(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に開示される冷蔵庫では、広い操作範囲によって利用者に対して操作性の向上を図るものであった。特許文献2に開示される冷蔵庫は、把持部材を手前に引くこと操作で扉を開放することが可能である。したがって、利用者の体勢等の条件により、把持部材を引く操作が困難な場面では、冷蔵庫の扉を容易に開放することができないことが考えられる。
【0008】
本発明は、このような状況を鑑み、冷蔵庫の扉を開放する際における操作性の自由度の拡大を図るものであり、多様な操作方法にて冷蔵庫の扉を開放する機構を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのため、本発明に係る冷蔵庫は、
外箱と扉を備え、扉を引き出すことで収納庫が開放される冷蔵庫において、
扉の左右側面に設けられた可動部と、連結部材と、を有し、
各可動部は、テコ部材と、支持部材を備え、
テコ部材は、支点と、被当接部と、連結部と、押圧部を有し、
支点は、扉の側面に回転可能に係合し、
被当接部は、支持部材を連結部周りに回転させたときに支持部材と当接可能とし、
連結部は、テコ部材を支持部材と回転可能に連結し、
連結部材は、扉表面側において左右の支持部材を接続し、
支持部材を引いた場合、連結部に作用する力によって押圧部が外箱の周縁部を押圧することで収納庫を開放し、
支持部材を連結部周りで回転させた場合、被当接部に作用する力によって押圧部が外箱の周縁部を押圧することで収納庫を開放することを特徴としている。
【0010】
さらに、本発明に係る冷蔵庫において、
各可動部は、第2のテコ部材を有し、
第2のテコ部材は、第2の支点と、第2の被当接部を有し、
第2の支点は、扉の側面に回転可能に係合し、
第2の被当接部は、支持部材を連結部周りに回転させたときに支持部材と当接可能とし、
連結部は、テコ部材と、支持部材と、第2のテコ部材を回転可能に連結し、
支持部材を連結部周りで回転させた場合、第2の被当接部に作用する力が、連結部を介してテコ部材に作用し、押圧部が外箱の周縁部を押圧することで収納庫を開放することを特徴としている。
【0011】
さらに、本発明に係る冷蔵庫において、
第2のテコ部材は、第2の押圧部を有し、
支持部材を引く、もしくは、支持部材を連結部周りで回転させた場合、第2の押圧部は、押圧部と協調して外箱の周縁部を押圧することを特徴としている。
【0012】
さらに、本発明に係る冷蔵庫において、
押圧部が収納される方向にテコ部材を付勢する弾性部材を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、引出式の冷蔵庫において、支持部材を引く、あるいは、支持部材を連結部周りで回転させるという、複数通りの操作方法によって扉を開放することを可能としている。このような構成により、冷蔵庫の開放操作における操作性の自由度の拡大を図ることが可能となる。
【0014】
さらに本発明によれば、第2のテコ部材を設けたことで、支持部材を連結部周りで、どちらの方向に回転させた場合においても、扉を開放することが可能となり、更なる冷蔵庫の開放操作における操作性の自由度の拡大を図ることが可能となる。
【0015】
さらに本発明によれば、第2のテコ部材に第2の押圧部を設けたことで、冷蔵庫扉の片側において2箇所(左右両方の4箇所)において、テコ部材と第2のテコ部材が協調して外箱の周縁部を押圧し、安定した開放動作を行うことが可能となる。
【0016】
さらに本発明によれば、押圧部が収納される方向にテコ部材を付勢する弾性部材を設けたことで、利用者が操作を行っていない場合、押圧部等を所定位置に収容することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1には、本発明の実施形態に係る冷蔵庫の斜視図であって、冷蔵庫扉30(本発明における「扉」に相当)が一部引き出された状態が示されている。本実施形態の冷蔵庫10は、冷蔵庫外箱20、冷蔵庫扉30、開放機構部40を備えて構成される。冷蔵庫外箱20は、4つの脚部22a〜22c上に設置され、内部の収納庫を冷却するための冷却部を背面、あるいは下部に備える。
【0019】
冷蔵庫扉30の外部は、樹脂等で成型され、内部に断熱材を有し、外気温による収納庫内の温度上昇を防止している。冷蔵庫扉30は、背面の周縁に磁石付きのパッキンなどで構成された吸着部を有し、この吸着部が冷蔵庫外箱20の周縁部に密接に吸着することで、外気の流入、そして収納庫内の冷気の流出を防いでいる。また、冷蔵庫扉30の背面には、食品などの収納物を格納するための引出式収納庫40が一体に形成されており、冷蔵庫扉30を引き出すことで引出式収納庫40が引き出され、冷蔵庫10の上方から収納物を取り出す、あるいは、格納することが可能となっている。
【0020】
冷蔵庫扉30の前面には、冷蔵庫扉30の一側面から他側面にわたって把持部材41が設けられている。利用者が冷蔵庫を開放する際は、この把持部材41を操作することで冷蔵庫扉30が開放されるように構成されている。本実施形態では、把持部材41を手前に引く、上に押し上げる、下に押し下げるという3通りの方法で、冷蔵庫扉30を開放することが可能である。このように本実施形態では、冷蔵庫扉30の前面の広い範囲にわたって把持部材41が設けられているため、利用者の操作範囲の拡大が図られている。また、把持部材41に対する操作も複数通りあるため、操作方法の自由度も高いものとなっている。
【0021】
図2は、本発明の実施形態に係る冷蔵庫の正面図を示したものである。
図1で説明したように、把持部材41は、冷蔵庫扉30の一端から他端に架け渡され、広い範囲にわたって操作可能となっている。また、非操作時において、把持部材41の一部は収納凹部32、拡大収納凹部32aに格納されており、冷蔵庫扉30の前面における把持部材41の突出量を抑制している。また、収納凹部32、拡大収納凹部32aの深さは、把持部材41の一部を格納する程度に浅いため、把持部材41と収納凹部32、拡大収納凹部32aとの間で指を挟むことを抑制している。
【0022】
冷蔵庫扉30の右上部分には表示窓33が設けられている。この表示窓33は、冷蔵庫10の動作状況を示すために設けられており、庫内に配置された発光部34の発光軸と同じ軸上に配置されている。発光部34が発光している場合、この表示窓33を通して発光部34の発光を確認することが可能である。発光部34は、例えば、冷蔵庫10が稼働しているときに点灯するように構成されている。病院などに設置される場合、コイン、あるいは、カードなどを利用した課金方式が採用される場合がある。表示窓33は、このような課金方式の冷蔵庫10において、利用者に便宜を図るものであって、外部から冷蔵庫10が稼働状態であるか否かを確認することが可能となっている。また、この発光部34は、冷蔵庫扉30が一定時間以上、開放されている場合に点滅して警告を促す機能を付加してもよい。
【0023】
図3は、本発明の実施形態に係る冷蔵庫外箱20の正面図を示したものであり、ちょうど、
図3の冷蔵庫の正面図において、冷蔵庫扉30が取り外された状態である。冷蔵庫外箱20は、正面から見たとき中央部に大きな空間で形成された収納庫24を有し、その周囲に平面状の周縁部23が形成されている。この周縁部23に冷蔵庫扉30側に設けられた吸着部が吸着することで冷気の放出を防いでいる。また、右上部分には、前述した発光部34が設けられており、その発光によって冷蔵庫10の動作状態を告知することが可能となっている。この発光部34の発光した光は、冷蔵庫扉30を閉めた場合であっても、表示窓33を通じて確認することが可能である。そして、収納庫24の右側面上方には、冷蔵庫扉30の開放時に庫内を照明するための庫内灯31が設けられている。
【0024】
図4は、本発明の実施形態に係る冷蔵庫の上面図、及び、内部の様子を示す図であって、冷蔵庫扉30が開放されている状態が示されている。冷蔵庫外箱20には、空間からなる収納庫24が形成される様子がみてとれる。また、冷蔵庫扉30の裏面には引出式収納庫36が一体に形成されている。冷蔵庫扉30を閉めたとき、引出式収納庫36が収納庫24に収納されることで、引出式収納庫36に収納された食物などの収納物の冷却が可能となる。収納庫24内部にはレール(図示せず)が設けられており、引出式収納庫36の側面に設けられたローラー(図示せず)が、このレール上を移動することで、冷蔵庫扉30のスムースな開閉動作を実現している。
【0025】
また、冷蔵庫扉30を引き出して開放したときには、図に示されるように冷蔵庫10の上方から収納物を取り出すことが可能となる。このような取り出し形態は、冷蔵庫10が低い位置に設置される状況においては、利用者が屈んで覗き込む必要が無いため都合がよい。なお、本実施形態では、冷蔵庫10の上方からの操作も可能となるよう冷蔵庫扉30の上部に凹部状の上部取手37が形成されている。
【0026】
図5は、本発明の実施形態に係る開放機構部40の分解図を示したものである。開放機構部40は、左右の可動部50R、50L、把持部材41を有して構成されている。左右の可動部50R、50Lは左右対称となっているため、ここでは左側の可動部50Lについて詳細を説明する。本実施形態の可動部50Lは、2つの単位可動部50a、50bと、支持部材57を有して構成されている。単位可動部50aは、剛性の高い金属あるいは剛性の高い樹脂等で形成されたテコ部材51を主要部材として、ローラー54等の付属構成を有して構成されている。
【0027】
テコ部材51には、支持部材57等と連結するための連結孔51a、第2ガイド部材53を係止するための係止孔51b、ローラー54を係止するための係止孔51c、被当接部51d、ストッパ部51eが形成されている。係止部材52aは、2つの単位可動部50a、50bの連結孔51aと、支持部材57の連結孔57cに挿通され、係止部材52aの一端を第1ガイド部材52にて係止することで、2つの単位可動部50a、50bと支持部材57を回転可能に連結する。なお、第1ガイド部材52は、後で説明する第1ガイド孔71に収容され、本発明における連結部を形成する。係止孔51bには、係止部材53aによって第2ガイド部材53が係止されている。なお、第2ガイド部材53は、後で説明する第2ガイド孔72に収容され、本発明における支点を形成する。係止孔51cには、係止部材54aによってローラー54が回転可能に係止されている。
【0028】
第1ガイド部材52、第2ガイド部材53には、樹脂、ゴム、金属等の適宜素材を使用することが可能である。また、ローラー54(本発明における「押圧部」に相当)は、冷蔵庫扉30を開放する際、冷蔵庫外箱20側の周縁部23と当接する部分であるため、樹脂やゴム等の弾性素材を使用することが好ましい。被当接部51dには、樹脂やゴムの弾性素材で構成されたシート状の緩衝材56が貼付される。被当接部51dが、支持部材57の当接部57aと直接、当接した場合、異音の原因となるため、緩衝材56を介在させることで異音の発生を抑制している。
【0029】
以上、単位可動部50aの構成について説明したが、他方の単位可動部50bについて同様の構成を有し、支持部材57に対して対称となっている。また、右側の可動部50Rは、図に示されるように、左側の可動部50Lと把持部材41について対称となっている。よって、これら単位可動部50b、並びに、右側に位置する可動部50Rの構成の説明は省略する。
【0030】
支持部材57は、剛性の高い金属等で構成された部材であって、連結孔57cを介して単位可動部50a、単位可動部50bと回転可能に連結されている。図中、支持部材57の上下位置には、突起状の当接部57aが形成されている。図中上側の当接部57aは、冷蔵庫扉30を開放する際、単位可動部50a側の被当接部51dを押し上げる。また、図中下側の当接部57aは、冷蔵庫扉30を開放する際、単位可動部50b側の被当接部51dを押し下げる。また、左右の可動部50R、50Lの支持部材57は、開放機構部40を冷蔵庫扉30に取り付けた際、冷蔵庫扉30の表面側において、連結部で連結される。本実施形態の連結部は、剛性の高い金属等で構成され、その表面は樹脂等で形成された把持部材41にて覆われている。なお、左右の支持部材57と連結部は、別体であっても、一体成型されたものであってもよい。
【0031】
図6には、本発明の実施形態に係る開放機構部40の斜視図が示されている。この斜視図は、
図5の開放機構部40の分解図を組み立てた状態である。左側の可動部50Lについて、その主な構成をみると、両テコ部材51の先端位置にはローラー54が回転可能に係止されている。また、左側の可動部50Lでは配置の関係上裏面を見ることができないが、右側の可動部50Rの構成から分かるように、左側の可動部50Lにおいて両テコ部材51の係止孔51bの裏面には、第2ガイド部材53が位置することになる。そして、係止部材52aの裏面には、第1ガイド部材52が位置することになる。
【0032】
図7には、本発明の実施形態に係る冷蔵庫扉30の組立について説明する図が示されている。この図は、
図6の開放機構部40を冷蔵庫扉30に組み付けるときの様子を示した図である。まず、冷蔵庫扉30側の構成について説明する。ここでは、冷蔵庫扉30の左側の構成について説明するが、冷蔵庫扉30の右側の構成についても同様である。冷蔵庫扉30の側面には、開放機構部40の可動部50Lを収納し、冷蔵庫扉30の開放動作を行うための収納部70が設けられている。収納部70の略中央には、第1ガイド部材52を回転可能、そして、左右方向に摺動可能に収容する第1ガイド孔71が形成されている。この第1ガイド孔71について、上下対称な位置には、第2ガイド部材53を回転可能、そして、上下方向に摺動可能に収容する第2ガイド孔72が設けられている。
【0033】
収納部70の裏面、すなわち、冷蔵庫扉30が冷蔵庫10として組み立てられた際、冷蔵庫外箱20の周縁部23と対向する側の一部には、テコ部材51の一部を突出させるための開放孔73が形成されている。また、同面には、テコ部材51が必要以上に突出することを防ぐための規制部74が形成されている。そして、収納部70には、開放機構部40が操作されていないとき、その位置を保つためのスプリング61(弾性部材)の一端を収容するためのスプリング係止部75が形成されている。
【0034】
可動部51Lは、第1ガイド部材52を第1ガイド孔71内に位置させ、2つの第2ガイド部材53を対応する第2ガイド孔72内に位置させるように取り付けられる。その際、テコ部材51側のスプリング係止部51fと、冷蔵庫扉30側のスプリング係止部75との間にスプリング61が配置される。右側の可動部51Rについても同様に冷蔵庫扉30に取り付けられる。開放機構部40の取り付け後、収納部70を覆うようにカバー部材35aが取り付けられる。このカバー部材35aは、テコ部材51等、可動部50Lの構成が外部に露出することを抑制し、安全面及び美観の向上を図っている。
【0035】
では、開放機構部40を使用した冷蔵庫扉30の開放時の動作を説明する。
図8は、本発明の実施形態に係る開放機構部40の動作の様子を示す図である。
図8に示す図は、冷蔵庫10の左側面における開放機構部40の動作を示した図であって、カバー部材35aを取り外した状態である。なお、開放機構部40は、冷蔵庫10の右側面においても同様に動作する。
【0036】
図8(A)は、冷蔵庫扉30を閉めたときの静止状態である。冷蔵庫扉30の吸着部38は、冷蔵庫外箱20の周縁部23に密着した状態となっている。下側のテコ部材51についてみると、第2ガイド部材53は、第2ガイド孔に収容され、テコ部材51を回転可能な状態で係止している。この第2ガイド部材53は、冷蔵庫扉30の開放時、テコ部材51の支点として機能する。
【0037】
第1ガイド部材52は、図中、左右方向に移動可能なように第1ガイド孔71に収容される。テコ部材51は、スプリング61によって冷蔵庫扉30の前面方向に付勢されている。したがって、テコ部材51は、第2ガイド部材53を中心に回転し、ローラー54が配置された先端を冷蔵庫扉30側に位置させるとともに、第1ガイド部材52で連結された支持部材57を冷蔵庫扉30内に位置させる。このように本実施形態では、テコ部材51を付勢するスプリング61(弾性部材)を設けたことで、利用者の操作が無い場合、開放機構部40を同じ位置に保ち、冷蔵庫扉30を開放したときの振動による、テコ部材51のがたつきの抑制を図ることが可能となっている。
【0038】
では、冷蔵庫扉30の開放動作について説明する。
図8(B)〜
図8(D)は、それぞれ、異なる操作方法による冷蔵庫扉30の開放の様子を示した図である。
図8(B)は、把持部材41を利用者側に引いた場合の開放の様子である。
図8(C)は、把持部材41を下に押し下げた場合の開放の様子である。
図8(D)は、把持部材41を上に押し上げた場合の開放の様子である。何れの場合においても、開放機構部40のローラー54が冷蔵庫扉30から突き出す形で冷蔵庫外箱20の周縁部23を押圧し、冷蔵庫扉30を開放している。
図8は、左側の可動部50Lしか示されていないが、右側の可動部50Rも同様に作用し、冷蔵庫扉30を開放する。本実施形態では、1の把持部材41を操作することで、冷蔵庫扉30の両側において可動部50R、50Lが同様に動作し、4つのローラー54がバランスよく周縁部23を押圧し、冷蔵庫扉30を開放することが可能となっている。また、
図8(B)〜
図8(D)に示すように、把持部材41の多様な操作にて、冷蔵庫扉30を開放することができるため、操作の自由度の拡大が図られている。このように本実施形態の冷蔵庫10は、病院の入院患者等に対しても容易に冷蔵庫扉30を開放させることが可能である。
【0039】
図8(B)は、矢印で示すように把持部材41を手前に引いた場合の開放の様子である。把持部材41を手前に引くことで、支持部材57は図中、右手方向に移動し、支持部材57に回転可能に連結された2つのテコ部材51は、第2ガイド部材53を支点として回転する。テコ部材51の回転に伴い、開放孔73から突き出すローラー54が周縁部23を押圧する。すなわち、把持部材41を引くことで、テコ部材51と支持部材57の連結部に力が作用し、テコ部材51が第2ガイド部材53を支点として回転し、テコ部材51に設けられたローラー54が周縁部23を押圧する。
【0040】
2つのテコ部材51は、第1ガイド部材52について上下、略対称に構成されているため、2つのローラー54は略同様に動作し、バランスよく周縁部23を押圧することになる。なお、冷蔵庫扉30の開放時において、テコ部材51は、テコ部材51のストッパ部51eが、収納部70側の規制部74に突き当たることで、その動作範囲が制限されている。このテコ部材51の動作範囲の規制は、
図8(C)、
図8(D)に示す他の形態の場合も同様である。
【0041】
図8(C)は、把持部材41を利用者側に下に押し下げた場合の開放の様子である。この場合、支持部材57は、第1ガイド部材52を中心に右回りに回転する。その際、支持部材の57の下側に形成された当接部57aが、テコ部材51の被当接部51dに当接し、第2ガイド部材53を支点としてテコ部材51を回転させる。テコ部材51の回転は、
図8(B)の場合と同様、テコ部材51に設けられたローラー54により周縁部23を押圧する。すなわち、把持部材41を押し下げることで、テコ部材51の被当接部51dに力が作用し、テコ部材51が第2ガイド部材53を支点として回転し、テコ部材51に設けられたローラー54が周縁部23を押圧する。
【0042】
また、
図8(C)の場合、上側のテコ部材51は、下側のテコ部材51と回転可能に連結されているため、テコ部材51と支持部材57の連結部に作用する力で、第2ガイド部材53を軸として回転し、上側のテコ部材51に設けられたローラー54が周縁部23を押圧することとなる。このように本実施形態では、把持部材41を押し下げた場合においても、
図8(B)のように把持部材41を引いた場合と同様に、2つのテコ部材51を動作させ、周縁部23を2つのローラー54で押圧することが可能である。
【0043】
図8(D)は、把持部材41を上に押し上げた場合の開放の様子である。この場合、
図8(C)と同様の原理で2つのローラー54が周縁部23を押圧する。すなわち、把持部材41が押し上げられると、上側のテコ部材51の被当接部51dに力が作用し、テコ部材51が第2ガイド部材53を支点として回転し、上側のテコ部材51に設けられたローラー54が周縁部23を押圧する。一方、下側のテコ部材51は、テコ部材51と支持部材57の連結部に作用する力で、第2ガイド部材53を軸として回転し、下側のテコ部材51に設けられたローラー54が周縁部23を押圧する。
【0044】
以上、本実施形態の開放機構部40の動作について説明を行ったが、利用者が操作する把持部材41を引くことでも、押し下げることでも、押し上げることでも、冷蔵庫扉30を開放することが可能であり、自由度の高い操作性を実現している。
【0045】
図8の実施形態では、可動部50に2つのテコ部材51を使用し、各テコ部材51に設けられたローラーが周縁部23を押圧する形態としているが、本発明では、操作性の自由度の向上を図ることを目的としたものであって、それを実現するための各種構成を採用することが可能である。以下に、本発明の実施形態について3つの変形例を説明する。
【0046】
(変形例1)
図9は、本発明の他の実施形態(変形例1)に係る開放機構部40の動作の様子を示している。
図9(A)は、冷蔵庫扉30を閉めたときの静止状態である。
図9(B)は、把持部材41を利用者側に引いた場合の開放の様子である。
図9(C)は、把持部材41を下に押し下げた場合の開放の様子である。
図9(D)は、把持部材41を上に押し上げた場合の開放の様子である。本実施形態の開放機構部40は、
図8で説明した実施形態と同じ操作性を実現している。但し、一方のテコ部材51(この場合、上のテコ部材51)にローラー54を設けていない点で異なっている。したがって、冷蔵庫扉30の1つの側面から突出するローラー54は1つとなるが、
図8と同じく高い操作性を実現している。
【0047】
図9(B)のように、把持部材41を引くことで、テコ部材51と支持部材57の連結部に力が作用し、テコ部材51が第2ガイド部材53を支点として回転し、テコ部材51に設けられたローラー54が周縁部23を押圧する。また、
図9(C)のように、把持部材41を押し下げることで、テコ部材51の被当接部51dに力が作用し、テコ部材51が第2ガイド部材53を支点として回転し、テコ部材51に設けられたローラー54が周縁部23を押圧する。また、
図9(D)のように、把持部材41が押し上げられると、上側のテコ部材51の被当接部51dに力が作用し、上側のテコ部材51が第2ガイド部材53を支点として回転させる。上側のテコ部材51の回転により、テコ部材51と支持部材57の連結部に力が作用し、下側のテコ部材51が第2ガイド部材53を軸として回転し、ローラー54が周縁部23を押圧する。
【0048】
このように、上下2つのテコ部材51には、その両方に押圧部としてのローラー54を設ける必要は無く、何れか一方でも操作性の高い開放機構部40を実現することが可能となる。このような実施形態では、
図8の実施形態と比較して、高い操作性を維持しつつ、部品点数の削減を図り、更なる低コスト化を実現することも可能である。
【0049】
(変形例2)
図10は、本発明の他の実施形態(変形例3)に係る開放機構部40の動作の様子を示している。
図10(A)は、冷蔵庫扉30を閉めたときの静止状態である。
図10(B)は、把持部材41を利用者側に引いた場合の開放の様子である。
図10(C)は、把持部材41を下に押し下げた場合の開放の様子である。把持部材41を手前に引く、あるいは、把持部材41を押し下げることで、冷蔵庫扉30を開放することが可能である。
図8、
図9で説明した実施形態と比較して、操作性の自由度は低下するものの、複数通りの操作方法を可能としている。
【0050】
本実施形態の開放機構部40の構成についてみると、テコ部材51が1つである点において、前述した実施形態と異なっている。したがって、前述した実施形態と比較して部品点数を大きく削減し、開放機構部40の小型化、並びに、更なる低コスト化が期待出来る。
【0051】
図10(B)のように、把持部材41を引くことで、テコ部材51と支持部材57の連結部に力が作用し、テコ部材51が第2ガイド部材53を支点として回転し、テコ部材51に設けられたローラー54が周縁部23を押圧する。また、
図10(C)のように、把持部材41を押し下げることで、テコ部材51の被当接部51dに力が作用し、テコ部材51が第2ガイド部材53を支点として回転し、テコ部材51に設けられたローラー54が周縁部23を押圧する。
【0052】
図10で説明した変形例2は、本発明の開放機構部40における基本構成となる。なお、
図10中、弾性部材としてのスプリング61は、基本構成において必ずしも必要とするものではない。
図9の実施形態(変形例1)は、この基本構成に、さらなるテコ部材51(本発明における第2のテコ部材)を設けることで、操作性の自由度の向上が図られたものである。また、
図8の実施形態は、この基本構成に、ローラー54が付随したテコ部材51を更に設けたものであり、操作性の自由度の向上とともに、2つのローラー54で周縁部23を押圧することで、安定した冷蔵庫扉30の開放を実現している。
【0053】
(変形例3)
図11〜
図13は、本発明の実施形態(変形例3)に係る冷蔵庫10の開放機構部40を説明するための図である。前述した実施形態(変形例2)では、1つのテコ部材5を使用して部品点数を削減するものであったが、把持部材41の操作性の自由度が低下することとなった。本実施形態(変形例3)では、操作性の自由度を低下させることなく部品点数の削減を図ったものとなっている。
【0054】
図11は、変形例3における開放機構部40の構成を示す図である。本実施形態では、
図10で説明した実施形態(変形例2)と、略同様の構成を有しているが、支持部材57の内側に第3ガイド部材58が設けられている点において異なっている。第3ガイド部材58は、図示しない係止部材によって支持部材57に係止されている。本実施形態の第3ガイド部材58は、樹脂等の材料で形成され、ローラー形状を有している。変形例3では、この第3ガイド部材58により、1つのテコ部材51を使用した形態であっても、操作性の自由度向上が図られている。
【0055】
図12は、本発明の実施形態(変形例3)に係る収納部70の平面図である。この収納部70は、
図7で説明したように冷蔵庫扉30の側面に設けられ、開放機構部40側の可動部50R、50Lを収容し、可動部50R、50Lの可動範囲を規制する。第1ガイド孔71は、可動部50R、50Lの第1ガイド部材52と、第3ガイド部材58を収容する。本実施形態の第1ガイド孔71は、冷蔵庫10の前面に向かうに従って、途中から孔の幅が広がる形状を有している。第2ガイド孔72は、第2ガイド部材53を回転可能、そして、上下方向に摺動可能に収容する。スプリング係止部75、開放孔73、規制部74等の他の構成は、前述した実施形態と略同じであるため、ここでの説明は省略する。
【0056】
図13は、本発明の実施形態(変形例3)に係る開放機構部40の動作の様子を示す図である。
図13(A)は、
図11で示す開放機構部40の可動部50R、50Lを、
図12に示す収納部70に取り付けた状態である。前述した実施形態と同様、スプリング係止部75とテコ部材51の間には、スプリング61(弾性部材)が設けられ、テコ部材51を冷蔵庫10の前面方向に押圧することで、把持部材41を操作していないときにおいても開放機構部40を所定の位置に静止させた状態としている。
【0057】
図13(B)は、把持部材41を利用者側に引いた場合の開放の様子である。
図13(C)は、把持部材41を下に押し下げた場合の開放の様子である。
図13(D)は、把持部材41を上に押し上げた場合の開放の様子である。
【0058】
図13(B)のように、把持部材41を引くことで、テコ部材51と支持部材57の連結部に力が作用し、テコ部材51が第2ガイド部材53を支点として回転し、テコ部材51に設けられたローラー54が周縁部23を押圧する。また、
図13(C)のように、把持部材41を押し下げることで、テコ部材51の被当接部51dに力が作用し、テコ部材51が第2ガイド部材53を支点として回転し、テコ部材51に設けられたローラー54が周縁部23を押圧する。本実施形態では、支持部材57に第3ガイド部材58を設けているため、
図12で説明したように第1ガイド孔71は、冷蔵庫10の前面に向かうに従って途中から孔の幅が広がる形状を有している。これは、支持部材57に設けられた第3ガイド部材58の上下方向の動作を許容するための形状である。
【0059】
図13(D)は、本実施形態(変形例3)において、特徴となる把持部材41の押し上げ動作である。
図10で説明した実施形態(変形例2)のテコ部材51が1つの構成では、把持部材41は上下方向について、一方向(下方向)の操作しか行うことができなかったが、本実施形態(変形例3)では、1つのテコ部材51を使用した場合であっても、上下両方向の操作を行うことを可能としている。把持部材41を上方向に操作することで、第1ガイド孔71内を移動する第3ガイド部材58は、第1ガイド孔71の上辺に突き当たる。把持部材41に上向きに加えられる力は、第3ガイド部材58を支点として、支持部材57に回動可能に連結されたテコ部材51を、図中、右回りに回転させる反力となる。このテコ部材51に加えられる力によって、テコ部材51に設けられたローラー54は、周縁部23を押圧し、冷蔵庫扉30を開放させる。本実施形態では、第3ガイド部材58と、第3ガイド部材58が移動可能な第1ガイド孔71によって、上方向操作時におけるスムースな冷蔵庫扉30の開放を実現している。支持部材57がテコ部材51に反力を加えるための構成は、このように第3ガイド部材58と第1ガイド孔71による構成に限られるものではなく、支持部材57自体が、冷蔵庫扉30の各種構成に突き当たる等、各種形態を採用することが可能である。このように本実施形態(変形例3)では、1つのテコ部材51を使用した形態において、冷蔵庫扉30の開放操作時における操作性の向上が図られたものとなっている。
【0060】
以上、本発明によれば、引出式の扉開放機構を有する冷蔵庫において、スムースな冷蔵庫扉の開放を実現するものであり、特に、開放するための操作性の自由度向上が図られたものとなっており、高齢者や病人に対しても容易な冷蔵庫扉の開放を提供することを可能としている。具体的には、冷蔵庫扉の左右に配置されたローラー54(押圧部)で、冷蔵庫外箱20の周縁部23をバランスよく押圧することでスムースな冷蔵庫扉30の開放を実現している。このような構成により、冷蔵庫扉の引出機構にも引き出し精度の高い部材を配する必要が無く、製造コストの低減を図ることが可能となる。また、冷蔵庫扉30を複数通りの操作方法で開放することが可能となっており、操作性の自由度向上が図られている。