特許第6283614号(P6283614)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6283614電気化学セルのためのポリウレタンに由来する電極バインダー組成物およびその電極
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283614
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】電気化学セルのためのポリウレタンに由来する電極バインダー組成物およびその電極
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20180208BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20180208BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20180208BHJP
   H01M 2/16 20060101ALI20180208BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20180208BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20180208BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20180208BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20180208BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20180208BHJP
   H01G 11/30 20130101ALI20180208BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20180208BHJP
【FI】
   H01M4/62 Z
   H01M4/13
   H01M10/0565
   H01M2/16 P
   H01M10/052
   H01M4/58
   H01M4/36 A
   H01M4/587
   H01M4/38 Z
   H01G11/30
   H01G11/52
【請求項の数】17
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2014-538890(P2014-538890)
(86)(22)【出願日】2012年10月24日
(65)【公表番号】特表2015-501519(P2015-501519A)
(43)【公表日】2015年1月15日
(86)【国際出願番号】US2012061529
(87)【国際公開番号】WO2013062997
(87)【国際公開日】20130502
【審査請求日】2015年10月21日
(31)【優先権主張番号】61/552,552
(32)【優先日】2011年10月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506347528
【氏名又は名称】ルブリゾル アドバンスド マテリアルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ゴア, テシャム
(72)【発明者】
【氏名】リュ, キウェイ
(72)【発明者】
【氏名】カオ, フェイナ
【審査官】 細井 龍史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−003078(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/046756(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0047693(US,A1)
【文献】 特開2010−277959(JP,A)
【文献】 特表平10−503321(JP,A)
【文献】 特開2001−185216(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0061449(US,A1)
【文献】 特開2004−055509(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0234865(US,A1)
【文献】 特開2012−204009(JP,A)
【文献】 米国特許第05558959(US,A)
【文献】 特開2007−265890(JP,A)
【文献】 米国特許第05346788(US,A)
【文献】 特開2002−216845(JP,A)
【文献】 特開平11−097026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/14− 2/18
H01M 4/00− 4/62
H01M 10/05−10/0587
H01G 11/00−11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電極を含み、前記電極が、(A)ポリ(ジアルキレングリコールエステル)熱可塑性ポリウレタを含む電極バインダー組成物と、(B)電極活物質とを含む、電気化学セル。
【請求項2】
前記電極が、さらに導電剤を含み、そして前記導電剤が、カーボンブラック、ニッケル粉末、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項3】
前記ポリ(ジアルキレングリコールエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物が、(i)少なくとも1つのポリ(ジアルキレングリコールエステル)ポリオール中間体と、(ii)少なくとも1つのジイソシアネートおよび(iii)少なくとも1つの鎖延長剤とを反応させることによって作られ;
(i)の前記ポリ(ジアルキレングリコールエステル)ポリオール中間体が、少なくとも1つのアルキレングリコールおよび少なくとも1つのジカルボン酸から誘導され、請求項1〜2のいずれか1項に記載の電気化学セル。
【請求項4】
(ii)の前記ジイソシアネートが、4,4’−メチレンビス−(フェニルイソシアネート);ヘキサメチレンジイソシアネート;3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート;m−キシリレンジイソシアネート;フェニレン−1,4−ジイソシアネート;ナフタレン−1,5−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアネート;トルエンジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート;1,4−シクロヘキシルジイソシアネート;デカン−1,10−ジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート;またはこれらの組み合わせを含み;
(iii)の前記鎖延長剤が、ヒドロキノンビス(β−ヒドロキシエチル)エーテル;エチレングリコール;ジエチレングリコール;プロピレングリコール;ジプロピレングリコール;1,4−ブタンジオール;1,6−ヘキサンジオール;1,3−ブタンジオール;1,5−ペンタンジオール;ネオペンチルグリコール;またはこれらの組み合わせを含み、
前記ジカルボン酸が、4〜15個の炭素原子を含み、前記ジアルキレングリコールが、2〜8個の脂肪族炭素原子を含む、請求項3に記載の電気化学セル。
【請求項5】
(i)の前記ポリ(ジアルキレングリコールエステル)ポリオール中間体が、アジピン酸およびジエチレングリコールから誘導される、請求項3または4に記載の電気化学セル。
【請求項6】
(i)の前記ポリ(ジアルキレングリコールエステル)ポリオール中間体が、ポリ(ジエチレングリコールアジペート)を含み;(ii)の前記ジイソシアネートが、4,4’−メチレンビス−(フェニルイソシアネート)を含み;(iii)の前記鎖延長剤が、ブタンジオール、ベンゼングリコール、またはこれらの組み合わせを含む、請求項3〜のいずれか1項に記載の電気化学セル。
【請求項7】
前記電極バインダー組成物が、可塑剤、潤滑剤、酸化防止剤、熱安定化剤、加水分解安定化剤、酸捕捉剤、鉱物および/もしくは不活性フィラー、ナノフィラー、またはこれらの任意の組み合わせを含む少なくとも1つのさらなる添加剤をさらに含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の電気化学セル。
【請求項8】
(B)の前記電極活物質が、グラファイト系材料;Al、Si、Sn、Ag、Bi、Mg、Zn、In、Ge、PbおよびTiのうちの少なくとも1つを含有する第1の化合物;前記第1の化合物と前記グラファイト系材料の複合材料;リチウム窒化物;およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるアノード活物質である、請求項1〜のいずれか1項に記載の電気化学セル。
【請求項9】
前記電極活物質の量は、電極の合計重量に対し、80〜99量%の範囲である、請求項7または8記載の電気化学セル。
【請求項10】
前記電極がート型電極である、請求項7〜9のいずれか1項に記載の電気化学セル。
【請求項11】
前記少なくとも1つの電極が、正極および負極を含み、前記電気化学セルが、
(I)前記正極と前記負極との間に配置され、(A)ポリ(ジアルキレングリコールエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物および(B)電気化学的に活性な電解種を含むセパレーター膜;
(II)前記正極と前記負極との間に配置され、(A)ポリ(ジアルキレングリコールエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物、(B)アルカリ金属塩;および(C)非プロトン性有機溶媒を含む、ポリマーゲル電解質;または
(III)(I)および(II)の両方をさらに含み、
(I)および(II)において、前記ポリ(ジアルキレングリコールエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物が、(i)少なくとも1つのポリ(ジアルキレングリコールエステル)ポリオール中間体と、(ii)少なくとも1つのジイソシアネートおよび(iii)少なくとも1つの鎖延長剤とを反応させることによって作られ;(i)の前記ポリ(ジアルキレングリコールエステル)ポリオール中間体が、少なくとも1つのアルキレングリコールおよび少なくとも1つのジカルボン酸から誘導される中間体を含む、請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項12】
(i)の前記ポリ(ジアルキレングリコールエステル)ポリオール中間体が、アジピン酸およびジエチレングリコールから誘導される、請求項11に記載の電気化学セル。
【請求項13】
前記電気化学的に活性な電解種が液体電解質である、請求項11に記載の電気化学セル。
【請求項14】
前記電気化学的に活性な電解種が金属塩である、請求項13に記載の電気化学セル。
【請求項15】
前記金属塩がアルカリ金属塩である、請求項14に記載の電気化学セル。
【請求項16】
前記アルカリ金属塩が式Mを有し、ここで、Mがアルカリ金属カチオン、例えば、Li、Na、K、およびそれらの組み合わせであり;そしてXがアニオン、例えば、Cl、Br、I、ClO、BF、PF、AsF、SbF、CHCO、CFSO、(CF、(CFSO、(CFSO、およびそれらの組み合わせである、請求項15に記載の電気化学セル。
【請求項17】
前記金属塩がリチウム塩である、請求項14に記載の電気化学セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極バインダー組成物、本記載のバインダー組成物を用いて作られる電極、および本記載の電極を用いて作られる電気化学セルに関し、これらすべての材料は、ポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物の組成物を用いて作られる。電極は、本記載の熱可塑性ポリウレタンと電極活物質を用いて作られる。電気化学セルは、本記載の電極を用い、さらに、(i)本記載のポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物を用いて作られる膜および/またはセパレーター;(ii)本記載のポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物に基づく電解質系;または(iii)これらの組み合わせを用いて作ることができる。
【背景技術】
【0002】
携帯用電子機器(例えば、PDA、携帯電話およびラップトップ型コンピュータ)の供給が増えてくるにつれて、これらの機器の使用範囲が広がってきた。したがって、電源として、高性能であり、より小型で薄く、軽量な電池の必要性が増加しており、電池に関する多くの研究が行われてきた。リチウム電池は、軽量であり、エネルギー密度が高いため、このような携帯用機器の主電源として使用されてきた。電気化学セルの全体的な性能を高めることが必要であり、そのため、電気化学セルを構成する成分を改善する必要性が存在する。
【0003】
リチウム電池のカソード活物質としては、Liを含有する遷移金属酸化物、例えば、LiCoO、LiNiO、LiMn、LiFePOおよびカルコゲン化合物、例えば、MoSを挙げることができる。これらの化合物は、層状の結晶性構造を有しているため、Liイオンを可逆的に挿入または脱離させることができる。したがって、これらの化合物は、リチウム電池のカソード活物質として広く利用されてきた。
【0004】
金属リチウムをアノード活物質として使用することができる。しかし、リチウムのリチウムイオンは挿入および脱離される。次いで、電池の充電/放電中にリチウムが繰り返し溶解し、沈殿するため、針状のリチウム樹枝状結晶がリチウム表面に成長する。針状の樹枝状結晶は、充電/放電効率がより低く、カソードと接触することによって内部に短絡を生じることがある。それに加え、リチウム金属は、酸素および水分との反応性があるため、これらの用途において非常に不安定な場合がある。
【0005】
これらの問題を解決するために、アノード材料として、Liイオンを可逆的に挿入および脱離させることができるリチウムアロイ、金属粉末、グラファイト材料または炭素系材料、金属酸化物または金属硫化物の使用を考慮する。しかし、リチウムアロイから作られるシート型アノードを電池に使用する場合、このシート型アロイは、充電/放電中に薄くなっていき、それによって集電特性が下がる。したがって、充電/放電特徴が悪化する。
【0006】
シート型電極が、金属粉末、炭素系材料、金属酸化物、または金属硫化物粉末から作られる場合、これらの粉末形態の材料だけでは電極を作製することができないため、バインダーをさらに使用する。例えば、炭素系材料を用いてアノードを製造する場合、弾性ゴム系ポリマー材料をバインダーとして加えるのが一般的である。
【0007】
金属酸化物または金属硫化物を用いてアノードを製造する場合、バインダーに加え、充電/放電特徴を高めるために導電剤を加える。一般的に、炭素系材料を用いてアノードを製造する場合、炭素系材料を微粉化して粉末にし、バインダーを加える。しかし、従来のゴム系ポリマー材料をバインダーとして利用する場合、バインダーの量によっては、グラファイト粒子がコーティングされる場合があり、それによって、リチウムイオンが挿入および脱離しないように覆ってしまい、高効率の放電特徴を悪化させる。
【0008】
従来のバインダーを単独で使用する場合、炭素系材料の種類および形態にかかわらず、金属コア材料と従来のバインダーとの結合力が弱いため、大量のバインダーを加えるべきである。しかし、結合力を高めるために多量のバインダーを加えると、炭素系材料の表面がバインダーでコーティングされる。したがって、高効率の放電特徴が悪化する。他方で、放電特徴を維持するために少量のバインダーを使用すると、電極プレート用の材料がコア材料から分離するため、シート型電極を簡単に製造することができない。さらに、電極プレート製造時に欠陥比率が大きくなる。
【0009】
したがって、得られた電極が、少なくとも従来の電極と同様に機能し、本明細書に記載する1つ以上の問題に対処するように電極に使用することができるバインダーが必要である。言い換えると、現行の代替物でみられる問題に対処する、改良された電極バインダー、このようなバインダーから作られる電極、および1つ以上のこのような電極を用いる電気化学セルが必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物から作られ、場合により、導電剤、有機溶媒、またはこれらの組み合わせをさらに含む電極バインダー組成物に関する。本発明は、さらに、電極バインダー組成物を調製するための、本記載のポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物の使用、およびこれらから作られる、得られる電極に関する。
【0011】
本発明は、さらに、(A)ポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物を含む電極バインダー組成物と、(B)電極活物質とを含む、電気化学セル用電極も提供し、この電極は、場合により、導電剤、有機溶媒、またはこれらの組み合わせをさらに含む。電極は、電気化学(例えば、リチウム電池)のためのシート型電極であってもよい。
【0012】
本発明は、さらに、少なくとも1つの電極を含み、この電極が、(A)ポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物を含む電極バインダー組成物と、(B)電極活物質とを含み、この電極が、場合により、導電剤、有機溶媒、またはこれらの組み合わせをさらに含む、電気化学セルに関する。
【0013】
本発明は、さらに、(i)本記載のポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物を用いて作られるセルの膜および/またはセパレーター;(ii)本記載のポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物を用いて作られるポリマー支持構造に分散した電解質活性種を含むセルの電解質系;または(iii)これらの組み合わせのこのような電気化学セルを提供する。
【0014】
本発明は、(A)ポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物を用いる、電極バインダー組成物、これらから作られる電極、およびこれらから作られる電気化学セルを提供する。電極は、さらに、(B)電極活物質を含んでいてもよい。電極は、さらに、導電剤、例えば、カーボンブラックまたはニッケル粉末を含んでいてもよい。これらの導電剤は、カソード粉末またはアノード粉末と呼ばれてもよい。電極は、さらに、任意要素の有機溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド(DMA)、アセトン、N−メチル−2−ピロリドン、およびこれらの組み合わせを含んでいてもよい。ある実施形態では、溶媒を使用しないか、または、電極調製中に溶媒を除去する。
【0015】
ポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物は、(i)少なくとも1つのポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体と、(ii)少なくとも1つのジイソシアネートおよび(iii)少なくとも1つの鎖延長剤とを反応させることによって作られ、(i)ポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体は、少なくとも1つのジアルキレングリコールおよび少なくとも1つのジカルボン酸、またはそのエステルもしくは酸無水物から誘導される中間体を含む。
【0016】
本発明は、さらに、少なくとも1つの電極を含み、この電極が、(A)ポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物と、(B)電極活物質との組成物を含む、電気化学セルを提供する。電気化学セルは、さらに、(I)前記正極と前記負極との間に配置され、(A)ポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物を含むセパレーター膜と;(II)前記正極と前記負極との間に配置されるポリマーゲル電解質とを含んでいてもよく、ポリマー電解質は、(A)ポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物と;(B)アルカリ金属塩と;(C)非プロトン性有機溶媒とを含む。
【0017】
膜は、本明細書に本記載のポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物を含んでいてもよい。正極と負極とを含み、(A)ポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物から製造されるポリマー支持構造と、(B)アルカリ金属塩と;(C)非プロトン性有機溶媒とを含む、電気化学セルで使用するための電解質系。
【0018】
これらのいずれかの実施形態では、本発明は、(i)少なくとも1つのポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体と、(ii)少なくとも1つのジイソシアネートおよび(iii)少なくとも1つの鎖延長剤とを反応させることによって作られ;(i)のポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体が、少なくとも1つのジアルキレングリコールおよび少なくとも1つのジカルボン酸、またはそのエステルもしくは酸無水物から誘導される中間体を含む、ポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタンを提供する。ある実施形態では、成分(iii)の鎖延長剤は、ヒドロキノンビス(β−ヒドロキシエチル)エーテルを含む。これらいくつかの実施形態では、成分(iii)は、エチレングリコール、ブタンジオール、および/または低級ジアミン(small diamine)を本質的に含まないか、または含まない。
【0019】
本発明は、さらに、正極と、負極と、(I)前記正極と前記負極との間に配置され、(A)本記載のポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物を含むセパレーター膜;(II)前記正極と前記負極との間に配置され、(A)本記載のポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物、(B)アルカリ金属塩;および(C)非プロトン性有機溶媒を含む、ポリマーゲル電解質;または(III)(I)および(II)の両方をさらに含む、電気化学セルを提供する。
【0020】
ある実施形態では、電気化学セルは、以下の特徴の少なくとも1つを有する:(i)充電/放電サイクル寿命が、500サイクルより大きい、750サイクルより大きい、または1000サイクルより大きい;(ii)500サイクル後の充電/放電効率が90%より大きい、または95%より大きい;(iii)操作窓が−10〜70℃;(iv)剛性金属ケーシングを本質的に含まない;および/または(v)ポーチ型電池である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
非限定的な説明によって、本発明の種々の特徴および実施形態を以下に記載する。
【0022】
本発明は、少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタンエラストマー、さらに具体的にはポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタンを含み、電気化学セル用の電極の調製に使用される組成物、そして電極自体および本記載の電極を利用する電気化学セルに関する。
【0023】
(バインダー組成物)
本発明は、少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタンエラストマー、さらに具体的には、ポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタンを含み、電気化学セル用の電極の調製に使用されるバインダー組成物、または本記載の電極を利用する電気化学セルに関する。
【0024】
バインダー組成物は、場合により、導電剤をさらに含んでいてもよい。バインダー組成物は、場合により、有機溶媒をさらに含んでいてもよい。バインダー組成物は、場合により、導電剤と有機溶媒とをさらに含んでいてもよい。
【0025】
適切な導電剤としては、炭素系伝導性フィラー、ニッケル粉末、またはこれらの組み合わせが挙げられる。炭素系伝導性フィラーの例としては、カーボンブラック、ナノカーボンファイバー、カーボンナノチューブ、グラフェン(grapheme)、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0026】
適切な有機溶媒としては、ジメチルホルムアミド(DMF);ジメチルスルホキシド(DMSO);ジメチルアセトアミド(DMA);アセトン;N−メチル−2−ピロリドン;およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0027】
本発明のバインダー組成物で有用な適切なポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物としては、本明細書に記載する任意のポリウレタンが挙げられる。ある実施形態では、ポリウレタンは、(i)少なくとも1つのポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体と、(ii)少なくとも1つのジイソシアネートおよび(iii)少なくとも1つの鎖延長剤とを反応させることによって作られる。ポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体は、少なくとも1つのジアルキレングリコールおよび少なくとも1つのジカルボン酸、またはそのエステルもしくは酸無水物から誘導される中間体であってもよい。
【0028】
本発明は、さらに、電極の調製において、ある実施形態では、リチウムイオン電池の電極の調製において、本記載の熱可塑性ポリウレタン組成物、またはこの組成物を含むバインダー組成物の使用を提供する。
【0029】
(電極)
本発明は、(A)ポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物と、(B)電極活物質との組成物を含む電気化学セル用電極を提供する。ある実施形態では、本発明は、電極バインダー組成物を含み、この組成物自体が、(A)ポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物と;(B)電極活物質との組成物を含む、電気化学セル用電極を提供する。上述の任意のバインダー組成物を使用し、本記載の電極を調製することができる。
【0030】
電極は、リチウム電池用の電極であってもよく、電極は、ポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物と、カソード活物質またはアノード活物質(両方とも、電極活物質と呼ばれることがある)を含む。電極は、導電剤、有機溶媒、または両者をさらに含んでいてもよい。
【0031】
本発明は、さらに、電極を製造する方法も提供し、この方法は、電極活物質、導電剤、ポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物および有機溶媒を混合することによって、活物質溶液を作製することと;電極プレート表面を活物質溶液でコーティングし、コーティングした表面を乾燥させることと;電極プレート(すなわち、カソードプレートまたはアノードプレート)を加圧し、減圧状態で乾燥させることとを含む。
【0032】
本発明で使用するのに適したポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物を以下に詳細に記載する。
【0033】
一般的な電池で用いられる従来の有機溶媒を、特に制限なく本発明に使用することができる。しかし、有機溶媒は、比較的強い双極子モーメントを有する化合物であってもよい。この化合物の例としては、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド(DMA)、アセトンおよびN−メチル−2−ピロリドン(本明細書で以下、NMPと呼ばれる)が挙げられる。ある実施形態では、溶媒はNMPである。熱可塑性ポリウレタン組成物と有機溶媒の比率は、1:0.1から100(重量基準)であってもよい。有機溶媒の比率が0.1未満の場合、熱可塑性ポリウレタン組成物は、完全に溶解しない場合があり、バインダーとして作用することができない。有機溶媒の比率が100を超える場合、熱可塑性ポリウレタン組成物は十分に溶解するが、活物質溶液の濃度が低すぎる場合があり、コーティングプロセスに問題を生じることがある。
【0034】
ある実施形態では、本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物を、電極のトップコーティング層として使用してもよい。このような実施形態では、電極は、従来の電極、または電極で使用するのに適した電流コレクタであってもよく、次いで、これを本記載の熱可塑性ポリウレタン組成物でコーティングする。
【0035】
アノード表面またはカソード表面が熱可塑性ポリウレタン組成物でコーティングされる場合、コーティング速度が重要な場合がある。ある実施形態では、コーティング速度は、10〜30m/分の範囲であってもよい。コーティング速度が10m/分未満の場合、時には、電極を製造するのに多くの時間がかかることがある。コーティング速度が30m/分を超える場合、高温短時間で乾燥を行わなければならない場合がある。したがって、電池が、このような高速でコーティングされる電極を含む場合、充電/放電効率および寿命効率が下がることがある。
【0036】
ある実施形態では、活物質溶液でカソード表面またはアノード表面をコーティングした後に、さらに加圧プロセスを行ってもよい。加圧プロセスの間、電極における活物質と電極バインダーの充填比は、時には大きくなってもよく、電気的接続が、時には向上し得る。ある実施形態では、加圧プロセスは、1〜1,000kg/cm−3の圧力で行われてもよい。圧力が1kg/cm−3未満の場合、充填比率および電気的接続は、ある場合には低下することがある。圧力が1,000kg/cm−3を超える場合、活物質および電流コレクタは、ある場合に破壊されることがある。
【0037】
ある実施形態では、コーティングプロセスの乾燥温度は、熱可塑性ポリウレタン組成物の結晶相の組成に影響を与えることもある。乾燥温度が高すぎる場合、ある場合には、大量の望ましくない結晶相が生成することがある。したがって、ある実施形態では、乾燥温度は、80〜120℃の範囲に維持される。
【0038】
当該技術分野で一般的に用いられる任意のカソード表面が、特に制限なく本発明で有用である。カソード表面は、化学的に非反応性の電気伝導剤であり、好ましくは、アルミニウム箔である。カソード表面がコーティングされるカソード活物質の例としては、リチウム複合酸化物;元素の硫黄;溶解したLi(ここで、nは1より大きいか、または1に等しい)を含有するカソライト(casolite);有機硫黄および(C(ここで、xは2.5〜20であり、yは2より大きいか、または2に等しい)のうちの少なくとも1つが挙げられる。本発明では、カソード活物質の量は、カソード組成物全体に対し、80または90重量%〜99重量%までである。この量が80重量%未満または90重量%未満である場合、活物質が不足するため、電池の性能は悪くなる。この量が99重量%を超える場合、活物質の分散性および結合力が低下する。
【0039】
当該技術分野で一般的に用いられる化学的に非反応性の電気伝導剤である任意のアノード表面を特に制限なく本発明に使用することができる。アノード表面の例としては、ステンレス鋼、ニッケル、Cu、およびチタンが挙げられる。ここで、ステンレス鋼またはCuの表面を、C、Ni、TiまたはAgでコーティングしてもよい。ある実施形態では、アノード表面は、CuまたはCuアロイで構成される。
【0040】
アノード表面をコーティングするために当該技術分野で一般的に用いられる任意のアノード活物質を特に制限なく本発明に使用することができる。アノード活物質は、グラファイト系材料、例えば、天然グラファイト、人工グラファイト、コークス、および炭素繊維;Al、Si、Sn、Ag、Bi、Mg、Zn、In、Ge、PbおよびTiのような少なくとも1つの元素を含む化合物(Liとのアロイであってもよい);Liとのアロイであってもよい少なくとも1つの元素を含む化合物、グラファイト系材料、および炭素で構成される複合材料;またはリチウム含有窒化物であってもよい。アノード活物質は、電池性能にとって重要な役割を果たす。大量のアノード活物質によって、一般的に、良好な電池性能が得られる。本発明では、アノード活物質の量は、アノード組成物全体に対し、90〜99重量%の範囲であってもよい。アノード活物質の量が90重量%未満である場合、電池性能は、アノード活物質が不足するため、悪化し得る。アノード活物質の量が99重量%を超える場合、アノード活物質の分散性および結合力が低下し得る。
【0041】
当該技術分野で一般的に用いられる任意の導電剤を特に制限なく本発明で使用することができる。導電剤の例としては、カーボンブラックおよびニッケル粉末が挙げられる。導電剤の量は、電極組成物を基準として、0〜10重量%、好ましくは、1〜8重量%の範囲であってもよい。
【0042】
本発明の電極は、シート型電極であってもよい。本明細書に記載するカソードおよびアノードは、本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物を含み、これを使用し、リチウム電池のような電気化学セルを製造することができる。
【0043】
(熱可塑性ポリウレタン組成物)
本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物は、ポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物である。ポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタンは、(i)少なくとも1つのポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体と、(ii)少なくとも1つのジイソシアネートおよび(iii)少なくとも1つの鎖延長剤とを反応させることによって作られる。
【0044】
ポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体は、少なくとも1つのジアルキレングリコールおよび少なくとも1つのジカルボン酸、またはそのエステルもしくは酸無水物から誘導される。しかし、他のポリオール中間体も存在していてもよく、本明細書に記載するポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体と組み合わせて使用してもよい。
【0045】
上述のジカルボン酸は、4〜15個の炭素原子を含んでいてもよい。ジカルボン酸の適切な例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、またはこれらの組み合わせが挙げられる。ある実施形態では、ジカルボン酸がアジピン酸である。
【0046】
上述のジアルキレングリコールは、2〜8個の炭素原子、ある実施形態では、2〜8個の脂肪族炭素原子を含んでいてもよい(芳香族炭素原子の存在も可能である)。ジアルキレングリコールの適切な例としては、オキシジメタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、3,3−オキシジプロパン−1−オール、ジブチレングリコール、またはこれらの組み合わせが挙げられる。ある実施形態では、ジアルキレングリコールは、ジエチレングリコールである。
【0047】
ある実施形態では、ポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体は、アジピン酸とジエチレングリコールから誘導され、数平均分子量は、1000〜4000、または1500〜3500、または2000〜3000である。ある実施形態では、ポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体を、ポリ(モノ−アルキレンエステル)を含む第2のポリオール(例えば、ブタンジオールとアジピン酸から誘導されたポリエステルポリオール)と組み合わせて使用し、得られたポリオールは、数平均分子量が100〜4000、または1500〜3500、または2000または2100〜3000であってもよい。
【0048】
上述のように、ポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタンは、(i)少なくとも1つのポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体と、(ii)少なくとも1つのジイソシアネートおよび(iii)少なくとも1つの鎖延長剤とを反応させることによって作られる。
【0049】
ポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体を、1つ以上のさらなるポリオールと組み合わせて使用してもよい。本発明で使用するのに適したポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体は、少なくとも1つのジアルキレングリコールおよび少なくとも1つのジカルボン酸、またはそのエステルもしくは酸無水物から誘導されてもよい。本発明のポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体は、少なくとも1つの末端ヒドロキシル基を含んでいてもよく、ある実施形態では、少なくとも1つの末端ヒドロキシル基と1つ以上のカルボン酸基とを含んでいてもよい。別の実施形態では、ポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体は、2個の末端ヒドロキシル基を含み、ある実施形態では、2個のヒドロキシル基と、1個以上、または2個のカルボン酸基とを含む。ポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体は、一般的に、実質的に線形であるか、または線形のポリエステルであり、数平均分子量(Mn)が約500〜約10,000、約500〜約5000、または約1000〜約3000、または約2000である。
【0050】
ある実施形態では、ポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体は、酸価が小さくてもよく、例えば、1.5未満、1.0未満、または0.8未満であってもよい。ポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体の小さい酸価は、一般的に、得られるTPUポリマー中で高い加水分解安定性を与え得る。酸価は、ASTM D−4662によって決定されてもよく、サンプル1.0グラムの酸性構成要素を滴定するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数であらわされる塩基量であると定義される。TPUポリマーを配合する当業者に公知の加水分解安定化剤をTPUに加えることによって、加水分解安定性を高めることもできる。
【0051】
本発明のポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体の調製に使用するのに適したジアルキレングリコールは、脂肪族またはこれらの組み合わせであってもよい。適切なグリコールは、2または4または6〜20個、14、8、6または4個の炭素原子を含んでいてもよく、ある実施形態では、2〜12個、2〜8または6個、4〜6個、または4個の炭素原子を含んでいてもよい。ある実施形態では、ジアルキレングリコールとしては、オキシジメタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、3,3−オキシジプロパン−1−オール、ジブチレングリコール、またはこれらの組み合わせが挙げられる。他の実施形態では、列挙した1つ以上のジアルキレングリコールが、本発明から除外されてもよい。2種類以上のグリコールのブレンドを使用してもよい。ある実施形態では、モノアルキレングリコールを、上述のジアルキレングリコールと組み合わせて使用してもよい。他の実施形態では、ポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体を調製するために用いられるグリコールは、モノアルキレングリコールを含まない。
【0052】
本発明のポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体を調製するときに使用するのに適したジカルボン酸は、脂肪族、脂環式、芳香族、またはこれらの組み合わせであってもよい。適切な酸は、2、4または6〜20、15、8または6個の炭素原子を含んでいてもよく、ある実施形態では、2〜15個、4〜15個、4〜8個、または6個の炭素原子を含んでいてもよい。ある実施形態では、ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、またはこれらの組み合わせが挙げられる。他の実施形態では、列挙した1つ以上のジカルボン酸が本発明から除外されてもよい。
【0053】
また、本発明のポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体は、上述の1つ以上のジカルボン酸のエステルもしくは酸無水物、またはこのような材料の組み合わせから誘導されてもよい。適切な酸無水物としては、無水コハク酸、アルキル無水コハク酸および/またはアルケニル無水コハク酸、無水フタル酸およびテトラヒドロ無水フタル酸が挙げられる。ある実施形態では、酸は、アジピン酸である。2種類以上の酸のブレンドを使用してもよい。
【0054】
本発明のポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体は、上述の1つ以上のジアルキレングリコールと、上述の1つ以上のジカルボン酸、および/またはその1つ以上のエステルもしくは酸無水物とを反応させることによって調製される。ある実施形態では、1当量の酸に対し、1当量を超えるグリコールを使用する。この調製は、(1)1つ以上のジアルキレングリコールと1つ以上のジカルボン酸もしくは酸無水物のエステル化反応、または(2)エステル交換反応、すなわち、1つ以上のジアルキレングリコールと、ジカルボン酸エステルとの反応によるものを含む。モル比は、一般的に、末端ヒドロキシル基を優先的に含む直鎖を得るために、酸に対し、グリコール1モルを超える過剰な量であることが好ましい。
【0055】
ある実施形態では、本発明のポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体を、ポリエーテルポリオール中間体および/または従来のポリエステル中間体と組み合わせて使用する。本明細書で使用する場合、本発明のポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体は、ポリエステル結合およびポリエーテル結合の混合物を含んでいてもよいが、ポリエーテル結合だけを含んでいなくてもよく、または、ある実施形態では、ポリエーテル結合とポリエステル結合の合計量に対し、70%を超えるポリエーテル結合を含んでいてもよい。他の実施形態では、本発明の組成物は、ポリエーテルポリオール中間体を実質的に含まないか、または含まず、このような材料を調製に使用せず、ポリエーテルポリオール中間体は、本明細書で使用する場合、ポリエーテル結合だけを含む中間体、または50%未満、40%未満、20%未満、または15%未満のポリエステル結合を含む中間体を意味してもよい。
【0056】
ある実施形態では、本発明のポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体を、ポリエーテルポリオール中間体および/または従来のポリエステル中間体と組み合わせて使用する。このような実施形態では、ポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体とポリエーテルポリオールおよび/または従来のポリエステル中間体との比率は、約10:90〜約90:10、約25:75〜約75:25、または約60:40〜40:60である。ある実施形態では、比率は、組成物全体の50重量%以下がポリエーテルポリオールおよび/または従来のポリエステル中間体であるような比率である。
【0057】
上述のように、ポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタンは、(i)少なくとも1つのポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体と、(ii)少なくとも1つのジイソシアネートおよび(iii)少なくとも1つの鎖延長剤とを反応させることによって作られる。適切なジイソシアネートとしては、(i)芳香族ジイソシアネート、例えば、4,4’−メチレンビス−(フェニルイソシアネート)(MDI)、m−キシリレンジイソシアネート(XDI)、フェニレン−1,4−ジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアネート(TODI)およびトルエンジイソシアネート(TDI);ならびに(ii)脂肪族ジイソシアネート、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、デカン−1,10−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)およびジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートが挙げられる。ある実施形態では、ジイソシアネートは、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)である。他の実施形態では、列挙した1つ以上のジイソシアネートが、本発明から除外されてもよい。
【0058】
2種類以上のジイソシアネートの混合物を使用することができる。また、官能基を2より多く含む少量のイソシアネート(例えば、トリイソシアネート)を、ジイソシアネートとともに使用することができる。官能基を3以上含む大量のイソシアネートは、TPUポリマーが架橋してしまうため、避けるべきである。
【0059】
上述のように、ポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタンは、(i)少なくとも1つのポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体と、(ii)少なくとも1つのジイソシアネートおよび(iii)少なくとも1つの鎖延長剤とを反応させることによって作られる。適切な鎖延長剤としては、グリコールが挙げられ、脂肪族、芳香族またはこれらの組み合わせであってもよい。ある実施形態では、鎖延長剤は、芳香族グリコールであるか、または芳香族グリコールを含む鎖延長剤の混合物を使用する。
【0060】
ある実施形態では、鎖延長剤は、2〜約12個の炭素原子を含むグリコールである。ある実施形態では、グリコール鎖延長剤は、約2〜約10個の炭素原子を含む低級脂肪族または短鎖グリコールであり、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。ある実施形態では、鎖延長剤は、1,4−ブタンジオールを含む。ある実施形態では、鎖延長剤、および/またはTPU全体は、CHDMを本質的に含まないか、またはまったく含まない。
【0061】
また、芳香族グリコールを鎖延長剤として使用し、ベンゼングリコールおよびキシレングリコールを含むTPUを製造してもよい。キシレングリコールは、1,4−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゼンと1,2−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゼンの混合物である。ベンゼングリコールとしては、具体的には、ヒドロキノン、すなわち、ヒドロキノンビス(ヒドロキシルエチルエーテル)またはビス(β−ヒドロキシエチル)エーテル(1,4−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとしても知られ、多くの場合HQEEと呼ばれる);レゾルシノール、すなわち、ビス(β−ヒドロキシエチル)エーテル(1,3−ジ(2−ヒドロキシエチル)ベンゼンとしても知られる);カテコール、すなわち、ビス(β−ヒドロキシエチル)エーテル(1,2−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとしても知られる);およびこれらの組み合わせが挙げられる。ある実施形態では、鎖延長剤はHQEEである。
【0062】
2種類以上のグリコールの混合物を鎖延長剤として使用してもよい。ある実施形態では、鎖延長剤は、HQEEと少なくとも1つの他の鎖延長剤の混合物、例えば、1,4−ブタンジオールおよび/または1,6−ヘキサンジオールである。他の実施形態では、列挙した1つ以上の鎖延長剤が本発明から除外されてもよい。
【0063】
また、当該技術分野で周知であるように、ジアミンを鎖延長剤として使用してもよい。本発明の一実施形態では、鎖延長剤は、ジアミンを共鎖延長剤として、上述の1つ以上の鎖延長剤(例えば、HQEE)と組み合わせて使用する。他の実施形態では、本発明は、組成物を調製するときにジアミンを使用しない。
【0064】
さらに他の実施形態では、本発明で使用される鎖延長剤は、ブタンジオール、エチレングリコール、および/または上述のジアミン共鎖延長剤を本質的に含まないか、またはまったく含まない。
【0065】
また、本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物は固体を含んでいてもよい。熱可塑性ポリウレタン組成物は、1〜99重量%のポリウレタンエラストマーと、99〜1重量%の固体であってもよく、ここで、固体は、熱可塑性ポリウレタンエラストマーに組み込まれている。固体含有量は、3〜95重量%、5〜97重量%、10〜90重量%、または5〜20重量%、または10〜20重量%であってもよく、組成物の残りはポリウレタンエラストマーであってもよい。
【0066】
適切な固体は、主に、無機固体であり、好ましくは、周期律表の1族、2族、3族または4族の典型元素、または4族の亜族の元素の酸化物、化合酸化物、シリケート、スルフェート、カーボネート、ホスフェート、窒化物、アミド、イミドおよびカーバイドからなる種類から選択される無機塩基性固体である。
【0067】
具体的な例は、以下のとおりである。酸化物、例えば、酸化カルシウム、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウムおよび二酸化チタン、混合酸化物、例えば、ケイ素、カルシウム、アルミニウム、マグネシウムおよびチタン元素の混合酸化物;シリケート、例えば、はしご型シリケート、イノシリケート、フィロシリケートおよびテクトシリケート、好ましくは、ウラストナイト、特に、疎水化されたウラストナイト、スルフェート、例えば、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のスルフェート;カーボネート、例えば、アルカリ金属およびアルカリ土類金属、例えば、カルシウム、マグネシウム、バリウム、リチウム、カリウムおよびナトリウムのカーボネート;ホスフェート、例えば、アパタイト;窒化物;アミド;イミド;カーバイド;ポリマー、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリフッ化ビニリデン;ポリアミド;ポリイミド;ならびに他の熱可塑性、熱硬化性およびマイクロゲル、固体分散物、特に、上述のポリマーを含むもの、さらに、上述の2種類以上の固体の混合物。
【0068】
特に述べるべきなのは、以下のものである。ウラストナイト(CaSiO)、CaCO、混合酸化物またはMgおよびCaの炭酸塩、例えば、それぞれ粉砕し、沈殿させた形態のドロマイト、シリケート(SiO)、タルク(SiOMgO)、Al、カオリン(AlSiO)および合成セラミック、電解質溶媒に溶解しないポリマー粉末、好ましくは、具体的に上に述べたもの、例えば、電気化学的に安定なシランカップリング剤を用いて処理された、表面処理したフィラー。
【0069】
本発明によれば、使用する固体は、無機Liイオン伝導性固体、好ましくは、無機塩基性Liイオン伝導性固体であってもよい。
【0070】
これらの例は、以下のとおりである。ホウ酸リチウム、例えば、Li11xHO、Li(BO、LixHO、LiBO(ここで、xは、0〜20の数であってよい);リチウムアルミネート、例えば、LiAlO、LiAl、LiAlO;リチウムアルミノシリケート、例えば、リチウム含有ゼオライト、長石、準長石、フィロシリケートおよびイノシリケート、特に、LiAlSi(スポジュメン)、LiAlSiO10(ペチュライト)、LiAlSiO(ユークリプタイト)、マイカ、例えば、K[Li,Al][AlSi]10(F−OH)/K[Li,Al,Fe][AlSi]10(F−OH);リチウムゼオライト、特に、繊維状、シート状または立方体状の形態であるもの、特に、式Li/zOAlxSiOyHO(式中、zは、価数に対応し、xは、1.8〜約12であり、yは、0〜約8である);リチウムカーバイド、例えば、Li、LiC;LiN;酸化リチウムおよびリチウム混合酸化物、例えば、LiAlO、LiMnO、LiO、Li、LiMnO、LiTiO;LiNH;LiNH;リン酸リチウム、例えば、LiPO、LiPO、LiAlFPO、LiAl(OH)PO、LiFePO、LiMnPO;LiCO;はしご型シリケート、イノシリケート、フィロシリケート、およびテクトシリケートの形態のケイ酸リチウム、例えば、LiSiO、LiSiO、LiS−SiSであり、LiS、SiSおよびLiSiOから機械的に粉砕した生成物(これら3種類の化合物によって構成される最も好ましい生成物は、以下の組成を有する。95重量%(0,6 LiS 0,4 SiS)、5重量%LiSiOおよびLiSi);硫酸リチウム、例えば、LiSO、LiHSO、LiKSO;カソード層について述べているときに述べたLi化合物、固体IIIとして使用される場合には、伝導性カーボンブラックの存在は除外される;さらに、2種類以上の上述のLiイオン伝導性固体の混合物が挙げられる。
【0071】
ある実施形態では、本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物は、さらに、金属含有塩、塩錯体、または金属イオンと非金属イオンまたは分子の合体から作られる塩化合物を含んでいてもよい。本発明で有用な塩の例としては、LiClO、LiN(CFSO、LiPF、LiAsF、LiI、LiCl、LiBr、LiSCN、LiSOCF、LiNO、LiC(SOCF、LiSおよびLiMR(Mは、AlまたはBであり、Rは、ハロゲン、ヒドロカルビル、アルキルまたはアリール基である)が挙げられる。一実施形態では、塩は、トリフルオロメタンスルホン酸のリチウム塩、つまりLiN(CFSOであり、一般的には、リチウムトリフルオロメタンスルホンアミドと呼ばれる。ワンショット重合に加えられる選択される塩の有効な量は、ポリマー100重量%を基準として、少なくとも約0.10、0.25、または0.75重量部である。
【0072】
適切な塩として、ハロゲンを含まないリチウム含有塩も挙げられる。ある実施形態では、この塩は、以下の式
【化1】
によってあらわされ、式中、−X−、−X−、−X−および−X−は、独立して、−C(O)−、−C(R)−、−C(O)−C(R)−または−C(R)−C(R)−であり、ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、水素またはヒドロカルビル基であり、所与のX基のRおよびRが連結して環を形成していてもよい。ある実施形態では、この塩は、上の式によってあらわされ、式中、−X−、−X−、−X−および−X−は、−C(O)−である。適切な塩としては、このような塩の開環した−エート構造(リチウムビス(オキサレート)ボレートを含む)も挙げられる。ある実施形態では、ハロゲンを含まないリチウム含有塩は、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムビス(グリコラト)ボレート、リチウムビス(ラクタト)ボレート、リチウムビス(マロナト)ボレート、リチウムビス(サリチレート)ボレート、リチウム(グリコラト,オキサラト)ボレート、またはこれらの組み合わせを含む。
【0073】
他の実施形態では、本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物は、本明細書に記載する塩を含有する任意またはすべての固体および/または金属を実質的に含まないか、まったく含まない。ある実施形態では、熱可塑性ポリウレタン組成物は、10重量%未満のこのような材料、他の実施形態では、8重量%未満、6重量%未満、5重量%未満、3重量%未満、または2重量%未満のこのような材料を含む。
【0074】
固体が存在する場合、固体は、電解質として使用する液体に実質的に不溶性であってもよく、また、電池媒体中で電気化学的に不活性であってもよい。ある実施形態では、固体は、塩基性固体である。本発明の目的のために、塩基性固体は、液体水含有希釈剤を含む混合物であり、それ自体のpHは7以下であり、この希釈剤よりもpHが高い。ある実施形態では、固体は、一次粒径が5nm〜25ミクロン、好ましくは、0.01〜10ミクロン、特に0.01〜5ミクロン、さらに特定的には、0.02〜1ミクロンであり、与えられた粒径は、電子顕微鏡によって決定される。固体の融点は、好ましくは、電気化学セルの通常の操作温度よりも高く、融点は120℃よりも高く、特に150℃よりも高いことが、特に有利であることがわかっている。この固体は、外形が対称的であってもよく、すなわち、高さ:幅:長さの寸法比(アスペクト比)が約1であり、球またはほぼ丸い形状をしたペレットであるか、または任意の望ましい多面体の形状、例えば、立方体、四面体、六面体、八面体または双角錐であってもよく、または、歪んでいてもよく、または非対称であってもよく、すなわち、高さ:幅:長さの寸法比(アスペクト比)が1に等しくなく、例えば、針状、非対称な四面体状、非対称な双角錐状、非対称な六面体状または八面体状、ラメラまたは平板状であってもよく、繊維状の形状であってもよい。固体が非対称粒子である場合、一次粒径について上に与えられる上限は、それぞれの場合に、最も小さな軸を指す。
【0075】
熱可塑性ポリウレタン組成物は、さらに、他の熱可塑性ポリマー、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデンに基づくコポリマー、ポリアクリロニトリルおよびポリ(メタ)アクリレート、例えば、ポリ(メタクリル酸メチル)を含んでいてもよい。これらの他のポリマーを用いる場合、その比率は、熱可塑性ポリウレタンエラストマー100重量部を基準として、5〜400重量部の範囲内であってもよい。
【0076】
上に定義した熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、一般的に知られているプロセスにしたがって製造されてもよい。
【0077】
ある実施形態では、ポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタンを、マトリックスまたはベースポリマーとブレンドし、ポリマーブレンドを作製する。これらのブレンドは、本明細書に記載する塩で改変されたポリマーを用いて作られてよい。
【0078】
本明細書に定義するような適切なベースポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマーであってもよい。ベースポリマーは、複数のベースポリマーのブレンドであってもよく、ESD(静電散逸性)添加剤を含め、上述の任意の添加剤を含んでいてもよい。ある実施形態では、本発明のベースポリマー、および/または組成物は、ESD添加剤を実質的に含まなくてもよいか、含まなくてもよい。
【0079】
ベースポリマーは、以下のものを含んでいてもよい。
(i)ポリオレフィン(PO)、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン、エチレンプロピレンゴム(EPR)、ポリオキシエチレン(POE)、環状オレフィンコポリマー(COC)、またはこれらの組み合わせ;
(ii)スチレン系、例えば、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、スチレンアクリロニトリル(SAN)、スチレンブタジエンゴム(SBRまたはHIPS)、ポリアルファメチルスチレン、メタクリル酸メチルスチレン(MS)、スチレン無水マレイン酸(SMA)、スチレン−ブタジエンコポリマー(SBC)(例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー(SBS)およびスチレン−エチレン/ブタジエン−スチレンコポリマー(SEBS))、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンコポリマー(SEPS)、スチレンブタジエンラテックス(SBL)、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)で修飾されたSANおよび/もしくはアクリルエラストマー(例えば、PS−SBRコポリマー)、またはこれらの組み合わせ;
(iii)熱可塑性ポリウレタン(TPU);
(iv)ポリアミド、例えば、ナイロン(商標)(ポリアミド6,6(PA66)、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド12(PA12)、コポリアミド(COPA)、またはこれらの組み合わせを含む);
(v)アクリルポリマー、例えば、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(メチルメタクリリレート)、またはこれらの組み合わせ;
(vi)ポリ塩化ビニル(PVC)、塩素化ポリ塩化ビニル(CPVC)、またはこれらの組み合わせ;
(vii)ポリオキシメチレン、例えば、ポリアセタール;
(viii)ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、コポリエステルおよび/またはポリエステルエラストマー(COPE)(ポリエーテル−エステルブロックコポリマー、例えば、グリコール修飾されたポリエチレンテレフタレート(PETG) ポリ(乳酸)(PLA)、またはこれらの組み合わせを含む);
(ix)ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、またはこれらの組み合わせ;
あるいはこれらの組み合わせ。
【0080】
本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物は、さらに可塑剤も含んでいてもよい。使用する可塑剤は、非プロトン性溶媒、好ましくは、Liイオンを溶媒和する溶媒、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネート;オリゴアルキレンオキシド、例えば、ジブチルエーテル、ジ−tert−ブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジデシルエーテル、ジドデシルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、1−tert−ブトキシ−2−メトキシエタン、1−tert−ブトキシ−2−エトキシエタン、1,2−ジメトキシプロパン、2−メトキシエチルエーテル、2−エトキシエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールtert−ブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、γ−ブチロラクトンおよびジメチルホルムアミド;式C2n+2の炭化水素(7<n<50);有機リン化合物、特にホスフェートおよびホスホネート、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリイソブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリデシルホスフェート、ジエチルn−ブチルホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート、トリス(2−メトキシエチル)ホスフェート、トリス(テトラヒドロフリル)ホスフェート、トリス(1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル)ホスフェート、トリス(1H,1H−トリフルオロエチル)ホスフェート、トリス(2−(ジエチルアミノ)エチル)ホスフェート、ジエチルエチルホスホネート、ジプロピルプロピルホスホネート、ジブチルブチルホスホネート、ジヘキシルヘキシルホスホネート、ジオクチルオクチルホスホネート、エチルジメチルホスホノアセテート、メチルジエチルホスホノアセテート、トリエチルホスホノアセテート、ジメチル2−オキソプロピルホスホネート、ジエチル2−オキソプロピルホスホネート、ジプロピル2−オキソプロピルホスホネート、エチルジエトキシホスフィニルホルメート、トリメチルホスホノアセテート、トリエチルホスホノアセテート、トリプロピルホスホノアセテートおよびトリブチルホスホノアセテート;有機硫黄化合物、例えば、スルフェート、スルホネート、スルホキシド、スルホンおよびスルファイト、例えば、ジメチルスルファイト、ジエチルスルファイト、グリコールスルファイト、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジプロピルスルホン、エチルプロピルスルホン、ジブチルスルホン、テトラメチレンスルホン、メチルスルホラン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジプロピルスルホキシド、ジブチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、エチルメタンスルホネート、1,4−ブタンジオールビス(メタンスルホネート)、ジエチルスルフェート、ジプロピルスルフェート、ジブチルスルフェート、ジヘキシルスルフェート、ジオクチルスルフェートおよびSOClF;ならびにニトリル、例えば、アクリロニトリル;分散剤、特に界面活性剤構造を有するもの;ならびにこれらの混合物であってもよい。
【0081】
本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物は、さらなる有用な添加剤をさらに含んでいてもよく、このような添加剤を適切な量使用してもよい。これらの任意要素のさらなる添加剤としては、鉱物および/または不活性フィラー、潤滑剤、処理助剤、酸化防止剤、加水分解安定化剤、酸捕捉剤、ならびに所望な他の添加剤が挙げられる。有用なフィラーとしては、珪藻土(スーパーフロス)クレイ、シリカ、タルク、マイカ、珪灰石、硫酸バリウムおよび炭酸カルシウムが挙げられる。所望な場合、有用な酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤が挙げられる。有用な潤滑剤としては、金属ステアレート、パラフィン油およびアミドワックスが挙げられる。また、TPUポリマーの加水分解安定性を高めるために添加剤を使用することもできる。上述のこれらそれぞれの任意要素のさらなる添加剤は、本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物中に存在していてもよく、本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物から除外されていてもよい。
【0082】
存在する場合、これらのさらなる添加剤は、本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物中に、組成物の0または0.01〜5または2重量%存在していてもよい。これらの範囲を、組成物中に存在するそれぞれのさらなる添加剤に別個に、または存在するすべてのさらなる添加剤の合計に適用してもよい。
【0083】
本発明の組成物を無機液体希釈剤に溶解または分散させてもよいが、好ましくは、有機液体希釈剤に溶解または分散させてもよく、得られた混合物は、粘度が好ましくは、100〜50,000mPasであることを意図しており、次いで、この溶液または分散物を、それ自体が公知の様式で、例えば、キャスト成形、噴霧、注ぎ込み、浸漬、スピンコーティング、ローラーコーティングまたは凸版印刷、凹版印刷、平板印刷またはスクリーン印刷によって担体材料に塗布する。その後のプロセスは、通常の方法によって、例えば、希釈剤を除去し、バインダーを硬化させることによって行うことができる。
【0084】
適切な有機希釈剤は、脂肪族エーテル、特に、テトラヒドロフランおよびジオキサン、炭化水素、特に、炭化水素混合物、例えば、石油スピリット、トルエンおよびキシレン、脂肪族エステル、特に、酢酸エチルおよび酢酸ブチル、ならびにケトン、特に、アセトン、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン、ジエチルホルムアミド、クロロホルム、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,1,1トリクロロエタンまたはこれらの組み合わせである。
【0085】
適切な担体材料は、電極に使用する通常の材料、好ましくは、金属、例えば、アルミニウムおよび銅である。一時的な支持材、例えば、フィルム、特に、ポリエステルフィルム、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用することも可能である。このようなフィルムは、有利には、剥離層(好ましくはポリシロキサンを含む)を備えた状態で与えられてもよい。
【0086】
ある実施形態では、上述の組成物の調製に使用するジイソシアネートは、4,4’−メチレンビス−(フェニルイソシアネート);ヘキサメチレンジイソシアネート;3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート;m−キシリレンジイソシアネート;フェニレン−1,4−ジイソシアネート;ナフタレン−1,5−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアネート;トルエンジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート;1,4−シクロヘキシルジイソシアネート;デカン−1,10−ジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート;またはこれらの組み合わせを含み、上述の組成物の調製に使用する鎖延長剤は、ヒドロキノンビス(β−ヒドロキシエチル)エーテル;エチレングリコール;ジエチレングリコール;プロピレングリコール;ジプロピレングリコール;1,4−ブタンジオール;1,6−ヘキサンジオール;1,3−ブタンジオール;1,5−ペンタンジオール;ジ(ヒドロキシエチル)エーテル;ネオペンチルグリコール;またはこれらの組み合わせを含む。
【0087】
ある実施形態では、上述の組成物の調製に用いられるポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体は、ポリ(ジエチレングリコールアジペート)を含み、ジイソシアネートは、4,4’−メチレンビス−(フェニルイソシアネート)を含み、鎖延長剤は、ブタンジオール、ベンゼングリコール、またはこれらの組み合わせを含む。
【0088】
上述の任意の実施形態では、熱可塑性ポリウレタン組成物は、ポリエーテルポリオールを実質的に含まないポリエステルポリオール成分から作られてもよい。さらに他の実施形態では、熱可塑性ポリウレタン組成物は、さらに、少なくとも1つのベースポリマーを含んでいてもよい。適切なベースポリマーとしては、ポリオレフィン;スチレン系樹脂;熱可塑性ポリウレタン、ポリアミド;アクリルポリマー;ポリ塩化ビニル;ポリフッ化ビニリデン;ポリエチレンオキシド;エチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマー;ポリアクリロニトリル;ポリオキシメチレン;ポリエステル;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0089】
ある実施形態では、本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物にフィラーを使用してもよい。適切なフィラーとしては、ナノフィラー、さらにナノファイバーが挙げられる。
【0090】
(電気化学セル)
本発明は、上に定義したような電極を含み、一般的に、正極および負極を含む電気化学セルに関する。本発明の別の態様によれば、リチウム電池カソードおよび/またはアノードを含むリチウム電池が提供される。さらに、電気化学セル(例えば、リチウム電池)中で本明細書に定義するような電極を使用することに関する。電気化学セルとしては、電池、例えば、本明細書に示すリチウムイオン電池が挙げられ、さらに、コンデンサおよび同様のデバイス、例えば、スーパーコンデンサまたはウルトラ−コンデンサとも呼ばれる電気二重層コンデンサが挙げられる。
【0091】
動作可能なように、正極と負極との間に電解質系が配置される。電解質系は、典型的には、例えば、電気化学的に活性な種または電気化学的活物質の吸収によって係合するように調整された有機ポリマー支持構造を含む。電気化学的活物質は、液体電解質、例えば、有機溶媒に溶解し、正極と負極との間のイオンの移動を促進するように調整された金属塩であってもよい。
【0092】
上に概略を説明したように、本発明は、以下の望ましい特徴を有する、電気化学セル中で使用するのに適した電極を提供する:(a)上述のバインダー組成物およびこの組成物から作られる電極は、例えば、この組成物を用いるコレクタ、フィラー、およびセパレーターとの接着性を高めることができ、そのため、多くの従来の代替物よりも単位あたりの材料が少なくてすみ得、また、得られる電気化学セルにおいて、低い内部抵抗、高い容量、良好な速度性能、および長いサイクル寿命を与えることができる;(b)上述のバインダー組成物およびこの組成物から作られる電極は、多くの従来の代替物よりも高いイオン伝導性を有することができ、得られる電気化学セルにおいて、低い内部抵抗、高い容量、良好な速度性能、および長いサイクル寿命を与えることができる;(c)上述のバインダー組成物およびこの組成物から作られる電極は、多くの従来の代替物よりも向上した低温特性を有することができる;(d)上述のバインダー組成物およびこの組成物から作られる電極は、多くの従来の代替物よりも良好な電極活性フィラーの分散物を与えることができる;(d)上述のバインダー組成物およびこの組成物から作られる電極は、多くの従来の代替物よりも改良された湿潤性および吸収性を与えることができ、それによって、漏れを減らすのに役立ち、そのため、得られる電気化学セルの安全性を高めることができる。
【0093】
本発明の電気化学セルは、一般的に、正極と負極とを含み、これらの電極は、上述のいずれかであってもよい。正極は、限定されないが、酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化バナジウム、およびこれらの組み合わせのような活物質を用いて上述のように製造することができる。負極は、同様に、当業者に公知の多くの任意の電極材料から上述のように製造されてもよい。負極のための活物質の選択は、所与の用途のために適切に機能する電気化学セルを確実にするために、正極の活物質によって変わる。したがって、負極は、例えば、アルカリ金属、アルカリ金属アロイ、炭素、グラファイト、石油コークス、およびこれらの組み合わせから製造されてもよい。
【0094】
本発明は、上述の正極と負極とを含む電気化学セルを提供する。ある実施形態では、電気化学セルは、(I)前記正極と前記負極との間に配置され、(A)ポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物と、(B)電気化学的に活性な電解種とを含むポリマー電解質;(II)前記正極と前記負極との間に配置され、(A)ポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物を含むセパレーター膜;または(III)(I)および(II)の両方をさらに含む。それぞれのポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物は、上述のいずれかの材料であってもよく、ある実施形態では、(i)少なくとも1つのポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体と、(ii)少なくとも1つのジイソシアネートおよび(iii)少なくとも1つの鎖延長剤とを反応させることによって作られ;(i)のポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体が、少なくとも1つのジアルキレングリコールおよび少なくとも1つのジカルボン酸、またはそのエステルもしくは酸無水物から誘導される中間体を含む。ある実施形態では、鎖延長剤は、ヒドロキノンビス(β−ヒドロキシエチル)エーテルを含む。
【0095】
本発明の電気化学セルは、充電/放電サイクル寿命が、500サイクルより大きくてもよく、750サイクルより大きくてもよく、または1000サイクルより大きくてもよい。本発明の電気化学セルは、500サイクル後の充電/放電効率が90%より大きくてもよく、または95%より大きくてもよい。本発明の電気化学セルは、操作窓(operation window)が−30〜100℃、または−10〜70℃であってもよく、これらの性能特徴のいずれか1つまたは任意の組み合わせが、所定の操作窓にわたって満たされる。本発明の電気化学セルは、任意の剛性金属ケーシングを本質的に含まなくてもよく、任意の剛性金属ケーシングをまったく含まなくてもよい。本発明の電気化学セルは、ポーチ型の電池であってもよい。
【0096】
なおさらなる実施形態では、本発明の電気化学セルは、以下の特徴の少なくとも1つ、または任意の組み合わせを満たす:(i)充電/放電サイクル寿命が、500サイクルより大きい、750サイクルより大きい、または1000サイクルより大きい;(ii)500サイクル後の充電/放電効率が90%より大きい、または95%より大きい;(iii)操作窓が−10〜70℃;(iv)剛性金属ケーシングを本質的に含まない;および/または(v)ポーチ型電池である。
【0097】
さらに他の実施形態では、本発明のポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物、ならびにこのようなポリウレタン組成物を用いて作られる膜、電解質系および/または電気化学セルは、無機固体を実質的に含まない。実質的に含まないとは、組成物が10重量%未満の無機固体、または5重量%未満、または1重量%未満の無機固体を含むことを意味する。さらに他の実施形態では、組成物は、無機固体を本質的に含まないか、またはまったく含まない。
【0098】
電気化学セルの電解質溶液は、リチウム塩を含む。有機溶媒に溶解してリチウムイオンを生成する任意のリチウム化合物をリチウム塩として使用してもよい。例えば、少なくとも1つのイオン性リチウム塩、例えば、過塩素酸リチウム(LiClO)、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF)、リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF)、リチウムトリフルオロメタンスルホネート(LiCFSO)およびリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(LiN(CFSO)を使用してもよい。リチウム塩の濃度は、0.5〜2.0Mの範囲であってもよい。リチウム塩の濃度がこの範囲から外れると、イオン伝導性が望ましくない程度まで低くなることがある。リチウムイオンが電流の方向に流れる経路を作ることができるように、このような無機塩を含有する有機電解質溶液を用いる。適切な塩としては、上述のようなハロゲンを含まないリチウム含有塩も挙げられる。ある実施形態では、ハロゲンを含まないリチウム含有塩は、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムビス(グリコラト)ボレート、リチウムビス(ラクタト)ボレート、リチウムビス(マロナト)ボレート、リチウムビス(サリチレート)ボレート、リチウム(グリコラト,オキサラト)ボレート、またはこれらの組み合わせを含む。
【0099】
本発明に適した電解質溶液のための有機溶媒の例としては、ポリグリム、オキソラン、カーボネート、2−フルオロベンゼン、3−フルオロベンゼン、4−フルオロベンゼン、ジメトキシエタンおよびジエトキシエタンが挙げられる。これらの溶媒を個々に、または2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0100】
ポリグリムの例としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル(CH(OCHCHOCH)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(C(OCHCHO−C)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(CH(OCHCHOCH)およびトリエチレングリコールジエチルエーテル(C(OCHCHOC)が挙げられる。これらのポリグリムを個々に、または2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0101】
ジオキソランの例としては、1,3−ジオキソラン、4,5−ジエチル−ジオキソラン、4,5−ジメチル−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソランおよび4−エチル−1,3−ジオキソランが挙げられる。これらのジオキソランを個々に、または2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0102】
カーボネートの例としては、メチレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびビニレンカーボネートが挙げられる。これらのカーボネートを個々に、または2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0103】
有機溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、プロピレンカーボネート(PC)およびフルオロベンゼン(FB)の混合物;およびジグリム(DGM)(「ジエチレングリコールジメチルエーテル」とも呼ばれる)、ジメトキシエタン(DME)および1,3−ジオキソラン(DOX)の混合物であってもよい。
【0104】
有機溶媒の量は、従来のリチウム電池で用いられる有機溶媒の量と同じである。
【0105】
リチウム電池を製造するときに、従来の方法を用いて本発明の一実施形態の電解質溶液を加える。従来の方法としては、限定されないが、以下の方法が挙げられる。(1)カソードと、アノードと、セパレーターとを含むカプセル化された電極アセンブリに電解質溶液を注入することを含む方法;(2)マトリックス生成樹脂および電解質溶液を含むポリマー電解質を用いて、電極またはセパレーターをコーティングし、コーティングされた電極およびセパレーターを用いて、電極アセンブリを作製し、および電池ケース内に電極アセンブリを密閉することを含む方法;または(3)マトリックス生成樹脂および電解質溶液を含むポリマー電解質を用いて、電極またはセパレーターをコーティングし、コーティングされた電極およびセパレーターを用いて、電極アセンブリを作製し、電池ケース内に電極アセンブリを密閉し、および電池の内部で重合させることを含む方法。ここで、マトリックス生成樹脂として遊離ポリマーまたは重合モノマーを使用するとき、この方法を適用することができる。
【0106】
電極プレートのバインダーとして一般的に用いられる任意の材料を、制限なく、本発明の方法のマトリックス生成ポリマー樹脂として使用することができる。マトリックス生成ポリマー樹脂の例としては、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、およびこれらの材料の組み合わせが挙げられる。
【0107】
マトリックス生成ポリマー樹脂は、ポリマー電解質の機械強度を高めるフィラーをさらに含んでいてもよい。フィラーの例としては、シリカ、カオリンおよびアルミナが挙げられる。それに加え、必要な場合、マトリックス生成ポリマー樹脂は、可塑剤をさらに含んでいてもよい。
【0108】
本発明の電解質溶液を、一般的なリチウム電池、例えば、一次電池、二次電池および硫黄電池で使用することができる。
【0109】
本発明の電解質溶液を、制限なく、円筒形および長方形のリチウム電池で使用することができる。
【0110】
ある実施形態では、本発明は、機械安定性と、液体電解質の高いイオン伝導度を有する固体電解質によって生じる漏れがないことをあわせもつ電解質系をさらに提供する。電解質系は、例えば、電気化学的に活性な種または材料の吸収によって係合するように調整された有機ポリマー支持構造を含んでいてもよい。電気化学的活物質は、液体電解質、例えば、有機溶媒に溶解し、電気化学セル(または電池)の正極と負極との間のイオン移動を促進するように調整された金属塩であってもよい。
【0111】
有機支持構造によって吸収される液体電解質は、正極および負極の性能を最適化するように選択されてもよい。一実施形態では、リチウムに由来する電気化学セルの場合、有機支持構造によって吸収される液体電解質は、典型的には、非プロトン性有機溶媒または溶媒に溶解したアルカリ金属塩または塩の組み合わせの溶液である。典型的なアルカリ金属塩としては、限定されないが、式Mを有する塩が挙げられ、式中、Mは、アルカリ金属カチオン、例えば、Li、Na、Kおよびこれらの組み合わせであり;Xは、アニオン、例えば、Cl、Br、I、ClO、BF、PF、AsF、SbF、CHCO、CFSO、(CF、(CFSO、(CFSO、およびこれらの組み合わせである。ある実施形態では、これらの塩は、リチウム塩である。非プロトン性有機溶媒としては、限定されないが、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。適切な塩としては、上述のハロゲンを含まないリチウム含有塩も挙げられる。ある実施形態では、ハロゲンを含まないリチウム含有塩は、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムビス(グリコラト)ボレート、リチウムビス(ラクタト)ボレート、リチウムビス(マロナト)ボレート、リチウムビス(サリチレート)ボレート、リチウム(グリコラト,オキサラト)ボレート、またはこれらの組み合わせを含む。
【0112】
有機ポリマー支持構造は、上述の任意のポリウレタンエラストマー組成物から製造されてもよい。
【0113】
ある実施形態では、電気化学セルのための電解質系は、(i)少なくとも1つのポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体と、(ii)少なくとも1つのジイソシアネートおよび(iii)少なくとも1つの鎖延長剤とを反応させることによって作られるポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物を含み、(i)のポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体が、少なくとも1つのジアルキレングリコールおよび少なくとも1つのジカルボン酸、またはそのエステルもしくは酸無水物から誘導された中間体を含む、ポリマー支持構造に分散した電解質活性種を含む。
【0114】
本発明の電解質系は、この材料が熱可塑性エラストマーであるため、簡単に処理することができ、再処理することができるポリマー支持構造を有するという重要な利点も有する。他の従来技術のゲル系は、典型的には、放射線(電子線、UVなど)によって、または化学架橋剤(例えば、ポリエーテルトリオールを架橋するために使用可能なジイソシアネート)によって永久的に化学的に架橋する。
【0115】
リチウム電池で一般的に用いられる任意のセパレーターを、制限なく本発明に使用することができる。セパレーターは、高い水結合能力を有していてもよく、電解質中のイオンの移動にあまり抵抗しない。セパレーターの例としては、ガラス繊維、ポリエステル、TEFLON(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、およびこれらの材料の組み合わせが挙げられ、不織布または織布の形態であってもよい。特に、セパレーターは、ポリエチレンおよび/またはポリプロピレンの多孔性膜であってもよく、有機溶媒に対する反応性が低く、安全性が保証される。
【0116】
ある実施形態では、本発明は、上述の任意のポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物から作られた膜またはセパレーターをさらに提供する。
【0117】
ある実施形態では、本発明の膜は、室温(典型的には、20〜30℃(1470&1400))でSolartron分析システムを用いて測定した場合、Li+伝導度が1.0E−5S/cmより大きい(ジーメンス/センチメートルであらわすと、1.0×10−5S/cmより大きい)、または1E−4S/cmより大きい、または1E−3S/cmより大きい。ある実施形態では、膜は、以下の少なくとも1つの特徴を有する:(i)重量平均分子量が少なくとも60,000;(ii)融点が、120℃より大きい、140℃より大きい、または160℃より大きい;(iii)ガラス転移温度が、−10℃未満、−20℃未満、または−30℃未満。
【0118】
なおさらなる実施形態では、電気化学セルは、セルが固体電極と固体電解質/セパレーター系とを含む「固体電池」と呼ばれるものであってもよい。時に、この固体電解質/セパレーター系は、セパレーターおよび/または膜の必要はないが、固体電解質がセパレーターおよび/または膜として効果的に作用するのみであるため、固体電解質と呼ばれる。このような実施形態では、セルの固体電極は、上述の熱可塑性ポリウレタン系電極であってもよく、固体電解質/セパレーター系は、上述の熱可塑性ポリウレタン系セパレーター組成物であってもよい。
【0119】
上述のいくつかの物質は、最終的な配合物中で相互作用してもよく、その結果、最終的な配合物の成分は、最初に加えた成分とは異なっていてもよいことが知られている。例えば、金属イオン(例えば、洗剤の金属イオン)は、他の分子の他の酸性部位またはアニオン性部位に移動してもよい。このようにして作られる生成物(意図した用途で本発明の組成物を使用すると生成する生成物を含む)は、簡単に記載することができない場合がある。それにもかかわらず、このようなあらゆる改変および反応生成物は、本発明の範囲に含まれ、本発明は、上述の成分を混合することによって調製される組成物を包含する。
【実施例】
【0120】
特に有利な実施形態を記載する以下の実施例によって本発明をさらに説明する。本発明を説明するために実施例が与えられるが、実施例は、本発明を限定することを意図していない。
【0121】
(実施例1)
以下の表は、ポリウレタン配合物を示す。すべてのサンプルは、4,4’−メチレンビス−(フェニルイソシアネート)(MDI)を用いて作られ、反応性押出成形による従来のポリウレタン溶融重合法を用いて調製される。以下のサンプル1a〜1dは、硬質セグメントの含有量のみが異なっており、サンプル1aは、硬質セグメントの含有量が最も少なく、サンプル1dは、硬質セグメントの含有量が最も多い。
【表1】
【0122】
(実施例2)
以下の表2は、実施例1のポリウレタンサンプルの結果をまとめている。ショアA硬度(5秒)をASTM D−2240にしたがって試験し、結果が大きいほど硬い材料を示す。ポリウレタン膜を減圧乾燥機中、80℃で24時間乾燥させ、次いで、伝導度試験のための電極間で組み立てる前に、電解質に12時間浸した。電解質に浸されたとき、膜サンプルが寸法的に膨潤し、寸法の変化および重量の変化を測定する。
【表2】
1−ASTM D−2240によって測定される場合、硬度はショアA単位であらわされる。
2−Liイオン伝導度は、S/cmであらわされる。上の表の値は、3個の別個の試験結果の平均である。試験対象の膜を液体電解質(エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネートの30:70ブレンド中1.2M LiPF)に12時間浸し、次いで、膜を除去し、濾紙を用いて表面を拭き取り、過剰な液体電解質を除去し、2個のステンレス鋼電極に挟まれた膜を置き、次いで、Solartron 1470E Multistat(London Scientific、カナダ)を用い、電気化学インピーダンス分光法によって測定することによって結果を得た。振幅10mVで、周波数を0.1MHz〜10Hzに設定した。
3−電解質の取り込みは、サンプルを電解質(エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネートの30:70ブレンド中1.2M LiPF)に12時間浸す前と浸した後の重量を測り、以下の式によって計算することによって測定される:電解質の取り込み(%)=(浸した後のサンプルの重量−浸す前のサンプルの重量)/浸す前のサンプルの重量×100%。
4−膨潤は、液体電解質(エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネートの30:70ブレンド中1.2M LiPF)を用いて評価する。フィルムサンプルの寸法は、液体電解質に12時間浸す前および浸した後に測定した。軸方向の膨潤=(浸した後の厚さ−浸す前の厚さ)/浸す前の厚さ×100%。放射方向の膨潤=(浸した後の直径−浸す前の直径)/浸す前の直径×100%。
5−比較例1(Comp 1)はPVDFである。
【0123】
(実施例3)
アノードを調製するために、NMP中のMCMB、Super P(登録商標)Li(アセチレンブラック)、およびバインダー材料で構成されるスラリーを用い、銅箔をコーティングする。バインダー材料をまず10重量%濃度でNMPに分散させる。表3に示す重量比を用い、MCMBおよびSuper P(登録商標)Li粉末を混合し、めのう乳鉢中、粉砕して粉末にする。次いで、粉末混合物をバインダーNMP溶液に加えてスラリーを作製し、次いで、これを用い、制御された40〜60μmのギャップを有するドクターブレードによって銅箔をコーティングする。減圧乾燥機内で、80℃で12時間乾燥させる前に、赤外線ランプを用いてNMP溶媒を除去する。乾燥させた電極を、液圧プレス(Carver 4122)によって10MPaで加圧する。
【0124】
カソードを調製するために、MCMBの代わりにLiFePOを用い、アルミニウム箔をスラリーでコーティングした後、乾燥プロセスを用いてカソードを作製する以外は、上に記載したのと同じ手順を用いる。
【0125】
実施例1のTPUサンプルをバインダー材料として用い、カソードとアノードを製造し、PVDFバインダーを含むものも、比較の目的のために製造する。表3は、電極配合物を示し、すべてのサンプルは、同じ重量%のバインダー材料を含む。
【表3】
【0126】
(実施例4)
コインセル(CR2016)は、2個の円形電極板と、その間にある表4に示す組み合わせと多孔性セパレーター(Celgard(登録商標)3501)とから作られる。すべてのコインセルを、アルゴンを充填したグローブボックス中、酸素濃度0.1pm未満および湿度0.1ppm未満で組み立てる。アノードおよびカソード積層体から電極板を打ち抜く。カソード板(1.4mm)をコインセルの外側のシェルの中央に配置する。セパレーター(1.6mm)をカソードの上部に同心円状に置く。6滴の電解質をセパレーターの表面に置く。アノード板をセパレーター上部に置く。ステンレス鋼スペーサーをアノード上部に置き、次いで、円板バネを置く。次いで、このスタックをフタで覆い、液圧プレスを用い、10MPaで組み立てる。EC/EMC(30/70)ブレンド中1.2MのLiPFを用い、電解質を調製する。
【表4】
【0127】
(実施例5)
Solartron 1470E Multistat(London Scientific、カナダ)で、定電流での充電放電試験を行ない、セルのサイクル寿命を評価する。サイクル速度1Cで、カットオフ電圧を2V〜3.8Vに設定する。試験結果を表5に提示する。容量をmAh/活物質のグラム数の単位で測定する(カソードの場合LiFePO、アノードの場合MCMB)。
【表5】
【0128】
(実施例6)
PVDFの密度は、TPUのほぼ1.5倍であり(すなわち、1.77g/cm 対 1.1g/cm)、電解質中のTPUの体積膨潤は、PVDFよりもかなり大きい(すなわち、50%より大きい 対 7%)。したがって、PVDFを同じ重量のTPUで置き換えると、電極のバインダー体積が2倍より大きくなる。したがって、活性粒子を一緒に結合するのに必要なTPUバインダーは少ない。実施例6では、PVDFバインダーを、半分の重量のTPU材料と置き換え、活性粉末(アノードの場合にはMCMB、カソードの場合にはLiFePO)とカーボンブラック(Super P(登録商標)Li)の比率を一定に保つ。電極配合物を表6に示す。
【表6】
【0129】
(実施例7)
実施例6のアノードおよびカソードのサンプルをコインセル内で組み立て、充電/放電サイクル試験によって評価する。試験結果を表7に示す。
【表7】
【0130】
電池試験結果は、電極中の保持量を50%減らしたTPUバインダーを用いた本発明のサンプル13〜15が、基準となるPVDFバインダーを含む比較例サンプル4と同等の容量および容量保持率を有することを示す。
【0131】
(実施例8)
Liイオン電池を含む電気化学セル用途に本発明のTPU組成物が適していることを示すために、なおさらなる実施例を調製する。以下のTPU組成物を調製し、試験し、その硬度、Liイオン伝導度および膨潤特性を測定する。これらのさらなるサンプルの配合および結果を以下の表にまとめている。
【表8】
【0132】
機械特性、Liイオン伝導度および膨潤を含む評価のために、一般的な電解質系にさらしたら、溶融キャスト成形プロセスによってサンプルを押出成形し、厚さが1.0mil以下の薄いフィルムにする。
【表9】
1−ASTM D−2240によって測定される場合、硬度はショアA単位であらわされる。
2−Liイオン伝導度は、mS/cmであらわされる。上の表の値は、3個の別個の試験結果の平均である。試験対象の乾燥した膜(減圧乾燥機中、80℃で24時間保存)を液体電解質(エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネートの30:70ブレンド中1.2M LiPF)に12時間浸し、次いで、膜を除去し、濾紙を用いて両表面を拭き取り、過剰な液体電解質を除去し、2個のステンレス電極に挟まれた膜を置き、次いで、Solartron 1470E Multistat(London Scientific、カナダ)を用い、電気化学インピーダンス分光法によって測定することによって結果を得た。振幅10mVで、周波数を0.1MHz〜10Hzに設定した。
3−膨潤は、液体電解質(エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネートの30:70ブレンド中1.2M LiPF)を用いて評価する。フィルムサンプルの寸法は、液体電解質に12時間浸す前および浸した後にカリパスによって測定した。軸方向の膨潤=(浸した後の厚さ−浸す前の厚さ)/浸す前の厚さ×100%。放射方向の膨潤=(浸した後の直径−浸す前の直径)/浸す前の直径×100%。
4−サンプル18および22は電解質系に溶解したため、膨潤測定を完了させることができなかった。
【0133】
この結果は、本発明のTPU組成物(具体的には、サンプル16、18、19および20)が、Liイオン電池を含む電気化学セル用途で使用するのに十分に適しており、サンプル16は、他のTPU組成物と比較すると、物理特性、電解質相溶性および伝導性の非常に良好な組み合わせを有し、きわめて十分に適していることを示す。
【0134】
上で言及したそれぞれの書類は、本明細書に参考として組み込まれる。実施例を除き、または特に明記されてない限り、材料の量、反応条件、分子量、炭素原子数などを特定する記載のあらゆる数量は、「約」という用語によって修正されていると理解すべきである。特に指示のない限り、ppm値および部の値は、重量基準である。特に指示のない限り、本明細書で言及するそれぞれの化学物質または組成物は、異性体、副生成物、誘導体、および商業グレードで通常存在すると理解されている他のこのような物質を含んでいてもよい商業グレードの材料であると解釈すべきである。しかし、それぞれの化学成分の量は、特に指示のない限り、市販材料に通常存在していてもよい任意の溶媒または希釈剤を除いた量で存在する。本明細書に記載する量、範囲および比率の上限および下限を独立して組み合わせてもよいことを理解すべきである。同様に、本発明のそれぞれの要素の範囲および量を、他の任意の要素の範囲または量と一緒に使用することができる。本明細書で使用する場合、「から本質的になる」という表現は、検討中の組成物の基本特徴および新規な特徴に重大な影響を与えない物質を含むことを許容し、一方、「〜を本質的に含まない」という表現は、少なくとも、検討中の組成物の基本特徴および新規な特徴に重大な影響を与えない量まで物質を除外することを許容する。
本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
ポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物、および場合により、さらに導電剤を含む、電極バインダー組成物。
(項目2)
前記導電剤が、カーボンブラック、ニッケル粉末、またはこれらの組み合わせを含む、項目1に記載の電極バインダー組成物。
(項目3)
前記ポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物が、(i)少なくとも1つのポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体と、(ii)少なくとも1つのジイソシアネートおよび(iii)少なくとも1つの鎖延長剤とを反応させることによって作られ;
(i)の前記ポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体が、少なくとも1つのジアルキレングリコールおよび少なくとも1つのジカルボン酸、またはそのエステルもしくは酸無水物から誘導される中間体を含む、項目1〜2のいずれか1項に記載の電極バインダー組成物。
(項目4)
(ii)の前記ジイソシアネートが、4,4’−メチレンビス−(フェニルイソシアネート);ヘキサメチレンジイソシアネート;3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート;m−キシリレンジイソシアネート;フェニレン−1,4−ジイソシアネート;ナフタレン−1,5−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアネート;トルエンジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート;1,4−シクロヘキシルジイソシアネート;デカン−1,10−ジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート;またはこれらの組み合わせを含み;
(iii)の前記鎖延長剤が、ヒドロキノンビス(β−ヒドロキシエチル)エーテル;エチレングリコール;ジエチレングリコール;プロピレングリコール;ジプロピレングリコール;1,4−ブタンジオール;1,6−ヘキサンジオール;1,3−ブタンジオール;1,5−ペンタンジオール;ネオペンチルグリコール;またはこれらの組み合わせを含み、
前記ジカルボン酸が、4〜15個の炭素原子を含み、前記ジアルキレングリコールが、2〜8個の脂肪族炭素原子を含む、項目3に記載の電極バインダー組成物。
(項目5)
(i)の前記ポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体が、ポリ(ジエチレングリコールアジペート)を含み;(ii)の前記ジイソシアネートが、4,4’−メチレンビス−(フェニルイソシアネート)を含み;(iii)の前記鎖延長剤が、ブタンジオール、ベンゼングリコール、またはこれらの組み合わせを含む、項目3〜4のいずれか1項に記載の電極バインダー組成物。
(項目6)
可塑剤、潤滑剤、酸化防止剤、熱安定化剤、加水分解安定化剤、酸捕捉剤、鉱物および/もしくは不活性フィラー、ナノフィラー、またはこれらの任意の組み合わせを含む少なくとも1つのさらなる添加剤をさらに含む、項目1〜5のいずれか1項に記載の電極バインダー組成物。
(項目7)
電気化学セル用電極であって、(A)ポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物を含む電極バインダー組成物と、(B)電極活物質とを含み、
前記電極は、場合により、さらに導電剤を含む、電気化学セル用電極。
(項目8)
前記導電剤が、カーボンブラック、ニッケル粉末、またはこれらの組み合わせを含む、項目7に記載の電気化学セル用電極。
(項目9)
前記ポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物が、(i)少なくとも1つのポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体と、(ii)少なくとも1つのジイソシアネートおよび(iii)少なくとも1つの鎖延長剤とを反応させることによって作られ;
(i)の前記ポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体が、少なくとも1つのジアルキレングリコールおよび少なくとも1つのジカルボン酸、またはそのエステルもしくは酸無水物から誘導される中間体を含む、項目7〜8のいずれか1項に記載の電気化学セル用電極。
(項目10)
(ii)の前記ジイソシアネートが、4,4’−メチレンビス−(フェニルイソシアネート);ヘキサメチレンジイソシアネート;3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート;m−キシリレンジイソシアネート;フェニレン−1,4−ジイソシアネート;ナフタレン−1,5−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアネート;トルエンジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート;1,4−シクロヘキシルジイソシアネート;デカン−1,10−ジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート;またはこれらの組み合わせを含み;
(iii)の前記鎖延長剤が、ヒドロキノンビス(β−ヒドロキシエチル)エーテル;エチレングリコール;ジエチレングリコール;プロピレングリコール;ジプロピレングリコール;1,4−ブタンジオール;1,6−ヘキサンジオール;1,3−ブタンジオール;1,5−ペンタンジオール;ネオペンチルグリコール;またはこれらの組み合わせを含み、
前記ジカルボン酸が、4〜15個の炭素原子を含み、前記ジアルキレングリコールが、2〜8個の脂肪族炭素原子を含む、項目9に記載の電極。
(項目11)
(B)の前記電極活物質は、リチウム複合酸化物;元素の硫黄;溶解したLi(ここで、nは1より大きいか、または1に等しい)を含有するカソライト;有機硫黄;(C(ここで、xは2.5〜20であり、yは2より大きいか、または2に等しい);およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるカソード活物質である、項目7〜10のいずれか1項に記載の電極。
(項目12)
(B)の前記電極活物質が、グラファイト系材料;Al、Si、Sn、Ag、Bi、Mg、Zn、In、Ge、PbおよびTiのうちの少なくとも1つを含有する第1の化合物;前記第1の化合物と前記グラファイト系材料と炭素の複合材料;リチウム含有窒化物;およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるアノード活物質である、項目7〜10のいずれか1項に記載の電極。
(項目13)
前記電極活物質の量は、電極の合計重量に対し、80〜99重量%の範囲である、項目7〜12のいずれか1項に記載の電極。
(項目14)
前記電極がリチウム電池用のシート型電極である、項目7〜13のいずれか1項に記載の電極。
(項目15)
可塑剤、潤滑剤、酸化防止剤、熱安定化剤、加水分解安定化剤、酸捕捉剤、鉱物および/もしくは不活性フィラー、ナノフィラー、またはこれらの任意の組み合わせを含む少なくとも1つのさらなる添加剤をさらに含む、項目7〜14のいずれか1項に記載の電極。
(項目16)
少なくとも1つの電極を含み、前記電極が、(A)ポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物を含む電極バインダー組成物と、(B)電極活物質とを含み、前記電極は、場合により、さらに導電剤を含む、電気化学セル。
(項目17)
(I)前記正極と前記負極との間に配置され、(A)ポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物を含むセパレーター膜;
(II)前記正極と前記負極との間に配置され、(A)ポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物、(B)アルカリ金属塩;および(C)非プロトン性有機溶媒を含む、ポリマーゲル電解質;または
(III)(I)および(II)の両方をさらに含み、
前記ポリ(ジアルキレンエステル)熱可塑性ポリウレタン組成物が、(i)少なくとも1つのポリ(ジアルキレンエステル)ポリオール中間体と、(ii)少なくとも1つのジイソシアネートおよび(iii)少なくとも1つの鎖延長剤とを反応させることによって作られ;(i)の前記ポリエステルポリオール中間体が、少なくとも1つのジアルキレングリコールおよび少なくとも1つのジカルボン酸、またはそのエステルもしくは酸無水物から誘導される中間体;および(B)電気化学的に活性な電解種を含む、項目16に記載の電気化学セル。
(項目18)
可塑剤、潤滑剤、酸化防止剤、熱安定化剤、加水分解安定化剤、酸捕捉剤、鉱物および/もしくは不活性フィラー、ナノフィラー、またはこれらの任意の組み合わせを含む少なくとも1つのさらなる添加剤をさらに含む、項目16〜17のいずれか1項に記載の電気化学セル。