(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283693
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】緑液を苛性化するための方法
(51)【国際特許分類】
D21C 11/04 20060101AFI20180208BHJP
【FI】
D21C11/04 C
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-558301(P2015-558301)
(86)(22)【出願日】2014年2月18日
(65)【公表番号】特表2016-507672(P2016-507672A)
(43)【公表日】2016年3月10日
(86)【国際出願番号】AT2014000034
(87)【国際公開番号】WO2014131067
(87)【国際公開日】20140904
【審査請求日】2017年2月8日
(31)【優先権主張番号】A148/2013
(32)【優先日】2013年2月26日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】515233650
【氏名又は名称】モンディ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リューフ,バルター
(72)【発明者】
【氏名】ハッカー,マンフレート
(72)【発明者】
【氏名】ラッファルト,シュテファン
【審査官】
中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/027223(WO,A1)
【文献】
特開2005−179785(JP,A)
【文献】
特開2009−262040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00− 1/38
D21C 1/00−11/14
D21D 1/00−99/00
D21F 1/00−13/12
D21G 1/00− 9/00
D21H11/00−27/42
D21J 1/00− 7/00
C01F11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分としての炭酸ナトリウムおよび硫化ナトリウムの水溶液からなる緑液をスレーカー中で酸化カルシウムと混合し、苛性化器(10)中での反応を受けて主成分としての水酸化ナトリウムおよび炭酸カルシウムを含む水性懸濁液を形成し、該懸濁液は第1のフィルタ(19)で濾過され、続いて、希釈器(21、25)中で水による希釈後、さらなるフィルタ(22、26)上に2回または3回供給されて濾過され、その中に懸濁された固体を分離する、木材パルプ製造のための硫酸塩またはクラフトプロセスにおける緑液の苛性化方法であって、
主成分としての炭酸カルシウムおよび微量成分としての酸化カルシウムの第1の分離の後で、第2および/または第3のフィルタ(22、26)の上流の希釈器(21、25)における希釈の際、二酸化炭素が水性懸濁液に添加されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
希釈器(21、25)に含まれる主成分としての炭酸カルシウムおよび微量成分としての酸化カルシウムを含む水性懸濁液に、二酸化炭素を供給する時間が、8.0から13.0、特に8.5から12の範囲の水性懸濁液のpHが得られるように選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
二酸化炭素の添加が、第2または第3の石灰泥フィルタ(22、26)の少なくとも1つの、少なくとも1つの希釈器(21,25)の上流でさらに実施されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
二酸化炭素が、第2のフィルタ(22)に関連する希釈器(21)および、適切ならば、第3のフィルタ(26)に関連する希釈器(25)の両方に供給されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
二酸化炭素を供給する時間が、希釈器(21、25)における滞留時間と一致するように選択されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
二酸化炭素が、5から120分間、特に5から30分間添加されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
二酸化炭素が希釈器の容器床を介して希釈器(21、25)に導入されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
二酸化炭素が、1以上の入口開口を介して細かく分割された形で水性懸濁液に導入されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
二酸化炭素が、細かく分割された形で、特にスパージャーによって、希釈器の1つに通じるラインに導入されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
1kgの乾燥石灰泥あたり、総量で、乾燥重量として0.1重量%から5重量%の二酸化炭素が添加されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
1kgの乾燥石灰泥あたり、総量で、乾燥重量として0.4重量%から2.5重量%の二酸化炭素が添加されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
二酸化炭素が、40℃から105℃、特に65℃から100℃の温度で添加されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
使用される二酸化炭素が、純水な二酸化炭素、空気で希釈された二酸化炭素および煙道ガスから選択されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
石灰窯(12)からの煙道ガスが、二酸化炭素源として使用されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材パルプを製造するための硫酸塩またはクラフトプロセスで緑液を苛性化する方法であって、主成分としての炭酸ナトリウムおよび硫化ナトリウムの水溶液からなる緑液がスレーカー中で酸化カルシウムと混合され、苛性化器(recausiticizer)内の反応を受けて、主成分として水酸化ナトリウムおよび炭酸カルシウムを含む水性懸濁液を形成し、該懸濁液は第一のフィルタ上で濾過され、続いて希釈器内での水による希釈後、さらなるフィルタに2、3度供給されて濾過され、その中に懸濁された固体を分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硫酸塩またはクラフトプロセスにおける木材パルプ製造の際、木材パルプ含有繊維材料は白液として知られる水酸化ナトリウムおよび硫化ナトリウムを含有する溶液中で蒸解される。この蒸解により木材パルプ、および副生成物として、黒液として知られるものも生成される。クラフトプロセスにおける副生成物を回収する方法において、未反応化学物質および反応生成物、ならびに特に黒液のリサイクル可能な成分が回収され、木材パルプ製造に再使用される。この目的のため、スメルト(smelt)として知られるものを調製するために黒液は最初、蒸発によって濃縮され、その後、燃焼される。スメルトは溶解され、緑液が得られる。緑液は主成分として炭酸ナトリウムおよび硫化ナトリウムを含む。緑液はその後、全体式Na
2CO
3+CaO+H
2O=NaOH+CaCO
3に従う苛性化反応として知られるものにおいて、炭酸ナトリウムが反応して水酸化ナトリウムおよび炭酸カルシウムを形成できるように生石灰または酸化カルシウムで補われる。変換された混合物は、石灰泥としても知られる固体、主に炭酸カルシウムが分離されるフィルタによって濾過される。分離された固体は水または後続の濾過段階からの濾液で希釈され、フィルタによって再び濾過され、石灰窯に移され、生石灰に変換される。得られた濾液は白液としてプロセスに戻される。
【0003】
緑液の酸化カルシウムとの反応は、実際には炭酸ナトリウムの80%から85%の変換まで、即ち、80%から85%の苛性化レベルまでしか進まない平衡反応である。プロセスの経済性の観点からは、この低い変換レベルは、例えば、総アルカリ濃度、硫化ナトリウム濃度、温度および過剰の酸化カルシウム等の様々な要因に依存する。特に、炭酸ナトリウムの炭酸カルシウムおよび水酸化ナトリウムへのできる限り完全な反応のために必要とされる酸化カルシウムの過剰量は、後続のプロセス、特に、石灰泥の濾過性、および炭酸カルシウムを燃焼して酸化カルシウムを再び得る下流の石灰循環に対し破壊効果を有する。酸化カルシウムの過剰量は、通常最大で約5%であるが、特にフィルタ布およびふるい上に堆積し、または石灰窯内に環球形成として知られるものを生じ、これらはプロセスにとって大きな損失および混乱に関連する。
【0004】
緑液中の炭酸ナトリウムの濃度を制御する方法は、欧州特許第0524743号明細書に記載されており、例えば、緑液の導電率の測定ならびに洗浄液の導電率および流量の測定に基づいて、緑液の炭酸ナトリウム濃度を調整または再調整できる。
【0005】
また、国際公開第85/01966号は、第1の苛性化段階で使用する石灰が第2の苛性化段階で使用する石灰よりも品質が低くなるように石灰を2段階苛性化方法に添加し、この方法において、可能な限り多い炭酸ナトリウムが水酸化ナトリウムに変換されることが希望され、次いで液は製紙方法に使用できる緑液の苛性化方法を記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第0524743号明細書
【特許文献2】国際公開第85/001966号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、本発明の目的は、全体の方法に悪影響を与えることなく、苛性化に続いて、分離された石灰泥中の未反応の酸化カルシウムの量が可能な限り低減され得る方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、主成分としての炭酸カルシウムおよび微量成分としての酸化カルシウムの第1の分離の後に、少なくとも希釈器、特に第2および/または第3のフィルタの上流の希釈器(複数可)中での希釈の際に、水性懸濁液に二酸化炭素を添加することを本質的に特徴とする本発明に従う方法によって達成される。少なくとも濾過前の希釈器中での滞留時間の間に、主成分としての炭酸カルシウムおよび酸化カルシウムの残留分を含む水性懸濁液に二酸化炭素(CO
2)が添加されるので、残量に存在する酸化カルシウムの可能な限り多くの量が炭酸カルシウムに変換され、そのため前記の平衡反応が炭酸カルシウムの方に動く。酸化カルシウムの残量が低下することで、主に酸化カルシウムの結晶性と比較して炭酸カルシウムのより良好な結晶性のために、石灰泥の濾過性が大幅に改善されて、濾過の際、フィルタ布またはフィルタ上での堆積が実質的に防止される。同時に、二酸化炭素の添加により酸化カルシウムの残量が大幅に低減されるので、さらに、環形成または球形成のような石灰窯での悪影響が防止されまたは大幅に低減されて、方法の全体的な経済性が従来の方法に比べて大幅に改善されるように、ほぼ純粋な炭酸カルシウムが木材パルプ蒸解法の石灰循環に戻る。
【0009】
本発明のさらなる実施形態では、希釈器に含まれる主成分としての炭酸カルシウムおよび微量成分としての酸化カルシウムを含有する水性懸濁液に二酸化炭素を供給する時間が、8.0から13.0、特に8.5から12の範囲の水性懸濁液のpHが得られるように選択される限り、一方で酸化カルシウムはほぼ完全に炭酸カルシウムに変換され、他方でこの方法は炭酸カルシウムが重炭酸カルシウムの形成を伴って溶解しないように、常に十分に塩基性のままであるように実施される。
【0010】
酸化カルシウムの特に効率的な除去のため、および特にフィルタ段階においてフィルタまたはフィルタ布上への堆積を確実に防止するために、本発明の好ましい実施形態に従って、この方法は二酸化炭素の添加が、第2または第3の石灰泥フィルタの少なくとも1つの希釈器の上流でさらに行われるように実施される。第2および第3の石灰泥フィルタの少なくとも1つの希釈器の上流で二酸化炭素がさらに添加または供給される限り、これは二酸化炭素の添加が細かい酸化カルシウムがフィルタ上に堆積しないような十分な時間で行われ、方法を中断なく実施でき、ほぼ例外なく炭酸カルシウムを石灰窯に戻すことができることを保証する。
【0011】
反応に破壊的な酸化カルシウムを炭酸カルシウムにほぼ完全に変換し、そのような方式で確実に第2および第3の濾過段階の両方のフィルタまたはフィルタ布の堆積を防止するには、第2のフィルタに関連する希釈器、またはさらに第3のフィルタが存在する場合には第3のフィルタに関連する希釈器において、二酸化炭素供給が選択的に処理されるように本発明の方法を実施する。両方の希釈器への添加も可能である。
【0012】
特に酸化カルシウムの完全な分離のために、二酸化炭素の供給時間が希釈器における滞留時間と一致するように選択されると有利であることが証明された。このような方式で、第2または第3の濾過段階のいずれかに関連する希釈器内または第2および第3のフィルタ段階の上流にある2つの希釈器内での全滞留時間の間、二酸化炭素は、残留酸化カルシウムの炭酸カルシウムへのゆっくりしたほぼ定量的な変換を得るために、連続的に導入される。大量の二酸化炭素を短時間供給するような他の手順は有利であることが示されていない。
【0013】
二酸化炭素が5から120分間、特に5から30分間添加される場合、酸化カルシウムの炭酸カルシウムへの特に完全な変換が本発明に従って得られる。長時間にわたって、特に5から120分間、二酸化炭素が濾過段階に関連し、濾過段階の上流にある少なくとも1つの希釈器に注入されるので、同時に懸濁液のpHをあまりに低く低下させずに(このような低下は炭酸カルシウムを溶解し、重炭酸カルシウムの形成を伴う)、酸化カルシウムの炭酸カルシウムへのほぼ定量的な変換が確保される。
【0014】
希釈器中に含まれる酸化カルシウムとの二酸化炭素の接触を可能な限り密接にすることを確保するために、および希釈器中の二酸化炭素の滞留時間を最大にするために、この方法のさらなる実施形態では、二酸化炭素は希釈器の容器床を介して希釈器内に導入される。このような手順、特に二酸化炭素が容器床を介して濾過段階の上流に配置された希釈器に細かく分割された形で供給される場合、密接な接触および希釈器の内容物の徹底的な同時の混合および二酸化炭素に対する滞留時間が同時に最大化することが確保され、炭酸カルシウムを形成する酸化カルシウムの反応をさらに完了することができる。
【0015】
フィルタの上流の希釈器内の二酸化炭素の特に均一な分配のために、二酸化炭素が1つ以上の入口開口(複数可)を介して水性懸濁液に細かく分割された形で導入されるように本発明の方法が実施される。一つまたは複数の入口開口により、懸濁液全体が二酸化炭素と密接に接触することが確保され、同時に酸化カルシウムが反応して炭酸カルシウムを形成することができる限り完全になるよう、二酸化炭素の滞留時間が十分になる。この点において、例えば、本発明のさらなる実施形態に従って、二酸化炭素はスパージャーを介して希釈器へのラインに導入されるか、あるいは複数の貫通開口を含む導入装置が容器床を介して導入され得、特にそれにより希釈器中に含まれる懸濁液の二酸化炭素との混合が可能な限り完全になされることが確保され、このため、炭酸カルシウムを形成するための酸化カルシウムの反応が可能な限り完全になされる。
【0016】
好ましくは、二酸化炭素の添加により起こるpHの低下と酸化カルシウムの変換の完了の間の特に有利な比率を得るために、本発明のさらなる実施形態では、総量として、0.1重量%から5重量%、好ましくは0.4重量%から2.5重量%の乾燥二酸化炭素/1kgの乾燥石灰泥が添加される。そのような量を添加することにより、重炭酸カルシウムの形成を伴うように石灰泥が溶解するまでpHを同時に低下させずに、酸化カルシウムの炭酸カルシウムへのほぼ完全な変換を提供する最適化された妥協が得られる。
【0017】
本発明のさらなる実施形態に従うと、この方法は、40℃から105℃間、特に65℃から100℃の温度で二酸化炭素が添加されるように実施される。このような温度の選択は、方法全体のエネルギーバランスまたは方法の経済性の点で特に好ましい。何故ならば、液中燃焼からの残留物の再開または停止後、緑液はほぼ60℃と105℃の間の温度にあり、有利には、冷却も加熱もフィルタの上流では行われず、次いで形成された白液を蒸解釜に供給でき、そこでその後、エネルギー損失を避けるために、可能な限り温度の事前の低下なしに高温が優先されるからである。従って、二酸化炭素を緑液の優勢な温度で最も都合よく通過させる。
【0018】
本発明の方法に使用される二酸化炭素は、純粋な二酸化炭素、空気で希釈された二酸化炭素または煙道ガスとしての二酸化炭素であってもよい。純粋な二酸化炭素または空気で希釈された二酸化炭素をこの方法に使用することは特に経済的である。何故ならば、使用される二酸化炭素の量を事前に定量的に決定または計算でき、余剰量の添加を確実に回避できるからである。二酸化炭素を煙道ガスとして供給する場合は、廃棄物はリサイクルされ、このため、廃棄物を使用することで、方法の総エネルギーバランスが大幅に改善される。
【0019】
本発明の方法のさらなる実施形態に従うと、方法は、石灰窯からの煙道ガスが二酸化炭素源として使用されるように実施される。木材パルプを形成するための木材チップまたは削りくずの蒸解方法に加えて、木材パルプ生産は、木材パルプ蒸解法における洗浄からの廃液が循環されるアルカリ循環として知られるものも含み、リサイクル可能な生成物、特に、水酸化ナトリウムおよび硫化ナトリウムがそれらがもう一度蒸解釜に供給できるように準備され、他方で石灰循環として知られるものが接続され、そこでは緑液から形成された炭酸カルシウムが苛性化の際に石灰窯中で石灰泥または酸化カルシウムに変換され、続いて、苛性化段階で再び使用できる。石灰窯からの煙道ガスは、従って、全体の方法から直接得られる二酸化炭素源であり、そのことは二酸化炭素の外部添加は必要でないが、むしろ方法にとって内在する二酸化炭素が循環され、この種の方法が操作するのに特に経済的であることを意味する。
【0020】
図面及び例示的な実施形態を参照して本発明をさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】木材パルプ蒸解方法ならびに本発明に従った関連のアルカリ循環、石灰循環及び二酸化炭素循環の概略図である。
【
図2】アルカリ循環、石灰循環またはCO
2循環の一部のみが図示される本発明に係る方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
具体的には、
図1では数字1は木材チップを図式的に表し、これは蒸解釜2に導入される。チップ1に加えて、白液も蒸解釜2に供給される。主として水酸化ナトリウムおよび硫化ナトリウムからなる白液のための供給路は数字3で図式的に示される。蒸解釜2内の蒸解法(本発明の一部を構成しない)を実施した後で、蒸解され、刻まれた木材またはチップ1を洗浄機4に導入し、そして洗浄機4を出る洗浄された木材パルプは製紙工場または木材パルプのさらなる加工を行う操作に移送または導入される。
【0023】
洗浄機4からの使用済み洗浄液は弱液または黒液として知られるが、これは弱液(硫化ナトリウム−リグニン化合物および水から本質的に構成される)が濃縮される蒸発ユニット6に導入される。蒸発ユニット6での蒸発または濃縮の後、この蒸発ユニット内で生産される強液が最初は弱液より低い含水量を有するが、矢印7で図式的に示されるように硫化ナトリウムで補われて、液中燃焼段階8に導入される。スメルトが液中燃焼8から得られ、スメルトはボイラ9で溶解され、炭酸ナトリウムおよび硫化ナトリウムならびに水から本質的になる緑液が苛性化器10に供給される。矢印11によって図示的に示されるように、スメルトの形成に加えて、エネルギー、即ち、蒸気または電流が8における液中燃焼によって生じ、このエネルギーは、図式的に示されるように、液中燃焼8から除去され、そして方法に戻されるか、または方法において再利用することができる。
【0024】
苛性化ステップ10において、苛性化反応として知られるものにおいて、緑液からの炭酸ナトリウムを炭酸カルシウムおよび水酸化ナトリウムに変換するために、緑液は石灰窯12に由来する生石灰で補われ、引き続き、水酸化ナトリウムはチップまたは刻まれた木材を蒸解するために蒸解釜2で再利用することができる。
【0025】
苛性化器10において苛性化する場合、水酸化ナトリウム、硫化ナトリウムおよび炭酸カルシウムから本質的になる混合物が得られ、未反応の酸化カルシウムもこの混合物に含まれる。何故ならば酸化カルシウムおよび水との炭酸ナトリウムの変換反応は平衡反応だからであり、このため未反応の酸化カルシウムは常に生成物中に存在する。固体の材料、すなわち、特に炭酸カルシウムおよび酸化カルシウムを分離するために、苛性化器10からの生成物は、続いて第1のフィルタユニット17上に導かれ、固体が分離され、一方で液体物質が蒸解釜に戻される。分離された固体、特に炭酸カルシウムおよびあらゆる残留酸化カルシウムは、石灰窯12で燃焼して酸化カルシウム(引き続き苛性化器10に戻すことができる)を形成するために、第2および第3の濾過段階20および24を介して石灰窯12に戻される。
【0026】
この点について、アルカリおよび石灰の両方が循環しており、その循環は
図1に、石灰循環に対しては15、アルカリ循環に対しては14として図式的に示されている。本発明に従って、石灰循環15およびアルカリ循環14に加えて、さらなる成分、即ち二酸化炭素が循環されると有利であることが示された。この二酸化炭素循環は数字16で図式的に示される。この二酸化炭素循環16において、石灰の燃焼の際に炭酸カルシウムから放出される二酸化炭素の少なくとも一部が、炭酸カルシウムおよび水酸化ナトリウムの方向において炭酸ナトリウムと酸化カルシウムとの反応をさらに動かすために、フィルタまたは第2のフィルタ20に戻される。
【0027】
図2は苛性化器10の後の濾過の詳細および本発明に従った二酸化炭素のフィルタ段階20または24への戻りをより詳細に示す。
【0028】
この図では、苛性化器10から除去された材料は第1の濾過段階17(希釈器18および下流のフィルタ19からなる)を受ける。希釈器18における特に水による希釈の後、洗浄された石灰泥は第2の濾過段階20で除去される。いくつかの作業で、液体残留物からさらなる石灰泥を取り除くためにさらに第3の濾過段階がある。
【0029】
第2のフィルタ22または第3のフィルタ26への微粒子酸化カルシウムの堆積を確実に防止するために、特に潜在的に反応に破壊的な過剰量の酸化カルシウムを下流の石灰窯12に送らないために、方法は二酸化炭素を希釈器21、または場合により25にも注入するように実施される。二酸化炭素(石灰窯12から戻りライン23を介して得られる)の注入は、この場合、希釈器21、または場合により同様に25中の二酸化炭素の滞留時間が可能な限り長くなるように保障されるように実際に行われる。この点について、二酸化炭素は、例えば、1つ以上のスパージャーを介してフィルタ20への供給ラインに導入されるか、または下から希釈器21に導入されるか、または同様の配置により導入することができる。
【0030】
希釈器21への二酸化炭素の導入は、懸濁液のpHが8.5から12までの値に低下するまで続けられる。
【0031】
このレベルのpHでは、懸濁液中の酸化カルシウムの大部分は炭酸カルシウムに変換され、フィルタ26への堆積が確実に防止される。次いでフィルタ22で分離された炭酸カルシウムは石灰窯12に戻され、そして酸化カルシウムを形成するための燃焼後、石灰循環15を介して苛性化段階10に戻される。
【0032】
特に、希釈器21および/または25への二酸化炭素の添加を制御することを可能にするため、三方弁27が、希釈器21および25の間の二酸化炭素の供給を切り替えることを可能にする戻りライン23に設置される。この点において、明確に希釈器21および25に二酸化炭素を同時に供給できることも確立されればよい。
【実施例】
【0033】
[実施例1]
実験室試験,異なる滞留時間、温度および異なる量の二酸化炭素の添加を用いた産業緑液の調製
【0034】
[実施例2]
一定の撹拌時間および温度で異なる量の二酸化炭素を添加する、産業緑液を用いた実験室試験
【0035】
[実施例1]
165g/l(水酸化ナトリウムとして計算)の総アルカリ含量および35%の硫化度(sulphidity)を有する1Lの産業緑液を80℃まで加熱し、74gの産業生石灰(90%CaO)を添加した。混合物を101℃まで恒温制御し、2時間撹拌し、次いで水ジェット真空を用いるブフナー漏斗上のガラス繊維フィルタを用いて吸引した。
【0036】
フィルタ上の残渣である石灰泥を水と共に70℃で撹拌し、ガラスフリットを通して底部にCO
2を供給し、次いで上記のように吸引した。次に、石灰泥の乾燥物質含量を重量測定により決定した。
【0037】
試験を合計7回実施し、ここで攪拌時間、温度および二酸化炭素の添加という実験パラメータを変化させて、石灰泥の乾燥物質含量および濾液のpHの両方を結果として決定した。結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
表1は、温度および滞留時間が二酸化炭素の使用と比較して、抽出された石灰泥の量に比較的小さい影響を有することを示す。従って、二酸化炭素を添加せずに5分間の撹拌時間および70℃の温度に対し、73%という乾燥物質含量が決定され、30分間の攪拌時間、70℃の温度および二酸化炭素の添加なしに対し、74%という乾燥物質含量が得られ、5分間の攪拌時間、90℃の温度で二酸化炭素の添加なしで、75%という乾燥物質含量が得られた。しかし、0.4gまたは0.8gの二酸化炭素の供給が行われた場合、白液を蒸解釜での後続の使用に不適切にする(これは約8.5未満のpHでなったであろう)、濾液である白液のpHの低下なしで、石灰泥の乾燥物質含量は77%から80%まで上昇することができた。
【0040】
[実施例2]
165g/l(水酸化ナトリウムとして計算)の総アルカリ含量および35%の硫化度を有する1Lの産業緑液を80℃まで加熱し、78gの産業生石灰(90%CaO)を添加した。混合物を101℃まで恒温制御し、そして2時間撹拌し、次いで水ジェット真空を用いるブフナー漏斗上のガラス繊維フィルタを用いて吸引した。
【0041】
フィルタ上の残渣である石灰泥を水と共に70℃で撹拌し、ガラスフリットを通して底部にCO
2を供給し、次いで上記のように吸引した。次に、石灰泥の乾燥物質含量を重量測定により決定した。
【0042】
試験を合計6回実施し、二酸化炭素の添加のみを変化させて、石灰泥の乾燥物質含量および濾液のpHの両方を結果として決定した。結果を表2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
この試験は使用された二酸化炭素の量を連続的に増加させると、白液を蒸解釜での後続の使用に不適切にする程度まで濾液である白液のpHを低下させることなく、石灰泥の乾燥物質含量も連続的に上昇した。