【文献】
Journal of the Chemical Society, Perkin Transactions 1,1980年,(9),2033-2048
【文献】
Journal of the Chemical Society, Perkin Transactions 1,1980年,(7),1462-1472
【文献】
Journal of the Cemical Society, Chemical Communications,1973年,(18),658-660
【文献】
United Arab Republic Journal of Chemistry,1971年,14(4),371-382
【文献】
Sharp, Matthew J.; Heathcock, Clayton H.,An unusual isomerization under Lawesson thiation conditions,Tetrahedron Letters,1994年,35(22),3651-3652
【文献】
Benmaarouf-Khallaayoun, Z.; Baboulene, M.; Speziale, V.; Lattes, A.,Hydroboration of unsaturated amines. XI. Regio- and stereoselectivity of boron hydrides with respect to N-phosphorylated propargylic amines,Journal of Organometallic Chemistry ,1986年,306(3),283-293
【文献】
Antonsson, Thomas; Moberg, Christina,Palladium-catalyzed telomerization of dienes and tertiary allylic amines. A novel reaction involving cleavage of the carbon-nitrogen bond,Organometallics,1985年,4(6),1083-1086
【文献】
Blomqvist, Lars; Leander, Kurt; Luning, Bjorn; Rosenblom, Jan,Orchidaceae alkaloids. XXIX. Absolute configuration of dendroprimine, an alkaloid from Dendrobium primulinum,Acta Chemica Scandinavica (1947-1973) ,1972年,26(8),3203-3206
【文献】
Mauze, B.; Nivert, C.; Miginiac, L.,Addition of α-ethylenic organozincs to ethylenic, acetylenic, and allenic amines,Journal of Organometallic Chemistry,1972年,44(1),69-96
【文献】
Gupta, Om D.; Armstrong, Paul Douglas; Shreeve, Jean'ne M.,Quaternary trialkyl(polyfluoroalkyl)ammonium salts including liquid iodides,Tetrahedron Letters,2003年,44(52),9367-9370
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
カチオン性脂質、PEG修飾された脂質、非カチオン性脂質、およびヘルパー脂質からなる群から選択される1つ以上の化合物をさらに含む、請求項13に記載の薬学的組成物。
前記1つ以上のポリヌクレオチドが、DNA、RNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、miRNA、snRNA、snoRNA、mRNA、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項15に記載の薬学的組成物。
前記mRNAが、ヒト成長ホルモン、エリスロポエチン、α1−抗トリプシン、酸アルファグルコシダーゼ、アリールスルファターゼA、カルボキシペプチダーゼN、α−ガラクトシターゼA、アルファ−L−イズロニダーゼ、イズロネート−2−スルファターゼ、イズロネートスルファターゼ、N−アセチルグルコサミン−1−リン酸転移酵素、N−アセチルグルコサミニダーゼ、アルファ−グルコサミニドアセチル転移酵素、N−アセチルグルコサミン6−スルファターゼ、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ、ベータ−グルコシダーゼ、ガラクトース−6−硫酸スルファターゼ、ベータ−ガラクトシターゼ、ベータ−グルクロニダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、ヘパランスルファミダーゼ、ヘパリン−N−スルファターゼ、リソソーム酸リパーゼ、ヒアルロニダーゼ、ガラクトセレブロシダーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)、カルバモイル−リン酸シンセターゼ1(CPS1)、アルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS1)、アルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)、アルギナーゼ1(ARG1)、嚢胞性線維症膜貫通型コンダクタンス調節因子(CFTR)、生存運動ニューロン(SMN)、第VIII因子、第IX因子、および低密度リポタンパク質受容体(LDLR)からなる群から選択されるタンパク質または酵素をコードする、請求項20に記載の薬学的組成物。
カチオン性脂質、中性脂質、PEG修飾された脂質、非カチオン性脂質、およびヘルパー脂質からなる群から選択される1つ以上の脂質をさらに含む、請求項25に記載の薬学的組成物。
1つ以上の標的細胞にポリヌクレオチドを形質移入するインビトロでの方法であって、前記1つ以上の標的細胞にポリヌクレオチドが形質移入されるように、前記1つ以上の標的細胞を請求項29に記載の薬学的組成物と接触させることを含む、インビトロでの方法。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
新規カチオン性およびイオン化可能な脂質化合物、そのような化合物を含む薬学的組成物、ならびに関連するそれらの使用方法が、本明細書において説明される。ある実施形態では、本明細書に記載される化合物は、1つ以上の標的細胞への送達および後続のその形質移入を容易にするためのリポソーム組成物またはリポソーム組成物の成分として有用である。ある実施形態では、本明細書に開示される脂質組成物は、カチオン性および/またはイオン化可能な脂質である。例えば、本明細書に開示される脂質化合物は、アミンなどの塩基性のイオン化可能な官能基を含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される化合物は、例えば形質移入の効率を強化するため、または特定の生物学的成果を促進するための1つ以上の所望の特徴または性質に基づいて設計された。
【0006】
本明細書に開示されるある実施形態では、脂質化合物は、一般的に、極性親水性ヘッド基、および非極性疎水性テール基を含む。例えば、本明細書に開示される脂質化合物は、一般的に、1つ以上のアルキルまたはアリール置換基を有するアミン官能基などの1つ以上のカチオン性および/またはイオン化可能な官能ヘッド基を含み得る。ある実施形態では、本明細書に開示される脂質化合物は、2つのアルキル官能基、置換基、または部分(例えばR
1基およびR
2基、ここでR
1およびR
2の両方は独立して、C
1−C
10アルキルからなる群から選択される)に結合される(例えば共有結合)カチオン性のイオン化可能なアミノ官能ヘッド基を含み得る。
【0007】
いくつかの実施形態では、親水性ヘッド基(例えばアルキルアミノ基)は、疎水性(親油性)テール基に結合される(例えば共有結合)。例えば、本明細書に開示される化合物の親油性テール基(例えばL
1基およびL
2基のうちの1つ以上)は、コレステロールまたは任意に置換された可変的に不飽和のアルキル(例えば任意に置換されたオクタデカ−9,12−ジエンまたはオクタデカ−6,9−ジエン)などの1つ以上の非極性基を含み得る。
【0008】
ある実施形態では、本発明は、式(I)
【0009】
【化1】
の構造を有する化合物に関し、式中、R
1およびR
2はそれぞれ独立して、水素、任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC
1−C
20アルキル、および任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC
6−C
20アシルからなる群から選択され、L
1およびL
2はそれぞれ独立して、水素、任意に置換されたC
1−C
30アルキル、任意に置換された可変的に不飽和のC
1−C
30アルケニル、および任意に置換されたC
1−C
30アルキニルからなる群から選択され、mおよびoはそれぞれ独立して、ゼロおよび任意の正の整数からなる群から選択され(例えばmは3である)、nはゼロまたは任意の正の整数である(例えばnは1である)。
【0010】
ある実施形態では、化合物は、式(I)の構造を有し、式中、R
1およびR
2はそれぞれ、メチルである。そのような実施形態では、化合物の極性カチオン性ヘッド基は、イオン化可能なジメチルアミノ基を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、化合物は、式(I)の構造を有し、式中、L
1およびL
2はそれぞれ、任意に置換された多価不飽和C
6−C
20アルケニルである。例えば、L
1およびL
2がそれぞれ、任意に置換された多価不飽和C
18アルケニルである化合物が想定される。他の実施形態では、L
1およびL
2はそれぞれ、非置換の多価不飽和C
18アルケニルである。また他の実施形態では、L
1およびL
2はそれぞれ、任意に置換されたオクタデカ−9,12−ジエン(またはオクタデカ−6,9−ジエン)である。さらに他の実施形態では、L
1は、水素であり、L
2は、コレステロールである。
【0012】
本明細書に開示されるある実施形態では、本発明は、式(I)の構造を有する化合物に関し、式中、oは、ゼロである。代替として、他の実施形態では、oは、正の整数(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上)である。
【0013】
本明細書に開示されるある実施形態では、本発明は、式(I)の構造を有する化合物に関し、式中、mは、正の整数(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上)である。いくつかの特定の実施形態では、本発明は、式(I)の構造を有する化合物に関し、式中、mは、4である。いくつかの特定の実施形態では、本発明は、式(I)の構造を有する化合物に関し、式中、mは、3である。
【0014】
式(I)の構造を有する化合物も、本明細書に開示され、式中、nは、正の整数(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上)である。他の特定の実施形態では、本発明は、式(I)の構造を有する化合物に関し、nは、ゼロである。
【0015】
いくつかの特定の実施形態では、本発明は、式(I)の構造を有する化合物に関し、式中、R
1およびR
2はそれぞれ、メチルであり、L
1およびL
2はそれぞれ、オクタデカ−9,12−ジエン(またはオクタデカ−6,9−ジエン)であり、mは、4であり、nは、ゼロであり、oは、1である。例えば、ある実施形態では、本発明は、化合物(15Z,18Z)−N,N−ジメチル−6−(9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イル)テトラコサ−15,18−ジエン−1−アミンに関する。ある実施形態では、本発明は、式(II)の構造を有する化合物(本明細書において「HGT5000」と称される)に関する。
【0016】
【化2】
いくつかの特定の実施形態では、本発明は、式(I)の構造を有する化合物に関し、式中、R
1およびR
2はそれぞれ、メチルであり、L
1およびL
2はそれぞれ、オクタデカ−9,12−ジエン(またはオクタデカ−6,9−ジエン)であり、mは、3であり、nは1であり、oは、ゼロである。例えば、ある実施形態では、本発明は、化合物(15Z,18Z)−N,N−ジメチル−6−((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イル)テトラコサ−4,15,18−トリエン−1−アミンに関する。ある実施形態では、本発明は、式(III)の構造を有する化合物(本明細書において「HGT5001」と称される)に関する。
【0017】
【化3】
nが1である、本明細書に開示されるこれらの実施形態では、そのような化合物は、シス異性体、トランス異性体、または代替として、それらのラセミ混合物であり得ることを理解するべきである。例えば、nが1である、ある実施形態では、式(IV)
【0018】
【化4】
の構造を有する化合物によって表されるように、nは、シス異性体である。
【0019】
代替として、nが1である、他の実施形態では、式(V)
【0020】
【化5】
の構造を有する化合物によって表されるように、nは、トランス異性体である。
【0021】
式(VI)
【0022】
【化6】
の構造を有する化合物も開示され、式中、R
1およびR
2はそれぞれ独立して、水素、任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC
1−C
20アルキル、および任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC
6−C
20アシルからなる群から選択され、L
1およびL
2はそれぞれ独立して、水素、任意に置換されたC
1−C
30アルキル、任意に置換された可変的に不飽和のC
1−C
30アルケニル、および任意に置換されたC
1−C
30アルキニルからなる群から選択され、m、n、およびoはそれぞれ独立して、ゼロおよび任意の正の整数からなる群から選択される。
【0023】
いくつかの特定の実施形態では、本発明は、式(VI)の構造を有する化合物を対象とし、式中、R
1およびR
2はそれぞれ、メチルである。他の実施形態では、本発明は、式(VI)の構造を有する化合物を対象とし、式中、R
1およびR
2はそれぞれ独立して、水素およびメチルからなる群から選択される。
【0024】
式(VI)の構造を有する化合物も想定され、式中、L
1およびL
2はそれぞれ、任意に置換された多価不飽和C
6−C
20アルケニルである(例えば、L
1およびL
2はそれぞれ、任意に置換された多価不飽和C
18アルケニルであるか、またはL
1およびL
2はそれぞれ、非置換の多価不飽和C
18アルケニルである)。ある実施形態では、本明細書において開示される、L
1およびL
2はそれぞれ、任意に置換されたオクタデカ−9,12−ジエン(またはオクタデカ−6,9−ジエン)である。他の実施形態では、L
1は、水素であり、L
2は、コレステロールである。
【0025】
本明細書に開示されるある実施形態では、本発明は、式(VI)の構造を有する化合物に関し、式中、mは、正の整数(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上)である。いくつかの特定の実施形態では、本発明は、式(VI)の構造を有する化合I物に関し、式中、mは、4である。ある実施形態では、本発明は、式(VI)の構造を有する化合物に関し、式中、mは、少なくとも5である(例えば、mは、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上である)。
【0026】
式(VI)の構造を有する化合物も、本明細書に開示され、式中、nは、正の整数(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上)である。他の特定の実施形態では、本発明は、式(VI)の構造を有する化合物に関し、nは、ゼロである。
【0027】
本明細書に開示されるある実施形態では、本発明は、式(VI)の構造を有する化合物に関し、式中、oは、正の整数(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上)である。ある実施形態では、本発明は、式(VI)の構造を有する化合物に関し、式中、oは、少なくとも5である(例えば、oは、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上である)。代替として、他の特定の実施形態では、本発明は、式(VI)の構造を有する化合物に関し、oは、ゼロである。
【0028】
式(VI)の構造を有する化合物も想定され、式中、R
1およびR
2はそれぞれ、メチルであり、L
1およびL
2はそれぞれ、オクタデカ−9,12−ジエン(またはオクタデカ−6,9−ジエン)であり、mは4であり、nおよびoの両方は、ゼロである。例えば、ある実施形態では、本発明は、化合物(15Z,18Z)−N,N−ジメチル−6−((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イル)テトラコサ−5,15,18−トリエン−1−アミンに関する。ある実施形態では、本発明は、式(VII)
【0029】
【化7】
の構造を有する化合物(本明細書において「HGT5002」と称される)に関する。
【0030】
本明細書において、式(VIII)
【0031】
【化8】
の構造を有する化合物も開示され、式中、R
1およびR
2はそれぞれ独立して、任意に置換された可変的に飽和もしくは不飽和のC
1−C
20アルキルまたはアルケニル、および任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC
6−C
20アシルからなる群から選択され、L
1およびL
2はそれぞれ独立して、任意に置換されたC
1−C
30アルキル、任意に置換された可変的に不飽和のC
1−C
30アルケニル、および任意に置換されたC
1−C
30アルキニルからなる群から選択され、xは、C
1−C
20アルキルおよび可変的に不飽和のC
1−C
20アルケニルからなる群から選択される。
【0032】
ある実施形態では、開示される化合物は、式(VIII)の構造を有し、式中、R
1およびR
2はそれぞれ、メチルである。他の実施形態では、開示される化合物は、式(VIII)の構造を有し、式中、R
1およびR
2はそれぞれ独立して、水素およびC
1−C
6アルキルからなる群から選択される。
【0033】
他の実施形態では、本発明は、式(VIII)の構造を有する化合物に関し、式中、L
1およびL
2はそれぞれ、非置換の多価不飽和C
18アルケニルである。例えば、ある実施形態では、L
1およびL
2はそれぞれ、任意に置換されたオクタデカ−9,12−ジエンである(例えば、L
1およびL
2はそれぞれ、非置換のオクタデカ−9,12−ジエンまたはオクタデカ−6,9−ジエンである)。ある他の実施形態では、L
1は、水素であり、L
2は、コレステロールである。
【0034】
ある実施形態では、開示される化合物は、式(VIII)の構造を有し、式中、xは、C
6アルケニルである。他の実施形態では、開示される化合物は、式(VIII)の構造を有し、xは、ヘキサンである。また他の実施形態では、開示される化合物は、式(VIII)の構造を有し、式中、xは、ヘキサ−1−エンである。さらに他の実施形態では、開示される化合物は、式(VIII)の構造を有し、式中、xは、ヘキサ−2−エンである。ある実施形態では、xは、ヘキサンではない。他の実施形態では、開示される化合物は、式(VIII)の構造を有し、式中、xは、C
6−10アルケニルまたはC
6−10アルキルである。
【0035】
特定の一実施形態では、本発明は、式(VIII)の構造を有する化合物に関し、式中、R
1およびR
2はそれぞれ、メチルであり、L
1およびL
2はそれぞれ、オクタデカ−9,12−ジエン(またはオクタデカ−6,9−ジエン)であり、xは、ヘキサンである。別の特定の実施形態では、本発明は、式(VIII)の構造を有する化合物に関し、式中、R
1およびR
2はそれぞれ、メチルであり、L
1およびL
2はそれぞれ、オクタデカ−9,12−ジエン(またはオクタデカ−6,9−ジエン)であり、xは、ヘキサ−1−エンである。さらに別の実施形態では、本発明は、式(VIII)の構造を有する化合物に関し、式中、R
1およびR
2はそれぞれ、メチルであり、L
1およびL
2はそれぞれ、オクタデカ−9,12−ジエン(またはオクタデカ−6,9−ジエン)であり、xは、ヘキサ−2−エンである。
【0036】
化合物が1つ以上の不斉またはキラル分子(例えば1つ以上の不飽和炭素−炭素2重結合)を有する、本明細書に記載されるこれらの実施形態では、シス(Z)およびトランス(E)両方の異性体は、この発明の範囲内であることを理解するべきである。
【0037】
本明細書に開示される組成物は、1つ以上の薬学的組成物および/またはリポソームビヒクル(例えば脂質ナノ粒子)を調製するために使用され得る。そのような実施形態では、そのような薬学的組成物またはビヒクルは、カチオン性脂質、PEG修飾された脂質、非カチオン性脂質、およびヘルパー脂質からなる群から選択される1つ以上の化合物をさらに含み得る。したがって、ある実施形態では、本明細書に記載される化合物(例えば、HGT5000、HGT5001、および/またはHGT5002)は、被包された材料(例えば1つ以上の治療薬)の1つ以上の標的細胞への送達および放出を容易にする、または強化するために(例えばそのような標的細胞の脂質膜を透過する、またはそれと融合することにより)、リポソーム組成物の成分として使用され得るカチオン性またはイオン化可能な脂質である。本明細書に開示される化合物のうちの1つ以上を含む富化されたリポソーム組成物は、毒性を改善する(例えば減少させる)か、ないしは別の方法で、そのような富化されたリポソーム組成物に1つ以上の所望の性質(例えば、被包されたポリヌクレオチドの1つ以上の標的細胞への送達の改善、および/またはリポソーム組成物の生体内毒性の減少)を付与する手段として使用され得る。したがって、本明細書に開示される化合物のうちの1つ以上を含む薬学的組成物、特にリポソーム組成物も想定される。ある実施形態では、そのような薬学的およびリポソーム組成物は、PEG修飾された脂質、非カチオン性脂質、およびヘルパー脂質のうちの1つ以上を含む。例えば、本明細書に開示される化合物(例えばHGT5000、HGT5001、および/またはHGT5002)のうちの1つ以上を含む薬学的およびリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)、ならびに1つ以上のヘルパー脂質、非カチオン性脂質、およびPEG修飾された脂質成分が想定される。本明細書に開示される化合物のうちの1つ以上を含み、1つ以上の追加のカチオン性脂質をさらに含む薬学的およびリポソーム組成物も想定される。同様に、HGT5000、HGT5001、および/またはHGT5002化合物のうちの1つ以上、ならびにC12−200、DLinDMA、CHOL、DOPE、DMG−PEG−2000、ICE、DSPC、DODAP、DOTAP、およびC8−PEG−2000のうちの1つ以上を含むリポソーム組成物ならびに薬学的組成物(例えば脂質ナノ粒子)も想定される。ある実施形態では、そのような薬学的組成物およびリポソーム組成物は、例えば1つ以上の生物学的に活性なポリヌクレオチドなどの材料で充填されるか、ないしは別の方法で被包される。
【0038】
ある実施形態では、本明細書に開示される薬学的およびリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)のうちの1つ以上は、本明細書に開示される化合物のうちの1つ以上、および1つ以上の追加の脂質を含む。例えば、本明細書に開示される化合物のうちの1つ以上を含む、ないしは別の方法でそれにより富化される脂質ナノ粒子は、DOTAP(1,2−ジオレイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン)、DODAP(1,2−ジオレイル−3−ジメチルアンモニウムプロパン)、DOTMA(1,2−ジ−O−オクタデセニル−3−トリメチルアンモニウムプロパン)、DLinDMA、DLin−KC2−DMA、C12−200、およびICEのうちに1つ以上をさらに含み得る。一実施形態では、薬学的組成物は、HGT5000、DOPE、コレステロール、および/またはDMG−PEG2000を含む脂質ナノ粒子を含む。別の実施形態では、薬学的組成物は、HGT5001、DOPE、コレステロール、および/またはDMG−PEG2000を含む脂質ナノ粒子を含む。また別の実施形態では、薬学的組成物は、HGT5002、DOPE、コレステロール、および/またはDMG−PEG2000を含む脂質ナノ粒子を含む。
【0039】
ある実施形態では、本明細書に記載される薬学的組成物のうちの1つ以上は、1つ以上のPEG修飾された脂質を含み得る。例えば、本明細書に開示される化合物のうちの1つ以上を含む、ないしは別の方法でそれにより富化される脂質ナノ粒子は、1つ以上のC
6−C
20アルキルを含む脂質に共有結合された、長さが最大5kDaのポリ(エチレン)グリコール鎖を含むPEG修飾された脂質のうちの1つ以上をさらに含み得る。
【0040】
同様に、本明細書に開示される薬学的組成物(例えば脂質ナノ粒子)は、本明細書に開示される化合物のうちの1つ以上を含み得るか、ないしは別の方法でそれにより富化され得、DSPC(1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン)、DPPC(1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン)、DOPE(1,2−ジオレイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン)、DPPE(1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン)、DMPE(1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン)、DOPG(,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−(1’−rac−グリセロール))、DOPE(1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン)、DSPE(1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン)、DLPE(1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン)、DPPS(1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−L−セリン)、セラミド、スフィンゴミエリン、およびコレステロールからなる群から選択されるヘルパー脂質のうちの1つ以上をさらに含み得る。
【0041】
ある実施形態では、本化合物、ならびにそのような化合物を含む薬学的およびリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)は、1つ以上のポリヌクレオチド(例えば被包されたDNAまたはRNA)を含む。他の実施形態では、1つ以上のポリヌクレオチドは、少なくとも1つのロックド核酸(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、16、18、20以上のロックド核酸残基またはモノマー)を含む。1つ以上の被包されたポリヌクレオチドがRNAを含む場合、そのようなRNAは、例えばmRNA、siRNA、snoRNA、マイクロRNA、およびそれらの組み合わせを含み得る。
【0042】
ある実施形態では、その薬学的およびリポソーム組成物に被包されたポリヌクレオチドは、例えば機能性ポリペプチド、タンパク質、または酵素をコードするmRNAを含み、1つ以上の標的細胞によって発現される(すなわち翻訳される)とき、機能性発現生成物(例えばポリペプチド、タンパク質、または酵素)が生成され、いくつかの場合では、標的細胞によって対象の末梢循環(例えば血漿)内に分泌される。ある実施形態では、本明細書に記載される化合物、ならびに薬学的およびリポソーム組成物を含む(ないしは別の方法でその中に充填もしくは被包された)ポリヌクレオチドのうちの1つ以上は、対象によって異常に発現される核酸(例えばポリペプチド)をコードする。ある実施形態では、そのような化合物およびリポソームもしくは薬学的組成物(例えば脂質ナノ粒子)を含む被包されたポリヌクレオチドのうちの1つ以上は、機能タンパク質または酵素をコードする。例えば、ポリヌクレオチド(例えばmRNA)は、エリスロポエチン、ヒト成長ホルモン、嚢胞性線維症膜貫通型コンダクタンス調節因子(CFTR)、アルファ−グルコシダーゼ、アリールスルファターゼA、アルファ−ガラクトシターゼA、アルファ−L−イズロニダーゼ、イズロネート−2−スルファターゼ、イズロネート、スルファターゼ、N−アセチルグルコサミン−1−リン酸転移酵素、N−アセチルグルコサミニダーゼ、アルファ−グルコサミニドアセチル転移酵素、N−アセチルグルコサミン6−スルファターゼ、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ、ベータ−グルコシダーゼ、ガラクトース−6−硫酸スルファターゼ、ベータ−ガラクトシターゼ、ベータ−グルクロニダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、ヘパランスルファミダーゼ、ヘパリン−N−スルファターゼ、リソソーム酸リパーゼ、ヒアルロニダーゼ、ガラクトセレブロシダーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)、カルバモイル−リン酸シンセターゼ1(CPS1)、アルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS1)、アルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)、およびアルギナーゼ1(ARG1)からなる群から選択されるタンパク質または酵素をコードし得る。
【0043】
ある実施形態では、被包されたポリヌクレオチドは、酵素をコードし、そのような酵素は、尿素回路酵素(例えばオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)、カルバモイル−リン酸シンセターゼ1(CPS1)、アルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS1)、アルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)、またはアルギナーゼ1(ARG1))であり得る。ある実施形態では、被包されたポリヌクレオチドのうちの1つ以上は、リソソーム貯蔵障害に関連する酵素をコードするmRNAを含む(例えば被包されたポリヌクレオチドは、酵素α−ガラクトシターゼA、イズロネート−2−スルファターゼ、イズロネートスルファターゼ、N−アセチルグルコサミン−1−リン酸転移酵素、ベータ−グルコシダーゼ、およびガラクトセレブロシダーゼのうちの1つ以上をコードするmRNAである)。
【0044】
本明細書に開示される化合物のうちの1つ以上と、1つ以上のポリヌクレオチド(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド)、特に1つ以上の化学修飾を含むポリヌクレオチドとを含む薬学的およびリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)も、本明細書において想定される。想定されるポリヌクレオチド修飾には、例えば糖修飾または糖置換(例えば2′−O−アルキル修飾、固定されたポリヌクレオチド(LNA)、またはペプチドポリヌクレオチド(PNA)のうちの1つ以上)を挙げることができる。糖修飾が2′−O−アルキル修飾である実施形態では、そのような修飾は、2′−デオキシ−2′−フルオロ修飾、2′−O−メチル修飾、2′−O−メトキシエチル修飾、および2′−デオキシ修飾を含むが、これらに限定されない。修飾が核酸塩基修飾である、ある実施形態では、そのような修飾は、5−メチルシチジン、プソイドウリジン、2−チオウリジン、5−メチルシトシン、イソシトシン、偽イソシトシン、5−ブロモウラシル、5−プロピニルウラシル、6−アミノプリン、2−アミノプリン、イノシン、ジアミノプリン、および2−クロロ−6−アミノプリンシトシン、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0045】
ポリヌクレオチドがmRNAであるこれらの実施形態では、それらの化学修飾は、好ましくは、mRNAにより良い安定性(例えばヌクレアーゼ分解に対するより良い耐性)を付与し、例えばmRNAの5’または3’非翻訳領域の末端保護修飾を含み得る。ある実施形態では、化学修飾は、mRNAの5’非翻訳領域への部分配列のCMV最初期1(IE1)遺伝子の包含を含む。他の実施形態では、化学修飾は、mRNAの3’非翻訳領域へのポリAテールの包含を含む。mRNAの5’非翻訳領域へのCap1構造の包含を含む化学修飾も想定される。さらに他の実施形態では、化学修飾は、mRNAの3’非翻訳領域へのヒト成長ホルモン(hGH)をコードする配列の包含を含む。
【0046】
本明細書に記載される化合物および薬学的組成物は、1つ以上の標的細胞、組織、および臓器を特異的に標的とする、ならびに/または形質移入するように製剤化され得る。ある実施形態では、そのような化合物および薬学的組成物は、1つ以上の機構(例えば融合に基づく放出および/または標的細胞の脂質2重層膜のプロトン−スポンジ媒介破壊)によるそのような標的細胞の形質移入を容易にする。想定される標的細胞は、例えば、肝細胞、造血細胞、上皮細胞、内皮細胞、肺細胞、骨細胞、幹細胞、間葉細胞、神経細胞、心細胞、脂肪細胞、血管平滑筋細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、ベータ細胞、下垂体細胞、滑液系列統細胞、卵巣細胞、精巣細胞、B細胞、T細胞、網状赤血球、白血球、顆粒球、および腫瘍細胞からなる群から選択される1つ以上の細胞を含む。
【0047】
対象の疾患(例えば遺伝子または核酸の異常発現に関連する疾患)を治療する方法も開示され、本方法は、本明細書に記載される化合物および/または薬学的組成物のうちの1つ以上を対象に投与することを含む。1つ以上の標的細胞に1つ以上のポリヌクレオチドを形質移入する方法も想定され、本方法は、1つ以上の標的細胞に被包された1つ以上のポリヌクレオチドが形質移入されるように、1つ以上の標的細胞を本明細書に記載される化合物または薬学的組成物と接触させることを含む。
【0048】
上述および本発明の多くの他の特徴および付随する利点は、付随する実施例と組み合わされるとき、以下の発明を実施するための形態を参照することによりさらに理解されるだろう。本明細書に記載される様々な実施形態は、補足的であり、本明細書に含まれる教示を考慮して、当業者によって理解される様式で一緒に組み合わされるか、または使用することができる。
例えば、本発明は、以下の項目を提供する:
(項目1)
構造
【化20】
を有する化合物であって、式中、R1およびR2がそれぞれ独立して、水素、任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC1−C20アルキル、および任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC6−C20アシルからなる群から選択され、
L1およびL2がそれぞれ独立して、任意に置換されたC1−C30アルキル、任意に置換された可変的に不飽和のC1−C30アルケニル、および任意に置換されたC1−C30アルキニルからなる群から選択され、
mおよびoがそれぞれ独立して、ゼロおよび任意の正の整数からなる群から選択され、
nが、任意の正の整数である、化合物。
(項目2)
R1およびR2がそれぞれ、メチルである、項目1に記載の化合物。
(項目3)
L1およびL2がそれぞれ、任意に置換された多価不飽和C6−C20アルケニルである、項目1に記載の化合物。
(項目4)
L1およびL2がそれぞれ、任意に置換された多価不飽和C18アルケニルである、項目1に記載の化合物。
(項目5)
L1およびL2がそれぞれ、非置換の多価不飽和C18アルケニルである、項目4に記載の化合物。
(項目6)
L1およびL2がそれぞれ、任意に置換されたオクタデカ−9,12−ジエンである、項目1に記載の化合物。
(項目7)
L1およびL2がそれぞれ、オクタデカ−9,12−ジエンである、項目5に記載の化合物。
(項目8)
mが、3である、項目1に記載の化合物。
(項目9)
nが、1である、項目1に記載の化合物。
(項目10)
nが、シス異性体である、項目9に記載の化合物。
(項目11)
nが、トランス異性体である、項目9に記載の化合物。
(項目12)
oが、ゼロである、項目1に記載の化合物。
(項目13)
R1およびR2がそれぞれ、メチルであり、L1およびL2がそれぞれ、オクタデカ−9,12−ジエンであり、mが、3であり、nが、1であり、oが、ゼロ0である、項目1に記載の化合物。
(項目14)
nが、シス異性体である、項目13に記載の化合物。
(項目15)
nが、トランス異性体である、項目13に記載の化合物。
(項目16)
項目1に記載の化合物を含む、薬学的組成物。
(項目17)
カチオン性脂質、PEG修飾された脂質、非カチオン性脂質、およびヘルパー脂質からなる群から選択される1つ以上の化合物をさらに含む、項目16に記載の薬学的組成物。
(項目18)
1つ以上のポリヌクレオチドをさらに含む、項目16に記載の薬学的組成物。
(項目19)
上記1つ以上のポリヌクレオチドが、化学修飾を含む、項目18に記載の薬学的組成物。
(項目20)
上記1つ以上のポリヌクレオチドが、1つ以上のロックド核酸(LNA)を含む、項目18に記載の薬学的組成物。
(項目21)
上記1つ以上のポリヌクレオチドが、DNA、RNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、miRNA、snRNA、snoRNA、mRNA、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目18に記載の薬学的組成物。
(項目22)
上記1つ以上のポリヌクレオチドが、mRNAを含む、項目18に記載の薬学的組成物。
(項目23)
上記mRNAが、酵素またはタンパク質をコードする、項目22に記載の薬学的組成物。
(項目24)
上記mRNAが、ヒト成長ホルモン、エリスロポエチン、α1−抗トリプシン、酸アルファグルコシダーゼ、アリールスルファターゼA、カルボキシペプチダーゼN、α−ガラクトシターゼA、アルファ−L−イズロニダーゼ、イズロネート−2−スルファターゼ、イズロネートスルファターゼ、N−アセチルグルコサミン−1−リン酸転移酵素、N−アセチルグルコサミニダーゼ、アルファ−グルコサミニドアセチル転移酵素、N−アセチルグルコサミン6−スルファターゼ、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ、ベータ−グルコシダーゼ、ガラクトース−6−硫酸スルファターゼ、ベータ−ガラクトシターゼ、ベータ−グルクロニダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、ヘパランスルファミダーゼ、ヘパリン−N−スルファターゼ、リソソーム酸リパーゼ、ヒアルロニダーゼ、ガラクトセレブロシダーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)、カルバモイル−リン酸シンセターゼ1(CPS1)、アルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS1)、アルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)、アルギナーゼ1(ARG1)、嚢胞性線維症膜貫通型コンダクタンス調節因子(CFTR)、生存運動ニューロン(SMN)、第VIII因子、第IX因子、および低密度リポタンパク質受容体(LDLR)からなる群から選択されるタンパク質または酵素をコードする、項目23に記載の薬学的組成物。
(項目25)
構造
【化21】
を有する化合物。
(項目26)
構造
【化22】
を有する化合物。
(項目27)
構造
【化23】
を有する化合物。
(項目28)
項目25または26に記載の化合物を含む、薬学的組成物。
(項目29)
上記組成物が、脂質ナノ粒子である、項目28に記載の薬学的組成物。
(項目30)
上記脂質ナノ粒子が、対象に投与されたとき、実質的に非毒性である、項目29に記載の薬学的組成物。
(項目31)
カチオン性脂質、中性脂質、PEG修飾された脂質、非カチオン性脂質、およびヘルパー脂質からなる群から選択される1つ以上の脂質をさらに含む、項目30に記載の薬学的組成物。
(項目32)
C14−DMG−PEG2000、DOPE、およびコレステロールをさらに含む、項目30に記載の薬学的組成物。
(項目33)
1つ以上の治療薬をさらに含む、項目30に記載の薬学的組成物。
(項目34)
上記治療薬が、ポリヌクレオチドである、項目33に記載の薬学的組成物。
(項目35)
構造
【化24】
を有する化合物であって、式中、R1およびR2がそれぞれ独立して、任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC1−C20アルキル、および任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC6−C20アシルからなる群から選択され、
L1およびL2がそれぞれ独立して、任意に置換されたC1−C30アルキル、任意に置換された可変的に不飽和のC1−C30アルケニル、および任意に置換されたC1−C30アルキニルからなる群から選択され、
m、n、およびoがそれぞれ独立して、ゼロおよび任意の正の整数からなる群から選択される、化合物。
(項目36)
R1およびR2がそれぞれ、メチルである、項目35に記載の化合物。
(項目37)
L1およびL2がそれぞれ、任意に置換された多価不飽和C6−C20アルケニルである、項目35に記載の化合物。
(項目38)
L1およびL2がそれぞれ、任意に置換された多価不飽和C18アルケニルである、項目35に記載の化合物。
(項目39)
L1およびL2がそれぞれ、非置換の多価不飽和C18アルケニルである、項目38に記載の化合物。
(項目40)
L1およびL2がそれぞれ、任意に置換されたオクタデカ−9,12−ジエンである、項目39に記載の化合物。
(項目41)
L1およびL2がそれぞれ、オクタデカ−9,12−ジエンである、項目39に記載の化合物。
(項目42)
mが、4である、項目35に記載の化合物。
(項目43)
nが、35である、項目35に記載の化合物。
(項目44)
oが、ゼロである、項目35に記載の化合物。
(項目45)
R1およびR2がそれぞれ、メチルであり、L1およびL2がそれぞれ、オクタデカ−9,12−ジエンであり、mが、4であり、nおよびoが、ゼロである、項目35に記載の化合物。
(項目46)
項目35に記載の化合物を含む、薬学的組成物。
(項目47)
カチオン性脂質、PEG修飾された脂質、非カチオン性脂質、およびヘルパー脂質からなる群から選択される1つ以上の化合物をさらに含む、項目46に記載の薬学的組成物。
(項目48)
1つ以上のポリヌクレオチドをさらに含む、項目46に記載の薬学的組成物。
(項目49)
上記1つ以上のポリヌクレオチドが、化学修飾を含む、項目48に記載の薬学的組成物。
(項目50)
上記1つ以上のポリヌクレオチドが、1つ以上のロックド核酸(LNA)を含む、項目48に記載の薬学的組成物。
(項目51)
上記1つ以上のポリヌクレオチドが、DNA、RNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、miRNA、snRNA、snoRNA、mRNA、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目48に記載の薬学的組成物。
(項目52)
上記1つ以上のポリヌクレオチドが、mRNAを含む、項目48に記載の薬学的組成物。
(項目53)
上記mRNAが、酵素またはタンパク質をコードする、項目52に記載の薬学的組成物。
(項目54)
上記mRNAが、ヒト成長ホルモン、エリスロポエチン、α1−抗トリプシン、酸アルファグルコシダーゼ、アリールスルファターゼA、カルボキシペプチダーゼN、α−ガラクトシターゼA、アルファ−L−イズロニダーゼ、イズロネート−2−スルファターゼ、イズロネートスルファターゼ、N−アセチルグルコサミン−1−リン酸転移酵素、N−アセチルグルコサミニダーゼ、アルファ−グルコサミニドアセチル転移酵素、N−アセチルグルコサミン6−スルファターゼ、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ、ベータ−グルコシダーゼ、ガラクトース−6−硫酸スルファターゼ、ベータ−ガラクトシターゼ、ベータ−グルクロニダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、ヘパランスルファミダーゼ、ヘパリン−N−スルファターゼ、リソソーム酸リパーゼ、ヒアルロニダーゼ、ガラクトセレブロシダーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)、カルバモイル−リン酸シンセターゼ1(CPS1)、アルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS1)、アルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)、アルギナーゼ1(ARG1)、嚢胞性線維症膜貫通型コンダクタンス調節因子(CFTR)、生存運動ニューロン(SMN)、第VIII因子、第IX因子、および低密度リポタンパク質受容体(LDLR)からなる群から選択されるタンパク質または酵素をコードする、項目53に記載の薬学的組成物。
(項目55)
構造
【化25】
を有する、化合物。
(項目56)
項目55に記載の化合物を含む、薬学的組成物。
(項目57)
上記組成物が、脂質ナノ粒子である、項目56に記載の薬学的組成物。
(項目58)
上記脂質ナノ粒子が、対象に投与されたとき、実質的に非毒性である、項目57に記載の薬学的組成物。
(項目59)
カチオン性脂質、中性脂質、PEG修飾された脂質、非カチオン性脂質、およびヘルパー脂質からなる群から選択される1つ以上の脂質をさらに含む、項目57に記載の薬学的組成物。
(項目60)
C14−DMG−PEG2000、DOPE、およびコレステロールをさらに含む、項目57に記載の薬学的組成物。
(項目61)
1つ以上の治療薬をさらに含む、項目57に記載の薬学的組成物。
(項目62)
上記治療薬が、ポリヌクレオチドである、項目61に記載の薬学的組成物。
(項目63)
構造
【化26】
を有する化合物であって、式中、R1およびR2がそれぞれ独立して、任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC1−C20アルキル、および任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC6−C20アシルからなる群から選択され、
L1およびL2がそれぞれ独立して、任意に置換されたC1−C30アルキル、任意に置換された可変的に不飽和のC1−C30アルケニル、および任意に置換されたC1−C30アルキニルからなる群から選択され、
xが、C5−C20アルキルおよび可変的に不飽和のC1−C20アルケニルからなる群から選択される、化合物。
(項目64)
R1およびR2がそれぞれ、メチルである、項目63に記載の化合物。
(項目65)
L1およびL2がそれぞれ、非置換の多価不飽和C18アルケニルである、項目63に記載の化合物。
(項目66)
L1およびL2がそれぞれ、任意に置換されたオクタデカ−9,12−ジエンである、項目63に記載の化合物。
(項目67)
L1およびL2がそれぞれ、オクタデカ−9,12−ジエンである、項目66に記載の化合物。
(項目68)
xが、C6アルケニルである、項目63に記載の化合物。
(項目69)
xが、ヘキサンである、項目63に記載の化合物。
(項目70)
xが、ヘキサ−1−エンである、項目63に記載の化合物。
(項目71)
xが、ヘキサ−2−エンである、項目63に記載の化合物。
(項目72)
xが、ヘキサンではない、項目63に記載の化合物。
(項目73)
R1およびR2がそれぞれ、メチルであり、L1およびL2がそれぞれ、オクタデカ−9,12−ジエンであり、xが、ヘキサンである、項目63に記載の化合物。
(項目74)
R1およびR2がそれぞれ、メチルであり、L1およびL2がそれぞれ、オクタデカ−9,12−ジエンであり、xが、ヘキサ−1−エンである、項目63に記載の化合物。
(項目75)
R1およびR2がそれぞれ、メチルであり、L1およびL2がそれぞれ、オクタデカ−9,12−ジエンであり、xが、ヘキサ−2−エンである、項目63に記載の化合物。
(項目76)
項目63に記載の化合物を含む、薬学的組成物。
(項目77)
カチオン性脂質、PEG修飾された脂質、非カチオン性脂質、およびヘルパー脂質からなる群から選択される1つ以上の化合物をさらに含む、項目63に記載の薬学的組成物。
(項目78)
上記組成物が、脂質ナノ粒子である、項目76に記載の薬学的組成物。
(項目79)
1つ以上のポリヌクレオチドをさらに含む、項目78に記載の薬学的組成物。
(項目80)
上記1つ以上のポリヌクレオチドが、化学修飾を含む、項目79に記載の薬学的組成物。
(項目81)
上記1つ以上のポリヌクレオチドが、1つ以上のロックド核酸(LNA)を含む、項目79に記載の薬学的組成物。
(項目82)
上記1つ以上のポリヌクレオチドが、DNA、RNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、miRNA、snRNA、snoRNA、mRNA、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目79に記載の薬学的組成物。
(項目83)
上記1つ以上のポリヌクレオチドが、mRNAを含む、項目79に記載の薬学的組成物。
(項目84)
上記mRNAが、酵素またはタンパク質をコードする、項目83に記載の薬学的組成物。
(項目85)
上記mRNAが、ヒト成長ホルモン、エリスロポエチン、α1−抗トリプシン、酸アルファグルコシダーゼ、アリールスルファターゼA、カルボキシペプチダーゼN、α−ガラクトシターゼA、アルファ−L−イズロニダーゼ、イズロネート−2−スルファターゼ、イズロネートスルファターゼ、N−アセチルグルコサミン−1−リン酸転移酵素、N−アセチルグルコサミニダーゼ、アルファ−グルコサミニドアセチル転移酵素、N−アセチルグルコサミン6−スルファターゼ、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ、ベータ−グルコシダーゼ、ガラクトース−6−硫酸スルファターゼ、ベータ−ガラクトシターゼ、ベータ−グルクロニダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、ヘパランスルファミダーゼ、ヘパリン−N−スルファターゼ、リソソーム酸リパーゼ、ヒアルロニダーゼ、ガラクトセレブロシダーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)、カルバモイル−リン酸シンセターゼ1(CPS1)、アルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS1)、アルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)、アルギナーゼ1(ARG1)、嚢胞性線維症膜貫通型コンダクタンス調節因子(CFTR)、生存運動ニューロン(SMN)、第VIII因子、第IX因子、および低密度リポタンパク質受容体(LDLR)からなる群から選択されるタンパク質または酵素をコードする、項目84に記載の薬学的組成物。
(項目86)
構造
【化27】
を有する化合物であって、式中、R1およびR2がそれぞれ独立して、任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC1−C20アルキル、および任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC6−C20アシルからなる群から選択され、
L1およびL2がそれぞれ独立して、任意に置換されたC1−C30アルキル、任意に置換された可変的に不飽和のC1−C30アルケニル、および任意に置換されたC1−C30アルキニルからなる群から選択され、
xが、C1−C10アルケニルである、化合物。
(項目87)
対象の疾患を治療する方法であって、上記対象に、項目33、61、または79に記載の有効量の薬学的組成物を投与することを含む、方法。
(項目88)
上記薬学的組成物が、上記対象に投与されたとき、実質的に非毒性である、項目86に記載の薬学的組成物。
(項目89)
1つ以上の標的細胞にポリヌクレオチドを形質移入する方法であって、上記1つ以上の標的細胞にポリヌクレオチドが形質移入されるように、上記1つ以上の標的細胞を項目33、61、または79の薬学的組成物と接触させることを含む、方法。
【発明を実施するための形態】
【0050】
例えばリポソーム送達ビヒクルまたはリポソーム送達ビヒクルの成分として有用である新規化合物が、本明細書において開示される。ある実施形態では、本明細書に開示される化合物は、リポソーム組成物または代替としてリポソーム組成物の成分として(例えば脂質ナノ粒子として)使用され得る。薬学的組成物(例えば脂質ナノ粒子)およびそのような薬学的組成物に関連する使用方法も開示される。ある実施形態では、そのような化合物および組成物は、例えば被包された材料(例えばポリヌクレオチド)の1つ以上の標的細胞、組織、および臓器への送達を容易にする。
【0051】
本明細書に開示されるカチオン性および/またはイオン化可能な化合物は、一般的に、極性(親水性)ヘッド基または部分および非極性(疎水性または親油性)テール基または部分の両方を含む。ある実施形態では、そのような極性ヘッド基および非極性テール基は、一般的に、相互に結合される(例えば水素結合、ファンデルワールス力、イオン相互作用、および共有結合のうちの1つ以上によって結合される)(例えば任意に置換された可変的に不飽和のC
1−C
10アルキルまたはアルケニルによって相互に共有結合されたヘッド基およびテール基)。ある実施形態では、ヘッド基または部分は、親水性(例えば任意に置換されたアルキルアミノを含む親水性ヘッド基)である。本明細書で使用される、用語「親水性」は、官能基が水を好むことを性質上の用語で示すために使用され、そのような官能基は水可溶性である。例えば、1つ以上の親水性基(例えば親水性ヘッド基)に結合された可変的に不飽和のアルキル官能基を含む化合物が、本明細書において開示され、そのような親水性基は、アミノ基または任意に置換されたアルキルアミノ基を含む。
【0052】
ある実施形態では、選択された親水性官能基または部分は、化合物、またはそのような化合物が成分であるリポソーム組成物の性質を変更する、ないしは別の方法でそれに性質を付与することができる(化合物が成分である脂質ナノ粒子の形質移入の効率を改善することによって)。例えば、本明細書に開示される化合物への親水性ヘッド基としてのアミノ基の組み込みは、そのような化合物(またはそのような化合物が成分であるリポソーム組成物)の、1つ以上の標的細胞の細胞膜との融合性を促進し、それによって、そのような化合物の形質移入の効率を強化することができる。同様に、1つ以上のアルキルアミノ基または部分の、開示される化合物(例えばヘッド基として)への組み込みは、そのようなアミノ基の融合性を利用することにより、エンドソーム/リソソーム膜の破壊をさらに促進することができる。これは、組成物のアミノ基のpKaだけでなく、アミノ基が六方晶相遷移を受け、小胞膜と融合する能力にも基づく。(Koltover,et al.Science(1998)281:78−81。)結果は、小胞膜の破壊、および脂質ナノ粒子の内容物の放出を促進すると考えられる。
【0053】
同様に、ある実施形態では、本明細書に開示される化合物への例えば正荷電されたまたはイオン化可能な親水性ヘッド基の組み込みは、本発明のリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)に被包される、例えば内容物のエンドソームまたはリソソーム放出を促進する働きをし得る。そのような強化された放出は、プロトン−スポンジ媒介破壊機構および/または強化された融合機構のうちの1つまたはそれらの両方によって達成され得る。プロトン−スポンジ機構は、化合物、特に化合物の官能部分または基がエンドソームの酸性化を緩衝する能力に基づく。これは、化合物、またはそのような化合物を含む官能基のうちの1つ以上(例えばアミノ)のpKaによって操作されるか、ないしは別の方法で制御され得る。そのようなエンドソーム破壊性質は、同時に、浸透膨潤およびリソソーム膜の破壊、それに続くその中に充填または被包されたポリヌクレオチド材料の標的細胞内への形質移入または細胞内放出を促進する。
【0054】
本明細書に開示される脂質化合物は、一般的に、1つ以上のアルキルまたはアリール置換基を有するアミン官能基などの1つ以上のカチオン性および/またはイオン化可能な官能ヘッド基を含み得る。ある実施形態では、本明細書に開示される脂質化合物は、疎水性官能基、置換基、または部分(例えばR
1基およびR
2基、ここでR
1およびR
2の両方は独立して、C
1−C
10アルキルからなる群から選択される)に結合される(例えば共有結合)カチオン性のイオン化可能なアミノ官能ヘッド基を含み得る。ある実施形態では、そのような親水性および疎水性官能基は、中間基(例えばアルキルまたは可変的に不飽和のアルケニル)により相互に結合される(例えば共有結合)。
【0055】
本明細書に記載される化合物(例えばHGT5000、HGT5001、およびHGT5002)は、特にC12−200などの従来の脂質およびカチオン性脂質に対するそれらの減少した毒性も特徴とする。したがって、本明細書に開示される化合物のうちの1つ以上は、有効量の1つ以上の薬剤を標的細胞および組織に送達するのに必要な量では毒性と特徴付けられる1つ以上の従来の脂質の代わりに使用され得る。例えば、いくつかの実施形態では、薬学的およびリポソーム組成物は、リポソーム組成物に関連する毒性を減少させる、ないしは別の方法で排除する手段として、本明細書に開示されるイオン化可能なカチオン性脂質化合物(例えばHGT5000、HGT5001、および/またはHGT5002)のうちの1つ以上を含むように調製され得る。カチオン性のイオン化可能な化合物または脂質(例えばHGT5000、HGT5001、および/またはHGT5002)は、本明細書に記載される薬学的およびリポソーム組成物のうちの1つ以上において単一のカチオン性脂質として使用されるか、または代替として、従来のカチオン性脂質(例えばLIPOFECTINまたはLIPOFECTAMINE)、非カチオン性脂質、PEG修飾された脂質、および/またはヘルパー脂質と組み合わされ得る。ある実施形態では、本明細書に記載される化合物、または代替として薬学的およびリポソーム組成物の全カチオン性脂質成分は、そのような薬学的またはリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)に存在する全脂質の約1%〜約90%、約2%〜約70%、約5%〜約50%、約10%〜約40%のモル比、または好ましくはそのような薬学的またはリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)に存在する全脂質の約20%〜約70%を含み得る。加えて、リポソームビヒクルを、本明細書に開示されるカチオン性のイオン化可能な脂質化合物と組み合わせる、またはそれで富化することにより、リポソームビヒクルの他の脂質成分の濃度において対応する減少を可能にし、それによって、リポソームビヒクルに同様に存在し得る他のカチオン性脂質(例えばC12−200)に関連する毒性を減少させる、ないしは別の方法で緩和させる手段を提供する。
【0056】
ある実施形態では、本明細書に開示される化合物を含む部分の官能基のうちの少なくとも1つは、性質が疎水性(例えばコレステロールなどの天然に生じる脂質を含む疎水性テール基)である。本明細書で使用される、用語「疎水性」は、官能基が水を避けることを性質上の用語で示すために使用され、そのような官能基は水可溶性ではない。例えば、ある実施形態では、本明細書に開示される化合物の疎水性または親油性テール基(例えばL
1基およびL
2基のうちの1つ以上))は、コレステロールまたは任意に置換された可変的に不飽和のアルキルまたはアルケニル(例えば任意に置換されたオクタデカ−9,12−ジエン)などの1つ以上の非極性基を含み得る。
【0057】
ある実施形態では、本明細書に開示される化合物は、例えば少なくとも1つの親水性ヘッド基と、少なくとも1つの疎水性テール基とを含み、それぞれが、例えば任意に置換された可変的に飽和もしくは不飽和のアルキルまたはアルケニルによって相互に結合され、それによって、そのような化合物に両親媒性を付与する。化合物または組成物を説明するために本明細書に使用される、用語「両親媒性」は、極性(例えば水)および非極性(例えば脂質)の両方の環境に溶解する能力を意味する。例えば、ある実施形態では、本明細書に開示される化合物は、少なくとも1つの親油性テール基(例えばコレステロールまたはC
6−C
20アルキルもしくはアルケニル)と、少なくとも1つの親水性ヘッド基(例えばアルキルアミノ)を含み、それぞれ、中間C
1−C
20アルキルまたはアルケニル基(例えばヘキサンまたはヘキセン)に結合される。
【0058】
本発明の化合物、特にそのような化合物を含む官能基を説明するために使用される、用語「ヘッド基」および「テール基」は、他の官能基に対する1つ以上の官能基の配向を説明するために容易に参照できるように使用されることに留意するべきである。例えば、ある実施形態では、親水性ヘッド基(例えばアミノ)は、(水素結合、ファンデルワールス力、イオン相互作用、および共有結合のうちの1つ以上によって)アルキルまたはアルケニル官能基(例えばヘキサ−1−エン)に結合され、これは、同時に、疎水性テール基(例えばコレステロールまたはC
6−C
20の可変的に不飽和のアルケニル)に結合される。
【0060】
【化9】
の構造を有する化合物も開示され、式中、R
1およびR
2はそれぞれ独立して、水素、任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC
1−C
20アルキルもしくはアルケニル、および任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC
6−C
20アシルからなる群から選択され、L
1およびL
2はそれぞれ独立して、水素、任意に置換されたC
1−C
30アルキル、任意に置換された可変的に不飽和のC
1−C
30アルケニル、および任意に置換されたC
1−C
30アルキニルからなる群から選択され、mおよびoはそれぞれ独立して、ゼロおよび任意の正の整数からなる群から選択され(例えばmは3である)、nはゼロまたは任意の正の整数である(例えばnは1である)。
【0061】
ある実施形態では、化合物は、式(I)の構造を有し、式中、R
1およびR
2はそれぞれ、メチルである。そのような実施形態では、化合物の極性カチオン性ヘッド基は、イオン化可能なジメチルアミノ基を含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、化合物は、式(I)の構造を有し、式中、L
1およびL
2はそれぞれ、任意に置換された多価不飽和C
6−C
20アルケニルである。例えば、L
1およびL
2がそれぞれ、任意に置換された多価不飽和C
18アルケニルである化合物が想定される。他の実施形態では、L
1およびL
2はそれぞれ、非置換の多価不飽和C
18アルケニルである。また他の実施形態では、L
1およびL
2はそれぞれ、任意に置換されたオクタデカ−9,12−ジエン(またはオクタデカ−6,9−ジエン)である。さらに他の実施形態では、L
1は、水素であり、L
2は、コレステロールである。ある実施形態では、L
1およびL
2のそれぞれは、(9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエンである。ある実施形態では、L
1およびL
2のそれぞれは、クタデカ−6,9−ジエンである。
【0063】
本明細書に開示されるある実施形態では、本発明は、式(I)の構造を有する化合物に関し、式中、oは、ゼロである。代替として、他の実施形態では、oは、正の整数(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上)である。
【0064】
本明細書に開示されるある実施形態では、本発明は、式(I)の構造を有する化合物に関し、式中、mは、正の整数(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上)である。いくつかの特定の実施形態では、本発明は、式(I)の構造を有する化合物に関し、式中、mは、4である。いくつかの特定の実施形態では、本発明は、式(I)の構造を有する化合物に関し、式中、mは、3である。
【0065】
式(I)の構造を有する化合物も、本明細書に開示され、式中、nは、正の整数(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上)である。他の特定の実施形態では、本発明は、式(I)の構造を有する化合物に関し、nは、ゼロである。
【0066】
ある実施形態では、mおよびoは独立して、ゼロ、1(アルキルがエチルであるように)、2(アルキルがメチルであるように)、3(アルキルが、例えばプロピルまたはイソ−プロピルであるように)、4(アルキルが、例えばブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、またはter−ブチルであるように)、5(アルキルが、例えばペンタンであるように)、6(アルキルが、例えばヘキサンであるように)、7(アルキルが、例えばヘプタンであるように)、8(アルキルが、例えばオクタンであるように)、9(アルキルが、例えばノナンであるように)、または10(アルキルが、例えばデカンであるように)からなる群から選択される。
【0067】
いくつかの特定の実施形態では、本発明は、式(I)の構造を有する化合物に関し、式中、R
1およびR
2はそれぞれ、メチルであり、L
1およびL
2はそれぞれ、オクタデカ−9,12−ジエン(またはオクタデカ−6,9−ジエン)であり、mは、4であり、nは、ゼロであり、oは、1である。例えば、ある実施形態では、本発明は、化合物(15Z,18Z)−N,N−ジメチル−6−(9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イル)テトラコサ−15,18−ジエン−1−アミンに関し、式(II)の構造を有する(本明細書において「HGT5000」と称される)。
【0068】
【化10】
いくつかの特定の実施形態では、本発明は、式(I)の構造を有する化合物に関し、式中、R
1およびR
2はそれぞれ、メチルであり、L
1およびL
2はそれぞれ、オクタデカ−9,12−ジエン(またはオクタデカ−6,9−ジエン)であり、mは、3であり、nは1であり、oは、ゼロである。例えば、ある実施形態では、本発明は、化合物(15Z,18Z)−N,N−ジメチル−6−((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イル)テトラコサ−4,15,18−トリエン−1−アミンに関し、式(III)の構造を有する(本明細書において「HGT5001」と称される)。
【0069】
【化11】
nが1である、本明細書に開示されるこれらの実施形態では、そのような化合物は、シス異性体、トランス異性体、または代替として、それらのラセミ混合物であり得ることを理解するべきである。例えば、nが1である、ある実施形態では、式(IV)
【0070】
【化12】
の構造を有する化合物によって表されるように、nは、シス異性体である。
【0071】
代替として、nが1である、他の実施形態では、式(V)
【0072】
【化13】
の構造を有する化合物によって表されるように、nは、トランス異性体である。
【0074】
【化14】
の構造を有する化合物も開示され、式中、R
1およびR
2はそれぞれ独立して、水素、任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC
1−C
20アルキルもしくはアルケニル、および任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC
6−C
20アシルからなる群から選択され、L
1およびL
2はそれぞれ独立して、水素、任意に置換されたC
1−C
30アルキル、任意に置換された可変的に不飽和のC
1−C
30アルケニル、および任意に置換されたC
1−C
30アルキニルからなる群から選択され、m、n、およびoはそれぞれ独立して、ゼロおよび任意の正の整数からなる群から選択される。
【0075】
いくつかの特定の実施形態では、本発明は、式(VI)の構造を有する化合物を対象とし、式中、R
1およびR
2はそれぞれ、メチルである。他の実施形態では、本発明は、式(VI)の構造を有する化合物を対象とし、式中、R
1およびR
2はそれぞれ独立して、水素およびメチルからなる群から選択される。
【0076】
式(VI)の構造を有する化合物も想定され、式中、L
1およびL
2はそれぞれ、任意に置換された多価不飽和C
6−C
20アルケニル(例えば、L
1およびL
2はそれぞれ、任意に置換された多価不飽和C
18アルケニルであるか、またはL
1およびL
2はそれぞれ、非置換の多価不飽和C
18アルケニルである)である。ある実施形態では、本明細書において開示されるL
1およびL
2はそれぞれ、任意に置換されたオクタデカ−9,12−ジエン(またはオクタデカ−6,9−ジエン)である。他の実施形態では、L
1は、水素であり、L
2は、コレステロールである。
【0077】
本明細書に開示されるある実施形態では、本発明は、式(VI)の構造を有する化合物に関し、式中、mは、正の整数(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上)である。いくつかの特定の実施形態では、本発明は、式(VI)の構造を有する化合I物に関し、式中、mは、4である。ある実施形態では、本発明は、式(VI)の構造を有する化合物に関し、式中、mは、少なくとも5である(例えば、mは、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上である)。
【0078】
式(VI)の構造を有する化合物も、本明細書に開示され、式中、nは、正の整数(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上)である。他の特定の実施形態では、本発明は、式(VI)の構造を有する化合物に関し、nは、ゼロである。
【0079】
本明細書に開示されるある実施形態では、本発明は、式(VI)の構造を有する化合物に関し、式中、oは、正の整数(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上)である。ある実施形態では、本発明は、式(VI)の構造を有する化合物に関し、式中、oは、少なくとも5である(例えば、oは、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上である)。代替として、他の特定の実施形態では、本発明は、式(VI)の構造を有する化合物に関し、oは、ゼロである。
【0080】
式(VI)の構造を有する化合物も想定され、式中、R
1およびR
2はそれぞれ、メチルであり、L
1およびL
2はそれぞれ、オクタデカ−9,12−ジエン(またはオクタデカ−6,9−ジエン)であり、mは4であり、nおよびoの両方は、ゼロである。例えば、ある実施形態では、本発明は、式(VII)
【0081】
【化15】
の構造を有する化合物(15Z,18Z)−N,N−ジメチル−6−((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イル)テトラコサ−5,15,18−トリエン−1−アミンに関する(本明細書において「HGT5002」と称される)。
【0083】
【化16】
の構造を有する化合物も開示され、式中、R
1およびR
2はそれぞれ独立して、任意に置換された可変的に飽和もしくは不飽和のC
1−C
20アルキルまたはアルケニル、および任意に置換された可変的に飽和または不飽和のC
6−C
20アシルからなる群から選択され、L
1およびL
2はそれぞれ独立して、任意に置換されたC
1−C
30アルキル、任意に置換された可変的に不飽和のC
1−C
30アルケニル、および任意に置換されたC
1−C
30アルキニルからなる群から選択され、xは、C
1−C
20アルキルおよび可変的に不飽和のC
1−C
20アルケニルからなる群から選択される。
【0084】
ある実施形態では、開示される化合物は、式(VIII)の構造を有し、式中、R
1およびR
2はそれぞれ、メチルである。他の実施形態では、開示される化合物は、式(VIII)の構造を有し、式中、R
1およびR
2はそれぞれ独立して、水素およびC
1−C
6アルキルからなる群から選択される。
【0085】
他の実施形態では、本発明は、式(VIII)の構造を有する化合物に関し、式中、L
1およびL
2はそれぞれ、非置換の多価不飽和C
18アルケニルである。例えば、ある実施形態では、L
1およびL
2はそれぞれ、任意に置換されたオクタデカ−9,12−ジエンである(例えば、L
1およびL
2はそれぞれ、非置換のオクタデカ−9,12−ジエンまたはオクタデカ−6,9−ジエンである)。ある他の実施形態では、L
1は、水素であり、L
2は、コレステロールである。
【0086】
ある実施形態では、開示される化合物は、式(VIII)の構造を有し、式中、xは、C
6アルケニルである。他の実施形態では、開示される化合物は、式(VIII)の構造を有し、xは、ヘキサンである。また他の実施形態では、開示される化合物は、式(VIII)の構造を有し、式中、xは、ヘキサ−1−エンである。さらに他の実施形態では、開示される化合物は、式(VIII)の構造を有し、式中、xは、ヘキサ−2−エンである。ある実施形態では、xは、ヘキサンではない。他の実施形態では、開示される化合物は、式(VIII)の構造を有し、式中、xは、C
6−C
10アルケニルまたはC
6−C10アルキルである。
【0087】
特定の一実施形態では、本発明は、式(VIII)の構造を有する化合物に関し、式中、R
1およびR
2はそれぞれ、メチルであり、L
1およびL
2はそれぞれ、オクタデカ−9,12−ジエンであり、xは、ヘキサンである。別の特定の実施形態では、本発明は、式(VIII)の構造を有する化合物に関し、式中、R
1およびR
2はそれぞれ、メチルであり、L
1およびL
2はそれぞれ、オクタデカ−9,12−ジエン(またはオクタデカ−6,9−ジエン)であり、xは、ヘキサ−1−エンである。さらに別の実施形態では、本発明は、式(VIII)の構造を有する化合物に関し、式中、R
1およびR
2はそれぞれ、メチルであり、L
1およびL
2はそれぞれ、オクタデカ−9,12−ジエン(またはオクタデカ−6,9−ジエン)であり、xは、ヘキサ−2−エンである。
【0088】
本明細書で使用される、用語「アルキル」は、直鎖および分枝鎖両方のC
1−C
40炭化水素(例えばC
6−C
20炭化水素)を指し、飽和および不飽和両方の炭化水素を含む。ある実施形態では、アルキルは、1つ以上の環式アルキルおよび/または酸素、窒素、もしくは硫黄などの1つ以上のヘテロ原子を含み得、置換基(例えばアルキル、ハロ、アルコキシル、ヒドロキシ、アミノ、アリール、エーテル、エステル、またはアミドのうちの1つ以上)で任意に置換され得る。ある実施形態では、想定されるアルキル疎水性テール基は、(9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエンを含む。ある実施形態では、想定されるアルキル疎水性テール基は、(またはオクタデカ−6,9−ジエンを含む。例えば「C
6−C
20」などの指定の使用は、列挙される範囲の炭素原子を有するアルキル(例えば直鎖または分枝鎖、ならびにアルケンおよびアルキルを含む)を指すことが意図される。
【0089】
本明細書で使用される、用語「アリール」は、環部分に6〜10個の炭素を有する芳香族基(例えば単環式、二環式、および三環式構造)を指す。アリール基は、利用可能な炭素原子を通して任意に置換され得、ある実施形態では、酸素、窒素、または硫黄などの1つ以上のヘテロ原子を含む。
【0090】
化合物が1つ以上の不斉またはキラル分子(例えば1つ以上の不飽和炭素−炭素2重結合)を有する、本明細書に記載されるこれらの実施形態では、シス(Z)およびトランス(E)異性体の両方は、この発明の範囲内であることを理解するべきである。
【0091】
本明細書に記載される化合物は、被包された材料(例えば1つ以上の治療用ポリヌクレオチド)の1つ以上の標的細胞への送達および放出(例えば透過またはそのような標的細胞の脂質膜との融合により)を容易にする、または強化するリポソーム組成物を構築するために使用され得る。例えば、リポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)が本明細書に開示される化合物のうちの1つ以上を含むか、ないしは別の方法でそれにより富化されるとき、1つ以上の標的細胞の脂質2重層における相転移は、1つ以上の標的細胞への被包された材料(例えば、脂質ナノ粒子に被包された1つ以上の治療用ポリヌクレオチド)の送達を容易にすることができる。同様に、ある実施形態では、本明細書に開示される化合物は、生体内でのそれらの減少した毒性を特徴とするリポソームビヒクルを調製するために使用され得る。ある実施形態では、減少した毒性は、そのような組成物の換算量が所望の治療応答または成果を達成するように対象に投与され得るような、本明細書に開示される組成物に関連する高い形質移入効率の関数である。
【0092】
ある実施形態では、本明細書に記載される化合物は、そのような化合物に、他の同様に分類される脂質に対する利点を提供する1つ以上の性質を有することを特徴とする。例えば、ある実施形態では、本明細書に開示される化合物は、リポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)が成分であるその性質を制御および製作することを可能にする。特に、本明細書に開示される化合物は、形質移入の効率および特定の生物学的成果を誘発するその能力の強化を特徴とし得る。そのような成果は、例えば、細胞取り込みの強化、エンドソーム/リソソーム破壊機能、および/または細胞内での被包された材料(例えばポリヌクレオチド)の放出の促進を含み得る。
【0093】
ある実施形態では、本明細書に記載される化合物(ならびにそのような化合物を含む薬学的およびリポソーム組成物)は、被包された材料(例えば1つ以上のポリヌクレオチド)の、1つ以上の標的細胞への送達、および後のそれらへの形質移入を容易にするための多機能戦略を採用する。例えば、ある実施形態では、本明細書に記載される化合物(ならびにそのような化合物を含む薬学的およびリポソーム組成物)は、そのような化合物に、受容体媒介飲食作用、クラスリン媒介およびカベオラ媒介飲食作用、食作用およびマクロ飲作用、膜融合、エンドソームまたはリソソーム破壊、ならびに/または他の同様に分類される脂質に対する利点をもたらす放出可能性質のうちの1つ以上を有することを特徴とする。
【0094】
ある実施形態では、化合物ならびにそのような化合物が成分(例えば脂質ナノ粒子)である薬学的およびリポソーム組成物は、1つ以上の標的細胞に形質移入する強化された(例えば増加された)能力を呈する。したがって、本明細書において、1つ以上の標的細胞に形質移入する方法も提供される。そのような方法は、一般的に、1つ以上の標的細胞にその中に被包された材料(例えば1つ以上のポリヌクレオチド)が形質移入されるように、1つ以上の標的細胞を、本明細書に開示される化合物および/または薬学的組成物(例えば、1つ以上のポリヌクレオチドを被包するHGT5000、HGT5001、および/またはHGT5002に基づく脂質ナノ粒子)と接触させるステップを含む。本明細書で使用される、用語「形質移入する」または「形質移入」とは、1つ以上の被包された材料(例えば核酸および/またはポリヌクレオチド)を細胞、好ましくは標的細胞内に細胞内導入することを指す。導入されたポリヌクレオチドは安定であるか、または標的細胞内に一過的に維持され得る。用語「形質移入の効率」とは、そのような被包された材料(例えばポリヌクレオチド)が形質移入を受ける標的細胞によって取り込まれる、その中に導入される、および/またはそれによって発現される相対的な量を指す。特に、形質移入効率は、形質移入後に標的細胞によって生成されたレポーターポリヌクレオチド生成物の量によって推定することができる。ある実施形態では、本明細書に記載される化合物および薬学的組成物は、高い形質移入効率を示し、それによって、被包された材料(例えば1つ以上のポリヌクレオチド)の適切な投薬量が病変部位に送達され、後に発現される可能性を改善すると同時に、化合物またはそれらの被包された内容物に関連する全身的な有害作用の可能性または毒性を最小にする。
【0095】
薬学的または治療効果を与えることができる広範囲の材料が、本発明の化合物、組成物、および方法を用いて、標的細胞に送達することができる。したがって、本明細書に記載される化合物ならびに薬学的およびリポソーム組成物は、細胞内送達に適する任意の材料を被包するために使用され得る。ある実施形態では、そのような被包された材料は、そのような材料が送達される細胞に対して、治療または診断利益を付与することができ、任意の薬物、生物製剤、および/または診断薬を含み得る。材料は有機または無機であり得る。有機分子は、ペプチド、タンパク質、炭水化物、脂質、ステロール、核酸(ペプチド核酸を含む)、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。ある実施形態では、本明細書に開示される薬学的およびリポソーム組成物は、2種類以上の材料、例えば、タンパク質、酵素、および/またはステロイドをコードする2つ以上の異なるポリヌクレオチド配列を含む、ないしは別の方法で被包することができる。ある実施形態では、被包された材料は1つ以上のポリヌクレオチドおよび核酸である。
【0096】
本明細書で使用される、用語「ポリヌクレオチド」および「核酸」とは、遺伝的材料(例えばDNAまたはRNA)を指すように互換的に使用され、そのような用語が本明細書に記載される化合物および組成物(例えば脂質ナノ粒子)に関して使用されるとき、一般に、そのような化合物および組成物(例えば脂質ナノ粒子)によって被包される遺伝的材料を指す。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドはRNAである。好適なRNAは、mRNA、siRNA、miRNA、snRNA、およびsnoRNAを含む。想定されるポリヌクレオチドは、一般にタンパク質をコードしないが、むしろ例えば免疫シグナル伝達、幹細胞生物学、および疾患の発達において機能する大きな遺伝子間非コードRNA(lincRNA)も含む。(例えば、Guttman,et al.,458:223−227(2009)、およびNg,et al.,Nature Genetics42:1035−1036(2010)を参照のこと、その内容は参照により本明細書に組み込まれる)。ある実施形態では、本発明の化合物または薬学的およびリポソーム組成物によって被包されたポリヌクレオチドは、RNA、またはタンパク質もしくは酵素をコードする安定化されたRNA(例えば、α−ガラクトシターゼAまたはアリールスルファターゼAをコードするmRNA)を含む。本発明は、例えば、国際出願第PCT/US2010/058457号、米国仮出願第61/494,881号(代理人整理番号SHIR−025−001)(2011年6月8日に出願された)に開示されるように(それらの教示は両方とも、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)、標的細胞によって発現され、それによって、そのような標的細胞による機能酵素またはタンパク質の生成(およびある場合では、排出)を促進することができる治療薬としてのそのようなポリヌクレオチド(特に、RNAまたは安定化されたRNA)の使用を想定する。例えば、ある実施形態では、標的細胞による1つ以上のポリヌクレオチドが発現されるとき、対象が欠乏する機能酵素またはタンパク質(例えば尿素回路酵素またはリソソーム貯蔵障害に関連する酵素)の生成が観察され得る。タンパク質または酵素を限定するために本明細書で使用される、用語「機能」とは、タンパク質または酵素が、生物活性を有するか、または別の方法としては、未変性もしくは正常に機能するタンパク質または酵素と同じもしくは類似する機能を実行することができることを意味する。
【0097】
ある実施形態では、本明細書に記載される化合物ならびに薬学的およびリポソーム組成物は、混合製剤または組成物として製剤化される。例えば、一実施形態では、薬学的組成物は、HGT5000を含む第1の脂質ナノ粒子と、HGT5001を含む第2の脂質ナノ粒子を3:1の割合で含む混合製剤を含む。したがって、例えば、2011年6月8日に出願された米国仮出願第61/494,714号(代理人整理番号SHIR−021−001)(その教示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)に開示されるように、1つ以上の標的細胞および組織においてポリヌクレオチドの発現を調節するための混合薬学的組成物および関連する方法も、本明細書において提供される。例えば、1つ以上の標的細胞による、そのような混合薬学的組成物に被包された1つ以上のポリヌクレオチド(例えばmRNA)によってコードされる1つ以上の機能ポリペプチド、タンパク質、または酵素の生成および/または分泌を調節する(例えば、増加させる、または相乗的に増加させる)ための方法も想定される。
【0098】
本発明との関連において、用語「発現」は、その広い意味において、特定の遺伝子もしくはポリヌクレオチドが少なくとも1つのmRNA転写物へ転写される、または少なくとも1つのmRNAもしくはポリヌクレオチドがタンパク質または酵素に翻訳されるかのいずれかを指すように使用される。例えば、ある実施形態では、本明細書に記載される化合物ならびに薬学的もしくはリポソーム組成物は、機能タンパク質または酵素をコードするポリヌクレオチド(例えばmRNA)を含む。そのようなmRNAポリヌクレオチドとの関連において、用語「発現」は、そのようなmRNAが翻訳され(例えば標的細胞により)、それによってコードされるポリペプチドもしくはタンパク質を生成することを指す。
【0099】
ある実施形態では、本明細書に提供される化合物および薬学的組成物は、1つ以上の標的細胞および組織において異常に発現した核酸およびポリヌクレオチドを調節することができる。したがって、本明細書において、本明細書に記載される有効量の化合物および/または薬学的もしくはリポソーム組成物を対象に投与することにより、対象の疾患を治療する方法も提供される。ある実施形態では、そのような方法は、1つ以上の標的細胞および組織(例えば肝細胞)において、ポリヌクレオチドの発現を強化(例えば増加)する、および/または機能性ポリペプチド生成物の生成および分泌を増加することができる。いくつかの実施形態では、標的細胞または組織は、本明細書に記載される化合物または薬学的およびリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)のうちの1つ以上によって被包されたポリヌクレオチドを異常に発現する。1つ以上の標的細胞、組織、および臓器(例えば肺、心臓、脾臓、肝臓、および/または腎臓)において1つ以上のポリヌクレオチド(例えばmRNA)の発現を増加させる方法も、本明細書において提供される。一般に、そのような方法は、標的細胞を、1つ以上のポリヌクレオチドを含む、ないしは別の方法で被包する1つ以上の化合物および/または薬学的もしくはリポソーム組成物と接触させることを含む。
【0100】
ある実施形態では、本明細書に開示される化合物は、リポソームとして、またはリポソームの成分として使用され得る。具体的には、ある実施形態では、本明細書に開示される化合物は、リポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)の脂質(例えばカチオン性脂質)成分として使用され得る。そのようなリポソームは、材料を被包し、そのような材料の、1つ以上の標的細胞、組織、および器官への送達を容易にするために使用され得る。本明細書で使用される、用語「リポソーム」とは、一般に、1つ以上の球状2重層または2重層に配置された脂質(例えば両親媒性脂質)から構成される小胞を指す。ある実施形態では、リポソームは、脂質ナノ粒子(例えば、本明細書に開示されるカチオン性脂質化合物のうちの1つ以上を含む脂質ナノ粒子)である。そのようなリポソームは、親油性材料から形成された膜、および1つ以上の標的細胞、組織、および器官に送達される被包された材料(例えばポリヌクレオチド)を含む水性内部を有する単層または多層の小胞であり得る。ある実施形態では、本明細書に記載される薬学的およびリポソーム組成物は、1つ以上の脂質ナノ粒子を含む。想定されるリポソームは、脂質ナノ粒子を含む。本明細書において想定されるリポソームおよび脂質ナノ粒子を形成するために使用することができる好適な脂質(例えばカチオン性脂質)の例としては、本明細書に開示される化合物(例えばHGT5000、HGT5001、および/またはHGT5002)のうちの1つ以上が挙げられる。そのようなリポソームおよび脂質ナノ粒子は、C12−200、DLin−KC2−DMA、DOPE、DMG−PEG−2000、非カチオン性脂質、コレステロールに基づく脂質、ヘルパー脂質、PEG修飾された脂質などの追加のカチオン性脂質、ならびにホスファチジル化合物(例えばホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシド、およびガングリオシド)、および前述の組み合わせまたは混合物も含み得る。
【0101】
いくつかのカチオン性脂質が文献に記載されており、その多くは商業的に入手可能である。ある実施形態では、そのようなカチオン性脂質は、本明細書に開示される化合物または脂質(例えばHGT5000)のうちの1つ以上に加え、本明細書に記載される薬学的またはリポソーム組成物に含まれる。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチル塩化アンモニウムまたは「DOTMA」が使用される(Felgner et al.(Proc.Nat’l Acad.Sci.84,7413(1987)、米国特許第4,897,355)。DOTMAは単独で製剤化されるか、または中性脂肪、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミンもしくは「DOPE」、または他のカチオン性もしくは非カチオン性脂質を用いて脂質ナノ粒子内に組み合わされ得る。他の好適なカチオン性脂質には、例えばC12−200、5−カルボキシスペルミルグリシンジオクタデシルアミドもしくは「DOGS」、2,3−ジオレイルオキシ−N−[2(スペルミン−カルボキサミド)エチル]−N,N−ジメチル−1−プロパンアミニウムもしくは「DOSPA」(Behr et al.Proc.Nat.’l Acad.Sci.86,6982(1989)、米国特許第5,171,678号、米国特許第5,334,761号)、1,2−ジオレオイル−3−ジメチルアンモニウム−プロパンもしくは「DODAP」、1,2−ジオレオイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパンもしくは「DOTAP」が含まれる。想定されるカチオン性脂質には、1,2−ジステアロイルオキシ−N,N−ジメチル−3−アミノプロパンもしくは「DSDMA」、1,2−ジオレイルオキシ−N,N−ジメチル−3−アミノプロパンもしくは「DODMA」、1,2−ジリノレイルオキシ−N,N−ジメチル−3−アミノプロパンもしくは「DLinDMA」、1,2−ジリノレニルオキシ−N,N−ジメチル−3−アミノプロパンもしくは「DLenDMA」、N−ジオレイル−N,N−塩化ジメチルアンモニウムもしくは「DODAC」、N,N−ジステアリル−N,N−臭化ジメチルアンモニウムもしくは「DDAB」、N−(1,2−ジミリスチルオキシプロプ−3−イル)−N,N−ジメチル−N‐ヒドロキシエチル臭化アンモニウムもしくは「DMRIE」、3−ジメチルアミノ−2−(コレスト−5−エン−3−ベータ−オキシブタン−4−オキシ)−1−(シス,シス−9,12−オクタデカジエンオキシ)プロパンもしくは「CLinDMA」、2−[5′−(コレスト−5−エン−3−ベータ−オキシ)−3′−オキサペントキシ)−3−ジメチル 1−1−(シス,シス−9′,1−2′−オクタデカジエンオキシ)プロパンもしくは「CpLinDMA」、N,N−ジメチル−3,4−ジオレイルオキシベンジルアミンもしくは「DMOBA」、1,2−N,N′−ジオレイルカルバミル−3−ジメチルアミノプロパンもしくは「DOcarbDAP」、2,3−ジリノレオイルオキシ−N,N−ジメチルプロピルアミンもしくは「DLinDAP」、1,2−N,N′−ジリノレオイルカルバミル−3−ジメチルアミノプロパンもしくは「DLincarbDAP」、1,2−ジリノレオイルカルバミル−3−ジメチルアミノプロパンもしくは「DLinCDAP」、2,2−ジリノレイル−4−ジメチルアミノメチル−[1,3]−ジオキソランもしくは「DLin−K−DMA」、2,2−ジリノレイル−4−ジメチルアミノエチル−[1,3]−ジオキソランもしくは「DLin−K−XTC2−DMA」、またはそれらの混合物も含む。(Heyes,J.,et al.,J Controlled Release 107:276−287(2005)、Morrissey,DV.,et al.,Nat.Biotechnol.23(8):1003−1007(2005)、PCT公開第WO2005/121348A1号)。組成物(例えば脂質ナノ粒子)を製剤化するためのコレステロールに基づくカチオン性脂質の使用も本発明により想定される。そのようなコレステロールに基づくカチオン性脂質は、単独で、または他のカチオン性もしくは非カチオン性脂質との組み合わせのいずれかで使用され得る。好適なコレステロールに基づくカチオン性脂質は、例えばDC−Chol(N,N−ジメチル−N−エチルカルボキサミドコレステロール),1,4−ビス(3−N−オレイルアミノ−プロピル)ピペラジンを含む(Gao,et al.Biochem.Biophys.Res.Comm.179,280(1991)、Wolf et al.BioTechniques23,139(1997)、米国特許第5,744,335号)。
【0102】
加えて、形質移入の有効性を強化するためにいくつかの試薬が市販されている。好適な例としては、LIPOFECTIN(DOTMA:DOPE)(Invitrogen,Carlsbad,Calif.)、LIPOFECTAMINE(DOSPA:DOPE)(Invitrogen)、LIPOFECTAMINE2000(Invitrogen)、FUGENE、TRANSFECTAM(DOGS)、およびEFFECTENEが挙げられる。ジアルキルアミノに基づく、イミダゾールに基づく、およびグアニジウムに基づく脂質等のカチオン性脂質も想定される。国際出願第PCT/US2010/058457号(その教示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)に開示されるように、例えば、カチオン性脂質(3S,10R,13R,17R)−10,13−ジメチル−17−((R)−6−メチルヘプタン−2−イル)−2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−イル3−(1H−イミダゾール−4−イル)プロパン酸、または「ICE」の使用も想定される。
【0103】
好ましくは本明細書に開示される化合物および脂質のうちの1つ以上との組み合わせで、本明細書に記載されるリポソームおよび薬学的組成物にN−オクタノイル−スフィンゴシン−1−[スクシニル(メトキシポリエチレングリコール)−2000](C8 PEG−2000セラミド)を含む、誘導体化されたセラミド(PEG−CER)等のポリエチレングリコール(PEG)修飾されたリン脂質および誘導化された脂質の使用および包含も想定される。想定されるPEG修飾された脂質には、C
6−C
20の長さのアルキル鎖(複数可)を有する脂質に共有結合された長さが最大5kDaのポリエチレングリコール鎖が含まれるが、これに限定されない。そのような化合物の追加は、複合体の凝集を防止することができ、また循環生存期間を増加させ、脂質−ポリヌクレオチド組成物の標的組織への送達を増加させる手段も提供することができるか(Klibanov et al.(1990)FEBS Letters,268(1):235−237)、またはそれらは、生体内で製剤から迅速に交換するように選択され得る(米国特許第5,885,613号を参照)。特に有用な交換可能な脂質は、短いアシル鎖(例えばC14またはC18)を有するPEG−セラミドである。本発明のPEG修飾されたリン脂質および誘導体化された脂質は、リポソーム脂質ナノ粒子に存在する総脂質の約0%〜約20%、約0.5%〜約20%、約1%〜約15%、約4%〜約10%、または約2%のモル比を含み得る。
【0104】
本発明は、薬学的またはリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)のうちの1つ以上における非カチオン性脂質の使用も想定する。そのような非カチオン性脂質は、好ましくは、本明細書に開示される化合物および脂質のうちの1つ以上と組み合わせて使用される。本明細書で使用される、句「非カチオン性脂質」とは、任意の中性、双極性イオン、またはアニオン性の脂質を指す。本明細書で使用される、句「アニオン性脂質」とは、生理学的pH等の選択されたpHで、正味負電荷を持つ多くの脂質種のいずれかを指す。非カチオン性脂質は、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル−ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジオレオイル−ホスファチジルエタノールアミン4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボン酸塩(DOPE−mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル−ホスファチジル−エタノールアミン(DSPE)、DLPE(1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン)、DPPS(1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−L−セリン)、16−O−モノメチルPE、16−O−ジメチルPE、18−1−トランスPE、1−ステアロイル−2−オレオイル−ホスファチジエタノールアミン(SOPE)、セラミド、スフィンゴミエリン、コレステロール、またはそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。そのような非カチオン性脂質は単独で使用することができるが、好ましくは、他の賦形剤、例えば本明細書に開示されるカチオン性脂質化合物(例えばHGT5000、HGT5001、および/またはHGT5002)のうちの1つと組み合わせて使用される。カチオン性脂質と組み合わせて使用されるとき、非カチオン性脂質は、脂質ナノ粒子に存在する総脂質の5%〜約90%、または好ましくは約10%〜約70%のモル比を含み得る。
【0105】
本明細書に記載される薬学的またはリポソーム組成物を含む脂質ナノ粒子にポリマーを含むことも想定される。好適なポリマーは、例えば、ポリアクリレート、ポリアルキシアノアクリレート、ポリアクチド、ポリアクチド−ポリグリコシドコポリマー、ポリカプロラクトン、デキストラン、アルブミン、ゼラチン、アルギン酸塩、コラーゲン、キトサン、シクロデキストリン、およびポリエチレンイミンを含み得る。そのようなポリマーは単独で使用することができるが、好ましくは、他の賦形剤、例えば本明細書に開示されるカチオン性脂質化合物(例えばHGT5000、HGT5001、および/またはHGT5002)のうちの1つと組み合わせて使用される。
【0106】
ある実施形態では、薬学的およびリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)は、一部、標的細胞への形質移入(例えばポリヌクレオチドの)を容易にするその能力に基づき製剤化される。別の実施形態では、薬学的およびリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)は、ポリヌクレオチドの標的細胞、組織、または器官への送達を最適化するように選択および/または調製され得る。例えば、標的細胞が肝細胞である場合、薬学的および/またはリポソーム組成物(例えば大きさ、電荷、および/またはpH)の性質は、そのような組成物(例えば脂質ナノ粒子)を標的細胞または器官に効率的に送達する、免疫クリアランスを低下させる、および/またはその標的器官における保持を促進するように最適化され得る。別の方法としては、標的組織が中枢神経系である場合、薬学的およびリポソーム組成物の選択および調製は、血液脳関門に浸透させる、およびその内に保持する、ならびに/またはそのような組成物(例えば脂質ナノ粒子)をそのような標的組織に直接送達する代替え手段(例えば脳血管内投与を介して)を使用することを考慮しなければならない。ある実施形態では、薬学的もしくはリポソーム組成物またはその構成要素である脂質ナノ粒子は、被包された材料の移動を容易にする薬剤(例えば、血液脳関門への浸透を妨害または改善し、それによってそのような被包されたポリヌクレオチドの標的細胞への移動を強化する薬剤)と組み合わされ得る。本明細書に記載される薬学的およびリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)は、1つ以上のポリヌクレオチド等の被包された材料の標的細胞への導入を容易にすることができ、ポリカチオン(例えばポリL−リジンおよびプロタミン)を、例えばコポリマーとして薬学的組成物を含む脂質ナノ粒子のうちの1つ以上に付加することによっても容易にすることができ、いくつかの場合では、生体外および生体内における多くの細胞系において、いくつかの種類のカチオン性リポソームの形質移入の効率を2〜28倍顕著に強化する。(N.J.Caplen,et al.,Gene Ther.1995;2:603、S.Li,et al.,Gene Ther.1997;4,891を参照。)
本発明のある実施形態では、薬学的およびリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)は、1つ以上の材料または治療薬(例えばポリヌクレオチド)を被包するように調製される。所望の治療薬(例えばmRNA)をリポソームまたは脂質ナノ粒子中に組み込むプロセスは、本明細書において、「充填」または「被包」と称される(Lasic,et al,FEBS Lett.,312:255−258,1992)。脂質ナノ粒子充填または被包された材料(例えばポリヌクレオチド)は、脂質ナノ粒子の内部空間、脂質ナノ粒子の2重層膜内に完全に、または部分的に位置するか、または脂質ナノ粒子の外表面に会合し得る。
【0107】
例えばポリヌクレオチドを脂質ナノ粒子中に充填または被包することにより、そのようなポリヌクレオチドを迅速に排出させる、そのようなポリヌクレオチドおよび/または系もしくは受容体を分解する酵素もしくは化学物質(例えば血清)を含み得る環境からポリヌクレオチドを保護する働きをする可能性がある。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、特にそのようなポリヌクレオチドが曝される環境に関して、それによって被包されたポリヌクレオチド(複数可)の安定性を強化することができる。例えばポリヌクレオチド等の材料を、本明細書に記載される薬学的およびリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)のうちの1つ以上の中に被包することにより、そのようなポリヌクレオチドの標的細胞および組織内への送達も容易にする。例えば、本明細書に記載される脂質化合物のうちの1つ以上を含む脂質ナノ粒子は、被包されたポリヌクレオチドを標的細胞に到達させことができるか、または被包されたポリヌクレオチドを優先的に標的細胞または器官に差別的に到達させることができる(例えば脂質ナノ粒子は、そのような脂質ナノ粒子が投与される対象の肝臓または脾臓において濃縮され得る)。別の方法としては、脂質ナノ粒子は、被包されたポリヌクレオチドの、被包されたポリヌクレオチドの存在が望ましくない、または利用を限定するものであり得る他の非標的細胞または器官への送達を制限することができる。
【0108】
ある実施形態では、本明細書に記載される薬学的およびリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)は、複数の脂質成分(例えば、本明細書に開示される化合物のうちの1つ以上)を1つ以上のポリマー成分と組み合わせることにより調製される。例えば、脂質ナノ粒子は、HGT5000、DOPE、CHOL、およびDMG−PEG2000を用いて調製され得る。脂質ナノ粒子は、例えばHGT5001、DOPE、およびDMG−PEG2000を含む、様々な割合の追加の脂質の組み合わせから構成され得る。脂質ナノ粒子を含むカチオン性脂質、非カチオン性脂質、および/またはPEG修飾された脂質の選択、ならびにそのような脂質の相互に対する相対的モル比は、選択された脂質(複数可)の特性、意図される標的細胞または組織の性質、および脂質ナノ粒子によって送達される材料またはポリヌクレオチドの特性に基づく。さらなる考慮事項は、例えば、アルキル鎖の飽和、ならびに選択された脂質(複数可)の大きさ、電荷、pH、pKa、膜融合性、および毒性を含む。
【0109】
本明細書で使用するための薬学的およびリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)は、現在当該技術分野において既知である様々な技法により調製され得る。多層小胞(MLV)は、例えば、脂質を適切な溶剤に溶解し、次いで溶剤を蒸発させ、器の内部上に薄いフィルムを残すことにより、または噴霧乾燥により、選択された脂質を好適な容器もしくは器の内壁上に堆積させることによる従来の技法により調製され得る。次いで、MLVの形成をもたらす渦動運動している器に水相が添加され得る。次いで、単層小胞(ULV)は、均質化、音波処理、または多層小胞の押出により形成され得る。加えて、単層小胞は洗剤除去法により形成され得る。
【0110】
ある実施形態では、本発明の薬学的およびリポソーム組成物は、被包されたポリヌクレオチド(例えばmRNA)が脂質ナノ粒子の両表面上に会合され、同じ脂質ナノ粒子内に被包される、脂質ナノ粒子を含む。例えば、本発明の組成物の調製中、本明細書に記載され、脂質ナノ粒子を含むカチオン性脂質化合物のうちの1つ以上は、ポリヌクレオチド(例えばmRNA)と、そのようなポリヌクレオチドとの静電相互作用を通して会合し得る。
【0111】
ある実施形態では、本発明の薬学的およびリポソーム組成物は、生体外および生体内用途の両方で検出可能である診断用放射性核種、蛍光材料、または他の材料で充填され得る。例えば、本発明の使用に好適な診断用材料には、ローダミン−ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(Rh−PE)、緑色蛍光タンパク質mRNA、ウミシイタケルシフェラーゼmRNA、およびホタルルシフェラーゼmRNAが含まれ得る。
【0112】
本明細書に記載されるリポソーム組成物の調製中、水溶性の担体薬剤も、水和溶液にそれらを含むことにより水性内部に被包され得、親油性分子は、脂質製剤に含まれることにより脂質2重層中に組み込まれ得る。ある分子(例えば、カチオン性またはアニオン性の親油性ポリヌクレオチド)の場合において、ポリヌクレオチドの予め形成された脂質ナノ粒子またはリポソーム内への充填は、例えば、米国特許第4,946,683号に記載される方法(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)により達成され得る。ポリヌクレオチドの被包後、脂質ナノ粒子は、ゲルクロマトグラフィー、膜分離精製法、または限外濾過等のプロセスを通して被包されていないmRNAを除去するために処理され得る。例えば、本明細書に記載されるリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)の表面から外部的に結合されたポリヌクレオチドを除去することが望ましい場合、そのような脂質ナノ粒子は、ジエチルアミノエチルSEPHACELカラムに曝すことができる。
【0113】
被包された材料(例えばポリヌクレオチドまたは1つ以上の治療薬もしくは診断剤)に加え、脂質ナノ粒子に含まれるか、または被包され得る。例えば、そのような追加治療薬は、脂質ナノ粒子の表面と会合し得、脂質製剤に含む、または予め形成された脂質ナノ粒子内に充填することにより、脂質ナノ粒子の脂質2重層中に組み込まれ得る(米国特許第5,194,654号および第5,223,263号を参照、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0114】
本明細書に開示されるリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)の大きさを減少させる、または「寸法決定」するための方法がいくつかあり、寸法決定が本発明の一部として使用されるとき、一般に、それらの方法のいずれかを採用することができる。押出方法は、リポソーム寸法決定の一方法である。(Hope,M J et al.Reduction of Liposome Size and Preparation of Unilamellar Vesicles by Extrusion Techniques.In:Liposome Technology(G.Gregoriadis,Ed.)Vol.1.p123(1993))。本方法は、リポソームの大きさを比較的明確に定義された大きさ分布に減少させるために、小さい細孔のポリカーボネート膜または非対称セラミック膜を通してリポソームを押出すことからなる。典型的に、所望のリポソームの大きさ分布が達成されるまで、膜を通して1回以上懸濁液が巡回される。リポソームは、リポソームの大きさの漸進的な減少を達成するように、連続的により小さい細孔膜を通して押出され得る。
【0115】
脂質ナノ粒子の集団を寸法決定するために、当該技術分野において既知の様々な代替え方法が利用可能である。そのような寸法決定の一方法は、米国特許第4,737,323号に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。槽またはプローブ超音波処理のいずれかによるリポソームまたは脂質ナノ粒子懸濁液を超音波処理することにより、直径が約0.05ミクロン未満の小さいULVに漸進的に大きさの減少をもたらす。均質化は、大きいリポソームをより小さいものに細分化するための、せん断エネルギーに依存する別の方法である。典型的な均質化手順において、MLVは、典型的に約0.1〜0.5ミクロンの選択されたリポソームの大きさが観察されるまで、標準的なエマルジョンホモジナイザーを通して再循環される。脂質ナノ粒子の大きさは、Bloomfield,Ann.Rev.Biophys.Bioeng.,10:421−450(1981)(参照により本明細書に組み込まれる)に記載される擬電場光散乱(QELS)により決定され得る。平均脂質ナノ粒子直径は、形成された脂質ナノ粒子の音波処理により減少させることができる。間欠超音波処理周期は、十分なリポソーム合成を誘導するためにQELS評価と交互に行われてもよい。
【0116】
本明細書に記載されるリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)の適切な大きさの選択は、標的細胞または組織の部位、およびある程度脂質ナノ粒子が作製される用途を考慮しなければならない。本明細書で使用される、句「標的細胞」とは、本明細書に記載される薬学的およびリポソーム組成物のうちの1つ以上が誘導される、または標的とされる細胞を指す。いくつかの実施形態では、標的細胞は、特定の組織または器官を含む。いくつかの実施形態では、標的細胞は、関心のタンパク質または酵素が欠乏している。例えば、ポリヌクレオチドを肝細胞に送達することが所望される場合、肝細胞は標的細胞を表す。いくつかの実施形態では、本発明の薬学的またはリポソーム組成物(および例えばその中に被包されたポリヌクレオチド材料)は、非差別的に標的細胞に形質移入される(すなわち、非標的細胞に形質移入されない)。本発明の組成物および方法は、肝細胞、造血細胞、上皮細胞、内皮細胞、肺細胞、肺胞細胞、骨細胞、幹細胞、間葉細胞、神経細胞(例えば髄膜、星状膠細胞、運動ニューロン、後根神経節および前角運動ニューロンの細胞)、視細胞(例えば杆体および錐体)、網膜色素上皮細胞、分泌細胞、心細胞、脂肪細胞、血管平滑筋細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、ベータ細胞、下垂体細胞、滑液系列統細胞、卵巣細胞、精巣細胞、線維芽細胞、B細胞、T細胞、網状赤血球、白血球、顆粒球、および腫瘍細胞を含むが、これらに限定されない様々な標的細胞を優先的に標的とするように調製され得る。
【0117】
例えば、本明細書に開示される薬学的またはリポソーム組成物を含む1つ以上の脂質ナノ粒子に被包されたポリヌクレオチドによる1つ以上の標的細胞への形質移入後、そのようなポリヌクレオチドによってコードされた生成物(例えば、ポリペプチドまたはタンパク質)の生成が、好ましくは刺激され得、そのような標的細胞がポリヌクレオチドを発現し、例えば関心のポリペプチドまたはタンパク質を生成する能力が強化される。例えば、mRNAを被包する1つ以上の化合物または薬学的組成物による標的細胞への形質移入は、そのようなmRNAによってコードされるタンパク質または酵素の生成を強化(すなわち増加)する。
【0118】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドのある細胞または組織への形質移入を制限することが望ましい場合がある。例えば、肝臓は、一部、代謝およびタンパク質の生成におけるその中心的な役割のため、本発明の組成物に重要な標的器官を表し、したがって肝臓特異的遺伝子生成物(例えば尿素回路障害)における異常により生じる疾患は、細胞(例えば肝細胞)の特異的標的によって利益を得る場合がある。したがって、本発明のある実施形態では、標的組織の構造的特性は、本発明の薬学的およびリポソーム組成物(例えばHGT5001に基づく脂質ナノ粒子)をそのような標的組織に直接分布されるのを誘導するために利用され得る。例えば、肝細胞を標的とするために、本明細書に記載される薬学的またはリポソーム組成物を含む脂質ナノ粒子のうちの1つ以上は、その寸法が肝臓の内皮層系統肝類洞の開窓よりも小さいように寸法決定され得、したがって、そのような脂質ナノ粒子のうちの1つ以上は、そのような内皮開窓を容易に透過し、標的肝細胞に到達することができる。別の方法としては、脂質ナノ粒子は、リポソームの寸法がある細胞または組織内への分布を制限する、または明確に回避するのに十分な直径のものであるように寸法決定され得る。例えば、本明細書に記載される薬学的およびリポソーム組成物を含む脂質ナノ粒子は、その直径が内皮層系統肝類洞の開窓より大きく、それによってリポソーム脂質ナノ粒子の幹細胞への分布を制限するように寸法決定され得る。そのような実施形態では、大きいリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)は、内皮開窓を容易に透過せず、代わりに、肝臓の類洞を覆うマクロファージクッパー細胞により除去されるだろう。したがって、例えば薬学的組成物を含む脂質ナノ粒子の寸法決定は、被包されたポリヌクレオチドの発現が1つ以上の標的細胞において強化され得る程度をさらに操作し、正確に制御する機会を提供することができる。一般に、本発明の薬学的およびリポソーム組成物を含む脂質ナノ粒子のうちの少なくとも1つの大きさは、約25〜250nmの範囲内、好ましくは約250nm、175nm、150nm、125nm、100nm、75nm、50nm、25nm、または10nm未満である。
【0119】
同様に、本発明の組成物は、心臓、肺、腎臓、脾臓等の他の標的組織、細胞、または器官に優先的に分布されるように調製され得る。例えば、本発明の脂質ナノ粒子は、標的細胞および組織への送達の強化を達成するように調製され得る。したがって、本発明の組成物は、組織または細胞をさらに標的とするために、追加のカチオン性、非カチオン性、およびPEG修飾された脂質で富化され得る。
【0120】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される化合物ならびに薬学的およびリポソーム組成物(例えばHGT5002に基づく脂質ナノ粒子)は、その中に被包されたポリヌクレオチド(例えばmRNA)の送達、形質移入、および後の肝臓の細胞および組織による発現、ならびにそのようなポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドまたはタンパク質の対応する生成を強化するために、肝臓の細胞および組織に分布される。そのような組成物は肝臓の細胞および組織内に優先的に分布されるが、発現したポリヌクレオチドの治療効果およびそれによってコードされたタンパク質の後の生成は、標的細胞および組織に制限される必要はない。例えば、標的とされる細胞(例えば肝細胞)は、例えば、国際出願第PCT/US2010/058457号(代理人整理番号SHIR−004−WO1)おおび米国仮出願第61/494,881号(代理人整理番号SHIR−025−001)(それらの教示は両方とも、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)に開示されるように、機能タンパク質または酵素を発現または生成し、それらを全身的または抹消的に排出することができる「リザーバ」または「デポ」として機能することができる。したがって、本発明のある実施形態では、本明細書に記載される薬学的およびリポソーム組成物を含む脂質ナノ粒子(例えばHGT5000に基づく脂質ナノ粒子)のうちの1つ以上は、肝細胞を標的とし、かつ/または送達時に肝臓の細胞および組織に優先的に分布され得る。そのような脂質ナノ粒子のうちの1つ以上に被包されたポリヌクレオチドによる標的幹細胞への形質移入後、そのような機能生成物が所望の治療効果を及ぼすことが可能である場所に、そのようなポリヌクレオチドが発現し(例えば翻訳される)、機能生成物(例えば、ポリペプチドまたはタンパク質)が分泌され、全身的に分布される。
【0121】
本明細書に記載される化合物または薬学的およびリポソーム組成物のうちの1つ以上に被包されたポリヌクレオチドは、標的細胞または組織に送達および/または形質移入され得る。いくつかの実施形態では、被包されたポリヌクレオチドは発現することができ、機能ポリペプチド生成物が標的細胞によって生成され(いくつかの場合では分泌される)、それによって例えば標的細胞または組織に有益な性質を付与する。そのような被包されたポリヌクレオチドは、例えば、ホルモン、酵素、受容体、ポリペプチド、ペプチド、または関心の他のタンパク質をコードすることができる。ある実施形態では、そのような被包されたポリヌクレオチドは、内因性核酸または遺伝子の発現を調節する、ないしは別の方法で減少させる、または排除する目的のために、低干渉RNA(siRNA)またはアンチセンスRNAをコードすることもできる。ある実施形態では、そのような被包されたポリヌクレオチドは本来天然であるか、または組み換えであってもよく、センスまたはアンチセンスのいずれかの機構の作用を用いて(例えば標的遺伝子または核酸の発現を調節することにより)、治療活性を及ぼすことができる。
【0122】
例えば2つの独特の治療薬またはポリヌクレオチドを単一脂質ナノ粒子に組み合わせることによって、本発明に記載される化合物または薬学的およびリポソーム組成物により、1つ以上の独特のポリヌクレオチドを標的細胞に共送達することも本明細書により想定される。単一の障害または欠乏を治療するために、1つ以上の被包されたポリヌクレオチドを1つ以上の標的細胞に送達することも想定され、それぞれのそのようなポリヌクレオチドは異なる機構の作用によって機能する。例えば、本発明の薬学的またはリポソーム組成物は、例えば脂質ナノ粒子に被包され、内因性タンパク質または酵素欠乏を補正することが意図される第1のポリヌクレオチドと、機能不全の内因性ポリヌクレオチドおよびそのタンパク質もしくは酵素生成物を不活性化または「ノックダウン」することが意図される第2のポリヌクレオチドとを含み得る。そのような被包されたポリヌクレオチドは、例えばmRNAおよびsiRNAをコードすることができる。
【0123】
生体外転写されたポリヌクレオチド(例えばmRNA)は標的細胞内に形質移入され得るが、そのようなポリヌクレオチドは、生体内で細胞により容易にかつ効率的に分解され得、よってそのようなポリヌクレオチドを無効にする。さらに、いくつかのポリヌクレオチドは、体液において(特にヒトの血清)不安定であり、標的細胞に到達しないうちに分解または消化され得る。加えて、細胞内で、天然のmRNAは、30分〜数日の半減期で減衰し得る。したがって、ある実施形態では、本明細書に提供される被包されたポリヌクレオチド、特に本明細書に提供されるmRNAポリヌクレオチドは、好ましくは、1つ以上の標的細胞内で発現するか、または翻訳され、それによって機能タンパク質または酵素を生成する少なくともいくつかの能力を保持する。
【0124】
ある実施形態では、薬学的およびリポソーム組成物は、本明細書に開示される脂質化合物のうちの1つ以上と、遺伝子の発現を調節する、または1つ以上の標的細胞内で機能ポリペプチドもしくはタンパク質を生成するように発現または翻訳され得る、1つ以上の安定したポリヌクレオチド(例えば、生体内ヌクレアーゼ消化または分解に対して安定化されたmRNA)を含む、または被包する1つ以上の脂質ナノ粒子とを含む。ある実施形態では、そのような被包されたポリヌクレオチド(例えば機能タンパク質または酵素をコードするmRNA)の活性は、長期間にわたり延長される。例えば、ポリヌクレオチドの活性は、薬学的組成物が半週または隔週で、またはより好ましくは毎月、隔月、4半期、または年1回、対象に投与され得るように延長される。本発明の薬学的組成物、特に被包されたmRNAの活性の拡張または延長は、そのようなmRNAから翻訳された機能タンパク質または酵素の量に直接関係する。同様に、本発明の組成物の活性は、mRNAポリヌクレオチドの翻訳をさらに改善または強化するために行われる化学修飾によってさらに拡張または延長され得る。例えば、コザックコンセンサス配列はタンパク質の翻訳の開始に関与し、そのようなコザックコンセンサス配列を被包されたmRNAポリヌクレオチドに含むことにより、mRNAポリヌクレオチドの活性をさらに拡張または延長させることができる。さらに、標的細胞によって生成された機能タンパク質または酵素の量は、標的細胞に送達されたポリヌクレオチド(例えばmRNA)の量、およびそのようなポリヌクレオチドの安定性の関数である。本発明の化合物または組成物によって被包されたポリヌクレオチドの安定性が、改善または強化され得る程度において、半減期、翻訳されたタンパク質または酵素の活性、および化合物の投与頻度がさらに拡張され得る。
【0125】
ある実施形態では、ポリヌクレオチドは、安定性(例えば、野生型または天然に存在するmRNAの型および/または標的細胞に天然に内因性であるmRNAの型に対する安定性)を付与するために、化学的に修飾され得る。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に提供される被包されたポリヌクレオチドは、例えば生体内でのヌクレアーゼ消化に対する耐性の改善を含む、増加または強化された安定性をポリヌクレオチドに与える少なくとも1つの化学修飾を含む。用語「安定した」および「安定性」は、そのような用語が本発明の化合物または薬学的およびリポソーム組成物によって被包されたポリヌクレオチドに関するとき、特にmRNAに対するとき、通常そのようなRNAを分解することが可能であるヌクレアーゼ(すなわち、エンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼ)による分解に対して増加または強化された耐性を指す。安定性の増加は、例えば、加水分解、あるいは内因性酵素(例えば、エンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼ)または標的細胞もしくは組織内の状態による他の破壊に対する低感受性、それによって標的細胞、組織、対象、および/または細胞質におけるそのようなポリヌクレオチドの耐性を増加または強化することを含み得る。本明細書に提供される安定化されたポリヌクレオチド分子は、その天然に存在する未修飾の対応物(例えばポリヌクレオチドの野生型の型)よりも長い半減期を示す。
【0126】
ある実施形態では、ポリヌクレオチドは、野生型ポリヌクレオチドにおいて天然に見られない3´および/または5´非翻訳(UTR)配列を組み込むことにより修飾され得る。例えばタンパク質の翻訳開始において機能する配列(例えばコザックコンセンサス配列)の包含を含む、mRNAポリヌクレオチドの翻訳を改善または強化する変更も、句「化学修飾」および「化学的に修飾された」によって、そのような用語が本発明の化合物または薬学的およびリポソーム組成物により被包されたポリヌクレオチドに関するとき、想定される。(Kozak,M.,Nucleic Acids Res15(20):8125−48(1987))。本明細書で使用される、句「化学修飾」は、天然に存在するポリヌクレオチドに見られるものと異なる化学物質を導入する修飾、例えば、修飾されたヌクレオチドの導入(例えば、ヌクレオチド類似体、またはそのようなポリヌクレオチド分子において天然に見られないペンダント基の包含)等の共有結合修飾も含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、1つ以上の脂質ナノ粒子における被包前に、それらにより安定性を付与するために、化学修飾または生物学的修飾を受けた。ある実施形態では、ポリヌクレオチドに導入することができる例示的な化学修飾としては、プソイドウリジン、2−チオウラシル、5−メチルシチジン、5−メチルシトシン、イソシトシン、プソイドイソシトシン、5−ブロモウラシル、5−プロピニルウラシル、6−アミノプリン、2−アミノプリン、イノシン、ジアミノプリン、および2−クロロ−6−アミノプリンシトシンが挙げられる。ポリヌクレオチドに対する例示的な化学修飾は、塩基の欠失(例えば、1つのヌクレオチドの欠失により、または1つのヌクレオチドを別のものと置換することにより)、または塩基の化学修飾を含む。
【0127】
加えて、好適な修飾は、コドンが同じアミノ酸をコードするが、ポリヌクレオチドの野生型の型に見られるコドンより安定するように、コドンの1つ以上のヌクレオチドにおける変更を含む。例えば、RNAの安定性と高い数のシチジン(C)および/またはウリジン(U)残基との間の反比例関係が示され、CおよびU残基を欠失するRNAは、大半のRNasesに対して安定であることが分かった(Heidenreich,et al.J Biol Chem269,2131−8(1994))。いくつかの実施形態では、mRNA配列におけるCおよび/またはU残基の数が減少した。別の実施形態では、Cおよび/またはU残基の数は、特定のアミノ酸をコードする1つのコドンを、同じまたは関連するアミノ酸をコードする別のコドンと置換することによって減少する。本発明の化合物または薬学的およびリポソーム組成物により被包されたmRNAポリヌクレオチドに対して想定される修飾は、プソイドウリジンの組み込みも含む。プソイドウリジンを、本発明の化合物または薬学的およびリポソーム組成物により被包されたmRNAポリヌクレオチドの中に組み込むことにより、安定性および翻訳能力ならびに生体内の免疫原性の縮小を強化することができる。(例えば、Kariko,K.,et al.,Molecular Therapy16(11):1833−1840(2008)を参照)。本発明の化合物または薬学的およびリポソーム組成物によって被包されたポリヌクレオチドに対する置換および修飾は、容易に当業者に既知の方法によって実施され得る。
【0128】
配列におけるCおよびU残基の数の減少に対する制限は、非翻訳領域と比較して、mRNAのコード領域内で大きい可能性がある(すなわち、メッセージが所望のアミノ酸配列をコードする能力をなお維持しながら、メッセージに存在するCおよびU残基の全てを排除することは不可能であり得る)。しかしながら、遺伝コードの縮退は、同じコード能を保持しながら、配列に存在するCおよび/またはU残基の数を減少させる機会を提示する(すなわち、どのアミノ酸がコドンによってコードされるかに依存し、RNA配列の修飾のいくつかの異なる可能性が可能であり得る)。例えば、Glyのコドンは、GGUまたはGGCの代わりに、GGAまたはGGGに変更され得る。
【0129】
用語「化学修飾」は、例えば非ヌクレオチド連結または修飾されたヌクレオチドを本発明のポリヌクレオチド配列(例えば、機能タンパク質または酵素をコードするmRNA分子の3’および5’のうちの1つまたはその両方に対する末端遮断修飾)の組み込みも含む。そのような修飾は、塩基のポリヌクレオチド配列への付加(例えば、ポリA末端またはより長いポリA末端の包含)、3’UTRまたは5’UTRの変更、ポリヌクレオチドの薬剤(例えば、タンパク質または相補的ポリヌクレオチド分子)との複合化、および(例えば二次構造を形成する)ポリヌクレオチド分子の構造を変更する要素の包含を含み得る。
【0130】
ポリA末端は、天然メッセンジャーおよび合成センスRNAを安定化させると考えられる。したがって、ある実施形態では、長いポリA末端は、mRNA分子に付加され、よってRNAにより安定性を付与することができる。ポリA末端は、様々な当該技術分野で認識される技法を用いて付加することができる。例えば、長いポリA末端は、ポリAポリメラーゼを用いて合成または生体外転写されたRNAに付加することができる(Yokoe,et al.,Nature Biotechnology.1996;14:1252−1256)。転写ベクターも長いポリA末端をコードすることができる。加えて、ポリA末端は、PCR生成物から直接転写することによって付加することができる。ポリAは、RNAリガーゼを用いてセンスRNAの3’端にも連結され得る(例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual,2nd Ed.,ed.. by Sambrook,Fritsch and Maniatis(Cold Spring Harbor Laboratory Press:1991 edition)を参照)。ある実施形態では、ポリA末端の長さは、少なくとも約90、200、300、400、少なくとも500ヌクレオチドである。ある実施形態では、ポリA末端の長さは、本発明の修飾されたセンスmRNA分子の安定性、よってタンパク質の転写を制御するために調節される。例えば、ポリA末端の長さはセンスmRNA分子の半減期に影響を及ぼすことができるため、ポリA末端の長さは、mRNAのヌクレアーゼに対する耐性のレベルを変更し、それによって標的細胞におけるポリヌクレオチドの発現およびタンパク質の生成の経過時間を制御するように調節され得る。ある実施形態では、安定化されたポリヌクレオチド分子は、生体内での分解に対して十分に耐性であるため(例えばヌクレアーゼによって)それらは脂質ナノ粒子なしで標的細胞に送達され得る。
【0131】
いくつかの実施形態では、被包されたポリヌクレオチド(例えば欠損タンパク質をコードするmRNA)は、例えばそのようなポリヌクレオチドの安定性および/または半減期を改善する、またはそのようなポリヌクレオチドの翻訳を改善する、ないしは別の方法で容易にする化学的または生物学的修飾を任意に含み得る。
【0132】
ある実施形態では、化学修飾は、本発明の薬学的組成物を含む1つ以上のポリヌクレオチドの末端遮断修飾である。例えば、そのようなポリヌクレオチドは、野生型ポリヌクレオチドにおいて天然に見られない3’および/または5’非翻訳(UTR)配列を組み込むことによって修飾され得る。ある実施形態では、天然にmRNAに隣接し、第2の無関係なタンパク質をコードする3’および/または5’隣接配列は、それを修飾するために、タンパク質または機能タンパク質をコードするmRNA分子のヌクレオチド配列の中に組み込むことができる。例えば、安定しているmRNA分子からの3’または5’配列(例えば、グロビン、アクチン、GAPDH、チューブリン、ヒストン、またはクエン酸回路酵素)は、センスmRNA分子の安定性を増加させるために、センスmRNAポリヌクレオチド分子の3’および/または5’領域の中に組み込むことができる。
【0133】
ポリヌクレオチドの3’端および5’端のうちの1つまたは両方に行われたポリヌクレオチド配列に対する修飾も、本発明によって想定される。例えば、本発明は、ヌクレアーゼ耐性を改善する、および/またはポリヌクレオチド(例えば配列番号1等)の半減期を改善するために、CMV最初期1(IE1)遺伝子またはその断片の部分配列を含む、ポリヌクレオチド(例えばmRNA)の3’端および/または5’端に対する修飾を想定する。mRNAポリヌクレオチド配列の安定性を増加させることに加えて、CMV最初期1(IE1)遺伝子の部分配列の(例えばmRNAの5’非翻訳領域および3’非翻訳領域のうちの1つ以上への)包含がmRNAの翻訳をさらに強化することが意外にも発見された。ポリヌクレオチドをさらに安定化させるために、ポリヌクレオチド(例えばmRNA)の3’および5’端のうちの1つまたはそれらの両方に、ヒト成長ホルモン(hGH)をコードする配列、またはその断片を含むことも想定される。一般的に、想定される化学修飾は、未修飾のそれらの対応物に対するポリヌクレオチドの安定性および/または薬物動態の性質(例えば半減期)を改善し、例えばそのようなポリヌクレオチドの生体内ヌクレアーゼ消化に対する耐性を改善するために行われる修飾を含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物、その中に含まれる2つ以上の脂質ナノ粒子、またはそのような脂質ナノ粒子によって被包されるポリヌクレオチドは、安定化試薬を含み得る。組成物は、ポリヌクレオチドに直接または間接的に結合し、ポリヌクレオチドを安定化させ、それによって標的細胞の細胞質における滞留時間を強化する1つ以上の製剤試薬を含み得る。そのような試薬は、好ましくは、標的細胞において、ポリヌクレオチドの半減期の改善をもたらす。例えば、mRNAの安定性および翻訳の効率は、細胞内で天然に生じるポリヌクレオチド(例えばmRNA)と複合体を形成する「安定化試薬」の組み込みにより増加させることができる(例えば米国特許第5,677,124号を参照)。安定化試薬の組み込みは、例えば薬学的組成物を含む1つ以上の脂質ナノ粒子内にmRNAを充填または被包する前に、ポリAおよびタンパク質を生体外で安定化されるmRNAと組み合わせることにより達成され得る。例示的な安定化試薬は、1つ以上のタンパク質、ペプチド、アプタマー、翻訳補助タンパク質、mRNA結合タンパク質、および/または翻訳開始因子を含む。
【0135】
本明細書に記載される薬学およびリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)の安定化は、脂質ナノ粒子に化学的または物理的に結合される、ないしは別の方法で組み込まれる(例えば、脂質可溶性アンカーの膜自体内への挿入により、または膜脂質の活性基に直接結合することにより)典型的に大きい親水性ポリマーであるオプソニン化阻害部分の使用によっても改善され得る。これらのオプソニン化阻害親水性ポリマーは、マクロファージ−単球系および細網内皮系によるリポソームの取り込みを著しく減少させる保護表面層を形成する(例えば米国特許第4,920,016号に記載され、その開示は参照により本明細書に組み込まれる)。例えば、細網内皮系による脂質ナノ粒子の取り込みにおける遅延は、細網内皮系によるリポソームに基づく脂質ナノ粒子の認識および取り込みを遮蔽するために、脂質ナノ粒子上に、またはその中に親水性ポリマー表面コーティングを付加することにより容易にすることができる。例えば、ある実施形態では、本明細書に開示される薬学的組成物を含む脂質ナノ粒子のうちの1つ以上は、そのような脂質ナノ粒子の標的細胞および組織への送達をさらに強化するために、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマーまたはPEG修飾された脂質を含む。
【0136】
RNAが相補的ポリヌクレオチド分子(例えば、DNAまたはRNA)とハイブリッド形成するとき、ヌクレアーゼから保護され得る。(Krieg,et al.Melton.Methods in Enzymology.1987;155,397−415)。ハイブリッド形成されたmRNAの安定性は、大半のRNasesの固有の1本鎖特異性による可能性が高い。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドを複合化するように選択された安定化試薬は、真核生物のタンパク質(例えば哺乳類のタンパク質)である。さらに別の実施形態では、センス療法に使用するポリヌクレオチド(例えばmRNA)は、第2のポリヌクレオチド分子とハイブリッド形成することにより修飾され得る。全mRNA分子が相補的ポリヌクレオチド分子とハイブリッド形成する場合、翻訳開始が減少し得る。いくつかの実施形態では、mRNA分子の5’非翻訳領域およびAUG開始領域は、任意に、ハイブリッド形成されないままであってよい。翻訳開始後、リボソーム複合体の巻き戻し活性は、翻訳が進行することができるように高親和性2本鎖上でも機能することができる。(Liebhaber.J.Mol.Biol.1992;226:2−13、Monia,et al.J Biol Chem.1993;268:14514−22。)ポリヌクレオチドの安定性を強化するための上述の方法のいずれも、単独で、または他の上述の方法および/または組成物のいずれかのうちの1つ以上と組み合わせて使用することができることを理解する。
【0137】
ある実施形態では、本発明の薬学的組成物は、脂質ナノ粒子−被包されたポリヌクレオチドの1つ以上の標的細胞、組織、または器官への送達を強化する。いくつかの実施形態では、1つ以上の標的細胞への送達の強化は、標的細胞に接触する、ないしは別の方法でそれに送達されるポリヌクレオチドの量を増加することを含む。いくつかの実施形態では、標的細胞への送達の強化は、非標的細胞と接触するポリヌクレオチドの量を減少させることを含む。いくつかの実施形態では、標的細胞への送達の強化は、少なくともいくつかの標的細胞に被包されたポリヌクレオチドを形質移入させることを含む。いくつかの実施形態では、本薬学的組成物およびそれによってコードされた機能タンパク質または酵素の対応する生成物を含む脂質ナノ粒子によって被包されたポリヌクレオチドの発現レベルは、標的細胞において増加する。
【0138】
本発明の化合物または薬学的およびリポソーム組成物により被包されたポリヌクレオチドは、任意に、例えば、ポリヌクレオチドの標的細胞または組織への送達の決定を容易にするレポーター遺伝子(例えば、ポリヌクレオチドのコード領域の上流または下流)と組み合わせられ得る。好適なレポーター遺伝子は、例えば緑色蛍光タンパク質mRNA(GFPmRNA)、ウミシイタケルシフェラーゼmRNA(ルシフェラーゼmRNA)、ホタルルシフェラーゼmRNA、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。例えば、GFP mRNAは、血漿、または1つ以上の標的細胞、組織、もしくは臓器におけるmRNA局在化の確認を容易にするために、GLA mRNA(配列番号4)またはEPO mRNA(配列番号1)をコードするポリヌクレオチドと融合され得る。
【0139】
いくつかの実施形態では、本発明の薬学的組成物は、脂質ナノ粒子からのポリヌクレオチド(例えば、mRNA、miRNA、snRNA、およびsnoRNA)を標的細胞の細胞内区画に移動させるのを容易にする1つ以上の追加分子(例えば、タンパク質、ペプチド、アプタマー、またはオリゴヌクレオチド)を含む。いくつかの実施形態では、追加分子は、ポリヌクレオチドの、例えば標的細胞の細胞ゾル、リソソーム、ミトコンドリア、核、核小体、またはプロテアソーム内への送達を容易にする。その小器官における欠乏を治療するために、細胞質からの関心の翻訳されたタンパク質をその正常な細胞内位置(例えばミトコンドリアにおいて)に輸送するのを容易にする薬剤も含まれる。いくつかの実施形態では、薬剤は、タンパク質、ペプチド、アプタマー、およびオリゴヌクレオチドからなる群から選択される。
【0140】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、対象の1つ以上の機能タンパク質および/または酵素の内因生成、特にその組み換えにより調製された対応物に対して少ない免疫原性を示すタンパク質および/または酵素の生成を容易にする。本発明のある実施形態では、脂質ナノ粒子は、欠乏タンパク質または酵素のmRNAをコードするポリヌクレオチドを含む。そのような組成物が標的組織に分布され、後にそのような標的細胞に形質移入されるとき、組成物を含む脂質ナノ粒子内に充填または被包された外因性mRNAは、そのような被包されたmRNAによってコードされる機能タンパク質または酵素(例えば、対象が欠乏するタンパク質または酵素)を生成するように、生体内で翻訳され得る。したがって、ある実施形態では、本発明の組成物は、外因的にまたは組み換えにより調製されたmRNAが外因的に翻訳されたタンパク質または酵素を生成し、それによって機能タンパク質または酵素を生成する(適用可能な場合、排出する)対象の能力を利用する。翻訳されたタンパク質または酵素は、組み換えにより調製されたタンパク質または酵素において不在である場合が多い未変性翻訳後修飾を生体内に含み、それによって翻訳されたタンパク質または酵素の免疫原性をさらに減少させることも特徴とし得る。
【0141】
mRNAの脂質ナノ粒子内への被包およびそのような脂質ナノ粒子を含む薬学的組成物の投与は、標的細胞内の特定の小器官(例えばミトコンドリア)にmRNAを送達する必要性を回避する。むしろ、標的細胞の形質移入時および被包されたmRNAの標的細胞の細胞質への送達時、脂質ナノ粒子のmRNA含有物が翻訳され、機能タンパク質または酵素が生成され得る。
【0142】
本発明は、受動的または能動的の両方の標的手段により、1つ以上の標的細胞および組織の差別的標的も想定する。受動的標的の現象は、1つ以上の標的細胞による脂質ナノ粒子の認識を強化するための追加の賦形剤の使用に依存することなく、生体内での脂質ナノ粒子の自然な分布パターンを利用する。例えば、細網内皮系の細胞による食作用を受ける脂質ナノ粒子は、肝臓または脾臓に蓄積される可能性が高く、したがって、組成物のそのような標的細胞への送達を受動的に誘導するための手段を提供することができる。
【0143】
別の方法としては、本発明は、脂質ナノ粒子に結合して(共有結合的または非共有結合的に)、ある標的細胞または標的組織でそのような脂質ナノ粒子の局在化を助長することができる、本明細書において「標的リガンド」と称される追加の賦形剤の使用を伴う能動的標的を想定する。例えば、標的は、標的細胞または組織への分布を助長するために、1つ以上の内因性標的リガンド(例えばアポリポタンパク質E)を脂質ナノ粒子に、またはその上に含むことにより媒介され得る。標的組織による標的リガンドの認識は、標的細胞および組織による脂質ナノ粒子および/またはその含有物への組織分布およびその細胞取り込みを積極的に容易にする。例えば、ある実施形態では、医薬製剤を含む脂質ナノ粒子のうちの1つ以上は、そのような脂質ナノ粒子を認識する、および例えば肝細胞によって発現される内因性低密度リポタンパク質受容体に結合することを容易にする、または助長するそのような脂質ナノ粒子に、またはその上にアポリポタンパク質−E標的リガンドを含み得る。本明細書に提供される、組成物は、1つ以上の標的細胞に対する組成物の親和性を強化することが可能なリガンドを含み得る。標的リガンドは、製剤化中または製剤化後に、脂質ナノ粒子の外側の2重層に連結され得る。これらの方法は当該技術分野において既知である。加えて、いくつかの脂質ナノ粒子は、PEAA、赤血球凝集素、他のリポペプチド等の膜融合ポリマー(米国特許出願第08/835,281号および第60/083,294号を参照、参照により本明細書に組み込まれる)、および生体内および/または細胞内送達に有用な他の特徴を含み得る。他の実施形態では、本発明の組成物は改善された形質移入の効率を示し、かつ/または関心の標的細胞または組織に対する強化された選択性を示す。したがって、1つ以上の標的細胞または組織に対して組成物またはその構成要素である脂質ナノ粒子およびそのポリヌクレオチド含有物の親和性を強化することが可能である1つ以上のリガンド(例えば、ペプチド、アプタマー、オリゴヌクレオチド、ビタミン、または他の分子)を含む組成物または脂質ナノ粒子が想定される。好適なリガンドは、任意に、脂質ナノ粒子の表面に結合または連結され得る。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、脂質ナノ粒子の表面に及ぶか、または脂質ナノ粒子内に被包され得る。好適なリガンドは、その物理的、化学的、または生物学的性質(例えば選択的な親和性および/または標的細胞表面マーカーもしくは特徴の認識)に基づき選択される。好適な標的リガンドは、標的細胞の独特な特性が利用され、よって組成物が標的細胞を非標的細胞と区別することができるように選択される。例えば、本発明の組成物は、肝細胞の認識またはそれに対する親和性を選択的に強化する(例えば、そのような表面マーカーの受容体媒介による認識およびそれへの結合により)表面マーカー(例えばアポリポタンパク質−Bまたはアポリポタンパク質−E)を有し得る。加えて、標的リガンドとしてのガラクトースの使用は、本発明の組成物を柔肝細胞に誘導することが予測されるか、または別の方法としては、標的リガンドとしての糖残基を含むマンノースの使用(例えば、肝細胞に存在するアシアロ糖タンパク質受容体に優先的に結合することができる糖残基を含むマンノース)は、本発明の組成物を肝臓内皮細胞に誘導することが予測されるだろう。(Hillery AM,et al.”Drug Delivery and Targeting:For Pharmacists and Pharmaceutical Scientists”(2002)Taylor&Francis,Inc.を参照)。好適な標的リガンドの例としては、1つ以上のペプチド、タンパク質、アプタマー、ビタミン、およびオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0144】
本明細書で使用される、用語「対象」とは、本発明の化合物、薬学的またはリポソーム組成物および方法が投与され得る、ヒト、ヒト以外の霊長類、げっ歯類等を含むが、これらに限定されない任意の動物(例えば哺乳類)を指す。典型的に、用語「対象」および「患者」は、本明細書において、ヒト対象に関して互換的に使用される。
【0145】
本明細書に記載される化合物および薬学的またはリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)が被包されたポリヌクレオチドの発現およびポリペプチドもしくはタンパク質の生成を調節または強化する能力は、疾患または病的状態の宿主の治療のために、ポリペプチドおよびタンパク質の生体内生成をもたらす新しい、より効率的な手段を提供する。そのような脂質ナノ粒子組成物は、タンパク質または酵素をコードする核酸の異常発現に関連する疾患または病的状態の治療に特に適している。例えば、mRNA等のポリヌクレオチドの、肝臓、特に幹細胞等の標的器官への成功裏の送達は、肝臓に局在化する代謝の先天性異常の治療および補正に使用され得る。したがって、本明細書に記載される化合物、薬学的組成物、および関連する方法は、広範囲の疾患および病的状態、特にタンパク質または酵素欠乏によるそれらの疾患を治療するために採用され得る。本明細書に記載される化合物または薬学的およびリポソーム組成物によって被包されたポリヌクレオチド(例えばHGT5001に基づく脂質ナノ粒子)は、機能生成物(例えば、タンパク質、酵素、ポリペプチド、ペプチド、機能RNA、および/またはアンチセンス分子)をコードし得、好ましくは生体内生成が望まれる生成物をコードする。
【0146】
本発明の化合物、薬学的組成物、および関連する方法は、多くの障害を治療するための、ポリヌクレオチド等の治療薬、特にmRNAの送達に広く適用可能である。特に、本発明のそのような化合物、組成物、および関連する方法は、タンパク質および/または酵素の欠乏に関連する疾患または障害の治療に適している。ある実施形態では、脂質ナノ粒子−被包されたポリヌクレオチドは、1つ以上の標的細胞によって、周囲の細胞外流体(例えばホルモンおよび神経伝達物質をコードするmRNA)内に排出または分泌される機能タンパク質または酵素をコードする。別の方法として、別の実施形態では、本発明の化合物または薬学的およびリポソーム組成物によって被包されるポリヌクレオチドは、1つ以上の標的細胞(例えば尿素回路またはリソソーム貯蔵代謝障害に関連する酵素をコードするmRNA)の細胞質ゾルに残存する機能タンパク質または酵素をコードする。本発明の化合物、薬学的組成物、および関連する方法が有用である他の障害は、SMN1関連脊髄性筋萎縮症(SMA);筋萎縮性側索硬化症(ALS);GALT関連ガラクトース血症;嚢胞性線維症(CF);シスチン尿症を含むSLC3A1関連障害;アルポート症候群を含むCOL4A5関連障害;ガラクトセレブロシダーゼ欠損症;X連鎖副腎白質ジストロフィーおよび副腎脊髄神経障害;フリードライヒ運動失調症;ペリツェウス・メルツバッヘル病;TSC1およびTSC2関連結節性硬化症;サンフィリポB症候群(MPS IIIB);CTNS関連シスチン症;脆弱X症候群、脆弱X関連振戦/運動失調症候群および脆弱X早期閉経症候群を含むFMR1関連障害;プラダー−ウィリー症候群;ファブリー病、遺伝性出血性末梢血管拡張症(AT);ニーマン−ピック病C1型;若年型神経セロイドリポフスチン症(JNCL)、若年型バッテン病、サンタオブオリ−ハルティア病(Santavuori−Haltia disease)、ヤンスキー−ビールショースキー病、ならびにPTT−1およびTPP1欠損症を含む神経セロイドリポフスチン関連疾患;中枢神経系エミリン形成不全/白質消失を伴うEIF2B1、EIF2B2、EIF2B3、EIF2B4、およびEIF2B5関連小児期運動失調症;CACNA1AおよびCACNB4関連発作性運動失調症2型;典型的レット症候群、MECP2関連重度新生児脳症、およびPPM−X症候群を含むMECP2関連障害;CDKL5関連非定形レット症候群;ケネディ病(SBMA);皮質下梗塞および白質脳症を伴うノッチ−3関連常染色体優性脳動脈症(CADASIL);SCN1AおよびSCN1B関連痙攣障害;アルパース−ヒュッテンロッチャー(Huttenlocher)症候群、POLG関連感覚運動失調神経障害、構音障害、および眼麻痺、ならびにミトコンドリアDNA欠失を伴う常染色体優性および劣性進行性外眼筋麻痺を含むポリメラーゼG関連障害;X連鎖型副腎発育不全;X連鎖型無ガンマグロブリン血症;ならびにウィルソン病などの障害を含むが、これらに限定されない。ある実施形態では、本発明のポリヌクレオチド、特にmRNAは、機能タンパク質または酵素をコードすることができる。例えば、本発明の組成物は、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)、カルバモイル−リン酸シンセターゼ1(CPS1)、アルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS1)、アルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)、またはアルギナーゼ1(ARG1)、嚢胞性線維症膜貫通型コンダクタンス調節因子(CFTR)、酸アルファグルコシダーゼ、アリールスルファターゼA、α−ガラクトシターゼA、エリスロポエチン(例えば配列番号4)、α1−抗トリプシン、カルボキシペプチダーゼN、アルファ−L−イズロニダーゼ、イズロネート−2−スルファターゼ、イズロネートスルファターゼ、N−アセチルグルコサミン−1−リン酸転移酵素、N−アセチルグルコサミニダーゼ、アルファ−グルコサミニドアセチル転移酵素、N−アセチルグルコサミン6−スルファターゼ、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ、ベータ−グルコシダーゼ、ガラクトース−6−硫酸スルファターゼ、ベータ−ガラクトシターゼ、ベータ−グルクロニダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、ヘパランスルファミダーゼ、ヘパリン−N−スルファターゼ、リソソーム酸リパーゼ、ヒアルロニダーゼ、ガラクトセレブロシダーゼ、ヒト成長ホルモン、生存運動ニューロン、第VIII因子、第IX因子、または低密度リポタンパク質受容体をコードするmRNAを含み得る。
【0147】
一実施形態では、mRNAは、ヒト成長ホルモン、エリスロポエチン、α1−抗トリプシン、酸性アルファグルコシダーゼ、アリールスルファターゼA、カルボキシペプチダーゼN、α−ガラクトシターゼA、アルファ−L−イズロニダーゼ、イズロネート−2−スルファターゼ、イズロネートスルファターゼ、N−アセチルグルコサミン−1−リン酸転移酵素、N−アセチルグルコサミニダーゼ、アルファ−グルコサミニドアセチル転移酵素、N−アセチルグルコサミン6−スルファターゼ、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ、ベータ−グルコシダーゼ、ガラクトース−6−硫酸スルファターゼ、ベータ−ガラクトシターゼ、ベータ−グルクロニダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、ヘパランスルファミダーゼ、ヘパリン−N−スルファターゼ、リソソーム酸リパーゼ、ヒアルロニダーゼ、ガラクトセレブロシダーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)、カルバモイル−リン酸シンセターゼ1(CPS1)、アルギニノコハク酸シンセターゼ(ASS1)、アルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)、アルギナーゼ1(ARG1)、嚢胞性線維症膜貫通型コンダクタンス調節因子(CFTR)、生存運動ニューロン(SMN)、第VIII因子、第IX因子、および低密度リポタンパク質受容体(LDLR)からなる群から選択されるタンパク質または酵素をコードする。
【0148】
本明細書に記載される化合物および薬学的組成物は、対象に投与することができる。いくつかの実施形態では、組成物は、1つ以上の追加のポリヌクレオチド、担体、標的リガンド、もしくは安定化試薬、または他の好適な賦形剤と組み合わせて製剤化される。薬物の製剤化および投与の技法は、”Remington’s Pharmaceutical Sciences,”Mack Publishing Co.,Easton,Pa.の最新版に見出すことができる。
【0149】
本発明の化合物ならびに薬学的およびリポソーム組成物(例えば脂質ナノ粒子)は、対象の臨床状態、被包された材料の性質、投与の部位および方法、投与予定、対象の年齢、性別、体重、ならびに当該技術分野の臨床医に関する他の要因を考慮して、現在の医行為に従い投与および投薬され得る。本明細書の目的において、「有効量」は、実験臨床研究、薬理学、および医療分野の当業者に既知である、そのような関連する考慮事項によって決定され得る。いくつかの実施形態では、投与される量は、疾患の進行、後退、または改善の適切な処置として当業者により選択される、少なくともある程度の症状の安定化、改善または排除、および他の指標を達成するのに十分である。例えば、好適な量および投与レジメンは、標的細胞における1つ以上のポリヌクレオチドの少なくとも一過性の発現をもたらすものである。
【0150】
本明細書に開示される化合物および薬学的組成物の好適な投与経路は、例えば、経口、直腸、膣、経粘膜、または腸管投与、非経口送達(筋肉内、皮下、髄内注射、ならびにくも膜下腔内、脳室内、直接的な脳室内、静脈内、腹腔内、経鼻、または眼内注射もしくは注入を含む)を含む。ある実施形態では、対象に本明細書に記載される化合物または組成物(例えば脂質ナノ粒子)を投与することにより、そのような化合物または組成物を1つ以上の標的細胞、組織、または器官に接触させることを容易にする。
【0151】
代替的に、本発明の化合物および組成物は、標的細胞の構成要素である脂質ナノ粒子への接触をさらに容易にすることができるように、例えば、薬学的組成物の標的組織への直接注射または注入を介して、好ましくはデポ製剤または持続放出製剤で、全身よりもむしろ局所様式で投与され得る。局所送達は、標的とされる組織により、様々な方法で影響を受ける場合がある。例えば、本発明の組成物を含むエアロゾルは吸引され得る(鼻、気管、または気管支送達用)、本発明の組成物は例えば外傷、疾患徴候、または痛みの部位内に注射され得る、組成物は経口、気管、もしくは食道用途用にロゼンジ剤で提供され得る、胃もしくは腸に投与するために液体、錠剤、もしくはカプセルの形態で供給され得る、直腸もしくは膣用途用に坐剤形態で供給され得る、またはクリーム、滴剤、またはさらには注射の使用により眼にも送達され得る。治療用分子またはリガンドと複合される本発明の化合物を含む製剤は、例えば、組成物を移植の部位から周囲細胞に拡散させることができるポリマーまたは他の構造もしくは物質と関連して外科的にも投与され得る。別の方法としては、そのような組成物は、ポリマーまたは支持体を使用することなく外科的に適用され得る。
【0152】
例えば2011年6月8日に出願された米国仮出願第61/494,882号(代理人整理番号SHIR−023−001)(その教示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)に開示されるように、本明細書に開示される化合物のうちの1つ以上を含む凍結乾燥された薬学的組成物、およびそのような凍結乾燥された組成物を使用するための関連する方法も、本明細書において想定される。
【0153】
ある実施形態では、本発明の組成物は、それらが例えばその中に被包されたポリヌクレオチドまたは核酸の持続放出に適するように製剤化される。そのような持続放出組成物は、延長された投与間隔で、適宜対象に投与され得る。例えば、ある実施形態では、本発明の組成物は、1日2回、1日1回、または2日に1回、対象に投与される。ある実施形態では、本発明の組成物は、1週間に2回、1週間に1回、10日に1回、2週間に1回、3週間に1回、または好ましくは4週間に1回、1ヶ月に1回、6週間に1回、8週間に1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、4ヶ月に1回、6ヶ月に1回、8ヶ月に1回、9ヶ月に1回、または1年に1回、対象に投与される。長期間にわたりポリヌクレオチド(例えばmRNA)の送達または放出のいずれかを行うために、デポ投与(例えば、筋肉内に、皮下に、硝子体内に)用に製剤化される組成物および脂質ナノ粒子も想定される。好ましくは、採用される持続放出手段は、安定性を強化するために、ポリヌクレオチド内に導入される修飾(例えば化学修飾)と組み合わされる。
【0154】
本発明のある化合物、組成物、および方法がある実施形態に従い具体的に記載されてきたが、以下の実施例は、単に本発明の化合物を図示するのに役立ち、それを限定することは意図されない。本発明の背景を説明し、その実践に関する追加の詳細を提供するために参照される刊行物、参考資料等のそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0155】
本明細書および特許請求の範囲において、本明細書で使用される、冠詞「a」および「an」は、特に逆が明確に記載されない限り、複数対象を含むように理解されるべきである。群の1つ以上のメンバー間に「or」を含む特許請求の範囲または説明は、逆が記載されない、ないしは別の方法で内容から明らかでない限り、1つ、2つ以上、または全ての群のメンバーが所与の生成物またはプロセスに存在する、採用される、ないしは別の方法で関係する場合満たされたと考えられる。本発明は、正確に群のうちの1つのメンバーが所与の生成物またはプロセスに存在する、採用される、ないしは別の方法で関係する実施形態を含む。本発明は、2つ以上または全群のメンバーが所与の生成物またはプロセスに存在する、採用される、ないしは別の方法で関係する実施形態も含む。さらに、本発明は、特に記載されない限り、または矛盾または不一致が生じることが当業者に明らかでない限り、列挙される特許請求の範囲のうちの1つ以上からの1つ以上の制限、要素、条項、記述用語等が同じ基本特許請求に依存する(または関連する任意の他の特許請求として)別の特許請求に導入される全ての変形、組み合わせ、および置換を包含することを理解する。要素がリスト(例えばマルクーシュ群または同様の形式で)として提示される場合、要素のそれぞれの小群も開示され、任意の要素(複数可)は群から取り除かれ得ることを理解する。一般に、本発明または本発明の態様は、特定の要素、特徴等を含むものと見なされ、本発明のある実施形態または本発明の態様は、そのような要素、特徴等からなるか、または本質的にそれらからなることも理解するべきである。簡潔化する目的のため、これらの実施形態は、全ての場合において、本明細書において明確に、具体的に記述されない。本発明の任意の実施形態または態様は、特定の除外が本明細書に列挙されるか否かに関わらず、特許請求の範囲から明示的に除外され得ることも理解するべきである。本発明の背景を説明し、その実践に関する追加の詳細を提供するために参照される刊行物および他の参考資料は、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0156】
実施例1
化合物(15Z,18Z)−N,N−ジメチル−6−(9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イル)テトラコサ−15,18−ジエン−1−アミン(本明細書において「HGT5000」と称される)は、下の反応1に示される一般合成スキームに従い調製された。
【0157】
【化17】
上の反応1において化合物(2)と特定される中間体化合物(15Z,18Z)−6−[(9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イル]テトラコサ−15,18−ジエン−1,6−ジオールは、次のように調製された。100mLの丸底フラスコに、窒素下で、10g(30mmol)の化合物(1)(臭化リノレイル)および乾燥THF(20mL)を添加した。室温で、マグネシウム粉末(1.11g、45mmol)、続いてジブロモエタン2滴を、攪拌した反応溶液に添加した。反応混合物を50℃で1時間攪拌し、乾燥THF(40mL)で希釈した。反応混合物を、室温でさらに15分攪拌した。
【0158】
窒素下、別の250mLの三つ口フラスコに、乾燥THF(20mL)中のe−カプロラクトン(1.44mL、13.5mmol)を入れた。攪拌した溶液に、カニューレを通して0℃のグリニャール試薬を添加した。得られた混合物を85℃で3時間加熱した。室温に冷却した後、次に、反応混合物をNH
4Cl溶液でクエンチし、ジクロロメタン(3×100mL)で抽出した。混合抽出物を鹹水(50mL)で洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサンから3:2のヘキサン/EAに勾配溶出)により、残留物を2回精製し、油状物として化合物(2)を得た。収率:5.46g(65%)。
1H NMR (301 MHz, CDCl
3) δ: 5.25 − 5.45 (m, 8H), 3.65 (m, 2H), 2.77 (t, J = 6.2 Hz, 4H), 1.95 − 2.1 (m, 8H), 1.2 − 1.70 (m, 50H), 0.88 (t, J = 6.9 Hz, 6H)。
【0159】
上の反応1において化合物(3)と特定される中間体化合物(15Z,18Z)−6−[(9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イル]テトラコサ−15,18−ジエン−1−オールは、次のように調製された。化合物(2)(4.4g、7.15mmol)をジクロロメタン(70ml)に溶解した。窒素下で溶液を0℃で攪拌し、Et
3SiH(8.07mL、50.08mmol)を添加した。三フッ化ホウ素ジエチルエーテル化合物(8.77mL、71.5mmol)を0℃で滴下して添加した。次に、反応混合物を同じ温度で3時間、その後室温で30分間攪拌した。次に、反応を10%の炭酸ナトリウム溶液(200mL)でクエンチした。得られた混合物をジクロロメタン(2×150mL)で2回抽出した。混合抽出物を鹹水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサンから2:1のヘキサン/EAに勾配溶出)により、粗生成物を精製し、油状物として、所望の中間体生成物化合物(3)を得た。収率:3.86g(90%)。
1H NMR (301 MHz, CDCl
3) δ: 5.2 − 5.5 (m, 8H), 3.62 (q, J = 6.6 Hz, 2H), 2.77 (t, J = 6 Hz, 4H), 1.9 − 2.1 (m, 8H), 1.5 − 1.65 (m, 2H), 1.1 − 1.45 (m, 48 H), 0.88 (t, J = 6.9 Hz, 6H)。
【0160】
上の反応1において化合物(4)と特定される中間体化合物(6Z,9Z,28Z,31Z)−19−(5−ブロモペンチル)ヘプタトリアコンタ−6,9,28,31−テトラエンは、次のように調製された。窒素下、0℃でジクロロメタン(80mL)中の化合物(3)(3.86g、6.45mmol)の溶液を攪拌した。トリフェニルホスフィン(1.86g、7.10mmol)、続いてテトラブロモメタン(2.14g、6.45mmol)を溶液に添加した。反応混合物を0℃で3時間、その後室温で30分間攪拌した。TLCは尚も開始材料の存在を示したため、トリフェニルホスフィンの別の一部(0.4g)を0℃で添加した。30分後、全ての開始材料は消費され、次に、反応混合物を濃縮した。残留物にエーテルとヘキサン(2:1、200mL)の混合物を添加し、スラリーを15分間攪拌した。固体を濾別し、減圧下で濾過物を濃縮した。複数のカラムクロマトグラフィー(ヘキサンから3:2ヘキサン/EAに勾配溶出)により、残留物を精製し、所望の中間体生成物である化合物(4)を得た。収率:2.7g(63%)。
1H NMR (301 MHz, CDCl
3) δ: 5.2 − 5.5 (m, 8H), 3.40 (t, J = 7 Hz, 2H), 2.77 (t, J = 6 Hz, 4H), 1.8 − 2.1 (m, 8H), 1.15 − 1.5 (m, 46H), 0.88 (t, J = 6.6 Hz, 6H)。
【0161】
HGT5000化合物(15Z,18Z)−N,N−ジメチル−6−(9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イル)テトラコサ−15,18−ジエン−1−アミン)を調製するために、THF(204mL、100当量)中のジメチルアミンの2M溶液に化合物(4)(2.70g、4.07mmol)を溶解した。得られた溶液を室温で16時間、窒素下で攪拌した。次に、反応混合物を減圧下で濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン中0%〜10%のメタノールの勾配溶出)により、残留物を精製し、淡黄色油状物としてHGT5000化合物を得た。収率:2.52g(96%)。
1H NMR (301 MHz, CDCl
3) δ: 5.42 − 5.29 (m, 8H), 2.77 (t, J = 6.0 Hz, 4H), 2.28 − 2.24 (m, 8H), 2.01 − 2.08 (m, 8H), 1.66 − 1.63(m, 2H), 1.41 − 1.20 (m, 48H), 0.88 (t, J = 6.9 Hz, 6H).
13C NMR (CDCl
3) δ: 130.3, 128.0, 59.9, 45.3, 37.5, 33.8, 31.6, 30.3, 29.8, 29.7, 29.4, 28.0, 27.5, 27.3, 26.8, 26.7, 25.7, 22.7. APCI [M+H] 626.6. R
f=0.48(DCM中10%のMeOH)。
【0162】
実施例2
化合物(15Z,18Z)−N,N−ジメチル−6−((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イル)テトラコサ−4,15,18−トリエン−1−アミン(本明細書において、「HGT5001」と称される)は、下の反応2に図示される一般合成スキームに従い調製された。
【0163】
【化18】
上の反応2において、それぞれ、化合物(6)および(7)と特定される中間体化合物(6Z,9Z,28Z,31Z)−ヘプタトリアコンタ−6,9,28,31−テトラエン−19−イルギ酸塩(6)および(6Z,9Z,28Z,31Z)−ヘプタトリアコンタ−6,9,28,31−テトラエン−19−オールは、アルゴン下で、Mg(0.5g、20.83mmol、1.37当量)およびI
2(結晶1つ)で充填された、オーブンで乾燥させた3つ口500mLフラスコ中で調製された。フラスコを高真空管路で脱気し、その後、アルゴンを流し(プロセスを4回繰り返した)、次に、室温で約5分間攪拌した。無水エーテル(22mL)をこのフラスコに添加し、スラリーを約10分間攪拌した。次に、5g(15.2mmol、1当量)の化合物(5)(臭化リノレイル)をアルゴン下で添加し(約4.5mLの化合物(5)を添加した後に、色の変化が観察された)、反応物を室温で攪拌した。約5分間室温で攪拌した後、発熱反応が観察された。よって、約2分間、氷水浴を使用して、混合物を冷却し、その後、氷浴を取り外し、反応混合物を室温で2分間攪拌し、灰色の反応混合物が得られ、全てのMgは消費されなかった。混合物を0℃に冷却し、HCO
2Et(0.58mL、7.17mmol、0.47当量)を滴下して溶液に直接添加した。室温で3時間攪拌した後(生成物はMSおよびTLCによって1時間後に観察された)、混合物を移し、Mg形成物(turnings)をエーテルで洗浄した。混合洗浄物をエーテル(100mL)で希釈し、10%のH
2SO
4(2×50mL)、水、鹹水で洗浄し、その後、乾燥させた(Na
2SO
4)。溶液を濾過し、濃縮して、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、残留物を精製した。
【0164】
ヘキサン中5〜7%のエーテルは、残留物からアルコール(化合物(7))を溶出した。収率:0.34g(8%)。化合物7:
1H NMR (300 MHz, CDCl
3): δ 5.38−5.31 (m, 8H), 3.58 (br s, 1H), 2.76 (t, J = 6 Hz, 4 H), 2.04 (q, J = 6.8 Hz, 8H), 1.39−1.26 (m, 40H), 0.88 (t, J = 6.8 Hz, 6H)。 APCI[M+H] 527, 511 (−H
2O)。
【0165】
ヘキサン中2%のエーテルは、残留物からギ酸塩(化合物(6))を溶出した。収率:1.7g(40%)。化合物6:
1H NMR (300 MHz, CDCl
3): δ 8.08 (s, 1H), 5.42−5.28 (m, 8H), 4.99−4.95 (m, 1H), 2.76 (t, J = 6 Hz, 4 H), 2.04 (q, J = 6.6 Hz, 8H), 1.39−1.26 (m, 40H), 0.88 (t, J = 6.6 Hz, 6H)。 APCI[M+H] 557.化合物(6)から化合物(7)を得るために、KOH(粉末、0.76g、13.5mmol、1.4当量)を、EtOH/H
2O(90mL/16mL)中の化合物(6)の濁った溶液に添加した。反応混合物を、N
2atm下で一晩、室温で攪拌した。次に、この混合物を濃縮し、エーテルで希釈し、5%の水性HCl(2×100mL)、水で洗浄し、乾燥させた(Na
2SO
4)。溶液を濾過し、濃縮し、その後、高真空下で乾燥させ、無色の油状物として化合物(7)を得た。収率:4.9g(96%)。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3): δ 5.38−5.31 (m, 8H), 3.58 (br s, 1H), 2.76 (t, J = 6 Hz, 4 H), 2.04 (q, J = 6.8 Hz, 8H), 1.39−1.26 (m, 40H), 0.88 (t, J = 6.8 Hz, 6H). APCI[M+H] 527, 511 (−H
2O)。
【0166】
上の反応2において化合物(8)として特定される中間体化合物(6Z,9Z,28Z,31Z)−ヘプタトリアコンタ−6,9,28,31−テトラエン−19−オンは、次のように調製された。無水CH
2Cl
2(230mL)中の化合物(7)(4.81g、9.09mmol)の溶液に、15分の期間にわたってNa
2CO
3(0.49g、4.54mmol)、そして次にPCC(4.9g、22.7mmol、2.5当量)を少量ずつ添加した。黒色の混合物を室温で1.5時間攪拌した。TLCは、反応の完了を示した。シリカゲルパッド(200g)を通して反応混合物を濾過し、パッドをCH
2Cl
2(3×400mL)で洗浄した。濾過物を濃縮し、高真空管路で乾燥させ、無色の油状物としてケトン化合物(8)を得た。収率:4.5g(98%)。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3): δ 5.36−5.33 (m, 8H), 2.76 (t, J = 5.8 Hz, 4 H), 2.37 (t, J = 7.4 Hz, 4H), 2.04 (q, J = 6 Hz, 8H), 1.32−1.27 (m, 36H), 0.88 (t, J = 6.8 Hz, 6H). APCI[M+H] 527。
【0167】
上の反応2において化合物(9)として特定される中間体化合物(6Z,9Z,28Z,31Z)−19−(メトキシメチレンヘプタトリアコンタ−6,9,28,31−テトラエンは、次のように調製された。化合物(8)(2.7g、5.12mmol、1当量)と(メトキシメチル)トリフェニル塩化ホスホニウム(2.63g、7.67mmol、1.5当量)の混合物を高真空下で脱気し、アルゴンを流した(4回)。無水THF(68mL)、続いて、シリンジでTHF中の1M KOt−Bu(7.67mL、7.67mmol、1.5当量)を滴下して添加した。得られた赤い溶液を、室温で一晩攪拌した。反応混合物をエーテルで希釈し、水、鹹水で洗浄し、乾燥させた(Na2SO4)。溶媒の除去および残留物のクロマトグラフィー (ヘキサン中1〜4%エーテル)により、無色の油状物として生成物化合物(9)を得た。収率:2.7g(95%)。1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 5.72 (s, 1H), 5.36−5.33 (m, 8H), 3.5 (s, 3H), 2.76 (t, J = 6 Hz, 4 H), 2.05−1.98 (m, 10H), 1.85−1.80 (m, 2H), 1.31−1.27 (m, 36H), 0.88 (t, J = 6.6 Hz, 6H). APCI[M+H] 555。
【0168】
上の反応2において化合物(10)として特定される中間体化合物(11Z,14Z)−2−((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イル)イコサ−11,14−ジエナールは、次のように調製された。ジオキサン/H
2O(56mL/29mL)溶液中の化合物(9)(1.3g、2.34mmol)の濁った溶液に、10分にわたって0℃のジオキサン(29mL、116mmol、49当量)中の4M HClを滴下して添加した。混合物を室温に温め、その後、室温で40時間攪拌した(TLCによって監視された)。次に、混合物をエーテルで希釈し、0℃に冷却し、その後水性NaHCO
3でゆっくりクエンチした。有機層を分離し、鹹水で洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過し、濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。ヘキサン中1%のエーテルは、無色の油状物として生成物化合物(10)を溶出した。収率:1.21g(96%)。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3): δ 9.53 (d, J = 3.3 Hz, 1H), 5.36−5.33 (m, 8H), 2.76 (t, J = 5.8 Hz, 4 H), 2.23−2.18 (m, 1H), 2.05−1.96 (m, 8H), 1.61−1.16 (m, 40H), 0.88 (t, J = 7 Hz, 6H). APCI[M+H] 541。
【0169】
中間体化合物(4−ジメチルアミノブチル)臭化トリフェニルホスホニウム(化合物(14))は、反応3に示される、下に示される一般合成スキームに従い調製された。
【0170】
【化19】
上の反応3に示される中間体化合物(4−ブロモブチル)臭化トリフェニルホスホニウム(化合物(12))は、10g(46.3mmol)の1,4−ジブロモブタン(化合物(11))および12.1gのPPh
3(46.3mmol)を乾燥トルエン(74mL)中に設置し、混合物を還流に加熱し、一晩煮沸することにより調製された。形成された固体を濾過し、トルエンで洗浄し、真空下で乾燥させ、白色固体として生成物化合物(12)を得た。収率:16.1g(73%)。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3): δ 7.84−7.68 (m, 15H), 4.03−3.93 (m, 2H), 3.58 (t, J = 6 Hz, 2H), 2.36−2.28 (m, 2H), 1.89−1.76 (m, 2H). APCI[M+H] 397 (M−Br), 399 (M+2−Br)。
【0171】
中間体化合物(4−ジメチルアミノブチル)臭化トリフェニルホスホニウム(化合物(14))は、N
2下で、3g(6.28mmol、1当量)の化合物(12)を、0℃のTHF(31.4mL、62.8mmol、10当量)中の2Mジメチルアミンの溶液に滴下して添加することにより調製された。得られた懸濁液を室温で4時間攪拌した。次に、CH
3CN(35mL)をこの懸濁液に添加し、室温で一晩さらに攪拌した。次に、反応混合物に窒素ガスを気泡として通し、過剰なジメチルアミンおよび溶媒を除去した。得られた固体を高真空下で乾燥させ、淡黄色の固体として乾燥生成物化合物(13)を得た。収率:3.16g(96%)。生成物化合物(13)を、15分間、飽和水性NaHCO
3(110mL)と共に攪拌し、凍結乾燥させて、淡黄色の固体を生成した。この固体をクロロホルムと共に攪拌し、濾過した。濾過物をMgSO
4上で乾燥させ、濾過し、濃縮し、残留物を、45℃の高真空下で乾燥させ、淡いピンク色の固体として生成物化合物(14)を得た。収率:2.7g(97%)。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3): δ 7.89−7.75 (m, 9H), 7.71−7.65 (m, 6H), 3.93−3.83 (m, 2H), 2.47 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 2.25 (s, 6H), 1.94−1.87 (m, 2H), 1.75−1.62 (m, 2H). APCI[M+H] 362 (M−Br)。
【0172】
HGT5001((15Z,18Z)−N,N−ジメチル−6−((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イル)テトラコサ−4,15,18−トリエン−1−アミン)は、荷電した中間体化合物(14)(0.58g、1.32mmol、1.5当量)を火炎乾燥させたRBフラスコ(3つ口、100mL)に添加することにより調製され、次に、フラスコは、磁気攪拌棒で装備された。この設定は脱気され(高真空下で)、アルゴンで流された(3回)。その後、シリンジで無水THF(10mL)をフラスコに添加した。得られた懸濁液をアルゴン下で5分間攪拌し、次に−78℃に冷却した。次に、KHMDS(THF中1M、1.32mL、1.32mmol、1.5当量)を反応フラスコに滴下して添加し、黄色がかったオレンジ色の濁った溶液を得た。この溶液を−78℃で45分間攪拌した。冷却浴を取り外し、反応物を室温で15分間攪拌し、赤みがかったオレンジ色の溶液を得た。混合物を再び−78℃に冷却し、乾燥THF(13mL)中の中間体化合物(10)(0.47g、0.88mmol)の溶液を、カニューレを通して添加した。反応混合物の色は淡黄色に変化した。反応混合物を−78℃で45分間攪拌し、次に、冷却浴を取り外し、室温でさらに30分間、攪拌を継続した。混合物を再び−20℃に冷却し、次に、水(7mL)でクエンチした。反応混合物をエーテルで希釈し、10分間攪拌した。有機層を分離し、鹹水で洗浄し、MgSO
4上で乾燥させ、濾過し、濃縮し、残留物をシリカゲルカラム上でカラムクロマトグラフィーにより精製した。クロロホルム中1.5〜2%のメタノールは、淡黄色の油状物としてHGT5001生成物を溶出した。収率:0.43g(79%)。
1H NMR (300 MHz, C
6D
6): δ 5.52−5.46 (m, 9H), 5.22−5.12 (m, 1H), 2.89 (t, J = 5.8 Hz, 4H), 2.43 (br s, 1H), 2.24−2.03 (m, 18H), 1.55−1.37 (m, 2H), 1.35−1.22 (m, 40H), 0.88 (t, J = 6.8 Hz, 6H)。 APCI[M+H] 624。C
44H
81Nに関して計算された元素分析(理論値、実測値: C (84.67, 84.48); H (13.08, 13.12); N (2.24, 2.19)。
【0173】
実施例3
HGT5000、DOPE、コレステロール、およびDMG−PEG2000を含み、ヒトエリスロポエチン(EPO)mRNAを被包する脂質ナノ粒子は、標準的なエタノール注入法を介して形成された(Ponsa,et al.,Int.J.Pharm.(1993)95:51−56.)。脂質のエタノール貯蔵溶液は、50mg/mLの濃度で前もって調製され、−20℃で保管された。
【0174】
ヒトエリスロポエチン(EPO)mRNAは、遺伝子をコードするプラスミドDNAテンプレートからの生体外転写、続いて、ゲル電気泳動により決定される、5’キャップ構造(Cap1)(Fechter,P.et al.,J.Gen.Virology(2005)86:1239−1249)、および長さが約200ヌクレオチドの3’ポリ(A)テールの付加により合成された。EPO mRNAに存在する5’および3’非翻訳領域は、下に示されるように、配列番号1において、XおよびYと表される。
【0175】
ヒトエリスロポエチンmRNA:
配列番号1
XAUGGGGGUGCACGAAUGUCCUGCCUGGCUGUGGCUUCUCCUGUCCCUGCUGUCGCUCCCUCUGGGCCUCCCAGUCCUGGGCGCCCCACCACGCCUCAUCUGUGACAGCCGAGUCCUGGAGAGGUACCUCUUGGAGGCCAAGGAGGCCGAGAAUAUCACGACGGGCUGUGCUGAACACUGCAGCUUGAAUGAGAAUAUCACUGUCCCAGACACCAAAGUUAAUUUCUAUGCCUGGAAGAGGAUGGAGGUCGGGCAGCAGGCCGUAGAAGUCUGGCAGGGCCUGGCCCUGCUGUCGGAAGCUGUCCUGCGGGGCCAGGCCCUGUUGGUCAACUCUUCCCAGCCGUGGGAGCCCCUGCAGCUGCAUGUGGAUAAAGCCGUCAGUGGCCUUCGCAGCCUCACCACUCUGCUUCGGGCUCUGGGAGCCCAGAAGGAAGCCAUCUCCCCUCCAGAUGCGGCCUCAGCUGCUCCACUCCGAACAAUCACUGCUGACACUUUCCGCAAACUCUUCCGAGUCUACUCCAAUUUCCUCCGGGGAAAGCUGAAGCUGUACACAGGGGAGGCCUGCAGGACAGGGGACAGAUGAY
X=GGGAUCCUACC(配列番号2)
Y=UUUGAAUU(配列番号3) 。
【0176】
EPO mRNAは、使用するときまで、−80℃で、1mg/mLの最終濃度で、水中で保管された。全てのmRNA濃度は、Ribogreenアッセイ(Invitrogen)を介して決定された。mRNAの被包は、0.1%のトリトン−X100の存在下、または不在下で、Ribogreenアッセイを行うことにより計算された。粒径(動的光散乱(DLS))およびゼータ電位は、それぞれ、1×PBSおよび1mM KCl溶液において、Malvern Zetasizer機器を使用して決定された。
【0177】
HGT5000、DOPE、コレステロール、およびDMG−PEG2Kの50mg/mLのエタノール溶液のアリコートを混合し、エタノールで3mLの最終容積に希釈した。別に、EPO mRNAの水性緩衝溶液(10mMのクエン酸塩/150mM NaCl、 pH4.5)を1mg/mLの貯蔵液から調製した。脂質溶液を水性mRNA溶液中に迅速に注入し、振盪し、20%のエタノール中に最終懸濁液を得た。得られたナノ粒子懸濁液を濾過し、1×PBS(pH7.4)で透析濾過し、濃縮し、2〜8℃で保管した。最終濃度=1.82mg/mLのEPO mRNA(被包された)。Z
平均=105.6nm(Dv
(50)=53.7nm;Dv
(90)=157nm)。
【0178】
実施例4
HGT5000、DOPE、コレステロール、およびDMG−PEG2000を含み、ヒトアルファ−ガラクトシターゼ(GLA)mRNAを被包する脂質ナノ粒子は、標準的なエタノール注入法を介して形成された(Ponsa,et al.,Int. J.Pharm.(1993)95:51−56.)。脂質のエタノール貯蔵溶液は、50mg/mLの濃度で前もって調製され、−20℃で保管された。
【0179】
ヒトGLA mRNAは、遺伝子をコードするプラスミドDNAテンプレートからの生体外転写、続いて、ゲル電気泳動により決定される、5’キャップ構造(Cap1)(Fechter,P.et al.,J.Gen.Virology(2005)86:1239−1249)、および長さが約200ヌクレオチドの3’ポリ(A)テールの付加により合成された。GLA mRNAに存在する5’および3’非翻訳領域は、下に示されるように、配列番号4において、XおよびYと表される。
【0180】
アルファ−ガラクトシターゼ(GLA)mRNA:
配列番号4
XAUGCAGCUGAGGAACCCAGAACUACAUCUGGGCUGCGCGCUUGCGCUUCGCUUCCUGGCCCUCGUUUCCUGGGACAUCCCUGGGGCUAGAGCACUGGACAAUGGAUUGGCAAGGACGCCUACCAUGGGCUGGCUGCACUGGGAGCGCUUCAUGUGCAACCUUGACUGCCAGGAAGAGCCAGAUUCCUGCAUCAGUGAGAAGCUCUUCAUGGAGAUGGCAGAGCUCAUGGUCUCAGAAGGCUGGAAGGAUGCAGGUUAUGAGUACCUCUGCAUUGAUGACUGUUGGAUGGCUCCCCAAAGAGAUUCAGAAGGCAGACUUCAGGCAGACCCUCAGCGCUUUCCUCAUGGGAUUCGCCAGCUAGCUAAUUAUGUUCACAGCAAAGGACUGAAGCUAGGGAUUUAUGCAGAUGUUGGAAAUAAAACCUGCGCAGGCUUCCCUGGGAGUUUUGGAUACUACGACAUUGAUGCCCAGACCUUUGCUGACUGGGGAGUAGAUCUGCUAAAAUUUGAUGGUUGUUACUGUGACAGUUUGGAAAAUUUGGCAGAUGGUUAUAAGCACAUGUCCUUGGCCCUGAAUAGGACUGGCAGAAGCAUUGUGUACUCCUGUGAGUGGCCUCUUUAUAUGUGGCCCUUUCAAAAGCCCAAUUAUACAGAAAUCCGACAGUACUGCAAUCACUGGCGAAAUUUUGCUGACAUUGAUGAUUCCUGGAAAAGUAUAAAGAGUAUCUUGGACUGGACAUCUUUUAACCAGGAGAGAAUUGUUGAUGUUGCUGGACCAGGGGGUUGGAAUGACCCAGAUAUGUUAGUGAUUGGCAACUUUGGCCUCAGCUGGAAUCAGCAAGUAACUCAGAUGGCCCUCUGGGCUAUCAUGGCUGCUCCUUUAUUCAUGUCUAAUGACCUCCGACACAUCAGCCCUCAAGCCAAAGCUCUCCUUCAGGAUAAGGACGUAAUUGCCAUCAAUCAGGACCCCUUGGGCAAGCAAGGGUACCAGCUUAGACAGGGAGACAACUUUGAAGUGUGGGAACGACCUCUCUCAGGCUUAGCCUGGGCUGUAGCUAUGAUAAACCGGCAGGAGAUUGGUGGACCUCGCUCUUAUACCAUCGCAGUUGCUUCCCUGGGUAAAGGAGUGGCCUGUAAUCCUGCCUGCUUCAUCACACAGCUCCUCCCUGUGAAAAGGAAGCUAGGGUUCUAUGAAUGGACUUCAAGGUUAAGAAGUCACAUAAAUCCCACAGGCACUGUUUUGCUUCAGCUAGAAAAUACAAUGCAGAUGUCAUUAAAAGACUUACUUUAAY
X=GGGAUCCUACC(配列番号2)
Y=UUUGAAUU(配列番号3) 。
【0181】
GLA mRNAは、使用するときまで、−80℃で、1mg/mLの最終濃度で、水中で保管された。全てのmRNA濃度は、Ribogreenアッセイ(Invitrogen)を介して決定された。mRNAの被包は、0.1%のトリトン−X100の存在下、または不在下で、Ribogreenアッセイを行うことにより計算された。粒径(動的光散乱(DLS))およびゼータ電位は、それぞれ、1×PBSおよび1mM KCl溶液において、Malvern Zetasizer機器を使用して決定された。
【0182】
HGT5000、DOPE、コレステロール、およびDMG−PEG2Kの50mg/mLのエタノール溶液のアリコートを混合し、エタノールで3mLの最終容積に希釈した。別に、GLA mRNAの水性緩衝溶液(10mMのクエン酸塩/150mM NaCl、pH4.5)を1mg/mLの貯蔵液から調製した。脂質溶液を水性mRNA溶液中に迅速に注入し、振盪し、20%のエタノール中に最終懸濁液を得た。得られたナノ粒子懸濁液を濾過し、1×PBS(pH7.4)で透析濾過し、濃縮し、2〜8℃で保管した。最終濃度=1.38mg/mLのGLA mRNA(被包された)。Z
平均=77.7nm(Dv
(50)=62.3nm;Dv
(90)=91.7nm)。
【0183】
実施例5
HGT5001、DOPE、コレステロール、およびDMG−PEG2000を含み、ヒトアルファ−ガラクトシターゼ(GLA)mRNAを被包する脂質ナノ粒子は、標準的なエタノール注入法を介して形成された(Ponsa,et al.,Int.J.Pharm.(1993)95:51−56.)。脂質のエタノール貯蔵溶液は、50mg/mLの濃度で前もって調製され、−20℃で保管された。
【0184】
アルファ−ガラクトシターゼ(GLA)mRNAは、遺伝子をコードするプラスミドDNAテンプレートからの生体外転写、続いて、ゲル電気泳動により決定される、5’キャップ構造(Cap1)(Fechter,P.et al.,J.Gen.Virology(2005)86:1239−1249)、および長さが約200ヌクレオチドの3’ポリ(A)テールの付加により合成された。ヒトアルファ−ガラクトシターゼ(GLA)mRNAに存在する5’および3’非翻訳領域は、下に示されるように、それぞれ、配列番号4においてXおよびYと表される。
【0185】
ヒトアルファ−ガラクトシターゼ(GLA)mRNA:
配列番号4
XAUGCAGCUGAGGAACCCAGAACUACAUCUGGGCUGCGCGCUUGCGCUUCGCUUCCUGGCCCUCGUUUCCUGGGACAUCCCUGGGGCUAGAGCACUGGACAAUGGAUUGGCAAGGACGCCUACCAUGGGCUGGCUGCACUGGGAGCGCUUCAUGUGCAACCUUGACUGCCAGGAAGAGCCAGAUUCCUGCAUCAGUGAGAAGCUCUUCAUGGAGAUGGCAGAGCUCAUGGUCUCAGAAGGCUGGAAGGAUGCAGGUUAUGAGUACCUCUGCAUUGAUGACUGUUGGAUGGCUCCCCAAAGAGAUUCAGAAGGCAGACUUCAGGCAGACCCUCAGCGCUUUCCUCAUGGGAUUCGCCAGCUAGCUAAUUAUGUUCACAGCAAAGGACUGAAGCUAGGGAUUUAUGCAGAUGUUGGAAAUAAAACCUGCGCAGGCUUCCCUGGGAGUUUUGGAUACUACGACAUUGAUGCCCAGACCUUUGCUGACUGGGGAGUAGAUCUGCUAAAAUUUGAUGGUUGUUACUGUGACAGUUUGGAAAAUUUGGCAGAUGGUUAUAAGCACAUGUCCUUGGCCCUGAAUAGGACUGGCAGAAGCAUUGUGUACUCCUGUGAGUGGCCUCUUUAUAUGUGGCCCUUUCAAAAGCCCAAUUAUACAGAAAUCCGACAGUACUGCAAUCACUGGCGAAAUUUUGCUGACAUUGAUGAUUCCUGGAAAAGUAUAAAGAGUAUCUUGGACUGGACAUCUUUUAACCAGGAGAGAAUUGUUGAUGUUGCUGGACCAGGGGGUUGGAAUGACCCAGAUAUGUUAGUGAUUGGCAACUUUGGCCUCAGCUGGAAUCAGCAAGUAACUCAGAUGGCCCUCUGGGCUAUCAUGGCUGCUCCUUUAUUCAUGUCUAAUGACCUCCGACACAUCAGCCCUCAAGCCAAAGCUCUCCUUCAGGAUAAGGACGUAAUUGCCAUCAAUCAGGACCCCUUGGGCAAGCAAGGGUACCAGCUUAGACAGGGAGACAACUUUGAAGUGUGGGAACGACCUCUCUCAGGCUUAGCCUGGGCUGUAGCUAUGAUAAACCGGCAGGAGAUUGGUGGACCUCGCUCUUAUACCAUCGCAGUUGCUUCCCUGGGUAAAGGAGUGGCCUGUAAUCCUGCCUGCUUCAUCACACAGCUCCUCCCUGUGAAAAGGAAGCUAGGGUUCUAUGAAUGGACUUCAAGGUUAAGAAGUCACAUAAAUCCCACAGGCACUGUUUUGCUUCAGCUAGAAAAUACAAUGCAGAUGUCAUUAAAAGACUUACUUUAAY(配列番号2)
X=GGGAUCCUACC(配列番号2)
Y=UUUGAAUU(配列番号3) 。
【0186】
HGT5001、DOPE、コレステロール、およびDMG−PEG2Kの50mg/mLのエタノール溶液のアリコートを混合し、エタノールで3mLの最終容積に希釈した。別に、GLA mRNAの水性緩衝溶液(10mMのクエン酸塩/150mM NaCl、pH4.5)を1mg/mLの貯蔵液から調製した。脂質溶液を水性mRNA溶液中に迅速に注入し、振盪し、20%のエタノール中に最終懸濁液を得た。得られたナノ粒子懸濁液を濾過し、1×PBS(pH7.4)で透析濾過し、濃縮し、2〜8℃で保管した。最終濃度=0.68/mLのGLA mRNA(被包された)。Z
平均=79.6nm(Dv
(50)=57.26nm;Dv
(90)=100nm)。
【0187】
実施例6
HGT5001、DOPE、コレステロール、およびDMG−PEG2000を含み、ヒトエリスロポエチン(EPO)mRNAを被包する脂質ナノ粒子は、標準的なエタノール注入法を介して形成された(Ponsa,et al.,Int.J.Pharm.(1993)95:51−56.)。脂質のエタノール貯蔵溶液は、50mg/mLの濃度で前もって調製され、−20℃で保管された。
【0188】
ヒトエリスロポエチン(EPO)mRNAは、遺伝子をコードするプラスミドDNAテンプレートからの生体外転写、続いて、ゲル電気泳動により決定される、5’キャップ構造(Cap1)(Fechter,P.et al.,J.Gen.Virology(2005)86:1239−1249)、および長さが約200ヌクレオチドの3’ポリ(A)テールの付加により合成された。ヒトエリスロポエチン(EPO)mRNAに存在する5’および3’非翻訳領域は、下に示されるように、それぞれ、配列番号1においてXおよびYと表される。
【0189】
ヒトエリスロポエチンmRNA:
配列番号1
XAUGGGGGUGCACGAAUGUCCUGCCUGGCUGUGGCUUCUCCUGUCCCUGCUGUCGCUCCCUCUGGGCCUCCCAGUCCUGGGCGCCCCACCACGCCUCAUCUGUGACAGCCGAGUCCUGGAGAGGUACCUCUUGGAGGCCAAGGAGGCCGAGAAUAUCACGACGGGCUGUGCUGAACACUGCAGCUUGAAUGAGAAUAUCACUGUCCCAGACACCAAAGUUAAUUUCUAUGCCUGGAAGAGGAUGGAGGUCGGGCAGCAGGCCGUAGAAGUCUGGCAGGGCCUGGCCCUGCUGUCGGAAGCUGUCCUGCGGGGCCAGGCCCUGUUGGUCAACUCUUCCCAGCCGUGGGAGCCCCUGCAGCUGCAUGUGGAUAAAGCCGUCAGUGGCCUUCGCAGCCUCACCACUCUGCUUCGGGCUCUGGGAGCCCAGAAGGAAGCCAUCUCCCCUCCAGAUGCGGCCUCAGCUGCUCCACUCCGAACAAUCACUGCUGACACUUUCCGCAAACUCUUCCGAGUCUACUCCAAUUUCCUCCGGGGAAAGCUGAAGCUGUACACAGGGGAGGCCUGCAGGACAGGGGACAGAUGAY
X=GGGAUCCUACC(配列番号2)
Y=UUUGAAUU(配列番号3) 。
【0190】
HGT5001、DOPE、コレステロール、およびDMG−PEG2Kの50mg/mLのエタノール溶液のアリコートを混合し、エタノールで3mLの最終容積に希釈した。別に、EPO mRNAの水性緩衝溶液(10mMのクエン酸塩/150mM NaCl、pH4.5)を1mg/mLの貯蔵液から調製した。脂質溶液を水性mRNA溶液中に迅速に注入し、振盪し、20%のエタノール中に最終懸濁液を得た。得られたナノ粒子懸濁液を濾過し、1×PBS(pH7.4)で透析濾過し、濃縮し、2〜8℃で保管した。最終濃度=1.09mg/mLのEPO mRNA(被包された)。Z
平均=62.1nm(Dv
(50)=45.2nm;Dv
(90)=74.6nm)。
【0191】
実施例7
ヒトGLA mRNAを被包し、上の実施例4に従い調製されたHGT5000に基づく脂質ナノ粒子が被包されたポリヌクレオチド構築物を1つ以上の標的細胞に送達することができるか否かを決定するために、ヒトGLAタンパク質生成に関して後に監視された野生型(CD−1)マウスにおいて、投与量反応研究が行われた。
【0192】
前述の研究は、各実験の開始時において約6〜8週齢の雄または雌のCD−1マウスを使用して行われた。1日目と再度5日目の1週間にわたって、単一のボーラス尾静脈注射によりサンプルを導入した。GLAタンパク質の血清濃度は、2回目の静脈内投与量の投与6時間後、24時間後、48時間後、および72時間後に決定された。マウスを、8日目の2回目の静脈内投与量の投与72時間後に屠殺し、臓器を生理食塩水で潅流した。各マウスの肝臓、脾臓、および該当する場合、脳を採取し、2つに配分し、10%の中性緩衝ホルマリンに保管するか、または急速凍結して、80℃で保管するかのいずれかであった。
【0193】
図1に図示されるように、HGT5000に基づく脂質ナノ粒子に充填された10μg、20μg、30μg、60μg、または90μgのGLA mRNAの2投与量の静脈内注射後の、実質的なレベルのヒトGLAタンパク質が、6時間以内にマウス血清において検出することができた。さらに、検出可能なレベルのGLAタンパク質は、2回目の単回投与量の静脈内投与48時間後に血清において観察することができた。
図2に図示されるように、ナノグラムレベルのヒトGLAタンパク質も、2回目のGLA mRNAのボーラス尾静脈注射の投与72時間後に、肝臓、腎臓、および脾臓などのマウスの選択臓器において検出可能であった。
【0194】
ヒトGLA mRNAを被包し、上の実施例4に従い調製されたHGT5000に基づくナノ粒子を評価する追加の研究も、ファブリー病のマウスモデルを使用して行われた。サンプルは、尾静脈注射を介して、90μgの単回ボーラス投与量(被包されたGLAに基づく)のGLA充填された脂質ナノ粒子により導入された。超生理学的レベルのGLAタンパク質(約50倍高い)が、単回90ug投与量のGLAの投与24時間後の血清において検出された。
図3および
図4に図示されるように、ヒトGLAタンパク質は、GLA mRNAを被包するHGT5000に基づく脂質ナノ粒子のボーラス尾静脈注射の投与後のファブリーマウスの血清および選択臓器において検出可能であった。特に、ヒトGLAタンパク質は、72時間の期間にわって、GLA mRNA充填されたHGT5000に基づく脂質ナノ粒子の投与後のファブリーマウスの血清において検出された。ヒトGLAタンパク質レベルも、投与24時間後および72時間後両方のGLA mRNA充填されたHGT5000に基づく脂質ナノ粒子の投与後の選択ファブリーマウスの臓器において検出可能であった。
【0195】
実施例8
ヒトGLA mRNAを被包し、上の実施例5に従い調製されたHGT5001に基づく脂質ナノ粒子が被包されたポリヌクレオチド構築物を1つ以上の標的細胞に送達することができるか否かを決定するために、ヒトGLAタンパク質生成に関して後に監視された野生型(CD−1)マウスにおいて、投与量反応研究が行われた。
【0196】
前述の研究は、各実験の開始時において約6〜8週齢の雄または雌のCD−1マウスを使用して行われた。サンプルは、単回ボーラス尾静脈注射により導入された。マウスは、指定された時間点で屠殺され、臓器は生理食塩水で潅流された。各マウスの肝臓、脾臓、および該当する場合、脳を採取し、2つに配分し、10%の中性緩衝ホルマリンに保管するか、または急速凍結して、−80℃で保管するかのいずれかであった。
【0197】
30μgの単回投与量のHGT50001に基づくGLA mRNA充填された脂質ナノ粒子を野生型マウスに投与し、
図5および6に図示されるように、投与6時間後、ヒトGLAタンパク質は、正常な生理学的レベルを100倍超える濃度で血清において検出された。
図5にも示されるように、HGT5001に基づくGLA mRNA充填された脂質ナノ粒子の野生型マウスへの投与24時間後、ヒトGLAタンパク質は、正常な生理学的レベルを30倍超える濃度で依然として検出可能であった。さらに、
図6に示されるように、ヒトGLAタンパク質の実質的な濃度は、HGT5001に基づくGLA mRNA充填された脂質ナノ粒子の投与24時間後の処置後の野生型マウスの肝臓、腎臓、および脾臓において検出することができた。
【0198】
実施例9
HGT5000に基づく、およびHGT5001に基づく両方の脂質ナノ粒子が被包されたヒトエリスロポエチン(EPO)mRNAを野生型スプラーグドーレイラットの1つ以上の標的細胞に送達する能力をさらに示すために、即時研究が行われた。HGT5000およびHGT50001に基づくEPO mRNA充填された脂質ナノ粒子は、前述の実施例に記載されるプロトコルに従い調製された。サンプルは、単回ボーラス尾静脈注射により投与された。血流中に分泌されたEPOタンパク質の濃度を、24時間の期間にわたって監視し、血清サンプルを、投与6時間後、12時間後、18時間後、および24時間後に得た。
【0199】
ヒトEPOタンパク質は、24時間の期間にわたって、EPO mRNA充填されたHGT5000およびHGT5001に基づく脂質ナノ粒子の投与後のスプラーグドーレイラットの血清において検出された。
図7に示されるように、HGT5000に基づく、およびHGT5001に基づく両方の脂質ナノ粒子は、野生型スプラーグドーレイラットにおいて、有効なタンパク質生成をもたらした。顕著なレベルのヒトEPOタンパク質が、HGT5000およびHGT5001に基づく両方のナノ粒子系に関するこの研究過程にわたって検出された。したがって、本実施例は、HGT5000およびHGT5001に基づく両方の脂質ナノ粒子がポリヌクレオチド構築物を1つ以上の標的細胞に送達する非常に有効な手段を提供し、そのような脂質ナノ粒子のそのような標的細胞への発現後、被包されたmRNAによってコードされた発現タンパク質が血清において検出可能であったことを図示する。
【0200】
考察
前述の研究は、本明細書に開示される脂質化合物がリポソーム送達ビヒクルとして、またはリポソーム送達ビヒクルの成分として有用であることを図示する。特に、そのような化合物および組成物は、被包されたポリヌクレオチド(例えば、機能タンパク質または酵素をコードするmRNAポリヌクレオチド)を1つ以上の標的細胞、組織、および臓器に送達することを容易にし、それによって、そのような細胞にポリヌクレオチドを発現させる。例えば、HGT5000に基づく脂質ナノ粒子に被包された所与の投与量のmRNAポリヌクレオチドの単回静脈内注射後、コードされたタンパク質の実質的なレベルは、対象マウスの血清および1つ以上の標的臓器の両方において検出された。さらに、実施例8により明らかなように、多くの場合、発現タンパク質の濃度は、治療有効性に必要なそれらの濃度を十分に超え、したがって、投与された組成物の投与量の一部のみが、血漿、標的臓器、組織、または細胞内の治療的に有効な濃度を達成するのに必要であることを示唆する。結果として、治療有効量の被包された薬剤を送達するのに必要であるカチオン性脂質の総投与量を減少させることができ、組成物の毒性において対応する減少をもたらす。