(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記パラメータ調整部は、算出した前記時間情報が第1閾値以上である場合、前記フレーム再送間隔を長くし、前記時間情報が第2閾値以下である場合、前記フレーム再送間隔を短く調整する、
請求項1に記載の無線制御装置。
前記パラメータ調整部は、算出した前記時間情報が第3閾値以上である場合、前記応答間隔を短くし、前記時間情報が第4閾値以下である場合、前記応答間隔を長く調整する、
請求項1又は2に記載の無線制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、無線LANでは、機器間の距離や電波を通さない障害物等の影響により、無線通信信号が互いに到達しない状態においてフレームの衝突が発生する所謂隠れ端末問題が知られている。具体的には、
図7(C)に示すように、A端末−C端末間では、無線通信信号が互いに到達しないものの、B端末−C端末間では、無線通信信号が到達するWiFi機器A乃至Cを考える。このような場合、A端末及びC端末は互いに相手が見えず、A端末からB端末への通信と、C端末からその他のWiFi機器Xへの通信とが同時に発生することがある。
【0007】
図7(C)に示すように、B端末ではA端末から送信されたデータフレームを正常に受信できているものの、SIFS時間の経過を待っている間に、C端末がX端末に向けて送信したデータフレームを受信することがある。このような場合、同じ周波数チャネルが他端末に使用されている(ビジー)ため、B端末ではA端末にACKフレームを返信することなく、周波数チャネルが空くまで待機する。このとき、B端末における待機時間が長いと、A端末においてACKTimeoutが経過してしまい、データフレームの再送が行われてしまう。
【0008】
このように、隠れ端末問題が発生している環境では、受信器側でデータフレームを正常に受信できているにも関わらず送信器からデータフレームが再送されてしまうことがあり、無線リソースを効率的に利用することができない場合がある。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、無線リソースを効率的に利用可能な無線制御装置及び無線制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様においては、他端末に対して送信フレームを送信したことを通知する送信通知情報を出力する送信判定部と、前記他端末から応答フレームを受信したことを通知する受信通知情報を出力する受信判定部と、前記送信通知情報及び前記受信通知情報に基づいて、前記他端末に対して特定の送信フレームを送信してから、当該特定の送信フレームに対応する応答フレームを受信するまでの時間情報を算出する時間情報算出部時間情報算出部と、算出した前記時間情報に基づいて、送信フレームを送信してから再送するまでのフレーム再送間隔を調整するパラメータ調整部と、を備える無線制御装置を提供する。
【0011】
また、前記パラメータ調整部は、算出した前記時間情報に基づいて、前記他端末から送信フレームを受信した場合に、当該送信フレームを受信してから当該送信フレームに対応する応答フレームを前記他端末に送信するまでの応答間隔を調整することとしてもよい。
【0012】
本発明の第2の態様においては、他端末から送信フレームを受信したことを通知する受信通知情報を出力する受信判定部と、前記他端末に対して応答フレームを送信したことを通知する送信通知情報を出力する送信判定部と、前記送信通知情報及び前記受信通知情報に基づいて、前記他端末から特定の送信フレームを受信してから、当該特定の送信フレームに対応する応答フレームを送信するまでの時間情報を算出する時間情報算出部と、算出した前記時間情報に基づいて、前記他端末から送信フレームを受信してから当該送信フレームに対応する応答フレームを前記他端末に送信するまでの応答間隔を調整するパラメータ調整部と、を備える無線制御装置を提供する。
【0013】
また、前記パラメータ調整部は、算出した前記時間情報に基づいて、前記他端末に対して送信フレームを送信した場合に、当該送信フレームを送信してから再送するまでのフレーム再送間隔を調整することとしてもよい。
【0014】
また、前記パラメータ調整部は、算出した前記時間情報が第1閾値以上である場合、前記フレーム再送間隔を長くし、前記時間情報が第2閾値以下である場合、前記フレーム再送間隔を短く調整することとしてもよい。
【0015】
また、前記パラメータ調整部は、算出した前記時間情報が第3閾値以上である場合、前記応答間隔を短くし、前記時間情報が第4閾値以下である場合、前記応答間隔を長く調整することとしてもよい。
【0016】
また、前記送信フレームは、データフレームであり、前記応答フレームは、ACKフレームであってもよい。
【0017】
また、前記送信フレームは、RTSフレームであり、前記応答フレームは、CTSフレームであってもよい。
【0018】
本発明の第3の態様においては、他端末に対して送信フレームを送信したことを通知する送信通知情報を出力するステップと、前記他端末から応答フレームを受信したことを通知する受信通知情報を出力するステップと、前記送信通知情報及び前記受信通知情報に基づいて、前記他端末に対して特定の送信フレームを送信してから、当該特定の送信フレームに対応する応答フレームを受信するまでの時間情報を算出するステップと、算出した前記時間情報に基づいて、送信フレームを送信してから再送するまでのフレーム再送間隔を調整するステップと、を含む無線制御方法を提供する。
【0019】
本発明の第4の態様においては、他端末から送信フレームを受信したことを通知する受信通知情報を出力するステップと、前記他端末に対して応答フレームを送信したことを通知する送信通知情報を出力するステップと、前記送信通知情報及び前記受信通知情報に基づいて、前記他端末から特定の送信フレームを受信してから、当該特定の送信フレームに対応する応答フレームを送信するまでの時間情報を算出するステップと、算出した前記時間情報に基づいて、前記他端末から送信フレームを受信してから当該送信フレームに対応する応答フレームを前記他端末に送信するまでの応答間隔を調整するステップと、を含む無線制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、無線リソースを効率的に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[無線制御装置の概要]
初めに、
図1を参照して、本発明の無線制御装置の概要について説明する。隠れ端末問題が発生している環境では、受信器側でデータフレームを正常に受信できている場合であっても、ACKフレームの返信が遅れてしまい、送信器からデータフレームが再送されることがある。本発明の無線制御装置は、このようなデータフレームの不要な送信が発生する確率を低減することができる。
【0023】
具体的には、送信器側(図中、A端末)では、データフレームを送信してからACKフレームを受信するまでの時間情報TA(以下、「ACK応答時間TA」と呼ぶことがある)に基づいて、ACKTimeoutに要する時間等を調整する。また、受信器側(図中、B端末)では、データフレームを受信してからACKフレームを送信するまでの時間情報TB(以下、「ACK送信時間TB」と呼ぶことがある)に基づいて、SIFS時間等を調整する。
以下、本発明の無線制御装置について、図面を参照して具体的に説明する。
【0024】
[無線制御装置1の構成]
図2は、本発明の無線制御装置1の機能構成を示すブロック図である。無線制御装置1は、無線LAN環境において他の端末装置と無線通信可能な端末装置であり、例えば、スマートフォンやタブレットPC等のWiFiに対応した端末装置や、これら端末装置を相互又は他のネットワークに接続するアクセスポイント等のWiFi機器である。なお、本発明の無線制御装置1は、送信側の端末装置(A端末)及び受信側の端末装置(B端末)の双方に適用することができる。
図2に示すように、無線制御装置1は、送信判定部2と、受信判定部3と、時間情報算出部4と、パラメータ調整部5と、を含んで構成される。
【0025】
[無線制御装置1(送信側)の構成]
無線制御装置1が送信側の端末装置である場合、送信判定部2は、他端末に対して「送信フレーム」を送信したことを通知する送信通知情報を取得し、時間情報算出部4に出力する。なお、本実施形態において、送信フレームは、他端末に対して送信するデータフレームであり、また、送信通知情報は、データフレームを送信した時刻を含む情報である。なお、送信通知情報として、送信したデータフレームを特定可能な情報(例えば、シーケンス番号)を含むこととしてもよい。
【0026】
受信判定部3は、他端末から「応答フレーム」を受信したことを通知する受信通知情報を取得し、時間情報算出部4に出力する。なお、本実施形態において、応答フレームは、他端末から受信するACKフレームであり、また、受信通知情報は、ACKフレームを受信した時刻を含む情報である。なお、受信通知情報として、受信したACKフレームを特定可能な情報(例えば、ACK応答を行うデータフレームのシーケンス番号)を含むこととしてもよい。
【0027】
時間情報算出部4は、送信通知情報及び受信通知情報に基づいて、他端末に対して特定の送信フレームを送信してから、当該特定の送信フレームに対応する応答フレームを受信するまでの時間情報を算出する。即ち、時間情報算出部4は、最新のデータフレームの送信時刻と、最新のACKフレームの受信時刻との差分から、受信側の端末装置に対してデータフレームを送信してから当該端末装置からACKフレームを受信するまでの時間情報(ACK応答時間)を算出する。なお、送信通知情報及び受信通知情報にシーケンス番号が含まれる場合には、時間情報算出部4は、同一のシーケンス番号を有するデータフレームの送信時刻とACKフレームの受信時刻との差分から、ACK応答時間を算出する。
【0028】
時間情報算出部4が算出したACK応答時間を用いることで、周囲の無線LAN環境を評価することができる。このとき、適切な評価のためには、一定期間内におけるACK応答時間の傾向に基づいて行うことが好ましい。そこで、時間情報算出部4は、一定期間の間に算出されたACK応答時間の平均、分散等を算出する。もちろん、平均、分散に限らず、時間情報算出部4は、一定期間におけるACK応答時間のCDF−X%値や忘却平均等を算出することとしてもよい。
時間情報算出部4が算出したACK応答時間は、パラメータ調整部5に出力される。
【0029】
パラメータ調整部5は、算出したACK応答時間に基づいて、無線制御装置1の周囲の無線LAN環境を評価し、送信フレームを送信してから再送するまでのフレーム再送間隔(本実施形態では、ACKTimeout時間)を調整する。
例えば、ACK応答時間が所定値以上である状況は、受信器からのACKフレームの返信が遅れている状況であるため、パラメータ調整部5は、ACKTimeout時間を長くし、データフレームの再送を抑制する。なお、ACK応答時間が所定値以下である状況は、受信器からのACKフレームの返信が早い状況であるため、ACKTimeout時間を短く調整することとしてもよい。他方、ACK応答時間が所定範囲内に収まる場合は、パラメータ調整部5は、ACKTimeout時間を調整することなく維持する。
【0030】
なお、パラメータ調整部5は、前回算出した平均、分散、CDF−X%値又は忘却平均等の値との比較を行い、増加傾向にあるか減少傾向にあるかに基づき、ACKTimeout時間を調整することとしてもよい。即ち、パラメータ調整部5は、増加傾向にある場合にACKTimeout時間を短く調整し、減少傾向にある場合にACKTimeout時間を長く調整することとしてもよい。
【0031】
また、時間情報算出部4によるACK応答時間の算出、及び(又は)パラメータ調整部5によるACK応答時間に基づくACKTimeout時間の調整は、無線LANの方式(802.11a/b/g/n/ac)毎に行うこととしてもよい。
【0032】
[無線制御装置1(送信側)の動作]
続いて、
図3(A)(B)を参照して、無線制御装置1が送信側の端末装置である場合の動作例について説明する。なお、
図3(C)については、後述する。
【0033】
図3(A)に示すように、データフレームを送信したA端末(送信側)が、B端末(受信側)からACKフレームを受信するまでの時間の傾向(平均、分散等)が、ACK応答時間TA0,ACK応答時間TA1,ACK応答時間TA2である場合について考える。
なお、ACK応答時間TA0は標準的なACK応答時間であり、ACK応答時間TA1は標準的なACK応答時間よりも長いACK応答時間であり、ACK応答時間TA2は標準的なACK応答時間よりも短いACK応答時間である。また、
図3(B)において、ACKTimeout_TA0,TA1,TA2は、夫々がACK応答時間TA0,TA1,TA2に対応して調整されるACKTimeout時間である。
【0034】
ACK応答時間がACK応答時間TA1となる状況は、B端末からのACKフレームの返信が遅れている状況であるため、
図3(B)に示すように、パラメータ調整部5は、ACKTimeout時間を延ばし、ACKTimeout_TA1に調整する。
このように、無線制御装置1(送信側)では、周囲の無線LAN環境に応じてACKTimeout時間を動的に変更するため、隠れ端末が発生している状況でも、受信側の端末装置からACKフレームを受信できる確率が増し、送信側の端末装置からデータフレームが不要に送信されることを抑制できる。
【0035】
なお、ACK応答時間TA2となる状況は、B端末からのACKフレームの返信が早い状況である。このような場合に、ACKTimeout時間を短縮し、ACKTimeout_TA2に調整することで、データフレームの送信失敗時に、B端末においてデータフレームが受信できていないことを早期に発見することができ、好適である。
【0036】
[無線制御装置1(受信側)の構成]
図2に戻り、無線制御装置1が受信側の端末装置である場合、受信判定部3は、他端末から「送信フレーム」を受信したことを通知する受信通知情報を取得し、時間情報算出部4に出力する。なお、本実施形態において、送信フレームは、データフレームであり、また、受信通知情報は、データフレームを受信した時刻を含む情報である。なお、受信通知情報として、受信したデータフレームを特定可能な情報(例えば、シーケンス番号)を含むこととしてもよい。
【0037】
送信判定部2は、他端末に対して「応答フレーム」を送信したことを通知する送信通知情報を取得し、時間情報算出部4に出力する。なお、本実施形態において、応答フレームは、ACKフレームであり、また、送信通知情報は、ACKフレームを送信した時刻を含む情報である。なお、送信通知情報として、送信したACKフレームを特定可能な情報(例えば、ACK応答を行うデータフレームのシーケンス番号)を含むこととしてもよい。
【0038】
時間情報算出部4は、送信通知情報及び受信通知情報に基づいて、他端末から特定の送信フレームを受信してから、当該特定の送信フレームに対応する応答フレームを送信するまでの時間情報を算出する。即ち、時間情報算出部4は、最新のデータフレームの受信時刻と、最新のACKフレームの送信時刻との差分から、当該端末装置にACKフレームを返信するまでの時間情報(ACK送信時間)を算出する。もちろん、時間情報算出部4は、同一のシーケンス番号を有するデータフレームの受信時刻とACKフレームの送信時刻との差分から、ACK送信時間を算出することとしてもよい。
【0039】
時間情報算出部4によるACK送信時間の算出方法は、任意であり、時間情報算出部4は、例えば、一定期間の間に算出されたACK送信時間の平均、分散等を算出することとしてもよく、また、一定期間におけるACK送信時間のCDF−X%値や忘却平均等を算出することとしてもよい。
【0040】
パラメータ調整部5は、算出したACK送信時間に基づいて、無線制御装置1の周囲の無線LAN環境を評価し、他端末から送信フレームを受信してから当該送信フレームに対応する応答フレームを当該他端末に送信するまでの応答間隔(本実施形態では、SIFS時間)を調整する。
例えば、ACK送信時間が所定値以上である状況は、送信器に対するACKフレームの返信が遅れている状況である。ACKフレームの返信が遅れる状況としては、
図7(C)に示すように、キャリアセンス中に同じ周波数チャネルが使用されていることを検出した場合が一例として挙げられる。このような場合に、SIFS時間を長くすると、他の端末に当該周波数チャネルを使用され、ACKフレームの送信が更に遅くなってしまう可能性が高まる。そこで、ACK送信時間が所定値以上である状況では、パラメータ調整部5は、SIFS時間を短く調整し、他の端末が当該周波数チャネルを使用する前にACKフレームを送信可能にする。これにより、送信器からデータフレームが再送されてしまうことを抑制することができる。
【0041】
なお、ACK送信時間が所定値以下である状況は、送信器に対するACKフレームの返信が早い状況であるため、SIFS時間を長く調整し、キャリアセンス期間を十分に確保することとしてもよい。また、ACK送信時間が所定範囲内に収まる場合は、パラメータ調整部5は、SIFS時間を調整することなく維持する。
【0042】
また、パラメータ調整部5は、前回算出した平均、分散、CDF−X%値又は忘却平均等の値との比較を行い、増加傾向にあるか減少傾向にあるかに基づき、SIFS時間を調整することとしてもよい。即ち、パラメータ調整部5は、増加傾向にある場合にSIFS時間を短く調整し、減少傾向にある場合にSIFS時間を長く調整することとしてもよい。
【0043】
また、時間情報算出部4によるACK送信時間の算出、及び(又は)パラメータ調整部5によるACK送信時間に基づくSIFS時間の調整は、無線LANの方式(802.11a/b/g/n/ac)毎に行うこととしてもよい。
【0044】
[無線制御装置1(受信側)の動作]
続いて、
図4(A)(B)を参照して、無線制御装置1が受信側の端末装置である場合の動作例について説明する。なお、
図4(C)については、後述する。
【0045】
図4(A)に示すように、データフレームを受信したB端末(受信側)が、A端末(送信側)に対してACKフレームを返信するまでの時間の傾向(平均、分散等)が、ACK送信時間TB0,ACK送信時間TB1,ACK送信時間TB2である場合について考える。
なお、ACK送信時間TB0は標準的なACK送信時間であり、ACK送信時間TB1は標準的なACK送信時間よりも長いACK送信時間であり、ACK送信時間TB2は標準的なACK送信時間よりも短いACK送信時間である。また、
図4(B)において、SIFS_TB0,TB1,TB2は、夫々がACK送信時間TB0,TB1,TB2に対応して調整されるSIFS時間である。
【0046】
ACK送信時間がACK送信時間TB1となる状況は、A端末へのACKフレームの返信が遅れている状況であり、例えば、キャリアセンス中に同じ周波数チャネルが使用されていることを検出した場合に発生することがある。そこで、
図3(B)に示すように、パラメータ調整部5は、SIFS時間を短縮し、SIFS_TB1に調整することで、当該周波数チャネルが使用されていないタイミングを検出し、ACKフレームを送信可能にする。
このように、無線制御装置1(受信側)では、周囲の無線LAN環境に応じてSIFS時間を動的に変更するため、隠れ端末が発生している状況でも、ACKフレームを返信する確率が増し、送信側の端末装置からデータフレームが不要に送信されることを抑制できる。
【0047】
なお、ACK送信時間TB2となる状況は、A端末へのACKフレームの返信が早い状況である。このような場合に、SIFS時間を延ばし、SIFS_TB2に調整することで、キャリアセンス期間を十分に確保することができ、通信の衝突を適切に回避することができる。
【0048】
[無線制御装置1の動作2]
ところで、無線通信において、あるタイミングで送信側だった端末装置は、別のタイミングでは受信側の端末装置になることがある。例えば、第1タイミングでA端末からB端末にデータフレームが送信され、別の第2タイミングでB端末からA端末にデータフレームが送信される状況では、A端末は、第1タイミングでは送信側の端末装置であり、第2タイミングでは受信側の端末装置である。
【0049】
本発明の無線制御装置1では、送信側の端末装置(A端末)では、ACKTimeout時間を調整し、受信側の端末装置(B端末)では、SIFS時間を調整することで、データフレームの不要な再送を抑制し、無線リソースの効率的な利用を実現している。
この点、送信側の端末装置と受信側の端末装置とがタイミングによって入れ替わる場合、A端末についてもSIFS時間を調整することとしてもよく、同様に、B端末についてもACKTimeout時間を調整することとしてもよい。
【0050】
具体的には、A端末は、送信側の端末装置である期間に、データフレームを送信してからACKフレームを受信するまでの「ACK応答時間TA」を算出する。A端末は、受信側の端末装置になると、送信側であった期間に算出していた「ACK応答時間TA」の傾向(平均、分散等)に基づいて、SIFS時間を調整する。即ち、A端末は、「ACK応答時間TA」が標準よりも長い場合に、SIFS時間が短くなるように調整する。なお、A端末は、「ACK応答時間TA」が標準よりも短い場合に、SIFS時間が長くなるように調整することとしてもよい。
【0051】
同様に、B端末は、受信側の端末装置である期間に、データフレームを受信してからACKフレームを送信するまでの「ACK送信時間TB」を算出する。B端末は、送信側の端末装置になると、受信側であった期間に算出していた「ACK送信時間TB」の傾向(平均、分散等)に基づいて、ACKTimeout時間を調整する。即ち、B端末は、「ACK送信時間TB」が標準よりも長い場合に、ACKTimeout時間が長くなるように調整する。なお、B端末は、「ACK送信時間TB」が標準よりも短い場合に、ACKTimeout時間が短くなるように調整することとしてもよい。
【0052】
ここで、
図3(C)は、あるタイミングにおいて送信側の端末装置であったA端末が、別のタイミングにおいて受信側の端末装置となった場合の動作例である。
なお、
図3(C)において、SIFS_TA0,TA1,TA2は、夫々がACK応答時間TA0,TA1,TA2に対応して調整されるSIFS時間である。
【0053】
ACK応答時間がACK応答時間TA1となる状況は、B端末からのACKフレームの返信が遅れている状況であるため、周囲の無線LAN環境が混み合っているものと想定される。そこで、送信側/受信側が入れ替わった場合、A端末は、SIFS時間を短くし、SIFS_TA1に調整する。これにより、A端末では、データ送信側であった期間に算出しておいた「ACK応答時間TA」に基づいて、データ受信側になった場合のSIFS時間を調整することができ、B端末がデータフレームを不要に再送してしまうことを抑制できる。
なお、ACK応答時間がACK応答時間TA2となる状況は、B端末からのACKフレームの返信が早い状況である。このような場合に、A端末は、SIFS時間を延ばし、SIFS_TA2に調整することとしてもよい。これにより、キャリアセンス期間を十分に確保することができ、通信の衝突を適切に回避することができる。
【0054】
また、
図4(C)は、あるタイミングにおいて受信側の端末装置であったB端末が、別のタイミングにおいて送信側の端末装置となった場合の動作例である。
なお、
図4(C)において、ACKTimeout_TB0,TB1,TB2は、夫々がACK送信時間TB0,TB1,TB2に対応して調整されるACKTimeout時間である。
【0055】
ACK送信時間がACK送信時間TB1となる状況は、A端末へのACKフレームの返信が遅れている状況であるため、周囲の無線LAN環境が混み合っているものと想定される。そこで、送信側/受信側が入れ替わった場合、B端末は、ACKTimeout時間を延ばし、ACKTimeout_TB1に調整する。これにより、B端末では、データ受信側であった期間に算出しておいた「ACK送信時間TB」に基づいて、データ送信側になった場合にACKTimeout時間を調整することができ、A端末がデータフレームを不要に再送してしまうことを抑制できる。
なお、ACK送信時間がACK送信時間TB2となる状況は、A端末へのACKフレームの返信が早い状況である。このような場合に、B端末は、ACKTimeout時間を短縮し、ACKTimeout_TB2に調整することとしてもよい。これにより、データフレームの送信失敗時に、A端末においてデータフレームが受信できていないことを早期に発見することができ、好適である。
【0056】
[無線制御装置1の処理フロー]
続いて、
図5を参照して、無線制御装置1の処理について説明する。
図5は、無線制御装置1の処理の流れを示すフローチャートである。
【0057】
図5に示すように、ステップS1において、送信側の端末装置は、受信側の端末装置に対してデータフレームを送信する。続いて、ステップS2において、送信側の端末装置は、計時を開始する。この計時は、ステップS3,S4,S5,S6に示すように、ACKTimeout時間が経過するまで、又は受信側の端末装置からACKフレームを受信するまで行われる。なお、ACKフレームを受信することなくACKTimeout時間が経過した場合、送信側の端末装置は、DIFS時間及びBO時間の間、周波数チャネルの使用の有無を確認し、同じ周波数チャネルが使用されていない場合にデータフレームを再送する(ステップS1)。
【0058】
他方、受信側の端末装置からACKフレームを受信すると、送信側の端末装置は、データフレームを送信してからACKフレームを受信するまでのACK応答時間を算出する。送信側の端末装置は、このACK応答時間の傾向(平均、分散等)に基づいて、任意のタイミングでパラメータ(ACKTimeout時間又はSIFS時間)を調整する(ステップS7)。
【0059】
また、受信側の端末装置では、送信側の端末装置からデータフレームを受信すると、計時及びキャリアセンスを開始する(ステップS11、S12)。このとき、受信側の端末装置では、SIFS時間の間、同じ周波数チャネルが空いている状態であることを確認すると(ステップS13,S14)、ステップS15において、ACKフレームを送信側の端末装置に送信とともに、計時を終了し、データフレームを受信してからACKフレームを送信するまでのACK送信時間を算出する。
【0060】
続いて、ステップS16において、受信側の端末装置は、このACK送信時間の傾向(平均、分散等)に基づいて、任意のタイミングでパラメータ(ACKTimeout時間又はSIFS時間)を調整する。
【0061】
[無線制御装置1の効果]
以上説明した本発明の無線制御装置1では、周囲の無線LAN環境に応じて、ACKTimeout時間やSIFS時間を調整する。これにより、受信器がデータフレームを正常に受信できているにも関わらず、送信器がデータフレームを再送してしまうことを抑制でき、無線リソースを効率的に利用することができる。
【0062】
[別実施形態]
続いて、本発明の無線制御装置1の別実施形態について説明する。既に説明した実施形態では、送信側の端末装置から送信する送信フレームが「データフレーム」であり、この送信フレームに応じて受信側の端末装置から送信する応答フレームが「ACKフレーム」である例について説明した。
この点、本発明の無線制御装置1は、送信フレームとして「RTSフレーム」、応答フレームとして「CTSフレーム」を用いることとしてもよい。
【0063】
隠れ端末問題の発生を防止する方法として、RTS/CTS(request to send /clear to send)というアクセス制御方式が知られている。
RTS/CTSでは、
図6に示すように、送信側のA端末は、データフレームの送信の前に、送信相手であるB端末に対してRTS(request to send)フレームを送信する。RTSフレームを受信したB端末は、データフレームを受信する準備が整うと、A端末に対してCTS(clear to send)フレームを返信し、A端末は、B端末からのCTSフレームを待ってデータフレームの送信を行う。
【0064】
このような場合に、別実施形態におけるA端末は、RTSフレームを送信してからCTSフレームを受信するまでの時間情報に基づいて、ACKTimeout時間やSIFS時間を調整する。同様に、別実施形態におけるB端末は、RTSフレームを受信してからCTSフレームを送信するまでの時間情報に基づいて、ACKTimeout時間やSIFS時間を調整する。
【0065】
以上のような無線制御装置1であっても、周囲の無線LAN環境に応じて、ACKTimeout時間やSIFS時間を調整することができるため、無線リソースを効率的に利用することができる。
【0066】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0067】
即ち、本発明の無線制御装置1は、送信フレームを送信してから応答フレームを受信するまでの時間情報や、送信フレームを受信してから応答フレームを送信するまでの時間情報に基づいて、ACKTimeout時間やSIFS時間を調整する。この点、送信フレームと応答フレームとは、送信/応答の関係性を有していればよく、上記実施形態に限定されるものではない。
一例として、送信フレームを「CTSフレーム」、応答フレームを「データフレーム」として(
図6参照)、本発明の無線制御装置1を適用することも可能である。