【文献】
みずほ銀行と富士通が「ブロックチェーン技術」を活用した、国境を越えた証券取引の決済プロセス効率化に向けた実証実験を実施,2016年 4月22日,URL,http://journal.jp.fujitsu.com/2016/04/22/01/
【文献】
みずほ銀行と富士通、国境を越えた証券取引の決済プロセス効率化に向けた実証実験を実施,2016年 3月 8日,URL,http://pr.fujitsu.com/jp/news/2016/03/8.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記投資家の投資管理システム、前記海外証券会社システム、前記カストディアンシステム、前記国内証券会社システム、前記証券保管システムは、前記取引識別情報が記録されたすべての仮想通貨を前記分散台帳から取得し、取得した仮想通貨の空きエリアに含まれる取引内容の正当性を確認することを特徴とする請求項1に記載のカストディ支援システム。
前記投資管理システムが、前記約定情報を暗号化して仮想通貨に記録し、暗号化された約定情報を復号するためのキー情報を、前記海外証券会社システム、前記カストディアンシステム、前記国内証券会社システム、前記証券保管システムに送信することを特徴とする請求項1又は2に記載のカストディ支援システム。
前記証券保管システムにおいて、取引内容の照合ができない場合には、指図の差し戻し情報を記録した仮想通貨を前記分散台帳に登録することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のカストディ支援システム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、カストディ支援システムを具体化した一実施形態を、
図1〜
図5に従って説明する。本実施形態では、カストディアン(投資家に代わって有価証券の管理を行なう機関)を利用して、非居住者の取引を行なうカストディサービスを支援する場合に用いる。ここでは、決済関係者として、投資家、海外運用会社、海外証券会社、国内証券会社、投資家のカストディアン、CSD(Central Securities Depository)を想定する。この取引においては、買サイドと呼ばれる投資家サイドと、売サイドと呼ばれるブローカーサイドで構成される。そして.本実施形態では、ブロックチェーンにより仮想通貨の正当性を確認できる基盤システムを用いて、カストディサービスを支援する場合を想定する。
【0012】
図1に代表的な構成を示す。カストディ支援システムは、証券取引に係る複数の関係者システムを含んでいる。本実施形態では、関係者システムとして、投資管理システム10、海外証券会社システム20、国内証券会社システム50、グローバルカストディアンシステム30、サブカストディアンシステム40、CSDシステム60を含んでいる。
【0013】
投資管理システム10〜CSDシステム60は、ピア・ツー・ピア(Peer to Peer)のネットワークで接続されている。このピア・ツー・ピアは、多数のシステム間で通信を行なうためのアーキテクチャのひとつであり、ピア同士が通信を行なう通信方式の基盤システムである。例えば、情報の改ざんを防止するために、ブロックチェーン方式を用いることができる。ブロックチェーン方式では、「取引の記録」をまとめた「ブロック」を「チェーン」状に順次追加していく。ブロックチェーンを構成するそれぞれのブロックは、そのブロックと一つ前のブロックに関する情報を含む「ヘッダ」と、ある時間内に行なわれた取引のリストを記録した「トランザクション」とにより構成される。ブロックチェーンにおいては、過去からの全取引記録が記録されているため、仮に不正を行なおうとした場合、不正以降の全ブロックを書き換える必要があり、計算負荷が大きく改ざんを困難にしている。そして、ピア・ツー・ピアネットワークに接続されている各システムは、一つのピアが発信した情報を、それぞれで分散して共有することになる。なお、本実施形態においては、証券取引についての情報を記録した仮想通貨を各システムにおいて共有する。
【0014】
そして、投資管理システム10〜CSDシステム60は、それぞれ、ピア・ツー・ピアネットワークにおいて共有する情報を保存する分散台帳(分散型台帳)を保持する。一つのシステムの分散台帳に、所定の情報が書き込まれた場合、ピア・ツー・ピアネットワークにより、他のすべてのシステムが保有する分散台帳に、同じ分散情報が書き込まれる。
【0015】
このため、投資管理システム10〜CSDシステム60は、それぞれ、取引確認部M1、情報記憶部M2を備える。取引確認部M1は、自システムの情報記憶部M2に書き込まれた仮想通貨を、ピア・ツー・ピアでネットワークに接続された他システムの情報記憶部M2の分散台帳に書き込む。
【0016】
更に、関係者システムの取引確認部M1は、取引毎にキー、紐付け情報を記録した情報を保持する。このキーは、この取引において暗号化された情報を復号するための情報である。紐付け情報は、複数の仮想通貨を用いて、この取引に係る一連のトランザクションを取得するための識別情報(取引識別情報)である。
【0017】
投資管理システム10は、海外で国内の証券の取引を希望する投資家(非居住者)の取引を管理する海外運用会社のコンピュータシステムである。この投資管理システム10は、海外運用会社が下位の口座管理機関であるグローバルカストディアンに保有する自身の証券口座、資金口座を管理するための情報(証券口座番号、資金口座番号、各口座の口座残高等)を保持している。更に、投資管理システム10は、この分散台帳を用いて、下位の口座管理機関であるグローバルカストディアンシステム30〜CSDシステム60に至る過程で、指図内容が変質していないかどうかを確認する機能を備える。
【0018】
海外証券会社システム20は、海外運用会社との約定に基づいて、証券取引を支援する海外証券会社が管理するコンピュータシステムである。この海外証券会社システム20は、海外証券会社が下位の口座管理機関である国内証券会社に保有する自身の証券口座、資金口座を管理するための情報(証券口座番号、資金口座番号、各口座の口座残高等)を保持している。更に、海外証券会社システム20は、この分散台帳を用いて、下位の口座管理機関である国内証券会社システム50〜CSDシステム60に至る過程で、指図内容が変質していないかを確認する機能を備える。
【0019】
グローバルカストディアンシステム30は、海外運用会社のグローバルカストディアンが管理するコンピュータシステムである。このグローバルカストディアンシステム30は、グローバルカストディアンが下位の口座管理機関であるサブカストディアンに保有する証券口座、資金口座を管理するための情報(証券口座番号、資金口座番号、各口座の口座残高等)を保持している。このグローバルカストディアンシステム30は、投資管理システム10から取得した約定連絡に基づいて、サブカストディアンシステム40に約定連絡を送信する。
【0020】
サブカストディアンシステム40は、サブカストディアンが管理するコンピュータシステムである。このサブカストディアンシステム40は、サブカストディアンが下位の口座管理機関である振替機関に保有する証券口座、資金口座を管理するための情報(証券口座番号、資金口座番号、各口座の口座残高等)を保持している。このサブカストディアンシステム40は、グローバルカストディアンシステム30から取得した約定連絡に基づいて、CSDシステム60に決済指図を送信する。
【0021】
国内証券会社システム50は、取引対象の証券が取引される取引所の参加会社が管理するコンピュータシステムである。この国内証券会社システム50は、国内証券会社が下位の口座管理機関である振替機関に保有する証券口座、資金口座を管理するための情報(証券口座番号、資金口座番号、各口座の口座残高等)を保持している。
【0022】
CSDシステム60は、証券決済を行なう証券集中保管機関(CSD)のコンピュータシステム(証券保管システム)である。例えば、CSDとしては証券保管振替機関があり、買サイド(例えば、サブカストディアンシステム40)と売サイド(例えば、国内証券会社システム50)との取引について、買サイド及び売サイドの確認情報を受信する。そして、CSDシステム60は、売サイドの証券、買サイドの資金残高が充足する場合に、当該取引のDVP決済を実施する。
【0023】
照合機関システム100は、海外運用会社と海外証券会社との証券取引についての約定照合を行なうコンピュータシステムである。この約定照合においては、約定内容について取引を行なう両社の認識が一致しているかどうかを検証する。
【0024】
次に、
図2を用いて、証券取引に用いられている仮想通貨を説明する。ここでは、仮想通貨として、ブロックチェーンを利用するオープンアセットプロトコルによるカラードコインを用いて説明する。
【0025】
仮想通貨C0のように、仮想通貨本体部に対して、ユーザが利用可能な空きエリアが設けられている。この仮想通貨本体部には、仮想通貨の本来の情報が記録される。具体的には、仮想通貨を用いた取引に使用するアドレス(送金先)、送金金額、時刻等が記録される。そして、仮想通貨の空きエリアに、取引に必要な情報(取引内容や確認、承認等)を記録する。更に、空きエリアには、取引に係る一連のトランザクションを関連付けるための紐付け情報が記録される。この紐付け情報を用いることにより、各取引において行なわれた一連のトランザクションを取得することができる。本実施形態では、後述するキーにより復号できるように暗号化された暗号化紐付け情報が記録される。
【0026】
仮想通貨には、約定時に決められた固定情報と、確認や承認オペレーション毎に生成される可変情報とが含まれる。約定時には、仮想通貨C1〜C3を生成する。また、各関係者システムにおいて確認オペレーションが行なわれた場合には、仮想通貨C4が生成され、承認オペレーションが行なわれた場合には、仮想通貨C5が生成される。本実施形態では、後述するキーにより復号できるように暗号化された暗号化情報が記録される。
【0027】
空きエリアの容量は限られる場合、固定情報を複数に分割する。ここでは、仮想通貨C1〜C3のように、約定時には、固定情報を三分割して、約定情報、参照ルート情報、承認ルート情報がそれぞれ記録された3個の仮想通貨を生成する。約定情報には、取引識別子、約定日、決済日、他の取引とのリンケージ、証券種類、銘柄コード、証券数、決済金額に関する情報や、その他必要情報が記録される。
取引識別子データ領域には、各取引を特定するための識別子に関するデータが記録される。
約定日データ領域には、この取引についての約定日(年月日)に関するデータが記録される。
【0028】
決済日データ領域には、この取引についての決済を行なう年月日に関するデータが記録される。
他の取引とのリンケージデータ領域には、この取引と同時又は順番に行なわれる取引を特定するための識別子に関するデータが記録される。
【0029】
証券種類データ領域には、証券の種類を特定するための識別子に関するデータが記録される。
銘柄コードデータ領域には、取引対象の証券の銘柄を特定するための識別子に関するデータが記録される。
証券数データ領域には、取引対象の証券の数量に関するデータが記録される。
決済金額データ領域には、この取引での決済金額に関するデータが記録される。
その他必要情報データ領域には、取引に必要な情報に関するデータが記録される。例えば、この取引について保留の要否を判定するための識別子に関するデータが記録される。具体的には、ホールド指示を意味するホールドフラグ、リリース指示を意味するリリースフラグのいずれかのフラグ等が記録される。
【0030】
参照ルート情報には、この取引について、確認のみが許可されている参加者(参照者)に関する情報が記録される。ここでは、参照者として、グローバルカストディアン、サブカストディアン、外国証券会社、国内証券会社等を特定するための識別情報が記録される。
承認ルート情報には、この取引について、差戻しが可能な参加者(承認者)に関する情報が記録される。ここでは、承認者として、証券保管振替機関を特定するための識別情報が記録される。
【0031】
また、参照者が確認オペレーションを行なった場合や承認者が承認オペレーションを行なった場合には、新たな仮想通貨が生成される。
更に、参照者が確認オペレーションを行なった場合に生成される仮想通貨の空きエリアには確認情報とともに、取引に利用する証券口座や資金口座の口座番号に関する情報が記録される。これらの情報も、キーにより復号できるように暗号化された暗号化情報が記録される。
【0032】
証券口座番号データ領域には、証券を管理する口座を特定するための識別子に関するデータが記録される。
資金口座番号データ領域には、この取引で資金決済に用いる口座を特定するための識別子に関するデータが記録される。
【0033】
承認者が確認を行なった場合に生成される仮想通貨の空きエリアには承認情報が記録される。
そして、関係者システムにおいて生成された仮想通貨は、上述したピア・ツー・ピアネットワークを介して、各システムの情報記憶部M2の分散台帳に記録される。
【0034】
(ハードウェア構成例)
図3は、投資管理システム10〜CSDシステム60等として機能する情報処理装置H10のハードウェア構成例である。
情報処理装置H10は、通信インタフェースH11、入力装置H12、表示装置H13、記憶部H14、プロセッサH15を有する。なお、このハードウェア構成は一例であり、他のハードウェアを有していてもよい。
通信インタフェースH11は、他の装置との間で通信経路を確立して、データの送受信を実行するインタフェースであり、例えばネットワークインタフェースカードや無線インタフェース等である。
【0035】
入力装置H12は、ユーザ等からの入力を受け付ける装置であり、例えばマウスやキーボード等である。表示装置H13は、各種情報を表示するディスプレイやタッチパネル等である。
記憶部H14は、投資管理システム10〜CSDシステム60の各種機能を実行するためのデータや各種プログラムを格納する記憶装置(例えば、情報記憶部M2における処理)である。例えば、記憶部H14は、情報記憶部M2に示した情報を記憶する。記憶部H14の一例としては、ROM、RAM、ハードディスク等がある。
【0036】
プロセッサH15は、記憶部H14に記憶されるプログラムやデータを用いて、投資管理システム10〜CSDシステム60における各処理(例えば、取引確認部M1における処理)を制御する。プロセッサH15の一例としては、例えばCPUやMPU等がある。このプロセッサH15は、ROM等に記憶されるプログラムをRAMに展開して、各種処理に対応する各種プロセスを実行する。例えば、プロセッサH15は、後述する
図4〜
図6に示す各処理を実行するプロセスを動作させる。
【0037】
図4に従って、上記のように構成されたシステムを用いて、非居住者による証券取引を支援する場合の処理手順を説明する。ここで、海外居住者(投資家や証券会社等)が、海外運用会社を通じて、取引所(例えば、東京証券取引所)で取り扱われている国内証券の買取引を希望する場合を想定する。
【0038】
海外運用会社の投資管理システム10は、注文処理を実行する(ステップS101)。ここでは、投資管理システム10は、海外証券会社システム20に対して買注文情報を送信する。
【0039】
次に、海外証券会社システム20は、出来高通知処理を実行する(ステップS102)。具体的には、海外証券会社システム20は、注文に対する取引の出来高を通知する。
そして、投資管理システム10、海外証券会社システム20から取引情報を取得した照合機関システム100は、約定照合を行なう。そして、照合機関システム100は、投資管理システム10、海外証券会社システム20に対して、確認結果を送信する。これにより、投資管理システム10は、照合結果の取得処理(ステップS103)、海外証券会社システム20は、照合結果の取得処理(ステップS104)を実行する。
【0040】
約定照合ができた場合、投資管理システム10は、分散台帳への書込処理を実行する(ステップS105)。具体的には、投資管理システム10の取引確認部M1は、固定情報を記録した仮想通貨を生成する。ここでは、固定情報として、約定情報、参照ルート情報、承認ルート情報をキーにより復号できるように暗号化し、それぞれの空きエリアに記録した仮想通貨を生成する。更に、キーにより復号できるように暗号化した暗号化紐付け情報を生成し、各仮想通貨の空きエリアに記録する。紐付け情報の暗号化には、同じ番号が同じ暗号文に変換される決定的暗号を用いる。そして、取引確認部M1は、生成した仮想通貨を、情報記憶部M2の分散台帳に記録する。この情報記憶部M2の分散台帳に記録された情報は、他の情報記憶部M2の分散台帳においても共有される。
【0041】
次に、投資管理システム10は、関係者への通知処理を実行する(ステップS106)。具体的には、投資管理システム10は、参照ルート情報、承認ルート情報に記録された関係者システム(海外証券会社システム20〜CSDシステム60)に対して、紐付け情報、キー情報を通知する。各関係者システムは、投資管理システム10から取得した紐付け情報、キー情報を取引毎に記録する。
【0042】
そして、各関係者システムは、紐付け情報を用いて、自分の情報記憶部M2に記録された分散台帳において、今回の約定に関連する仮想通貨を特定し、現状を確認する。
投資管理システム10は、グローバルカストディアンシステム30に対して、約定連絡処理を実行する(ステップS107)。この約定連絡には、紐付け情報に関する情報を含める。
【0043】
この場合、グローバルカストディアンシステム30は、確認処理を実行する(ステップS108)。具体的には、グローバルカストディアンシステム30は、紐付け情報を用いて、自分の情報記憶部M2に記録された分散台帳において、今回の約定に関連する仮想通貨を特定し、現状を確認する。現状を確認できた場合、グローバルカストディアンシステム30は、カストディ顧客である海外証券会社の証券又は資金残高を仮押さえる。そして、確認オペレーションが行なわれた場合、グローバルカストディアンシステム30の取引確認部M1は、残高があることの確認情報をキー情報により暗号化した情報及び、約定に関連する仮想通貨と同じ暗号化紐付け情報を含めた仮想通貨を生成し、情報記憶部M2の分散台帳に記録する。この仮想通貨の本体部に、サブカストディアンシステム40のアドレスを設定することにより、決済指図を送信する。
【0044】
次に、サブカストディアンシステム40は、残高確認処理を実行する(ステップS109)。具体的には、紐付け情報を用いて、自分の情報記憶部M2に記録された分散台帳において、今回の約定に関連する仮想通貨を特定し、現状を確認する。現状を確認できた場合、サブカストディアンシステム40は、グローバルカストディアンの証券又は資金残高を仮押さえる。そして、確認オペレーションが行なわれた場合、サブカストディアンシステム40の取引確認部M1は、残高があることの確認情報、口座情報をキー情報により暗号化した情報及び同じ暗号化紐付け情報を含めた仮想通貨を生成し、情報記憶部M2の分散台帳に記録する。この仮想通貨の本体部に、CSDシステム60のアドレスを設定することにより、振替指図を送信する。
【0045】
また、照合完了情報を取得した海外証券会社システム20は、注文処理を実行する(ステップS110)。具体的には、国内証券会社システム50に対して、注文情報を送信する。この注文情報には、紐付け情報に関する情報を含める。
【0046】
海外証券会社システム20から注文情報を取得した国内証券会社システム50は、残高確認処理を実行する(ステップS111)。具体的には、紐付け情報を用いて、自分の情報記憶部M2に記録された分散台帳において、今回の約定に関連する仮想通貨を特定し、現状を確認する。現状を確認できた場合、国内証券会社システム50は、海外証券会社の証券又は資金残高を仮押さえる。そして、確認オペレーションが行なわれた場合、国内証券会社システム50の取引確認部M1は、残高があることの確認情報、口座情報をキー情報により暗号化した情報及び同じ暗号化紐付け情報を含めた仮想通貨を生成し、情報記憶部M2の分散台帳に記録する。
【0047】
そして、CSDシステム60は、状況確認処理を実行する(ステップS112)。具体的には、CSDシステム60は、紐付け情報を用いて、自分の情報記憶部M2に記録された分散台帳において、今回の約定に関連する仮想通貨を特定し、現状を確認する。ここでは、サブカストディアンにおける確認が記録された仮想通貨と、国内証券会社における確認が記録された仮想通貨とを確認する。現状を確認できた場合、CSDシステム60の取引確認部M1は、サブカストディアン、国内証券会社の状況確認情報をキー情報により暗号化した情報及び同じ暗号化紐付け情報を含めた仮想通貨を生成し、情報記憶部M2の分散台帳に記録する。
【0048】
次に、国内証券会社システム50は、振替指示処理を実行する(ステップS113)。具体的には、国内証券会社システム50は、紐付け情報を用いて、自分の情報記憶部M2に記録された分散台帳において、今回の約定に関連する仮想通貨を特定し、現状を確認する。指図内容が正当で残高があり、現状を確認できた場合、国内証券会社システム50は、残高を仮押える。そして、承認オペレーションが行なわれた場合、国内証券会社システム50の取引確認部M1は、完了情報をキー情報により暗号化した情報及び同じ暗号化紐付け情報を含めた仮想通貨を生成し、情報記憶部M2の分散台帳に記録する。
【0049】
次に、CSDシステム60は、指図突合処理を実行する(ステップS114)。具体的には、CSDシステム60は、国内証券会社の振替指示と当初指図とを照合する。証券国内会社の指図内容が正当で、残高がある場合には、CSDシステム60の取引確認部M1は、振替を指示するための完了情報をキー情報により暗号化した情報及び同じ暗号化紐付け情報を含めた仮想通貨を生成し、情報記憶部M2の分散台帳に記録する。
【0050】
ここで、不一致がある場合には、CSDシステム60は、再確認処理を実行する(ステップS115)。この処理については、
図6を用いて後述する。
そして、振替指示と当初指図とが一致している場合、CSDシステム60は、決済処理を実行する(ステップS116)。具体的には、CSDシステム60は、情報記憶部M2の分散台帳に記録されている仮想通貨に基づいて、参加者(サブカストディアン、国内証券会社)の口座間の残高振替をDVP(Delivery Versus Payment)により行なう。そして、CSDシステム60の取引確認部M1は、振替の完了情報、紐付け情報をキー情報により暗号化した情報及び同じ暗号化紐付け情報を含めた仮想通貨を生成し、情報記憶部M2の分散台帳に記録する。
【0051】
この場合、サブカストディアンシステム40は、仮想通貨の約定情報の決済金額について、グローバルカストディアンの資金口座からサブカストディアンの資金口座への振替を実行する。更に、グローバルカストディアンシステム30は、仮想通貨の約定情報の決済金額について、海外運用会社の資金口座からグローバルカストディアンの資金口座への振替を実行する。また、国内証券会社システム50は、仮想通貨の約定情報の決済金額について、国内証券会社の資金口座から海外証券会社の資金口座への振替を実行する。そして、海外証券会社システム20は、仮想通貨の約定情報の決済金額について、海外証券会社の口座から海外運用会社の口座への振替を実行する。
【0052】
(分散台帳による現状確認処理)
図5を用いて、分散台帳による現状確認処理を説明する。この処理は、各関係者システムにおける取引確認部M1により実行される。
【0053】
まず、取引確認部M1は、確認対象の紐付け情報の指定処理を実行する(ステップS201)。具体的には、取引確認部M1は、各関係者システムにおいてオペレータにより入力された確認対象の取引の紐付け情報を取得する。
次に、取引確認部M1は、暗号化紐付け情報の生成処理を実行する(ステップS202)。具体的には、取引確認部M1は、紐付け情報に関連付けられたキー情報を特定する。そして、取引確認部M1は、キー情報を用いて、紐付け情報を暗号化した暗号化紐付け情報を生成する。
【0054】
次に、取引確認部M1は、暗号化紐付け情報を用いて一連の仮想通貨を検索、抽出処理を実行する(ステップS203)。具体的には、取引確認部M1は、生成した暗号化紐付け情報が記録されている仮想通貨を、情報記憶部M2の分散台帳において検索する。そして、取引確認部M1は、暗号化紐付け情報が記録されているすべての仮想通貨を分散台帳から抽出する。
【0055】
次に、取引確認部M1は、取得した仮想通貨を、キー情報を用いて復号処理を実行する(ステップS204)。具体的には、取引確認部M1は、キー情報を用いて、仮想通貨の空きエリアに記録されている情報を復号する。
【0056】
次に、取引確認部M1は、復号した仮想通貨を用いて一連のトランザクションの特定処理を実行する(ステップS205)。具体的には、取引確認部M1は、復号した情報に基づいて、紐付け情報で関連付けられた取引における一連のトランザクションを取得する。
【0057】
そして、取引確認部M1は、一連のトランザクションにより取引内容の確認処理を実行する(ステップS206)。具体的には、一連のトランザクションにおいて、不整合がないかどうかを確認する。そして、取引確認部M1は、確認結果(不整合の有無)をディスプレイに出力する。
【0058】
(不一致がある場合の再確認処理)
次に、
図6を用いて、振替指示と当初指図との突合において不一致がある場合の再確認処理(ステップS115)を説明する。
【0059】
不一致を検知した場合(ステップS301)、CSDシステム60は、差戻し処理を実行する(ステップS302)。具体的には、CSDシステム60は、差戻し情報とともに、差戻し理由を入力する。この場合、CSDシステム60の取引確認部M1は、差し戻し情報及び差し戻し理由をキー情報により暗号化した情報及び同じ暗号化紐付け情報を含めた仮想通貨を生成し、情報記憶部M2の分散台帳に記録する。
【0060】
次に、国内証券会社システム50は、再記帳処理を実行する(ステップS303)。具体的には、国内証券会社システム50は、振替指示のために、残高を仮押さえる。そして、国内証券会社システム50の取引確認部M1は、完了情報をキー情報により暗号化した情報及び同じ暗号化紐付け情報を含めた仮想通貨を生成し、情報記憶部M2の分散台帳に記録する。
次に、CSDシステム60は、ステップS114と同様に、再度、指図突合処理を実行する(ステップS304)。
【0061】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、関係者システムは、分散台帳への書込処理を実行する。この分散台帳には、約定情報が含まれる仮想通貨が記録される。更に、確認オペレーションや承認オペレーションが行なわれた場合にも、確認情報や承認情報が記録された仮想通貨が分散台帳に記録される。そして、分散台帳において、紐付け情報を用いることにより、取引の決済関係者全員が、約定内容や承認や確認について、一連のトランザクションを確認することができる。そして、ブロックチェーンを用いた分散台帳技術により、約定内容が不変で、指図の照合が容易であり、迅速で効率的なカストディサービスを提供することができる。
【0062】
(2)本実施形態では、カストディ支援のために、仮想通貨として、ビットコインのブロックチェーンを利用するオープンアセットプロトコル(カラードコイン)を用いる。カストディ支援のための専用システムを構築する場合と異なり、既存の仮想通貨を用いることにより、システム構築のコストや時間を削減できるとともに、広く流通している基盤システムを利用することができる。そして、仮に改ざん等の不正が行なわれた場合にも決済関係者全員で不正を即時に認識することができる。
【0063】
(3)本実施形態では、約定時には、参照ルート情報、承認ルート情報がそれぞれ記録された仮想通貨を生成する。これにより、約定入力時に決済ルートを指定し、指定されていない外部者は決済フローから排除される。更に、仮想通貨の空きエリアに記録された紐付け情報や約定内容、口座情報等の情報は暗号化される。これにより、決済関係者以外の外部者は解読できず、セキュリティを確保することができる。
【0064】
(4)本実施形態では、CSDシステム60は、再確認処理を実行する(ステップS115)。この場合、CSDシステム60の取引確認部M1は、差し戻し情報及び差し戻し理由を含めた仮想通貨を生成し、情報記憶部M2の分散台帳に記録する。これにより、決済関係者全員で差し戻し理由を共有することができる。
【0065】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、仮想通貨として、ビットコインのブロックチェーンを利用するオープンアセットプロトコル(カラードコイン)を用いる場合を想定した。仮想通貨は、カラードコインに限定されるものではない。ビットコイン以外のブロックチェーン等を応用した、通貨以外の役割・機能を持たすことを主目的とした基盤システムを利用することができる。
【0066】
・上記実施形態では、暗号化紐付け情報を仮想通貨の空きエリアに記録する。紐づけ番号の暗号化には、同一の番号が同一の暗号文になるような決定的暗号を用いている。これに代えて、紐付け情報を暗号化せずに仮想通貨の空きエリアに記録するようにしてもよい。この場合にも、約定情報や口座情報に関する情報は暗号化しておく。そして、確認対象の紐付け情報が指定された場合、この紐付け情報が記録された一連の仮想通貨を、情報記憶部M2の分散台帳から取得する。そして、仮想通貨に記録されている情報を、キー情報を用いて復号する。これにより、暗号化されていない紐付け情報を用いて、効率的に一連の仮想通貨を抽出し、改ざんの有無を確認することができる。更に、約定情報や口座情報に関する情報は暗号化されているため、外部者は解読できず、取引に関する具体的内容についてのセキュリティを担保することができる。
【0067】
・上記実施形態では、仮想通貨の空きエリアに紐付け情報に関する情報を記録する。紐付け情報は、複数の仮想通貨を抽出できる情報であればよく、番号、英文字、記号等を用いることができる。
・上記実施形態では、約定時に、固定情報を三分割して、約定情報、参照ルート情報、承認ルート情報がそれぞれ記録された3個の仮想通貨を生成する。仮想通貨の個数は3個に限定されるものではなく、空きエリアの容量に応じて決定すればよい。
【0068】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(a)仮想通貨としてカラードコインを用いることを特徴とするカストディ支援システム及びカストディ支援方法。
これにより、カラードコインを用いて、ブロックチェーンにより仮想通貨の正当性を確認して、カストディサービスを支援することができる。
【0069】
(b)カストディアンシステムは、グローバルカストディアンシステムとサブカストディアンシステムとを含んでいることを特徴とするカストディ支援システム及びカストディ支援方法。
これにより、グローバルカストディアンとサブカストディアンにより、カストディサービスを支援することができる。
【解決手段】カストディ支援システムにおいては、分散台帳にアクセス可能な投資管理システム10、海外証券会社システム20、サブカストディアンシステム40、国内証券会社システム50、CSDシステム60が、ブロックチェーンにより仮想通貨の正当性を確認できる基盤システムを利用する。そして、投資家と海外証券会社との間で国内証券を取引対象とする取引が約定された場合、投資管理システム10が、約定情報及び紐付け情報を記録した仮想通貨を分散台帳に登録する。そして、CSDシステム60は、国内証券会社システム50が記録した仮想通貨に基づいて取引内容を確認し、証券取引の決済を行ない、取引対象の振替完了情報及び紐付け情報(取引識別情報)を記録した仮想通貨を分散台帳に登録する。