、酸性液bに用いられる酸として、たとえば、硫酸、リン酸、リンゴ酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、フマル酸、コハク酸、グルコン酸、乳酸、アジピン酸等の揮発性が低く、除染対象室内の腐食の原因とならない酸が望ましい。いずれにしても、pHが3以下の揮発性の低い酸性液を用いることにより、酸性ガスの混合による腐食のリスクのない二酸化塩素ガスdを生成することができる。
【0030】
なお、二酸化塩素ガスdは、気相濃度が10%を超えると爆発の可能性がある。これを防止するために、反応容器10の内部上方から外部に吐出される二酸化塩素ガスdの濃度を二酸化塩素ガス濃度計54で測定し、その濃度が所定の上限濃度を超えないように、ポンプ調節機構55によって送液ポンプ14と送液ポンプ21の稼働を制御して、反応容器10への亜塩素酸塩溶液aと酸性液bの供給を制御する。これにより、反応容器10内での二酸化塩素ガスdの濃度が所定の上限濃度以下に保たれる。
【0031】
ここで、所定の上限濃度は、安全を見込んで3%に設定することが望ましい。また、この上限濃度の超過防止措置として、外部から反応容器10の内部上方に取り込まれる空気の風量に基づいて、ポンプ調節機構55が送液ポンプ14と送液ポンプ21の稼働を制御することもできる。即ち、風量計52で測定された風量が所定の風量を超えない場合は、送液ポンプ14と送液ポンプ21を運転せず、かつ電磁バルブ15と電磁バルブ22を開放しないよう制御する。加えて、風量計52で測定された風量が所定の風量を超えない場合は、常に排液配管46に設けられた開閉バルブ47を閉止しないよう制御する。つまり所定風量を超えて通気されている場合のみ反応容器10の内部に亜塩素酸塩溶液aと酸性液b(混合溶液c)が保持され、二酸化塩素ガスdの生成反応が進行されるようにする。これにより、反応容器10内での二酸化塩素ガスdの濃度が確実に所定の上限濃度以下に保たれる。
【0032】
なお、回収タンク45は反応容器10の下方に設置し、反応容器10内に混合溶液cがある場合には開閉バルブ47の開時に反応容器10内の混合溶液cが自然落下で回収タンク45に移動することが望ましい。また、回収タンク45には予め反応停止剤を入れておき、回収タンク45内に注がれた混合溶液cは、二酸化塩素ガスdの生成反応が停止する。反応停止剤は、アルカリ性の物質とする。たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、などが望ましい。
【0033】
また、回収タンク45に通常は閉止した開閉扉を設けておき、その上部に反応停止剤の収容部を設けても良い。人体に有害な二酸化塩素ガスの濃度から安全な値を設定し、その上限に至ったことを濃度計が検知したら、開閉扉を開き反応停止剤を回収タンク45に投入しても良い。
【0034】
次に、本発明の実施の形態にかかる二酸化塩素ガス発生装置1を組み込み、室内2の消毒・除染を行う消毒・除染システムの概要図を
図2に示す。二酸化塩素発生装置1の反応容器10に接続された吸込み管50の吸込み側と吐出管51の吐出側を、消毒・除染の対象である室内2に接続している。室内2には、室内空気攪拌用の送風機60と、室内2における二酸化塩素ガスdの濃度を測定する濃度計61が設けられている。濃度計61で測定された室内2における二酸化塩素ガスdの濃度は、送液ポンプ14と送液ポンプ21の稼働を制御するポンプ調節機構55に入力されている。ポンプ調節機構55は、室内2における二酸化塩素ガスdの濃度が所定の濃度になるように送液ポンプ14と送液ポンプ21の稼働を制御している。
【0035】
また、
図2に示す消毒・除染システムでは、送風機53が吐出管51に設けられているが、
図3に示す消毒・除染システムは、送風機53を吸込み管50に設置した例である。このように、送風機53を吸込み管50に設置しても、同様に室内2の消毒・除染を行うことができる。
【0036】
これら
図2、3に示した消毒・除染システムでは、例えば下記のガス濃度範囲を想定して運転使用する。
「反応容器10から吐出される二酸化塩素ガスdの濃度」:10 vol. ppm〜3 vol.%
「室内2の二酸化塩素ガスdの濃度」:10 vol. ppm〜10,000 vol. ppm
【0037】
上記ガス濃度範囲での運転においては、亜塩素酸塩溶液aの濃度は、10〜31 wt%が望ましい。また、酸性液bの濃度は、亜塩素酸塩溶液aに対する酸物質のモル比(酸物質のモル数/亜塩素酸のモル数)で0.3〜1.5の範囲とすることが望ましい。亜塩素酸塩溶液aの濃度の下限は、これよりも低濃度とすると、大量の薬液量が必要となり、亜塩素酸塩溶液タンク11、酸性液タンク12および回収タンク45が大型化するうえ、廃液処理費も増大するためである。また、上限は、二酸化塩素ガスの製造に一般的に用いられる亜塩素酸塩である亜塩素酸ナトリウムの溶液の飽和濃度である。酸物質の範囲は、上記モル比0.3未満では、原料亜塩素酸塩量からの二酸化塩素ガスdの発生の効率が低く、モル比1.5を超えると、二酸化塩素ガスdの発生効率はそれ以上増加しないからである。
【0038】
また、この
図2に示すシステムにおいて、いわゆるバッチ式の運転を行って室内2の消毒・除染を行うこともできる。その場合、先ず反応容器10内に亜塩素酸塩溶液aと酸性液bを供給せずに空の状態で空気の取り込みと二酸化塩素ガスの排気を行い、換気運転を行う。その後、反応容器10内に亜塩素酸塩溶液aと酸性液bを供給して二酸化塩素ガスdを発生させ、室内2に二酸化塩素ガスdを導入し、室内2の消毒・除染を行う。そして、濃度計61が所定濃度(意図した室内濃度)以下またはそれより少し上の閾値を検知したら、反応容器10内の混合溶液cを回収タンク45に移動させ、二酸化塩素ガスdの発生を停止させる。こうして換気運転と二酸化塩素ガスdの発生を繰り返すことにより、いわゆるバッチ式の運転で室内2の消毒・除染を行うこともできる。
【0039】
次に、本ガス発生装置の運転中に停電が起きた場合の安全な停止方法について記す。なお、以上では二酸化塩素ガス発生装置1について説明したが、以下に記す事項については、次の条件を備えた二酸化塩素ガス以外のガス発生装置、すなわち、「反応容器10内で酸性の薬液を用いて化学反応により引火性あるいは助燃性のガスを爆発下限濃度あるいは自己分解による爆発濃度以下の濃度で発生させる装置」においても同様に適用できる。
【0040】
上記実施の形態で説明した二酸化塩素ガスdは助燃性のガスであり、濃度が10 vol.%を超えると自己分解による爆発の可能性がある。そのように濃度が高くなると爆発の可能性がある反応を停電時に停止させる第一の方法としては、停電となった瞬間に、非通電時に開となるバルブを開いて自動的に反応容器10内にアルカリ性の反応停止剤を注入し、反応容器10内の混合溶液c(酸性薬液)を中和しガス生成反応を停止する方法がある。あるいは、第二の方法として、先に
図1等に示した二酸化塩素ガス発生装置1のように、反応容器10の下方に混合溶液cの回収タンク45を設置し、この回収タンク45に予め反応停止剤を入れておく方法がある。この場合、排液配管46に設けられる開閉バルブ47を、通電時に閉となり、停電時に開となる機能を持った開閉バルブ47とし、予め回収タンク45内にアルカリ性の反応停止剤を入れておくことにより、停電となった瞬間、開閉バルブ47が開となって、反応容器10内の混合溶液cが自然落下で回収タンク45に移動して中和し、ガス生成反応を停止することができる。
【0041】
しかしながら、いずれの方法においても、停電によって送風機53などが停止する一方で、混合溶液c(酸性薬液)の反応が反応停止剤で中和されてガス生成反応が停止するまでにはある程度の時間を要し、反応は瞬時には停止しない。しかし、停電によって送風機53などが停止すると、反応容器10内のガス濃度を所定濃度以下に希釈するための送風機構が失われ、反応容器10内のガス濃度が上昇する。したがって、反応容器10内のガス濃度上昇を防ぐためには、非常用電源設備を設け、それにより送風機53などの運転を継続する必要があった。非常用電源設備を設けることはコストアップになる。
【0042】
そこで以下では、非常用電源設備を必要とせずに、停電時にガス濃度上昇を回避して反応を停止させる安全機構について説明する。なお、引火性あるいは助燃性のガスの一例として、二酸化塩素ガスdを発生させる二酸化塩素ガス発生装置2について説明する。
【0043】
図4に示すように、この実施の形態にかかる二酸化塩素ガス発生装置2においても、先に
図1等で説明した二酸化塩素ガス発生装置1と同様に、反応容器10の下方には、混合溶液cの回収タンク45が設置されている。回収タンク45には、反応容器10の下面に接続された排液配管46の下端が接続されており、排液配管46には開閉バルブ47が設けられている。また、この実施の形態にかかる二酸化塩素ガス発生装置2は、先に
図1等で説明した二酸化塩素ガス発生装置1と同様の基本構成を備えている。そのため、共通する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0044】
ただし、この実施の形態にかかる二酸化塩素ガス発生装置2では、反応容器10の底部に溜められた混合溶液cの液面よりも上方の位置と、回収タンク45に回収された混合溶液cの液面よりも上方の位置とが、連結管70によって連通している。また、排液配管46に設けられた開閉バルブ47は、通電時に閉となり、停電時に開となる開閉バルブ47となっている。かかる開閉バルブ47として、例えば非通電時に開となるノーマルオープンの電磁バルブが利用できる。また、回収タンク45には、炭酸塩もしくは炭酸水素塩のアルカリ性物質からなる反応停止剤が予め入れられている。この反応停止剤として、炭酸ナトリウムあるいは炭酸水素ナトリウム等の、水溶液となるとアルカリ性を示し、中和の際、炭酸ガスを生成する炭酸塩あるいは炭酸水素塩が利用される。
【0045】
かかる実施の形態にかかる二酸化塩素ガス発生装置2においても、先に
図1等で説明した二酸化塩素ガス発生装置1と同様に、反応容器10で亜塩素酸塩溶液aと酸性液bが混合され、両者の化学反応により二酸化塩素ガス(ClO2)dが発生する。また、温調機構35による温調や、攪拌機30による撹拌が適宜行われ、混合溶液cの反応が促進される。
【0046】
そして、反応容器10の内部に二酸化塩素ガスdが溜められた状態で、送風機53の稼働によって外部の空気が吸込み管50を通って反応容器10の内部上方に取り込まれ、反応容器10の内部上方の雰囲気(二酸化塩素ガスd)が吐出管51を通って外部に吐出される。
【0047】
一方、この実施の形態にかかる二酸化塩素ガス発生装置2の運転中に停電が発生した場合、停電により送風機53の稼働が停止し、反応容器10への外気の取り込みと、反応容器10から外部への二酸化塩素ガスdの吐出が停止する。また、送液ポンプ14の稼働と送液ポンプ21の稼働も停止し、亜塩素酸塩溶液aの供給と酸性液bの供給も停止する。
【0048】
また同時に、ノーマルオープンの電磁バルブ等からなる開閉バルブ47が停電と同時に開となり、反応容器10内の混合溶液cが排液配管46を通って自然落下で回収タンク45に移動する。こうして回収タンク45では、回収タンク45に予め入れられていた炭酸塩もしくは炭酸水素塩のアルカリ性物質からなる反応停止剤によって混合溶液cは中和され、二酸化塩素ガスdの生成反応が停止する。また、回収タンク45内では、混合薬液cが中和されると同時に炭酸ガスが発生する。
【0049】
こうして回収タンク45内で発生した炭酸ガスは、連結管70を通って反応容器10内に流入し、反応容器10内の二酸化塩素ガスdを希釈しつつ、吸込み管50を通じて反応容器10内の残存ガスが外部に排出させられる。その結果、反応容器10内は炭酸ガスによって希釈され、濃度上昇による爆発が回避される。
【0050】
したがって、この実施の形態にかかる二酸化塩素ガス発生装置2によれば、コストアップとなる非常用電源による送風機構なしで、停電時の反応容器10内のガス濃度を希釈することができる。これにより、非常用電源による送風を行うことなく、装置を安全に停止状態に移行することができる。したがって、従来は必要であった非常用電源設備が不要となり、そのコストが削減できる。
【0051】
なお、二酸化塩素ガスを発生させる装置について説明したが、この実施の形態にかかる二酸化塩素ガス発生装置2は、二酸化塩素ガスdに限らず、その他の引火性あるいは助燃性のガスを発生させる装置(引火性あるいは助燃性のガス発生装置)にも適用できる。反応容器10に酸性の薬液を送り、反応容器10内で他の薬剤との化学反応により引火性あるいは助燃性のガスを自動で連続的に発生させる装置(引火性あるいは助燃性のガス発生装置)として、二酸化塩素ガス以外に、例えば次のようなものが考えられる。
【0052】
金属硫化物に酸性の薬液を供給して硫化水素ガスH
2Sを発生させるガス発生装置。硫化水素ガスは引火性であり、爆発下限は4.3%程度である。金属(Fe,Zn,Mg)に酸性の薬液を供給して水素ガスH
2を発生させるガス発生装置。水素ガスは引火性であり、爆発下限は4%程度である。
【0053】
またこの実施の形態にかかる二酸化塩素ガス発生装置2が備える連結管70の口径は、反応容器10の容積に相当する気積量を1分で通過させる際、面風速が1m/sから20m/sの範囲となるような口径が望ましい。また、回収タンク45に予め入れておく反応停止剤は、炭酸ナトリウムあるいは炭酸水素ナトリウム等の、水溶液となるとアルカリ性を示し、中和の際、炭酸ガスを生成する炭酸塩あるいは炭酸水素塩とする。
【実施例1】
【0054】
図2に示す消毒・除染システムにより室内2の消毒・除染を実施した例について記す。反応容器10は、直径700 mmφ×高さ900 mmとし、150
mmφの吸込み管50と吐出管51で容積1000 m3の消毒・除染対象である室内2に接続した。室内2は予め湿度60%に調整した。この室内2に二酸化塩素ガスdを供給し、室内2のガス濃度目標値を400
ppmとし、開始から3時間までの間の室内2の二酸化塩素ガスdの平均濃度が380 ppmを超える値となるように運転を実施した。なお、亜塩素酸塩溶液aには25
wt%亜塩素酸ナトリウム溶液を、酸性液bには30 wt%リンゴ酸溶液を用いた。反応容器10に風量190 m3/hで一定で通気送風しながら、それらの亜塩素酸塩溶液aと酸性液bを各1.4
L/min で供給し、室内2のガス濃度に応じてON/OFF制御した。反応容器10内の混合溶液cの温度は約25℃とした。また、室内2には室内空気の攪拌用の送風機60を設置し、室内2のガス濃度が一様となるよう送風・攪拌した。このときの室内2のガス濃度の経時変化を
図4に示す。
図4より、開始から3時間までの間の室内ガスの平均濃度は390 ppmであり、意図した室内濃度となった。なお、反応容器10の出口ガス濃度の最高値は0.8%で設計上限の3%未満を満たし、総薬液量は65 Lであった。さらに、この時の室内湿度の経時変化を
図5に示す。室内湿度はほとんど上昇せず、ほぼ一定に保たれたことがわかる。
【実施例2】
【0055】
実施例1と同様に、
図3に示す消毒・除染システムにより室内2の消毒・除染を実施した別の事例について記す。反応容器10は、直径700 mmφ×高さ900 mmとし、150
mmφの吸込み管50と吐出管51でで容積1000 m3の消毒・除染対象である室内2に接続した。室内2は予め湿度60%に調整した。この室内2に二酸化塩素ガスdを供給し、室内2のガス濃度目標値を400
ppmとし、開始から3時間までの間の室内2の二酸化塩素ガスdの平均濃度が380 ppmを超える値となるように運転を実施した。なお、亜塩素酸塩溶液aには25
wt%亜塩素酸ナトリウム溶液を、酸性液bには9 wt%硫酸溶液を用いた。反応容器10に風量190 m3/hで一定で通気送風しながら、それらの亜塩素酸塩溶液aと酸性液bを各1.4
L/minで供給し、室内2のガス濃度に応じてON/OFF制御した。反応容器10内の混合溶液cの温度は約40℃とした。また、室内2には室内空気の攪拌用の送風機60を設置し、室内2のガス濃度が一様となるよう送風・攪拌した。このときの室内2のガス濃度の経時変化を
図6に示す。
図6より、開始から3時間までの間の室内ガスの平均濃度は390 ppmであり、意図した室内濃度となった。なお、反応容器10の出口ガス濃度の最高値は1.1%で設計上限の3%未満を満たし、総薬液量は37 Lであった。さらに、この時の室内湿度の経時変化を
図7に示す。室内湿度はほとんど上昇せず、ほぼ一定に保たれたことがわかる。
【実施例3】
【0056】
図4に示す二酸化塩素ガス発生装置2での本発明の実施例について記す。実施例3では、酸薬液に9 wt%硫酸50 L、酸と反応して二酸化塩素ガスを生成する物質として25 wt%亜塩素酸ナトリウム水溶液50 Lを用いた。また、容積200 Lの回収タンクには酸薬液全量を中和可能な量の炭酸水素ナトリウム粉末を予め入れておいた。反応容器は、直径700 mmφ×高さ900 mmで容積は350
Lである。連結管は内径30 mmの塩ビパイプとした。反応容器に風量190 m
3/hで一定で通気送風しながら、上記薬液を各1.4
L/minで供給した。なお、反応容器内の二酸化塩素ガス濃度を濃度計で連続的に計測した。送液ポンプで薬液を供給中の状態で、薬液のほぼ全量である各49 Lを供給した時点で、停電を模擬し全電源を遮断し動作を確認した。反応容器から回収タンクに混合溶液(薬液)が移行するにつれて回収タンク内で中和反応によりCO
2ガスが発生した。CO
2ガスは回収タンクから反応容器に連結管を通して移行した。反応容器から回収タンクに薬液が完全に移行するのに2分を要したが、この間、反応容器内の二酸化塩素ガス濃度は常に10 vol.%未満であることを確認した。