(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年では、多数の舶用機器が船舶に搭載されている。これらの舶用機器は、多数の電子部品から構成されている。また、船舶は、航海に出ると長い場合は数週間から数ヶ月の間、寄港しないことがある。
【0007】
そのため、海上において、舶用機器を構成する電子部品が寿命により機能しなくなり、舶用機器が正しく動作しなくなることが考えられる。特に、舶用機器は、通常は電源を落とさずに稼動させ続けるため、寿命が減少する速度が早く、寿命が到来し易い。
【0008】
なお、航海に特に重要な舶用機器は冗長化しているため危機的状況は回避できるが、メインの機器からバックアップの機器へ移行する手間が生じたり、複数台の舶用機器の同時使用ができなくなったりする。
【0009】
なお、この課題は、電子部品だけでなく、機械部品(例えばプッシュキーや回転キー等の可動部品)にも当てはまる。
【0010】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、海上で部品の寿命が到来することを防止するために、部品の寿命を事前に通知する部品寿命通知装置を提供することにある。
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0012】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の航法装置が提供される。即ち、この航法装置は、ルート設定部と、航海時間算出部と、寿命取得部と、比較部と、通知部と、を備える。前記ルート設定部は、航海用のルートを設定する。前記航海時間算出部は、前記ルート設定部が設定したルートを航海するために必要な予定航海時間を算出する。前記寿命取得部は、部品の推定残存寿命を取得する。前記比較部は、前記ルート設定部が設定したルート上の所定の目的地に到着するまでの前記予定航海時間と前記推定残存寿命とを比較して比較結果を出力する。前記通知部は、前記比較部の出力する前記比較結果が、前記予定航海時間よりも前記推定残存寿命の方が短い場合に、その旨を通知する。
【0013】
これにより、ルートの予定航海時間(所要時間)を考慮して、事前に部品の交換が必要か否かを通知できる。従って、海上で部品の推定寿命が到来することを防止することができる。
【0014】
前記の航法装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この航法装置は、前記ルート設定部が設定したルートを表示する表示部を備える。前記ルート設定部は、船舶が寄港する寄港地をルート上にウェイポイントとして設定可能である。前記通知部は、推定寿命が到来する前に寄港する寄港地と、推定寿命が到来した後に寄港する寄港地と、で前記ウェイポイントの表示態様を異ならせる。
【0015】
これにより、どの寄港地に到達するまでに部品を交換したら良いかを視覚的に把握することができる。
【0016】
前記の航法装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この航法装置は、前記ルート設定部が設定したルートを表示する表示部を備える。前記通知部は、前記表示部に表示するルートのうち、推定寿命の到来前に通過するルートと、推定寿命の到来後に通過するルートと、で前記ルートの表示態様を異ならせる。
【0017】
これにより、ルート上のどの地点に到達するまでに部品を交換したら良いかを視覚的に把握することができる。
【0018】
前記の航法装置においては、前記寿命取得部は、部品の周囲の温度に基づいて算出された、当該部品の推定残存寿命を取得することが好ましい。
【0019】
これにより、部品の推定残存寿命をより正確に算出することができるので、部品の交換が必要な旨を一層適切なタイミングで通知できる。
【0020】
前記の航法装置においては、前記推定残存寿命及び前記比較結果の少なくとも何れかを含む部品データを外部へ送信する送信部を備えることが好ましい。
【0021】
これにより、部品の寿命に関する情報等を外部から把握できる。
【0022】
前記の航法装置においては、前記送信部は、陸上の所定の地点(例えば陸上局)へ前記部品データを送信することが好ましい。
【0023】
これにより、海上の情報を陸上で取得できるので、例えば近いうちに交換が必要となる部品を把握できる。
【0024】
前記の航法装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記通知部は、航海中に部品の推定寿命が到来することを通知する際に、該当する部品を交換するか否かを問い合わせる。前記送信部は、部品を交換する旨の指示を受けたときに、前記部品データを外部へ送信する。
【0025】
これにより、ユーザは、通知部の通知に応じて手続きを行うだけで、部品の交換の手配を行うことができる。また、部品の交換を行う者は、部品の型番等の情報を簡単に取得できるので、交換が必要な部品を確実に特定できる。
【0026】
前記の航法装置においては、前記通知部は、航海中に部品の推定寿命が到来することを通知する際に、設定したルートの近傍に存在する位置にある、該当する部品の交換が可能なサービス拠点を通知することが好ましい。
【0027】
これにより、ユーザは、自らサービス拠点に連絡することなく、どの拠点によれば部品が交換できるかを把握できる。
【0028】
前記の航法装置においては、前記通知部は、航海中に部品の推定寿命が到来することを通知する際に、該当する部品の交換が可能な位置毎に、部品の交換に掛かる費用と部品の交換に要する時間のうち少なくとも一方を通知することが好ましい。
【0029】
これにより、どの位置(港)で部品を交換するかについての判断材料をユーザに提供できる。
【0030】
前記の航法装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、ネットワークを介して舶用機器が接続される。前記寿命取得部は、前記ネットワーク上に存在する前記舶用機器の部品の推定残存寿命を取得する。前記通知部は、前記予定航海時間よりも前記舶用機器の部品の前記推定残存寿命が短い場合に、その旨を通知する。
【0031】
これにより、航法機器以外の寿命もユーザに通知できる。また、寿命に関する情報を一元的に管理できる。
【0032】
前記の航法装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この航法装置は、同一の船内に設置された舶用機器の寿命が予め記憶された寿命記憶部を備える。前記寿命取得部は、前記寿命記憶部に記憶された前記舶用機器の部品の寿命に基づいて、前記舶用機器の部品の推定残存寿命を取得する。前記通知部は、前記予定航海時間よりも前記舶用機器の部品の前記推定残存寿命が短い場合に、その旨を通知する。
【0033】
これにより、航法装置と接続されていない舶用機器についても寿命を通知することができる。
【0034】
本発明の第2の観点によれば、以下の部品寿命通知方法が提供される。即ち、この部品寿命通知方法は、ルート設定工程と、航海時間算出工程と、寿命取得工程と、比較工程と、通知工程と、を含む。前記ルート設定工程は、航海用のルートを設定する。前記航海時間算出工程では、前記ルート設定工程で設定したルートを航海するために必要な予定航海時間を算出する。前記寿命取得工程では、部品の推定残存寿命を取得する。前記比較工程では、前記ルート設定工程で設定したルート上の所定の目的地に到着するまえの前記予定航海時間と前記推定残存寿命とを比較して比較結果を出力する。前記通知工程では、前記比較工程で出力する前記比較結果が、前記予定航海時間よりも前記推定残存寿命の方が短い場合に、その旨を通知する。
【0035】
これにより、ルートの航海時間(所要時間)を考慮して、事前に部品の交換が必要か否かを通知できる。従って、海上で部品の推定寿命が到来することを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る航法装置の構成を示すブロック図である。
【0038】
航法装置1は、船舶に搭載され、自船の位置や設定したルートを海図上に表示可能である。航法装置1は、ルートに沿って航海を行うように自動操舵装置(図略)に指示を行うことができる。これにより、船舶はユーザが作成したルートに沿って航海を行うことができる。
【0039】
航法装置1には、GPS受信機3及び方位センサ4が接続されている。
【0040】
GPS受信機3は、GPSアンテナ2から測位信号を受信して測位演算を行うことで、自船の位置情報を検出する。GPS受信機3が算出した位置情報は、航法装置1の制御部10に出力される。
【0041】
方位センサ4は、自船に固定された複数のGPSアンテナを備えており、GPSアンテナの相対的な位置関係から船首方位(自船の向き)を検出することができる。方位センサ4が算出した船首方位は、航法装置1の制御部10に出力される。なお、方位センサ4としては、複数のGPSアンテナからなる構成以外にも、例えば磁気方位センサやジャイロコンパス等を用いることができる。
【0042】
航法装置1は、
図1に示すように、制御部10と、表示部11と、入力部12と、海図情報記憶部13と、温度センサ14と、ルート制御部15と、部品寿命通知部16と、送信部17と、受信部18と、を備えている。
【0043】
制御部10は、図略のCPU、RAM及びROM等からなるハードウェアと、前記ROMに記憶された各種のプログラムからなるソフトウェアと、から構成されている。制御部10は、プログラムを実行することにより、航法装置1の各制御(例えば表示制御)を行うことができる。なお、このプログラムは、制御部10が備える前記ROMに記憶される構成の他、記憶媒体(光ディスク、メモリカード等)に記憶されたものであっても良い。
【0044】
表示部11は、航法装置1が作成した各種の映像を表示することができる。例えば、表示部11は、海図上の自船の位置及びルートの映像を表示することができる。
【0045】
入力部12は、ユーザが操作するキー等である。ユーザは、入力部12を操作して指示を入力することにより、ルートを作成したり、表示設定を変更したりすることができる。なお、入力部12は、十字キーや回転キー等の物理キーに限られず、タッチパネルであっても良い。また、画面上のポインタを移動させるマウスやトラックボール等であっても良い。
【0046】
海図情報記憶部13は、ハードディスクドライブ等であり、電子海図を記憶している。なお、ハードディスクドライブに代えて、記憶媒体(光ディスク、メモリカード等)と、この記憶媒体から情報を読み出す装置と、から構成されていても良い。
【0047】
温度センサ14は、航法装置1の内部の温度(詳細には電子部品の周囲の温度)を取得する。温度センサ14が取得した温度は、後述のように部品の推定残存寿命(推定寿命が到来するまでの時間)を取得するために用いられる。そのため、温度センサ14が取得した温度は、制御部10を介して、部品寿命通知部16に出力される。
【0048】
ルート制御部15は、ルート作成部21と、ルート記憶部22と、ルート設定部23と、を備えている。
【0049】
ルート作成部21は、ユーザの指示に応じてルートを作成可能である。具体的には、ユーザは、入力部12に所定の入力を行うことでルート作成モードを選択する。そして、ユーザは、海図上の任意の位置を指定していき、最後に目的地を指定して、ルートを確定させる。ユーザが最後に指定した位置は目的地となり、それ以外の位置はウェイポイント(経由地、具体的には変針点又は寄港地)となる。なお、ルートには、ウェイポイント及び目的地だけでなく、ウェイポイント又は目的地までの所要時間を設定することもできる。
【0050】
ルート記憶部22は、ルート作成部21により作成されたルートを記憶する。ルート記憶部22は、例えば
図2に示すように、出発地及び目的地の名称(詳細には位置情報も)と、WP(ウェイポイント)の位置情報と、ルートの総航海距離と、を記憶する。なお、
図2で示した情報は一例であり、情報の追加又は省略が可能である。例えば、総航海距離はルート記憶部22に記憶せずに必要に応じて適宜求めても良い。
【0051】
ルート設定部23は、ユーザが指定したルートを航法装置1に設定することができる。ここで、「ルートを(航法装置1に)設定する」とは、ルートを表示部に表示する等して、ルートに沿った航海を行うように設定することをいう。なお、ルート設定部23は、ルート作成部21により新たに作成されたルート、又は、予め作成されてルート記憶部22が記憶しているルートを設定可能である。
【0052】
部品寿命通知部16は、航海時間算出部31と、寿命取得部32と、比較部33と、通知部34と、を備えている。
【0053】
航海時間算出部31は、ルートを航海するために必要な予定航海時間を算出する。航海時間算出部31は、目的地までの所要時間が設定されているときは、この所要時間を予定航海時間とする。なお、所要時間に停泊時間が含まれているときは、所要時間から停泊時間を減算した時間を予定航海時間とすることもできる。また、航海時間算出部31は、目的地までの所要時間が設定されていない場合、同じルートを航海したときの過去の所要時間や、現在又は過去の船速等に基づいて、予定航海時間を推定する。
【0054】
寿命取得部32は、航法装置1を構成する各部品について、推定した残存寿命(推定残存寿命)を取得する(寿命取得工程)。寿命取得部32による推定残存寿命の取得方法は任意だが、本実施形態では、
図3(a)のフローチャートに沿って処理が行われる。
【0055】
寿命取得部32は、各部品が稼動しているか否かを制御部10から取得し、稼動している部品について、タイマー又はRTC等により稼働時間を随時更新する。そして、寿命取得部32は、所定の寿命計算タイミングになったことを検出すると(S101)、温度センサ14が検出した温度を制御部10から取得する(S102)。
【0056】
次に、寿命取得部32は、取得した温度に基づいて寿命加速係数αを算出する(S103)。寿命加速係数αとは、最適温度時(寿命が一番減りにくい温度、例えば25℃)と比較したときの寿命の減り易さを示す。具体的には、最適温度時よりもα倍だけ寿命が減ることとなる。この寿命加速係数αは、例えば次段落の式により求めることができる。
【0057】
α=総寿命時間/(総寿命時間−温度係数×最適温度からのズレ)
【0058】
ここで、総寿命時間とは、部品がその能力を発揮できる時間であり、仕様書等に掲載された部品毎の固有値である。最適温度とは部品の寿命が最も長くなるときの温度(例えば25℃)である。温度係数とは、最適温度からズレたときに、どの程度寿命に影響を及ぼすかを定める係数である。寿命取得部32は、以上のようにして寿命加速係数αを求める。
【0059】
次に、寿命取得部32は、各部品について、寿命加速係数αを用いて推定残存寿命を取得する。寿命取得部32は、以上の処理を寿命計算タイミングが到来する毎に行う。
【0060】
なお、S101の寿命計算タイミングを短くするほど推定残存寿命を正確に計算できるが、演算量が増えてしまう。従って、昼夜の温度差を寿命の計算に適用しつつ演算量を減らすために、寿命計算タイミングは、1時間から数時間程度であることが好ましい。なお、温度差が生じにくい環境であれば、寿命計算タイミングを更に長くしても良い。
【0061】
比較部33は、航海時間算出部31が算出した予定航海時間と推定残存寿命とを比較して比較結果を出力する。具体的には、比較部33は、予定航海時間と推定残存寿命の差を求めて出力したり、予定航海時間と推定残存寿命の何れが大きい(小さい)かのみを出力したりする。
【0062】
通知部34は、この比較結果が「予定航海時間よりも推定残存寿命の方が短い」旨を示していた場合に、その旨(言い換えれば、航海時間中に推定寿命が到来する旨)を通知する。なお、通知方法の詳細については後述する。
【0063】
送信部17及び受信部18は、例えば衛星通信回線又は携帯電話回線を用いて、舶用機器の販売業者のサーバ40と通信を行うことができる。具体的には、送信部17は、所定の条件を満たしたときに、交換が必要な部品をサーバ40に通知する(詳細は後述)。また、受信部18は、舶用機器のソフトウェア又はデータベースのアップデートが存在するか否かをサーバ40から取得する(詳細は後述)。
【0064】
次に、
図3(b)を参照して、ルートの設定時に部品の推定寿命を通知する処理について説明する。
【0065】
ユーザは、入力部12に所定の入力を行うことで、所望のルートの設定を指示する。ルート設定部23は、この指示を受け付けて(S201)、該当するルートを設定する(S202、ルート設定工程)。
【0066】
次に、航海時間算出部31は、上述の処理を行い、設定したルートの予定航海時間を算出する(S203、航海時間算出工程)。この予定航海時間は、通知部34に出力される。また、通知部34は、寿命取得部32が更新し続けている各部品の推定残存寿命を読み出す(S204)。
【0067】
そして、比較部33は、予定航海時間よりも推定残存寿命の方が短いか否かを判断する(S205)。なお、設定したルートでの航海が開始するまでに時間がある場合は、この時間を考慮して判断を行っても良い。更には、予定航海時間は概算値なので、より確実性をもたせるために、予定航海時間に所定の時間を足した値を用いて、この判断を行っても良い。
【0068】
通知部34は、予定航海時間よりも推定残存寿命の方が短いと比較部33が判断した場合、航海中に部品の推定寿命が到来する旨を通知する(S206、通知工程)。通知方法としては、その旨を表示部11に表示したり、スピーカ等を用いて音声で通知したり、ランプ等を用いて光で通知したりする方法が考えられる。このように通知を行うことで、ユーザは、当該部品の交換が必要か否かを事前に把握できる。
【0069】
一方、通知部34は、予定航海時間よりも推定残存寿命の方が長いと判断した場合、特に通知を行わない(S207)。なお、通知部34は、「航海中に部品の推定寿命が到来しない旨」を通知しても良い。
【0070】
次に、
図4から
図6までを参照して、S206の通知(航海中に部品の推定寿命が到来する旨の通知)の表示方法について説明する。
図4から
図6は、部品の推定寿命を通知するときの表示画面を示す図である。
【0071】
初めに、
図4から
図6に表示される画面について簡単に説明する。この画面では、陸地が斜線で示され、海が無地で示されている。船のマークは自船の位置を示す。塗り潰した正方形の図形はウェイポイント(経由地)の位置を示し、その下のWP01等は経由地の番号を示す。なお、上述のように、ウェイポイントは、海上の変針点又は寄港地等を示す。
【0072】
ここで、通知部34が予定航海時間と推定寿命とを比較した結果、WP02とWP03の間でLCDの推定寿命が到来することが求められたとする。
【0073】
図4では、画面の左下において、航海中に推定寿命が到来する部品名、及び、どのウェイポイントの前に部品の推定寿命が到来するかが文章で表示されている。なお、この文章では、具体的な推定残存寿命を表示しても良い。
【0074】
また、
図4では、部品の推定寿命が到来する前であって寄港地としてのウェイポイントに丸印が付けられている。従って、
図4では、WP03の手前であって、寄港地であるWP02に丸印が付けられている。WP01は海上の変針点なので丸印は付けられていない。なお、部品の推定寿命が到来する前の寄港地を他と異なる表示態様で表示する方法は任意であり、例えば、マークの有無、点滅の有無、色の違い、注釈の付記等を例として挙げることができる。
【0075】
図5では、
図4と同様に文章での通知に加え、部品の推定寿命が到来する位置が具体的に表示される。更に、
図5では、部品の推定寿命が到来する後のルートの線を、部品の推定寿命が到来する前のルートの線よりも、太く表示している。なお、部品の推定寿命が到来する前後でルートの表示態様を異ならせる方法は任意であり、例えば、線の点滅の有無、線の色の違い、線の種類(実線、破線、鎖線等)の違い等を例として挙げることができる。
【0076】
図6では、上記と同様に文章での通知に加え、推定寿命が到来する部品の交換が可能な位置(寄港地)、交換に掛かる費用及び時間を表示する。
図6では、WP01は海上の変針点であるため部品の交換が不可能なので特に表示態様は変化させない。一方WP02は、港であり近くにサービス拠点があるため、部品の交換が可能な位置として表示する。なお、
図6では、ウェイポイントとして設定された港以外にも、ルートの近傍に存在し、該当する部品の交換が可能な位置を表示する。なお、部品の交換が可能な位置を表示する方法も上記と同様に様々な方法で表示することができる。
【0077】
また、
図6の表示を行うためには、航法装置1は、部品の調達に関する情報を、予め記憶するか、サーバ40等からリアルタイム又は定期的に取得する必要がある。部品の調達に関する情報とは、サービス拠点毎の部品の在庫、サービス拠点から港までの距離、部品の費用、部品の取付作業者の出張費用、部品の取付けに掛かる時間等が含まれる。また、
図6では、「部品の交換に掛かる時間」は、該当するサービス拠点までの往復に掛かる時間と、部品の取付けに掛かる時間と、の合計を表示しているが、この表示は一例であり、適宜変更できる。
【0078】
ユーザは、
図6の表示を見ることで、どの寄港地で部品を交換するかについて、位置、費用及び時間の側面から判断することができる。
【0079】
また、
図4から
図6には、画面の左下において、部品の交換を手配するか否かを選択する文章が表示されている。ユーザが「はい」を選択して、部品の交換を手配する旨を指示した場合、航法装置1は、部品の交換の手配に関する部品データ(部品の型番、船舶の位置及び経由地、部品の推定残存寿命、比較部33による比較結果、船舶又はユーザを特定するID等)を送信部17により陸上に配置されたサーバ40へ送信する。なお、通信回線が使用できない場合、その旨をユーザに通知するとともに、通信回線が使用可能となったタイミングで上記の部品データをサーバ40へ送信する。サーバ40は、送信部17から受信した部品データに基づいて、部品の手配を行う。なお、送信部17は、部品の手配を行うサーバ40ではなく、部品の交換を行う陸上のサービス拠点(陸上局)へ、上記の部品データを送っても良い。
【0080】
図4から
図6の表示は、推定した予定航海時間に基づくため、実際には指定した位置の前後で部品の推定寿命が到来することが考えられる。従って、航法装置1は、所定時間毎に現在の船舶の位置や船速等に基づいて予定航海時間を求め、
図4から
図6の表示を更新する。これにより、一層確実な情報をユーザに知らせることができる。
【0081】
部品の推定寿命が到来する旨を表示する方法は、ソフトウェア又はデータベースのアップデートの有無を表示することにも用いることができる。現在では、海上で利用できる衛星通信は従量制が採用されていることも多く、ソフトウェア又はデータベースのアップデートを衛星通信回線により行うことは現実的ではない。そのため、これらのアップデートは、記録媒体を用いて行われる。なお、アップデートが存在するか否かは、例えば衛星通信回線又は携帯電話回線等を介して、受信部18により受信することができる。
【0082】
図7では、画面の左下において、アップデートが存在することを文章で通知するとともに、アップデートファイルを記憶した記憶媒体を供給可能な位置を海図上に表示している。
【0083】
次に、
図3(c)及び
図8を参照して、ルートを設定せずに航海を行っているときに部品の推定寿命を通知する処理を説明する。
【0084】
ルートを設定せずに航海を行っているとき(又は航海を開始するとき)は、航法装置1側では、いつ航海が終了するか把握することはできない。従って、ルートを設定して航海を行うときとは異なる処理が必要となる。
【0085】
具体的には、航法装置1は、ルートを設定せずに航海を行っていると判断した場合(S301)、所定の寿命判定タイミング毎に以下の処理を行う。寿命判定タイミングは、
図3(a)の寿命計算タイミングと同じタイミングであっても良いし異なっていても良い。
【0086】
航法装置1は、寿命判定タイミングが到来すると(S302)、ルート記憶部22にアクセスして予定航海時間又は航海距離が最も長いルートを読み出す(S303)。次に、航法装置1の通知部34は、S205と同様に、読み出したルートの予定航海時間と、各部品の推定残存寿命と、に基づいて、予定航海時間よりも推定残存寿命の方が短いか否かを判断する(S304)。
【0087】
そして、通知部34は、予定航海時間よりも推定残存寿命の方が短いと判断した場合、部品の推定寿命が短い旨を通知する(S305)。一方、通知部34は、予定航海時間の経過前に、予定航海時間よりも推定残存寿命の方が長い判断した場合、通知を行わない(又は推定寿命に余裕がある旨を通知する)。
【0088】
ここで、記憶されたルートのうち最も長い予定航海時間を用いたのは、海上で部品の推定寿命が到来することを確実に防止するためである。航法装置1は、寿命判定タイミング毎に上記の処理を行う。なお、2回目以降の処理では、ルート記憶部22にアクセスする処理を省略して、1回目で用いた予定航海時間を再度利用しても良い。
【0089】
次に、ルートを設定していないときの通知方法の一例を説明する。
図8は、ルートを設定せずに航海しているときにおいて、部品の交換が可能な港を表示する画面を示す図である。
【0090】
この場合、
図8に示すように、自船の近傍であって、該当する部品が交換可能な位置が表示される。また、画面の左下には、具体的な推定寿命が表示される。
【0091】
以上に説明したように、本実施形態の航法装置1は、ルート設定部23と、航海時間算出部31と、寿命取得部32と、比較部33と、通知部34と、を備える。ルート設定部23は、航海用のルートを設定する。航海時間算出部31は、ルート設定部23が設定したルートの予定航海時間を算出する。寿命取得部32は、部品の推定残存寿命を算出する。比較部33は、ルート設定部23が設定したルート上の所定の目的地に到着するまでの予定航海時間と推定残存寿命とを比較して比較結果を出力する。通知部34は、比較部33の出力する比較結果が、予定航海時間よりも推定残存寿命の方が短い場合に、その旨を通知する。
【0092】
これにより、予定航海時間(所要時間)を考慮して、事前に部品の交換が必要か否かを通知できる。従って、海上で部品の推定寿命が到来することを防止することができる。
【0093】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0094】
推定残存寿命を取得する方法は任意であり、例えば部品の周囲の温度以外の要素を用いても良い。また、部品に応じて推定残存寿命を取得する方法を異ならせても良い。
【0095】
上記では、電子部品の推定残存寿命を取得する方法を説明したが、機械部品(例えばプッシュキーや回転キー等の可動部品)にも本発明を適用することができる。この場合、推定残存寿命は、稼働時間又はキーの操作回数等に基づいて取得される。また、寿命取得部32は、外部の機器又は内部の他の部分が求めた推定残存寿命を取得する構成であっても良い。
【0096】
図3のフローチャートで示した処理は一例であり、処理の追加、変更、及び削除を行っても良い。
【0097】
上記では、GPS衛星からの信号に基づいて自船の位置を検出する構成であるが、他のGNSS(Global Navigation Satellite System)衛星を利用して自船の位置を検出する構成であっても良い。他のGNSS衛星としては、例えば、GLONASS衛星やGALILEO衛星を挙げることができる。
【0098】
通知部34又は送信部17の通知先(送信先)は適宜変更することができ、例えば表示部11、他の表示器、他の舶用機器等に通知(送信)しても良い。
【0099】
上記では、ユーザが交換を指示したときにのみ部品データを陸上等へ送信するが、ユーザの指示がない場合に所定のタイミングで推定残存寿命、又は、推定残存時間と予定航海時間との差等のデータを送信しても良い。
【0100】
上記では、航法装置1は、様々な舶用機器(レーダアンテナ及び魚群探知機等)と接続される汎用型の航法装置であっても良い。この場合、航法装置の部品の推定寿命だけでなく、接続される舶用機器の部品の推定寿命を通知する構成であっても良い。
【0101】
例えば、
図9(a)に示すように航法装置1がレーダ装置51及び魚群探知機52とネットワークを介して接続されるとともに互いに通信可能な場合、航法装置1はレーダ装置51及び魚群探知機52から、例えば部品毎の推定残存寿命を取得する。航法装置1は、この推定残存寿命と予定航海時間を比較し、航海中に推定寿命が到来する場合にその旨等を通知する。
【0102】
また、例えば
図9(b)に示すように、同一の船内に配置された航法装置1とレーダ装置51等が接続されていない場合、航法装置1は予め、仕様書等に基づいてレーダ装置51等の寿命を取得し、寿命記憶部35に記憶しておく。そして、航法装置1は、例えば寿命記憶部35に記憶した寿命から自機の稼動時間を引くことで、推定残存寿命を取得できる。航法装置1は、この推定残存寿命と予定航海時間を比較し、航海中に推定寿命が到来する場合にその旨等を通知する。