(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283695
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】吸湿−撥水不織布
(51)【国際特許分類】
D06M 14/28 20060101AFI20180208BHJP
D06M 10/02 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
D06M14/28
D06M10/02 C
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-560108(P2015-560108)
(86)(22)【出願日】2014年4月1日
(65)【公表番号】特表2016-515169(P2016-515169A)
(43)【公表日】2016年5月26日
(86)【国際出願番号】KR2014002788
(87)【国際公開番号】WO2014168370
(87)【国際公開日】20141016
【審査請求日】2015年8月26日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0039934
(32)【優先日】2013年4月11日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513269240
【氏名又は名称】コリア インスティチュート オブ インダストリアル テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ヨ,サンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ビョン,ソンウォン
(72)【発明者】
【氏名】ウィ,チョルホ
【審査官】
斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−160480(JP,A)
【文献】
特開2001−288674(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0049985(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0252047(US,A1)
【文献】
国際公開第01/072923(WO,A1)
【文献】
特開2002−223899(JP,A)
【文献】
特許第4069413(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 10/00 − 16/00
D06M 19/00 − 23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性官能基を有するアクリル単量体を含むアクリル系重合体からなる吸湿性繊維と90重量%以下の非吸湿性繊維からなる単一重のウェブ又は単一重のウェブを多重に積み重ねられた積層物なる不織布生地と、前記不織布生地の表面のフッ素コーティング層とからなり、表面の水接触角が120°以上であることを特徴とする吸湿−撥水不織布。
【請求項2】
前記親水性官能基を有するアクリル単量体は、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MMA)、ケイ皮酸、マレイン酸、フマル酸又はこれらのアルカリ塩、アンモニウム塩及びアミン塩よりなる群から選ばれるいずれか一種以上であることを特徴とする請求項1に記載の前記吸湿−撥水不織布。
【請求項3】
前記吸湿性繊維は、最大の吸湿量が繊維自重の10重量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の前記吸湿−撥水不織布。
【請求項4】
前記非吸湿性繊維は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、低融点ポリエチレンテレフタレート(LM−PET)、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)よりなる群から選ばれるいずれか一種以上の重合体からなる繊維であることを特徴とする請求項1に記載の前記吸湿−撥水不織布。
【請求項5】
前記非吸湿性繊維の最大の吸湿量は、繊維自重の10重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の前記吸湿−撥水不織布。
【請求項6】
不織布生地と、フッ素コーティング層とからなる吸湿−撥水不織布の製造方法であって、
親水性官能基を有するアクリル単量体を含むアクリル系重合体からなる吸湿性繊維と90重量%以下の非吸湿性繊維からなる単一重のウェブ又は単一重のウェブを多重に積み重ねられた積層物なる不織布生地を形成し、
前記不織布生地に含フッ素分子ガスの存在下で表面の水接触角が120°以上になるようにプラズマ処理を施して、前記不織布生地の表面にフッ素コーティング層を形成することを特徴とする、吸湿−撥水不織布の製造方法。
【請求項7】
前記吸湿性繊維は、最大の吸湿量が繊維自重の10重量%以上であることを特徴とする請求項6に記載の前記製造方法。
【請求項8】
前記含フッ素分子ガスは、テトラフルオロメタン(CF4)、トリフルオロメタン(CHF3)、ジクロロジフルオロメタン(CF2Cl2)、クロロトリフルオロメタン(CF3Cl)、ヘキサフルオロメタン(C2F6)、ペンタフルオロエタン(CF3CHF2)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(CF3CFH2)、オクタフルオロプロパン(C3F8)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(CF3CHFCF3)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(CF3CH2CHF2)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(CF3CH2CF2CH3)、ニトロゲントリフルオリド(NF3)及びサルファヘキサフルオリド(SF6)よりなる群から選ばれるいずれか一種以上であることを特徴とする請求項6に記載の前記製造方法。
【請求項9】
前記吸湿性繊維及び非吸湿性繊維を、熱接着させることを含むことを特徴とする請求項6に記載の前記製造方法。
【請求項10】
前記プラズマ処理は、アルゴンガスの雰囲気において処理した後に、含フッ素分子ガスの雰囲気においてプラズマ処理することを含み、含フッ素分子ガスの雰囲気におけるプラズマ処理時間が50分以内であることを特徴とする請求項6に記載の前記製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸湿−撥水不織布に係り、さらに詳しくは、吸湿性素材本然の吸収性を維持しながらも撥水性を有するだけではなく、吸収後に乾燥しても収縮率の変化が少ないことから再利用することのできる吸湿−撥水不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子重合体素材の撥水性を高める目的で、その表面に疎水性高分子をコーティングする技術に関しては既に知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、いわゆる「テフロンコーティング」と呼ばれる技術であって、エチレン性フッ素化炭素ガスの存在下でポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)不織布にプラズマ処理を施して水接触角165°以上を達成する技術が開示されている。
【0004】
特許文献2には、親水性素材であるセルロース繊維にプラズマ表面処理を施した後、縫製品を製造し、その後にホルムアルデヒドで処理して、縫製品に制電性、防汚性及び形態安定性を与える技術が開示されている。
【0005】
特許文献3には、フッ素を含むアクリル系単量体を布帛の表面で共重合する方法を用いてフッ素系高分子で生地に表面処理を施して耐久性、制電性及び撥水性能を有する生地の製造方法が開示されている。
【0006】
特許文献4には、繊維の表面に重合性コーティングを蒸着するためにハイドロカーボン又はフルオロカーボンモノマーを含むプラズマ蒸着工程に露出させる方法を用いてろ過効能及び固化防止性質を向上させたろ過性媒体が開示されている。
【0007】
しかしながら、上述した技術は、いずれも親水性素材の表面を疎水性に変えたり疎水性素材の表面をさらに疎水性に変えたりすることによって、「撥水性」を与えることにのみ技術的特徴があるものであり、吸湿性素材の吸湿性をそのまま維持しながらも表面撥水性を有する素材は未だ開発されていない。なお、吸湿後にこれを乾燥して再使用する場合、乾燥に伴う激しい収縮に起因して再使用をすることができないためその用途の展開に限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2000/14297号パンフレット
【特許文献2】韓国特許出願公開第2011−0037976号明細書
【特許文献3】特開平10−325078号公報
【特許文献4】韓国特許出願公開第2011−37976号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、吸湿性素材本然の吸収性を維持しながらも撥水性を有するだけではなく、吸収後に乾燥しても収縮率の変化が少ないことから再利用することのできる吸湿−撥水不織布を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するための本発明による吸湿−撥水不織布は、吸湿性繊維を含む不織布生地に含フッ素分子ガスの存在下でプラズマ処理を施して、不織布表面の繊維にフッ素コーティングを形成することを特徴とする。
【0011】
前記吸湿性繊維は、親水性官能基を有するアクリル単量体を含むアクリル系重合体から得られる繊維であることが好ましい。
【0012】
前記親水性官能基を有するアクリル単量体は、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MMA)、ケイ皮酸、マレイン酸、フマル酸又はこれらのアルカリ塩、アンモニウム塩及びアミン塩よりなる群から選ばれるいずれか一種以上であることが好ましい。
【0013】
前記吸湿性繊維は、最大の吸湿量が繊維自重の10重量%以上であることが好ましい。
【0014】
前記含フッ素分子ガスは、テトラフルオロメタン(CF
4)、トリフルオロメタン(CHF
3)、ジクロロジフルオロメタン(CF
2Cl
2)、クロロトリフルオロメタン(CF
3Cl)、ヘキサフルオロメタン(C
2F
6)、ペンタフルオロエタン(CF
3CHF
2)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(CF
3CFH
2)、オクタフルオロプロパン(C
3F
8)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(CF
3CHFCF
3)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(CF
3CH
2CHF
2)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(CF
3CH
2CF
2CH
3)、ニトロゲントリフルオリド(NF
3)及びサルファヘキサフルオリド(SF
6)よりなる群から選ばれるいずれか一種以上であることが好ましい。
【0015】
前記不織布生地には、非吸湿性繊維がさらに含まれてもよい。
【0016】
前記非吸湿性繊維は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、低融点ポリエチレンテレフタレート(LM−PET)、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)よりなる群から選ばれるいずれか一種以上の重合体から得られる繊維であることが好ましい。
【0017】
前記非吸湿性繊維の最大の吸湿量は、繊維自重の10重量%以下であることが好ましい。
【0018】
前記不織布生地に対する非吸湿性繊維の含量は、重量比で90重量%以下であることが好ましい。
【0019】
前記吸湿性繊維及び非吸湿性繊維は、熱接着されていることが好ましい。
【0020】
前記吸湿−撥水不織布の表面水接触角が120°以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明による吸湿−撥水不織布は、吸湿性繊維が有する本然の吸湿量を維持しながらも撥水性を有する。
【0022】
また、吸湿−撥水不織布を構成する不織布生地に非吸湿性繊維を含めることにより、形態安定性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】吸湿性繊維そのものと、製造例1及び製造例3において製造された不織布に対する時間の経過に伴う吸湿率の評価結果を示すグラフである。
【
図2】製造例1及び製造例2の不織布に含フッ素分子コーティングを行った実施例1−1及び実施例2−1の吸湿−撥水不織布に対する時間の経過に伴う吸湿率の評価結果を示すグラフである。
【
図3】製造例1の不織布に対する水接触角の測定写真である。
【
図4】実施例1−1の不織布に対する水接触角の測定写真である。
【
図5】製造例2の不織布に対する水接触角の測定写真である。
【
図6】実施例2−1の不織布に対する水接触角の測定写真である。
【
図7】プラズマ反応器内に投入されるガスとしてヘキサフルオロエチレンガスを用いた場合と、まずアルゴンガスを用いて10分間処理した後にヘキサフルオロエチレンガスを処理した場合における濡れへの所要時間を測定して比較したグラフである。
【
図8】繊維の表面のエッチングによる効果を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、吸湿性繊維を含む不織布生地に含フッ素分子ガスの存在下でプラズマ処理を施して、不織布表面の繊維にフッ素コーティングを形成することを特徴とする吸湿−撥水不織布を提供する。
【0025】
本発明による吸湿−撥水不織布において、不織布生地を構成する吸湿性繊維は、親水性官能基を有するアクリル単量体を含むアクリル系重合体から得られる繊維である。
【0026】
前記アクリル単量体の親水性官能基としては、例えば、カルボン酸(−COOH)、カルボン酸のアルカリ塩(−COOM;M=Na又はK)、カルボン酸のアンモニウム又はアミン塩などが挙げられる。
【0027】
このような親水性官能基を有するアクリル単量体としては、アクリル酸(acrylic acid;AA)、メタクリル酸(methacrylic acid;MMA)、ケイ皮酸(cinnamic acid)、マレイン酸(maleic acid)、フマル酸(fumaric acid)又はこれらのアルカリ塩、アンモニウム塩又はアミン塩などが挙げられる。
【0028】
これらは、単独重合又は共重合されて重合体の形で用いられ、一方、アルカリ塩、アミン塩の重合体は酸の形態に重合された後に中和反応によって得られたものであり得る。カルボン酸を含む単量体を重合/共重合して得られる重合体の中和反応は、当業界において既に公知であるだけではなく、このような重合体は商業的に広く市販されている。
【0029】
前記吸湿性繊維の最大の水分吸湿量は、その最終的な用途に応じて、繊維自重の10重量%、30重量%、50重量%及び90重量%以上であり得る。
【0030】
本発明による吸湿−撥水不織布に用いられる不織布生地には、非吸湿性繊維、すなわち、非吸湿性重合体から得られる繊維が含まれ得る。前記非吸湿性重合体とは、吸湿率が繊維自重の10重量%未満である重合体のことをいう。好ましくは、6重量%以下、さらに好ましくは、1重量%以下のものを用いる。
【0031】
吸湿性繊維のみよりなる不織布の吸湿/脱水は、可逆的である。例えば、用途に応じて水分吸湿が終わった後に、前記不織布を適切な条件下で乾燥/脱水させると、再び水分吸湿可能な状態になる。しかしながら、前記乾燥は、不織布生地を構成する繊維の収縮を伴い、乾燥/脱水後には元の製品の形態を失ってしまう。本発明の実施形態による吸湿−撥水不織布には、非吸湿性重合体から得られる繊維がさらに含まれているので、上述した収縮の問題を解決することができる。
【0032】
一方、前記不織布生地に対する非吸湿性繊維の含量は、重量比で90重量%以下、好ましくは、70重量%以下、さらに好ましくは、50重量%以下である。
【0033】
この目的で用いられる非吸湿性重合体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate、PET)、低融点ポリエチレンテレフタレート(low−melting polyethyleneterephthalate、LM−PET)、ポリエチレン(polyethylene、PE)、ポリプロピレン(polypropylene、PP)などがある。米国試験材料協会(ASTM) D570測定方法による前記重合体の吸湿量は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン(HDPE又はLDPE)の場合に0.1重量%であり、ポリプロピレンの場合に0.01重量%以下である。
【0034】
本発明の吸湿−撥水不織布に適用される不織布生地は、前記吸湿性繊維、又は吸湿性繊維と非吸湿性重合体繊維が開繊、混繊、接着されたものであり得る。
【0035】
本発明の好適な実施形態において、前記吸湿−撥水性不織布の開繊及び/又は混繊は、乾式工法による。乾式工法による開繊/混繊は、工程中における吸湿及びそれに伴う乾燥過程が省略可能であるというメリットがある。
【0036】
乾式工法の例としては、梳綿(カージング)が挙げられる。梳綿方法は、各々の繊維を開繊した後に必要に応じて混合し、梳綿機を用いてこの混合物をウェブ状に形成する方法である。乾式方法の他の例としては、エアレイド(airlaid)方法が挙げられる。この方法によれば、開繊された繊維の混合物が梳綿工程を経た状態又は梳綿工程を経ていない状態で空気圧によって方向性を失ってランダムに配列された後にウェブ状に形成されて不織布生地が得られる。
【0037】
前記不織布生地は、単一重にして用いてもよく、用途に応じて、多重に積み重ねられた積層物にして用いてもよい。積層物は、単一重のウェブをクロスラッパーなどを用いて所定の厚さ及び幅を有するように積み重ねて形成する。
【0038】
このようにして積み重ねたウェブは、ニードルパンチ、熱接着、化学的接着又はこれらを混用して層間接着を形成することによって、より安定的な形態を有する不織布になる。
【0039】
本発明の一実施形態において、前記不織布生地中の吸湿性繊維及び非吸湿性繊維は、単にいかなる結合なしに相互間に物理的にのみもつれた形態であり得る。吸湿−乾燥の繰り返しに伴う吸湿性繊維の収縮(それに伴う最初の形態の喪失)の問題は、単に吸湿性繊維と非吸湿性繊維を混繊するだけでもかなり改善され得る。これは、非吸湿性繊維と吸湿性繊維を混繊するだけでも相互間のもつれが発生して形態安定性を有するためである。
【0040】
本発明の他の実施形態においては、前記混合繊維不織布を構成する吸湿性繊維と非吸湿性繊維が混繊された後に適切な方法によって相互間に部分的に熱接着されたものであり得る。部分的な熱接着の方法としては、例えば、フラットベッドラミネート、カレンダー掛けなど公知の方法が使用可能である。吸湿性繊維と非吸湿性繊維が混繊された後に部分的な熱接着が形成される場合には、吸湿−乾燥の繰り返しに伴う吸湿性繊維の収縮は、さらに低減される。
【0041】
本発明の吸湿−撥水不織布は、前記不織布生地に含フッ素分子ガスの存在下でプラズマ処理を施して、不織布の表面の繊維にフッ素コーティングを形成したものである。
【0042】
プラズマ処理は、処理を施そうとする不織布生地をプラズマ反応器の内部に適切に配置した後、上述した含フッ素分子をガスの状態で供給しながら電気エネルギーを印加してプラズマを発生させる方法によって施される。電気エネルギー源としては、直流電圧又は1khz〜3000MHzの範囲内の交流電圧を用いる。反応器の内圧は、通常、0.2〜2.0Torrに保たれる。
【0043】
含フッ素分子ガスは、フッ素含有炭素ガス、フッ素含有窒素ガス及びフッ素含有リンガスよりなる群から選ばれるいずれか一種以上である。
【0044】
フッ素含有炭素ガスとしては、例えば、テトラフルオロメタン(CF
4)、トリフルオロメタン(CHF
3)、ジクロロジフルオロメタン(CF
2Cl
2)、クロロトリフルオロメタン(CF
3Cl)、ヘキサフルオロメタン(C
2F
6)、ペンタフルオロエタン(CF
3CHF
2)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(CF
3CFH
2)、オクタフルオロプロパン(C
3F
8)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(CF
3CHFCF
3)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(CF
3CH
2CHF
2)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(CF
3CH
2CF
2CH
3)などが挙げられる。
【0045】
一方、フッ素含有窒素ガスとしては、例えば、ニトロゲントリフルオリド(NF
3)が挙げられ、フッ素含有リンガスとしては、例えば、サルファヘキサフルオリド(SF
6)が挙げられる。
【0046】
上述した含フッ素分子ガスは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用可能である。
【0047】
不織布にプラズマ処理と同時に又はプラズマ処理後に含フッ素分子ガスが供給されると、不織布の表面にはフッ素コーティングが施されて不織布の表面が撥水性能を有し、その結果、不織布の表面の水接触角が上昇する。本発明による吸湿−撥水不織布の実施形態において、吸湿−撥水不織布の表面において測定される水接触角は、120°以上、好ましくは、130°以上である。
【0048】
本発明の範囲を制限しない意図で前記フッ素コーティングの過程を説明すると、前記フッ素コーティングは、含フッ素分子ガスから遊離されたフッ素ラジカルが不織布を構成する繊維の表面に結合したり、分離されたフッ素ラジカルの反対側のラジカルであるフッ素含有炭素ガスラジカル、フッ素含有窒素ラジカル又はフッ素含有リンラジカルが繊維の表面に結合したりして不織布の表面が撥水性能を有するものと考えられる。
【0049】
必要に応じて、空気、窒素、酸素、アルゴンなどのようにプラズマ反応に与らないガスを含フッ素分子とともに又は順次に供給してもよい。
【0050】
特に、本発明者らの実験によれば、プラズマ処理を施すに当たって、含フッ素分子ガスを供給する前にプラズマ反応に与らないガスを先に供給した後に前記含フッ素分子ガスを供給すれば、撥水効果が増大されるということが確認された。やはり、本発明の範囲を制限しない範囲においてこのような効果について説明すると、含フッ素分子ガスが存在しない状態で不織布を構成する繊維に表面処理が施されると、一種のエッチング効果によって繊維の表面に存在する凹凸が緩和され、これに伴い、追加的なフッ素コーティングが均一に行われるため、撥水効果が増大されるものと解かされる。
【0051】
発明者らの実験的な結果によれば、吸湿性繊維素材が有する本然の吸湿量を維持しながらも速度を遅らすことは、不織布の表面にコーティングされる含フッ素分子ガスの存在下でプラズマ処理を行う時間に依存するものと確認される。これは、処理時間が長くなるにつれて、不織布を構成する繊維の表面に行われるフッ素コーティングの面積又は厚さが増加するためであると理解される。
【0052】
含フッ素分子ガスの供給と同時に行われるプラズマ処理によって製造される本発明の吸湿−撥水不織布は、吸湿性繊維本然の吸湿性をそのまま維持しながらも撥水処理が施されて吸湿速度を遅らすことができる。吸湿速度の遅延は、吸湿−撥水不織布の表面に多量の水が直接的に接触する場合に吸湿速度を遅らして、例えば、表面に水滴の状態で結ばれている水分を振るい落とすことができるという実用的なメリットがある。例えば、吸湿材の場合に使用環境下で周りの湿気を吸湿することが主な目的であるが、不意に水蒸気の状態ではなく、液体の状態の水と直接的に接触される場合に正常的に使用できず、製品を廃棄しなければならないという欠点がある。しかしながら、例えば、本発明の吸湿−撥水不織布によって製造される包装材、生活用除湿剤などは、このような場合に手軽に表面の水を除去して使用可能な状態を維持することができるというメリットがある。
【0053】
以下、実施例を挙げて本発明についてより詳細に説明する。単に、これらは本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されることはない。
【0054】
製造例:不織布生地
吸湿性繊維としては、SAF
TM(ブルースター社製、イギリス)製品を購入して用いた。前記製品は、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸、アクリレート、メタクリレートの共重合体であり、部分的に架橋された共重合体から製造された繊維である。非吸湿性繊維としては、LM−PET(ヒュービス社製、LMF6De)を用いた。
【0055】
前記繊維を開繊及び梳綿して、目付き100g/m
2の不織布生地を準備した。前記不織布生地をクロスラッパーを用いて7重に積み重ね、120℃の温度下でカレンダー掛けを行って積層物を製造した。
【0057】
実施例1:吸湿−撥水不織布の製造
まず、プラズマ表面処理装置(PLASMA SURFACE TREATMENT SYSTEM、型番CD400MC)を用いて、ヘキサフルオロエチレン(C
2F
6)ガスを30sccm/200wattの条件下で投入しながら各々3分間、5分間、10分間流しながらフッ素コーティングを施して吸湿−撥水不織布を製造した。
【0058】
このようにして製造した吸湿−撥水不織布に対して吸湿率、形態安定性、水接触角を評価した。
【0059】
前記製造された吸湿−撥水不織布を110℃の熱風乾燥器において2時間予め乾燥した後、40℃/相対湿度90%を維持する恒温恒湿器に保管しながら時間別に吸湿量を測定して、重さの変化がないときの吸湿量を測定してこれより吸湿率を計算した。
【0060】
一方、形態安定性は、前記吸湿率の評価を終えた吸湿−撥水不織布を110℃の熱風乾燥器において2時間乾燥した後の長さの変化を測定して評価した。
【0061】
水接触角は、株式会社 エス・イー・オー製の接触角測定器を用いて測定した。
【0063】
上記表2の結果から明らかなように、吸湿性繊維のみによって製造された不織布は吸湿率は高かったものの、水と接触したとたん吸収され、高い湿度に露出された後に乾燥されたときに大幅に収縮され、約10分間のプラズマコーティング後に僅かな撥水性を示した。なお、非吸湿性繊維を50重量%混ぜて製造した不織布は、吸湿性繊維のみによって製造された不織布よりも吸湿率は低かったものの、吸収した後に乾燥したときの収縮率は大幅に低く、10分間のプラズマコーティング後に優れた撥水性能を示した。
【0064】
図1は、吸湿性繊維そのものと、製造例1、製造例2において製造された不織布に対する時間の経過に伴う吸湿率の評価結果を示すグラフであり、
図2は、製造例1及び製造例2の不織布に含フッ素分子コーティングを施した本発明の吸湿−撥水不織布に対する時間の経過に伴う吸湿率の評価結果を示すグラフである。
図1及び
図2を参照すると、水分と接触した後に24時間が経過した時点では、不織布の吸湿率がフッ素コーティングの有無とは無関係に、不織布を構成する吸湿性素材固有の吸湿量を維持しているということが分かる。
【0065】
図3及び
図4は、各々製造例1と実施例1−1の不織布に対する水接触角の測定写真であり、
図5及び
図6は、各々製造例2と実施例2−1の不織布に対する水接触角の測定時の液滴を各々の不織布に落としてから10秒が経過したときに得た写真である。
図3から
図6及び表2を参照すると、水に接触されてから数秒内の初期時間中には、本発明の吸湿−撥水不織布は、実施例1−1と実施例2−1の場合に各々136°、137°の水接触角を維持するということを確認することができる。これより、撥水性能があるということを確認することができる。これに対し、製造例1と製造例2の不織布、すなわち、フッ素コーティングがない場合には相対的に低い接触角を示すが、これより、水分が液滴の状態で接触する場合に撥水性能なしに不織布内に即座で吸収されるということが分かる。
【0066】
実施例2:プラズマガスの種類による濡れへの所要時間の比較
図7は、プラズマ反応器内に投入されるガスとしてヘキサフルオロエチレンガスを用いた場合と、まずアルゴンガスで10分間処理した後にヘキサフルオロエチレンガスを処理した場合における濡れへの所要時間を測定して比較したグラフである。濡れにかかる時間とは、水接触角の測定に際して不織布の表面に落とした液滴が不織布の吸収力によってその形状が崩されるのにかかる時間のことをいう。
【0067】
グラフは、水滴を落とした吸湿−撥水不織布の濡れにかかる時間を示し、ヘキサフルオロエチレンガスを処理した時間が増えるにつれて濡れにかかる時間は徐々に長くなり、アルゴンガスで10分間処理した後、ヘキサフルオロエチレンガスの雰囲気下でプラズマ処理を施したところ、ヘキサフルオロエチレンガスを40分間処理した不織布の撥水性能が最も抜群であった。
【0068】
図8は、繊維の表面のエッチング(食刻)による効果を説明する模式図である。コーティング層は、当然のことながら、不織布生地を構成する繊維の表面の全体に亘って形成されるが、繊維不織布生地の表面には、ランダムに配列されている繊維の厚さによって凹凸が形成されている。このような凹凸によって、フッ素原子の分布が局部的に不均一になる虞があり、コーティングが弱い部分の間に吸湿繊維が露出されている虞がある(
図8の矢印の上部のB及びC部)。
【0069】
しかしながら、アルゴンガスの雰囲気におけるプラズマ処理は、材料の表面をエッチング(食刻)する効果があるため、
図8の矢印の下部のように、不織布表面の凹凸をやや緩和させる効果が得られる。また、アルゴンガスの雰囲気におけるプラズマ処理によって表面のやや平らになった不織布は、ヘキサフルオロエチレンガスの雰囲気においてプラズマ処理によって撥水効果が増大されたものと考えられ、50分以上処理した場合に撥水コーティングされた膜が割れるものと考えられる。このため、与えられた材料に応じてアルゴンとヘキサフルオロエチレンガスを適切に用いてプラズマ処理を施すことが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の吸湿−撥水不織布は、衣類除湿剤(タンス用、タンスの引き出し用)、衣類包装用除湿剤、湿気に敏感な製品の包装材、寝装類(枕、マットレス、布団など)、化粧室、浴室、自動車の室内、家庭用除湿剤などの用途に使用可能である。