特許第6283740号(P6283740)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6283740キネトプラスチドによって惹起される疾病治療のための新規プラディミシン誘導体
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  • 特許6283740-キネトプラスチドによって惹起される疾病治療のための新規プラディミシン誘導体 図000069
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283740
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】キネトプラスチドによって惹起される疾病治療のための新規プラディミシン誘導体
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/704 20060101AFI20180208BHJP
   A61P 33/02 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   A61K31/704
   A61P33/02
【請求項の数】6
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2016-522021(P2016-522021)
(86)(22)【出願日】2013年10月10日
(65)【公表番号】特表2017-502919(P2017-502919A)
(43)【公表日】2017年1月26日
(86)【国際出願番号】BE2013000055
(87)【国際公開番号】WO2015051422
(87)【国際公開日】20150416
【審査請求日】2016年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】316015833
【氏名又は名称】ルーヴァン・カトリック ユニバーシテイト
(73)【特許権者】
【識別番号】516104917
【氏名又は名称】コンセヨ スペリオル デ インベスティゲィショネス シエンティフィカス
(73)【特許権者】
【識別番号】515157758
【氏名又は名称】公立大学法人 富山県立大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002332
【氏名又は名称】特許業務法人綾船国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バルザリーニ,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ゴンザレス ペカノウスカ,ドロレス
(72)【発明者】
【氏名】ルーイ ペレス,ルイス ミゲル
(72)【発明者】
【氏名】キャスティリョ アコスタ,ビクター
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 康弘
【審査官】 今村 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−146877(JP,A)
【文献】 特表平07−501048(JP,A)
【文献】 特開2002−241276(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/028229(WO,A1)
【文献】 The Journal of Antibiotics,1993年 3月,Vol.46, No.3,p.500-506
【文献】 Exp.Opin.Ther.Patents,1994年,Vol.4, No.12,p.1483-1491
【文献】 Molecular and Biochemical Parasitology,2000年,Vol.111,p.333-349
【文献】 Journal of Virology,2007年 1月,Vol.81, No.1,p.362-373
【文献】 The Journal of Antibiotics,1993年 1月,Vol.46, No.1,p.149-161
【文献】 Med Microbiol Immunol,1997年,Vol.186,p.101-108
【文献】 The Journal of Clinical Investigation,2008年 4月,Vol.118, No.4,p.1301-1310
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00− 9/72
A61K 31/00−31/80
A61K 33/00−33/44
A61K 47/00−47/69
A61P 1/00−43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類又はヒトである、動物におけるキネトプラスチド感染の予防又は治療のための薬剤の製造のための組成物であって、下記の化学式(I)で表される化合物、及び/又は製剤学的に許容されるそれらの付加塩及び/又は立体異性体及び/又はそれらの溶媒和物を含む組成物
【化1】
(I)
ここで、式中、R1はメチル基又はヒドロキシメチル基であり、R2はOH又はNR3R4 である。R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子及びメチル基からなる群から選ばれる官能基であり、R5は下記式(II)で表される。
【化2】
(II)
ここで、
【化3】
は、前記式(I)の酸素原子に結合する点を表し、R6は水素原子又はスルホン酸基であり、R9は水素原子又はCH2OHである。
【請求項2】
前記キネトプラスチド感染症がトリパノソーマ感染症又はリューシュマニア感染症であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物
【請求項3】
前記トリパノソーマ感染症が、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)感染症又はトリパノソーマ・クルジ(Trypanosoma cruzi)感染症であることを特徴とする、請求項2に記載の組成物
【請求項4】
前記リーシュマニア感染症が、リーシュマニア・ドノバニ(Leishmania donovani)感染症であることを特徴とする、請求項2に記載の組成物
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の組成物であって、生じたアミノ酸残基はD体である;
ことを特徴とする、組成物
【請求項6】
前記化合物が、下記の構造式で表される、PRM-A、PRM-S、PRM-FA1、BMY28864及び BMS181184からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
及び
【化8】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、新規なプラディミシン類及びそれらのアナログ、並びにそれらの誘導体、キネトプラスチド感染、特に、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei), トリパノソーマ・クルジ(Trypanosoma cruzi)等のトリパノソーマ属(Trypanosoma)及びリーシュマニア・ドノバニ(Leishmania donovani)等のリーシュマニア属(Leishmania)による感染の治療又は予防に対するそれらの使用、及びそれら感染の治療用又は予防用の薬の製造への使用に関する。
【背景技術】
【0002】
炭水化物結合試薬(CBAs)は、ヒト免疫不全ウイルスやヒトC型肝炎ウイルス等の様々なウイルス感染に対する、新たな治療の概念として提案されてきた。CBAsは、選択的に表面の多糖をターゲティングすることができ、ペプチド性及び非ペプチド起源の両方になり得る化合物である。CBAsのウイルスエンベロープの多糖への直接の結合によって、ウイルスの侵入がブロックされる(Balzarini, 2007)。
【0003】
寄生性原虫であるトリパノソーマ・ブルセイは、ヒトにおけるアフリカ・トリパノソーマ症若しくは睡眠病又は家畜におけるナガナ病の病原体である。アフリカ・トリパノソーマ症の化学療法は2、3の薬剤に頼っているが、それらには有害な副作用がある。治療は病気の段階に依存する。病気の第一段階では、使用可能な薬の毒性は低い。病気の第二段階の治療のためには、血液脳関門を通過できる薬剤が必要とされる。第二段階用薬剤は、より毒性が高い。病気の第一段階に使用される薬は、ペンタミジン(患者が良好な耐性を示す)や、尿路において望ましくない効果を示し、アレルギー反応を惹起するスラミンである。
【0004】
第二段階の治療には、メラルソプロール(ヒ素剤)が使用される。メラルソプロールは、致命的になり得る反応性脳症(脳障害症候群)等の幾つかの副作用を有する。メラルソプロールに対する耐性は、繰り返し記載されてきた。エフロルニチンは、トリパノソーマ・ブルセイ・ガンビエンス(Trypanosoma brucei gambiense)の第二段階に対して唯一有効な薬剤である。投与計画が厳密で適用が難しい。より最近では、トリパノソーマ・ブルセイ・ガンビエンスに対して、ニフルチモックスとエフロルニチンの併用が用いられている。このように、薬剤耐性と限られた数の治療代替物が、安全で有効かつ手頃な新しい薬剤のニーズを明らかに正当なものしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トリパノソーマ・クルジは、中南米において1,000万人を超える人々が感染し、高い罹患率と死亡率とを示す、アメリカ・トリパノソーマ症又はシャーガス病の病原体である。ニフルチモックスとベンズニダゾールという2つの薬剤は、最近の感染の少なくとも50%を治癒させ得る。これらの製品は、急性期や短期慢性期には有効であるが、長期慢性疾患における有効な薬剤が必要とされている。
【0006】
リーシュマニア症は、リーシュマニア属の様々な種によって惹起される一連の病状からなる。疾病負荷の推定値によると、リーシュマニア症は、顧みられない熱帯病による障害調整生命年における疾病負荷において、第3位に位置づけられている。リーシュマニア・ドノバニは、もっとも深刻な病型の一つである、内臓リーシュマニア症の原因である。現在の化学療法治療では望ましい効果が得られていない。
【0007】
現在使用されている薬剤は、五価アンチモン(SbV)化合物、アムホテリシンBのリポソーム製剤及びミルテホシンである。アムホテリシンBのデオキシコール酸塩、様々な「アゾール類」(ケトコナゾール、イトラコナゾール及びフルコナゾール)、並びにペンタミジンも使用されている。ミルテホシンは、女性に対して潜在的な生殖毒性という問題があり、アンチモン化合物は、時折、深刻な副作用(悪心嘔吐、関節痛、肝炎、膵炎及び不整脈)を示す。
【0008】
トリパノソーマの場合、CBAsが表面の糖タンパク質と結合して、正常な細胞機能を低下させることで、治療の可能性を与え得る。血流型トリパノソーマ・ブルセイ(睡眠病の病原体)の細胞表面は、グリコシルフォスファチジルイノシトールにアンカーされたタンパク質、特に、変異型表面糖タンパク質(VSGs)の高密度でパックされたコートによって覆われており、VSGsは、抗体のような宿主の免疫システムのエフェクターから根底にあるタンパク質を物理的に保護している。加えて、VSGsは、抗原の多様性を介した毒性において重要な役割を果たしており、抗原の多様性は免疫回避の戦略であり、VSGコートの組成における確率的なスイッチを含み、寡黙なVSG遺伝子の大規模なアーカイブを使用して、唯一発現したVSGの性質を変化させる(Morrison et al., 2009)。
【0009】
以前の研究において、コンカナバリンA、小麦胚芽アグルチニン(WGA)及びトウゴマアグルチニン(RCA)等のレクチン(ペプチド性CBAs)と共にインキュベートした後に、細胞分裂の中断や深刻な形態学的な変化が、プロサイクリック型では説明されているが、臨床的に関連する血流型においてはされていない(Pearson et al., 2000)。一般的な概念は、結合の喪失、又は急速な内在化及びエンドサイトーシスによる糖タンパク−レクチン複合体の排除とリソソーム内でのレクチンの分解のいずれかが、血流型における低い細胞毒性をもたらしているはずであるというものである。
【0010】
結論として、トリパノソーマ種(Trypanosoma sp.)やリューシマニア属のようなキネトプラスチドによって惹起される病気の予防又は治療のための、特異的で、治療効果が高く、毒性のない医薬についての非常に強い要求が今尚存在する。現行の治療は、依然として深刻な副作用をもたらす。
【0011】
本願は、炭水化物結合剤(CBAs)、より詳細には、化学式Iの化合物である、PRM-A, PRM-S及びそれらの誘導体を含む、一連の非ペプチド性CBAsが、トリパノソーマ種(Trypanosoma sp)やリューシマニア(Leishmania)のようなキネトプラスチドによって惹起される寄生虫症の予防又は治療に対して有効であるという予期せぬ発見に基づいている。今までに利用可能な先行技術はいずれも、これらの非ペプチド性CBAs、特にα(1,2)−マンノースを認識する本願の化合物が、トリパノソーマ種(Trypanosoma sp)やリューシマニア(Leishmania)のようなキネトプラスチドによって惹起される寄生虫症の予防又は治療に対する詳細な用途について、開示も示唆もしていない。
【0012】
本発明において、一連の非ペプチド性CBAsが、トリパノソーマ・ブルセイ等の血流型の寄生虫による毒性イベントを生じさせる表面糖タンパク質と特異的に相互作用し得ることを示している。それらはまた、感染性の錐鞭毛型のトリパノソーマ・クルジや、リーシュマニア・ドノバニの細胞内無鞭毛型に対しても有効であることを証明した。このため、本発明は、トリパノソーマ種やリューシマニア属のようなキネトプラスチドによって惹起される疾病の予防又は治療のための、化学式Iの化合物である、PRM-A, PRM-S及びそれらの誘導体を含む、これらの非ペプチド性炭水化物結合剤(CBAs)を含む組成物を提供する。
【0013】
本発明は、哺乳類又はヒトである、動物におけるキネトプラスチド感染の予防又は治療のための薬剤として、化学式A、化学式I又は化学式IIIの化合物、及び/又は製剤学的に許容されるそれらの付加塩及び/又は立体異性体及び/又はそれらの溶媒和物を含む組成物に関する。
【0014】
【化1】
【0015】
【化2】
【0016】
【化3】
【0017】
式中、
−Raは、OH、-NR7R8、-NHNR7R8、- NHCH2CO2H 及び (D)-NHCH(CH3)CO2Hからなる群から選択され;R7はHであり、そしてR8はH、(C1〜6)アルキル、(C3〜6)シクロアルキル、(C6〜10)アリール及び(C7〜15)アラルキルからなる群から選択され;又は、R7及びR8は、独立に、(C1〜6)アルキルであり;又はR7、R8及び窒素原子が3〜6員環に結合し;
【0018】
−R1はH、メチルまたはヒドロキシメチルであり;
−R2はOH又はNR3R4であり、ここで、R3及びR4は独立して、H、任意に置換された(C1〜5)アルキル;任意に置換された(C2〜5)アルケニル;(C2〜5)アルキニルであり;ここで、アルキル及びアルケニルの双方についての前記置換基は、カルボキシ、(C1〜5)アルコキシカルボニル、カルバミル、(C1〜5)アルキルカルバミル、ジ(C1〜5)アルキルカルバミル、及びスルホニルからなる群から選ばれものであり;アミノ、(C1〜5)アルキルアミノ及びジ(C1〜5)アルキルアミノからなる群から選ばれる置換基で置換された(C1〜5)アルカノイル;L- グルタミル;ホルミル;ベンジル;p-トリルスルホニルカルバミル;-CN;-NO;
【0019】
【化4】
【0020】
【化5】
【0021】
及び
【0022】
【化6】
【0023】
-R5はHであるか、又は一般式IIによって表される、
【0024】
【化7】
【0025】
であり、ここで、
【0026】
【化8】
【0027】
は、構造式Iの酸素原子又は構造式Aの酸素原子に結合する点を表し;
-R6はH又はスルホン酸であり;
-R9はH又はCH2OHである。
【0028】
本発明はまた、動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトにおけるトリパノソーマ感染症やリーシュマニア感染症を含む、キネトプラスチド感染症の予防用及び治療用の薬として使用する、化学式A、化学式I及び化学式IIIを含む組成物の使用方法に関する。さらに、本発明は、動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトにおけるキネトプラスチド感染症の予防用及び治療用の薬の製造に使用される、化学式A、化学式I及び化学式IIIを有する組成物に関する。
【0029】
より特定の発明の実施形態においては、前記キネトプラスチド感染はトリパノソーマ原虫による感染である。他の特定の実施形態においては、前記キネトプラスチド感染はリーシュマニア原虫による感染である。さらにより特定の発明の実施形態では、前記キネトプラスチド感染は、トリパノソーマ・ブルセイ、トリパノソーマ・クルジ又はリーシュマニア・ドノバニによる感染である。
【0030】
また、本発明は、動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒト、における、キネトプラスチド感染の予防用又は治療用薬剤を製造するための、化学式A、化学式I又は化学式IIIで表される化合物を含む組成物に関し、上記キネトプラスチド感染は、トリパノソーマ感染及びリューシマニア感染を含む。本発明はまた、動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトにおけるキネトプラスチド感染の予防用又は治療用薬剤の製造のための化学式A、化学式I又は化学式IIIを含む組成物に関する。
【0031】
さらに特別な本発明の実施態様では、前記キネトプラスチド感染はトリパノソーマの寄生を伴う感染である。本発明の別の実施態様では、前記キネトプラスチド感染は、リューシマニアの寄生を伴う感染である。本発明のさらに別の実施態様では、前記キネトプラスチド感染はトリパノソーマ・ブルセイ、トリパノソーマ・クルジ、又はリューシマニア・ドノバニの感染である。
【0032】
本発明はまた、動物、哺乳類又はヒトにおけるキネトプラスチド感染の予防又は治療用医薬を製造するための化学式A、化学式I又は化学式IIIで表される治療上有効量の化合物及び1以上の製剤学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物に関する。前記組成物は、さらに、抗生物質、及びこれらの寄生虫治療のために現在使用されている薬剤から選択される、1以上の生物学的に活性な薬剤を、とりわけ、安全で非毒性用量、副作用を選択的に抑えるか、全く生じさせない用量で、含んでいてもよい。
【0033】
本発明はまた、動物におけるトリパノソーマ感染症を含むキネトプラスチド感染症の予防又は治療方法に関し、この方法は、治療上有効量の化学式A、化学式I又は化学式IIIを有する化合物を1以上の製剤学上許容される賦形剤と任意に組み合わせて、投与することを含む。
【0034】
ここで、本発明についてさらに説明する。以下の一節では、発明の異なる側面をより詳細に定義する。そのように定義された各側面は、明らかに正反対であることが示唆されていない限り、他のいずれかひとつの側面又は複数の側面と結びついている。とりわけ、好ましいと示唆されているか、又は有利であると示された特徴は、好ましいか又は有利であると示唆された他のいずれかひとつの側面又は複数の側面と特徴と結びついている。
【0035】
発明の内容は、以下の番号を付した記載事項で示した。
1.本発明は、哺乳類又はヒトである、動物におけるキネトプラスチド感染の予防又は治療のための薬剤の製造のための組成物であって、一般式A又はIの化合物、及び/又は製剤学的に許容されるそれらの付加塩及び/又は立体異性体及び/又はそれらの溶媒和物を含む組成物
【0036】
【化9】
【0037】
【化10】
【0038】
式中、
−Raは、OH、-NR7R8、-NHNR7R8、- NHCH2CO2H 及び (D)-NHCH(CH3)CO2Hからなる群から選択され;R7はHであり、そしてR8はH、(C1〜6)アルキル、(C3〜6)シクロアルキル、(C6〜10)アリール及び(C7〜15)アラルキルからなる群から選択され;又は、R7及びR8は、独立に、(C1〜6)アルキルであり;又はR7、R8及び窒素原子が3〜6員環に結合し;
【0039】
−R1はH、メチルまたはヒドロキシメチルであり;
−R2はOH又はNR3R4であり、ここで、R3及びR4は独立して、H、任意に置換された(C1〜5)アルキル;任意に置換された(C2〜5)アルケニル;(C2〜5)アルキニルであり;ここで、アルキル及びアルケニルの双方についての前記置換基は、カルボキシ、(C1〜5)アルコキシカルボニル、カルバミル、(C1〜5)アルキルカルバミル、ジ(C1〜5)アルキルカルバミル、及びスルホニルからなる群から選ばれものであり;アミノ、(C1〜5)アルキルアミノ及びジ(C1〜5)アルキルアミノからなる群から選ばれる置換基で置換された(C1〜5)アルカノイル;L- グルタミル;ホルミル;ベンジル;p-トリルスルホニルカルバミル;-CN;-NO;
【0040】
【化11】
【0041】
【化12】
【0042】
及び
【0043】
【化13】
【0044】
であり;
-R5はHであるか、又は一般式IIによって表される、
【0045】
【化14】
【0046】
であり、ここで、
【0047】
【化15】
【0048】
は、構造式Iの酸素原子又は構造式Aの酸素原子に結合する点を表し;
-R6はH又はスルホン酸であり;
-R9はH又はCH2OHである。
【0049】
2.キネトプラスチド感染症が、トリパノソーマ感染症又はリーシュマニア感染症であることを特徴とする、記載事項1の組成物
3.前記トリパノソーマ感染症が、トリパノソーマ・ブルセイ感染症又はトリパノソーマ・クルジ感染症であることを特徴とする、記載事項2の組成物
4.前記リーシュマニア感染症が、リーシュマニア・ドノバニ感染症である、記載事項2の組成物
【0050】
5.記載事項1〜4のいずれかに記載の組成物
式中、
−R1はH、メチルまたはヒドロキシメチルであり;
−R2はOH又はNR3R4であり、ここで、R3及びR4は独立して、H、(C1〜5)アルキル、(C2〜5)アルケニル、(C2〜5)アルキニルからなる群から選ばれ;
-R5はHであるか、又は一般式IIによって表される、
【0051】
【化16】
【0052】
であり、ここで、
【0053】
【化17】
【0054】
は、構造式Iの酸素原子又は構造式Aの酸素原子に結合する点を表し;
-R6はH又はスルホン酸であり;
-R9はH又はCH2OHである。
【0055】
6.記載事項1〜4のいずれかに記載の組成物ここで、前記一般式A又はIの化合物は、下記の化合物を表す。
【0056】
【化18】
【0057】
上記式で表される化合物がPRM-Aである場合には、R1及びR2は、いずれも水素原子を表す。上記式で表される化合物がPRM-Sである場合には、R1は-SO3Hであり、R2は-CH2OHを表す。
【0058】
【化19】
【0059】
【化20】
【0060】
【化21】
【0061】
【化22】
【0062】
【化23】
【0063】
前記組成物には、上述した化合物のほか、製剤学的に許容されるそれらの付加塩及び/又は立体異性体及び/又はそれらの溶媒和物が含まれる。
【0066】
.記載事項1〜4のいずれかに記載の組成物。ここで、生じたアミノ酸残基はD体である。
.記載事項1〜4のいずれかに記載の組成物であって、前記組成物に含まれる化合物が、PRM-A、PRM-S、PRM -FA1、BMY28864及びBMS181184からなる群より選択される。
【0067】
.化学式A又は化学式Iの化合物、及び/又は製剤学的に許容されるそれらの付加塩及び/又は立体異性体及び/又はそれらの溶媒和物を使用することにより、哺乳類又はヒトである、動物におけるキネトプラスチド感染の予防又は治療方法。
【0068】
【化24】
【0069】
【化25】
【0070】
式中、
−Raは、OH、-NR7R8、-NHNR7R8、- NHCH2CO2H 及び (D)-NHCH(CH3)CO2Hからなる群から選択され;R7はHであり、そしてR8はH、(C1〜6)アルキル、(C3〜6)シクロアルキル、(C6〜10)アリール及び(C7〜15)アラルキルからなる群から選択され;又は、R7及びR8は、独立に、(C1〜6)アルキルであり;又はR7、R8及び窒素原子が3〜6員環に結合し;
【0071】
−R1はH、メチルまたはヒドロキシメチルであり;
−R2はOH又はNR3R4であり、ここで、R3及びR4は独立して、H、任意に置換された(C1〜5)アルキル;任意に置換された(C2〜5)アルケニル;(C2〜5)アルキニルであり;ここで、アルキル及びアルケニルの双方についての前記置換基は、カルボキシ、(C1〜5)アルコキシカルボニル、カルバミル、(C1〜5)アルキルカルバミル、ジ(C1〜5)アルキルカルバミル、及びスルホニルからなる群から選ばれものであり;アミノ、(C1〜5)アルキルアミノ及びジ(C1〜5)アルキルアミノからなる群から選ばれる置換基で置換された(C1〜5)アルカノイル;L- グルタミル;ホルミル;ベンジル;p-トリルスルホニルカルバミル;-CN;-NO;
【0072】
【化26】
【0073】
【化27】
【0074】
及び
【0075】
【化28】
【0076】
であり、
-R5はHであるか、又は一般式IIによって表される、
【0077】
【化29】
【0078】
であり、ここで、
【0079】
【化30】
【0080】
は、構造式Iの酸素原子又は構造式Aの酸素原子に結合する点を表し;
-R6はH又はスルホン酸であり;
-R9はH又はCH2OHである。
【図面の簡単な説明】
【0081】
図1図1は、プラディミシンFA1(PRM-FA1)、プラディミシンS(PRM-S)、プラディミシンA(PRM-A)、BMY288864及びBMS181184の構造を示す図である。
図2図2は、トリパノソーマに感染させ、PRM-Sで治療したマウスの生存率分析を示したグラフである。PRM-Sを、一日当たりの一用量25mg/kg又は50mg/kgで、感染3日後から連続4日間マウスに投与した。A)T. brucei brucei 427(単一マーカー)細胞株に感染させ、PRM-Sで処理したC57BL/6Jマウス、又はベシクルで処理した対照マウス群のカプラン-マイヤー分析。B)T. brucei rhodesiense EATR03細胞株に感染させ、PRM-S処理したBALB/c マウス又はベシクルで処理した対照マウスのカプラン-マイヤー分析。
【発明を実施するための形態】
【0082】
発明者は、一連の非ペプチド性炭水化物結合剤(CBAs)が、血液型のトリパノソーマ種において、毒性事象を引き起こす表面糖タンパク質と特異的に相互作用出来ること、そしてCBAsはまたリーシュマニア属に対しても有効であることを発見した。このため、非ペプチド性CBAsは、アフリカ・トリパノソーマ感染症、シャーガス病及びリーシュマニア感染症に対して有効なツールである。
【0083】
プラディミシンA(PRM-A)とそのアナログであるプラディミシンS(PRM-S)は、原核生物起源の非ペプチド性(PRM)のマンノース結合剤であり、それらのレトロウイルス、HCV及びSARSコロナウイルス阻害特性について、早くから研究されてきた。PRM-AとPRM-Sは放線菌(それぞれ、アクチノマデュラ・ヒビスカ(Actinornadura hibisca)及びアクチノマデュラ・スピノサ(Actinornadura spinosa)株 AA0851)由来のD−マンノース結合剤であり、レクチン様(lectin-mimic)抗生物質と記載されている。真菌類、酵母、HIV及びHCVを含む幾つかのウイルスに対して活性が同定されている(Ueki et al., 1993; Bertaux et al., 2007; Balzarini et al., 2007; Balzarini et al., 2010)。これが、試験された病原体に対して同様な活性を有するが、より溶解性が高い、BMY28864やBMS181184のような新規化合物の開発につながった。
【0084】
本発明では、PRM-Sのような非ペプチド性CBAsが眠り病のin vivoモデル系において、マウスの生存率を増加させ、寄生虫血症をコントールするのに有効であることが示された。これは、トリパノソーマ・ブルセイのプロサイクリック型に対する以前の結果(Pearson et al., 2000)を勘案して想定されたこととは逆である。加えて、我々は、in vitroで培養された場合、寄生虫であるトリパノソーマ・クルジやリーシュマニア・ドノバニに対してもCBAsが有効であることを示す。
【0085】
このように、本発明の第一の側面は、以下の化学式A又は化学式Iの化合物及び/又はそれらの製剤学的に許容される付加塩、及び/又はそれらの立体異性体、及び/又はそれらの溶媒和物の、動物、哺乳類又はヒトにおけるキネトプラスチド感染の予防又は治療のための薬剤の製造のための組成物に関するものである。
【0086】
【化31】
【0087】
【化32】
【0088】
式中、
-RaはOH、-NR7R8、-NHNR7R8、- NHCH2CO2H 及び (D)-NHCH(CH3)CO2Hからなる群から選択され、R7はHであり、そしてR8は、H、(C1〜6)アルキル、(C3〜6)シクロアルキル、(C6〜10)アリール、及び(C7〜15)アラルキルからなる群から選択され;又は、R7及びR8はそれぞれ独立して(C1〜6)アルキル;又は、R7、R8及び窒素原子が3〜6員環に結合し;
-R1は、H、メチルまたはヒドロキシメチルであり;
-R2は、OH又はNR3R4であり、ここで、R3及びR4は独立して、H、任意に置換されていてもよい(C1〜5)アルキル;任意に置換されていてもよい(C2〜5)アルケニル;(C2〜5)アルキニルからなる群から選ばれ;ここで、アルキル及びアルケニル双方の置換基は、カルボキシ、(C1〜5)アルコキシカルボニル、カルバミル、(C1〜5)アルキルカルバミル、ジ(C1〜5)アルキルカルバミル及びスルホニルからなる群から選ばれ;アミノ、(C1〜5)アルキルアミノ及びジ(C1〜5)アルキルアミノからなる群から選択される基で置換された(C1〜5)アルカノイル; L−グルタミル;ホルミル;ベンジル;p-トリルスルホニルカルバミル;‐CN;‐NO;
【0089】
【化33】
【0090】
【化34】
【0091】
及び
【0092】
【化35】
【0093】
であり
-R5はHであるか、又は一般式IIで表される化合物であり:
【0094】
【化36】
【0095】
式中、
【0096】
【化37】
【0097】
は、構造式Aの酸素原子又は構造式Iの酸素原子に結合する点を示し;ここで、R6は、H又はスルホン酸であり;R9は、H又はCH2OHである。
【0098】
本発明のさらに特別な実施態様は、構造式IIIの化合物及び/又はそれらの製剤学的に許容される付加塩、及び/又はそれらの立体異性体、及び/又はそれらの溶媒和物の、動物、哺乳類又はヒトにおけるキネトプラスチド感染の予防又は治療のための薬剤の製造のための組成物に関するものである。
【0099】
【化38】
【0100】
式中、
-R1は、水素、メチルまたはヒドロキシメチルからなる群から選択され;
-R2は、ヒドロキシ、又はNR3R4からなる群から選択され、ここで、R3及びR4は、独立して、H、(C1〜5)アルキル、(C2〜5)アルケニル及び(C2〜5)アルキニルからなる群から選択され、
-R6は、水素又はスルホン酸であり;
-R9は、H又はCH2OHである。
【0101】
本発明の一つの実施形態は、式Aの化合物を含む本発明の組成物に関する。ここで、式中、R9、R6、R5、R4、R3及びR2は、ここに記載されたいずれの価値を有し、RaはOH、-NR7R8、-NHNR7R8、-NHCH2CO2H及び(D)-NHCH(CH3)CO2Hからなる群から選択され;R7は、Hであり、そしてR8は、H、(C1〜6)アルキル、(C3〜6)シクロアルキル、(C6〜10)アリール、及び(C7〜15)アラルキルからなる群から選択され;又は、R7及びR8は、独立して、(C1〜6)アルキルであるか;又は、R7、R8及び窒素原子は3〜6員環に結合している。より特別な実施形態では、前記RaはOHである。
【0102】
本発明の一つの実施形態は、式A、式I及び式IIIの化合物を含む本発明の組成物に関するものであり、本発明の前記化合物の使用を含む。式中、Ra、R9、R6、R5、R4、R3及びR2は、ここに記載されたいずれかの価値を有し、R1はメチルである。別の特別な実施形態では、前記R1は水素であり;別の特別の実施形態では、R1はヒドロキシメチルである。別の好適な実施形態では、R1がメチル又はヒドロキシメチルであるときに、生じるアミノ酸はD体である。別の特別な好適な実施形態において、生じるアミノ酸がD体とL体の2つの立体配置をとるようにR1及び/又はRaが選択されたときは、D体が好ましい。
【0103】
本発明の化合物の使用を含む、式Aの化合物の好適な実施形態においては、Raは、アミノ、(C1〜6)アルキルアミノ、ジ(C1〜6)アルキルアミノ、ヒドラジノ、グリシル及びD‐アラニルからなる群から選択される。アルキルは、1〜4の炭素原子を有することがより好ましい。本発明の前記化合物の使用を含む、式Aの化合物の別の好適な実施形態においては、Raは、アミノ、(C1〜4)アルキルアミノ、ジ(C1〜4)アルキルアミノ、ヒドラジノ、-NHCH2CO2H及び(D)-NHCH(CH3)CO2Hからなる群から選択される。
【0104】
式Aの化合物を含み、本発明の前記化合物の使用を含む、本発明の化合物の別の好適な実施形態においては、R1は、メチルである。式Aの化合物を含み、本発明の前記化合物の使用を含む、本発明の化合物のさらにまた別の好適な実施形態においては、R3はHであり、そしてR4はH又はメチルであるか、又は、R3及びR4はいずれもメチルである;より好ましくは、R3がHであり、R4がメチルである。式Aの化合物を含み、本発明の前記化合物の使用を含む、本発明の化合物の別の好適な実施形態においては、R1はメチル、R5はβ-D-キシロシル、R3はH、そしてR4はメチルである。さらに特別な実施形態においては、Raは、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ブチルアミノ、ヒドラジノ、-NHCH2CO2H及び(D)-NHCH(CH3)CO2Hからなる群から選択される。
【0105】
本発明の一つの実施形態は、式A、式I及び式IIIの化合物を含み、本発明の化合物の使用を含む、本発明化合物に関する。式中、R2はOHである。別の特定の実施形態では、R2はNR3R4であり、ここで、R3及びR4は独立して、H、(C1〜5)アルキル、(C2〜5)アルケニル又は(C2〜5)アルキニルからなる群より選択される。さらに特定の実施形態においては、R3はH又は(C1〜5)アルキルである。
【0106】
別の特別な実施形態においては、前記R3はH又はメチルである。さらに特定の実施形態においては、前記R3はHである。別の特定の実施形態では、前記R3はメチルである。別の特定の実施形態では、R3はHであり、R4はメチルである。別の特定の実施形態においては、前記R3はH又はメチルであり、そして、前記R4は、任意に置換されている(C1〜5)アルキル;任意に置換されている(C2〜5)アルケニル;(C2〜5)アルキニル;及びスルホニルからなる群から選択され、ここで、アルキルとアルケニルの双方の置換基は、カルボキシ、(C1〜5)アルコキシカルボニル、カルバミル、(C1〜5)アルキルカルバミル、ジ(C1〜5)アルキルカルバミルから選択され;アミノ、(C1〜5)アルキルアミノ、及びジ(C1〜5)アルキルアミノからなる群から選択される置換基で置換された(C1〜5)アルカノイル;L−グルタミン;ホルミル;ベンジル;p-トリルスルホニルカルバミルからなる群から選択された置換基である。
【0107】
別の特定の実施形態においては、前記R3はH又は(C1〜5)アルキルであり、前記R4は-CN;-NO;
【0108】
【化39】
【0109】
【化40】
【0110】
又は
【0111】
【化41】
【0112】
である。さらに別の特定の実施形態においては、R3はH又はメチルであり、R4は-CN;-NO;
【0113】
【化42】
【0114】
【化43】
【0115】
又は
【0116】
【化44】
【0117】
である。さらに特別な別の実施形態では、本発明は、本発明の前記化合物の使用を含み、式A、式I及び式IIIの化合物を含む本発明の化合物に関するものである。ここで、R2は、-NHCN、-N(CH3)CN、-N(CH3)NO、
【0118】
【化45】
【0119】
【化46】
【0120】
又は
【0121】
【化47】
【0122】
である。さらに特定の実施形態のおいては、本発明は、本発明の前記化合物の使用を含み、式A、式I及び式IIIの化合物を含む本願の化合物に関する。式中、R1は水素、メチル又はヒドロキシメチルである。ただし、R1がメチル又はヒドロキシメチルであるときは、生じるアミノ酸はD体であり、ここでR2が-NHCN、-N(CH3)CN、-N(CH3)NO、
【0123】
【化48】
【0124】
【化49】
【0125】
又は
【0126】
【化50】
【0127】
である。さらに特定の別のそれらの実施形態では、式III中のR6はH、R9はHであり、式A及び式I中のR5は、一般式IIで表される。
【0128】
【化51】
【0129】
式II中、
【0130】
【化52】
【0131】
は、構造式Aの酸素原子又は構造式Iの酸素原子と結合する点を示し;ここで、R6はHであり、R9はHである。
【0132】
別の特定の実施形態においては、R5は一般式IIで表される。
【0133】
【化53】
【0134】
式II中、
【0135】
【化54】
【0136】
は、構造式Aの酸素原子又は構造式Iの酸素原子と結合する点を示し;ここで、R6はH又はスルホン酸であり;R9はH又はCH2OHである。
【0137】
さらに特定の実施形態では、前記R6はHであり;さらに別の特定の実施形態では、前記R6はスルホン酸であり;別の特定の実施形態では、R9はHである。別の特定の実施形態では、R6はH及びR9はHである。
【0138】
本発明の別の実施形態では、式A及び式Iの化合物を含み、本発明の化合物の使用を含む、本発明の化合物に関するものであり、式中、Ra、R4、R3、R2及びR1は、ここに記載されたあらゆる価値を有し、R5はHである。
【0139】
本発明の別の実施形態は、式A、式I及び式IIIの化合物を含み、本発明の化合物の使用を含む、本発明の化合物に関するものであり、式中、Ra、R6、R5及びR1は、ここに記載されたあらゆる価値を有する。そして、R2は-NR3R4であり、ここで、R3はH又はメチル等の(C1〜5)アルキルであり、R4はH又はメチル等の(C1〜5)アルキルである。別の特定の実施形態においては、前記R3はHであり、そして前記R4はメチルである。別の特定の実施形態においては、R3及びR4は共にメチルである。
【0140】
本発明の別の実施形態では、式A、式I及び式IIIの化合物を含み、本発明の化合物の使用を含む、本発明の前記化合物に関するものであり、式中、Ra、R6、R5、R2及びR1は、ここに記載されたあらゆる価値を有し、R9はH又は-CH2OHであり;さらに別の実施形態では、R9はHである
【0141】
本発明の別の実施形態は、式A、式I及び式IIIの化合物を含み、本発明の前記化合物の使用を含む、本発明の化合物に関するものであり、式中、Ra、R9、R6、R5及びR1は、ここに記載されたあらゆる価値を有し、R2はOHである。
【0142】
全てのプラディミシン及びそれらの誘導体を含む、本発明の化合物の糖のアミノ基は、任意に保護される。アミノ基の保護基は特に制限されないが、残りの分子に悪影響を及ぼすことなく容易に導入したり、脱離されたりすることができるものであってもよい。適当なアミノ保護基には、ベンジルオキシカルボニル、t-ブトキシカルボニル、トルエンスルホニル、トリフルオロアセチル及びクロロアセチルが含まれる。アミノ基及び/又はカルボキシル保護基の選択、及び未反応のアミノ基及び/又はカルボキシル基の保護と脱保護の方法は、「Protective Groups in Organic Chemistry」 (J.F.W. McOmie Plenum Press, 1973)及び「Peptide Synthesis」(M. Bodansky etal, Wiley, 1976)などのモノグラフで議論され、一般的な有機合成の通常の方法の手段の範疇である。
【0143】
プラディミシンや、そのアナログ、中間体及びそれらの誘導体を含む、本発明の化合物の詳細やそれらの合成及び抗真菌性への使用についての詳細な説明は、EP388982, EP428132, EP432527, EP580480及びEP584014に記載されている。
【0144】
本発明の第二の態様は、トリパノソーマ類の寄生虫のようなキネトプラスチド寄生虫による感染症の治療用医薬組成物であって、有効量の式A、式Iまたは式IIIの薬剤及び製剤学的に許容される担体を含むものである。
【0145】
本発明の第三の態様は、動物、哺乳類又はヒトにおける、トリパノソーマ類の寄生虫感染を含む、キネトプラスチド寄生虫感染の予防方法又は治療方法に関するものであり、1以上の製剤学的に許容される賦形剤と任意に組み合わせた、治療有効量の式A、式I又は式IIIを有する化合物の投与を含む。
【0146】
[定義]
ここでは、特に示唆しない限り、「アルキル」は直鎖状又は分枝鎖状の炭素鎖を含む。置換ラジカルに関しては、特に示唆しない限り、「(C1〜6)アルキル」という用語は、炭素数1〜6の直鎖状又は分枝鎖状の一価の飽和非環式炭化水素ラジカルを意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、n‐ブチル、1‐メチルエチル(イソプロピル)、2‐メチルプロピル(イソブチル)、1,1‐ジメチルエチル(t−ブチル)、2‐メチルブチル、n‐ペンチル、ジメチルプロピル、n‐へキシル、2‐メチルペンチル、3‐メチルペンチル等が含まれる。上記と同様に、「(C1〜5)アルキル」という用語は、炭素数1〜5のラジカルをいい、すなわち、ペンチルまでを含む。「(C1〜4)アルキル」という用語は、炭素数1〜4のラジカルを示す。
【0147】
「製剤学的に許容される塩」及び「製剤学的に許容される付加塩」は分子内塩であり;ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩及びトリアルキルアンモニウム塩のような有機又は無機の塩基性の塩であるか;または、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩及び酢酸塩等の鉱酸又は有機酸との酸付加塩である。
【0148】
ここで使用されているラジカルに関しては、特に示唆しない限り、「(C3〜6)シクロアルキル」という用語は、炭素数3〜6の直鎖状又は分枝鎖状の一価の飽和環式炭化水素ラジカルを意味し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどである。
【0149】
アミノで置換された(C1〜5)アルカノイルは、カルバミルラジカルを含んでおり;同様にモノアルキルアミノ置換またはジアルキルアミノ置換された(C1〜5)アルカノイルは、それらに対応して置換されたカルバミルラジカルを含む。
プラディミシンは、天然起源のプラディミシン類、ベナノマイシン類、それらのデキシロシル誘導体、及びそれらのそれぞれの塩という要素に関する。
【実施例】
【0150】
[実施例1] トリパノソーマ・ブルセイ(T. brucei)に対するPRM-S、PRM-A、PRM-FS及びFA1-単糖(mono sugar)のin vitro活性
表1に示したように、in vitroにおいて、非ペプチド性CBAs, PRM-A 及び-PRM-S(図1)は、トリパノソーマ・ブルセイ・ブルセイ(Trypanosoma brucei brucei)に対して、低マイクロモルの範囲で活性を示した。
【0151】
【表1】
【0152】
[実施例2]トリパノソーマ・ブルセイ(T. brucei)に対するPRM-Sのin vivo 活性
PRM-Sのトリパノソーマに対する作用を立証するため、T. b. brucei 427又はT. b. rhodesiense EATR03株を、C57BL/6J又はBALB/cマウスに感染させた。そして、PRM-Sを一日当たり一回投与で4日間治療する前に、3日間この感染を継続させた。
【0153】
T. b. bruceiに感染させたC57BL/6Jマウスの場合、未処理マウスは感染後6日〜7日の間に死亡した。その際、血中の寄生虫は約1×109cell/mLに達しており、平均生存期間(MSD)は、6.25±0.5日であった(図2A)。対照的に、感染後3日目にPRM-S投与を開始したところ、血中の寄生虫は約1×107cell/mLに達し、50mg/kgの最初の投与後、又は25mg/kgの3回目の投与後に、寄生虫濃度は高かったものの、劇的に血中の寄生虫が減少した。しかし、25mg/kgで処理したマウスでは寄生虫血症が再発し、平均再発期間(MRD)は10.7±0.6日であった。25mg/kg又は50mg/kg用量のMSDは、それぞれ18.0±7日又は>90日であった(表2及び図2A)。
【0154】
一方、T. b. rhodesienseに感染させた未処理のBALB/cマウスは、感染後6〜10日間で死亡し、MSDは7.5±1.7であったが、25mg/kg又は50mg/kgのPRM-Sで処理した動物のMSDは、それぞれ44.4±41.7日及び>90日であった(表2及び図2B)。いずれの用量でも、PRM-Sの最初の投与後に寄生虫は劇的に減少し、25mg/kgの場合、試験した5匹中3匹のマウスにおいてその後観察した結果、MRDは10.7±0.8を示した(表2)。
【0155】
【表2】
【0156】
[実施例3] リューシュマニア・ドノバニ(L. donovani)及びトリパノソーマ・クルジ(T. cruzi)に対するPRM-S及びPRM-Aのin vivo活性
表3及び4から分かるように、in vitroで培養した異なるステージにあるトリパノソーマ・クルジ(T. cruzi)及びリューシュマニア・ドノバニ(L. donovani)に対して、非ペプチド性炭水化物結合剤である、PRM-S及びPRM-Aは活性を示した。プラディミシンS及びプラディミシンAは、ヒト宿主中に存在し細胞内段階にある寄生生物のリューシュマニア・ドノバニの無鞭毛型に対し、低マイクロモル濃度で有効であり、また、リューシュマニア・ドノバニの前鞭毛型に対しても有効であった。マクロファージに毒性を示さないことが観察された(EC50>100μM)。加えて、両方の誘導体は、宿主の哺乳動物の細胞に侵入する感染段階にある、トリパノソーマ・クルジの錐鞭毛型に対して、低マイクロモル濃度で溶菌を誘導した(表4)。
【0157】
【表3】
【0158】
【表4】
【0159】
【表5】
【0160】
[実施例4]材料と方法
[寄生虫の培養]
T7 RNAポリメラーゼとテトラサイクリンリプレッサーを有するTrypanosoma brucei bruceiの単一マーカー血流型株(BSF)427(抗原型1.2、MlTat 1.2、クローン221a)(Wirtz et al., 1999)及びTrypanosoma brucei rhodesiense EATR03 ETat1.2 TREU164 (Turner et al., 2004)を研究に使用した。血流型は、10%(v/v)又は20%(v/v)のウシ胎児血清を添加したHMI-9培地中で、37℃にて5%CO2下で培養した。非ペプチド性CBAsである、プラディミシンA(アクチノマデュラ・ヒビスカ(Actinomadura hibisca)由来のPRM-A)(Oki et al., 1988)及びプラディミシンS(アクチノマデュラ・スピノサ(Adinomadura spinose)A A08 51株由来のPRM-S)(Saitoh et al., 1993)を寄生虫の増殖抑阻害試験に使用した。
【0161】
[In vivoの検討]
メスのC57BL/6又は BALB/cマウス(Jackson Laboratories社, Bar Harbor, ME)を3匹から6匹(6〜8週齢)のグループに分け、5×103(T. b. brucei 427株)又は1×104(T.b rhodesiense EATR03)のトリパノソーマ株を、それぞれ腹腔内投与して感染させた。0.5%(w/v)のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、0.4%(v/v)のTween80、及び0.5%(v/v)のベンジルアルコールを剤形処方として使用し、異なる用量(25mg/kg及び50mg/kg)のPRM-Sを、感染後3日目から4日間、一日一回腹腔内に200μL投与した。いずれの場合でも、1つのグループは、対照群としてベシクルで処理した。感染3日目から毎日、尾から血液を採取し、顕微鏡下で、血球計算盤を用いて寄生虫をモニターした。
【0162】
[リューシュマニア・ドノバニに対するin vivo活性]
プラディミシンA(PRM-A)及びプラディミシンS(PRM-S)の、前鞭毛型及び無鞭毛型のL donovani MHOM/ET/67/HU3に対する活性を調べた。
前鞭毛型の場合には、20%FBS、2mMのL-グルタミン、100U/mLのペニシリン及び100μg/mLのストレプトマイシンを含むRPMI1640培地中で、0.391μg/mLから50μg/mLの間の異なる薬剤の濃度で、2.5×104の寄生虫を24ウェルプレート(1ml)中で48時間培養した。Z1コールターカウンターを用いて細胞数をカウントし、その増殖を測定した。EC50値は、非線形回帰分析により算出した。
【0163】
無鞭毛型に対する活性を定量するために、10%HIFBS、2mM のL-グルタミン、100U/mLのペニシリン及び100μg/mLのストレプトマイシンを含むRPMI1640培地を用いて、24ウェルの組織培養チャンバースライドに、1×105のマウス腹腔内マクロファージを播種した。各化合物を加え、マクロファージと寄生虫との比率が1:10になるように後期段階の前鞭毛型に細胞を感染させた。
【0164】
35℃、5%CO2で感染させた8時間後に、無血清培地を用いて、細胞外の寄生虫を洗浄して除去し、感染したマクロファージ培養物を、異なる濃度のCBAと共に10%のHIFBSを含むRPMI1640培地中で、35℃、5%CO2で72時間培養した。その後、2.5%のp-ホルムアルデヒドを含むPBSを用いてマクロファージを4℃で30分間固定し、0.1% Triton-100を含むPBSを用いて30分間透過処理した。細胞内寄生虫を検出するために、DAPIを加えたGold 褪色防止封入剤とともにインキュベートした。薬剤の活性は、未処理培養物に対する薬剤処理培養物中の、感染細胞の%と細胞当たりの無鞭毛型の数値から求めた。
【0165】
[リューシュマニア・ドノバニに対するin vitro活性]
プラディミシンA(PRM-A)とプラディミシンS(PRM-S)の、トリパノソーマ・クルジに対する活性を、上鞭毛型及び錘鞭毛型のT. cruzi Tulahuen C4株で評価した。
上鞭毛型の場合、2×105の寄生虫を、96ウェルプレートに播種し(100μL)、10%のウシ胎児血清を含むリバーインフージョントリプソーム(LIT)培地中、0.0625μg/mLから100μg/mLの間の異なる薬剤濃度で、28℃で3日間インキュベートした。
【0166】
錘鞭毛型の場合、1×105の寄生虫を、96ウェルプレートに播種し(100μL)、10%のFBS、2mMのL-グルタミン、100U/mLのペニシリン及び100μg/mLのストレプトマイシンを含むRPMI1640培地中、0.006μg/mLから12.5μg/mLの間の異なる薬剤濃度で、37℃、5%CO2で48時間インキュベートした。10μLのレザズリン(0.11mg/mL、PBS中)を添加する工程と、培養2時間後に、Spectramax Gemini EM microplate fluorometer (Molecular Devices Cooperation, Sunnyvale, CA, USA)を用いて、570/590nmの励起/蛍光波長を測定することで、上鞭毛型の細胞生存率と、錘鞭毛型の溶解%を計測した。EC50又は50%溶解値は、細胞増殖率の最大半量を阻害するのに必要な薬剤濃度、又は最大半量を溶解するのに必要な薬剤濃度として定義し、非線形回帰分析によって算出した。
【0167】
[参考文献]
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図2