特許第6283623号(P6283623)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283623
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】機械グリッパ駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20180208BHJP
【FI】
   B25J15/08 C
   B25J15/08 K
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-94800(P2015-94800)
(22)【出願日】2015年5月7日
(65)【公開番号】特開2016-182664(P2016-182664A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2015年5月8日
(31)【優先権主張番号】104109527
(32)【優先日】2015年3月25日
(33)【優先権主張国】TW
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】596016557
【氏名又は名称】上銀科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】劉憲正
【審査官】 臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭48−017864(JP,U)
【文献】 特表平06−511435(JP,A)
【文献】 特開2005−161454(JP,A)
【文献】 特開2009−125851(JP,A)
【文献】 特開昭60−056887(JP,A)
【文献】 特開平04−135192(JP,A)
【文献】 実開昭59−176778(JP,U)
【文献】 特開昭60−238293(JP,A)
【文献】 特開2009−107079(JP,A)
【文献】 米国特許第04728137(US,A)
【文献】 米国特許第05938257(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/00−15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一プレート、ボルト、第二プレート、板状駆動部、少なくとも3つの連結機構、複数の板状連結部および複数の線形移動モジュールを備え、
前記ボルトは、第一部位および第二部位を有し、前記第一部位は前記第一プレートに接続され、
前記第二プレートは、前記ボルトの前記第二部位に接続され、複数のスロットを有し、
前記板状駆動部は、ナットを有し、前記ナットは前記ボルトに被さることで前記ボルトの回転に伴って移動し、
前記連結機構は、第一連結棒および第二連結棒を有し、前記第一連結棒は両端によって第一軸線および第二軸線を定義し、前記第一連結棒は前記第一軸線によって前記第二プレートに接続され、前記第二連結棒は第三軸線、第四軸線および第五軸線を定義し、前記第二連結棒は前記第三軸線によって前記板状駆動部に接続され、前記第二連結棒の前記第四軸線は前記第一連結棒の前記第二軸線に接続され、
前記板状連結部は、前記第二連結棒の前記第五軸線に接続され、前記第二プレートの前記スロットを貫通し、
前記線形移動モジュールは、レールおよびスライド部を有し、前記レールは前記ボルトの径方向に沿って前記第二プレートに分布し、前記スライド部は前記レールの制御を受けて前記レールに沿って移動し、かつ前記板状連結部に接続され、
グリッパは、前記スライド部に装着され、前記スライド部の移動に伴って移動することを特徴とする、
機械グリッパ駆動装置。
【請求項2】
前記第一軸線、前記第二軸線および前記第三軸線は第一角度を構成し、前記第一軸線、前記第二軸線および前記第五軸線は第二角度を構成し、前記第一軸線と前記第二軸線との間に第一距離を置き、前記第三軸線と前記第四軸線との間に第二距離を置き、前記第四軸線と前記第五軸線との間に第三距離を置き、前記第一距離、前記第二距離および前記第三距離は同等であることを特徴とする請求項1に記載の機械グリッパ駆動装置。
【請求項3】
前記第一角度が前記第二角度より小さい場合、前記ボルトの軸方向に沿って前記第三軸線を移動させる平均速度が前記ボルトの径方向に沿って前記第五軸線を移動させる平均速度より大きいことを特徴とする請求項2に記載の機械グリッパ駆動装置。
【請求項4】
前記第一角度が前記第二角度より大きい場合、前記ボルトの軸方向に沿って前記第三軸線を移動させる平均速度が前記ボルトの径方向に沿って前記第五軸線を移動させる平均速度より小さいことを特徴とする請求項2に記載の機械グリッパ駆動装置。
【請求項5】
前記第一軸線は、前記第二連結棒の前記第五軸線と前記ボルトとの間に位置することを特徴とする請求項1に記載の機械グリッパ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの末端効果器(EndEffector)、特に作業対象物を把持する機能を持つ機械グリッパ駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
科学技術の進歩に伴ってロボットは人間の代わりに様々な作業場に広汎に応用されることになる。特に作業環境が厳しくて悪い場合、ロボットは作業員の産業事故を減少させるだけでなく、厳しくて悪い作業環境が作業員の健康に影響を及ばすことを緩和することができる。例えば、はんだ付け作業に伴って生じた排気、高温および強烈な光が原因で作業員の呼吸器官や目などを害し、作業員にやけどを負わせ、老化を加速させるという問題を緩和することができる。
【0003】
ロボットを実際に応用するのには異なる物理機能によって設計された末端効果器(EndEffector)を使用し、物理的効果を果たすことが必要である。例えば、末端効果器が作業対象物を把持するグリッパ装置である場合、ロボットは作業対象物を把持しながら別の場所に移動すると、作業対象物を移動させる物理的効果を果たす。
【0004】
特許文献1のように、従来のグリッパ装置の多くはラック・アンド・ピニオンによってグリッパを駆動する。しかしながら、ラック・アンド・ピニオンによって伝動を行う際、グリッパの位置を制御する精度が足りないという問題が生じる。一方、グリッパ装置はグリッパの径路を制御する誘導装置が配置されないため、複数のグリッパを相互に接近または分離させることによって作業対象物を把持または解放する機能しかない。グリッパは誘導されない状況下で外力を受けると移動しやすいため、把持対象物を落下させるような事態が起こりやすい。
【0005】
一方、特許文献2のように、従来のグリッパ装置はスウィング式連結棒を採用し、グリッパの間の距離が異なるとともにグリッパの把持ポイントの高度が変化するため、把持作業の難度が増大するだけでなく、薄型の作業対象物を把持することが難しい。NACHI FLEX HAND FH360-01のように、グリッパ装置が平行にスウィングする連結棒を採用すれば、同様にグリッパの間の距離が異なるとともにグリッパの把持ポイントの高度が変化するという問題が生じる。
それに対し、SCHUNK universal gripper ENZ seriesのように、別の従来のグリッパ装置はくさび形フック(wedgehook)を採用し、軸方向に運動する外力によってグリッパを径方向に移動させる。グリッパは斜面の間に当接しながら径方向に運動するため、グリッパの間の距離が異なるとともにグリッパの把持ポイントの高度が変化するという問題を避けることができる。しかしながら、このような設計は軸方向に運動する分力によって径方向運動を生じることであるため、稼動するのには軸方向に運動する力が径方向に運動する力より大きなければならない。グリッパの把持力は軸方向力より小さい。従って、軸方向力のエネルギーが無駄になってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60-76986号公報
【特許文献2】実開昭63-91393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑み、従来のラック・アンド・ピニオンによって駆動するグリッパよりグリッパの位置を正確に制御し、把持対象物を落下させることを抑制し、さらに、グリッパの把持力を大きくし、グリッパの把持力が小さくなることを減らすことができる機械グリッパ駆動装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明による機械グリッパ駆動装置は、第一プレート、ボルト、第二プレート、板状駆動部、複数の連結機構、複数の板状連結部および複数の線形移動モジュールを備える。ボルトは第一部位および第二部位を有する。第一部位は第一プレートに接続される。第二プレートはボルトの第二部位に接続され、複数のスロットを有する。板状駆動部はナットを有する。ナットはボルトに被さることでボルトの回転に伴って移動する。連結機構は第一連結棒および第二連結棒を有する。第一連結棒は両端によって第一軸線および第二軸線を定義する。第一連結棒は第一軸線によって第二プレートに接続される。第二連結棒は第三軸線、第四軸線および第五軸線を定義する。第二連結棒は第三軸線によって板状駆動部に接続される。第二連結棒の第四軸線は第一連結棒の第二軸線に接続される。板状連結部は第二連結棒の第五軸線に接続され、第二プレートのスロットを貫通する。線形移動モジュールはレールおよびスライド部を有する。レールはボルトの径方向に沿って第二プレートに分布する。スライド部はレールの制御を受けてレールに沿って移動し、かつ板状連結部に接続される。ボルトによってナットを回転させ、連結機構によってスライド部をレールに沿って移動させれば、把持対象物に照準を合わせ、グリッパの位置を正確に制御し、把持対象物の落下を抑制することができる。
【0009】
第一軸線、第二軸線および第三軸線は第一角度を構成する。第一軸線、第二軸線および第五軸線は第二角度を構成する。第一角度および第二角度は相互補償する。
【0010】
第一軸線と第二軸線との間に第一距離を置く。第三軸線と第四軸線との間に第二距離を置く。第四軸線と第五軸線との間に第三距離を置く。第一距離、第二距離および第三距離は同等であるため、第五軸線に接続されるスライド部およびその上のグリッパを作動させ、レールによってボルトの径方向に沿って移動させることによってグリッパの間の距離が異なるとともに把持ポイントの高度が変化するという問題を避けることができる。
【0011】
第一角度が第二角度より小さい場合、ボルトの軸方向に沿って第三軸線を移動させる平均速度がボルトの径方向に沿って第五軸線を移動させる平均速度より小さい。第五軸線に生じた力が第三軸線の受けた力より大きいため、外力が漸小するという問題を解決できる。
【0012】
第一角度が第二角度より大きい場合、ボルトの軸方向に沿って第三軸線を移動させる平均速度がボルトの径方向に沿って第五軸線を移動させる平均速度より大きい。つまり、ボルトの径方向に第五軸線を移動させる平均速度がボルトの軸方向に第三軸線を移動させる平均速度が小さい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態による機械グリッパ駆動装置を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態による機械グリッパ駆動装置を示す左側面図である。
図3】本発明の一実施形態による機械グリッパ駆動装置を示す斜視図である。
図4図3中の4−4線に沿った断面図である。
図5】本発明の一実施形態による機械グリッパ駆動装置においての第一角度が第二角度より大きい状態を示す模式図である。
図6】本発明の一実施形態による機械グリッパ駆動装置においての第一角度が第二角度より小さい状態を示す模式図である。
図7】本発明の一実施形態による機械グリッパ駆動装置に配置された連結機構を示す模式図である。
図8】本発明の一実施形態による機械グリッパ駆動装置に対し、第一距離、第二距離、第三距離を100mmに設定したうえでテストした実験データを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明による機械グリッパ駆動装置を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において、軸線は仮説に基づいて定義される。それぞれの連結棒はそれぞれの連結箇所の位置した軸線に沿って回転する。一方、製作および加工を行う際に生じた誤差は極めて小さく、全体構造の稼動に影響を与えても、全体構造を平行に維持するため、以下の説明により提示された平行は平行に維持するとは限らず、平行に近い状態を維持することを含む。
【0015】
(一実施形態)
図1から図7に示すように、本発明の一実施形態による機械グリッパ駆動装置は、第一プレート10、ボルト20、第二プレート30、板状駆動部40、複数の連結機構50、複数の板状連結部70および複数の線形移動モジュール80を備える。
【0016】
ボルト20は相対的に配置された第一部位21および第二部位22を有する。第一部位21は第一プレート10に接続される。本実施形態において、ボルト20は第一プレート10の駆動機構60に装着され、駆動機構60の駆動力によって回転する。駆動機構60はモーター61、大滑車62、小滑車63およびロープ64を有する。モーター61は小滑車63を駆動し、ロープ64を介して大滑車62を回転させてトルクを増大させることによって大滑車62に固定されるボルト20を駆動する。
【0017】
第二プレート30はボルト20の第二部位22に接続され、複数のスロット31を有する。スロット31はボルト20の径方向に沿って配置される。
【0018】
板状駆動部40は第一プレート10と第二プレート30との間に外力によって移動できるように配置される。本実施形態において、板状駆動部40はナット41を有する。ナット41はボルト20に被さることでボルト20の回転に伴って移動する。
【0019】
連結機構50は、第一連結棒51および第二連結棒52を有する。
【0020】
第一連結棒51は、両端によって第一軸線511および第二軸線512を定義する。第一連結棒51は第一軸線511によって第二プレート30に接続される。第二連結棒52は第三軸線521、第四軸線522および第五軸線523を定義する。第二連結棒52は第三軸線521によって板状駆動部40に接続される。第二連結棒52の第四軸線522は第一連結棒51の第二軸線512に接続される。第五軸線523は外部に接続される。
【0021】
板状連結部70は、第二連結棒52の第五軸線523に接続され、第二プレート30のスロット31を貫通する。
【0022】
線形移動モジュール80は、レール81およびスライド部82を有する。レール81はボルト20の径方向に沿って第二プレート30に分布する。スライド部82はレール81の制御を受けてレール81に沿って移動し、かつ板状連結部70に接続される。
本実施形態において、グリッパ90はスライド部82に装着されることでスライド部82に伴って移動する。グリッパ90が外力を受ける際、線形移動モジュール80は外力に耐えるため、連結機構50が板状連結部70によって外力を受け、損壊することを抑制できるだけでなく、ボルト20の径方向に照準を合わせ、スライド部82に装着されたグリッパ90を移動させることができる。
【0023】
ラック・アンド・ピニオンによる伝動方式を採用する従来技術に対し、本発明による機械グリッパ駆動装置はボルト20によって板状駆動部40のナット41を回転するため、精度が高い。一方、線形移動モジュール80のレール81およびスライド部82の組み合わせによってグリッパ90が外力を受けて傾くことを抑制し、グリッパ90の位置を正確に制御し、把持対象物の落下を抑制する。
【0024】
本実施形態において、第一軸線511から第五軸線523は相互に平行する。第一軸線511、第二軸線512および第三軸線521は第一角度A1を構成する。第一軸線511、第二軸線512および第五軸線523は第二角度A2を構成する。第一角度A1および第二角度A2は相互補償する。第二連結棒の第三軸線521、第四軸線522および第五軸線523は同一平面に位置する。
【0025】
第五軸線523によってボルト20の径方向に運動する際、第一軸線511と第二軸線512との間に第一距離D1を置き、第三軸線521と第四軸線522との間に第二距離D2を置き、第四軸線522と第五軸線523との間に第三距離D3を置く。第一距離D1、第二距離D2および第三距離D3は同等である。
【0026】
第一角度A1が第二角度A2より小さい場合、ボルト20の軸方向に沿って第三軸線521を移動させる平均速度がボルト20の径方向に沿って第五軸線523を移動させる平均速度より小さいため、第五軸線523を迅速に移動させ、平均移動速度を増大させるだけでなく、第二連結棒52の第三軸線521の受けた力を増大させ、第五軸線523に加えることができる。
【0027】
第一角度A1が第二角度A2より大きい場合、ボルト20の軸方向に沿って第三軸線521を移動させる平均速度がボルト20の径方向に沿って第五軸線523を移動させる平均速度より大きい。
【0028】
続いて、本発明の作動について説明を進める。
【0029】
1、板状駆動部40が第一プレート10に向かって移動する際、第一連結棒51は第一軸線511を回転中心に第三軸線521に向かって移動することによって第一角度A1を増大させると、第二角度A2が縮小する。第一角度A1が第二角度A2より大きい場合、ボルト20の軸方向に沿って第三軸線521を移動させる平均速度がボルト20の径方向に沿って第五軸線523を移動させる平均速度より小さい
【0030】
2、板状駆動部40が第二プレート30に向かって移動する際、第一連結棒51は第一軸線511を回転中心に第五軸線523に向かって移動することによって第一角度A1を縮小させると、第二角度A2が増大する。第一角度A1が第二角度A2より小さい場合、ボルト20の軸方向に第三軸線521を移動させる平均速度がボルト20の径方向に沿って第五軸線523を移動させる平均速度より大きいため、第二連結棒52の第三軸線521の受けた力を増大させ、第五軸線523に加えることができる。
一方、本実施形態はボルト20と第一軸線511との間に第二連結棒52の第五軸線523を移動させるように配置するが、これに限らず、図6に示すように、第二連結棒52の第五軸線523とボルト20の間に第一軸線511を位置させることができる。
【符号の説明】
【0031】
10 第一プレート
20 ボルト
21 第一部位
22 第二部位
30 第二プレート
31 スロット
40 板状駆動部
41 ナット
50 連結機構
51 第一連結棒
511 第一軸線
512 第二軸線
52 第二連結棒
521 第三軸線
522 第四軸線
523 第五軸線
60 駆動機構
61 モーター
62 大滑車
63 小滑車
64 ロープ
70 板状連結部
80 線形移動モジュール
81 レール
82 スライド部
90 グリッパ
A1 第一角度
A2 第二角度
D1 第一距離
D2 第二距離
D3 第三距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8