(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ケース本体は、断面が略方形で筒状又はソケット状をなす弾性変形可能の蓋取付方形枠部を有しており、該蓋取付方形枠部内に、その端の開口から、輪郭が略方形の蓋が所定量、奥に押し込まれることによって所定の蓋取付位置に取り付けられる、ケースにおける蓋の取付構造であって、
前記蓋取付方形枠部内には、前記蓋の押し込まれ過ぎを防ぐストッパと、前記蓋取付位置に取り付けられた蓋が手前に移動し、分離するのを防ぐ係止部とが設けられており、
該係止部は、該蓋取付方形枠部をなす対向する二組の内壁面のうちの一組の内壁面に、前記蓋の取り付け前における最小内寸法Wxtが、前記蓋の対応する対辺寸法Hxより小さくなるように、内向きに突出し又は隆起するように設けられており、
前記蓋の取り付け前の前記蓋取付方形枠部のうち、前記蓋取付位置における前記係止部が設けられている対向する内壁面の相互の対辺寸法Wxが、前記蓋の対応する対辺寸法Hxより大きくされている一方、前記蓋取付位置における前記係止部が設けられていない対向する内壁面の相互の対辺寸法Wyが、前記蓋の対応する対辺寸法Hyより小さくされており、
前記蓋が押し込まれて前記蓋取付位置に取り付けられている状態において、前記係止部が設けられていない対向する前記内壁面の相互の間隔が前記蓋によって広げられることに対応し、この内壁面相互が該蓋を締め付けると共に、この広げられに対応して、前記係止部が設けられている対向する前記内壁面の相互の間隔が狭められるように、前記蓋取付方形枠部が変形する設定とされていることを特徴とする、ケースにおける蓋の取付構造。
前記係止部が、前記内壁面のうち、前記蓋取付方形枠部における隅角相互の中間部位に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のケースにおける蓋の取付構造。
前記蓋取付方形枠部は、二組の対向する内壁面とも、前記蓋取付位置よりも開口端側において、開口端に向けて対辺寸法が次第に大きくなるように形成されていることを特徴とする、請求項1又は2のいずれか1項に記載のケースにおける蓋の取付構造。
前記ケース本体が、底の有る筒構造をなし、前記蓋取付方形枠部が、該筒構造における開口端寄り部位に設けられていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のケースにおける蓋の取付構造。
前記ケース本体が回路基板収容用のケース本体であり、前記蓋がコネクタ端子付きの蓋であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のケースにおける蓋の取付構造。
前記ケース本体が回路基板収容用のケース本体であり、前記ストッパは、前記二組の内壁面のうちの一組の内壁面に、内向きに突出し又は隆起するように設けられている一方、
前記回路基板は、前記ストッパが設けられていない一組の内壁面である2つの内壁面に対面状に挟まれる配置となるように前記ケース本体内へ収容される設定とされており、
前記ストッパは、ストッパ自身の内壁面相互間における前記蓋の取り付け前における最小内寸法を前記回路基板の対応する幅寸法より小さいものとして設けられていると共に、前記回路基板が、前記ケース本体内への収容に際して対面状に挟まれる前記2つの内壁面のうちの所定の一方の内壁面側に偏在する所定の偏在配置となる場合にはその収容を妨げず、該回路基板がこの所定の偏在配置とならない場合にはその収容を止められる配置として、前記内壁面に設けられていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のケースにおける蓋の取付構造。
ケース本体は、断面が略方形で筒状又はソケット状をなす弾性変形可能の蓋取付方形枠部を有しており、該蓋取付方形枠部内に、その端の開口から、輪郭が略方形の蓋を、所定量、奥に押し込むことによって所定の蓋取付位置に取り付ける、蓋付きケースの製造方法であって、
前記蓋取付方形枠部内には、前記蓋の押し込まれ過ぎを防ぐストッパと、前記蓋取付位置に取り付けられた蓋が手前に移動し、分離するのを防ぐ係止部とが設けられており、
該係止部は、該蓋取付方形枠部をなす対向する二組の内壁面のうちの一組の内壁面に、前記蓋の取り付け前における最小内寸法Wxtが、前記蓋の対応する対辺寸法Hxより小さくなるように、内向きに突出し又は隆起するように設けられており、
前記蓋の取り付け前の前記蓋取付方形枠部のうち、前記蓋取付位置における前記係止部が設けられている対向する内壁面の相互の対辺寸法Wxが、前記蓋の対応する対辺寸法Hxより大きくされている一方、前記蓋取付位置における前記係止部が設けられていない対向する内壁面の相互の対辺寸法Wyが、前記蓋の対応する対辺寸法Hyより小さくされており、
前記蓋を押し込み、該蓋が前記蓋取付位置に取り付けられている状態において、前記係止部が設けられていない対向する前記内壁面の相互の間隔が前記蓋によって広げられることに対応し、この内壁面相互が該蓋を締め付けると共に、この広げられに対応して、前記係止部が設けられている対向する前記内壁面の相互の間隔が狭められるように、前記蓋取付方形枠部が変形する設定とされていることを特徴とする、蓋付きケースの製造方法。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のエンジンルームに配置される電子制御装置(以下、ECU)は、多数の電子部品が実装、搭載された回路基板(以下、基板ともいう)と、この基板等を収容する樹脂製のケース本体と、基板等が収容されたケース本体の収容物(部品)の収容用の開口を閉塞する蓋等から構成される。ここに蓋には、例えば、この蓋の裏面に固定された回路基板における端子と電気的に接続されたコネクタ端子が、その蓋の外側に突出状に設けられるものがある。このような蓋は、その開口の閉塞後において、外側に突出するコネクタ端子に、相手方のコネクタ(メス)端子が嵌合され接続される。このような蓋は、ケース(本体)内に収容された回路基板等の保護のため、振動や衝撃に対しても安定した取付状態となることや、相手方のコネクタ端子の引き抜き等における外力に対しても、分離、脱落がないことが要請される。
【0003】
このような要請にこたえるための蓋の取付構造としては次のようなものが知られている。例えば、ケース本体における部品の収容用の開口の周縁部位に、環状のゴムパッキンを介在させる。そして、蓋(カバー)の周縁部位がこのパッキンを押えるようにして、その蓋を開口の周縁部位において、ビスをねじ込んでネジ止めするようにした取付(固定)構造である(特許文献1、特許文献2)。このものは、水密が確保されるメリットが得られる反面、次のようなデメリットがある。例えば、ケース本体のうち、蓋が取付けられる開口を含む部位が横断面方形(正方形、又は長方形)の筒状のものである場合には、少なくとも、その方形の周縁部位において、3箇所、或いは四隅近傍において4箇所、ネジ止めすることになる。このため、少なくとも3つのネジ部品を要する上に、そのねじ込み工程を要するがために、ケース、すなわち、蓋付きケース(以下、単に「ケース」ともいう)の製造、組立てコストの増大を招くといった点である。
【0004】
こうした中、これとは別の蓋の取付構造(手段)としては次のようなものが考えられる。ケース本体は、プラスチック(絶縁樹脂)からなり、内断面が方形で筒状(ソケット状)をなす弾性変形可能の蓋取付方形枠部を有しており、この蓋取付方形枠部内に、その端の開口から、内断面に対応する方形の蓋が、所定量、奥に押し込まれることによって蓋取付位置に取り付けられるようにしたものである。このものでは、蓋取付方形枠部内には、蓋の押し込まれ過ぎを防ぐストッパが設けられる一方、蓋取付位置よりも手前であって、通常、二組の対向する内壁面のうちの一組の対向する内壁面に対し、取付けられた蓋が手前に移動して分離するのを防ぐための係止部(ツメ、突起等)が設けられる。ここに、係止部は、対向する内壁面に、蓋取付前における最小内寸法が、蓋の対応する対辺寸法(外寸法)より小さくなるように、内向きに突出する(又は隆起する)ように設けられる。このものでは、この係止部に起因する蓋の押し込み(圧入)抵抗を軽減し、押し込みを簡易とするため、蓋取付方形枠部内の蓋取付位置における対向する縦横2組の内壁面の相互の間隔は、対応する蓋の対辺寸法より、いずれも微量、大きくされる。
【0005】
これにより、蓋は、内向きに突出する係止部及びその部分近傍のケース本体側の変形等により、押し込むことができるから、比較的、小さい押し込み力でその取付ができる。したがって、その組み付け作業の簡易、迅速が図られる。なお、対向する2つの係止部は、蓋の押し込みの簡易化を図るため、要すれば、開口の奥に向かうに従って、その相互間の内寸法が小さくなるような傾斜の付いたものとされる。このものでは、蓋の押し込みにおいては、係止部における傾斜に、蓋の縁を押し付けて、一組の内壁面の相互の間隔を広げるように変形させ易い。そして、蓋が、その傾斜を乗り越えたとき、ストッパとその係止部との間(蓋取付位置)に取付けられると同時に、蓋取付方形枠部の変形の復元(弾性復帰)により、蓋の縁は所定の係り代で、構造的にその係止部にて止められ、手前に分離することが防止される。この取付け手段だけでは、水密の確保は困難であるものの、その取付は、蓋の押し込みに因るケース本体(蓋取付方形枠部)の変形、及びその復元を利用したものであるから、止めネジ等の別部材は要しない。しかも、その取付は押し込み(又は圧入)という単純作業で済むので、作業も簡易、迅速に行うことができる。このため、その取付構造における水密の確保を、別途に講じることができるような場合に好適な取付構造といえる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記したような押し込みによる蓋の取り付構造では、蓋取付方形枠部内の蓋取付位置における対向する縦横2組の内壁面の相互の間隔は、対応する蓋の対辺寸法より、縦横いずれも微量、大きくされている。このため、蓋が取付けられている状態においては、いわば隙間嵌め状態にあるから、微妙なガタツキが生じることがある。また、蓋が開口側(手前側)へ移動し、分離するのを防いでいるのは、内向に突出する係止部と、蓋の縁との係り代(寸法)に依存するのみである。したがって、押し込みによる蓋の取付状態だけでは、その取付の安定性が高いとは言えない。
【0008】
一方、その蓋の取付の安定性を高めるためには、係止部の内向の突出量を大きくすることが考えられる。しかし、そのようにすると、係止部自体に割れや亀裂が入ったりする等の危険性がある。しかも、そのようにしても、微妙なガタツキの発生を防止することは困難である。このため、係止部の内向の突出量を大きくすることなく、蓋取付方形枠部内の蓋取付位置における対向する縦横2組の内壁面の相互の間隔を、対応する蓋の対辺寸法と、縦横、微量、小さくするか、同じにすることが考えられる。すなわち、その取付状態において、蓋が蓋取付方形枠部内において、縦横、締り嵌めとなるか、隙間なく緊密に取り付けられるようにするというものである。
【0009】
しかし、このようにすれば、蓋の押し込みにおいて必要となる押し込み力は、極めて大きいものとなり、蓋の取付作業が困難となる。とりわけ、係止部が設けられている側の内壁面の相互においては、係止部の存在により圧入代が局部的に一層大きくなる。こうしたことから、縦横、いずれも締り嵌め等となるようにすると、蓋の押し込み過程や、その後の蓋の取付状態において、係止部や蓋取付方形枠部自体に割れや亀裂が入ったりする等の危険性さえもあるといえ、問題である。
【0010】
本発明は、かかる問題点にかんがみてなされたもので、ケース本体の蓋取付方形枠部に対する蓋の押し込み(圧入)に要する力(荷重)の著しい増大を招くことなく、係止部の内向の突出量も適度に保持したままで、その押し込みによる取付後には、その蓋のガタツキもなく、しかも、分離、脱落の危険性を小さくできるようにした、ケースにおける蓋の取付構造、及びそのような蓋付きケースの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために請求項1に記載の発明は、ケース本体は、断面が略方形で筒状又はソケット状をなす弾性変形可能の蓋取付方形枠部を有しており、該蓋取付方形枠部内に、その端の開口から、輪郭が略方形の蓋が所定量、奥に押し込まれることによって所定の蓋取付位置に取り付けられる、ケースにおける蓋の取付構造であって、
前記蓋取付方形枠部内には、前記蓋の押し込まれ過ぎを防ぐストッパと、前記蓋取付位置に取り付けられた蓋が手前に移動し、分離するのを防ぐ係止部とが設けられており、
該係止部は、該蓋取付方形枠部をなす対向する二組の内壁面のうちの一組の内壁面に、前記蓋の取り付け前における最小内寸法Wxtが、前記蓋の対応する対辺寸法Hxより小さくなるように、内向きに突出し又は隆起するように設けられており、
前記蓋の取り付け前の前記蓋取付方形枠部のうち、前記蓋取付位置における前記係止部が設けられている対向する内壁面の相互の対辺寸法Wxが、前記蓋の対応する対辺寸法Hxより大きくされている一方、前記蓋取付位置における前記係止部が設けられていない対向する内壁面の相互の対辺寸法Wyが、前記蓋の対応する対辺寸法Hyより小さくされており、
前記蓋が押し込まれて前記蓋取付位置に取り付けられている状態において、前記係止部が設けられていない対向する前記内壁面の相互の間隔が前記蓋によって広げられることに対応し、この内壁面相互が該蓋を締め付けると共に、この広げられに対応して、前記係止部が設けられている対向する前記内壁面の相互の間隔が狭められるように、前記蓋取付方形枠部が変形する設定とされていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記係止部が、前記内壁面のうち、前記蓋取付方形枠部における隅角相互の中間部位に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のケースにおける蓋の取付構造である。
請求項3に記載の発明は、前記蓋取付方形枠部は、二組の対向する内壁面とも、前記蓋取付位置よりも開口端側において、開口端に向けて対辺寸法が次第に大きくなるように形成されていることを特徴とする、請求項1又は2のいずれか1項に記載のケースにおける蓋の取付構造である。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記ケース本体が、底の有る筒構造をなし、前記蓋取付方形枠部が、該筒構造における開口端寄り部位に設けられていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のケースにおける蓋の取付構造である。
請求項5に記載の発明は、前記ケース本体が回路基板収容用のケース本体であり、前記蓋がコネクタ端子付きの蓋であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のケースにおける蓋の取付構造である。
【0014】
請求項6に記載の発明は、前記ケース本体が回路基板収容用のケース本体であり、前記ストッパは、前記二組の内壁面のうちの一組の内壁面に、内向きに突出し又は隆起するように設けられている一方、
前記回路基板は、前記ストッパが設けられていない一組の内壁面である2つの内壁面に対面状に挟まれる配置となるように前記ケース本体内へ収容される設定とされており、
前記ストッパは、ストッパ自身の内壁面相互間における前記蓋の取り付け前における最小内寸法を前記回路基板の対応する幅寸法より小さいものとして設けられていると共に、前記回路基板が、前記ケース本体内への収容に際して対面状に挟まれる前記2つの内壁面のうちの所定の一方の内壁面側に偏在する所定の偏在配置となる場合にはその収容を妨げず、該回路基板がこの所定の偏在配置とならない場合にはその収容を止められる配置として、前記内壁面に設けられていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のケースにおける蓋の取付構造である。
【0015】
請求項7に記載の発明は、ケース本体は、断面が略方形で筒状又はソケット状をなす弾性変形可能の蓋取付方形枠部を有しており、該蓋取付方形枠部内に、その端の開口から、輪郭が略方形の蓋を、所定量、奥に押し込むことによって所定の蓋取付位置に取り付ける、蓋付きケースの製造方法であって、
前記蓋取付方形枠部内には、前記蓋の押し込まれ過ぎを防ぐストッパと、前記蓋取付位置に取り付けられた蓋が手前に移動し、分離するのを防ぐ係止部とが設けられており、
該係止部は、該蓋取付方形枠部をなす対向する二組の内壁面のうちの一組の内壁面に、前記蓋の取り付け前における最小内寸法Wxtが、前記蓋の対応する対辺寸法Hxより小さくなるように、内向きに突出し又は隆起するように設けられており、
前記蓋の取り付け前の前記蓋取付方形枠部のうち、前記蓋取付位置における前記係止部が設けられている対向する内壁面の相互の対辺寸法Wxが、前記蓋の対応する対辺寸法Hxより大きくされている一方、前記蓋取付位置における前記係止部が設けられていない対向する内壁面の相互の対辺寸法Wyが、前記蓋の対応する対辺寸法Hyより小さくされており、
前記蓋を押し込み、該蓋が前記蓋取付位置に取り付けられている状態において、前記係止部が設けられていない対向する前記内壁面の相互の間隔が前記蓋によって広げられることに対応し、この内壁面相互が該蓋を締め付けると共に、この広げられに対応して、前記係止部が設けられている対向する前記内壁面の相互の間隔が狭められるように、前記蓋取付方形枠部が変形する設定とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、上記構成を有しており、蓋の取り付け前の蓋取付方形枠部のうち、蓋取付位置における対向する内壁面の相互の間隔について、縦横のいずれか一方の対辺寸法を、蓋の対応する各対辺寸法より小さくしている。すなわち、本発明では、前記係止部が設けられている対向する内壁面の相互の間隔である対辺寸法Wxが、前記蓋の対応する対辺寸法Hxより大きくされているが、前記係止部が設けられていない対向する内壁面の相互の間隔である対辺寸法Wyは、前記蓋の対応する対辺寸法Hyより小さくされている。したがって、蓋の取付状態では、後者の対辺寸法の方向においては、蓋は締め付けられるように取り付けられるから、ガタツキの発生を防止できる。一方、前者の対辺寸法の方向においては、対向する内壁面の相互の間隔の方が蓋の対応する対辺寸法より大きく設定されているため、蓋の押し込みにおいては、極端な押し込み力の増大を招くことはない。
【0017】
しかも、該係止部が設けられていない対向する内壁面の相互の間隔である対辺寸法Wyを、蓋の対応する対辺寸法Hyより小さくしたことによって、蓋の取付状態においては、該係止部が設けられている対向する内壁面の相互の間隔は狭くなる。よって、蓋の取付状態においては、係止部による蓋に対する構造的な係り代を大きくできる。このため、蓋に引き抜き力(押し込みと反対向きの力)が作用したとしても、蓋が手前に移動し、又は分離することの防止作用が高められる。なお、本発明において、蓋の取り付け前の前記蓋取付方形枠部のうち、前記蓋取付位置における前記係止部が設けられている対向する内壁面の相互の対辺寸法Wxが、前記蓋の対応する対辺寸法Hxより大きくされている、というのは、これらの対辺寸法方向において、両者の間には、隙間が得られる寸法設定とされていることを意味する。また、前記蓋取付位置における前記係止部が設けられていない対向する内壁面の相互の対辺寸法Wyが、前記蓋の対応する対辺寸法Hyより小さくされているというのは、前記蓋が押し込まれて前記蓋取付位置に取り付けられている状態において、その内壁面相互で前記蓋を締め付け得る設定とされていることを意味する。
【0018】
上記したように、本発明では、該係止部が設けられていない対向する内壁面の相互の対辺寸法Wyを、蓋の対応する対辺寸法Hyより小さくしているため、内壁面の相互の両対辺寸法とも、蓋の対応する両対辺寸法より大きくしている場合に比べれば、蓋の押し込みに要する力は増大するが、本発明では、該係止部が設けられている対向する内壁面の相互の対辺寸法Wxを、蓋の対応する対辺寸法Hxより大きくしている。これにより、その対辺寸法間では、係止部による抵抗に格別の増大を招かないから、蓋の押し込みに要する全体としての押し込み力の極端な増大を招かない。しかも、前記蓋が押し込まれて前記蓋取付方形枠部における前記蓋取付位置に取り付けられている状態においては、前記係止部が設けられていない対向する前記内壁面により、蓋は締め付けられる。その上に、前記係止部が設けられている対向する前記内壁面の相互の間隔が狭くなるように変形するため、その係止部における蓋の縁との係り代が、蓋取付前の設定寸法よりも増大する。よって、蓋の分離等の危険性を小さくできる。このように、本発明によれば、蓋の押し込みに要する押し込み力の極端な増大を招くことなく、しかも、蓋取付状態においては、ガタツキのない蓋の取付と、その分離等の危険性を低減できるという効果が得られる。
【0019】
内向きに突出し又は隆起するように設ける係止部は、開口の手前から奥に向かうに従って、対向する係止部相互間の内寸法が小さくなるように設けるのがよいが、蓋が押し込まれることににより、その縁がその係止部を乗り越えて、蓋取付位置に位置決めされることができればよい。したがって、係止部は、蓋(蓋の縁)との係り代の大きさに応じて、適宜の傾斜状、又は、内寸法の変化にて形成すればよい。なお、本発明において、略方形とは、等辺の四角(略正方形)、又は不等辺の四角(略長方形)を意味するが、これは、一見、方形であればよく、物理的意味におけるものではない。したがって、蓋取付方形枠部をなす壁は、断面において、その四角の辺のうち、一組の対向する辺(内壁面)が外向きに緩やかな凸アール(円弧)をなし、他の一組の対向する辺(内壁面)が、逆に内向きに緩やかな凸アールをなすものであってもよいし、二組とも、外向き又は内向きに凸アールをなしていてもよい。また、本発明において、筒状又はソケット状とは、その蓋取付方形枠部の内径(対角寸法、又は対辺寸法)に比較し、その長さが長いものに限られず、短い筒状又はソケット状のものも含む概念として使用している。
【0020】
前記係止部は、請求項2に記載のように、前記内壁面のうち、前記蓋取付方形枠部における隅角相互の中間部位に設けられているものとするのが、その変形の容易性より好ましい。ただし、この係止部は、1つの内壁面に1つでなく、複数に分割されていてもよい。なお、該係止部は、蓋取付方形枠部の断面における方形が長方形の場合には、その長辺をなす側の内壁面に設けるのが好ましいといえるが、その変形容易性に基づき、短辺をなす側の内壁面に設けてもよい。
【0021】
また、前記蓋取付方形枠部の開口端寄り部位(内周面)は、蓋の押し込みのみで、蓋の取付ができるように、その押し込み前(自由状態)において、蓋が蓋取付方形枠部の端の開口(開口端)よりも奥に入り込み得る大きさの方形に設定しておくのがよい。しかし、前記蓋取付方形枠部に、適度の外力を付加して予備変形を付与することで、蓋が入り込み得るようにしておいてもよい。なお、請求項3に記載の発明によれば、二組の対向する内壁面とも、前記蓋取付位置よりも開口端側において、開口端に向けて対辺寸法が次第に大きくなるように形成されているため、蓋の押し込みにおける円滑、容易化が図られる。本発明において、ケース本体の形状、構造、又は、ケース本体における蓋取付方形枠部の部位等に関しては、ケースの用途等に応じて適宜のものとすればよい。ただし、請求項4に記載の発明のように、前記ケース本体が、底の有る筒構造をなし、前記蓋取付方形枠部が、該筒構造における開口端寄り部位に設けられているものであるのがよい。蓋取付方形枠部又はこれを含むケース本体は、適度の弾性変形性、及び靱性のある、例えば、PA66などのナイロン系樹脂(ポリアミド系樹脂)や、PBT樹脂などから、ケースの用途に応じ、適する樹脂を選択すればよい。
【0022】
本発明においては、請求項5に記載の発明のように、前記ケース本体が回路基板収容用のケース本体であり、前記蓋がコネクタ端子付きの蓋である場合に好適といえるが、このようなケース本体又は蓋に限定されるものではない。また、回路基板を収容すべきケース本体については、前記蓋の押し込まれ過ぎを防ぐストッパを、請求項6に記載の発明のように構成しておき、このストッパで、その押し込まれ過ぎ防止とは別に、回路基板が所定の配置とならない場合の収容を防止するストッパ作用をも担わせるようにしておくことで、回路基板の組付け作業においてその誤収容(挿入)を容易に防止できる。なお、請求項7に記載の本発明の蓋付きケースの製造方法によれば、ケース本体の蓋取付方形枠部に対する蓋の押し込み(圧入)に要する力(荷重)の著しい増大を招くこともない。そして、その押し込みによる取付後には、その蓋のガタツキもなく、しかも、分離、脱落の危険性を小さくできる、ケースにおける蓋の取付構造、ないし、そのような蓋付きケースを効率的かつ低コストで得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を具体化した実施形態例について、
図1〜
図10を参照しながら詳細に説明する。ただし、本例では、ケース本体が回路基板収容用のケース本体であり、蓋がコネクタ端子付きの蓋であって、回路基板を一体的に有してなるものである。各図に示したように、本例のケース100において、蓋の取付構造を構成するケース本体101は、横断面が正方形に近い、略矩形で、先後に略一定の筒構造のものである。このケース本体101は、弾性変形が可能の樹脂製(プラスチック製、具体的には、ナイロン系樹脂製)で、一端に開放された開口103を有し、他端に底105を有すると共に、筒をなす4つの平坦な壁107,108を有する四角筒構造を呈している。一方、蓋201は、絶縁材(例えば、樹脂)からなり、
図1、
図5等に示したように、輪郭が正方形に近い略矩形(板状)に形成されたものであり、ケース本体101内においてその横断面を閉塞できるように形成されている。ただし、本例では一体的に設けられた回路基板250の端子と電気的に接続された適数の端子コネクタ270が、外側に向けて突出するように設けられている。そして、その回路基板250は、蓋201の裏面に垂直に、蓋201の矩形をなす一つの辺に沿って突き合わせ状に一体的に形成されている。
【0025】
図2、
図3等に示したように、ケース本体101は、その先後(筒の延伸方向)領域のうち、開口103側の端(図右端。開口端)寄りの略1/3の範囲が、筒状又はソケット状をなす蓋取付方形枠部110をなしており、残りの底(図左端)105寄りの部位が基板収容部位113とされている。そして、この蓋取付方形枠部110における奥方のうち、奥端又はその近傍(基板収容部位113と蓋取付方形枠部110との境界近傍)に、蓋201が押し込まれて取付けられる位置、すなわち、蓋取付位置115が設定されている。これにより、蓋取付方形枠部(方形枠部又は単に枠部ともいう)110の内断面(4つの壁107,108のなす内壁面117,118)に対応する略方形の蓋201が、枠部110内に開口103端から奥に押し込まれることによって蓋取付位置115に取り付けられる設定とされている。本例では蓋201は、上記したように回路基板250を一体的に有してなるものであるところ、この回路基板250は、蓋201がケース本体101に取付けられたときにおいて、ケース本体101の1つの壁108に平行で、近接して収容される設定とされている(
図7参照)。なお、説明を簡易にするため、回路基板250は適宜、省略している。
【0026】
上記したようにケース本体101は、蓋取付方形枠部110を含め、略一定の矩形の横断面の筒構造を呈しているが、このうち、蓋取付方形枠部110は、その開口103端寄り部位が、開口103端に向けてその内側の横断面が漸増するように形成されている(
図2、3等参照)。すなわち、ケース本体101をなす壁107,108の内壁面117,118のうち、開口103端寄り部位においては、各対向する内壁面117、118の相互の間隔である対辺寸法(内断面の縦寸法又は横寸法)が、テーパ状に漸増し、その断面が大きくなるように形成されている。結果、筒状又はソケット状の蓋取付方形枠部110をなす壁107,108は、このテーパに対応して開口103端に向かうに従い、その肉厚が薄くなっている。なお、ケース本体101は、横断面(矩形)における内壁面117、118の4つの隅角(各コーナ)に、凹アール(円弧)が、筒の延伸方向に沿い、その略全長にわたって付けられている(
図4参照)。そして、ケース本体101の基板収容部位113において対向する一組の内壁面117,117には、筒の延伸方向に沿って、凸条121が、その各内壁面に、それぞれ2本、その内壁面117の横方向(断面方形の辺)の中心と対称配置となるように間隔をおいて、その内壁面117に隆起状(内向きに突出し又は隆起するよう)に設けられている。本例では、各凸条121の先端(開口103寄りの端)が、蓋201の押し込まれ過ぎを防ぐストッパ123をなしている。このストッパ123は、蓋取付方形枠部110の奥端に位置しており、このストッパ123の手前(開口103端側)の所定範囲の部位が、蓋取付位置115をなしている。なお、各壁107,108のうち、ストッパ123よりも底105寄り部位は、開口103寄り部位より肉厚が厚くされている。
【0027】
一方、蓋201は、この蓋取付方形枠部110内の蓋取付位置115において、その開口103(横断面)を略塞ぐことができるような縦横(輪郭)寸法を有し、対向する二組の辺217,218を有する矩形板状のものとされている。本例では、その方形枠部110の開口103端寄り部位が、上記したようにテーパにより漸増された横断面を有しており、自由状態において、蓋201の外周縁(辺)がその開口103端寄り部位に、周囲に微小な隙間を保持して入り込み得るように設定されている(
図7,8参照)。なお、この蓋201のコーナには、枠部110の内壁面117,118の4つの隅角(各コーナ)に設けられたアールに対応した凸アールが設けられている(
図5参照)。
【0028】
上記したように、本例でのストッパ123は、ケース本体101の枠部110の内壁面117に設けられている凸条121の先端とされているが、この先端(ストッパ123)よりも、開口103端側の内壁面117には、押し込まれて蓋取付位置115に取付けられた蓋201が手前に移動したり、分離するのを防ぐ係止部131が設けられている。この係止部131は、凸条121が設けられている一組の対向する内壁面117に設けられている。ただし、係止部131は、各内壁面117において、凸条121の中間位置(横断面矩形の辺の中間位置)に設けられている。そして、この両係止部131は、蓋201の取付前において、
図6の模式図に誇張して示したように、その対向する最小内寸法Wxtが、蓋(2点鎖線で示す)201の対応する対辺寸法Hxより小さくなるように、内向きに突出し、又は隆起するように設けられている。なお、この係止部131は、各内壁面117において、枠部110における矩形の辺の略中央に中心が位置するように設けられてる。
【0029】
しかして、蓋201は、方形枠部110内に、開口103端から押し込まれることで、その枠部110を変形させながら、蓋201の対向する両外周縁である辺217の部位が係止部131を乗り越え、ストッパ123にて止められ、蓋取付位置115に取付けられる設定とされている。そして、蓋201はその取付状態において、その対向する辺217寄りの外(開口103端)向き面が、係止部131の奥向き面にて係止され、手前に移動し、分離するのが防止されるようにされている。なお、本例では、係止部131に対応する蓋201の対向する両辺(縁)217のうち、外(開口103端)向き面に、蓋201の厚み方向に切欠き(かぎ状凹部)225が設けられており、蓋201の取付状態において、係止部131が、この切欠き(かぎ状凹部)225に嵌る設定とされている。
【0030】
さて次に、
図4〜
図6を参照しながら、蓋201の取付け前の方形枠部110のうち、蓋取付位置115における対向する内壁面117,118の相互の対辺寸法と、取付けられる蓋201の対応する対辺寸法との寸法関係等について説明する。係止部131が設けられている対向する内壁面117の相互の間隔である対辺寸法(図示横方向の寸法)Wxは、蓋201の対応する対辺寸法Hxより、例えば、0.2〜0.5mm大きくされている(
図6参照)。一方、係止部131が設けられていない対向する内壁面118の相互の間隔である対辺寸法(図示縦方向の寸法)Wyは、蓋201の対応する対辺寸法Hyより、例えば、0.2〜0.5mm小さくされている。なお、これら各寸法差は、各対辺寸法の大きさや、ケース本体101の変形容易性や強度に基づいて設定される。
【0031】
一方、係止部131は、上記したように、その最小内寸法Wxtが、蓋201の対応する対辺寸法Hxより小さくなるように設けられているが、この両係止部131の相互間の内寸法は、本例では、方形枠部110の奥に向かうに従い小さくなるように、それぞれ傾斜が付けられている。また、方形枠部110内の対辺寸法は、開口103の端に向かうに従い増大するように、各内壁面117、118にはテーパが付けられているのは上記したとおりであるが、この開口103端寄り部位の対向する内壁面の相互の間隔である対辺寸法は、縦横、いずれも、取付けられる蓋201の対応する対辺寸法より大きくされている。これにより、蓋201の押し込みに際し、蓋201は枠部110内に隙間嵌めできるようにされている。ただし、本例では、開口103の端に向かうに従い増大するテーパ勾配の開始位置は、突起をなす係止部131よりも開口103端側に設定されているが、これは、係止部131から開始する等、蓋201の押し込みやすさを考慮して適宜に設定すればよい。
【0032】
上記したようなケース本体101と蓋201とからなる本例においては、
図7、
図8に示したように、蓋取付方形枠部110の自由状態において、その開口103端寄り部位の内側に、その開口103を塞ぐように蓋201を対応する縦横状態で配置する。そして、その体勢のまま、矢印方向に奥に押し込む。こうすることで、
図9、
図10に示したように、蓋201は蓋取付位置115に取付けられ、本例のケース100における蓋の取付構造が得られる。すなわち、この押し込みにより、係止部131に対応する位置(
図4〜6における横方向の位置。以下、横方向)にある蓋201の対向する外周縁をなす辺217の部位が、係止部131を乗り越え、奥のストッパ123で止められ、別の位置(
図4〜6における縦方向の位置。以下、縦方向)にある蓋201の対向する外周縁をなす辺218の部位が、方形枠部110の内壁面118相互間を広げるように、それぞれの内壁面を変形させながら、蓋201は押し込まれ、蓋取付位置115に取付けられ、ケース(筐体)100における蓋201の取付構造(蓋付きケース)が得られる(
図9、
図10参照)。
【0033】
なお、この押し込み過程では変形の発生状況の詳細は次のように考えられる。まず、蓋201がストッパ123に止められるまで、方形枠部110は、
図4〜6におけるその縦方向に対向する内壁面118の相互の間隔が、蓋201の両縁の辺218の部位にて広げられる。一方、その横方向に対向する枠部110の内壁面117の相互の間隔は、その広げられに対応して狭められるように変形する。しかし、枠部110の係止部131に蓋201の縁が押し付けられ、蓋201の縁が係止部131を乗り越えるまでは、その係止部131を含む部位を中心として枠部110の内壁面117は部分的に広げられように変形する。そして、係止部131の乗り越えが終わった後、すなわち、ストッパ123に止められて、蓋201が蓋取付位置115に取付けられたときには、Wy<Hyの上記寸法関係に基づき、同位置115においては、縦方向に対向する蓋201の辺218により、内壁面118の相互の間隔が、実際には、
図9中の2点鎖線で示したように広げられる。
【0034】
この広げられに対応して、蓋取付位置115における横方向に対向する枠部110の係止部131が設けられている内壁面117の相互の間隔(
図10参照)は、弾性に基づく復元状態(自由状態における上記寸法Wx)よりも小さくなるように狭められる。かくして、蓋201が押し込まれて蓋取付位置115に取り付けられている状態においては、
図9中の2点鎖線で示したように、縦方向に対向する内壁面118の相互が蓋201によって広げられる分、蓋201は枠部110にて縦方向に締め付けられる。他方、この広げられに対応して、横方向に対向する内壁面117の相互の間隔は狭められる。結果、
図10に示される係止部131における蓋201の外周縁をなす辺217との係り代を、蓋201取付前の設定寸法である、(Hx−Wxt)/2よりも増大させることができる。
【0035】
このように、本例では、係止部131が設けられていない対向する内壁面118の相互の間隔である対辺寸法Wyが、蓋201の対応する対辺寸法Hyより小さいため、この内壁面118の相互間では、押し込み力の増大を招くものの、係止部131が設けられている対向する内壁面117の相互の間隔である対辺寸法Wxを、蓋201の対応する対辺寸法Hxより大きくしているため、この内壁面117の相互間では、係止部131の部位を含む部分的な抵抗(押し広げ)を伴う押し込みですむ。すなわち本発明では、内壁面の相互の間隔である対辺寸法を縦横ともに、蓋201の対応する対辺寸法より小さくすることなく、係止部131の設けられていない内壁面118の相互の間隔である対辺寸法のみを小さくしているだけであるから、蓋201の押し込み力の極端な増大は招くことがない。そして、その係止部131が設けられていない対向する内壁面118の相互間においては、蓋201の緊密化が図られる。これにより、蓋201のガタツキは防止される。
【0036】
一方、係止部131が設けられている対向する内壁面117の相互間においては、係止部131の乗り越えに伴う押し込み抵抗はともなうものの、取付後には、その内壁面117の相互の間隔が、蓋取付前よりも小さくなるため、その分、蓋201の対応する辺217と係止部131との係り代を増大させることができるから、蓋201の分離、脱落の危険性を大きく低減できる。とくに、本例では、蓋201のコネクタ端子270に、外部リード線における相手方の端子(メス)コネクタが差し込み方式で接続されることになる。このため、その後のメンテナンス等において、それが大きな力で引き抜かれることがあるが、その取付構造に基づき、蓋の分離、脱落の危険性を大きく低減できる。結果、本例のケース100における蓋201の取付構造によれば、高度の耐振動性や耐衝撃性が得られるから、自動車に搭載される電子制御装置(以下、ECU)を収容するためのケース(筐体)に好適である。
【0037】
また、本例では、係止部131を蓋取付方形枠部110の矩形をなす辺の中間部位に設けたため、その辺における変形のアンバランスが防止される。これにより、押し込みの容易化と共に、取付の安定性も図られる。係止部131の突出量、又は隆起量等は、押し込み力、ないし、方形枠部110の変形容易性を考慮して適宜に設定すればよい。また、本例では、方形枠部110は、二組の対向する内壁面117,118とも、蓋取付位置115よりも開口103端側において、開口103端に向けて対辺寸法が次第に大きくなり、かつ、自由状態において、蓋201が方形枠部110内のうち、その開口103端寄り部位に入り込み可能とされている。これにより、蓋201の取り付け作業の簡易、円滑化が図られる。
【0038】
なお、蓋201の押し込み開始は、自由状態にある蓋取付方形枠部110内において行うだけでなく、例えば、係止部131が設けられている対向する内壁面117の相互間を、その両壁107を両側から挟んで圧縮することで、係止部131が設けられていない対向する内壁面118の相互間の寸法を大きくした状態で開始してもよい。また、本例では、対向する係止部131相互間に、奥に向かうに従い、内寸法が小さくなるような傾斜を付けたが、係止部131自体の変形等により、それらに亀裂等を発生させることなく蓋201の押し込みができ、その取付ができる限り、係止部はこのような傾斜のない突起(突出片又は隆起部)としてもよい。また、例えば、係止部131が設けられていない対向する内壁面118の相互の間隔である対辺寸法(図示縦方向の寸法)Wyを、蓋201の対応する対辺寸法Hyより小さくする程度も、適度の押し込み力でその押し込みができるように設定すればよいのは上記したとおりである。また、係止部131が設けられている対向する内壁面117の相互の間隔である対辺寸法(図示横方向の寸法)Wxを、蓋201の対応する対辺寸法Hxより大きくする程度も、押し込み後において、蓋201の外周縁と係止部131との係り代が適度に増大するように、適宜に設定すればよい。この場合、蓋201に対する隙間がなるべく小さくなるようにするのがよいが、隙間が0となるようにしてもよい。
【0039】
上記例では、蓋取付方形枠部110の矩形の隅角、又は、蓋201の角にアールを付けたものにおいて具体化したが、本発明はその有無に関係なく具体化できる。本発明において、蓋取付方形枠部110の横断面、及び蓋201における略方形とは、一見、正方形、又は長方形とみられるものをいうのは、上記したとおりである。したがって、
図11の模式図に誇張して示したように、蓋取付方形枠部110をなす壁は、係止部131が設けられている対向する内壁面117が、横断面矩形の辺において外向きに緩やかな凸アールで膨らみ出る円弧形状をなし、他の一組の対向する内壁面118が、横断面矩形の辺において、逆に緩やかな凹アールで凹む円弧形状をなしているものであってもよい。そして、この場合、例えば、蓋(2点線)201の対応する矩形の辺のうち、凹アールの内壁面118に対応する辺218が、凸アールで膨らみ出る円弧形状をなすものでもよい。なお、
図6と同一、又は対応する部位には、同一の符号を付している。また別例としては、
図12に誇張して示したように、このような方形枠部110の横断面形状において、対向する二組の内壁面117、118が、共に横断面矩形の辺において外向きに緩やかな凸アールで膨らみ出る円弧形状をなしているものであってもよい。そして、この場合、例えば、蓋(2点線)201の対応する矩形の辺のうち、係止部131の設けられていない内壁面118に対応する辺218が、緩やかな凹アールで凹む円弧形状をなしていてもよい。すなわち、
図11,12中に示したように、蓋取付方形枠部110の横断面、及び蓋201は、一見、正方形、又は長方形であればよい。なお、
図11、12中に示したように、各辺が、アールをなすような場合には、Wx,Hx,Wy,Hyは、それぞれの内寸法、又は外寸法は最大の寸法をいう。
【0040】
さらに、本例では、ケース本体101を、横断面一定の有底筒状のものとし、蓋取付方形枠部110がその開口103端寄り部位にあるものとして、具体化したが、本発明におけるケース本体は、断面が略方形で筒状又はソケット状をなす弾性変形可能の蓋取付方形枠部を有しているものであればよい。すなわち、上記もしたように、ケース本体は、このような蓋取付方形枠部を、ケース本体の一部として有していればよく、したがって、ケース本体の形状等はいずれのものとしても具体化できる。また、本発明は、ECU用のケースに限られず、広くケースにおける蓋の取付構造又は蓋付きケースに適用できる。
【0041】
なお、上記例においては、ケース本体101が回路基板収容用のケース本体であり、蓋201がコネクタ端子付きの蓋であって回路基板250を一体的に有してなるものであり、この回路基板250は、蓋201がケース本体101に押し込まれて取付けられたときにおいて、それの1つの壁108に平行で対面し、しかも、近接して収容される設定とされている(
図7参照)。
図7は、蓋(回路基板)201の押し込まれ過程(回路基板の収容途中)を説明する図であるが、この回路基板(以下、単に基板ともいう)250は、その収容後には、蓋201の押し込まれ過ぎを防ぐストッパ123が設けられていない一組の内壁面(
図7における上下2つの内壁面)118,118に対面状に挟まれる配置となり、そのうちの所定の一方の内壁面(
図7の上)118側に偏在して対面する偏在配置となる設定とされている。
【0042】
一方、このストッパ123は、
図7における上下でない一組の内壁面117において(
図4、
図8参照)、
図7に示したように、上下に間隔をおいて平行状に設けられた凸状121の先端面(ストッパ)として設けられている。そして、回路基板250は、
図7における上の凸状121と、上の内壁面118との間に位置して収容されるが、この間の寸法(間隔)と、同図における下の凸状121と、下の内壁面118との間の寸法(間隔)とは略同じある。このため、
図13に示したように、回路基板250が、
図7におけるような所定の偏在配置とならず、それとは上下が逆の、下の凸状121と、下の内壁面118との間に位置し、誤って組み付けられて、収容されてしまうこともあり、組み付け不良(基板の挿入ミス)を招くことがある。すなわち、このようなストッパ123を含む凸状121の配置においては、
図13に示したように、その上下の各間隔Ka,Kbが同じであるため、凸状121の先端面のストッパ123が、
図14に示したように、それ自身の内壁面118相互間における、蓋201の取り付け前における最小内寸法Wsを回路基板250の対応する幅H寸法より小さいものとして設けられているとしても、回路基板250が、下の凸状121と、下の内壁面118との間に位置し、
図14中に2点鎖線で示したような所定の偏在配置とならず、
図13、
図14に示したように誤って組み付けられ、収容されてしまうことがある。
【0043】
図15は、このような組み付け不良(基板の挿入ミス)の発生の未然防止ができるようにした実施例である。すなわち、このものは、
図7、
図13、
図14における図示下のストッパ123を含む凸状121を、回路基板250が上記したような所定の偏在配置とならないような場合(
図13、
図14参照)には、そのような収容となるのを止められる配置で内壁面117に設けたものである。本例では、同図における上の凸状121と、上の内壁面118との間の寸法(間隔)Kaを、回路基板250の収容ができる寸法としておく一方、例えば、同図における下の凸状121の上下幅Tを下方に向けて大きくとり、該下の凸状121と、下の内壁面118との間の寸法(間隔)Kbを相対的に小さくし、その下の凸状121の先端面である蓋201の押し込まれ過ぎを防ぐストッパ123に、基板250の挿入ミスの場合には、その先端250sが当たるように構成したものである(
図15中のP1部分参照)。このようにしておくことで、基板250が、所定の一方の内壁面(図示上の内壁面118)側に偏在する所定の偏在配置となる場合(
図7参照)にはその収容は妨げられず、回路基板250がこの所定の偏在配置とならない場合(
図13、
図14参照)には、その基板の先端250sが下の凸状121の先端面であるストッパ123に当たり、その収容が止められる。これにより、回路基板250の組み付け不良の発生が確実に防止される。
【0044】
すなわち、本発明において、ストッパ123は、本来、蓋201の押し込まれ過ぎを防ぐためのものであり、それが達成される限り、内壁面のいずれに設けてもよいわけであるが、前記したような構成としておくことで、前記した別の付加的な効果が得られる。とくに、上記したように基板250が蓋201に一体的に設けられており、同基板250が蓋201の押し込み過程で同時にケース本体101内に収容されるような場合には、その効果に著しいものがある。なお、上記例では、ストッパを、
図7等において、ケース本体内である内壁面117に、上下において間隔をおいて横方向に延びる2つの凸状121の先端面とし、そのうちの図示下の凸状121の先端面としている。そして、
図15では、下の凸状121と、下の内壁面118との間の寸法(間隔)Kbを相対的に小さくし、基板の誤挿入を防止しているが、ストッパ作用よりして、その寸法(間隔)Kbは、0(無)でもよいし、凸状とは切り離して、或いは、凸状とは別に設けてもよいことは明らかである。また、
図15において回路基板250が所定の偏在配置となる場合、上の凸状121を基板の支持手段としても活用できる。より具体的には、基板250の挿入、収容後においてその基板の上下両面において上の凸状、及び上の内壁面と、接するか、微小な空隙で位置する設定としておくことで、基板は、その厚み方向への動きが規制されるので、その安定した支持が得られる。なお、上記例では、回路基板が蓋に一体的に設けられているものにおいて説明したため、蓋の押し込みにおける取付と共に基板の収容が行われるが、このような基板は蓋の取付とは別に挿入して収容することとしてもよい。