(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283729
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】水溶性コポリマーを含む水性組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 33/14 20060101AFI20180208BHJP
C08F 220/10 20060101ALI20180208BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20180208BHJP
C09D 133/14 20060101ALN20180208BHJP
【FI】
C08L33/14
C08F220/10
C08F290/06
!C09D133/14
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-180297(P2016-180297)
(22)【出願日】2016年9月15日
(62)【分割の表示】特願2012-146185(P2012-146185)の分割
【原出願日】2012年6月29日
(65)【公開番号】特開2017-31421(P2017-31421A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2016年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】竹山 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】加治 恵
(72)【発明者】
【氏名】露木 萌
(72)【発明者】
【氏名】仁王 厚志
(72)【発明者】
【氏名】井柳 宏一
【審査官】
小出 直也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−087234(JP,A)
【文献】
特開2001−200009(JP,A)
【文献】
特開平10−309455(JP,A)
【文献】
特開2004−002733(JP,A)
【文献】
特開2011−127029(JP,A)
【文献】
特開2006−276558(JP,A)
【文献】
特開2014−009187(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/136611(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/129058(WO,A1)
【文献】
特開2006−233131(JP,A)
【文献】
特開2008−183541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される疎水性モノマーから誘導される一種または二種以上の構成単位を全構成単位の1〜35質量%、下記A群からなる親水性モノマーから誘導される一種または二種以上の構成単位を30〜95質量%含有し、他の構成単位を有していてもよい、水溶性コポリマー
(但し、架橋型の形態を除く)を含む水性組成物。
一般式(I)
【化1】
(一般式(I)中R
1は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、R
2は炭素数13〜30の環構造を含まない分岐状炭化水素基、または、環構造を含まない、2つ以上の分岐を有する炭素数6〜12の炭化水素基を表す。)
A群:重合性カルボン酸またはその塩、下記一般式
(III)で表される親水性モノマー
一般式
(III)
【化2】
(一般式(III)中R6は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、R7は水素原子、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素数1〜14の脂肪族炭化水素基又は炭素数1〜12のアシル基を表す。mは6〜40の整数を表す。)
【請求項2】
重合性カルボン酸がアクリル酸及び/またはメタクリル酸であることを特徴とする請求項1記載の水性組成物。
【請求項3】
下記一般式(I)で表される疎水性モノマーの一種または二種以上が全モノマーの1〜35質量%、下記A群からなる親水性モノマーの一種または二種以上が全モノマーの30〜95質量%、必要に応じて、前記モノマーと重合可能な他のモノマーからなる混合モノマーを、緩衝作用を有する水溶液と25℃で水と任意の割合で混和する水性溶媒との混合溶媒中で、ラジカル重合する工程を含むことを特徴とする、水溶性コポリマー
(但し、架橋型の形態を除く)を含む水性組成物の製造方法。
一般式(I)
【化3】
(一般式(I)中R
1は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、R
2は炭素数13〜30の環構造を含まない分岐状炭化水素基、または、環構造を含まない、2つ以上の分岐を有する炭素数6〜12の炭化水素基を表す。)
A群:重合性カルボン酸またはその塩、下記一般式
(III)で表される親水性モノマー
一般式
(III)
【化4】
(一般式(III)中R6は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、R7は水素原子、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素数1〜14の脂肪族炭化水素基又は炭素数1〜12のアシル基を表す。mは6〜40の整数を表す。)
【請求項4】
重合性カルボン酸がアクリル酸及び/またはメタクリル酸であることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
水性溶媒がメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコールらなる群から選択されることを特徴とする請求項3又は4記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な水溶性コポリマー、更に詳細には、水性塗料等の水を主溶媒とする水性組成物用の被膜剤として好適な新規な水溶性コポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水性塗料等の、被膜剤を含有し、水を主溶媒とする水性組成物はVOC等の環境問題からその重要性がますます増してきている。これら、水性組成物に配合する被膜剤としては、水性ポリマー、特に、合成が容易で、安価で安全性に富むことから、アクリル系のポリマー、特に、アクリル系ポリマー微粒子が、水性溶媒に分散したアクリルエマルションが汎用されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。しかしながら、これらの技術に於いては、被膜剤が組成物の主溶媒に不溶のため、溶媒が蒸発し、被膜が形成される過程で、被膜剤が部分的に固化していわゆる“ブツ”が生じるという課題が発生する場合があった。
【0003】
これら課題を解決するため、アクリル樹脂エマルション、脂溶性アクリル樹脂、ノニオン変性オレフィン樹脂を併用する方法が提案されている。(例えば特許文献3参照)。しかしこの技術では、形成した被膜からの水等の溶媒の蒸散に時間を要する、形成された被膜の柔軟性が充分でなく、柔軟な基体へ塗布した場合に塗膜の耐久性に欠ける等の課題が生じる場合があった。
【0004】
一方、水溶性の架橋型アクリルポリマーを被膜剤として用いる水性ポリマー組成物によって、柔軟性の高い被膜を形成させる試みることも可能である(例えば、特許文献4参照)。この技術に於いては、被膜剤の溶媒への溶解性が高く、前記のような被膜での“ブツ”の発生は見られず、柔軟な被膜が得られるが、被膜の耐水性にやや劣る、被膜からの水等の溶媒の蒸散に時間を要する等の課題が生じる場合があった。これら技術の改良策として、フッ素置換基を有するアクリル系モノマーを重合させた水性ポリマーを水性組成物用の被膜剤として用いることも可能である(例えば、特許文献5及び特許文献6参照)。しかしながら、これらの、技術に於いては、水性組成物の組成によっては、被膜剤と組成物の他成分との親和性の低さから、被膜に“ブツ”が発生する、被膜の柔軟性が低下する等の課題が生じる場合があった。
【0005】
このような、状況から、水性塗料等の水性組成物への配合が容易で、かつ、速乾性等、使用性に優れ、被膜の柔軟性が高く、耐水性が高い等の高機能を与える被膜剤の開発が望まれていた。
【0006】
一方、特定の分岐構造のアルキル基を有するアクリルエステル系モノマーと特定の構造を有する親水性アクリル系モノマーを一定比率で重合させたコポリマーが水性組成物の被膜剤として好適であり、かつ、速乾性、柔軟性及び耐水性に優れた被膜を与えることは知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】再公表W07/013558号公報
【特許文献2】再公表W06/054611号公報
【特許文献3】特開2012−7113号公報
【特許文献4】特開2005−213448号公報
【特許文献5】特開2005−213485号公報
【特許文献6】特開平10−101742号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、速乾性に優れ、柔軟で耐水性に優れた被膜を与える、水性組成物に使用するのに好適な被膜剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような状況を鑑み、本発明者等は、速乾性に優れ、柔軟で耐水性に優れた被膜を与える、水溶性コポリマーを求めて鋭意研究した結果、疎水性の、特定の分岐構造のアルキル基を有するアクリルエステル系モノマーと特定の構造を有する親水性アクリル系モノマーを一定比率で重合させたコポリマーが、水溶性に優れ、速乾性で、柔軟性、耐水性に優れる被膜を与えることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)下記一般式(I)で表される疎水性モノマーから誘導される一種または二種以上の構成単位を全構成単位の1〜35質量%、下記A群からなる親水性モノマーから誘導される一種または二種以上の構成単位を30〜95質量%含有し、他の構成単位を有していてもよい水溶性コポリマーを含む水性組成物。
一般式(I)
【化1】
(一般式(I)中R
1は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、R
2は炭素数13〜30の環構造を含まない分岐状炭化水素基、または、環構造を含まない、2つ以上の分岐を有する炭素数6〜12の炭化水素基を表す。)
A群:重合性カルボン酸またはその塩、下記一般式(II)で表される親水性モノマー
一般式(II)
【化2】
(一般式(II)中R
3は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、R
4は水酸基を有していてもよい炭素数2〜4のアルキレン基を表し、R
5は水素原子、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素数1〜14の脂肪族炭化水素基又は炭素数1〜12のアシル基を表す。nは6〜40の整数を表す。)
(2)前記A群中の一般式(II)で表される親水性モノマーが、下記一般式(III)で表される親水性モノマーであることを特徴とする(1)記載の水性組成物。
一般式(III)
【化3】
(一般式(III)中R
6は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、R
7は水素原子、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素数1〜14の脂肪族炭化水素基又は炭素数1〜12のアシル基を表す。mは6〜40の整数を表す。)
(3)重合性カルボン酸がアクリル酸及び/またはメタクリル酸であることを特徴とする(1)または(2)記載の水性組成物。
(4)(1)〜(3)の何れかに記載の水性組成物からなる被膜剤。
(5)下記一般式(I)で表される疎水性モノマーの一種または二種以上が全モノマーの1〜35質量%、下記A群からなる親水性モノマーの一種または二種以上が全モノマーの30〜95質量%、必要に応じて、前記モノマーと重合可能な他のモノマーからなる混合モノマーを、緩衝作用を有する水溶液と25℃で水と任意の割合で混和する水性溶媒との混合溶媒中で、ラジカル重合する工程を含むことを特徴とする、水溶性コポリマーを含む水性組成物の製造方法。
一般式(I)
【化4】
(一般式(I)中R
1は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、R
2は炭素数13〜30の環構造を含まない分岐状炭化水素基、または、環構造を含まない、2つ以上の分岐を有する炭素数6〜12の炭化水素基を表す。)
A群:重合性カルボン酸またはその塩、下記一般式(II)で表される親水性モノマー
一般式(II)
【化5】
(一般式(II)中R
3は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、R
4は水酸基を有していてもよい炭素数2〜4のアルキレン基を表し、R
5は水素原子、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素数1〜14の脂肪族炭化水素基又は炭素数1〜12のアシル基を表す。nは6〜40の整数を表す。)
(6)前記A群中の一般式(II)で表される親水性モノマーが、下記一般式(III)で表される親水性モノマーであることを特徴とする(5)記載の製造方法。
一般式(III)
【化6】
(一般式(III)中R
6は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、R
7は水素原子、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素数1〜14の脂肪族炭化水素基又は炭素数1〜12のアシル基を表す。mは6〜40の整数を表す。)
(7)重合性カルボン酸がアクリル酸及び/またはメタクリル酸であることを特徴とする(5)または(6)記載の製造方法。
(8)水性溶媒がメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコールからなる群から選択されることを特徴とする(5)〜(7)の何れか記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、速乾性に優れ、柔軟で耐水性に優れた被膜を与える、水性組成物に使用するのに好適な被膜剤を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
<1> 本発明の水溶性コポリマーの必須構成単位である疎水性モノマーから誘導される構成単位。
本発明の水溶性コポリマーは下記一般式(I)で表される疎水性モノマーから誘導される構成単位(以下、単に、「構成単位I」と呼ぶこともある)の一種または二種以上を必須構成単位として含有する。 なお、本発明において、「モノマーから誘導される構成単位」とは、対応するモノマーが有する炭素−炭素不飽和結合が重合反応によって開裂して形成される構成単位を言う。
一般式(I)
【化7】
(一般式(I)中R
1は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、R
2は炭素数13〜30の環構造を含まない分岐状炭化水素基または、環構造を含まない、2つ以上の分岐を有する炭素数6〜12の炭化水素基を表す。)
【0012】
ここで、R
1で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基等が例示できる。本発明において、R
1は水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0013】
また、R
2で表される炭素数13〜30の環構造を含まない分岐状炭化水素基としては、1−メチルドデカニル基、11−メチルドデカニル基、3−エチルウンデカニル基、3−エチル−4,5,6−トリメチルオクチル基、1−メチルトリデカニル基、1−ヘキシルオクチル基、2−ブチルデカニル基、2−ヘキシルオクチル基、4−エチル−1−イソブチルオクチル基、1−メチルペンタデカニル基、2−ヘキシルデカニル基、2−オクチルデカニル基、2−ヘキシルドデカニル基、16−メチルヘプタデカニル基、9−メチルヘプタデカニル基、7−メチル−2−(3−メチルヘキシル)デカニル基、3,7,11,15−テトラ−メチルヘキサデカニル基、2−オクチルドデカニル基、2−デシルテトラデカニル基、2−ドデシルヘキサデカニル基等を例示することができる。
【0014】
また、R
2で表される、環構造を含まない、2つ以上の分岐を有する炭素数6〜12の炭化水素基としては2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、1,1−ジメチルペンタニル基、1−イソプロピルブチル基、1−イソプロピル−2−メチルプロピル基、1,1−ジエチルプロピル基、1−エチル−1−イソプロピルプロピル基、2−エチル−4−メチルペンチル基、1−プロピル−2,2−ジメチルプロピル基、1,1、2−トリメチル−ペンチル基、1−イソプロピル−3−メチルブチル基、1,2−ジメチル−1−エチルブチル基、1,3−ジメチル−1−エチルブチル基、1−エチル−1−イソプロピル−プロピル基、1,1−ジメチルヘキシル基、1−メチル−1−エチルペンチル基、1−メチル−1−プロピルブチル基、1,4―ジメチルヘキシル基、1−エチル−3―メチルペンチル基、1,5―ジメチルヘキシル基、1−エチル−6−メチルヘプチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、1,2−ジメチル−1−イソプロピルプロピル基、3−メチル−1−(2,2−ジメチルエチル)ブチル基、1−イソプロピルヘキシル基、3.5.5−トリメチルヘキシル基、2−イソプロピル−5−メチルヘキシル基、1,5−ジメチル−1−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、2,4,5−トリメチルヘプチル基、2,4,6−トリメチルヘプチル基、3,5−ジメチル−1−(2,2−ジメチルエチル)ヘキシル基等を例示することができる。
【0015】
本発明の水溶性コポリマーに含まれる構成単位Iは1種のみでもよいが、上記一般式(I)を満たすものであれば2種以上の構成単位Iを組み合わせて含有していてもよい。
【0016】
本発明の水溶性コポリマーにおける、構成単位Iの全構成単位に占める割合は、1〜35質量%、好ましくは、5〜25質量%である。下限以下では、得られる水溶性コポリマーの与える被膜の速乾性及び柔軟性が不充分な場合があり好ましくない。また、上限以上では得られるコポリマーの水への溶解性が著しく低下する場合があり、好ましくない。
【0017】
一般式(I)で表される疎水性モノマーは常法によって合成することができる。例えば、該当するアルコールと(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸無水物又は(メタ)アクリル酸クロライドとのエステル化反応により、容易に合成することが可能である。以下、一般式(I)で表される疎水性モノマーの製造例を示す。
【0018】
<製造例1>
攪拌装置を備えた反応容器中で、3,3−ジメチル−2−ブタノール(東京化成工業(株)製)20.4g(0.2モル)、トリエチルアミン50.0gをテトラヒドロフラン500mlに溶解した。得られた溶液を氷冷、攪拌しながら、酸クロライドとして、アクリル酸クロライド(東京化成工業(株)製)18.1gをテトラヒドロフラン100mlに溶解してなる溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、生成した白色沈殿を濾過し、濾液からロータリーエバポレーターを用いてテトラヒドロフラン及びトリエチルアミンを除去して生成物を得た。NMR測定により、得られた化合物が、一般式(IV)で表される、1、2,2−トリメチルプロピルアクリレートであることが確認された。
一般式(IV)
【化8】
【0019】
<製造例2〜6>
製造例1におけるアルコール及び酸クロライドを表1に示すように変更した以外は、上記製造例1と同様の操作を行って、一般式(I)で表される疎水性モノマーを調製した。得られた疎水性モノマーを表1及び一般式(V)〜(IX)に示す。
【0020】
【表1】
* 1)東京化成工業(株)製
* 2)東京化成工業(株)製
* 3)「ノナノール」協和発酵ケミカル(株)製
* 4)東京化成工業(株)製
* 5)「リソノール16SP」高級アルコール工業(株)製
* 6)「ファインオキソコール(登録商標) 180」日産化学工業(株)製
* 7)「リソノール24SP」高級アルコール工業(株)製
【0021】
製造例2の化合物
一般式(V)
【化9】
【0022】
製造例3の化合物
一般式(VI)
【化10】
【0023】
製造例4の化合物
一般式(VII)
【化11】
【0024】
製造例5の化合物
一般式(VIII)
【化12】
【0025】
製造例6の化合物
一般式(IX)
【化13】
【0026】
<2> 本発明の水溶性コポリマーの必須構成単位である親水製モノマーから誘導される構成単位。
本発明の水溶性コポリマーは重合性カルボン酸、その塩又は下記一般式(II)で表されるモノマーからなる群から選択される親水性モノマーから誘導される構成単位の一種または二種以上を必須構成単位として含有する。
一般式(II)
【化14】
(一般式(II)中R
3は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、R
4は水酸基を有していてもよい炭素数2〜4のアルキレン基を表し、R
5は水素原子、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素数1〜14の脂肪族炭化水素基又は炭素数1〜12のアシル基を表す。nは6〜40の整数を表す。)
【0027】
重合性カルボン酸又はその塩としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸及びそのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩等が例示できる。これらの中では、重合性が高いことから、アクリル酸、メタクリル酸及びその塩が特に好ましい。本発明の水溶性コポリマーに重合性のカルボン酸の塩から誘導される構成単位を導入する場合は重合性カルボン酸を予め塩となし、重合反応を行っても良いし、重合反応により、重合性カルボン酸から誘導される構成単位をコポリマーに誘導した後、塩基により中和して塩となしてもよい。
【0028】
一般式(II)においてR
3で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、1−メチルエチル基、シクロプロピル基が例示できる。本発明において、R
3は水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0029】
また、R
4で表されるアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、2−ヒドロキシプロピレン基、1−ヒドロキシ−2−メチルエチレン基、2−ヒドロキシ−1−メチルエチレン基などが例示できるが、これらのうち、好ましくはエチレン基又はプロピレン基であり、より好ましくはエチレン基である。
【0030】
また、R
5で表される基のうち、炭素数6〜10の芳香族基としては、フェニル基、ベンジル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基等が例示でき、炭素数1〜14の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ターシャリーブチル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、オクチル基、2−エチルへキシル基、ラウリル基などが好適に例示でき、炭素数1〜12のアシル基としては、フォルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、ラウロイル基などが好適に例示できる。これらのうち、R
5で表される基として好ましくは炭素数1〜14の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1〜12のアルキル基である。
【0031】
さらに、一般式(II)におけるnは6〜40の数値範囲であることが重要である。本発明においてnが上記範囲である構成単位(II)を水性コポリマーに導入することにより、速乾性に優れた被膜を与え、かつ、水への溶解性に優れる水性コポリマーを製造することができる。nが6未満の場合は得られるコポリマーの水溶性が著しく低下する場合があり、好ましくない。反対に、nが40より大きすぎると水溶性コポリマーの形成する被膜からの水の蒸散速度が低下する場合があり、好ましくない。
【0032】
上記一般式(II)で表されるモノマーのうち、R
4がプロピレン基であるモノマーとして具体的には、ポリプロピレングリコール(9)モノアクリレート、ポリプロピレングリコール(13)モノアクリレート、ポリプロピレングリコール(9)モノメタクリレート、ポリプロピレングリコール(13)モノメタクリレート等が挙げられる。なお、括弧内の数字はnを表す。これらのポリマーの多くは市販品として入手可能である。これら市販品としては、具体的には、商品名「ブレンマー」AP−400、AP−550、AP−800、PP−500、PP−800(いずれも日本油脂(株)製)等が例示できる。なお、R
4がエチレン基であるモノマーの具体例は後述する。
【0033】
上記一般式(II)で表される親水性モノマーから誘導される構成単位の中でも特に好ましいものとして、下記一般式(III)で表される親水性モノマーから誘導される構成単位が挙げられる。
一般式(III)
【化15】
(一般式(III)中R
6は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、R
7は水素原子、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素数1〜14の脂肪族炭化水素基又は炭素数1〜12のアシル基を表す。mは6〜40の整数を表す。)
【0034】
このような一般式(III)で表されるモノマーを具体的に例示すれば、ポリエチレングリコール(10)モノアクリレート、ポリエチレングリコール(8)モノメタクリレート、ポリエチレングリコール(23)モノアクリレート、ポリエチレングリコール(23)モノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコール(9)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(9)メタクリレート、メトキシポリエチレングリコール(23)メタクリレート、オレイロキシポリエチレングリコール(18)メタクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(18)アクリレート、ラウロイロキシポリエチレングリコール(10)メタクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール(30)モノメタクリレート等が挙げられる。なお、括弧内の数字はmの値を示す。
【0035】
なお、一般式(II)において述べたように、一般式(III)においても同様に、速乾性に優れた被膜を与え、かつ、水への溶解性に優れる水性コポリマーを製造するためにはmは6〜40の数値範囲であることが重要である。
【0036】
これら上記の親水性モノマーは、対応するポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノエーテル、ポリエチレングリコールモノエステルとアクリル酸又はメタクリル酸のクロライド又は無水物とのエステル化反応により高収率で得ることができる。また、既に市販品も多数存在するので、かかる市販品を利用することも可能である。このような市販品としては、具体的に、商品名ブレンマー、AE−400、PE−350、AME−400、PME−400、PME−1000、ALE−800、PSE−1300等(いずれも日本油脂(株)製)等が例示できる。
【0037】
本発明の水溶性コポリマーに含まれる親水性のモノマーから誘導される構成単位は1種のみでもよいが、前述の条件を満たすものであれば2種以上の構成単位を組み合わせて含有していてもよい。
【0038】
本発明の水溶性コポリマーにおける、親水性のモノマーから誘導される構成単位の全構成単位に占める割合は、30〜95質量%、好ましくは、40〜90質量%である。下限以下では、得られるコポリマーの水への溶解性が著しく低下する場合があり、好ましくない。また、上限以上では得られる水溶性コポリマーの与える被膜の速乾性及び柔軟性が不充分な場合があり好ましくない。
【0039】
<3> 本発明の水溶性コポリマーに含まれうるその他の任意の構成単位
本発明における水溶性コポリマーは、上記の必須構成単位I及び親水性モノマーから誘導される構成単位以外に、通常共重合体で使用されるモノマーから誘導される単位を、発明の効果を損なわない範囲で任意の構成単位として有することができる。かかる任意の構成単位としては、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、アクリル酸モノアルキルアミド、メタクリル酸モノアルキルアミド等の(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の一般式(I)で表される疎水性モノマーに含まれない(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸の環状アルキルエステル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル等のモノマーから誘導される単位が例示できる。これらのモノマーの殆どは市販品として入手可能である。
【0040】
<4>本発明の水溶性コポリマー
本発明の水溶性コポリマーは、上記構成単位I及び親水性のモノマーから誘導される構成単位、並びに必要に応じて任意の構成単位を、その骨格中に含有する共重合体である。
また、本発明の水溶性コポリマーは通常はその構成単位がランダムに結合したランダム共重合体であるが、ブロック共重合体又はグラフト共重合体であってもよい。
【0041】
本発明での水溶性コポリマーとは25℃において、コポリマーの20質量%水溶液の透過率が90%以上あるコポリマーと定義される。
【0042】
本発明の水溶性コポリマーの製造方法は特に限定されないが、例えば各構成単位を誘導するモノマーを溶媒中で混合し、アクリル系モノマーの重合で通常用いられる方法に従って重合反応を行う方法により得ることができる。それらの重合方法の中でも、重合反応後の残存モノマーの量が少ないことから、前記モノマー混合物を、緩衝作用を有する水溶液と25℃で水と任意の割合で混和する水性溶媒との混合溶媒中で、ラジカル重合する重合方法が特に好ましい。この方法で使用する緩衝作用を有する水溶液としては、通常使用される緩衝溶液であれば特に限定されないが、具体的には、塩化カリウム−塩酸溶液、フタル酸水素カリウム−塩酸溶液、リン酸二水素カリウム−リン酸水素二ナトリウム溶液、クエン酸水素カリウム−クエン酸溶液、炭酸ナトリウム−炭酸水素ナトリウム酸溶液等が例示できる。また、開始剤のイオンと緩衝溶液を形成するような塩類、酸或いは塩基類の水溶液を用い、開始剤を添加した時点で緩衝溶液をとなしてもよい。さらに、この方法で用いる、25℃で水と任意の割合で混和する水性溶媒としては、具体的にはメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜3のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコール等のジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル、テトラヒドロフラン等が例示できる。これらの水性溶媒の中では、重合反応が進行しやすいことから、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等の炭素数1〜3のアルコールが特に好ましい。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明がこれら実施例にのみ限定されないことは言うまでもない。
【0044】
<実施例1>
窒素導入管、冷却器及び攪拌装置を備えたフラスコに、製造例5の疎水性モノマー30.0g、メトキシポリエチレングリコール(23)メタクリレート(日本油脂(株)製、商品名「ブレンマーPME−1000」)90.0g、イソプロピルアルコール300ml、りん酸塩緩衝溶液(pH6.8)(ナカライテスク(株)製)300mlを採り攪拌混合した。攪拌を続けながら、1時間窒素ガス置換を行った。これに過硫酸アンモニウム2.0gを水20mlに溶解した溶液を加え、更に攪拌を続けながら、65℃で16時間反応を行った。反応終了後、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを7.0に調整し、ロータリーエバポレーターでイソプロピルアルコールを除去し、本発明の水溶性コポリマー1の水溶液を得た。
【0045】
<実施例2>
窒素導入管、冷却器及び攪拌装置を備えたフラスコに、製造例2の疎水性モノマー36.0g、アクリル酸(東京化成工業(株)製)84.0g、エチルアルコール300mlと0.05M炭酸ナトリウム水溶液30ml及び0.1M炭酸水素ナトリウム溶液270mlを採り攪拌混合した。攪拌を続けながら、1時間窒素ガス置換を行った。これに過硫酸アンモニウム2.0gを水20mlに溶解した溶液を加え、更に攪拌を続けながら、60℃で20時間反応を行った。反応終了後、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを7.0に調整し、ロータリーエバポレーターでエチルアルコールを除去し、本発明の水溶性コポリマー2の水溶液を得た。
【0046】
<実施例3>
窒素導入管、冷却器及び攪拌装置を備えたフラスコに、製造例3の疎水性モノマー24.
0g、メトキシポリエチレングリコール(9)メタクリレート(日本油脂(株)製、商品名「ブレンマーPME−400」)72.0g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(東京化成工業(株)製)24.0g、イソプロピルアルコール300ml、0.2M塩化カリウム水溶液75ml、0.2N塩酸15.8ml及び水209.2mlを採り攪拌混合した。攪拌を続けながら、1時間窒素ガス置換を行った。これに過硫酸アンモニウム2.0gを水20mlに溶解した溶液を加え、更に攪拌を続けながら、70℃で14時間反応を行った。反応終了後、水酸化カリウム水溶液を用いてpHを7.0に調整し、ロータリーエバポレーターでイソプロピルアルコールを除去し、本発明の水溶性コポリマー3の水溶液を得た。
【0047】
<実施例4>
窒素導入管、冷却器及び攪拌装置を備えたフラスコに、製造例4の疎水性モノマー9.0g、ポリエチレングリコール(10)モノアクリレート(日本油脂(株)製、商品名「ブレンマーAE−400」)45.0g、メチルメタクリレート(東京化成工業(株)製)6.0g、エチレングリコールモノメチルエーテル180ml及び0.002N塩酸120mを採り攪拌混合した。攪拌を続けながら、1時間窒素ガス置換を行った。これに過硫酸アンモニウム1.0gを水10mlに溶解した溶液を加え、更に攪拌を続けながら、65℃で16時間反応を行った。反応終了後、水酸化カリウム水溶液を用いてpHを7.0に調整し、ロータリーエバポレーターでエチレングリコールモノメチルエーテルを除去し、本発明の水溶性コポリマー4の水溶液を得た。
【0048】
<実施例5>
窒素導入管、冷却器及び攪拌装置を備えたフラスコに、製造例6の疎水性モノマー24.0g、メトキシポリエチレングリコール(9)アクリレート(日本油脂(株)製、商品名「ブレンマーAME−400」)90.0g、2−ヒドロキシエチルアクリレート(東京化成工業(株)製)6.0g、イソプロピルアルコール300ml、りん酸塩緩衝溶液(pH6.8)(ナカライテスク(株)製)300mlを採り攪拌混合した。攪拌を続けながら、1時間窒素ガス置換を行った。これに過硫酸アンモニウム2.0gを水20mlに溶解した溶液を加え、更に攪拌を続けながら、65℃で16時間反応を行った。反応終了後、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを7.0に調整し、ロータリーエバポレーターでイソプロピルアルコールを除去し、本発明の水溶性コポリマー5の水溶液を得た。
【0049】
<実施例6>
窒素導入管、冷却器及び攪拌装置を備えたフラスコに、製造例1の疎水性モノマー15.0g、ポリエチレングリコール(8)モノメタクリレート(日本油脂(株)製、商品名「ブレンマーPE−350」)45.0g、酢酸エチル180ml及びエチルアルコールを採り攪拌混合した。攪拌を続けながら、1時間窒素ガス置換を行った。これに過酸化ベンゾイル0.5gをエチルアルコール10mlに溶解した溶液を加え、更に攪拌を続けながら、8時間、リフラックスを行った。反応終了後、水300mlを添加し、ロータリーエバポレーターで酢酸エチル及びエチルアルコールを除去し、本発明の水溶性コポリマー6の水溶液を得た。
【0050】
<比較例1>
窒素導入管、冷却器及び攪拌装置を備えたフラスコに、2−エチルへキシルメタクリレート(東京化成工業(株)製)30.0g、メトキシポリエチレングリコール(23)メタクリレート(日本油脂(株)製、商品名「ブレンマーPME−1000」)90.0g、イソプロピルアルコール300ml、りん酸塩緩衝溶液(pH6.8)(ナカライテスク(株)製)300mlを採り攪拌混合した。攪拌を続けながら、1時間窒素ガス置換を行った。これに過硫酸アンモニウム2.0gを水20mlに溶解した溶液を加え、更に攪拌を続けながら、65℃で16時間反応を行った。反応終了後、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを7.0に調整し、ロータリーエバポレーターでイソプロピルアルコールを除去し、水溶性コポリマー7の水溶液を得た。
【0051】
<比較例2>
窒素導入管、冷却器及び攪拌装置を備えたフラスコに、ステアリルメタクリレート(東京化成工業(株)製)30.0g、メトキシポリエチレングリコール(23)メタクリレート(日本油脂(株)製、商品名「ブレンマーPME−1000」)90.0g、イソプロピルアルコール300ml、りん酸塩緩衝溶液(pH6.8)(ナカライテスク(株)製)300mlを採り攪拌混合した。攪拌を続けながら、1時間窒素ガス置換を行った。これに過硫酸アンモニウム2.0gを水20mlに溶解した溶液を加え、更に攪拌を続けながら、65℃で16時間反応を行った。反応終了後、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを7.0に調整し、ロータリーエバポレーターでイソプロピルアルコールを除去し、水溶性コポリマー8の水溶液を得た。
【0052】
<比較例3>
特開2005−213448号公報実施例1と同様の操作をおこなって、水溶性ポリマー9の水溶液を得た。ただし、1,3−ブチレングリコールは添加しなかった。
【0053】
<比較例4>
特開H10−101742号公報実施例1と同様の操作をおこなって。水溶性ポリマー10を得た。
【0054】
<試験例1>塗膜の速乾性評価
下記、表2の組成でモデル水性塗料を作成し、スライドグラス上に均一に塗布した。塗布後、スライドグラスを60℃で4時間乾燥し、形成された塗膜の状態を肉眼で観察した。また、赤外線水分計(FD−800 (株)ケット化学研究所製)で塗膜中の残存水分量を測定した。結果を表3に示す。なお、表2中の数字は質量%を意味する。
【0055】
【表2】
【0056】
<試験例2>塗膜の耐水性評価
試験例1で作成した塗膜を流水下、指で塗擦しながら、被膜が完全に消失するまでの塗擦回数を求め、耐水性を評価した。塗擦回数が多いほど耐水性に優れることを示す。結果を表3に示す。
【0057】
<試験例3>塗膜の柔軟性評価
試験例1で作成したモデル水性塗料を厚さ0.2mmのスチレンフィルム上に塗布し、40℃で16時間乾燥して、試験用塗膜とした。この試験用塗膜を折り曲げたり伸ばしたりする作業を繰り返し、スチレンフィルム上のコーティング面に亀裂が生じるまでの折り曲げ回数を求めた。結果を表3に示す。コーティング膜に亀裂が生じるまでの回数が多いほどその塗膜の柔軟性が高いことを示す。結果を表3に示す。
【0058】
【表3】
表3から明らかなように、本発明の水溶性コポリマーは水性組成物の被膜剤として使用した場合、速乾性に優れ、柔軟で耐水性に優れた被膜を与えることが実証された。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の水溶性コポリマーは水性塗料等の水性組成物の被膜剤として有用である。