特許第6283608号(P6283608)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283608
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】心臓弁インプラントのための医療用装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20180208BHJP
【FI】
   A61F2/24
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-508832(P2014-508832)
(86)(22)【出願日】2012年5月4日
(65)【公表番号】特表2014-518699(P2014-518699A)
(43)【公表日】2014年8月7日
(86)【国際出願番号】EP2012058278
(87)【国際公開番号】WO2012150346
(87)【国際公開日】20121108
【審査請求日】2015年4月23日
(31)【優先権主張番号】11164750.9
(32)【優先日】2011年5月4日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/482,231
(32)【優先日】2011年5月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513277083
【氏名又は名称】メドテンティア・インターナショナル・リミテッド・オサケユキチュア
【氏名又は名称原語表記】MEDTENTIA INTERNATIONAL LTD OY
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケレネン,オッリ
(72)【発明者】
【氏名】ビルタネン,ヤニ
【審査官】 宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−520628(JP,A)
【文献】 特開2000−308652(JP,A)
【文献】 特表平09−503679(JP,A)
【文献】 特表2005−508702(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/094469(WO,A2)
【文献】 特表2008−502457(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0282162(US,A1)
【文献】 国際公開第1993/002640(WO,A1)
【文献】 特表2007−537794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓弁インプラント(101)を保持するための医療用装置(100)であって、
前記心臓弁インプラントを適合させることのできる湾曲を備えた周端縁(103)を規定する細長い支持部(102)を備え、
前記細長い支持部は、前記心臓弁インプラントを前記装置において適所に弾力的に保持するための弾性部分(104)を含み、
前記細長い支持部は、少なくとも1つの中央開口部(105)を備えたリング形状であり、
前記リング形状は、前記細長い支持部が2つの自由端(106,107)を含むように不連続であり、
前記不連続なリング形状は、前記自由端が軸方向にオフセットされる(113)ように三次元の経路(118)に概ね追従し、
前記支持部は、第1の構成において拡張された円周(C)と、第2の構成において縮小された円周(C´)とを有し、前記第2の構成と第1の構成との間での前記支持部の径方向の移動により、前記湾曲を前記心臓弁インプラントに少なくとも部分的に沿わせて、前記心臓弁インプラントを適所に保持し、
前記第1の構成が緩められ、前記第2の構成が圧縮され、前記径方向の移動は、前記第2の構成から前記第1の構成への径方向への拡張である、医療用装置。
【請求項2】
前記細長い支持部は、前記弾性部分を規定するよう可撓性がある、請求項に記載の医療用装置。
【請求項3】
前記自由端の各々は、前記圧縮された第2の構成において前記自由端を互いに向かって圧縮するために、ツール(200)を受けるよう適合された係合面(108,109)を有する係合部分(106,107)を含む、請求項に記載の医療用装置。
【請求項4】
前記係合部分および前記係合面は、前記細長い支持部の前記周端縁から径方向に延在する、請求項に記載の医療用装置。
【請求項5】
位置決めツール(200)との係合のための制御部材(110)を含み、前記制御部材は球面(117)を含む、請求項に記載の医療用装置。
【請求項6】
前記制御部材は、前記自由端のうち、前記中央開口部から中心を外れた1つの前記自由端に固定され、前記係合部分は、前記周端縁から径方向内側に延在し、前記制御部材は前記係合部分のうちの1つの係合部分の端部(111)に固定される、請求項に記載の医療用装置。
【請求項7】
前記細長い支持部は、前記心臓弁インプラントを受けるよう寸法決めされた前記周端縁に沿った径方向外側の開口部または溝(112)を含み、
および/または、
前記湾曲は、前記湾曲が、対応する三次元の経路に延在する前記心臓弁インプラントに沿うように三次元の経路(118)に概ね追従する、請求項1からのいずれかに記載の医療用装置。
【請求項8】
前記細長い支持部は、前記周端縁に沿った摩擦低減シース(115)を含み、前記摩擦低減シース(115)は、前記装置によって適所に保持されたとき、前記心臓弁インプラントの一部を覆うよう径方向に延在する、請求項1からのいずれかに記載の医療用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
この発明は、概して、心臓弁の交換および修復の分野に関する。より特定的には、本発明は、心臓弁インプラントを保持するための医療用装置、心臓弁インプラントを保持する方法、このような医療用装置の操作のためのツールを含むキット、および心臓弁インプラントを保持するための支持ツールに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
病変した僧帽弁および三尖弁には頻繁に交換または修復が必要となる。僧帽弁および三尖弁の弁尖もしくは支持用脊索は、劣化し脆くなっている可能性があるか、または、弁輪は拡張して弁漏れを引起こす可能性がある。僧帽弁および三尖弁の交換および修復は、弁形成リングを用いて行われることが多く、この弁形成リングを用いて、弁輪の直径を縮小するか、他の任意の方法によって弁輪の幾何学的形状を変更するか、または、弁の置換術もしくは修復術中に全体的な支持構造として支援をもたらす。このような弁形成リングもしくは他の弁形成インプラントまたは心臓弁インプラントは、一般には、たとえば置換弁などであって、さまざまなツールによって適所に配置される。
【0003】
縫合線を配置するために弁形成リングを適所に保持し、弁輪組織にリングを取付けるためのアセンブリが米国特許US6,197,052に開示される。弁形成リングまたは縫合ガイドは、縫合糸または縫糸がガイド台に配置されたアパーチャを通り、そしてリングを通ることによってガイド台に取外し可能に取付けられる。外科医が、リングを外す準備ができると、リングを台に固定するための縫合糸が台のさまざまな位置で切断され、その後、ガイドが回収され得る。台は、ハンドルアセンブリの円筒形ハブを台のプラグに挿入することによって装着されるハンドルアセンブリに取付け可能である。
【0004】
米国特許出願US2003176916は、第1の構成要素を有する弁形成用プロテーゼのためのホルダを開示する。このホルダの周りにはプロテーゼが装着され、第2の構成要素が縫合糸によって第1の構成要素に取外し可能に固定されている。突起部により、2つのホルダ構成要素が互いに整列させられている。開口リングである第1のホルダ構成要素の円周の変形および縮小を防ぐために、第2の構成要素において長方形の突起がさらに必要とされる。すなわち、第1のホルダ構成要素は、第2のホルダ構成要素なしでは、プロテーゼを十分に保持することができない。いくつかの実施の形態においては、プロテーゼを通る縫合糸によってプロテーゼをホルダに保持するのではなく、プロテーゼは、棘状突起、ピン、釘または針などの下方に延在する貫通部材によって保持される。
【0005】
したがって、先行技術の装置に関する問題として、ホルダへの取付けおよび取外しのための複雑な機構のせいでインプラントが破損してしまうリスクが挙げられ、これにより、位置決め段階中および再位置決め段階中の両方においてインプラントの操作量が増大し、結果として、インプラントの不要な摩耗が起こって、インプラントに損傷をもたらすリスクが生じる恐れがある。
【0006】
心臓手術中、弁を置換および修復するのにかかる時間量を減らすことに重点が置かれる。というのも、心臓は頻繁に停止してしまい、灌流が起こらなくなるからである。先行技術の装置に関する問題として、たとえば縫合糸を用いることによって、心臓弁インプラントとも称される弁形成装置、または単純に以下に記載のインプラント、をホルダアセンブリに取付けたりまたはホルダアセンブリから取外したりするのに時間がかかることが挙げられる。したがって、弁輪に位置決めすべきインプラントを保持するための医療用装置であって、このようなインプラントに対する取付けおよび取外しを迅速に行うことが可能となる医療用装置を備えることは非常に有用となるだろう。
【0007】
心臓弁インプラントの再位置決めが必要になった場合、ホルダをインプラントに容易かつ迅速に係合させることができることも重要である。このような再位置決めが必要な場合、先行技術の装置で縫合糸を取付けるには複雑で時間がかかってしまう。
【0008】
先行技術の装置に関する別の問題として、要素が弁輪にわたって延在し、これにより視界が不明瞭になっている複雑なホルダ構造のせいで、ホルダを介する弁輪内の可視性が不十分になる点が挙げられる。可視性が低下すると、正確な位置決めがより複雑になり、時間がかかってしまい、リスクが増大する可能性がある。
【0009】
先行技術の装置に関するさらなる問題として、ホルダと送達ツールとの間に動きの自由度が欠けているために、心臓弁インプラントの操作性が不十分になる点が挙げられる。このように可撓性が欠如していることによっても、置換または修復処置の時間が長くなってしまう。
【0010】
先行技術のホルダに関する別の問題として、多様なサイズのインプラントに適合させる能力が限られている点が挙げられる。したがって、正確な嵌合を見出すためにホルダを頻繁に交換する必要があるかもしれないので、さまざまなホルダをいくつも備える必要があり、処置がさらに複雑になってしまう。
【0011】
上述の問題により、患者および医療制度にとって悲惨な結果が生じる可能性があり、患者のリスクが増大する。
【0012】
したがって、心臓弁インプラントを保持するための改善された医療用装置が有利となるだろう。特に、可撓性を高め、長時間にわたる外科手術処置の時間を短縮し、費用対効果をもたらし、患者の安全性を高めることを可能にする医療用装置が有利となるだろう。また、このような医療用装置で心臓弁インプラントを保持する方法と、このような医療用装置を操作するためのツールを備えたキットとが有利になるだろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明の実施の形態では、好ましくは、添付の特許請求の範囲に従った装置を設けることにより、上述のとおり、単独で、または如何なる組合わせなどによっても、当該技術における1つ以上の欠陥、不利点または問題点を軽減、緩和または排除するよう試みられる。
【0014】
本発明の第1の局面に従うと、心臓弁インプラントを保持するための医療用装置が提供される。医療用装置は、心臓弁インプラントを適合させることのできる湾曲を有する周端縁を規定する細長い支持部を含み、細長い支持部は、上記装置において心臓弁インプラントを適所に弾力的に保持するための弾性部分を備える。
【0015】
本発明の第2の局面に従うと、弾性部分を有する第1の局面に従った医療用装置を含むキットが提供され、さらに、当該装置において心臓弁インプラントを適所に弾力的に保持するための弾性部分を操作するために配置された遠位端を含むツールが提供される。
【0016】
本発明の第3の局面に従うと、第1の局面に従った医療用装置によって患者身体の外側において心臓弁インプラントを適所に保持する方法が提供される。当該方法は、第2の局面に従ったキットを設けるステップと、装置において心臓弁インプラントを適所に弾力的に保持するステップとを含む。
【0017】
本発明の第4の局面に従うと、心臓弁インプラントを保持するための支持ツールが提供される。当該支持ツールは、互いに別個であり、互いに相対的に径方向に移動可能な第1および第2の細長い支持部材を含む。第1および第2の細長い支持部材は各々、心臓弁インプラントを適合させることのできる湾曲を有する。当該支持ツールはさらに、第1および第2の細長い支持部材に接続されたマニピュレータ部分を含む。当該マニピュレータ部分は、第1および第2の細長い支持部材のうち少なくとも1つを互いに相対的に移動させて、湾曲を心臓弁インプラントに少なくとも部分的に沿わせて、心臓弁インプラントを適所に保持するためのものである。
【0018】
本発明の第5の局面に従うと、第4の局面に従った医療用装置によって患者身体の外側において心臓弁インプラントを適所に保持する方法が提供される。当該方法は、上記装置のマニピュレータ部分によって第1および第2の細長い支持部材のうち少なくとも1つを互いに径方向の反対方向に移動させて、上記支持部材の湾曲を心臓弁インプラントに少なくとも部分的に沿わせて、心臓弁インプラントを適所に保持することによって、上記インプラントの位置を上記装置に固定するステップを含む。
【0019】
本発明のさらなる実施の形態が従属請求項に規定されており、本発明の第2の局面以降の特徴については第1の局面が準用される。
【0020】
本発明のいくつかの実施の形態では、心臓における標的部位に心臓弁インプラントを位置決めするのにかかる時間を短縮することが規定される。
【0021】
本発明のいくつかの実施の形態では、このようなインプラントを弁輪に効率的に位置決めおよび再位置決めするために心臓弁インプラントを医療用装置に取付けたり医療用装置にから取外したりするのにかかる時間を短縮することが規定される。
【0022】
本発明のいくつかの実施の形態では、身体における多様な解剖学的部位に沿わせることによって標的部位において心臓弁インプラントを柔軟に位置決めすることが規定される。
【0023】
本発明のいくつかの実施の形態では、正確な位置決めを行い、合併症のリスクを減らすために、心臓弁インプラントを介する弁輪内への可視性を高めることが規定される。
【0024】
本発明のいくつかの実施の形態では、また、修復処置または置換処置中に心臓弁インプラントが破損するリスクを減らすことが規定される。
【0025】
本発明のいくつかの実施の形態では、位置決めの柔軟性が維持された心臓弁インプラントのコンパクトなホルダが規定される。
【0026】
本発明のいくつかの実施の形態では、位置決めすべき多様なサイズの心臓弁インプラントに適合させる観点から、可撓性のあるホルダが規定される。
【0027】
「含む(comprises/comprising)」という用語は、この明細書において用いられる場合、述べられる特徴、整数、ステップまたは構成要素の存在を特定するものと理解されるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、構成要素またはその群の存在または追加を除外するものではないことが強調されるべきである。
【0028】
図面の簡単な説明
本発明の実施の形態が可能となるこれらおよび他の局面、特徴および利点は、添付の図面が参照されている本発明の実施の形態の以下の説明から明らかになり、明確になるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1a】第1の構成(a)における本発明の実施の形態に従った医療用装置を示す図である。
図1b】第2の構成(b)における本発明の実施の形態に従った医療用装置を示す図である。
図2】本発明の実施の形態に従った医療用装置で位置決めされるべき心臓弁インプラントを示す図である。
図3】本発明の実施の形態に従った医療用装置で位置決めするために適所に保持された心臓弁インプラントを示す図である。
図4】本発明の実施の形態に従った医療用装置を示す斜視図である。
図5a】心臓弁インプラントを保持していない場合(a)における、本発明の実施の形態に従った医療用装置を示す側面図である。
図5b】心臓弁インプラントを適所に保持している場合(b)における、本発明の実施の形態に従った医療用装置を示す側面図である。
図6】本発明の実施の形態に従った医療用装置で位置決めされるべき心臓弁インプラントを示す図である。
図7図6に従った心臓弁インプラントを適所に保持する場合における、本発明の実施の形態に従った医療用装置を示す側面図である。
図8a】心臓弁インプラントを適所に保持する場合における、本発明の実施の形態に従った医療用装置を詳細に示す側面図である。
図8b】心臓弁インプラントを適所に保持する場合における、本発明の実施の形態に従った医療用装置を詳細に示す側面図である。
図8c】心臓弁インプラントを適所に保持する場合における、本発明の実施の形態に従った医療用装置を詳細に示す側面図である。
図9】本発明の実施の形態に従った医療用装置を示す図である。
図10図1bに対応する第2の構成における本発明の実施の形態に従った医療用装置を示す図である。
図11a】本発明の実施の形態に従った医療用装置を保持するためのツールを示す図である。
図11b】本発明の実施の形態に従った医療用装置を保持するためのツールを示す図である。
図11c】本発明の実施の形態に従った医療用装置を保持するためのツールを示す図である。
図12】本発明の実施の形態に従った医療用装置で心臓弁インプラントを位置決めする方法を示すフローチャートである。
図13a】本発明の実施の形態に従った心臓弁インプラントを保持するための支持ツールを示す上面図(a)である。
図13b】本発明の実施の形態に従った心臓弁インプラントを保持するための支持ツールを示す側面図(b)である。
図14a】本発明の実施の形態に従った心臓弁インプラントを保持するための支持ツールをさらに示す図である。
図14b】本発明の実施の形態に従った心臓弁インプラントを保持するための支持ツールをさらに示す図である。
図14c】本発明の実施の形態に従った心臓弁インプラントを保持するための支持ツールをさらに示す図である。
図14d】本発明の実施の形態に従った心臓弁インプラントを保持するための支持ツールをさらに示す図である。
図15】医療用装置によって心臓弁インプラント(101)を適所に保持する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
実施の形態の説明
本発明の具体的な実施の形態をここで添付の図面に関連付けて説明する。しかしながら、この発明は、多くのさまざまな形状で実施可能であり得、この明細書中に記載される実施の形態に限定されるものと解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施の形態は、この開示が十分で完全なものとなり、本発明の範囲を当業者に十分に伝え得るように提供される。添付の図面に図示される実施の形態についての詳細な説明において用いられる用語は、本発明を限定するよう意図されたものではない。添付の図面においては、同様の数字は同様の要素を指している。
【0031】
以下の説明は、弁形成リングなどの心臓弁インプラントに適用可能な本発明の実施の形態に焦点が合わされている。しかしながら、本発明がこの出願に限定されず、他の多くの弁形成インプラント、たとえば置換弁を含む心臓弁インプラント、および他の医療用インプラント可能装置に適用され得ることが認識されるだろう。
【0032】
図1aおよび図1bは、弁形成インプラント101を保持するための、本発明の実施の形態に従った医療用装置100を示す(たとえば、図2および図7を参照)。装置100は、弁形成インプラント101を適合させることのできる湾曲を備えた周端縁103を規定する細長い支持部102を含む。支持部102は、医療用装置100において弁形成インプラント101を適所に弾力的に保持するための弾性部分104を含む。医療用装置100はインプラントのためのホルダとして機能し、弾性部分104を有していることにより、インプラント101は、縫合糸などの取付け用の如何なる特化された手段をも必要することなく、および/または、インプラントを保持するのに必要とされるいくつかの構成要素を備えたホルダを使用する必要なしに、適所に保持することができる。これにより、たとえば縫合糸を用いた場合と比較して、それほど時間のかからない態様で、インプラント101を装置101に取付けたり装置101から取外したりすることが容易になる。インプラント101が、たとえば、心臓弁の弁輪のサイズを変更するために標的部位に位置決めされると、弾性部分104があるせいで、インプラントを装置に再び取付けることによって再位置決めを容易に達成することができ、この場合も、特別な取付け手段は必要とされない。取付けおよび取外しが迅速に行われるので、手術中の短い時間枠の間にこの態様で繰返し再位置決めすることが可能となる。弾性部分104は、医療用装置100においてインプラント101を径方向に適所に弾力的に保持するためのものであり、および/または、医療用装置100においてインプラント101を軸方向に適所に弾力的に保持するためのものである。インプラント101を径方向に弾力的に保持するということは、弾性部分104が径方向において弾力性を有するものとして解釈されるべきであり、この径方向は、装置100の中心から周端縁103に向かって軸と平行に延在しており、これにより、径方向に、中心から径方向外側にまたは中心から径方向内側に、力を加えてインプラント101を保持するための方向である。装置100の中心は、その質量の中心または幾何学的形態の中心と解釈されてもよい。径方向はまた、制御部材110の位置から周端縁103へと整列させた軸に沿って延在するものと解釈されてもよい。インプラント101は、インプラント101と装置100との間の接触区域、たとえば周端縁103、において生じる摩擦力、すなわち弾性部分104を介して加えられる径方向向きの力を源とする摩擦力、によって装置100に対抗して適所に保持される。
【0033】
図2は、弁形成リング101を弁形成インプラント101の例として示す。図3においては、細長い支持部102はそれ自体に弾力性があり、このため、弾性部分104は周端縁103に沿って延在する。弾性部分104は、周端縁103に沿って径方向力(F)を加えることによってインプラント101を保持する。力(F)は、このとき、径方向外側に加えられる。
【0034】
インプラント101を軸方向に弾力的に保持するということは、弾性部分104が軸方向に弾力性を有するものと解釈されるべきであり、この方向は、径方向に対して、すなわち、たとえば図1aおよび図1bにおける装置100の側面図を示す図7の垂直方向に対して、実質的に垂直に延在している。軸方向に弾力性があることにより、弾性部分104は、インプラント101を適所に保持する力をインプラント101に対して軸方向に加える可能性がある。図7に関連付けて以下にさらに説明するように、インプラントの幾何学的形状は、この態様では、インプラントの挿入を容易にするために弾性部分104から加えられる力によって変化する可能性がある。
【0035】
図1aおよび図1bに戻って、支持部104は、第1の構成(図1a)においては拡張された円周(C)を有し、第2の構成(図1b)においては縮小された円周(C´)を有する。円周は、その通常の意味では、周端縁103の周囲の装置100の寸法として解釈されるべきである。細長い支持部が、たとえば図1aおよび図1bに図示されるとおり2つの自由端があることで不連続である場合、円周は、破線(C、C´)によって示されるように、周辺にある自由端同士の間の最短距離として測定される。第2の構成と第1の構成との間で支持部102を径方向に移動させることにより、周端縁103の湾曲を弁形成インプラント101に少なくとも部分的に沿わせて、弁形成インプラント101を適所に保持する。径方向への移動は弾性部分104の弾力性によるものである。第2の構成と第1の構成との間における径方向の移動は、第2の構成からから第1の構成への移動、または、第1の構成から第2の構成への移動として、すなわち径方向外側と径方向内側との間の移動として解釈されるべきである。したがって、細長い支持部102は、インプラントを適所に保持するために、径方向外側方向および径方向内側方向の両方に向かってインプラント101に力を加える可能性がある。これにより、自己保持動作がもたらされて、装置100からインプラントを取外すことが容易になり、必要に応じてインプラントを再挿入することが可能になる。自己保持を行う細長い支持部を備えることにより、インプラントを保持するためのいくつかの構成要素に関する不利な先行技術の解決策が回避され、縫合糸は不要となる。
【0036】
拡張された円周(C)の第1の構成は装置100の緩んだ構成であり得、縮小された円周の第2の構成は装置100の圧縮された構成であり得る。弾性部分104は、緩んだ構成では負荷を受けず、圧縮された構成では負荷を受ける、すなわち、張力がかけられる。したがって、図3において例示されたように、径方向の移動は、第2の構成から第1の構成への径方向への拡張であり、これにより、周端縁103の湾曲をインプラント101に沿わせて、半径方向外側の方向に力(F)を加えて、インプラント101を適所に保持する。したがって、図3における装置100の構成は、インプラント101に力(F)を加えるためには十分に拡張された円周ではない、すなわち、十分には緩められていない。このため、装置100がインプラント101において適所に配置されると、装置100が堅固な支持部をもたらし、インプラント101および装置100がこれら2つの間における自己保持接触を緩めることなく操作可能となる。単に変更できるだけである円周を有する細長い支持部では、上述の問題を解決するのに十分ではない。従来の解決策は、依然として、インプラントを適所にロックし、かつホルダ部材が崩れるのを防ぐために接続されるべき複数の構成要素ホルダ部材を備えることに依拠している。構成間に径方向に拡張可能な装置100の弾性部分104により、上述のとおり、このような複雑な装着システムが回避される。
【0037】
インプラントに対して径方向内側の力を加える装置100の場合(図示せず)、図1bは緩んだ構成を例示しており、部分104の弾力性により、装置100が図1aの拡張された円周にまで拡張することが可能となる。次いで、インプラント101が、装置100のうち周端縁103とは反対側の内側端縁に沿うことで、適所に保持され得る。
【0038】
実施の形態における装置100の弾力性は、形状記憶ポリマーまたは金属などの形状記憶特性を有する可撓性材料で作られている弾性部分104によるものであってもよい。代替的には、拡張された円周および縮小された円周を有する装置構成は、温度依存形状などの他の形状記憶特性を有する装置100の材料によって達成されてもよい。
【0039】
細長い支持部102は少なくとも1つの中央開口部105を有するリング形状であってもよい。図1aに見られるように、中央開口部105は、細長い支持部102の材料の断面がいずれの地点においても装置100の直径よりも実質的に小さいため、かなりの面積を有する。これにより、インプラント埋込み処置中に重要となる、装置100を介する可視性が向上する。
【0040】
図1aなどの実施の形態においては、リング形状は、細長い支持部102が2つの自由端106および107を含むように、不連続になっている。自由端106および107により互いに相対的な移動が可能となり、これにより、装置100の円周を変化させてインプラント101に沿わせることが可能となる。細長い支持部102の全体的な形状は、D字型であっても、C字型であっても、または、円周の変化を可能にしつつインプラント101に沿わせることを可能にするのに適した形状であってもよい。不連続なリング形状を有していない場合、すなわち如何なる形状であっても閉じたリングであれば、弾性部分104を装置100の中心に向かって内側に引くかまたは圧縮することによって円周を小さくしてもよい。上述の引く動作によって縮小され得る装置100の円周は、その場合、周辺まわりの最短経路として、すなわち、端縁103のその後の部分が中心に向かって引かれることのない、すなわち、中心に向かって延在することのない円形/楕円形の経路として、解釈されるべきである。したがって、これは、実質的には、引く動作によって小さくなるであろう装置100の断面になるだろう。装置100は、開口部105と交差する支柱を有してもよく、これら支柱は、これら支柱を互いに向かって圧縮することで装置100の断面が小さくなるように配置される。
【0041】
上述のように、細長い支持部102全体は、弾性部分104を規定するよう可撓性を有してもよい。これにより、装置100の製造が簡潔になるか、または、周端縁103のまわりに十分に均一な可撓性がもたらされて、図3に図示のとおり、細長い支持部102全体をインプラント101に沿わせることが可能となり、これにより、端縁103とインプラント101との間に開口部を残さずに確実に取付けられる。代替的には、細長い支持部のうち限られた部分にだけ可撓性があってもよく、および/または、可撓性が、細長い支持部102の2つの部分をともに接合するよう配置されたばね(図示せず)などの他の手段によってもたらされてもよく、これにより、装置100の円周を変えるためにこれら2つ部分の間に可撓性をもたらすことが可能になり得る。
【0042】
自由端106、107の各々は、図1aに図示のとおり、係合面108、109を有する係合部分106、107を含み得る。係合面108、109は、細長い支持部102の圧縮された構成において自由端106、107を互いの方に向かって圧縮するためのツールを受けるよう適合される。自由端106、107のための圧縮の方向が図1bに示されており、一方端107のための方向が第1の方向119として示され、反対側の自由端106のための方向が逆の方向となっている。代替的には、上述されるように、縮小された円周(C´)の構成が緩んだ形状であれば、自由端は、自由端106および107の各々のために、係合面108、109とは反対側の面をツール200と係合させることによって強制的に離されてもよい。係合面108、109を有していることにより、自由端106、107は、細長い支持部102の所望の形状を実現するよう操作されて、心臓弁インプラント101に沿わせて適所に保持できるようにし得る。これは、装置100を操作する効率的で迅速な方法である。自由端106、107があることで、コンパクトな装置100を直接的に操作することが実現される。細長い支持部102を介する可視性は、細長い支持部102の周辺における操作によって最適化される。代替的には、または付加的には、自由端106、107は、図10に図示されるように、自由端106、107を操作するためのツールでの挿入を可能にするために、対応する係合面108、109に開口部123、124を有してもよい。すなわち、開口部123、124によって、または、さらに以下に説明される制御部材110が支持部102の中心からずれて周端縁103付近に位置決めされることによって、細長い支持部に可能な限り近づくようツールと係合させることが有利であり得る。このような位置決めにより、標的部位においてインプラント101を位置決めする能力を向上させることができる。さらに、インプラント101を介する可視性が改善される。
【0043】
係合部分106、107および係合面108、109は、細長い支持部102の周端縁103から径方向に延在し得る。図1aおよび図1bにおいては、係合面108、109は端縁103から径方向内側に延在する。これにより、コンパクトな装置100が設けられる。代替的には、係合面108、109は、端縁103から径方向外側に延在してもよい。係合面108、109の空間的範囲が、ツール200での十分な把持を可能にするために最適化され得る一方で、可視性が、主として細長い支持部102の周辺に制限されることによって維持される。
【0044】
装置100は、図11a〜図11cに見られるように、位置決めツール200との係合のための制御部材110を含み得る。制御部材110は、図4における装置100の斜視図に図示されるように、球面117を含んでもよい。球面117を有することにより、装置100は、位置決めツール200の噛合い用の球形凹部201において回動し得る。このような回動により、装置100が位置決めツール200に対していずれの所望の方向にも回転することが可能となり(たとえば、図11aを参照)、これにより、たとえば、身体内の肋骨などを通って低侵襲で身体に挿入させることが可能となり、その後、標的部位におけるインプラント埋込み用に位置決めする際に再度方向付けることが可能となる。
【0045】
図11a〜図11cにおける位置決めツール200は組合せ計器として用いられてもよい。ツール200の遠位端202は、係合面108および109との接触によって装置100の自由端106、107を操作するために配置される。また、球形の凹部201は、装置100の回動可能な位置決めのための球面117と噛合う。球形の凹部201は、図11aおよび図11bに見られる遠位端202の拡大図である図11cにおいて図示される。図11cにおいては、インプラント101を保持する装置100は、球面117を有する制御部材110を介してツール200で回動可能に保持される。これにより、インプラント101上への装置100の位置決めと、標的部位へのインプラント101の送達が同じツール200で実現される。自由端106、107のための球形凹部201および係合部材を有する他のタイプのツールを、上述に従った装置と共に用いることができる。図13aおよび図13b、図14a〜図14dに図示され以下にさらに記載される支持ツール400はまた、多種多様なインプラントサイズに適合するよう支持部の多様な移動を可能にするために、2つの隔てられた細長い支持部材がその遠位端に取付けられていることによって支持部自体を備える。
【0046】
制御部材110は、中央開口部105から中心を外れて、自由端106、107のうちの一方に固定されてもよい。図1aにおいては、制御部材110は自由端107に固定され、垂直方向における開口部の中心のわずかに上方に位置決めされる。これにより、開口部105を介する可視性が高められ得る。同時に、制御部材110はわずかに中心に向かって位置めされてもよく、代替的には装置100の中心に位置決めされてもよく、これにより、制御部材110を通って延在する軸、すなわち細長い支持部102の湾曲にわたされた面に対して実質的に垂直な軸、を中心とした装置100の回転は、横方向にずれることなく、実質的にその中心軸を中心とした装置100の回転に対応するようになる。これにより、図6に図示されるように、螺旋形のインプラント101を有する場合のように、インプラント101が適所に配置されるべき場合には、標的部位における位置決めが容易になり得る。さらに、WO2009/080801などに開示されるように、装置100は螺旋形の小型ツールを保持するのに用いられてもよい。
【0047】
図1aにおいては、係合部分106、107は、周端縁103から径方向内側に延在し、制御部分110は係合部分107の端部111に固定される。係合部分106、107のうちの一方の端部に制御部材110を固定させることにより、接触面108、109を係合することによって装置100をインプラント101に取付けるモード/装置100をインプラント101から取外すモードを切替えることが容易になり、かつ、装置100を標的部位に、または標的部位から移動させるために制御部材110を係合することが容易になる。この切替えは、組合せツール200を用いることによって1回の流動的な動作で行うことができ、これにより処置の回数が少なくなり、制御度合いが概して高められる。上述のとおり、装置100はこのような態様でコンパクトにすることができ、たとえば、開口部105にわたって延在する制御部材110のための付加的な固定構造が不要になり、可視性が改善される。
【0048】
細長い支持部102は、弁形成インプラント101を受けるよう寸法決めされた周端縁103に沿って径方向外側の開口部または溝112を備えてもよい。これは、図1aおよび図1bにおける装置100の側面図に対応する図5aおよび図5bにおいて図示されており、図5aおよび図5bにおいては、インプラント101は、それぞれ保持された状態および保持されていない状態である。溝112により、装置100によるインプラント101の保持が効率的ものとなる。溝112は、インプラント101と同様の湾曲を有してもよく、これにより、インプラント101と装置との間の接触面が増やされることにより、インプラント101の保持力をさらに高めることが可能となる。縮小された円周(C´)の構成から拡張された円周(C)の構成にまで細長い支持部102を拡張させると、溝112は、図5bにおいて見られるようにインプラント101に沿うこととなる。
【0049】
溝112の窪んだ面は、他のタイプのインプラントに適合するよう他の形状、たとえば三角形、長方形または楕円形を有していてもよい。溝112は側端縁120、121を有しており、その間において、溝112の窪んだ面が延在している。側端縁120、121は、細長い支持部102の周りにおいて溝に沿って延在し、径方向に互いに相対的にずらされていてもよい。すなわち、図5aにおいては、制御部材110が延在する側とは反対側の細長い支持部102の側、すなわち遠位側、上に延在する第1の側端縁120は、第2の側端縁121よりも短い径方向の範囲を有する。これにより、インプラント101を溝112内に位置決めすることがより容易になり得る。というのも、遠位側にある第1の側端縁120の位置にある細長い支持部102の円周が、第2の側端縁121よりも短いからである。したがって、遠位側から挿入される際に、細長い支持部102の持つより低圧縮の弾性部材104で湾曲をインプラント101に沿わせることが必要になる。
【0050】
図4は、装置100の斜視図を示す。溝112は細長い部材102のまわりに延在しており、装置100についての、図1aおよび図1bと同様の上面図である図9においてさらに詳細に示される。また、細長い支持部102のさまざまな曲率半径(R1、R2)が図9に示される。上述のように、細長い支持部の形状は異なっていてもよく、曲率半径は細長い支持部102に沿って異なっていてもよい。
【0051】
細長い支持部102の周端縁103の湾曲は、当該湾曲が、対応する三次元の経路において延在する弁形成インプラント101に沿うように、概して三次元の経路118に追従し得る。これにより、異なる形状を有するさまざまなインプラント101を装置100によって適所に保持することができる。図7において一例が示されており、ここでは、周端縁103は、図6に示され破線で印付けされるインプラント101の経路118に追従する。この場合、細長い支持部102の不連続なリング形状は、自由端106、107が軸方向にオフセット(113)されるように、概して三次元の経路118に追従する。オフセット113は、細長い支持部102に径方向にわたされた面に対して実質的に垂直な軸方向にある。オフセット118は、周端縁103の湾曲が螺旋状のインプラント101に追従するように設けられる。オフセット113は、螺旋の隣接する巻き同士の間の距離が異なっている場合、螺旋状のインプラント101に適合するよう調整され得る。代替的には、自由端106、107は、オフセット113なしで整列させてもよいが、細長い部材102の他の部分における周端縁103は、軸方向に、たとえば自由端106と107との間において細長い支持部102の中間区域において、湾曲または経路118に追従してもよい。たとえば、インプラント101は、図2に示されるように、インプラント101の他の部分から軸方向に高くなった後側部125を有してもよく、細長い部材102は、インプラント101の湾曲全体に沿うように、対応する部分において高くなっていてもよい。他のインプラント101は鞍状、すなわち、凸状もしくは凹状であってもよく、または、さまざまな構成において非対称であってもよく、これにより、細長い部材102は、対応する鞍形状または非対称性を有する。
【0052】
経路118に空間的範囲があることで、インプラント101の幾何学的形状を変えることもできる。たとえば、螺旋形のインプラント101が装置100によって適所に保持されたときに、図6において、螺旋形のインプラント101のリングを強制的にばらばらにするようオフセット113が増やされてもよい。これにより、組織に対する摩擦が少なくなり得るので、弁輪を介して標的部位にインプラント100を挿入することが容易になり得る。装置100がインプラント101から取外されると、螺旋形のリングはそれらの緩んだ状態を呈してもよい。弾力性を有する細長い支持部102全体によって規定され得る弾性部分104が軸方向に弾力性を有していることにより、インプラント101の幾何学的形状は、装置100をまず軸方向に圧縮することによって変えられ、インプラント101に適合され、次いで、装置100を緩ませ得る。これにより、この場合には可撓性のあるインプラント101が装置101の拡張に追従する。溝112により、インプラント101が適所にロックされ、これにより、細長い支持部102がその緩んだ構成を呈したときに、インプラント101のリングを強制的に細長い支持部102の経路118に追従させる。
【0053】
細長い支持部102は、図4および図5aに図示されるように、周端縁103の湾曲にわたされた面に対して実質的に垂直な方向に軸方向に延在する保持ピン114を備えていてもよい。保持ピン114は、装置100によって適所に保持された時に弁形成インプラント101の径方向への移動を止めるために弁形成インプラント101に径方向の力を加えるよう配置される。これにより、径方向の移動がピン114によって阻止されると、インプラント101が装置100から滑り落ちることが防止される。特に、装置100およびインプラント101を回転させると、組織を囲むことによってインプラント101に加えられる力が、このときにはピン14によって阻止されている径方向へのずれをもたらす可能性がある。したがって、より安全な処置およびインプラントの改善された把持が達成される。図7に見られるように、保持ピン114は細長い支持部の遠位側から、すなわち制御部材110に相対的に延在し、インプラント101と、すなわちインプラント101の螺旋形のリングのうちの1つと、当接するように配置される。保持ピン114の位置は図4の斜視図においても見られるが、これは、インプラント101の径方向への移動が阻止されている場合には、細長い支持部102のいずれの部分に位置決めされてもよい。
【0054】
細長い支持部102は、装置100によって適所に保持された場合に、弁形成インプラント101の一部を覆うために径方向に延在する周端縁103に沿った摩擦低減シース115を含み得る。シースによって適所に保持されたときにインプラント101の一部を覆うことにより、摩擦はインプラント101と周囲の組織との間で低減される。これにより、たとえば、弁の小葉状部分などを通って標的部位において適所へとインプラント101を回転させる際に、組織に引っかかることなく、インプラント101をより容易に位置決めすることが可能となる。図8aは、周端縁103における細長い支持部102の一部を詳細に示しており、インプラントが周端縁103において適所に保持されている。図8bは、径方向に延在し、インプラント101の一部を覆う摩擦低減シース115を示す。シース115は、細長い支持部102の端縁103全体に沿って延在してもよい。シース115は、このとき、組織がインプラント101の部分に接触するのを防ぐだろう。シース115によってインプラント101が覆われる量は、シース115の長さを長くするかまたは短くすることによって変えられてもよい。低摩擦が特に必要とされるいくつかの応用例においては、より多く覆うことが好適であり得る。シース115は、インプラント101の断面の湾曲に沿ってもよいか、または、装置100をインプラント101に挿入することを十分に容易にしつつ、組織から保護するような他の形状を有していてもよい。シースは、低摩擦をもたらすポリマーまたは金属合金などの如何なる材料で作られてもよい。
【0055】
図8cは、インプラント101全体を覆う摩擦低減シース115の代替的な構成を示す。シース115は、装置100と係合する前にインプラント101に適用されてもよく、次いで、インプラント101が標的部位に位置決めされたときに、装置100によって係合され、適所に保持されてもよい。シース115は、容易な取外しを可能にする開口部または不連続部122を有してもよい。図8cにおいては、たとえばシースと細長い部材102との間の溶接部分または接着部分によってインプラント101を端縁103と係合させた後、シース115を装置100に固定させてもよい。インプラント101が標的部位において挿入され、装置100が取外されると、シース115はインプラント101から分離され、装置100とともに引込められることとなる。開口部または不連続部122はこのような分離を可能にし得る。
【0056】
装置100は、細長い部材102の第1の側に位置決めされている指標マーク116を含み得る。この指標マーク116により、インプラント101が標的部位において適所に保持されている場合には見えない可能性のある、細長い部材102の第2の反対側におけるインプラント101の幾何学的特徴に印付けがなされる。これにより、たとえば、図6に示される螺旋形のインプラント101の端部が弁輪の開口部に位置決めされるべきであるが細長い支持部102によって不明瞭にされている場合に、操作をより容易にすることができる。このような指標116は、図1aに示されており、インプラント埋込み処置を容易にするために装置のいかなる場所に位置決めされてもよい。指標マークはまた、神経交連などの解剖学的特徴に印付けをするために配置されてもよい。指標マーク116は、X線で可視となる材料で作られてもよい。装置100は、X線技術もしくは他の撮像技術で可視となる他の指標を有してもよく、または、装置100は、部分的または全体的にこのような材料から作られてもよい。装置100は、空気などの気体を含む流路または空隙を指標として有し得る。このような指標は、位置の決定および身体における装置100の方向付けを可能にする。
【0057】
図12は、弾性部分104を含む細長い支持部102を備えた医療用装置100で、弁輪における標的部位において弁形成インプラント101を位置決めする方法300のフロー図を示す。方法300は、弁形成インプラント101を装置100において適所に弾力的に保持するステップ301と、標的部位にインプラント101を位置決めするステップ303と、装置100から弁形成インプラント101を解放するために弾性部分104に負荷を加えるステップ305とを含む。
【0058】
弁形成インプラント101を弾力的に保持するステップは、細長い支持部102を第1の構成から第2の構成へと変形させるために弾性部分104に負荷を加えるステップ302を含み、これにより、第2の構成と第1の構成との間において細長い支持部102を径方向に移動させることにより、装置100において弁形成インプラント101が適所に弾力的に保持されることとなる。
【0059】
装置100を位置決めするステップは、身体への低侵襲での挿入のためにツール200の球形凹部201において球面117を有する装置を回動させるステップ304を含み得る。回動させることにより、装置を、ツール200によって適所に保持させたままで、標的部位に達するようさまざまな解剖学的組織に適合させることが可能となる。回動させるステップ304は、細長い支持部にわたされた面が、低侵襲での挿入のためにツール200の長手方向軸に対して実質的に平行になるように装置100を位置決めするステップを含み得る。これは、図11aに示され、この場合、装置100はツール200の長手方向に対して平行である。これにより、たとえば、身体の肋骨を通じて挿入することが可能となる。
【0060】
図13aは、互いに別個であり互いに相対的に径方向に移動可能な第1および第2の細長い支持部材401、402を含む心臓弁インプラント101を保持するための支持ツール400を示す。図13aは上面図であり、図13bは図13aの図に対応する側面図である。支持部材401、402の各々は、心臓弁インプラント101が適合し得る湾曲を有する。マニピュレータ部分413、414は、第1および第2の支持部材のうち少なくとも1つを互いに相対的に移動させるために第1および第2の支持部材401、402に接続され、これにより、湾曲を心臓弁インプラント101に少なくとも部分的に沿わせて、心臓弁インプラントを適所に保持する。支持部材401、402が別個であり、互いに逆の径方向に移動可能であるので、支持ツール400を用いて、多種多様なさまざまなサイズのインプラントを保持することができる。支持部材401、402がどれくらい幅広にまたは幅狭に位置決め可能であるかについて、すなわち、図14a〜図14dに示されるような1対のプライヤまたは他のタイプのマニピュレータなどのマニピュレータ部分413、414が、実現可能なインプラント101のサイズの範囲全体にわたって移動可能になるように適合され得るかについては、支持部材401、402に制限はない。同時に、支持部材401、402の湾曲は、適所に保持されるようインプラント101に沿わせることによって確実な保持をもたらすだろう。インプラントが再位置決めのために標的部位に位置決めされた後に取外される必要がある場合には、たとえば、インプラント101の位置を変えることなく、支持部401、402を確実に保持した状態でインプラント101を回転させて操作することができる場合には、ツール400はさらに有利である。
【0061】
支持ツール400は、付勢部材403を含んでもよい。たとえば図14cを参照すると、この付勢部材403は、マニピュレータ部分413、414が上述の支持部材401および402を移動させる際に、第1および第2の細長い支持部材を強制的に外側径方向または内側径方向に推し進めるためのものである。これにより、自己保持機能が実現される。たとえば、付勢部材は弾性部分403であってもよく、インプラント101に支持ツール400を位置決めするために、支持部材401、402が、マニピュレータ部分413および414を作動させることによって互いの方に向かって推し進められる。弾性部分403によって加えられる反作用力は、その後、マニピュレータ部分413、414の移動によって加えられた力が緩められると、支持部材401、402をインプラント101に対抗して径方向外側に拡張させることとなる。インプラント101はまた、インプラント101の中心に向かって径方向内側に作用する付勢部材403によって加えられる力でもって外部から把持されてもよい。
【0062】
支持ツール400は、第1および第2の支持部材401、402の位置を互いに相対的にロックするためのロック部分404を含み得る。これは、付勢部材403と組合わせて用いられてもよい。
【0063】
支持ツール400は、マニピュレータ部分413、414と、第1および第2の細長い支持部材401、402との間において回動運動を可能にするために少なくとも1つの回動部材405、406を含んでもよい。これにより、さまざまな処置および解剖学的構造に適合させるために、インプラントがマニピュレータツール413、414に対してさまざまな角度で保持され得る。図14dに例示されるように、支持部材401、402を同じ面において同時に回動させることを可能にする単一の回動ジョイント406が存在してもよい。代替的には、または、付加的には、支持ツール400は、たとえば図13aおよび図13bならびに図14a〜図14cに例示されるように、第1および第2の支持部材401、402とマニピュレータ部分413、414とのそれぞれの間において、第1および第2の回動部材405および406を含んでもよい。このため、左側の支持部401が第2の支持402とは異なる角度を有する可能性がある場合に、広範囲にわたるカスタマイズが実現可能となる。ロック機構は、回動運動をある角度で固定させるために回動部材405、406に設けられてもよい。
【0064】
第1および第2の細長い支持部材401、402のうち少なくとも1つは、支持部材401、402の湾曲を可変にすることを可能にするために弾力性があってもよく、これにより、広範なさまざまなサイズの心臓弁インプラントに適合させ得る。支持部材401、402は、径方向に、すなわちインプラント101の面において、または軸方向に、すなわちインプラント101にわたされる面に対して垂直に、またはこれらを組合せた方向に、弾力性があってもよい。これにより、支持部材401、402の周端縁412が弾力性または可撓性があるためにその湾曲全体に沿ってインプラントに沿うこととなるので、如何なるインプラントに対しても密で確実な適合がもたらされることとなる。支持部材401、402は、このような弾力性を可能にするためにたとえばゴム材料を含んでもよい。
【0065】
第1および第2の細長い支持部材401、402は、好ましくは、実質的にインプラント101の両側に接触させるために互いに相対的に径方向に移動可能である。しかしながら、部材401、402は、さまざまな形状のインプラントのための保持の強さを最適化するために、如何なる相対的角度でインプラント101を位置決めするよう配置されてもよい。
【0066】
マニピュレータ部分413、414は、第1および第2の細長い支持部材401、402に接続されたプライヤもしくはピンセットを含んでもよく、または、図14a〜図14dに例示されるように、支持部401、402の相対位置を径方向に操作するために配置された他の如何なる装置を含んでもよい。図13aおよび図13bおよび図14a〜図14dの図面は縮尺通りではなく、すなわち、表示を明確にするために、細長い支持部材401、402を示す装置400の遠位部分の大きさが誇張されている。マニピュレータ413、414は、使用を容易にしかつ安全に動作させるために、マニピュレータを動作させるためのハンドルまたは他の手段415が適切に配置されていてもよい。
【0067】
図14dが示す支持ホルダ400は、支持部材401と402との間に径方向に配置されたコンパクトな構成の付勢部材403と、 支持部401と402との間に実質的に中心に配置された回動部材406とが組合された操作部分413を備える。支持部401、402は、インプラント101の内部に沿うように、マニピュレータ部分413および/または付勢部材403を拡張させることによって矢印の方向に径方向外側に動かされてもよく、そして、ロック部分404によって適所にロックされてもよく、および/または、インプラントを適所に配置するよう外方向に作用する付勢力を有してもよい。この外方向に作用する付勢力は、たとえばマニピュレータのハンドル415を動作させることによって緩められ得る。支持部401、402とマニピュレータ部分414との間の回動角は、回動部材406によって設定されてもよい。
【0068】
第1および第2の細長い支持部材401、402の各々は、神経交連の曲がり部分またはインプラント101の後方の曲がり部分などの、インプラント101の円扇形部分に一致する湾曲を有していてもよい。したがって、特定のインプラント101に適した湾曲を有するよう支持部401、402の各々を適合させることができる。たとえば、第1の支持部401の湾曲は神経交連の曲がり部分に対応してもよく、第2の支持402は後方側に対応してもよい。これにより、合致性を高めて、確実に保持できるようにする。支持部材401、402の各々の長さは、インプラント101への確実な保持を最適化するために互いとは別々に変化させてもよい。支持部材401、402の長さは、インプラント101の内周のうちかなりの部分を覆うように設定されてもよい。たとえば、確実に保持するために、内周の1/2、1/3または1/4が、細長い支持部材401、402に接している。これにより、支持部401、402のインプラント湾曲への合致性と組合わされると、通常のプライヤまたはピンセットと比較して、把持力が大幅に高められる。
【0069】
マニピュレータ部分413、414は、図13aにおいて見られるように、それらの長手方向において、細長い支持部材401、402の端部407、408にそれぞれ取付けられてもよい。代替的には、マニピュレータ部分413、414は、図14a〜図14dにおいて見られるように、支持部材401、402のうちほぼ中心点409、410にそれぞれ取付けられてもよい。さまざまな構成が別々の処置に適し得る。
【0070】
第1および第2の細長い支持部材のうち少なくとも1つは、心臓弁インプラント101を受けるよう寸法決めされた、細長い支持部材401、402の周端縁412に沿った径方向外側の開口部または溝112、411を備え得る。これは図13bに図示される。これにより、インプラント101への確実な保持が改善される。
【0071】
図7に図示のとおり、装置100のために、支持ツール400は、第1および第2の細長い支持部材401、402の端部407および408が軸方向にオフセットされる(113)ように、第1および第2の細長い支持部材401、402のうち少なくとも1つが概して三次元の経路118に追従するよう構成され得る。上述のとおり、これにより、たとえば螺旋状のインプラントへの確実な保持のさらなる改善が可能となる。
【0072】
特定の実施の形態に関連付けて本発明を上述のとおり説明してきた。しかしながら、上述以外の他の実施の形態は、本発明の範囲内で等しく実現可能である。本発明のさまざまな特徴およびステップは、記載された以外の他の組合せで組合わされてもよい。本発明の範囲は単に添付の特許請求の範囲によって限定されるにすぎない。
【0073】
より一般的には、当業者であれば、この明細書中に記載されるパラメータ、寸法、材料および構成が例示となるよう意図されたものであり、実際のパラメータ、寸法、材料および/または構成が、本発明の教示が用いられる特定の出願に依存するであろうことを容易に認識するだろう。
図1a-1b】
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7
図8a
図8b
図8c
図9
図10
図11a
図11b-11c】
図12
図13a
図13b
図14a
図14b
図14c
図14d
図15