(54)【発明の名称】エポキシ樹脂用硬化剤、マイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤、マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物、一液性エポキシ樹脂組成物及び加工品
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シェル(S)は、イソシアネート化合物、活性水素化合物、エポキシ樹脂用硬化剤(h2)、エポキシ樹脂(e2)、及び低分子アミン化合物(B)よりなる群から選択された2種以上を原料として得られる反応生成物を含む、請求項2〜4のいずれか1項に記載のマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤。
前記エポキシ樹脂用硬化剤(H)と前記エポキシ樹脂(e1)又は前記エポキシ樹脂(e2)とが含有する全塩素量が、2500ppm以下である、請求項2〜5のいずれか1項に記載のマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤。
請求項2〜6のいずれか1項に記載のマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤と、エポキシ樹脂(e3)とを、(エポキシ樹脂用硬化剤):(エポキシ樹脂(e3))(質量比)として100:0.1〜100:1000の配合比で含む、マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物。
前記エポキシ樹脂(e3)におけるジオール末端成分の存在割合が、当該エポキシ樹脂(e3)の基本構造成分の0.001〜30質量%である、請求項7又は8に記載のマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物。
酸無水物類、フェノール類、ヒドラジド類、及びグアニジン類よりなる群から選ばれる少なくとも1種のエポキシ樹脂用硬化剤(h3)、又は、環状ホウ酸エステル化合物を更に含む、請求項7〜9のいずれか1項に記載のマスタ−バッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物。
前記環状ホウ酸エステル化合物は、2,2’−オキシビス(5,5’−ジメチル−1,3,2−ジオキサボリナン)である、請求項10に記載のマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物。
請求項7〜12のいずれか1項に記載のマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物と、エポキシ樹脂(e4)とを、(マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物):(エポキシ樹脂(e4))(質量比)として100:0.001〜100:1000の配合比で含む、一液性エポキシ樹脂組成物。
ペースト状組成物、フィルム状組成物、接着剤、接合用ペースト、接合用フィルム、導電性材料、異方導電性材料、異方導電性フィルム、絶縁性材料、封止材料、コーティング用材料、塗料組成物、プリプレグ、熱伝導性材料、燃料電池用セパレータ材又はフレキシブル配線基板用オーバーコート材である、請求項14に記載の加工品。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施できる。
【0016】
(I−1)エポキシ樹脂用硬化剤
本実施形態のエポキシ樹脂用硬化剤は、室温25℃で固形であり、かつ、粒子を含む。さらに、本実施形態のエポキシ樹脂用硬化剤においては、前記粒子の篩下積算分率50%の粒径D
50が0.3μmを超えて12μm以下であり、前記粒子の篩下積算分率99%の粒径D
99と篩下積算分率50%の粒径D
50との比(D
99/D
50)で定義される粒度分布が6以下であり、前記粒子の比表面積値(Y)と粒径D
50(X)が下記式(1)で表される関係を満たし、前記エポキシ樹脂用硬化剤の含有水分量が1.5%以下である。
4.0X
-1 ≦ Y ≦8.3X
-1 (1)
【0017】
本実施形態のエポキシ樹脂用硬化剤は、上記のように構成されているため、エポキシ樹脂用硬化剤の粒子同士の凝集比率が低減され、硬化性、貯蔵安定性、隙間浸透性のいずれにも優れるエポキシ樹脂用硬化剤とすることができる。すなわち、本実施形態によれば、硬化性能を保持したまま貯蔵安定性を損なわず、硬化剤の分散性、狭ギャップへの浸透性を向上させたエポキシ樹脂用硬化剤を提供することができる。より詳細には、本実施形態のエポキシ樹脂用硬化剤は、その粉末の形状補正をすることによって、粉末の比表面積を低下させ、硬化剤(粒子)同士の凝集を抑制し、1液型エポキシ樹脂用硬化剤とした際の硬化性能、貯蔵安定性、硬化剤の分散性、狭いギャップへの浸透性が向上する。
【0018】
まず、本実施形態のエポキシ樹脂用硬化剤の構成について詳細に説明する。本実施形態のエポキシ樹脂用硬化剤としては、以下に限定されないが、例えば、アミン系硬化剤を主成分とするものが挙げられる。アミン系硬化剤としては、以下に限定されないが、例えば、アミンアダクト系、変性ポリアミン系、脂肪族ポリアミン系、複素環式ポリアミン系、脂環式ポリアミン系、芳香族アミン系、ポリアミドアミン系、ケチミン系、ウレタンアミン系等、通常使用されるアミン系硬化剤が挙げられる。中でも、適度な反応性を有する観点から、低分子アミン化合物(a1)とアミンアダクトとからなるアミン系硬化剤が好ましい。ここで、アミン系硬化剤を「主成分とする」とは、50質量%以上、好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上を占めることをいう。
【0019】
ここで、低分子アミン化合物(a1)としては、以下に限定されないが、例えば、少なくとも1個の一級アミノ基及び/又は二級アミノ基を有するが、三級アミノ基を有さない、化合物;少なくとも1個の三級アミノ基と少なくとも1個の活性水素基とを有する、化合物等が挙げられる。
【0020】
少なくとも1個の一級アミノ基及び/又は二級アミノ基を有するが、三級アミノ基を有さない、化合物としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、シクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン、アニリン、トルイジン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の、三級アミノ基を有さない第一アミン類;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ピペリジン、ピペリドン、ジフェニルアミン、フェニルメチルアミン、フ
ェニルエチルアミン等の、三級アミノ基を有さない第二アミン類等が挙げられる。
【0021】
少なくとも1個の三級アミノ基と少なくとも1個の活性水素基とを有する化合物としては、以下に限定されないが、例えば、2−ジメチルアミノエタノール、1−メチル−2−ジメチルアミノエタノール、1−フェノキシメチル−2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、1−ブトキシメチル−2−ジメチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−β−ヒドロキシエチルモルホリン等のアミノアルコール類;2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等のアミノフェノール類;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−アミノエチル−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−フェニルイミダゾリン、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−メチルイミダゾリン、2−メチルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、2−エチルイミダゾリン、2−エチル−4−メチルイミダゾリン、2−ベンジルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−(o−トリル)−イミダゾリン、テトラメチレン−ビス−イミダゾリン、1,1,3−トリメチル−1,4−テトラメチレン−ビス−イミダゾリン、1,3,3−トリメチル−1,4−テトラメチレン−ビス−イミダゾリン、1,1,3−トリメチル−1,4−テトラメチレン−ビス−4−メチルイミダゾリン、1,3,3−トリメチル−1,4−テトラメチレン−ビス−4−メチルイミダゾリン、1,2−フェニレン−ビス−イミダゾリン、1,3−フェニレン−ビス−イミダゾリン、1,4−フェニレン−ビス−イミダゾリン、1,4−フェニレン−ビス−4−メチルイミダゾリン等のイミダゾリン類;ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジプロピルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、ジプロピルアミノエチルアミン、ジブチルアミノエチルアミン、N−メチルピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、ジエチルアミノエチルピペラジン等の三級アミノアミン類;2−ジメチルアミノエタンチオール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトピリジン、4−メルカプトピリジン等のアミノメルカプタン類;N,N−ジメチルアミノ安息香酸、N,N−ジメチルグリシン、ニコチン酸、イソニコチン酸、ピコリン酸等のアミノカルボン酸類;N,N−ジメチルグリシンヒドラジド、ニコチン酸ヒドラジド、イソニコチン酸ヒドラジド等のアミノヒドラジド類等が挙げられる。これらの低分子アミン化合物(a1)の中でも、適度な反応性を有する観点から、イミダゾール類が好ましい。
【0022】
次に、アミンアダクトとしては、以下に限定されないが、例えば、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、尿素化合物、イソシアネート化合物及びエポキシ樹脂(e1)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物とアミン化合物(a2)との反応により得られるアミノ基を有する化合物等が挙げられる。
【0023】
カルボン酸化合物としては、以下に限定されないが、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、ダイマー酸等が挙げられる。スルホン酸化合物としては、以下に限定されないが、例えば、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等が、尿素化合物としては、以下に限定されないが、例えば、尿素、メチル尿素、ジメチル尿素、エチル尿素、t−ブチル尿素等が挙げられる。
【0024】
イソシアネート化合物としては、以下に限定されないが、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、脂肪族トリイソシアネート、ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0025】
脂肪族ジイソシアネートとしては、以下に限定されないが、例えば、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0026】
脂環式ジイソシアネートとしては、以下に限定されないが、例えば、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、1,4−イソシアナトシクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、1,3−ビス(2−イソシアナトプロピル−2−イル)−シクロヘキサン等が挙げられる。
【0027】
芳香族ジイソシアネートとしては、以下に限定されないが、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0028】
脂肪族トリイソシアネートとしては、以下に限定されないが、例えば、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアネートメチルヘキサン等が挙げられる。
【0029】
ポリイソシアネートとしては、以下に限定されないが、例えば、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートや上記ジイソシアネート化合物より誘導されるポリイソシアネート等が挙げられる。上記ジイソシアネートより誘導されるポリイソシアネートとしては、以下に限定されないが、例えば、イソシアヌレート型ポリイソシアネート、ビュレット型ポリイソシアネート、ウレタン型ポリイソシアネート、アロハネート型ポリイソシアネート、カルボジイミド型ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0030】
エポキシ樹脂(e1)としては、以下に限定されないが、例えば、モノエポキシ化合物及び多価エポキシ化合物のいずれか又はそれらの混合物等が挙げられる。
【0031】
モノエポキシ化合物としては、以下に限定されないが、例えば、ブチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、パラ−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、パラキシリルグリシジルエーテル、グリシジルアセテート、グリシジルブチレート、グリシジルヘキソエート、グリシジルベンゾエート等が挙げられる。
【0032】
多価エポキシ化合物としては、以下に限定されないが、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA等のビスフェノール類をグリシジル化したビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等のその他の2価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール等のトリスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;1,1,2,2,−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のテトラキスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラック等のノボラック類をグリシジル化したノボラック型エポキシ樹脂等;多価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、グリセリンやポリエチレングリコール等の多価アルコールをグリシジル化した脂肪族エーテル型エポキシ樹脂;p−オキシ安息香酸、β−オキシナフトエ酸等のヒドロキシカルボン酸をグリシジル化したエーテルエステル型エポキシ樹脂;フタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸をグリシジル化したエステル型エポキシ樹脂;4,4−ジアミノジフェニルメタンやm−アミノフェノール等のアミン化合物のグリシジル化物やトリグリシジルイソシアヌレート等のアミン型エポキシ樹脂等のグリシジル型エポキシ樹脂と、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環族エポキサイド等が挙げられる。
【0033】
エポキシ樹脂(e1)の全塩素量は、硬化性と貯蔵安定性のバランスに優れたエポキシ樹脂用硬化剤を得る観点から、2500ppm以下であることが好ましく、より好ましくは2000ppm以下であり、さらに好ましくは1500ppm以下であり、よりさらに好ましくは800ppm以下であり、一層好ましくは400ppm以下であり、より一層好ましくは180ppm以下であり、特に好ましくは100ppm以下であり、極めて好ましくは80ppm以下であり、最も好ましくは50ppm以下である。
【0034】
ここで、全塩素量とは、エポキシ樹脂中に含まれる有機塩素及び無機塩素の総量を示し、エポキシ樹脂に対する質量基準の値である。エポキシ樹脂の全塩素量は、以下の方法により測定される。
【0035】
エポキシ樹脂組成物を、キシレンを用いて、エポキシ樹脂がなくなるまで洗浄と濾過を繰り返す。次に、ろ液を100℃以下で減圧留去し、エポキシ樹脂を得る。得られたエポキシ樹脂試料1〜10gを、滴定量が3〜7mLになるよう精秤し、25mLのエチレングリコールモノブチルエーテルに溶解し、これに1規定KOHのプロピレングリコール溶液25mLを加えて20分間煮沸した後、硝酸銀水溶液で滴定した滴定量より計算する。
【0036】
また、エポキシ樹脂(e1)の全塩素量は、シェル形成反応のコントロールを容易にする観点から、0.01ppm以上であることが好ましく、より好ましくは0.02ppm以上であり、さらに好ましくは0.05ppm以上であり、よりさらに好ましくは0.1ppm以上であり、特に好ましくは0.2ppm以上であり、極めて好ましくは0.5ppm以上である。さらに、全塩素量が0.1ppm以上であると、シェル形成反応が硬化剤を含むコア表面で効率よく行われ、より一層貯蔵安定性に優れたシェルが得られる傾向にある。
【0037】
以上より、エポキシ樹脂(e1)の全塩素量の好ましい範囲は0.01ppm以上200ppm以下であり、より好ましい範囲は0.2ppm以上80ppm以下であり、さらに好ましい範囲は0.5ppm以上50ppm以下である。
【0038】
ここで、全塩素の内、1、2−クロロヒドリン基に含まれる塩素は、一般に、加水分解性塩素と呼ばれる。エポキシ樹脂(e1)中の加水分解性塩素量は、好ましくは50ppm以下、より好ましくは0.01以上20ppm以下、さらに好ましくは0.05以上10ppm以下である。加水分解性塩素量が50ppm以下であると、高い硬化性と貯蔵安定性を両立する観点から有利であり、硬化物が優れた電気特性を示す傾向にある。
【0039】
ここで、加水分解性塩素は、以下の方法により測定される。すなわち、試料3gを50mLのトルエンに溶解し、これに0.1規定KOHのメタノール溶液20mLを加えて15分間煮沸した後、硝酸銀水溶液で滴定した滴定量より計算する。
【0040】
アミン化合物(a2)としては、上述した低分子アミン化合物(a1)の例として挙げたアミン化合物が使用できる。
【0041】
これらのアミンアダクトの中で、特に、エポキシ樹脂(e1)とアミン化合物(a2)との反応により得られるものが好ましい。エポキシ樹脂(e1)とアミン化合物(a2)との反応により得られるアミンアダクトは、未反応のアミン化合物(a2)を低分子アミン化合物(a1)として流用できるという観点からも好ましい。
【0042】
エポキシ樹脂(e1)とアミン化合物(a2)との反応により得られるアミンアダクトは、例えば、エポキシ樹脂(e1)とアミン化合物(a2)を、エポキシ樹脂(e1)のエポキシ基1当量に対して、アミン化合物(a2)の活性水素基が好ましくは0.5当量〜10当量、より好ましくは0.8当量〜5当量、さらに好ましくは0.95当量〜4当量)となるような範囲で、必要に応じて溶剤の存在下において、例えば、50〜250℃の温度で0.1〜10時間反応させることにより得られる。エポキシ基に対する活性水素基の当量比を0.5以上にすると、ゲルパーミエーションクラマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布が7以下となるアミンアダクトを得るのに有利であり、その結果、アミンアダクトの流動性が高まる傾向にある。さらに、上記のようなアミンアダクトを用いることは保存安定性、低温硬化性の観点から好ましい。当量比を10以下にすると、未反応のアミン化合物(a2)を回収せずにそのまま低分子アミン化合物(a1)として利用できるので有利である。
【0043】
エポキシ樹脂(e1)とアミン化合物(a2)とによりアミンアダクトを得る反応において、必要に応じて用いられる溶剤としては、以下に限定されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ミネラルスピリット、ナフサ等の炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン類;酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;メタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール等のアルコール類;水等が挙げられる。これらの溶剤は併用しても構わない。
【0044】
次に比表面積の調整について説明する。エポキシ樹脂用硬化剤粒子を作製する方法としてアミン化合物/エポキシ化合物付加体粒子を不溶溶媒中で析出させる方法を用いることで、粉砕等での粒子作成方法よりも比表面積が低い物が得られる。また、エポキシ樹脂用硬化剤を粉砕等で粒子を得た後に形状補正することで比表面積を調整し低下させることも可能である。形状補正方法としては、以下に限定されないが、例えば、ジェットミル等での物理的な粒子同士の衝突での形状補正の方法や熱を用いて形状補正する方法等が挙げられる。上記のいずれの方法を採用する場合でも、比表面積調整前後で十分な温湿度管理による水分量の調整を行う。すなわち、良好な製品品質を確保する観点から、比表面積の調整と水分量の調整を同時に行う。
【0045】
比表面積調整を行ってエポキシ樹脂用硬化剤を作製する方法として、上述の熱処理での形状補正方法では、水分除去と形状補正の両方を行うことが可能となる。エポキシ樹脂用硬化剤は水分を吸湿しやすいものが多く、特に熱等を用いた比表面積調整後は水分が熱によって蒸発し吸湿しやすくなる傾向にあり、作製直後に外気の温湿度の影響ですぐに水を含むため、水分量を調整するのが難しいといえる。したがって、本実施形態の所望の効果を不備なく得る観点から、特に温湿度を十分にコントロールした環境下において比表面積と水分量の両方を調整したエポキシ樹脂用硬化剤を作製することが好ましいといえる。
【0046】
熱によって形状補正を行う方法に関しては、以下に限定されないが、例えば、熱風を下向きに噴射する熱風噴射ノズルと、その熱風噴射ノズルの出口部の内部に配置されて、熱風噴射ノズルから噴射される熱風の中心部に向けて固形エポキシ樹脂用硬化剤粒子を噴射する原料噴射ノズルと、その原料噴射ノズルの外側に設けられて固形エポキシ樹脂用硬化剤が融点以上に温度上昇することを防止する断熱機構を持ち、原料噴射ノズルから噴射される固形エポキシ樹脂用硬化剤粒子を衝突により外向きに拡散させて熱風中に分散供給させる衝突部材からなる装置を用いて形状補正を行うエポキシ樹脂用硬化剤の製造方法を挙げることができる。この装置の利点としては、断熱機構を有し、かつ、冷却ジャケットによって冷却を行うことによって、原料噴射ノズル内に粒子が固着をするのを防止する点が挙げられる。また、エポキシ樹脂用硬化剤(粒子)は熱によって形状が補正されるが、粒子を衝突部材に衝突させて外向きに分散させ、熱風を下向きに噴射して急激に冷却を行うため、粒子同士が衝突部材に固着することを防ぐことができる。
【0047】
本実施形態のエポキシ樹脂用硬化剤(粒子)は、特定の平均粒径においての比表面積値を調整されているため、これを用いた潜在性1液型エポキシ樹脂用硬化剤を作製する際に低粘度にすることができる。これは平均粒径が同様でエポキシ樹脂中に含有する硬化剤粒子の量が同様でも比表面積のより小さい粒子である方が、より粒子がエポキシ樹脂中に接する比表面積が小さいために流動性の優れた形状になると推察される。平均粒径の値が変動すると比表面積の値も変動する。このため、本実施形態では、比表面積値のみではなく、ある平均粒径においての比表面積値を調整することとしている。
【0048】
上記した式(1)は、ある篩下積算分率50%の粒径D
50(X)と比表面積(Y)
の関係を示している。形状補正を行っていない不定形状をしたエポキシ樹脂用硬化剤(粒子)のXとYの関係は、「Y=10.4X
-1」で示される。式(1)における上限値「Y=8.3X
-1」は、この不定形状のエポキシ樹脂用硬化剤粒子を物理的な形状補正、具体的には粒子が粉砕を起こさない程度に形状補正方法をコントロールすることによって、粒子同士や装置への衝突でエポキシ樹脂用硬化剤の形状補正を行い、比表面積を下げた本実施形態のエポキシ樹脂用硬化剤におけるYの上限値を示すものである。一方、全ての粒子が完全な球体として存在したと仮定して計算した場合、Yの下限値は「Y=2.5X
-1」で示される。従って、Yの下限値としては、「2.5X
-1」以下になることはない。また、熱による方法で調整を行った場合、Yの下限値は「Y=4.0X
-1」で表すことができる。この下限値はエポキシ樹脂用硬化剤の表面張力を考慮しており、熱をかけることでより比表面積の小さな形状になることを考慮している。従って本実施形態のエポキシ樹脂用硬化剤は、理論的には「2.5X
-1 ≦ Y ≦8.3X
-1」を、より実質的には式(1)「4.0X
-1 ≦ Y ≦8.3X
-1」を満たす、比表面積(Y)を有するように構成されている。式(1)で表される比表面積の範囲に調整することによって、硬化剤同士の凝集を抑制し、1液型エポキシ樹脂用硬化剤とした際の、硬化性能、貯蔵安定性、硬化剤の分散性、狭いギャップへの浸透性、を向上させることができる。これは粒子同士が形状補正されることによって粒子の充填密度を上げることができ、樹脂粒子の粘度を低減させることが大きな原因であると考えられる。
【0049】
次に本実施形態のエポキシ樹脂用硬化剤のメジアン径(すなわち上記篩下積算分率50%の粒径D
50)について説明する。本実施形態のエポキシ樹脂用硬化剤(粒子)は、均質な硬化物を得る観点及び粒子同士の凝集を防止して硬化物の良好な物性を確保する観点から、メジアン径で定義される平均粒径が0.3μmを超えて12μm以下であり、好ましくは1μm以上10μm以下、さらに好ましくは1.5μm以上5μm以下である。上記粒子を出発材料として、本実施形態のマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤が形成される。ここで、メジアン径で定義される平均粒径とは、レーザー回析・光散乱法で測定されるストークス径をいう。また、その形状は特に限定されず、例えば、球状、顆粒状、粉末状、不定形のいずれでもよい。粒径が12μmより大きいと、均質な硬化物を得ることができない。また、組成物を配合する際に、大粒径の凝集物が生成しやすくなり、硬化物の物性を損なうことにもなる。粒径が0.3μm以下であると、出発材料粒子間で凝集が起こり、薄いシェルの形成が困難となる。その結果、カプセル膜形成が不完全な部分が存在することになり、貯蔵安定性、耐溶剤性を損なうこととなる。
【0050】
次に本実施形態のエポキシ樹脂用硬化剤の粒度分布について説明する。篩下積算分率99%の粒径D
99と篩下積算分率50%の粒径D
50との比(D
99/D
50)で定義される粒度分布において、粒子同士の凝集を防止する観点から、D
99/D
50は6以下である。同様の観点から、好ましくは5.5以下であり、より好ましくは5以下である。D
99/D
50が6よりも大きいと紛体粒子中の粗大粒子が多いため凝集物が生成しやすくなり、硬化物の物性を損なう可能性がある。D
99/D
50が小さければ小さいほど粒度の分布はブロードではないことを意味し、均質な硬化物を得やすく、良好な硬化性能が得られやすい。また、D
99/D
50の 値が6よりも大きい場合、粒度分布が広く粒径の比較的大きな粒子が存在するため、D
99/D
50の値が6以下のものと比べると、配合物を作製した際のギャップへの浸透性が劣ることとなる。
【0051】
次に、本実施形態のエポキシ樹脂用硬化剤の含有水分量について説明する。比表面積を調整した本実施形態のエポキシ樹脂用硬化剤の水分量は1.5%以下であり、好ましくは0.8%以下であり、より好ましくは0.6%以下である。1.5%より多い水分量を含有すると不具合が発生する。すなわち、エポキシ樹脂用硬化剤の硬化性能の低下や保存安定性の劣化、粉としての流動性の低下による生産性の低下や、凝集物の発生によるエポキシ樹脂用硬化剤の分散性の低下、収率の低下等の問題が挙げられる。エポキシ樹脂用硬化剤の水分量は0.8%以下であれば補正形状後のブロッキングをより好ましく防止でき、物性も安定する傾向にあり、同様の観点から0.6%以下であれるとなお好ましい。なお、本実施形態のマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤を作製する際には、比表面積と水分量を調整して得られた本実施形態のエポキシ樹脂用硬化剤100部に対してカプセル膜作製時に更に水を含ませることで表面シェル形成効率がよく行われると共に、形成されるシェルがより貯蔵安定性及び耐溶剤性に優れた膜となる傾向にある。水の含有量は比表面積、電量滴定を利用するカールフィッシャー法により測定できる。
【0052】
本実施形態のエポキシ樹脂用硬化剤は本実施形態のマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤を得るために用いることができる。すなわち、本実施形態のマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤は、本実施形態のエポキシ樹脂用硬化剤(H)を出発材料として形成されるコア(C)と、前記コア(C)を被覆するシェル(S)と、を有し、前記シェル(S)は、波数1630〜1680cm
-1の赤外線を吸収する結合基(x)と、波数1680〜1725cm
-1の赤外線を吸収する結合基(y)と、波数1730〜1755cm
-1の赤外線を吸収する結合基(z)とを少なくとも表面に有する。このように構成されているため、本実施形態のマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤は、エポキシ樹脂用硬化剤由来の粒子同士の凝集比率が低減され、硬化性、貯蔵安定性、隙間浸透性のいずれにも優れるものとなる。さらに、同様の観点から、前記エポキシ樹脂用硬化剤(H)は、エポキシ樹脂(e1)とアミン化合物との反応により得られるアミンアダクト(A)を主成分とすることが好ましい。ここで、アミンアダクト(A)を「主成分とする」とは、50質量%以上、好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上を占めることをいう。
【0053】
次に、コア(C)について説明する。コア(C)を形成するための出発材料粒子(本実施形態のエポキシ樹脂用硬化剤)の粒径は、上述のメジアン径で定義される平均粒径が0.3μmを超えて12μm以下であり、1μm〜10μmであることが好ましく、1.5μm〜5μmであることがより好ましい。ここで、出発材料粒子の粒径とは、レーザー回析・光散乱法で測定されるストークス径をいう。出発材料粒子の粒径は、後述する実施例に記載された方法に準じて測定することができる。出発材料粒子の粒径が12μm以下であると、均質な硬化物を得ることができ、0.3μm以上であると、出発材料粒子間での凝集を抑制でき、薄いシェルの形成が容易となる。
【0054】
出発材料となる粒子は、25℃で固体である。上記粒子を熱風処理する際の熱風の温度は、好ましくは100℃以上400℃以下である。熱風の温度が100℃以上であると、コア表面の加熱を十分に行うことができ所望の円形度に容易にコントロールできる傾向にあり、400℃以下であると、コア(C)の熱分解をより良好に抑制できる傾向にある。上記観点から、熱風温度は、より好ましくは150℃以上300℃以下、さらに好ましくは180℃以上250℃以下である。
【0055】
また、出発材料粒子の重量平均分子量は、50以上50000以下であることが好ましい。出発材料粒子の分子量が50以上であると、熱風処理の段階で粒子同士の融着をより良好に抑制でき、粒径が大きくなり過ぎることを防止できる傾向にあり、50000以下であると、粒子の軟化温度が高くなりすぎず、熱風処理においてより容易に所望の円形度が得られる傾向にある。上記観点から、出発材料粒子の重量平均分子量の範囲は、より好ましくは70以上10000以下であり、さらに好ましくは100以上5000以下であり、よりさらに好ましくは500以上4000以下であり、特に好ましくは1000以上3000以下である。ここで、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクラマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0056】
コア(C)を形成するための出発材料となる粒子には、アミン系硬化剤の他に、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、メチルナジック酸等の酸無水物系硬化剤;フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック等のフェノール系硬化剤;プロピレングリコール変性ポリメルカプタン、トリメチロールプロパンのチオグルコン酸エステル、ポリスルフィド樹脂等のメルカプタン系硬化剤;トリフルオロボランのエチルアミン塩等のハロゲン化ホウ素塩系硬化剤;1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデカ−7−エンのフェノール塩等の四級アンモニウム塩系硬化剤;3−フェニル−1,1−ジメチルウレア等の尿素系硬化剤;トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等のホスフィン系硬化剤等の他のエポキシ樹脂用硬化剤(h1)を併用することもできる。ただし、上記のみに限定されるものではない。
【0057】
(I−2)第一シェル(S1)
本実施形態におけるシェル(S)は、前記コア(C)を被覆するものであり、少なくとも第一シェル(S1)を含む。第一シェル(S1)はコア(C)の表面を直接被覆しており、波数1630〜1680cm
-1の赤外線を吸収する結合基(x)、波数1680〜1725cm
-1の赤外線を吸収する結合基(y)、及び波数1730〜1755cm
-1の赤外線を吸収する結合基(z)を有し、かつ、結合基(x)、(y)及び(z)の合計の濃度(Cx+Cy+Cz)に対する前記結合基(x)の濃度Cxの比(Cx/(Cx+Cy+Cz))が、0.50以上0.75未満であることが好ましい。ここで、Cxはシェル(S1)中における前記結合基(x)の濃度を表し、Cyはシェル(S1)中における前記結合基(y)の濃度を表し、Czはシェル(S1)中における前記結合基(z)の濃度を表す。
【0058】
ここで、赤外線吸収は、赤外分光光度計を用いて測定することができるが、特に、フーリエ変換式赤外分光光度計(FT−IR)を用いることが好ましい。
【0059】
結合基(x)は、好ましくは、ウレア結合基である。結合基(y)は、好ましくは、ビュレット基である。結合基(z)は、好ましくは、ウレタン結合基である。なお、濃度比Cx/(Cx+Cy+Cz)が、0.50以上であると、耐溶剤性がより向上する傾向にある。また、濃度比Cx/(Cx+Cy+Cz)が0.75未満であると、マイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤の粒子同士の融着・凝集をより良好に抑制でき、より良好な粘度を確保できる傾向にある。その結果、エポキシ樹脂用硬化剤組成物を安定した品質で管理することができ、貯蔵安定性をより向上させることができる傾向にある。
【0060】
また、本実施形態の第一シェル(S1)は、ウレア基を有し、且つ、エステル基を有さないことが好ましく、ウレア基、ビュレット基及びウレタン基を有し、且つ、エステル基を有さないことがより好ましい。エステル結合部位は加水分解を受けやすいため、湿度が高い状態においてもシェル(S1)を十分に維持し、エポキシ樹脂用硬化剤の貯蔵安定性・耐湿性や、これを含むエポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の物性を十分に確保する観点から、上記のようにすることが好ましい。
【0061】
第一シェル(S1)としては、上述のコア(C)を形成するための出発材料となる粒子に含まれうるアミン系硬化剤や、これと併用可能なエポキシ樹脂用硬化剤(h1)とイソシアネート化合物の反応生成物であることが好ましく、特にアミン系硬化剤とイソシアネート化合物の反応生成物であることが好ましい。
【0062】
ここで、イソシアネート化合物としては、上述のコア(C)に含まれるアミンアダクトの原料の例として挙げたイソシアネート化合物が使用できる。
【0063】
なお、第一シェルがアミン系硬化剤又は他のエポキシ樹脂用硬化剤(h1)とイソシアネート化合物との反応生成物である場合は、第一シェルが上述のコア(C)を形成するための出発材料となる粒子に含まれうるアミン系硬化剤や、これと併用可能なエポキシ樹脂用硬化剤(h1)とエポキシ樹脂との反応生成物である場合に比べて、波数1630〜1680cm
-1の赤外線を吸収する結合基(x)と波数1680〜1725cm
-1の赤外線を吸収する結合基(y)及び波数1730〜1755cm
-1の赤外線を吸収する結合基(z)の含有量がより増加する傾向にあり、そのような第一シェルを有するマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤はより優れた貯蔵安定性や耐溶剤性を発揮できる傾向にある。
【0064】
上記の波数1630〜1680cm
-1の赤外線を吸収する結合基(x)と波数1680〜1725cm
-1の赤外線を吸収する結合基(y)及び波数1730〜1755cm
-1の赤外線を吸収する結合基(z)を含有する第一シェルは、出発材料となる粒子に含まれうるアミン系硬化剤や、これと併用可能なエポキシ樹脂用硬化剤(h1)とエポキシ樹脂が反応する温度よりも低い温度で、出発材料となる粒子に含まれうるアミン系硬化剤や、これと併用可能なエポキシ樹脂用硬化剤(h1)とイソシアネート化合物を反応させること等により得ることができる。
【0065】
また、本実施形態の他のマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤は、本実施形態のエポキシ樹脂用硬化剤(H)を出発材料として形成されるコア(C)と、前記コア(C)を被覆するシェル(S)と、を有し、前記シェル(S)は、その構造にウレア結合を有し、かつ、エステル結合を有さず、前記エポキシ樹脂用硬化剤(H)のD
50に対する前記シェル(S)の厚みの比は、100:1.5〜100:18である。本実施形態の他のマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤は、このように構成されているため、保存安定性と硬化性のバランスに優れる。さらに、同様の観点から、前記エポキシ樹脂用硬化剤(H)は、エポキシ樹脂(e1)とアミン化合物との反応により得られるアミンアダクト(A)を主成分とすることが好ましい。ここで、アミンアダクト(A)を「主成分とする」とは、50質量%以上、好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上を占めることをいう。
【0066】
(I−3)シェル(S2)
本実施形態におけるシェル(S)は、保存安定性と硬化性のバランスの観点から、イソシアネート化合物、活性水素化合物、エポキシ樹脂用硬化剤(h2)、エポキシ樹脂(e2)、及び低分子アミン化合物(B)よりなる群から選択された2種以上を原料として得られる反応生成物を含むことが好ましい。さらに、上述した第一シェル(S1)の表面に、第一シェル(S1)とエポキシ樹脂(e2)との反応生成物からなる第二シェル(S2)を含むことがより好ましい。
【0067】
第二シェル(S2)は、第一シェル(S1)とエポキシ樹脂(e2)との反応生成物であることが好ましい。エポキシ樹脂(e2)としては、上述のコア(C)に含まれるアミンアダクトの原料となるエポキシ樹脂(e1)の例として挙げた多価エポキシ化合物が使用できる。これらのエポキシ樹脂は単独で使用してもよいし、併用してもよい。
【0068】
また、エポキシ樹脂(e2)は、後述するマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物に含まれるエポキシ樹脂(e3)と同一又はエポキシ樹脂(e3)が混合物の場合はその一部であると、貯蔵安定性と耐溶剤性に優れたマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤が得られる傾向にあるので好ましい。
【0069】
エポキシ樹脂は、通常、分子内に塩素が結合した不純末端を有するが、硬化物の電気特性を十分に確保する観点から、このような不純末端を低減することが好ましい。従って、エポキシ樹脂(e2)の全塩素量は、2500ppm以下であることが好ましく、より好ましくは1500ppm以下、さらに好ましくは500ppm以下である。なお、上記と同様の観点から、本実施形態においては、エポキシ樹脂用硬化剤(H)とエポキシ樹脂(e1)又はエポキシ樹脂(e2)とが含有する全塩素量が、2500ppm以下であることが特に好ましい。
【0070】
エポキシ樹脂(e2)と第一シェル(S1)との反応は分散媒中で行なうことができる。分散媒としては、以下に限定されないが、例えば、溶媒、エポキシ樹脂、可塑剤等が挙げられる。溶媒、可塑剤としては、後述するイソシアネート化合物と活性水素化合物の反応で使用できる溶媒、可塑剤の例として挙げたものが使用できる。
【0071】
また、活性水素化合物としては、以下に限定されないが、例えば、水、少なくとも1個の一級アミノ基及び/又は二級アミノ基を有する化合物、少なくとも1個の水酸基を有する化合物等であり、その構造にエステル基を含有しないものが挙げられる。これらの化合物は併用することもできる。
【0072】
少なくとも1個の一級アミノ基及び/又は二級アミノ基を有する化合物としては、以下に限定されないが、例えば、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン等が挙げられる。
【0073】
脂肪族アミンとしては、以下に限定されないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン等のアルキルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレンジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のポリアルキレンポリアミン;ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンジアミン等のポリオキシアルキレンポリアミン類等が挙げられる。
【0074】
脂環式アミンとしては、以下に限定されないが、例えば、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン等が挙げられる。
【0075】
芳香族アミンとしては、以下に限定されないが、例えば、アニリン、トルイジン、ベンジルアミン、ナフチルアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0076】
少なくとも1個の水酸基を有する化合物としては、以下に限定されないが、例えば、アルコール化合物、フェノール化合物等が挙げられる。
【0077】
アルコール化合物としては、以下に限定されないが、例えば、メチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、ドテシルアルコール、ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、アリルアルコール、クロチルアルコール、プロパルギルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、シンナミルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチル等のモノアルコール類;エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、水添ビスフェノールA、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類が挙げられる。また、少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物と、少なくとも1個の水酸基、カルボキシル基、一級又は二級アミノ基、メルカプト基を有する化合物との反応により得られる二級水酸基を1分子中に2個以上有する化合物も、多価アルコール類として挙げられる。これらのアルコール化合物は、第一、第二、又は第三アルコールのいずれでもよい。
【0078】
フェノール化合物としては、以下に限定されないが、例えば、石炭酸、クレゾール、キシレノール、カルバクロール、モチール、ナフトール等のモノフェノール類、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ピロガロール、フロログルシン等の多価フェノール類が挙げられる。
【0079】
少なくとも1個の水酸基を有する化合物としては、多価アルコール類や多価フェノール類等が好ましく、多価アルコール類が特に好ましい。
【0080】
イソシアネート化合物と活性水素化合物の反応は、以下に限定されないが、通常、−10℃〜150℃の温度範囲で、10分間〜12時間間の反応時間で行われる。
【0081】
また、イソシアネート化合物と活性水素化合物の反応は、必要に応じて分散媒中で行なうことができる。分散媒としては、以下に限定されないが、例えば、溶媒、可塑剤、樹脂類等が挙げられる。溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ミネラルスピリット、ナフサ等の炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン類;酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、プロピレングリコールモノメチルエチルエーテルアセテート等のエステル類;メタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール等のアルコール類;水等が挙げられる。可塑剤としては、以下に限定されないが、例えば、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシシル)等のフタル酸ジエステル系;アジピン酸ジ(2−エチルヘキシシル)等の脂肪族二塩基酸エステル系;リン酸トリクレジル等のリン酸トリエステル系;ポリエチレングリコールエステル等のグリコールエステル系等が挙げられる。樹脂類としては、以下に限定されないが、例えば、シリコーン樹脂類、エポキシ樹脂類、フェノール樹脂類等が挙げられる。
【0082】
このような、イソシアネート化合物と活性水素化合物との反応生成物は、ウレア結合を有するが、同時にエステル結合を有さないことが好ましく、さらに、ビュレット結合とウレタン結合を有することが好ましい。反応生成物がビュレット結合とウレタン結合を有すると、得られるマイクロカプセル型硬化剤の耐溶剤性が高まる傾向にある。
【0083】
コア(C)を被覆するようにシェル(S)を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、コア(C)を形成するための出発材料となる粒子を分散媒に分散させ、この分散媒にシェルを形成する材料を添加して出発材料粒子上に析出させる方法や、分散媒にシェルを形成する材料の原料を添加し、出発材料粒子の表面を反応の場として、そこでシェル形成材料を生成する方法等が挙げられる。後者の方法は、反応と被覆を同時に行うことができるので好ましい。分散媒としては、溶媒、可塑剤、樹脂等が挙げられる。溶媒、可塑剤、樹脂としては、上述のイソシアネート化合物と活性水素化合物の反応で使用できる溶媒、可塑剤、樹脂の例として挙げたものが使用できる。ここで、分散媒としてエポキシ樹脂を用いると、シェル形成と同時に、マスターバッチ型エポキシ樹脂硬化剤組成物を得ることができるため好ましい。
【0084】
第一シェル(S1)の形成反応は、以下に限定されないが、通常、−10℃〜100℃、好ましくは0℃〜50℃、より好ましくは20℃〜40℃の温度範囲で、10分間〜24時間間、好ましくは2時間〜10時間の反応時間で行われる。反応温度が−10℃以上であると、反応が速く工業的に好ましく、反応温度が100℃以下であると、コア材が反応系に溶出することを防止でき、貯蔵安定性や耐溶剤性等をより向上させることができる。
【0085】
また、シェルを形成する材料をシェル形成反応の初期に存在させておくと、第一シェル(S1)がより効果的に形成され、貯蔵安定性や耐溶剤性等の効果がより一層顕著に発現される傾向にある。
【0086】
第二シェル(S2)は、第一シェル(S1)で被覆されたコア(C)とエポキシ樹脂を反応させることにより形成することができる。その際の反応温度は、通常−10℃〜150℃、好ましくは0℃〜100℃、より好ましくは10℃〜70℃の温度範囲であり、反応時間は、通常10分間〜24時間、好ましくは2時間〜10時間である。
【0087】
また、第二シェル(S2)の形成反応温度が第一シェル(S1)形成反応温度よりも高いと、貯蔵安定性や耐溶剤性等の本実施形態の効果がより顕著に発現される傾向にある。
【0088】
本実施形態におけるマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤は、コア(C)に対する分散安定剤の含有量が8質量%以下であることが好ましい。マイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤に含有される分散安定剤の量が少ないほど、該マイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤をエポキシ樹脂に混合したときの粘度に低減できる傾向にあり、硬化過程における流動性を十分に確保でき、被着体との密着性を十分に確保できる傾向にある。すなわち、その硬化物の耐湿性及び浸透性を良好なものとすることができるだけでなく、耐溶剤性及び耐フィラー性等をより良好なものにできる傾向にある。結果として、電気部品等に使用したときの電気部品の信頼性を十分に確保できる傾向にある。このような観点から、マイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤中のコア(C)に対する分散安定剤の含有量は8質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.5質量%以下であり、特に好ましくは0.1質量%以下である。なお、上記分散安定剤の含有量については、FT−IRによって分散安定剤に特徴的なピークの観察から定量することができる。
【0089】
分散安定剤とは、マイクロカプセル型エポキシ樹脂硬化剤に含まれる各成分を分散させる機能を有するものであり、特に限定されないが、例えば、以下に示すグラフト共重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体及びその他の重合体等が挙げられる。本実施形態のマイクロカプセル型エポキシ樹脂硬化剤における、分散安定剤として用いられるグラフト共重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体及びその他の重合体の合計量は、8質量%以下であることが好ましい。
【0090】
グラフト共重合体としては、以下に限定されないが、例えば、スチレンをグラフト共重合したメチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、メチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、ポリ2−ヒドロキシメタクリレート、ポリ2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリ4−ビニル−エチルピリジウムブロミド、メチルメタクリレートをグラフト共重合したメチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、グリシジルメタクリレート/スチレン共重合体、メチルメタクリレート/フルオロアルキルアクリレート共重合体、メタクリル酸をグラフト共重合したポリブタジエン、メチルメタクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体、N−メチロールアクリルアミドをグラフト共重合したポリメチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、1,2−ヒドロキシステアリン酸をグラフト共重合したポリメチルメタクリレート、エチルアクリレート/メタクリル酸共重合体、メチルアクリレート/メタクリル酸共重合体、スチレン/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレートをグラフト共重合したポリメチルメタクリレート、エチレンオキシドをグラフト共重合したポリ塩化ビニル、及びメチルメタクリレートをグラフト共重合したスチレン/グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
【0091】
ブロック共重合体としては、以下に限定されないが、例えば、ポリラウリルメタクリレート/ポリメタクリル酸ブロック共重合体、ポリスチレン/ポリメタクリル酸ブロック共重合体、ポリエチレンオキシド/ポリスチレン/ポリエチレンオキシドブロック共重合体及びポリ12−ヒドロキシステアリン酸/ポリエチレングリコール/ポリ12−ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。
【0092】
ランダム共重合体としては、以下に限定されないが、例えば、酢酸ビニル/ビニルアルコール共重合体、酢酸ビニル/N−ビニルピロリドン共重合体、N−ビニルピロリドン/メチルメタクリレート等が挙げられる。
【0093】
その他の重合体としては、以下に限定されないが、例えば、カチオン化したアミン変性ポリエステル等が挙げられる。
【0094】
分散安定剤の重量平均分子量としては、特に限定されないが、通常1000〜2000000である。
【0095】
分散安定剤として市販されているものとしては、以下に限定されないが、例えば、メチルメタクリレートをグラフト共重合したスチレン/グリシジルメタクリレート(東亜合成社製、レゼタGP300)、メチルメタクリレートをグラフト共重合したメチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体の32.3%MIBK溶液(東亜合成社製、レゼダGP101S)、スチレン/アクリルグラフト共重合系(東亜合成社製、レゼダGP−310S)、アクリル/PMMAグラフト共重合系(東亜合成社製、レゼダGP−301、レゼダGP−102S)等が挙げられる。
【0096】
II.マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物
取り扱い性の観点から、本実施形態におけるマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物は、エポキシ樹脂(e3)と本実施形態のマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤とを含み、その質量比(エポキシ樹脂:マイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤)が、100:0.1〜100:1000であることが好ましく、より好ましくは100:1〜100:500であり、さらに好ましくは100:10〜100:100である。
【0097】
本実施形態におけるマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物は、室温で液状であるか、又は、25℃での粘度が50mPa・s以上1000万mPa・s以下のペースト状であることが好ましい。液状又は上記粘度範囲のペースト状とすることで、作業性が高く、容器等の被付着物への付着量を低減でき、廃棄物発生量を低減できる傾向にあるため好ましい。
【0098】
以下に、エポキシ樹脂(e3)、及びマスターバッチ型エポキシ樹脂硬化剤組成物の製造方法について詳細に説明する。
【0099】
(II−1) エポキシ樹脂(e3)
エポキシ樹脂(e3)としては、上述のコア(C)に含まれるアミンアダクトの原料となるエポキシ樹脂(e1)の例として挙げた多価エポキシ化合物が使用できる。これらのエポキシ樹脂は単独で使用してもよいし、併用してもよい。これらの中でも、得られる硬化物の接着性や耐熱性の観点から、多価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノール型エポキシ樹脂がより好ましく、ビスフェノールAのグリシジル化物とビスフェノールFのグリシジル化物がさらに好ましい。
【0100】
上述したように、硬化物の電気特性を十分に確保する観点から、エポキシ樹脂の分子内の塩素が結合した不純末端を低減することが好ましい。従って、本実施形態におけるマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物に含まれるエポキシ樹脂(e3)の全塩素量は、2500ppm以下であることが好ましく、より好ましくは1500ppm以下、さらに好ましくは500ppm以下である。
【0101】
さらに、エポキシ樹脂(e3)だけではなく、マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物全体の全塩素量が2500ppm以下であることが好ましい。
【0102】
また、エポキシ樹脂(e3)のジオール末端不純成分が、エポキシ樹脂(e3)の基本構造成分の0.001〜30質量%であることが好ましい。ここで、ジオール末端不純成分とは、「総説 エポキシ樹脂 第1巻基礎編I」(エポキシ樹脂技術協会刊行、2003年)に記載されているような、どちらか一方、又は両方の末端のエポキシ基が開環して、1,2−グリコールを形成した構造をもつエポキシ樹脂のことをいう。
【0103】
エポキシ樹脂(e3)の基本構造成分及びジオール末端不純成分は、上述の「総説 エポキシ樹脂 第1巻基礎編I」(エポキシ樹脂技術協会刊行、2003年)において引用されている文献に記載された方法に従って測定できる。
【0104】
エポキシ樹脂(e3)の基本構造成分に対するエポキシ樹脂(e3)のジオール末端不純成分の比率が、30質量%以下の場合、硬化物の耐水性を十分に確保できる傾向にあり、0.001質量%以上の場合、エポキシ樹脂組成物の硬化性を十分に確保できる傾向にある。上記観点から,エポキシ樹脂(e3)の基本構造成分に対するエポキシ樹脂(e3)のジオール末端不純成分の比率は、好ましくは0.001〜30質量%であり、より好ましくは0.1〜20質量%であり、さらに好ましくは0.5〜18質量%であり、特に好ましくは1.2〜15質量%である。
【0105】
(II−2)製造方法
本実施形態におけるマスターバッチ型エポキシ樹脂硬化剤組成物を製造する方法としては、特に限定されないが、例えば、マイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤を、三本ロール等を用いてエポキシ樹脂(e3)中に分散させる方法や、エポキシ樹脂(e3)の中でマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤の生成反応を行い、マイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤を得ると同時に、マスターバッチ型エポキシ樹脂硬化剤組成物を得る方法等が挙げられる。上記の中でも、後者の方法が、生産性が高くなる傾向にあるため、好ましい。
【0106】
III.一液性エポキシ樹脂組成物
本実施形態におけるマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物は、これをさらにエポキシ樹脂で希釈して、一液性エポキシ樹脂組成物とすることができる。このような一液性エポキシ樹脂組成物として好ましいものは、エポキシ樹脂(e4)と、本実施形態のマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物を含み、その質量比(エポキシ樹脂(e4):マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物)が100:0.001〜100:1000の範囲にあるものである。
【0107】
ここで、エポキシ樹脂(e4)としては、上述のコア(C)に含まれるアミンアダクトの原料となるエポキシ樹脂(e1)の例として挙げた多価エポキシ化合物が使用できる。また、一液性エポキシ樹脂組成物の製造方法としては、上述のマスターバッチ型エポキシ樹脂硬化剤組成物の製造方法の例として挙げた方法が利用できる。
【0108】
IV.添加剤
本実施形態のマスターバッチ型エポキシ樹脂用性硬化剤組成物や一液性エポキシ樹脂組成物には、その機能を低下させない範囲で、増量剤、補強材、充填材、顔料、有機溶剤等、その他の添加剤を含有することができる。その他の添加剤の含有量は、好ましくは30質量%未満である。なお、本実施形態のマスターバッチ型エポキシ樹脂用性硬化剤組成物は、硬化作用を促進する観点から、酸無水物類、フェノール類、ヒドラジド類、及びグアニジン類よりなる群から選ばれる少なくとも1種のエポキシ樹脂用硬化剤(h3)、又は、環状ホウ酸エステル化合物を更に含むことが好ましい。
【0109】
その他の添加剤としては、以下に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂用硬化剤(h3)が挙げられる。エポキシ樹脂用硬化剤(h3)としては、上述のコア(C)を形成するための出発材料となる粒子に含まれるアミン系硬化剤やその他のエポキシ樹脂用硬化剤(h1)の例として挙げたものの他、一般にエポキシ樹脂用硬化剤として使用されるあらゆるものが使用できるが、特に、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、ヒドラジド系硬化剤、及びグアニジン系硬化剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種のエポキシ樹脂用硬化剤が好ましい。
【0110】
酸無水物系硬化剤としては、以下に限定されないが、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水−3−クロロフタル酸、無水−4−クロロフタル酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水コハク酸、無水メチルコハク酸、無水ジメチルコハク酸、無水ジクロールコハク酸、メチルナジック酸、ドテシルコハク酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
【0111】
フェノール系硬化剤としては、以下に限定されないが、例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック等が挙げられる。
【0112】
ヒドラジド系硬化剤としては、以下に限定されないが、例えば、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、p−オキシ安息香酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、フェニルアミノプロピオン酸ヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
【0113】
グアニジン系硬化剤としては、以下に限定されないが、例えば、ジシアンジアミド、メチルグアニジン、エチルグアニジン、プロピルグアニジン、ブチルグアニジン、ジメチルグアニジン、トリメチルグアニジン、フェニルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トルイルグアニジン等が挙げられる。
【0114】
ここで、エポキシ樹脂用硬化剤(h3)は、コア(C)を形成するための出発材料となる粒子に含まれるアミン系硬化剤やその他のエポキシ樹脂用硬化剤(h1)と同一であってもよいが、異なっている方が好ましい。
【0115】
また、マスターバッチ型エポキシ樹脂用性硬化剤組成物や一液性エポキシ樹脂組成物には、組成物の貯蔵安定性の向上のため、環状ホウ酸エステル化合物を添加することができる。環状ホウ酸エステル化合物とは、ホウ素が環式構造に含まれているものであり、特に、2,2’−オキシビス(5,5’−ジメチル−1,3,2−オキサボリナン)が好ましい。環状ホウ酸エステル化合物の含有量は、マスターバッチ型エポキシ樹脂用性硬化剤組成物、又は、一液性エポキシ樹脂組成物に対し、0.001〜10質量%であることが好ましい。
【0116】
本実施形態のマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物や一液性エポキシ樹脂組成物は、貯蔵安定性、硬化性、耐湿性、作業性、流動性、信頼性、接着性、耐水性、耐溶剤性に優れており、ペースト状やフィルム状等にして、あらゆる用途に利用できる。すなわち、本実施形態の加工品は、本実施形態のマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物又は一液性エポキシ樹脂組成物から得られる。特に、低温あるいは短時間の硬化条件であっても、高い接続信頼性、封止性、及び接着性が得られる、接着剤、接合用ペースト、接合用フィルムの他に、ペースト状組成物、フィルム状組成物、導電性材料、異方導電性材料、異方導電性フィルム、絶縁性材料、封止材料、コーティング用材料、塗料組成物、プリプレグ、熱伝導性材料、燃料電池用セパレータ材、フレキシブル配線基板用オーバーコート材等として有用である。すなわち、本実施形態の加工品は、ペースト状組成物、フィルム状組成物、接着剤、接合用ペースト、接合用フィルム、導電性材料、異方導電性材料、異方導電性フィルム、絶縁性材料、封止材料、コーティング用材料、塗料組成物、プリプレグ、熱伝導性材料、燃料電池用セパレータ材又はフレキシブル配線基板用オーバーコート材であることが好ましい。
【0117】
接着剤、接合用ペースト、接合用フィルムとしては、以下に限定されないが、例えば、液状接着剤やフィルム状接着剤、ダイボンディング材等として有用である。フィルム状接着剤の製造方法としては、以下に限定されないが、例えば、特開昭62−141083号公報や、特開平5−295329号公報等に記載された方法が挙げられる。より具体的には、固形エポキシ樹脂、液状エポキシ樹脂、さらに固形のウレタン樹脂を、50質量%になるようにトルエンに溶解・混合・分散させた溶液を作製する。これに本実施形態のマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物を、溶液に対して30質量%添加・分散させたワニスを調製する。このワニスを、例えば、厚さ50μmの剥離用ポリエチレンテレフタレート基材に、トルエンが乾燥した後に厚さ30μmとなるように塗布する。トルエンを乾燥させることにより、常温では不活性であり、加熱することにより潜在性硬化剤の作用で接着性を発揮する、接合用フィルムを得ることができる。
【0118】
導電性材料としては、以下に限定されないが、例えば、導電性フィルム、導電性ペースト等が挙げられる。異方導電性材料としては、以下に限定されないが、例えば、異方導電性フィルム、異方導電性ペースト等が挙げられる。その製造方法としては、以下に限定されないが、例えば、特開平1−113480号公報に記載された方法が挙げられる。より具体的には、例えば、上述の接合用フィルムの製造において、ワニスの調製時に導電性材料や異方導電性材料を混合・分散させて、剥離用の基材に塗布後、乾燥することにより製造することができる。導電粒子としては、半田粒子、ニッケル粒子、ナノサイズの金属結晶、金属の表面を他の金属で被覆した粒子、銅と銀の傾斜粒子等の金属粒子や、例えば、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂等の樹脂粒子に金、ニッケル、銀、銅、半田等の導電性薄膜で被覆を施した粒子等が使用される。一般に、導電粒子は、1〜20μm程度の球形の微粒子である。フィルムにする場合の基材としては、以下に限定されないが、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン等の基材に塗布後、溶剤を乾燥させる方法等が挙げられる。
【0119】
絶縁性材料としては、以下に限定されないが、例えば、絶縁性接着フィルム、絶縁性接着ペーストが挙げられる。上述の接合用フィルムを用いることで、絶縁性材料である絶縁性接着フィルムを得ることができる。また、封止材料を用いることの他、上述の充填剤のうち、絶縁性の充填剤を配合することで、絶縁性接着ペーストを得ることができる。
【0120】
封止材としては、以下に限定されないが、例えば、固形封止材、液状封止材、フィルム状封止材等として有用である。液状封止材としては、以下に限定されないが、例えば、アンダーフィル材、ポッティング材、ダム材等として有用である。封止材の製造方法としては、以下に限定されないが、例えば、特開平5−43661号公報、特開2002−226675号公報等において、電気・電子部品の封止・含浸用成形材料の製造方法として記載された方法が挙げられる。より具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、硬化剤として、例えば酸無水物硬化剤である無水メチルヘキサヒドロフタル酸、さらに球状溶融シリカ粉末を加えて均一に混合し、それに本実施形態のマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物を加えて均一に混合することにより、封止材料を得ることができる。
【0121】
コーティング用材料としては、以下に限定されないが、例えば、電子材料のコーティング材、プリント配線版のカバー用のオーバーコート材、プリント基板の層間絶縁用樹脂組成物等が挙げられる。コーティング用材料の製造方法としては、以下に限定されないが、例えば、特公平4−6116号公報、特開平7−304931号公報、特開平8−64960号公報、特開2003−246838等に記載された各種方法が挙げられる。より具体的には、充填剤からシリカ等を選定し、フィラーとして、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の他、フェノキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂等を配合し、さらに本実施形態のマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物を配合し、メチルエチルケトン(MEK)で50%の溶液を調製する。これをポリイミドフィルム上に50μmの厚さでコーティングし、銅箔を重ねて60〜150℃でラミネートし、当該ラミネートを180〜200℃で加熱硬化させることにより、層間がエポキシ樹脂組成物によりコーティングされた積層板を得ることができる。
【0122】
塗料組成物の製造方法としては、以下に限定されないが、例えば、特開平11−323247号公報、特開2005−113103号公報等に記載された方法が挙げられる。より具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂に、二酸化チタン、タルク等を配合し、混合溶剤としてメチルイソブチルケトン(MIBK)/キシレンの1:1混合溶剤を添加、攪拌、混合して主剤とする。これに本実施形態のマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物を添加し、均一に分散させることにより、塗料組成物(エポキシ塗料組成物)を得ることができる。
【0123】
プリプレグの製造方法としては、以下に限定されないが、例えば、特開平9−71633号公報、国際公開第98/44017号パンフレット等に記載された方法のように、本実施形態のマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物を補強基材に含浸し、加熱することにより得ることができる。含浸させるワニスの溶剤としては、メチルエチルケトン、アセトン、エチルセルソルブ、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられ、これらの溶剤はプリプレグ中に残存しないことが好ましい。なお、補強基材の種類としては、特に限定されないが、例えば、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド布、液晶ポリマー等が挙げられる。マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物と補強基材の割合も特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜80質量%となるように調整するのが好ましい。
【0124】
熱伝導性材料の製造方法としては、以下に限定されないが、例えば、特開平6−136244号公報、特開平10−237410号公報、特開2000−3987号公報に記載された方法等に記載された方法が挙げられる。より具体的には、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂、硬化剤としてフェノールノボラック硬化剤、さらに熱伝導フィラーとしてグラファイト粉末を配合して均一に混練する。これに本実施形態のマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物を配合することにより熱伝導性樹脂ペーストを得ることができる。
【実施例】
【0125】
以下、実施例によって本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0126】
(一液性エポキシ樹脂組成物の浸透性)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ社製、AER2603)50質量部に、硬化剤としてメチル無水フタル酸を主成分とするHN−2200(日立化成工業社製)40質量部を均一に分散し、配合した。これにマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物を5質量部を加えて得られた一液性エポキシ樹脂組成物をシリンジに充填した。2枚の50mm四方のガラス板で上端を合わせて10mmずらし上端には10ミクロンスペーサーをはさみ固定して水平に置いた。ガラス板間のギャップに一液性エポキシ樹脂組成物を滴下して室温でのエポキシ樹脂組成物の浸透状況を観察した。40℃の温度下でエポキシ樹脂組成物を滴下し、端面から40mmの距離を浸透するまでの時間が15分未満の場合を「◎」、15分以上30分未満の場合を「○」、30分以上45分未満の場合を「△」、45分以上を「×」と判定した。
【0127】
(一液性エポキシ樹脂組成物の硬化性)
ゲル板を130℃に保ち、その板上に0.4mLの一液性エポキシ樹脂組成物の試料を載置し、載置後かきまぜ棒でかき混ぜ、糸が引かなくなるまでの時間、すなわちゲル化までの時間(秒)を測定した。ゲル化時間が90秒以下の場合を「◎」、90秒から120秒までの場合を「○」、120秒から180秒までの場合を「△」、180秒以上の場合を「×」と判定した。
【0128】
(保存安定性)
貯蔵安定性の評価方法としては、作製したマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤を40℃の恒温槽に1週間保存した際の粘度上昇倍率で評価を行った。保存倍率が1.2倍以下である場合を「◎」、1.2倍以上1.5倍未満の場合を「○」、1.5倍以上1.8倍以下の場合を「△」、1.8倍以上の場合を「×」と判定した。
【0129】
(含有水分量)
ダイアインスツルメンツ製カールフィッシャー水分計CA−100型を使用して測定した。
【0130】
(比表面積測定)
比表面積の測定方法としては、株式会社マウンテック製の全自動BET比表面積測定装置HM model−1201を用いてN
2/He=30/70(体積比)の混合ガスを吸着ガスとして比表面積を測定した。
【0131】
(粒径測定)
粒径測定の方法としては、粒子粉末として4mgを0.1質量%界面活性剤(三井サイテック社製、エアロゾルOT−75)のシクロヘキサン溶液32gに入れ、超音波洗浄器(本田電子社製、MODEL W−211)で5分超音波照射して分散した。このときの超音波洗浄器内の水温は19±2℃に調整した。得られる分散液を一部取り、HORIBA LA−920(堀場製作所社製、粒度分布計 HORIBA LA−920)にて粒度分布測定を行い、これに基づき平均粒径を求めた。
【0132】
(凝集紛体粒子比率)
エポキシ樹脂用硬化剤を走査型電子顕微鏡(SEM)による画像観察を行い、全粒子数300個以上の紛体粒子数の画像において、粒子同士が5個以上凝集又は融着している個数を、全体の個数で割り返した時、5%未満であれば「◎」、5%以上10%未満であれば「○」、10%以上15%であった場合「△」、15%以上あった場合「×」と判定した。
【0133】
(分散性)
エポキシ樹脂中の硬化剤の分散性を見るために、マスターバッチ化したエポキシ樹脂用硬化剤1gをビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ社製、AER2603)9gに分散させ、ノンバブリングニーダーで混合した。その後、マイクロスコープの画像観察を倍率1000倍で行い、全粒子数100個以上の紛体粒子数の画像において、5個以上凝集している個数を、全体の個数で割り返したとき、5%未満であれば「◎」、5%以上10%未満であれば「○」、10%以上15%であった場合「△」、15%以上あった場合「×」と判定した。
【0134】
(実施例1)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂1当量と、2−メチルイミダゾール1当量(活性水素換算)を、n−ブタノールとトルエンの1:1混合溶媒中、80℃で反応させた。その後減圧下で過剰のアミンを溶剤と共に留去し、25℃で固体状のブロック状エポキシ樹脂用硬化剤1を得た。次いで、ブロック状エポキシ樹脂硬化剤1をジェットミル粉砕して、25℃で固体の篩下平均粒径D
50が2.4μmの粒子(粉砕品)を得た。日本ニューマチック社製メテオレインボ−MR−10を使用し、硬化剤粒子のフィード速度を3.7kg/hr、処理温度275℃の条件で熱処理を行い、サイクロン式捕集機、バグフィルターを付属させ、紛体回収部壁面に0℃の循環冷却水を通水させ容器内部温度を40℃以下となるよう冷却し、温度を25℃、湿度10%にコントロールしたエアーを275℃の熱風処理後に冷却エアーとして導入することにより比表面積値1.3m
2/g、水分0.4%、D
50 3.1μm且つD
99/D
50が4.7となる粒度の分布を持つエポキシ樹脂用硬化剤を分級機による分級操作によって作製した。比表面積値を調整後、マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤を調製した。上記の調製方法としては、液状エポキシ樹脂200質量部に、前記粒子100質量部、カプセル化剤3質量部を加え、50℃で攪拌しながら3時間反応を続け、マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤を得た。
【0135】
(実施例2)
実施例1の粉砕品を用いて、日本ニューマチック社製メテオレインボ−MR−10を使用し、硬化剤粒子のフィード速度を3.7kg/hr、処理温度275℃の条件で熱処理を行い、サイクロン式捕集機、バグフィルターを付属させ、紛体回収部壁面に0℃の循環冷却水を通水させ容器内部温度を40℃以下となるよう冷却し、温度を20℃、湿度30%にコントロールしたエアーを275℃の熱風処理後に冷却エアーとして導入することにより比表面積値1.3m
2/g、水分0.8%、D
50 3.1μm且つD
99/D
50が4.9となる粒度の分布を持つエポキシ樹脂用硬化剤を分級機による分級操作によって作製した。実施例1と同様の方法でマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤を得た。
【0136】
(実施例3)
実施例1の粉砕品を用いて、日本ニューマチック社製メテオレインボ−MR−10を使用し、硬化剤粒子のフィード速度を3.7kg/hr、処理温度275℃の条件で熱処理を行い、サイクロン式捕集機、バグフィルターを付属させ、紛体回収部壁面に0℃の循環冷却水を通水させ容器内部温度を40℃以下となるよう冷却し、温度を30℃、湿度35%にコントロールしたエアーを275℃の熱風処理後に冷却エアーとして導入することにより比表面積値1.3m
2/g、水分1.5%、D
50 3.1μm且つD
99/D
50が4.5となる粒度の分布を持つエポキシ樹脂用硬化剤を分級機による分級操作によって作製した。実施例1と同様の方法でマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤を得た。
【0137】
(実施例4)
実施例1の粉砕品を用いて、アーステクニカ株式会社製のクリプトロンオーブを使用し、温度10℃、湿度30%の環境下、回転速度13500rpm、供給速度10kg/hr、風量3m
3/minで、形状補正処置を行い、サイクロン式捕集機、バグフィルターを付属させ比表面積値を調整し、分級操作にて比表面積値2.67m
2/g、水分0.4%、D
50 3.1μm且つD
99/D
50が4.5となる粒度の分布を持つエポキシ樹脂用硬化剤を分級機による分級操作によって作製した。実施例1と同様の方法でマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤を得た。
【0138】
(実施例5)
ブロック状エポキシ樹脂硬化剤1を、バグフィルターを付属させジェットミル粉砕して、バグフィルターから25℃で固体の篩下平均粒径D
50が0.8μmの粒子(粉砕品)を得た。日本ニューマチック社製メテオレインボ−MR−10を使用し、硬化剤粒子のフィード速度を3.7kg/hr、処理温度275℃の条件で熱処理を行い、サイクロン式捕集機、バグフィルターを付属させ、紛体回収部壁面に0℃の循環冷却水を通水させ容器内部温度を40℃以下となるよう冷却し、温度を25℃、湿度10%にコントロールしたエアーを275℃の熱風処理後に冷却エアーとして導入することにより比表面積値5.0m
2/g、水分0.4%、D
50 が0.8μm且つD
99/D
50が4.7となる粒度の分布を持つエポキシ樹脂用硬化剤を分級機による分級操作によって作製した。実施例1と同様の方法でマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤を得た。
【0139】
(実施例6)
実施例5の粉砕品を用いてアーステクニカ株式会社製のクリプトロンオーブを使用し、温度10℃、湿度30%の環境下、回転速度13500rpm、供給速度10kg/hr、風量3m
3/minで、3Pass形状補正処置を行い、サイクロン式捕集機、バグフィルターを付属させ比表面積値を調整し、分級操作にて比表面積値10.30m
2/g、水分0.4%、D
50 0.8μm且つD
99/D
50が4.5となる粒度の分布を持つエポキシ樹脂用硬化剤を分級機による分級操作によって作製した。実施例1と同様の方法でマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤を得た。
【0140】
(実施例7)
ブロック状エポキシ樹脂硬化剤1を、バグフィルターを付属させジェットミル粉砕して、バグフィルターから25℃で固体の篩下平均粒径D
50が1.1μmの粒子(粉砕品)を得た。日本ニューマチック社製メテオレインボ−MR−10を使用し、硬化剤粒子のフィード速度を3.7kg/hr、処理温度275℃の条件で熱処理を行い、サイクロン式捕集機、バグフィルターを付属させ、紛体回収部壁面に0℃の循環冷却水を通水させ容器内部温度を40℃以下となるよう冷却し、温度を25℃、湿度10%にコントロールしたエアーを275℃の熱風処理後に冷却エアーとして導入することにより比表面積値2.90m
2/g、水分0.4%、D
50 1.4μm且つD
99/D
50が3.2となる粒度の分布を持つエポキシ樹脂用硬化剤を分級機による分級操作によって作製した。実施例1と同様の方法でマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤を得た。
【0141】
(実施例8)
実施例7の粉砕品を用いてアーステクニカ株式会社製のクリプトロンオーブを使用し、温度10℃、湿度30%の環境下、回転速度13500rpm、供給速度10kg/hr、風量3m
3/minで、形状補正処置を行い、サイクロン式捕集機、バグフィルターを付属させ比表面積値を調整し、分級操作にて比表面積値5.9m
2/g、水分0.4%、D
50 1.4μm且つD
99/D
50が3.2となる粒度の分布を持つエポキシ樹脂用硬化剤を分級機による分級操作によって作製した。実施例1と同様の方法でマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤を得た。
【0142】
(実施例9)
ブロック状エポキシ樹脂硬化剤1をジェットミル粉砕して、分級機による分級操作によって25℃で固体の篩下平均粒径D
50が1.6μmの粒子(粉砕品)を得た。日本ニューマチック社製メテオレインボ−MR−10を使用し、硬化剤粒子のフィード速度を3.7kg/hr、処理温度275℃の条件で熱処理を行い、サイクロン式捕集機、バグフィルターを付属させ、紛体回収部壁面に0℃の循環冷却水を通水させ容器内部温度を40℃以下となるよう冷却し、温度を25℃、湿度10%にコントロールしたエアーを275℃の熱風処理後に冷却エアーとして導入することにより比表面積値1.90m
2/g、水分0.4%、D
50 2.1μm且つD
99/D
50が4.0となる粒度の分布を持つエポキシ樹脂用硬化剤を分級機による分級操作によって作製した。実施例1と同様の方法でマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤を得た。
【0143】
(実施例10)
実施例9の粉砕品を用いてアーステクニカ株式会社製のクリプトロンオーブを使用し、温度10℃、湿度30%の環境下、回転速度13500rpm、供給速度10kg/hr、風量3m
3/minで、形状補正処置を行い、サイクロン式捕集機、バグフィルターを付属させ比表面積値を調整し、分級操作にて比表面積値3.90m
2/g、水分0.4%、D
50 2.1μm且つD
99/D
50が4.0となる粒度の分布を持つエポキシ樹脂用硬化剤を分級機による分級操作によって作製した。実施例1と同様の方法でマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤を得た。
【0144】
(実施例11)
ブロック状エポキシ樹脂硬化剤1をジェットミル粉砕して、分級機による分級操作によって25℃で固体の篩下平均粒径D
50が4.5μmの粒子(粉砕品)を得た。日本ニューマチック社製メテオレインボ−MR−10を使用し、硬化剤粒子のフィード速度を3.7kg/hr、処理温度275℃の条件で熱処理を行い、サイクロン式捕集機、バグフィルターを付属させ、紛体回収部壁面に0℃の循環冷却水を通水させ容器内部温度を40℃以下となるよう冷却し、温度を25℃、湿度10%にコントロールしたエアーを275℃の熱風処理後に冷却エアーとして導入することにより比表面積値0.9m
2/g、水分0.4%、D
50 4.5μm且つD
99/D
50が3.9となる粒度の分布を持つエポキシ樹脂用硬化剤を分級機による分級操作によって作製した。
比表面積値を調整後、1液型エポキシ樹脂用硬化剤を調整した。方法として液状エポキシ樹脂200質量部に、前記粒子100質量部を混合し3時間撹拌させた。
【0145】
(実施例12)
実施例11の粉砕品を用いてアーステクニカ株式会社製のクリプトロンオーブを使用し、温度10℃、湿度30%の環境下、回転速度13500rpm、供給速度10kg/hr、風量3m
3/minで、形状補正処置を行い、サイクロン式捕集機、バグフィルターを付属させ比表面積値を調整し、分級操作にて比表面積値1.84m
2/g、水分0.4%、D
50 4.5μm且つD
99/D
50が3.9となる粒度の分布を持つエポキシ樹脂用硬化剤を分級機による分級操作によって作製した。実施例1と同様の方法でマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤を得た。
【0146】
(実施例13)
ブロック状エポキシ樹脂硬化剤1をジェットミル粉砕して、分級機による分級操作によって25℃で固体の篩下平均粒径D
50が5.5μmの粒子(粉砕品)を得た。日本ニューマチック社製メテオレインボ−MR−10を使用し、硬化剤粒子のフィード速度を3.7kg/hr、処理温度275℃の条件で熱処理を行い、サイクロン式捕集機、バグフィルターを付属させ、紛体回収部壁面に0℃の循環冷却水を通水させ容器内部温度を40℃以下となるよう冷却し、温度を25℃、湿度10%にコントロールしたエアーを275℃の熱風処理後に冷却エアーとして導入することにより比表面積値0.75m
2/g、水分0.4%、D
50 5.5μm且つD
99/D
50が4.5となる粒度の分布を持つエポキシ樹脂用硬化剤を分級機による分級操作によって作製した。実施例1と同様の方法でマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤を得た。
【0147】
(実施例14)
実施例13の粉砕品を用いてアーステクニカ株式会社製のクリプトロンオーブを使用し、温度10℃、湿度30%の環境下、回転速度13500rpm、供給速度10kg/hr、風量3m
3/minで、形状補正処置を行い、サイクロン式捕集機、バグフィルターを付属させ比表面積値を調整し、分級操作にて比表面積値1.50m
2/g、水分0.4%、D
50 5.5μm且つD
99/D
50が4.5となる粒度の分布を持つエポキシ樹脂用硬化剤を分級機による分級操作によって作製した。実施例1と同様の方法でマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤を得た。
【0148】
(実施例15)
ブロック状エポキシ樹脂硬化剤1をジェットミル粉砕して、分級機による分級操作によって25℃で固体の篩下平均粒径D
50が11.0μmの粒子(粉砕品)を得た。日本ニューマチック社製メテオレインボ−MR−10を使用し、硬化剤粒子のフィード速度を3.7kg/hr、処理温度275℃の条件で熱処理を行い、サイクロン式捕集機、バグフィルターを付属させ、紛体回収部壁面に0℃の循環冷却水を通水させ容器内部温度を40℃以下となるよう冷却し、温度を25℃、湿度10%にコントロールしたエアーを275℃の熱風処理後に冷却エアーとして導入することにより比表面積値0.40m
2/g、水分0.4%、D
50 11μm且つD
99/D
50が4.4となる粒度の分布を持つエポキシ樹脂用硬化剤を分級機による分級操作によって作製した。実施例1と同様の方法でマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤を得た。
【0149】
(実施例16)
実施例15の粉砕品を用いてアーステクニカ株式会社製のクリプトロンオーブを使用し、温度10℃、湿度30%の環境下、回転速度13500rpm、供給速度10kg/hr、風量3m
3/minで、3Pass形状補正処置を行い、サイクロン式捕集機、バグフィルターを付属させ比表面積値を調整し、分級操作にて比表面積値0.75m
2/g、水分0.4%、D
50 11μm且つD
99/D
50が4.4となる粒度の分布を持つエポキシ樹脂用硬化剤を分級機による分級操作によって作製した。比表面積値を調整後、1液型エポキシ樹脂用硬化剤を調整した。方法として液状エポキシ樹脂200質量部に、前記粒子100質量部を混合し3時間撹拌させた。実施例1と同様の方法でマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤を得た。
【0150】
(比較例1)
ブロック状エポキシ樹脂硬化剤1を、バグフィルターを付属させジェットミル粉砕して、バグフィルターから25℃で固体の篩下平均粒径D
50が0.8μmの粒子を得た。この原料粒子の水分量は0.8%、比表面積値は13.0m
2/g、D
99/D
50の値は10.3であった。比表面積の調整は行わなかった。実施例1と同様の方法でマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤を得た。
【0151】
(比較例2)
ブロック状エポキシ樹脂硬化剤1をジェットミル粉砕して25℃で固体の篩下平均粒径D
50が1.4μmの粒子を得た。この原料粒子の水分量は0.8%、比表面積値は7.4m
2/g、D
99/D
50の値は10.1であった。比表面積の調整は行わなかった。実施例1と同様の方法でマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤を得た。
【0152】
(比較例3)
ブロック状エポキシ樹脂硬化剤1をジェットミル粉砕して、25℃で固体の篩下平均粒径D
50が2.4μmの粒子を得た。この原料粒子の水分量は0.8%、比表面積値は4.30m
2/g、D
99/D
50の値は8.5であった。比表面積の調整は行わなかった。実施例1と同様の方法でマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤を得た。
【0153】
(比較例4)
比較例3と同様の方法で作製して得られた粒子100部を液状エポキシ樹脂200質量部に加え、50℃で攪拌して1液性エポキシ樹脂用硬化剤を得た。
【0154】
(比較例5)
ブロック状エポキシ樹脂硬化剤1をジェットミル粉砕して、25℃で固体の篩下平均粒径D
50が3.1μmの粒子を得た。この原料粒子の水分量は0.8%、比表面積値は3.1m
2/g、D
99/D
50の値は8.6であった。比表面積の調整は行わなかった。実施例1と同様の方法でマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤を得た。
【0155】
(比較例6)
ブロック状エポキシ樹脂硬化剤1をジェットミル粉砕して、25℃で固体の篩下平均粒径D
50が4.5μmの粒子を得た。この原料粒子の水分量は0.8%、比表面積値は2.3m
2/g、D
99/D
50の値は8.1であった。比表面積の調整は行わなかった。実施例1と同様の方法でマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤を得た。
【0156】
(比較例7)
ブロック状エポキシ樹脂硬化剤1をジェットミル粉砕して、25℃で固体の篩下平均粒径D
50が5.5μmの粒子を得た。この原料粒子の水分量は0.8%、比表面積値は1.90m
2/g、D
99/D
50の値は8.1であった。比表面積の調整は行わなかった。実施例1と同様の方法でマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤を得た。
【0157】
(比較例8)
ブロック状エポキシ樹脂硬化剤1をジェットミル粉砕して、25℃で固体の篩下平均粒径D
50が11μmの粒子を得た。この原料粒子の水分量は0.8%、比表面積値は0.90m
2/g、D
99/D
50の値は7.9であった。比表面積の調整は行わなかった。実施例1と同様の方法でマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤を得た。
【0158】
(比較例9)
実施例1の粉砕品用いて日本ニューマチック社製メテオレインボ−MR−10を使用し、硬化剤粒子のフィード速度を4.0kg/hr、処理温度275℃の条件で熱処理を行い、サイクロン式捕集機、バグフィルターを付属させ、温度を30℃、湿度40%にコントロールしたエアーを275℃の熱風処理後に冷却エアーを導入することにより比表面積値1.6m
2/g、水分1.0%、D
50 3.1μm且つD
99/D
50が8.5となる粒度の分布を持つエポキシ樹脂用硬化剤を作製した。実施例1と同様の方法でマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤を得た。
【0159】
(比較例10)
実施例1の粉砕品を用いて、分級操作にて比表面積値3.0m
2/g、水分1.5%、D
503.3μm且つD
99/D
50が4.5となる粒度の分布を持つエポキシ樹脂用硬化剤を分級機による分級操作によって作製した 実施例1と同様の方法でマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤を得た。
【0160】
(比較例11)
実施例1の粉砕品を用いて日本ニューマチック社製メテオレインボ−MR−10を使用し、硬化剤粒子のフィード速度を3.7kg/hr、処理温度275℃の条件で熱処理を行い、サイクロン式捕集機、バグフィルターを付属させ、紛体回収部壁面に0℃の循環冷却水を通水させ容器内部温度を40℃以下となるよう冷却し、温度を35℃、湿度80%にコントロールしたエアーを275℃の熱風処理後に冷却エアーとして導入することにより比表面積値1.3m
2/g、水分2.0%、D
50 3.2μm且つD
99/D
50が4.4となる粒度の分布を持つエポキシ樹脂用硬化剤を分級機による分級操作によって作製した。実施例1と同様の方法でマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤を得た。
【0161】
比表面積値を調整前後でのエポキシ樹脂用硬化剤を用いて評価し、結果を表1〜4に示した。
【0162】
【表1】
【0163】
【表2】
【0164】
【表3】
【0165】
【表4】
【0166】
上記結果よりエポキシ樹脂用硬化剤に含まれる水分量が1.5%以下で粒度分布と比表面積値を調整した硬化剤に関しては硬化性能、安定性、浸透性が安定しており、粒径が異なるものに関してもその効果を確認することができた。しかし実施例11〜14に示すように、粒径は大きくなるにつれて浸透性と硬化性能は損なわれていく傾向にある。
【0167】
比較例1〜3、5〜8は粒度の異なるエポキシ樹脂用硬化剤を比表面積の調整を行わず、粒度分布の調整も行わなかった硬化剤をマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤にした結果である。比表面積を調整しなかった硬化剤に関しては保存安定性、分散性、浸透性が悪い。また比較例4はマイクロカプセル化しなかった場合に関しての結果であるが保存安定性を損なう結果となった。実施例13〜16同様、粒径が大きくなるにつれて硬化性能は損なわれていく反面、保存安定性は向上していく。
【0168】
比較例9のように比表面積を調整しても粒度分布が調整されていない硬化剤は、硬化性能に対して保存安定性はよいが粒度の調整がされていないため凝集粒子体量が多く、このため浸透性がよくない。比較例10のように比表面積を調整せずに粒度分布だけを調整した硬化剤に関しては、物性はほとんど改善されていなかった。比較例11に示すように硬化剤の水分量が1.5%以上となった時は粒子同士が凝集するため物性低下を招き、硬化性、保存安定性は低下する。
【0169】
以上のとおり、本実施形態のマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤を含むマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物は、優れた硬化性、貯蔵安定性を有し、一液性エポキシ樹脂組成物は、優れた硬化性、浸透性を有していることが確認された。