(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
粘度平均分子量が30,000〜70,000のポリイソブチレン(A)と乳化剤(B)と水(C)とを含み、固形分濃度が1〜75質量%であるO/W型ポリイソブチレンエマルジョンの製造方法であって、
有機溶媒に溶解していない前記ポリイソブチレン(A)と前記乳化剤(B)とを、前記ポリイソブチレン(A)100質量部に対し、前記乳化剤(B)1〜35質量部の割合で混合した混合物を加熱混合する混合工程と、
前記混合工程で加熱混合した前記ポリイソブチレン(A)と前記乳化剤(B)との混合物に、前記水(C)を徐々に加えることにより、W/O型エマルジョンからO/W型エマルジョンに相反転させる反転工程と、
を含み、
前記乳化剤(B)は、数平均分子量1,500〜80,000のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(B1)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル(B2)、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル(B3)、およびショ糖脂肪酸エステル(B4)からなる群から選択される2以上の混合物であることを特徴とするポリイソブチレンエマルジョンの製造方法。
前記乳化剤(B)は、前記ポリイソブチレン(A)100質量部あたり、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(B1)を1〜30質量部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル(B2)、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル(B3)、またはショ糖脂肪酸エステル(B4)を0.1〜5質量部混合した混合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリイソブチレンエマルジョンの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明にかかるポリイソブチレンエマルジョンおよびポリイソブチレンエマルジョンの製造方法について説明する。
【0014】
本発明にかかるポリイソブチレン(A)は、ヘキサンなどの溶剤中のイソブチレンや、イソブチレンを含む石油精製におけるFCC(流動接触分解、Fluid Catalytic Cracking)からのC
4留分、ナフサクラッカーからのC
4留分などを塩化アルミニウム、フッ化ホウ素などのフリーデル・クラフツ触媒で重合して得られるものであって、イソブチレンから主としてなるものであれば、ブテン−1などとの共重合物も使用可能である。
【0015】
本発明で使用するポリイソブチレン(A)は、その粘度平均分子量が30,000〜70,000の範囲にある。粘度平均分子量が70,000を超えるとエマルジョンにするのは困難であり、粘度平均分子量が30,000〜70,000のポリイソブチレン(A)を使用することにより、より少ない量のエマルジョンにより高粘度の基材を得ることが可能となる。なお、粘度平均分子量が30,000未満のポリイソブチレンを使用した場合にも、本発明の製造方法により、平均粒径が小さく、粒径分布の狭いエマルジョンを製造できるが、粘度平均分子量が30,000〜70,000のポリイソブチレン(A)を使用する際、特に効果的であり、粘度平均分子量が60,000〜70,000のポリイソブチレン(A1)には特に好ましい。
【0016】
本発明で使用するポリイソブチレン(A)は、粘稠半固体であり、かつ粘度平均分子量が上記の範囲で有る限り、常温固体のゴム状ポリイソブチレンと低分子量のポリイソブチレンまたはブテン−1からなる低分子量のポリブテンなどとの混合物を利用することもできる。また、ポリイソブチレン(A)は、エマルジョンとした際の安定性の観点から、塩素濃度が低いものが好ましい。塩素濃度は、100ppm以下であることが好ましく、10ppm以下とすることが特に好ましい。
【0017】
本発明にかかる乳化剤(B)は、数平均分子量1,500〜80,000のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(B1)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル(B2)、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル(B3)、およびショ糖脂肪酸エステル(B4)からなる群から選択される2以上の混合物である。
【0018】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(B1)は、エチレンオキシド重合体ブロック部分と、プロピレンオキシド重合体ブロック部分とを少なくとも1つの分子内に有するブロック重合体であり、一例を挙げれば下記の一般式(1)で示される様な重合体が挙げられる。
【0020】
式(1)中、a、b、cは、それぞれ独立して1〜700の整数であり、好ましくは、aは5〜450、bは15〜700、cは5〜40である。
【0021】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(B1)の数平均分子量は1,500〜80,000であり、好ましくは10,000〜30,000である。この範囲外では、すなわち数平均分子量が1,500未満、あるいは80,000を超えると、充分なエマルジョンの安定性を得ることができないので好ましくない。
【0022】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル(B2)は、ノニルフェノールなどのアルキルフェノールまたはラウリルアルコールなどの高級アルコールなどのエチレンオキサイド付加体を硫酸化したものである。本発明では、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル(B2)の塩が好適に使用される。ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル(B2)の塩としては、ナトリウムなどのアルカリ金属塩、アンモニウム塩などを例示することができる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル(B2)のエチレンオキサイドの付加モル数は特に限定されないが、1〜20の範囲のものが好適に使用される。
【0023】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル(B2)の例として、下記一般式(2)で示されるようなポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩が、より好ましいものとして例示できる。
【0024】
【化2】
式(2)中、R
1は炭素数10〜18のアルキル基、またはアリール基である。
【0025】
式(2)において、R
1はアリール基であることが特に好ましく、具体的にはポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩が例示される。
【0026】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル(B2)の塩は、上述したように、ノニルフェノールなどのアルキルフェノールまたはラウリルアルコールなどの高級アルコールなどのエチレンオキサイド付加体を常法により硫酸化し、次いで硫酸エステル塩とすることにより製造することができる。硫酸化するには硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸、無水硫酸などが使用される。得られた硫酸エステルを常法により水酸化ナトリウムなどの金属水酸化物、アンモニア水などで中和して塩とすることができる。スルファミン酸などを反応させれば直接アンモニウム塩を製造することができる。
【0027】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル(B3)は、ラウリルアルコールなどの高級アルコールエチレンオキサイド付加物のリン酸エステルである。ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル(B3)は、ラウリルアルコールなどの高級アルコールエチレンオキサイド付加物に無水リン酸、オキシ塩化リンのようなリン酸剤を作用させて製造される陰イオンまたは非イオン界面活性剤である。エチレンオキサイドの付加モル数は特に限定されないが、1〜20の範囲のものが好適に使用される。ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル(B3)としては、塩も好適に使用することができる。
【0028】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル(B3)の具体例として、下記一般式(3)、一般式(4)および一般式(5)のいずれか、またはこれらの混合物が例示できる。
【0030】
式(3)中、X
1、X
2は、それぞれ独立して、水素、K、Na、Li、NH
2、NHR’、NR’
2、またはNHOHで表される置換基である。R
2は、炭素数8〜14のアルキル基であり、n2は、1〜20の整数である。また、R’は、炭素数1〜5のアルキル基である。
【0032】
式(4)中、X
3は、水素、K、Na、Li、NH
2、NHR’、NR’
2、またはNHOHで表される置換基である。R
3、R
4は、それぞれ独立して、炭素数8〜14のアルキル基であり、n3、n4は、それぞれ独立して1〜20の整数である。また、R’は、炭素数1〜5のアルキル基である。
【0034】
式(5)中、R
5、R
6、R
7は、それぞれ独立して、炭素数8〜14のアルキル基であり、n5、n6、n7は、それぞれ独立して1〜20の整数である。
【0035】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル(B3)は、中でもHLB(Hydrophile Lipophile Balance)が14以上のものが好適に使用される。
【0036】
ショ糖脂肪酸エステル(B4)は、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸などの、例えば、硬化牛脂から得られる高級脂肪酸、および、酢酸、イソ酪酸などの低級脂肪酸などの脂肪酸と、ショ糖とのエステルであって、ショ糖部を親水基とし、脂肪酸部を疎水基とする非イオン性界面活性剤である。ショ糖脂肪酸エステル(B4)は、中でもHLBが15以上のものが好適に使用される。
【0037】
本発明にかかるイソブチレンエマルジョンは、乳化固形分、すなわち、前記ポリイソブチレン(A)および前記乳化剤(B)の合計量が1〜75質量%となるように配合する。
【0038】
本発明にかかるポリイソブチレンエマルジョンにおいて、乳化剤(B)の配合量は、ポリイソブチレン(A)100質量部に対し、1〜35質量部の範囲で使用される。ここで、乳化剤(B)の配合量は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(B1)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル(B2)、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル(B3)、およびショ糖脂肪酸エステル(B4)からなる群から選択される2以上の混合物の配合量を意味する。
【0039】
また、乳化剤(B)は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(B1)と、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル(B2)、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル(B3)、またはショ糖脂肪酸エステル(B4)とを混合して使用することが好ましい。
【0040】
乳化剤(B)として、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(B1)と、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル(B2)、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル(B3)、またはショ糖脂肪酸エステル(B4)とを混合して使用して使用する場合、ポリイソブチレン(A)100質量部に対し、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(B1)を1〜30質量部、他の乳化剤を0.1〜5質量部の割合で混合して使用することが好ましい。ポリイソブチレン(A)100質量部に対し、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(B1)の割合が1質量部未満、または30質量部を超えると充分なエマルジョンの安定性を得ることができないので好ましくない。また、ポリイソブチレン(A)100質量部に対し、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル(B2)、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル(B3)、またはショ糖脂肪酸エステル(B4)の割合が、0.1質量部未満、または5質量部を超える場合も、充分なエマルジョンの安定性を得ることができないので好ましくない。
【0041】
本発明にかかるポリイソブチレンエマルジョンは、上述の(A)〜(C)成分に加えて、エマルジョン安定剤を併用してもよい。エマルジョン安定剤を加えることにより、酸性の条件下、高温の条件下などでも、乳化性能が衰えないエマルジョンを得ることができる。
【0042】
エマルジョン安定剤は、それ自体では通常乳化性能は発揮しないが、これを加えることによりエマルジョンの安定性が増加するものであり、具体的には、例えばキサンタンガムなどの多糖類を挙げることができる。このキサンタンガムとは、キャベツより分離されたXanthomonas Compestrisにより生産された多糖類の名称であり、食品添加物、医薬、増粘剤、分散剤、懸濁剤、乳化安定剤などに使用されている。
【0043】
本発明にかかるポリイソブチレンエマルジョンにおいて、キサンタンガム等のエマルジョン安定剤を使用する場合、例えば、キサンタンガムは、ポリイソブチレン(A)100質量部に対して0.1〜2質量部の割合で使用することができる。ポリイソブチレン(A)100質量部に対して、キサンタンガムの配合量が2質量部を超えると、充分なエマルジョンの安定性を得ることができないので好ましくない。
【0044】
また、ポリイソブチレンエマルジョンには、用途に応じて、配合剤として防腐剤、抗菌剤、防ばい剤、などが添加される場合があり、これらの中には酸性下でないとその薬効が低下するものがある。かかる場合には、ポリイソブチレンエマルジョンにpH調整剤が添加される。
【0045】
本明細書において、pH調整剤とは、本発明に係るポリイソブチレンエマルジョンを酸性にするために添加される添加剤、またはそれ自身酸性であるためにエマルジョンに配合された結果、本発明のエマルジョンを酸性とするような添加剤を意味し、「化粧品原料基準第二版注解(財団法人日本公定書協会編集、株式会社薬事日報社)」、「日本薬局方解説書(財団法人日本公定書協会編集、株式会社廣川書店)」などに詳しく記載されている。
【0046】
本発明で使用されるpH調整剤は、例えば、クエン酸、無水クエン酸、安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、デヒドロアセト酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、イソステアリン酸、イソシロアミノカプロン酸、ウンデシレン酸、エリソルビン酸、オレイン酸、グリチルリチン酸、β−グリチルリチン酸、コハク酸、酒石酸、ステアリン酸、ソルビン酸、乳酸、パルチミン酸、氷酢酸、ベヘニン酸、ミリスチン酸、無水珪酸、リン酸、ホウ酸、塩酸などが挙げられる。
【0047】
pH調整剤の配合量は、その使用目的や用途などによって異なり、その機能を発揮するのに充分な量を使用されるため特に限定されるものではない。しかしながら、一般的には、エマルジョン組成物全体で0.01〜5質量%程度、好ましくは、0.05〜1質量%の割合で使用される。これらのpH調整剤は、単独または適宜に併用して使用することができ、pHが3〜5の範囲に調整されるエマルジョンに使用される。
【0048】
本発明において、ポリイソブチレンエマルジョンは、
ポリイソブチレン(A)と乳化剤(B)とを、ポリイソブチレン(A)100質量部に対し、乳化剤(B)1〜35質量部の割合で混合した混合物を加熱混合する混合工程(I)と、
混合工程で加熱混合したポリイソブチレン(A)と乳化剤(B)との混合物に、水(C)を徐々に加えることにより、W/O型エマルジョンからO/W型エマルジョンに相反転させる反転工程(II)と、により製造される。
【0049】
上記混合工程(I)の加熱温度は、例えば40℃から70℃の範囲の任意の温度であり、好ましくは45℃から65℃の範囲である。
上記混合工程(I)では、特定の温度に加熱した容器内に、所定量のポリイソブチレン(A)と、2種以上の乳化剤(B)の混合物を仕込み、加熱・撹拌により混合する。容器内には、ポリイソブチレン(A)を投入後、乳化剤(B)を投入してもよく、乳化剤(B)の投入後、ポリイソブチレン(A)を投入してもよい。混合時間の短縮のためには、あらかじめ乳化剤(B)を少量の水(C1)に溶解した後容器内に投入、または、容器内に少量の水(C1)と乳化剤(B)を投入して溶解させた後、ポリイソブチレン(A)と混合することが好ましい。予め乳化剤(B)を水(C1)に溶解させる場合、乳化剤(B)100質量部に対し、10質量部〜1000質量部の水(C1)を使用すればよい。また、2種以上の乳化剤(B)は1種類ずつ別々に配合しても同時に配合してもよい。
【0050】
上記混合工程(I)の後、容器内の混合物、すなわち、ポリイソブチレン(A)と乳化剤(B)との混合物、または、ポリイソブチレン(A)と乳化剤(B)と少量の水(C1)との混合物を攪拌しながら、徐々に水(C)、または残りの水(C2)を加えることにより本発明のエマルジョンを得ることができる。
【0051】
容器内の混合物中に、徐々に水(C)、または残りの水(C2)を加えることにより、W/O型エマルジョンからO/W型エマルジョンに反転させることができる。容器内の混合物中への水(C)、または残りの水(C2)の添加は、エマルジョンの仕込み量にもよるが、好ましくは数回に分けて行われることが好ましい。
【0052】
平均粒径が小さく、また、粒径分布の狭いポリイソブチレンエマルジョンの調整のためには、好ましくは、反転工程(II)は、
水(C)または残りの水(C2)の一部(C3)を加熱した後、容器内の混合物に加えて、W/O型エマルジョンを形成する第1の乳化工程(IIa)と、
第1の乳化工程(IIa)で形成されたW/O型エマルジョンに、残部である水(C4)を徐々に加えてO/W型エマルジョンに反転させる第2の乳化工程(IIb)と、
により行うことが好ましい。
【0053】
第1の乳化工程(IIa)において、水(C)または残りの水(C2)の一部である水(C3)は、容器内の混合物の温度と同じ温度に加熱されたものであることが好ましい。また、第1の乳化工程(IIa)で、容器内に添加される水(C)または残りの水(C2)の一部である水(C3)は、ポリイソブチレン(A)100質量部に対し、10質量部〜50質量部添加することが好ましい。
【0054】
第2の乳化工程(IIb)において、容器内の混合物中に添加される残部である水(C4)は、第1の乳化工程(IIa)で容器内に添加される水(C3)の温度より低い温度であることが好ましく、0℃〜20℃であることが好ましい。また、容器内の混合物中に添加される残部である水(C4)は、好ましくは数回に分けて添加されることが好ましい。
【0055】
本発明において、エマルジョン安定剤や添加剤などの配合はエマルジョン形成前でも、形成後でもよい。また、エマルジョン安定剤や添加剤を、予め水(C)に混合しておいてもよく、また、エマルジョン安定剤や添加剤をそのまま容器中に加えてもよい。
【0056】
本発明のポリイソブチレンエマルジョンの製造方法において、必要により、単なる攪拌機のみならず、プラネット攪拌機、ユニバーサルタービン混合機、コロイドミル、ホモジナイザーなどを使用することができる。
【0057】
本発明の方法により製造されるポリイソブチレンエマルジョンの数平均粒径は、3.0μm以下であり、好ましくは、2.0μm以下である。また、本発明の方法により製造されるポリイソブチレンエマルジョンは粒径のばらつきが小さく、粒径分布を示す、数平均粒径に対する体積平均粒径の比が、3.0以下であることが好ましい。
【0058】
ポリイソブチレンエマルジョンの粒径および平均粒径は、遠心沈降法、光回折攪拌法、電気抵抗法、光子相関法などによる分析法により測定が可能であるが、光回折攪拌法、電気抵抗法によるコールターカウンターにより容易に測定することができる。
【0059】
ポリイソブチレンエマルジョンの数平均粒径と体積平均粒径は、例えばコールターカウンターにより粒径分布を測定することにより求めることができる。
【0060】
本発明のエマルジョンは数平均粒径が十分小さく、粒径分布が狭いため、大粒径エマルジョン粒子の含有量が少ない。したがってポリイソブチレンエマルジョン表面積が大きいため、ポリイソブチレン成分を有効に用いることができる。また、例えば、配合製品において大粒径エマルジョン粒子による異物、不均一性等の問題を起こすことがない。
【0061】
より具体的には、本発明のポリイソブテンエマルジョンは粒径が十分小さく粒径分布が狭いことにより薄く均一な粘着層を容易に形成することができるため、例えばハップ剤のような粘接着材に使用した場合少量で優れた粘着性能を発揮することができる。
また、本発明のポリイソブテンエマルジョンは粒径が十分小さく粒径分布が狭いことにより塗膜等に配合した場合、薄く均一で欠陥の少ない塗膜を容易に形成することができる。
【0062】
本発明の方法により調整されたポリイソブチレンエマルジョンは、化粧品、例えば、スプレー型整髪料、ムース型整髪料、クリーム、ローション、シャンプーなどに使用することができる。本発明のポリイソブテンエマルジョンは粒径が十分小さく粒径分布が狭いため、例えばトリートメントとして使用した場合優れた風合いを期待することができる。
【0063】
本発明にかかるポリイソブチレンエマルジョンを整髪料に用いる場合、陽イオンポリマー、揮発性または不揮発性シリコーン、四塩化シリコーン(例えば、商品名:“ABIL(登録商標)”−QUAT、Th.Goldschmidt社製)、パーフルオロポリエーテル(例えば、商品名:“FOMBLIN(登録商標)”、Montefluos社製)、タンパク質加水分解物および四塩化タンパク質加水分解物などの毛髪コンディショニング剤;抗菌剤;亜鉛ピリジンチオンまたはOctopiroxのようなフケ防止剤;増泡剤;真珠光沢剤;香料;染料;着色剤;防腐剤;粘度調節剤;タンパク質;緩衝剤;ポリオールなどの潤滑剤;ティーツリー、イランイラン、ジャスミン、ローズ、サンダルウッドなどのハーブエキス;ミンクオイル;蜜;などの成分を配合することができる。本発明にかかるポリイソブチレンエマルジョンを用いて得られた整髪料は、毛髪にハリ、およびスタイリングのしやすさを付与することができる。
【0064】
また、本発明にかかるポリイソブチレンエマルジョンを、クリーム、ローションのごとき化粧品に使用する場合、タンパク質、シリコーンオイル、スクアラン、香料;などを含有させても良い。
【0065】
本発明の方法により調整されたポリイソブチレンエマルジョンは、医療用品、例えば、ハップ剤に使用することができる。本発明にかかるポリイソブチレンエマルジョンをハップ剤に使用する場合、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、メチルセルロースなどの高分子溶液;カオリン、ベントナイトの様な吸熱剤;ホウ酸などの殺菌剤;ロジン、エステルガムなどの粘着付与剤;などを配合することができる。本発明にかかるポリイソブチレンエマルジョンをハップ剤に使用した場合、皮膚に対する適度な密着性を有し、ダレが少なく、水分の蒸散防止および保水性も改善されたハップ剤が得られる。
【0066】
本発明のエマルジョンは粒径が十分小さく粒径分布が狭いため安定性が優れる。
【0067】
本発明のエマルジョンの安定性は、例えば遠心試験(加速試験)により評価することができる。
より具体的には、遠心分離機を用い、50mlの容器にサンプル10mlを入れ、15℃×1500rpmで30分間遠心分離を行い、目視でエマルジョンの分離の有無を確認し、分離した水相の体積比により安定性を評価することができる。
【0068】
本発明のエマルジョンは、上記の遠心分離試験の値が5%以下であることが好ましく、さらに好ましくは3%以下である。遠心分離試験の値が3%以下である場合、当該エマルジョン及び応用製品の、製造時の配管輸送、撹拌、混合等の動的な環境も含め安定性が高く、加工性に優れる。
【実施例】
【0069】
以下に実施例により本発明の実施態様を例示するが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。
【0070】
(実施例1)
5lのニーダーに粘度平均分子量が65,000、塩素濃度が8ppmのポリイソブチレン1000g、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(“エパン”U−108(登録商標)、第一工業製薬(株))150g、ショ糖脂肪酸エステル(“DKエステル”F−160(登録商標)、第一工業製薬(株))30g、クエン酸2.5g、水1302.5gからポリイソブチレンエマルジョンを調整した。
【0071】
まず、全ポリイソブチレン(A)の32質量%を60℃に保持されたニーダー中に投入し、30分撹拌した後、全投入水の3質量%の水(C1)と、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(B1)とショ糖脂肪酸エステル(B4)の全量を10分間撹拌して混合した後ニーダー内に投入し、30分間撹拌してポリイソブチレン(A)中に溶解した。その後残量のポリイソブチレン(A)を投入し、60分間撹拌した(混合工程)。
【0072】
続いて、全投入水の5質量%の水(C3)をニーダー中に投入し、60℃で30分撹拌して、W/O型エマルジョンを形成した(第1の乳化工程)。
【0073】
その後、全投入水の92質量%の水(C4)を徐々に投入しながら、175分間撹拌して、O/W型エマルジョンに相反転させた(第2の乳化工程)。第2の乳化工程で使用する水(C4)の温度は10℃であり、ニーダー内の加熱を停止して行った。なお、クエン酸は、最後にニーダー内に投入した。得られたポリイソブチレンエマルジョンの数平均粒径は1.2μmであり、数平均粒径に対する体積平均粒径の比は2.8であった。また、遠心分離試験の結果は2%であった。
【0074】
(実施例2)
第2の乳化工程で投入する水(C4)の温度を10℃から15℃に変更したこと以外は、実施例1と同様の手順でポリイソブチレンエマルジョンを製造した。
得られたポリイソブチレンエマルジョンの数平均粒径は1.7μmであり、数平均粒径に対する体積平均粒径の比は2.5であった。また、遠心分離試験の結果は2%であった。
【0075】
(実施例3)
第2の乳化工程で投入する水の温度を10℃から60℃に変更したこと以外は、実施例1と同様の手順でポリイソブチレンエマルジョンを製造した。
得られたポリイソブチレンエマルジョンの数平均粒径は1.2μmであり、数平均粒径に対する体積平均粒径の比は2.8であった。
【0076】
(比較例1)
実施例と同一の処方で、下記の工程でポリイソブチレンエマルジョンを調整した。
【0077】
ポリイソブチレン(A)を60℃に保持されたニーダー中に投入し、60分撹拌した後、全投入水の3質量%の水(C1)と、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(B1)とショ糖脂肪酸エステル(B4)の全量を10分間撹拌して混合した後ニーダー内に投入し、90分間撹拌してポリイソブチレン(A)中に溶解した。
【0078】
続いて、投入水の残部である97質量%の水(C2)をニーダー中に投入し、180分撹拌して、O/W型エマルジョンを形成した。O/W型エマルジョン形成に使用する水(C2)の温度は10℃であり、ニーダー内の加熱を停止して行った。なお、クエン酸は、最後にニーダー内に投入した。得られたポリイソブチレンエマルジョンの平均粒径は1.8μmであり、数平均粒径に対する体積平均粒径の比は3.5であった。また、遠心分離試験の結果は7%であった。