(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1接着層及び第2接着層の厚さは、前記非晶質リボンの厚さに対して50%以上大きく形成されることを特徴とする、請求項1に記載の無線充電器用磁場遮蔽シートの製造方法。
前記薄板磁性シートは、第1透磁率からなる第1磁性シートと、第1透磁率よりも低い第2透磁率の第2磁性シートとが接着層を介して積層されたハイブリッド磁性シートであることを特徴とする、請求項1に記載の無線充電器用磁場遮蔽シートの製造方法。
前記第1磁性シートは非晶質シートからなり、前記第2磁性シートはフェライトシートまたはポリマーシートからなることを特徴とする、請求項4に記載の無線充電器用磁場遮蔽シートの製造方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
上述した目的、特徴及び長所は、添付の図面を参照して詳細に後述されている詳細な説明を通じてより明確になり、それによって、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明の技術的思想を容易に実施できるであろう。
【0035】
また、本発明を説明するにあたって、本発明に関連する公知の技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を曖昧にすると判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0036】
添付した
図1は、本発明に係る無線充電器用磁場遮蔽シートを示す分解斜視図である。
図2は、第1実施例によって1枚のナノ結晶粒リボンシートを用いる例を示す断面図である。
【0037】
図1及び
図2を参照すると、本発明の好ましい第1実施例に係る無線充電器用磁場遮蔽シート10は、非晶質合金またはナノ結晶粒合金のリボンを熱処理した後、フレーク処理して多数の細片20に分離及び/またはクラックが形成された少なくとも1層以上の多層薄板磁性シート2と、前記薄板磁性シート2の上部に接着される保護フィルム1と、前記薄板磁性シート2の下部に接着される両面テープ3と、前記両面テープ3の下部に分離可能に接着されるリリースフィルム4とを含んでいる。
【0038】
前記薄板磁性シート2は、例えば、非晶質合金またはナノ結晶粒合金からなる薄板のリボンを用いることができる。
【0039】
前記非晶質合金は、Fe系またはCo系磁性合金を用いることができ、材料コストを考慮するとき、Fe系磁性合金を用いることが好ましい。
【0040】
Fe系磁性合金は、例えば、Fe−Si−B合金を用いることができ、Feが70〜90atomic%、Si及びBの合計が10〜30atomic%であることが好ましい。Feとその他の金属の含量が高いほど飽和磁束密度が高くなるが、Fe元素の含量が多すぎると、非晶質を形成しにくいため、本発明では、Feの含量が70〜90atomic%であることが好ましい。また、Si及びBの合計が10〜30atomic%の範囲であるときに合金の非晶質形成能が最も高い。このような基本組成に、腐食を防止するためにCr、Coなどの耐腐食性元素を20atomic%以内に添加してもよく、他の特性を付与するように、必要によって他の金属元素を少量含めることができる。
【0041】
前記Fe−Si−B合金は、例えば、結晶化温度が508℃であり、キュリー温度(Tc)が399℃であるものを用いることができる。しかし、このような結晶化温度は、Si及びBの含量や、3元系合金成分以外に添加される他の金属元素及びその含量によって変動することができる。
【0042】
本発明は、Fe系非晶質合金として、必要によって、Fe−Si−B−Co系合金を用いることができる。
【0043】
一方、前記薄板磁性シート2は、Fe系ナノ結晶粒磁性合金からなる薄板のリボンを用いることができる。
【0044】
Fe系ナノ結晶粒磁性合金は、次の数式1を満たす合金を用いることが好ましい。
【数1】
【0045】
上記数式1において、Aは、Cu及びAuから選ばれる少なくとも1種の元素を、Dは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Ni、Co及び希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素を、Eは、Mn、Al、Ga、Ge、In、Sn及び白金族元素から選ばれる少なくとも1種の元素を、Zは、C、N及びPから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、c、d、e、f、g及びhは、関係式0.01≦c≦8at%、0.01≦d≦10at%、0≦e≦10at%、10≦f≦25at%、3≦g≦12at%、15≦f+g+h≦35at%をそれぞれ満たす数であり、前記合金構造の面積比で20%以上が粒径50nm以下の微細構造からなっている。
【0046】
上記の数式1において、A元素は、合金の耐食性を高め、結晶粒子の粗大化を防止すると共に、鉄損や合金の透磁率などの磁気特性を改善するために使用される。A元素の含量が少なすぎると、結晶粒の粗大化抑制効果を得ることが困難である。反対に、A元素の含量が多すぎると、磁気特性が劣化する。したがって、A元素の含量は、0.01〜8at%の範囲にすることが好ましい。D元素は、結晶粒の直径の均一化及び磁気変形の低減などに有効な元素である。D元素の含量は、0.01〜10at%の範囲にすることが好ましい。
【0047】
E元素は、合金の軟磁気特性及び耐食性の改善に有効な元素である。E元素の含有量は、10at%以下にすることが好ましい。Si及びBは、磁性シートの製造時における合金のアモルファス化を助成する元素である。Siの含有量は10〜25at%の範囲にすることが好ましく、Bの含有量は3〜12at%の範囲にすることが好ましい。また、Si及びB以外の合金のアモルファス化助成元素として、Z元素を合金に含んでいてもよい。その場合、Si、B及びZ元素の総含有量は15〜35at%の範囲とすることが好ましい。微細結晶構造は、粒径が5〜30nmの結晶粒が合金構造中に面積比で50〜90%の範囲で存在する構造を実現するように形成されることが好ましい。
【0048】
また、前記薄板磁性シート2に用いられるFe系ナノ結晶粒磁性合金は、Fe−Si−B−Cu−Nb合金を用いることができ、この場合、Feが73〜80at%、SiとBの合計が15〜26at%、CuとNbの合計が1〜5at%であることが好ましい。このような組成範囲が、リボンの形状に作製された非晶質合金が後述する熱処理によりナノ相の結晶粒として容易に析出され得る。
【0049】
前記保護フィルム1は、
図4に示すように、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリフェニレンスルフィド(PPS)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなフッ素樹脂系フィルムなどの樹脂フィルム11を用いることができ、第1接着層12を介して薄板磁性シート2の一側面に付着される。
【0050】
また、保護フィルム1は、1〜100μm、好ましくは10〜30umの範囲のものを用いることができ、より好ましくは、20umの厚さを有することが良い。
【0051】
本発明に用いられる保護フィルム1は、非晶質リボンシート2の一側面に付着されるとき、第1接着層12の他面に第1接着層12を保護するために付着されたリリースフィルム4aは除去した上で付着される。
【0052】
また、両面テープ3は、
図5に示すように、例えば、PET(Polyethylene Terephthalate)フィルムのようなフッ素樹脂系フィルムを基材32として使用し、両側面に第2及び第3接着層31,33が形成されたものを用い、第2及び第3接着層31,33の外側面にはリリースフィルム4が付着されている。前記リリースフィルム4は、両面テープ3の製造時に一体に形成され、遮蔽シート10を電子機器に付着するときに剥離されて除去される。
【0053】
図3に示された多数の非晶質リボンシート21〜26を互いに接合させるために、非晶質リボンシート21〜26間に挿入される両面テープ3a〜3fは、両側面のリリースフィルム4,4bを全て除去した上で用いる。
【0054】
両面テープ3,3a〜3fは、上述したような基材があるタイプと、基材なしに接着層のみで形成される無基材タイプも適用可能である。非晶質リボンシート21〜26間に挿入される両面テープ3a〜3fの場合、無基材タイプを使用することが薄膜化の面で好ましい。
【0055】
前記第1〜第3接着層12,31,33は、例えば、アクリル系接着剤を用いることができ、他の種類の接着剤を用いることももちろん可能である。
【0056】
両面テープ3は、10,20,30umの厚さを有するものを用いることができ、好ましくは、10umの厚さを有することが良い。
【0057】
前記遮蔽シート10に用いられる薄板磁性シート2は、1枚当たり、例えば、15〜35umの厚さを有するものを用いることができる。この場合、薄板磁性シート2の熱処理後のハンドリング工程を考慮すると、薄板磁性シート2の厚さは25〜30umに設定されることが好ましい。リボンの厚さが薄いほど、熱処理後のハンドリング時に小さい衝撃にもリボンの割れ現象が生じ得る。
【0058】
一方、無線充電器の受信装置が携帯端末機器100のバッテリーカバー5に設置されて使用されるとき、無線充電器用磁場遮蔽シート10は、
図16及び
図17に示すように、2次コイル(受信コイル)6が遮蔽シート10に付着されて使用される。この場合、2次コイル6が共振回路を形成しているので、遮蔽シート10は、2次コイル(受信コイル)6が形成する共振回路のインダクタンスに影響を及ぼすようになる。
【0059】
この場合、磁場遮蔽シート10は、送信装置からの無線電力信号が携帯端末機器100に及ぼす影響を遮断する磁場遮蔽の役割と同時に、受信装置の2次コイル6に無線電力信号が高効率で受信されるように誘導するインダクタとしての役割を果たす。
【0060】
薄板磁性シート2は、フレーク処理により多数の細片20に分離され、多数の細片20は、数十um〜3mm以下の大きさを有することが好ましい。
【0061】
薄板磁性シート2は、フレーク処理が行われて多数の細片20に分離される場合、磁性シートのインダクタンス(L)値の減少よりも、磁気抵抗(R)の減少がさらに大きくなる。その結果、薄板磁性シート2のフレーク処理が行われると、受信装置の2次コイル6が形成する共振回路の品質係数(Q)が増加して、電力伝送効率が増加するようになる。
【0062】
また、薄板磁性シート2が多数の細片20に分離される場合、渦電流による損失を減少させることによって、バッテリーの発熱問題を遮断できるようになる。
【0063】
さらに、本発明では、薄板磁性シート2が、
図10に示すようにフレークされた後、
図13に示すようにラミネート処理されることによって、多数の細片20間の隙間20aに第1及び第2接着層12,31の一部が浸透して、多数の細片20が、誘電体の役割をする接着剤により分離(isolation)がなされるようになる。
【0064】
その結果、単純にフレーク処理のみが行われる場合、細片20の流動により細片20が互いに接触することによって細片20の大きさが増加して、渦電流損失が増加するという問題が発生することがあるが、ラミネーション処理により細片20の全面が誘電体で覆われるので、このような問題が遮断される。
【0065】
図2に示すように、本発明の第1実施例に係る無線充電器用磁場遮蔽シート10aは、薄板磁性シートとして1枚の非晶質リボンシート21を用い、一側面に保護フィルム1が接着され、他側面に両面テープ3を介してリリースフィルム4が接着される構造を有する。
【0066】
また、本発明の磁場遮蔽シートは、
図3に示した第2実施例のように、2次コイル6の品質係数(Q)と電力伝送効率を高めるために、薄板磁性シートとして多数の非晶質リボンシート21〜26を積層して用いることができる。
【0067】
無線充電器は、充電器の効率を最大限高めるために、電力伝送送信装置に受信装置との整合(align)を助ける永久磁石を採用することができる。すなわち、送信装置の1次コイル(送信コイル)の内部に円形の永久磁石を備えることによって、備えられた送信装置上に置かれる受信装置と正確な位置整列をなすようにし、受信装置を動かないように保持する。
【0068】
したがって、無線充電器用磁場遮蔽シートは、送信装置から100〜150kHzの周波数の電力伝送により生成される交流(AC)磁場だけでなく、前記永久磁石による直流(DC)磁場も全て遮蔽することが要求される。
【0069】
ところが、前記直流(DC)磁場は、交流(AC)磁場が磁場遮蔽シート10に及ぼす影響よりさらに大きいため、薄い遮蔽シートを磁気飽和させて遮蔽シートとしての性能を低下させたり、または電力伝送効率が急激に低下したりする問題が発生する。
【0070】
これによって、無線充電器の送信装置に永久磁石を採用した場合には、永久磁石によって磁気飽和がなされる層数を考慮して、積層される非晶質リボンシート21〜26を決定することが要求される。
【0071】
また、Fe系非晶質合金は、ナノ結晶粒合金よりも飽和磁場が大きい。これによって、Fe系非晶質合金からなる非晶質リボンシート21〜26を使用する場合、2〜8層を積層して使用することができ、例えば、3〜5層を使用することが、高い透磁率が得られるので好ましい。この場合、積層シートのインダクタンス(即ち、透磁率)は、約13〜19uHであることが好ましい。
【0072】
また、ナノ結晶粒合金からなる非晶質リボンシート21〜26を使用する場合、4〜12層を積層して使用することができ、例えば、7〜9層を使用することが、高い透磁率が得られるので好ましい。この場合、積層シートのインダクタンス(即ち、透磁率)は約13〜21uHであることが好ましい。
【0073】
一方、無線充電器の送信装置に永久磁石を採用していない場合には、永久磁石を採用した場合と比較して相対的に少ない数の非晶質リボンシートを使用することも可能である。
【0074】
この場合、Fe系非晶質合金またはナノ結晶粒合金からなる非晶質リボンシートを使用する場合、1〜4層を積層して使用することができ、積層シートのインダクタンス(即ち、透磁率)は約13〜21uHであることが好ましい。
【0075】
図3を参照すると、薄板磁性シートとして、多数、例えば、6層の非晶質リボンシート21〜26を積層して使用する場合を示したもので、多数の非晶質リボンシート21〜26の間に多数の接着層または両面テープ3a〜3fが挿入されている。
【0076】
すなわち、フレーク及びラミネート処理時に分離された細片20が分離された位置を維持し、細片20間の隙間20aに充填されるように、接着層または両面テープ3a〜3fを非晶質リボンシート21〜26の間に挿入して積層することが必要である。
【0077】
本発明に係る磁場遮蔽シート10〜10bは、一般に、バッテリーセルに対応する長方形または正方形の四角形状からなるが、その他にも、五角形などの多角形または円形や楕円、そして部分的に長方形状と円形が組み合わされた形状からなることができ、好ましくは、磁場遮蔽が要求される部位の形状によって、それに対応する形状を有する。
【0078】
また、本発明に係る磁場遮蔽シートは、無線充電器が送信装置の1次コイルの中央部に永久磁石を含む場合、永久磁石の磁場によって遮蔽シートが着磁(飽和)される現象を防止するために、
図6に示された第3実施例の磁場遮蔽シート10cのように、受信装置の2次コイルと対応する環状に成形することができる。
【0079】
第3実施例の磁場遮蔽シート10cは、2次コイルが四角形、円形、楕円形のいずれか一つの形状からなるとき、これに対応して四角形、円形、楕円形のいずれか一つの形状からなる。この場合、磁場遮蔽シート10cは、2次コイル6の幅よりも約1〜2mmさらに広い幅からなることが好ましい。
【0080】
第3実施例の磁場遮蔽シート10cは、上部面に環状の保護フィルム1が付着された環状の薄板磁性シート2bが、環状の両面テープ30を介してリリースフィルム4に付着された構造を有することができる。
【0081】
前記環状の磁場遮蔽シート10cは、リリースフィルム4から容易に剥離できるように、磁場遮蔽シート10cよりも大きい面積を有する四角形状のリリースフィルム4を使用することが好ましい。
【0082】
以下、本発明に係る磁場遮蔽シートの製造方法を、
図7を参照して説明する。
【0083】
まず、非晶質合金またはナノ結晶粒合金からなる非晶質リボン2aをメルトスピニングによる急冷凝固法(RSP)で製造した後(S11)、熱処理後の後処理を容易にすることができるように、まず、一定の長さにカッティングして、シート状に積層する(S12)。
【0084】
非晶質リボン2aが非晶質合金である場合、Fe系非晶質リボン、例えば、Fe−Si−BまたはFe−Si−B−Co合金からなる30um以下の極薄型の非晶質リボンをメルトスピニングによる急冷凝固法(RSP)で製造し、所望の透磁率を得ることができるように積層された非晶質リボンを、300℃〜600℃の温度範囲で30分〜2時間の無磁場熱処理を行う(S13)。
【0085】
この場合、熱処理雰囲気は、非晶質リボン2aのFe含量が高くても、酸化が発生しない温度範囲でなされるので、雰囲気炉で行われる必要はなく、大気中で熱処理を進行しても関係ない。また、酸化雰囲気または窒素雰囲気で熱処理が行われても、同一の温度条件であれば、非晶質リボンの透磁率は実質的に差がない。
【0086】
上記の熱処理温度が300℃未満である場合、所望の透磁率よりも高い透磁率が得られ、長い熱処理時間を必要とするという問題があり、600℃を超える場合、過熱処理によって透磁率が著しく低くなるため、所望の透磁率を得ることができないという問題がある。一般に、熱処理温度が低いと、長い処理時間を必要とし、逆に熱処理温度が高いと、処理時間は短縮される。
【0087】
また、非晶質リボン2aがナノ結晶粒合金からなる場合、Fe系非晶質リボン、例えば、Fe−Si−B−Cu−Nb合金からなる30um以下の極薄型の非晶質リボンをメルトスピニングによる急冷凝固法(RSP)で製造し、所望の透磁率を得ることができるように積層されたリボンシートを、400℃〜700℃の温度範囲で30分〜2時間の無磁場熱処理を行うことによって、ナノ結晶粒が形成されたナノ結晶粒リボンシートを形成する(S13)。
【0088】
この場合、熱処理雰囲気は、Feの含量が70at%以上であるので、大気中で熱処理が行われると、酸化が発生して視覚的な面で好ましくない。したがって、窒素雰囲気で行うことが好ましい。しかし、酸化雰囲気で熱処理が行われても、同一の温度条件であれば、シートの透磁率は実質的に差がない。
【0089】
この場合、熱処理温度が400℃未満である場合、ナノ結晶粒が十分に生成されないため、所望の透磁率を得ることができず、長い熱処理時間を必要とするという問題があり、700℃を超える場合、過熱処理によって透磁率が著しく低くなるという問題がある。熱処理温度が低いと、長い処理時間を必要とし、逆に熱処理温度が高いと、処理時間は短縮される。
【0090】
また、本発明の非晶質リボン2aは、厚さが15〜35umの範囲を有するものを使用し、非晶質リボン2aの透磁率は、リボンの厚さに比例して増加する。
【0091】
さらに、前記非晶質リボンは、熱処理が行われると脆性が強くなり、後続工程でフレーク処理を実施するときに容易にフレークが行われるようになる。
【0092】
次に、熱処理が行われた非晶質リボン2aを1枚または所望の層数の多層として使用して、一側に保護フィルム1を付着し、他側にリリースフィルム4が付着された両面テープ3を付着した状態でフレーク処理を実施する(S14)。
【0093】
前記フレーク処理は、例えば、保護フィルム1、非晶質リボン2a、両面テープ3及びリリースフィルム4が順次積層された積層シート100を、第1及び第2フレーク装置110,120を通過させることによって、非晶質リボン2aを多数の細片20に分離させる。この場合、分離された多数の細片20は、両側面に接着された第1及び第2接着層12,31によって分離された状態を維持するようになる。
【0094】
使用可能な第1フレーク装置110は、例えば、
図8に示すように、外面に複数の凹凸116が形成された金属ローラ112と、金属ローラ112と対向して配置されたゴムローラ114とで構成されてもよく、第2フレーク装置120は、
図9に示すように、外面に複数の球状のボール126が装着された金属ローラ122と、金属ローラ122と対向して配置されるゴムローラ124とで構成されてもよい。
【0095】
このように、積層シート100を第1及び第2フレーク装置110,120を通過させると、
図10に示すように、非晶質リボン2aが多数の細片20に分離されながら、細片20の間には隙間20aが発生する。
【0096】
非晶質リボン2aの多数の細片20は、数十um〜3mmの範囲の大きさを有するように形成されるので、反磁場を増加させてヒステリシスロスを除去することによって、シートに対する透磁率の均一性を高めるようになる。
【0097】
また、非晶質リボン2aは、フレーク処理により細片20の表面積を減少させることによって、交流磁場によって生成される渦電流(Eddy Current)に起因する発熱問題を遮断することができる。
【0098】
フレーク処理された積層シート200は、細片20の間に隙間20aが存在するようになり、この隙間20aに水分が浸透すると、非晶質リボンが酸化して非晶質リボンの外観が悪くなり、遮蔽性能が低下する。
【0099】
また、フレーク処理のみ行われる場合、細片20の流動によって細片20が互いに接触することによって、細片20の大きさが増加して渦電流損失が増加するという問題が生じ得る。
【0100】
さらに、前記フレーク処理された積層シート200は、フレーク処理時にシートの表面不均一が発生することがあり、フレーク処理されたリボンの安定化が必要である。
【0101】
したがって、フレーク処理された積層シート200は、細片20の間の隙間20aに接着剤を充填すると同時に、平坦化、スリム化及び安定化のためのラミネート工程を実施する(S15)。その結果、水分の浸透を防止すると共に、細片20の全ての面を接着剤で覆うことによって、細片20を互いに分離させて渦電流の低減を図ることができる。
【0102】
前記ラミネート工程のためのラミネート装置400,500は、
図11に示すように、フレーク処理された積層シート200が通過する第1加圧ローラ210と、第1加圧ローラ210と一定間隔を置いて配置される第2加圧ローラ220とで構成されるロールプレスタイプが適用されてもよく、
図12に示すように、下部加圧部材240と、下部加圧部材240の上側に垂直方向に移動可能に配置される上部加圧部材250とで構成される油圧プレスタイプが使用されてもよい。
【0103】
フレーク処理された積層シート200を、常温または50〜80℃の温度で熱を加えた後、ラミネート装置400,500を通過させると、保護フィルム1の第1接着層12が加圧されながら、第1接着層12の一部の接着剤が隙間20aに流入すると共に、両面テープ30が加圧されながら、第2接着層31の一部の接着剤が隙間20aに流入して隙間20aを密封するようになる。
【0104】
ここで、第1接着層12及び第2接着層31は、常温で加圧すると変形可能な接着剤を使用するか、または熱を加えると変形する熱可塑性接着剤を使用してもよい。
【0105】
そして、第1接着層12及び第2接着層31の厚さは、多数の細片の間の隙間20aを十分に充填することができるように、非晶質リボンの厚さに対して50%以上の厚さを有することが好ましい。
【0106】
また、第1接着層12及び第2接着層31の接着剤が隙間20aに流入することができるように、第1加圧ローラ210と第2加圧ローラ220との間隔、及び上部加圧部材が下降した状態での上部加圧部材250と下部加圧部材240との間隔は、積層シート200の厚さの50%以下に形成することが好ましい。
【0107】
本発明では、積層シート100,200の圧着及びフレーク処理を行うことができるものであれば、いかなる装置を使用してもよい。
【0108】
前記ラミネート工程が完了すると、本発明に係る電磁波吸収シート10は、
図13に示すように、非晶質リボン2aが多数の細片20に分離された状態で、第1接着層12及び第2接着層31がそれぞれ部分的に細片20間の隙間20aを充填することで、非晶質リボン2aの酸化及び流動を防止する構造を有するようになる。
【0109】
最後に、前記ラミネートが行われた磁場遮蔽シート10は、電子機器に使用される場所及び用途に応じて、必要な大きさ及び形状にスタンピング加工されて製品化される。(S16)。
【0110】
本発明では、
図3に示すように、薄膜磁性シートとして6枚の非晶質リボンシート21〜26を積層する場合、ラミネートが行われる前に保護フィルム1及びリリースフィルム4を含めて212umの厚さを有し、ラミネートが行われると200umにスリム化される。
【0111】
上記実施例では、1個の保護フィルム1を磁性シート2の一側に付着してフレーク及びラミネート処理することを例示したが、フレーク処理工程を経ると、保護フィルム1の損傷が発生することがある。したがって、好ましくは、保護フィルム1の上部に保護フィルム1を保護するための他の保護フィルムを付着して処理工程を進行した後、処理が完了した後に表面の保護フィルムを剥離して除去することが良い。
【0112】
(湿度テスト)
上記で得られた本発明に係る磁場遮蔽シート10、及びフレーク処理後にラミネート工程を経ていない積層シート200に対して、温度85℃、湿度85%で120時間湿度テストを進行した。
【0113】
その結果、フレーク処理のみ行った積層シート200の場合、
図14Aに示すように、非晶質リボンが多数の細片に分離された状態の時に細片の間の隙間に水分が浸透して、非晶質リボンが酸化して外観が変化したことがわかる。本発明に係る磁場遮蔽シート10は、
図14に示すように、外観が変化していないことがわかる。
【0114】
本発明に係る磁場遮蔽シートは、薄膜磁性シートとして、
図15A及び
図15Bに示した異種材料を使用して構成することができる。
【0115】
図15Aに示すように、薄膜磁性シート35は、高透磁率の第1磁性シート35aと、前記第1磁性シートよりも透磁率が低い低透磁率の第2磁性シート35bとの間に接着層35cを挿入して組み合わせたハイブリッド形態で構成することができる。
【0116】
前記第1磁性シート35aには、上記の非晶質合金またはナノ結晶粒合金からなる非晶質リボンシート、軟磁性特性に優れたパーマロイ(permalloy)シートまたはMPP(Moly Permalloy Powder)シートなどを適用することができる。
【0117】
第2磁性シート35bは、非晶質合金粉末、軟磁性体粉末、センダストのような高透磁率の磁性粉末と樹脂からなるポリマーシートを使用することができる。
【0118】
この場合、非晶質合金粉末は、例えば、Fe−Si−B、Fe−Si−B−Cu−Nb、Fe−Zr−B及びCo−Fe−Si−Bからなる群から選ばれる組成を有し、非晶質である合金を1種以上含む非晶質合金粉末を使用することが好ましい。
【0119】
また、携帯端末機にNFCと無線充電機能を同時に採用する場合、ハイブリッド型薄膜磁性シート35は、第1及び第2磁性シート35bとして、非晶質リボンシートと周波数依存度の低いフェライトシートとをラミネート積層して使用することによって、NFC用磁場遮蔽にはフェライトシートを使用し、無線充電器用には非晶質リボンシートを使用して同時に解決可能である。
【0120】
さらに、携帯端末機にNFCと無線充電機能を同時に採用する場合、ハイブリッド型薄膜磁性シート35は、
図15Bに示すように、第1磁性シート35aとして、中央部に一定面積の非晶質リボンシートを使用し、前記第1磁性シート35aの外部に第1磁性シート35aを全体的に取り囲むフェライトループからなる環状の第2磁性シート35bを組み合わせることも可能である。すなわち、非晶質シートに比べて相対的に透磁率の小さいフェライトをループ形状に形成して非晶質シートの外郭に配置する。
【0121】
一方、上記の本発明に係る磁場遮蔽シートが無線充電器の受信装置に適用された構造を、
図16及び
図17を参照して後述する。
【0122】
図16は、本発明に係る磁場遮蔽シートが無線充電器の受信装置に適用された構造を示す分解斜視図である。
図17は、
図16の無線充電器用受信装置がバッテリーカバーに組み立てられて携帯端末機器に結合されることを示す分解斜視図である。
【0123】
図16を参照すると、本発明に係る磁場遮蔽シートが無線充電器の受信装置に適用されるとき、磁場遮蔽シート10の保護フィルムの上部には、両面テープ30bを用いて無線充電器の受信側2次コイル6が付着され、磁場遮蔽シート10の下部には、リリースフィルム4を除去して露出された両面テープの接着層33に仕上げ材を付着させる。
【0124】
また、前記アンテナ組立方法の代わりに、磁場遮蔽シート10のリリースフィルム4を除去し、両面テープ3に無線充電器の2次コイル6を付着することも可能である。
【0125】
前記2次コイル6と磁場遮蔽シート10との組立体は、
図17に示すように、携帯端末機器100のバッテリーカバー5に両面テープ30aを用いて付着した後、バッテリーカバー5が携帯端末機器100に結合されると、磁場遮蔽シート10はバッテリー7をカバーする形態で使用される。
【0126】
前記磁場遮蔽シート10の組立位置は、バッテリーの外部に配置されること以外に、周知の他の方法で配置されることも勿論可能である。
【0127】
前記2次コイル6は、周知のいかなる構造を有するものも使用可能である。例えば、2次コイル6は、
図16に示したように、ポリイミド(PI)のような合成樹脂からなる基板6bに四角形、円形、楕円形のいずれか一つの形状からなるスパイラルコイル6aで構成されてもよい。
【0128】
前記2次コイル6は、合成樹脂基板6bと両面テープ30bの代わりに、絶縁層の役割を果たす一つの接着シート、例えば、両面テープに直接スパイラルコイル6aを転写方式で形成することによって、薄膜構造で組み立てることができる。
【0129】
この場合、スパイラルコイル6aは、無線で電力を受信するものであるので、一般のコイルを平面インダクタの形態で巻線して基板に付着させて使用することも可能である。
【0130】
一方、携帯端末機器100には、本体の内部に、2次コイル6のスパイラルコイル6aから発生した交流電圧を直流に整流する整流器(図示せず)を含み、整流された直流電圧はバッテリー(二次電池)7に充電される。
【0131】
上記のように、2次コイル6と磁場遮蔽シート10との組立体を携帯端末機器100のバッテリーカバー5に備えられる場合、携帯端末機器に無線充電機能を非接触(無線)方式で実現するときに発生する交流磁場によって携帯端末機器100に及ぼす影響を遮断し、無線充電機能を行うのに必要な電磁波を吸収できるようになる。
【0132】
すなわち、本発明の磁場遮蔽シート10は、フレーク処理されて多数の細片20に分離された多層の磁性シート2を備えることによって、Q値が上昇して電力伝送効率が増加し、同時にフレーク処理によりリボンの表面積を減少させることによって、交流磁場によって生成される渦電流(Eddy Current)に起因する発熱問題を遮断することができる。
【0133】
その結果、送信装置の1次コイルから発生した磁束が、携帯端末機の回路基板及びバッテリー(二次電池)7などに鎖交することを遮断して、発熱を抑制する。
【0134】
一方、
図18は、NFC(Near field communications)アンテナと無線充電器用アンテナとがFPCBを使用して一体に形成されたデュアルアンテナ構造を示す平面図である。
【0135】
NFCと無線充電機能を同時に行うためのデュアルアンテナ40は、両面基板構造を有するFPCBを使用して実現されることが好ましい。しかし、本発明のデュアルアンテナは、これに制限されず、他の形態の構造を有してもよい。
【0136】
図18を参照すると、デュアルアンテナ40は、例えば、基板49上にNFCアンテナコイル41と無線充電器用アンテナコイル43とが共に形成されている。前記基板49は、例えば、両面接着テープを使用することができ、NFCアンテナコイル41及び無線充電器用アンテナコイル43は、転写方式を用いて基板49に形成される。
【0137】
NFCアンテナコイル41は、無線充電器用アンテナコイル43よりも周波数帯域が高いので、基板49の外郭に沿って微細な線幅の長方形状に導電性パターンで形成されており、無線充電器用アンテナコイル43は、電力伝送が要求され、NFCよりも低い周波数帯域を使用するので、NFCアンテナコイル41の内側にNFCアンテナコイル41の線幅よりも広い線幅からなり、略楕円形状の導電性パターンで形成されている。
【0138】
前記デュアルアンテナ40は、NFCアンテナコイル41及び無線充電器用アンテナコイル43の一側に延設された基板49の突出部に、それぞれ一対のターミナル端子(41a,41b)(43a,43b)が配置されている。
【0139】
前記NFCアンテナコイル41の外側ラインは、第1ターミナル端子41aに直接接続され、内側ラインは、導電性スルーホール45a,45bを介して基板49の背面に形成された端子連結用パターン(図示せず)を介して第2ターミナル端子41bに接続される。
【0140】
同様に、無線充電器用アンテナコイル43の外側ラインは、導電性スルーホール47a,47bを介して基板49の背面に形成された端子連結用パターン(図示せず)を介して第3ターミナル端子43aに接続され、内側ラインは、導電性スルーホール47c,47dを介して基板49の背面に形成された端子連結用パターン(図示せず)を介して第4ターミナル端子43bに接続される。
【0141】
前記基板49は、表面に、例えば、PSR(Photo Solder Resist)のようなアンテナコイルパターンを保護するための保護膜が形成されることが好ましい。
【0142】
NFC及び無線充電機能を同時に採用する場合、上述したように、
図15A及び
図15Bのハイブリッド型磁性シートを採用した遮蔽シートを使用することができる。
【0143】
以下では、本発明を実施例に従ってより具体的に説明する。しかし、下記の実施例は、本発明の例示に過ぎず、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0144】
(実施例1〜4、比較例1〜3)
(磁場遮蔽シートの電気的特性)
磁場遮蔽シートを使用していない場合(比較例1)、熱処理していない1枚の非晶質リボンシートを使用した磁場遮蔽シート(比較例2)、熱処理された1枚のナノ結晶粒リボンシートを使用した磁場遮蔽シート(比較例3)、熱処理された1枚のナノ結晶粒リボンシートを使用し、フレーク処理した磁場遮蔽シート(実施例1)、熱処理された2枚のナノ結晶粒リボンシートを使用し、フレーク処理した磁場遮蔽シート(実施例2)、熱処理された3枚のナノ結晶粒リボンシートを使用し、フレーク処理した磁場遮蔽シート(実施例3)、熱処理された4枚のナノ結晶粒リボンシートを使用し、フレーク処理した磁場遮蔽シート(実施例4)をそれぞれ製造した。
【0145】
遮蔽シートに適用された非晶質リボンは、Fe
73.5Cu
1Nb
3Si
13.5B
9合金からなる非晶質リボンを、メルトスピニングによる急冷凝固法(RSP)で25umの厚さに製造した後、シート状にカッティングして、580℃、N
2雰囲気、1時間無磁場熱処理して得られた非晶質リボンシートを、PET基材を使用する10umの厚さの保護フィルムとPET基材を使用する10umの厚さの両面テープ(リリースフィルム別途)との間に挿入して積層シートを準備し、
図8のフレーク処理装置及び
図11のラミネート装置を用いて、フレーク及びラミネート処理を実施した。2枚以上のナノ結晶粒リボンシートを積層するときにシートの間に挿入された両面テープは、PETフィルムの両面にアクリル系接着剤層が形成されたもので、12umの厚さを有するものを使用した。
【0146】
作製された遮蔽シートを無線充電器に使用するときに2次コイルに及ぼす影響を確認するために、遮蔽シートに結合された2次コイル、すなわち、測定コイルとして、12.2uHのインダクタンスと237mΩの抵抗を有する円形の平面コイルを使用した。LCRメータに測定コイルを連結した後、遮蔽シート上に位置させ、約500gの重量を有する直六面体を測定コイル上に載置して一定の圧力を加えた状態で、LCRメータのセッティング値を100kHz、1Vに設定した後、インダクタンス(Ls)、磁気抵抗(Rs)、インピーダンス(Z)、コイルの品質係数(Q)を測定して、下記表1に示す。
【表1】
【0147】
上記表1からわかるように、熱処理していないリボンを使用した遮蔽シート(比較例2)の場合、透磁率が低いため、2次コイルのインダクタンス(Ls)値は小さく、リボンの電気抵抗が低いため、磁気抵抗(Rs)値は大きく、よって、コイルの品質係数であるQ値が著しく低いことが確認できた。
【0148】
熱処理されたリボンシートを使用した遮蔽シート(比較例3)の場合、透磁率が高くなって2次コイルのインダクタンス(Ls)値は大きくなり、熱処理によりリボンシートに生成されたナノ結晶粒微細組織を通じてリボンシートの電気抵抗が大きくなって磁気抵抗(Rs)値が熱処理前に比べて大きく低下した。それによって、コイルの品質係数(Q)値が熱処理前に比べて大きく上昇したことが確認できた。
【0149】
また、熱処理されたリボンシートを使用すると同時に、リボンシートをフレーク(Flake)した遮蔽シート(実施例1)の場合、2次コイルのインダクタンス(Ls)値は大きく変化せず、磁気抵抗(Rs)値はフレーク処理しなかったときよりも非常に低かった。よって、全体的なコイルのQ値はさらに上昇したことがわかる。
【0150】
さらに、実施例1と比較してリボンシートの積層数を高くすればするほど、コイルの品質係数(Q)値は大きく上昇することが確認できた。
【0151】
上記のように、本発明に係る遮蔽シートを無線充電器に使用すれば、2次コイルのインダクタンス(Ls)とQ値が高くなり、磁気抵抗(Rs)値は減少することによって、無線充電器の2次コイルに対する送信装置から伝送された磁束の伝送効率の増大を図ることができる。
【0152】
(実施例5〜8、比較例1)
(磁場遮蔽シートの電力伝送効率)
実施例5〜7の磁場遮蔽シートは、実施例1〜4と同様の方法で四角形状に製造された。ただ、シートに積層されるナノ結晶粒リボンシートの数が6枚、9枚、12枚に変更され、実施例8の磁場遮蔽シートは、実施例6の磁場遮蔽シート(ナノ結晶粒リボンシートの数:6枚)の形状を2次コイルの形状と同じ環状に加工した点で差がある。
【0153】
比較例1(磁場遮蔽シートを使用していない場合)、実施例5〜8の磁場遮蔽シートに対して、それぞれ、
図19に示すように、無線充電器の送信装置8の上部に0.5mmの厚さの間紙9を置き、リチウムイオンバッテリー7に磁場遮蔽シート10と2次コイル6とが組み立てられた受信装置を載置した状態で、送信装置(Tx)8の1次コイルに印加される電圧(V)と電流(mA)、受信装置(Rx)の2次コイル6に受信される電圧(Vと)電流(mA)を測定して、下記表2に記載し、これに基づいて電力伝送効率を計算した。
【表2】
【0154】
従来は、無線充電器の送信装置に永久磁石が入っている場合、永久磁石によるDC磁場のため、フェライトシートを使用する遮蔽シートの厚さは、0.5T以上にならないと、遮蔽シートとして最適の無線充電動作が不可能である。
【0155】
上記表2を参照すると、実施例5〜7のように、遮蔽シート、すなわち、ナノ結晶粒リボンシートの形状が四角形である場合、いかなる遮蔽シートも使用していない比較例1の受信装置とほぼ同一の電力伝送効率を有するためには、約12枚のナノ結晶粒リボンシートを積層しなければならないことがわかる。
【0156】
また、本発明の実施例7のように、12枚のナノ結晶粒リボンシートを使用する場合、磁気透磁率が高いので、従来のフェライトシートを使用する遮蔽シートであるときの0.5Tよりも低い0.3T以内でも、フェライトやポリマーシートと同等の特性を示す。
【0157】
さらに、実施例8のように、磁場遮蔽シート(ナノ結晶粒リボンシートの数:6枚)の形状を2次コイルの形状と同じ環状に作製した場合、使用されるナノ結晶粒リボンシートの数が実施例7(ナノ結晶粒リボンシートの数:12枚)の1/2であるにもかかわらず、実施例7とほぼ同一の電力伝送効率を示すことがわかる。
【0158】
その結果、実施例8のように、磁場遮蔽シートの形状を2次コイルの形状と同じ環状に作製した場合、使用されるナノ結晶粒リボンシートの数を1/2に減少させることができるので、製造原価を低くし、製品の厚さをさらにスリム化することが可能になる。
【0159】
このような結果は、受信装置の2次コイルの形状とこれに対応して磁場遮蔽シートの形状を他の形状に変更しても、ほぼ同一の結果を示している。
【0160】
(温度特性)
前記実施例8に係る磁場遮蔽シートを
図19のように設定し、充電時間を30分から4時間30分まで30分単位として、バッテリーと磁場遮蔽シートのナノ結晶粒リボンシートに対する温度を測定し、その結果を下記の表3に示す。
【表3】
【0161】
一般に、無線充電が行われるとき、リチウムイオンバッテリー7のような二次電池は、40℃以上を超えると安全性に問題が生じ得る。
【0162】
本発明の遮蔽シートを無線充電器に適用する場合、上記表3に記載されたように、バッテリー及び遮蔽シートの温度は、時間が経過しても上昇せず、30℃前後を維持しているので、安全性を確保していることがわかる。
【0163】
(実施例9)
Fe
67B
14Si
1Co
18合金からなる非晶質リボンを、メルトスピニングによる急冷凝固法(RSP)で25umの厚さに製造した後、シート状にカッティングして、それぞれ487℃、459℃、450℃で1時間無磁場熱処理して得られた非晶質リボンシートを得た。その後、熱処理して得られた非晶質リボンシートを、PET基材を使用する10umの厚さの保護フィルムとPET基材を使用する10umの厚さの両面テープ(リリースフィルム別途)との間に挿入して積層シートを準備し、
図8のフレーク処理装置と
図11のラミネート装置を使用して、フレーク及びラミネート処理を実施した。
【0164】
このとき、積層シートに使用された非晶質リボンシートの数を熱処理温度別にそれぞれ1枚〜9枚使用し、非晶質リボンシートの間には両面テープを挿入し、各非晶質リボンシートの熱処理温度別にインダクタンス(透磁率)と充電効率を測定して、下記の表4に示す。
【表4】
【0165】
非晶質リボンシートを、それぞれ487℃、459℃、450℃で1時間無磁場熱処理した結果、各シートのインダクタンス(透磁率)は13uH、15uH、18uHで、熱処理温度の増加によって減少する結果が得られた。
【0166】
各シートのインダクタンス別充電効率は、459℃で熱処理した、インダクタンス(透磁率)が15uHである場合が最も高く、積層される非晶質リボンシートの数が1枚から8枚までに増加するに伴って、充電効率もそれに比例して増加する傾向を示し、約4枚を積層すると飽和される現象を示し、8枚を超えると充電効率は減少する傾向を示した。
【0167】
(実施例10)
前記インダクタンス(透磁率)が15uHである非晶質リボンシートを用いて積層されるシートの層数別最大充電効率を測定し、その結果を下記の表5に示す。
【0168】
前記最大充電効率は、無線充電器の受信装置、すなわち、2次コイルのインダクタンス値を基準に受信装置の時定数を調整して、効率を最大値に調整した状態で得られた値である。
【表5】
【0169】
表5を参照すると、積層される非晶質リボンシートの数によって効率が増加し、4枚のとき、最大充電効率は71.9%に最も高かった。
【0170】
上記のように、本発明では、非晶質リボンのフレーク処理により渦電流(Eddy Current)による損失を大きく減少させることによって、携帯端末機器などの本体及びバッテリーに及ぼす磁場の影響を遮断すると同時に、2次コイルの品質係数(Q)を増加させて、電力伝送効率に優れる。
【0171】
また、本発明では、非晶質リボンのフレーク処理後、圧着ラミネート処理により非晶質リボンの細片間の隙間に接着剤を充填して水分の浸透を防止すると同時に、細片の全ての面を接着剤(誘電体)で覆うことによって、細片を相互絶縁(isolation)させて渦電流の低減を図ることで、遮蔽性能が低下することを防止することができる。
【0172】
さらに、本発明では、遮蔽シートの形状を受信機コイルと類似の形状に設定することによって、少ない数のナノ結晶粒リボンを使用しながらも、高い電力伝送効率を有するか、または同等の電力伝送効率を有しながら、シートの厚さを0.3mm以下に減少させることができる。
【0173】
また、本発明では、ロールツーロール方法でフレーク及びラミネート処理を順次行うことによってシートの成形がなされるので、シートの元の厚さを維持しながら、生産性が高く、製造コストが安い。
【0174】
上記の実施例の説明では、携帯端末機器に無線充電器が適用されたことを例示したが、これと同様に非接触(無線)方式で無線充電機能を提供する全てのポータブル電子機器に本発明を適用することができる。
【0175】
以上では、本発明を特定の好ましい実施例を例に挙げて図示し説明したが、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の精神を逸脱しない範囲内で、当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって様々な変更及び修正が可能であろう。