特許第6283640号(P6283640)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283640
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】管継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 19/08 20060101AFI20180208BHJP
【FI】
   F16L19/08
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-193293(P2015-193293)
(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公開番号】特開2017-67174(P2017-67174A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2017年7月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000119830
【氏名又は名称】因幡電機産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(74)【代理人】
【識別番号】100138416
【弁理士】
【氏名又は名称】北田 明
(72)【発明者】
【氏名】松村 良太
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭47−036216(JP,A)
【文献】 特表2012−511681(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/047303(WO,A1)
【文献】 特表2007−534902(JP,A)
【文献】 特開2003−232474(JP,A)
【文献】 特開昭55−159392(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0167873(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0148501(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続配管が軸心方向に沿い前方へと挿し込まれ、接続配管の外面から径外方向に位置する面である平行部が内面に設けられた受口部を有した、軸心周りに環状である継手本体と、
前記受口部の外周面に形成された雄ねじ部に、後方から前方に向けてねじ込まれる締付ナットと、
前記受口部の内面に一部が重なり、軸心周りに環状であるフロントフェルール部と、
前記フロントフェルール部の後方に、前部が前記フロントフェルール部に当接し、後部が前記締付ナットに当接するよう配置された、軸心周りに環状であるバックフェルール部とを備え、
前記フロントフェルール部は、前記締付ナットの前記受口部へのねじ込みに伴い、前記受口部の内面に誘導されて縮径するよう変形する前方縮径部と、
前端が前記前方縮径部の後方に位置し、後端が前記受口部よりも後方に位置し、前記締付ナットの前記受口部へのねじ込みに伴い、一部が前記受口部の内面における前記平行部に対して軸心方向前方へ移動する中間部と、
前記中間部の後方に延設され、前記締付ナットの押圧により生じる前記バックフェルール部の前方への押圧力に応じて拡径するよう変形する後端部とを備え、
前記バックフェルール部は、前記フロントフェルール部における前記後端部の後方に、前記締付ナットの前記受口部へのねじ込みに伴い、前記フロントフェルール部に誘導されて縮径するよう変形する後方縮径部を備え
前記締付ナットの内部には、前記フロントフェルール部の前記後端部が拡径するよう変形した場合に、前記後端部に干渉せず、前記拡径する変形を許容できる空間部が設けられている管継手。
【請求項2】
前記中間部は、径方向厚み寸法が軸心方向に沿って等しく、
前記後端部の径方向厚み寸法は、前記中間部の径方向厚み寸法よりも大きい、請求項に記載の管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷熱空調機の冷媒(熱媒)配管等の接続配管を接続するために用いられる管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
前記管継手として、例えば特許文献1に記載のものがある。この管継手は、冷熱空調機の冷媒(熱媒)配管等を接続するための食い込み継手であって、接続配管が接続される継手本体と、継手本体に螺合されるナットとを備えている。また、この管継手は、ナットの継手本体への螺合によって接続配管の外周面に食い込む環状のフェルールを備えている。フェルールの食い込みにより、フェルールと接続配管の外周面との間が密閉されるため、シール性が発揮される。
【0003】
特許文献1には、フェルールが、継手本体側に配置されるフロントフェルールと、ナット側に配置されるバックフェルールとから構成された実施形態が記載されている。この実施形態では、各フェルールが接続配管の外周面に食い込むことにより、より確実にシール性が発揮される。
【0004】
ところが、フロントフェルールによる食い込み部分と、バックフェルールによる食い込み部分の距離が小さいと、一方のフェルールの食い込みによる接続配管の変形(歪み)が、他方のフェルールにより発揮されるシール性を阻害してしまう場合があり、結果として、管継手の全体的なシール性が低下してしまう可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−144908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、安定的にシール性が発揮される管継手を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、接続配管が軸心方向に沿い前方へと挿し込まれ、接続配管の外面から径外方向に位置する面である平行部が内面に設けられた受口部を有した、軸心周りに環状である継手本体と、前記受口部の外周面に形成された雄ねじ部に、後方から前方に向けてねじ込まれる締付ナットと、前記受口部の内面に一部が重なり、軸心周りに環状であるフロントフェルール部と、前記フロントフェルール部の後方に、前部が前記フロントフェルール部に当接し、後部が前記締付ナットに当接するよう配置された、軸心周りに環状であるバックフェルール部とを備え、前記フロントフェルール部は、前記締付ナットの前記受口部へのねじ込みに伴い、前記受口部の内面に誘導されて縮径するよう変形する前方縮径部と、前端が前記前方縮径部の後方に位置し、後端が前記受口部よりも後方に位置し、前記締付ナットの前記受口部へのねじ込みに伴い、一部が前記受口部の内面における前記平行部に対して軸心方向前方へ移動する中間部と、前記中間部の後方に延設され、前記締付ナットの押圧により生じる前記バックフェルール部の前方への押圧力に応じて拡径するよう変形する後端部とを備え、前記バックフェルール部は、前記フロントフェルール部における前記後端部の後方に、前記締付ナットの前記受口部へのねじ込みに伴い、前記フロントフェルール部に誘導されて縮径するよう変形する後方縮径部を備え、前記締付ナットの内部には、前記フロントフェルール部の前記後端部が拡径するよう変形した場合に、前記後端部に干渉せず、前記拡径する変形を許容できる空間部が設けられている管継手である。
【0008】
この構成によれば、フロントフェルール部における前方縮径部とバックフェルール部における後方縮径部との間で、フロントフェルール部に中間部を設けたことで、前方縮径部と後方縮径部との間隔を大きくとることができる。このため、バックフェルール部における後方縮径部が縮径するよう変形することに伴って接続配管が変形した場合であっても、この影響を受けて、フロントフェルール部における前方縮径部が縮径するよう変形して接続配管に食い込むことにより発揮されるシール性が阻害されにくい。よって、接続配管と管継手とのシール性を向上できる。
【0010】
またこの構成によれば、フロントフェルール部における後端部が拡径するよう変形することで、締付ナットのねじ込みに伴い、バックフェルールにおける後方縮径部の縮径量を過度に増大させようとすることなく、締付ナットを前進させることができる。後方縮径部の縮径量が過度に増大させられようとすると、締付ナットに大きな反発力が生じてしまう。一方この構成では、ねじ込みにより締付ナットに生じる反発力を軽減させねじ込みトルクを小さくできる。
【0011】
また、前記中間部は、径方向厚み寸法が軸心方向に沿って等しく、前記後端部の径方向厚み寸法は、前記中間部の径方向厚み寸法よりも大きいものとできる。
【0012】
この構成によれば、特に接続配管が剛性の高い管である場合、締付ナットのねじ込みの初期ではフロントフェルール後端部が拡径せずバックフェルール部における後方縮径部が縮径するよう変形することにより、後方縮径部が接続配管に食い込むことでシール性を発揮する。一方、締付ナットのねじ込みの後期ではフロントフェルール部における後端部が拡径するよう変形することにより、締付ナットのねじ込みに伴う、バックフェルールにおける後方縮径部の縮径量を過度に増大させようとすることなく、締付ナットを前進させることができる。このため、バックフェルール部の前方への押圧力を逃がすことができる。従って、ねじ込みトルクを効果的に小さくできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、フロントフェルール部に中間部を設けたことで、接続配管と管継手とのシール性を向上できる。このため、安定的にシール性が発揮される管継手を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る管継手の締付け前状態を示した、側面視での半断面図である。
図2】(A)は同管継手の締付け前状態を左方に、締付け後状態を右方に示した、側面視での半断面図であり、(B)は(A)の右方部分の拡大断面図である。
図3】接続配管が厚肉管の場合の締付け後状態を示す拡大断面図である。
図4】(A)は同管継手のフロントフェルール部(単体)を示す側面視での半断面図であり、(B)は同管継手のバックフェルール部(単体)を示す側面視での半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る管継手を、図面を示しつつ説明する。なお、下記における方向の表現のうち前後の表現は、管継手1に各接続配管Pを差し込む方向を「前方」としている。このため、図1に示した状態での左方部分における「前方」は右方となり、同状態での右方部分における「前方」は左方となる。つまり、軸心C方向で管継手1の中心に向かう方向が前方である。
【0016】
本実施形態の管継手1は、冷熱空調機の金属製の配管である冷媒(熱媒)配管等の接続配管P,Pどうしを接続するために用いられる。この管継手1は、ねじ込みだけで接続を完了でき、接続の際に火気を用いたろう付けが不要であるため、「火無し継手」とも称される。本実施形態の管継手1は銅合金製(具体的には黄銅製)であるが、フロントフェルール部4及びバックフェルール部5が接続配管に食い込むように変形できるよう構成されていれば、材質は特に限定されない。また、本実施形態では銅製の接続配管Pが用いられるが、後述の各フェルール部4,5が食い込むことのできる材料からなる配管であれば、種々の配管を接続配管Pとして用いることができる。
【0017】
図1及び図2(A)に示すように、管継手1は、継手本体(「インナー」とも称される)2、継手本体2にねじ込まれる締付ナット3,3、管継手1の内部に位置するフロントフェルール部4,4及びバックフェルール部5,5、を備える。継手本体2に各締付ナット3をねじ込むことに伴い、図2(B)及び図3に示すように、各フロントフェルール部4及び各バックフェルール部5が各接続配管Pに食い込んでかしめられるため、シール性を発揮でき、各接続配管Pが管継手1から抜けてしまうことを防止できる。管継手1の図1及び図2(A)に示す左方部分(以下「図示左方部分」)と同右方部分(以下「図示右方部分」)は、軸心C方向で管継手1の中心を基準として対称形状に形成されている(ただしねじ山を除く)。このため以下では、軸心C方向での中心を基準とした一方部分の説明をもって、他方部分の説明を兼ねる。また、継手本体2及び各締付ナット3の内面形状(ねじ山を除く)、各フロントフェルール部4及び各バックフェルール部5の内外形状は、軸心Cを基準とした回転対称形状である。
【0018】
継手本体2は軸心C周りに環状(または筒状)に形成されており、軸心C方向での中心側に位置する基部21と、基部21から後方に延びる受口部22とを備える。
【0019】
基部21における外周部には、スパナ等の工具を掛けることのできる、軸心C方向視で多角形(本実施形態では正六角形)である工具掛部211が形成されている。また、基部21における内周部には、図2(A)に示すように、差し込まれた接続配管Pの先端面が当接する配管当接部212が形成されている。
【0020】
受口部22は、接続配管Pが挿し込まれて保持される部分である。受口部22の外径は、基部21の外形寸法に比べて小径に形成されている。受口部22の外周面には締付ナット3をねじ込むための雄ねじ部221が形成されている。また受口部22の内面は、図2(B)に示すように、後方から前方に向かって順に、面取部222、平行部223、絞り部224とされており、フロントフェルール部4の一部が重なるように位置する。
【0021】
平行部223は、図1及び図2(A)の左方部分に示すように、フロントフェルール部4を受口部22の径内位置に挿入できるよう、挿入される接続配管Pの外面から、フロントフェルール部4の中間部42の厚さ寸法と略等しい寸法分、径外方向に位置する面である。図2(B)に示すように、面取部222は平行部223の後方において、後方に向かうにつれ径方向寸法が大きくなる形状のテーパ面である。この面取部222の存在により、管継手1を組み立てる際、受口部22の径内位置にフロントフェルール部4の一部を容易に挿入できる。また、締付ナット3の受口部22へのねじ込みに伴い、フロントフェルール部4が継手本体2に対して前方に移動する際、平行部223に対して引っ掛かりが生じてフロントフェルール部4の移動が阻害されることを抑制できる。絞り部224は、図2(B)に示すように、平行部223の前方において、前方に向かうにつれ径方向寸法が小さくなる形状のテーパ面である。締付ナット3の受口部22へのねじ込みに伴い、フロントフェルール部4が継手本体2に対して前方に移動する際、フロントフェルール部4はこの絞り部224に外周部が誘導されることにより縮径するよう変形し、図2(B)及び図3に示すように、接続配管Pの外面に食い込む。
【0022】
締付ナット3は軸心C周りに環状(または筒状)に形成される。締付ナット3における外周部には、スパナ等の工具を掛けることのできる、軸心C方向視で多角形(本実施形態では正六角形)である工具掛部31が形成されている。そして、締付ナット3の内周面には、継手本体2における受口部22の雄ねじ部221に対応した雌ねじ部32が形成されている。このため、締付ナット3を受口部22へ、後方から前方に向けてねじ込むことができる。また、締付ナット3の内部には前方を向いた押圧面33が形成されている。この押圧面33は、図2(B)に拡大して示すように、径外方向に向かうにつれ前方に傾斜した面とされている。このため、締付ナット3のねじ込みに伴い、バックフェルール部5を径内方向寄り前方へと押圧できる。よって、後方縮径部51を接続配管Pの外面に食い込ませやすい。また、締付ナット3の内部には、図3に示すように、フロントフェルール部4の後端部43が拡径するよう変形した場合に、後端部43に干渉せず、前記変形を許容できる空間部Sが設けられている。
【0023】
締付ナット3は、前端面34が基部21の後端面213に当接するまでねじ込むことができる。つまり、本実施形態の管継手1は、図2(A)の右方部分及び図2(B)に示すように、締付ナット3の前端面34が基部21の後端面213に当接することにより施工が完了するよう構成されていて、いわゆる「締め切り」管理が可能である。締付ナット3の前端面34と基部21の後端面213との当接は、管継手1の外観に現れるため、作業者の目視により確実に施工完了を確認できる。
【0024】
フロントフェルール部4は、図4(A)に示すように軸心C周りに環状に形成されている。このフロントフェルール部4は、前方から、前方縮径部41、中間部42、後端部43を備える。フロントフェルール部4のうち前方縮径部41及び中間部42における内面4aは、管継手1に接続配管Pを挿入した際、図2(A)に示すように、接続配管Pの外面に当接する。
【0025】
前方縮径部41は、締付ナット3の受口部22へのねじ込みに伴いフロントフェルール部4が継手本体2に対して前方に移動する時、受口部22の内面、特に、絞り部224に外周部が誘導されて、図2(A)の右方部分及び図2(B)に示すように、縮径するよう変形する部分である。
【0026】
図4(A)に示すように、前方縮径部41には、径内前端の位置が欠けたような形状の段差部411が形成されている。この段差部411は、図2(B)に示すように接続配管Pの外面に食い込むことで、前後二重の食い込みをさせられるため、段差部411が形成されない場合よりも確実にシール性を発揮できる。
【0027】
中間部42は、その前端が前方縮径部41の後方に位置し、その後端が受口部22よりも後方に位置する部分である。この中間部42は、軸心C方向に平行に延びており、径方向厚み寸法が軸心C方向に沿って等しく形成されている。後端部43は、中間部42の後方に延設される部分である。この後端部43の径方向厚み寸法は、中間部42の径方向厚み寸法よりも大きい。
【0028】
また、この後端部43の内面431は、前方に向かうにつれ径方向寸法が小さくなる形状のテーパ面である。このため、図1及び図2(A)(B)に示すように、後端部43の径内位置にバックフェルール部5の一部(後方縮径部51)を位置させることができる。
【0029】
フロントフェルール部4と同じくバックフェルール部5も、図4(B)に示すように軸心C周りに環状に形成されている。このバックフェルール部5は、前部に後方縮径部51を備え、後部にナット当接部52を備える。バックフェルール部5の内面5aは、管継手1に接続配管Pを挿入した際、図2(A)に示すように、接続配管Pの外面に当接する。このバックフェルール部5は、図1及び図2(A)(B)に示すように、フロントフェルール部4の後方に、前部の後方縮径部51がフロントフェルール部4に当接し、後部のナット当接部52が締付ナット3の押圧面33に当接するよう配置される。
【0030】
後方縮径部51は、フロントフェルール部4における後端部43の後方に位置し、締付ナット3の受口部22へのねじ込みに伴い、フロントフェルール部4の後端部43に外周部が誘導されて縮径するよう変形する。この後方縮径部51は、その径内前端部511が、図2(B)に示すように接続配管Pの外面に食い込むことでシール性を発揮する。
【0031】
次に、本実施形態の管継手1を用いて、上流側と下流側に位置する接続配管P,Pを接続する際の動的な変化について説明する。まず、図1に示す管継手1に対し、軸心C方向での中心に向かい、図示左方と図示右方とから接続配管P,Pを各々前方に挿入し、各接続配管Pの先端面を配管当接部212に当接させ、図2(A)の左方部分に示す状態とする。
【0032】
そして、締付ナット3を継手本体2の受口部22へねじ込む。すると締付ナット3は前方に移動するから、締付ナット3の押圧面33に当接したバックフェルール部5も前方へ移動する。フロントフェルール部4は、締付ナット3の受口部22へのねじ込みに伴い、一部(拡径するよう変形する後端部43を除いた部分)がバックフェルール部5に押されて、受口部22の内面(具体的には平行部223)に対して軸心C方向前方へ移動する(より詳しくは摺動する)。前方縮径部41は受口部22の絞り部224に外周部が誘導されて縮径するよう変形し、図2(A)の右方部分及び図2(B)に示すように、接続配管Pの外面に食い込む。
【0033】
前方縮径部41が接続配管Pへ食い込み始めると、フロントフェルール部4はそれ以上前方に移動しなくなる。この状態でも締付ナット3のねじ込みは継続されているので、締付ナット3に押されてバックフェルール部5は前方に移動する。そして、バックフェルール部5の前端に位置する後方縮径部51は、前方縮径部41における後端部43の内面431に外周部が誘導されて縮径するよう変形し、図2(A)の右方部分及び図2(B)に示すように、接続配管Pの外面に食い込む。このように、フロントフェルール部4の前方縮径部41とバックフェルール部5の後方縮径部51とが共に接続配管Pの外面に食い込む。このため、食い込み箇所が前後で二箇所となり、接続配管Pから漏れようとする冷媒(熱媒)のうち、接続配管Pの外面を伝うものについては二箇所で食い止めることができるので、シール性を確実に発揮できる。なお、締付ナット3のねじ込みにより、受口部22に対してフロントフェルール部4がかしめられることから、受口部22とフロントフェルール部4との間においてもシール性が発揮される。
【0034】
フロントフェルール部4の前方縮径部41とバックフェルール部5の後方縮径部51との間で、フロントフェルール部4に中間部42を設けたことで、前方縮径部41と後方縮径部51との間隔を大きくとることができる。このため、バックフェルール部5における後方縮径部51が縮径するよう変形することに伴い接続配管Pが変形した場合であっても、この影響を受けて、フロントフェルール部4における前方縮径部41が縮径することにより奏されるシール性が阻害されにくい。よって、接続配管Pと管継手1とのシール性を向上できる。
【0035】
ここで、接続配管Pが薄肉管の場合、図2(B)に示すように、各フェルール部4,5が食い込むと内面側まで至るように接続配管Pが変形する。このため、締付ナット3のねじ込みにより生じる力が各フェルール部4,5の変形を通じて接続配管Pの変形のために使われるので、ねじ込みの経過により、締付ナット3のねじ込みトルクはそれほど大きく変化しない。
【0036】
一方、接続配管Pが厚肉管の場合は薄肉管に比べて剛性が高いことにより、薄肉管の場合と異なり、図3に示すように各フェルール部4,5が食い込んでも接続配管Pが内面側まで至るまで変形することが起こりにくい。このため、接続配管Pへの各フェルール部4,5の食い込みがある程度なされた以降、更に締付ナット3をねじ込むと、特にバックフェルール部5における後方縮径部51の縮径量が過度に増大されようとする。しかし、後方縮径部51はこの時点で十分接続配管Pに食い込んでいるため、更に食い込ませるためには多大な力が必要になる。この力がねじ込みを阻止しようとする反発力に転じることで、締付ナット3のねじ込みトルクが急激に増大することになる。特に、いわゆる「締め切り」管理を行う場合、締付ナット3の前端面34が基部21の後端面213に当接するまでねじ込みを行わなければならないため、ねじ込みトルクが増大すると作業者の労力が大きくなってしまう問題点があった。
【0037】
この問題点に対し、本実施形態では、フロントフェルール部4の後端部43が、締付ナット3のねじ込み(特に後期のねじ込み)に伴う前方への押圧により生じるバックフェルール部5の押圧力に応じて拡径するよう変形することで対応している。つまり、締付ナット3のねじ込みにより生じる力のうち一部は、バックフェルール部5の後方縮径部51が前方に移動するために使われ、他の一部は、フロントフェルール部4の後端部43が拡径するよう変形する(図示上方にせり上がるように変形する)ために使われる。このため、接続配管Pが厚肉管のように相対的に(薄肉管に比べて)剛性の高い管であっても、ねじ込みの経過により、特にねじ込みの後期において締付ナット3のねじ込みトルクが急激に増大することを抑制できる。このように本実施形態では、フロントフェルール部4の後端部43が拡径するよう変形することにより、ねじ込みにより生じる反発力を軽減させねじ込みトルクを小さくできる。よって、作業者の労力を低減でき、作業性を良好にできる。なお、ここで述べた作用は接続配管Pが相対的に剛性の高い厚肉管の場合に顕著であるが、接続配管Pが相対的に剛性の低い薄肉管の場合であっても接続配管Pの変形度合により奏されるものであるため、この場合であっても本実施形態の構成は有効である。なお、後端部43において実際に変形する部分は最前部(中間部42との接続部)である。
【0038】
以上、特に接続配管Pが厚肉管の場合、締付ナット3のねじ込みの初期では、後端部43が中間部42より厚いことにより、後端部43が拡径することなく、バックフェルール部5の後方縮径部51が縮径するよう変形することにより後方縮径部51が接続配管Pに食い込む。そして、ねじ込みの後期では、後端部43が拡径するよう変形することによりバックフェルール部5の前方への押圧力を逃がすことができ、従って、ねじ込みトルクを効果的に小さくできる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。その他、各部の具体的構成についても同様である。
【0040】
例えば、前記実施形態では、締付ナット3とバックフェルール部5とは別体であったが、締付ナット3とバックフェルール部5とを一体に形成することもできる。
【符号の説明】
【0041】
1 管継手
2 継手本体
22 受口部
221 雄ねじ部
223 受口部の内面、平行部
3 締付ナット
4 フロントフェルール部
41 前方縮径部
42 中間部
43 後端部
5 バックフェルール部
51 後方縮径部
C 軸心
P 接続配管
図1
図2
図3
図4