(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283741
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】電気モータの角度エラー状態を判定する方法
(51)【国際特許分類】
H02P 21/14 20160101AFI20180208BHJP
H02P 21/24 20160101ALI20180208BHJP
H02P 6/08 20160101ALI20180208BHJP
H02P 6/16 20160101ALI20180208BHJP
【FI】
H02P21/14
H02P21/24
H02P6/08
H02P6/16
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-522282(P2016-522282)
(86)(22)【出願日】2013年6月27日
(65)【公表番号】特表2016-527855(P2016-527855A)
(43)【公表日】2016年9月8日
(86)【国際出願番号】EP2013063482
(87)【国際公開番号】WO2014206468
(87)【国際公開日】20141231
【審査請求日】2016年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】グンゼルマン・クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】フェルスター・クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ザーダー・フランク
【審査官】
田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】
特表2006−515500(JP,A)
【文献】
特開2004−215390(JP,A)
【文献】
特開2012−006463(JP,A)
【文献】
特開2012−201243(JP,A)
【文献】
特開2008−295186(JP,A)
【文献】
特開2010−011700(JP,A)
【文献】
国際公開第01/022566(WO,A1)
【文献】
特開2002−104218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/00−6/34,21/00−25/03,25/04,
25/10−27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流で駆動される電気機械のステータ装置に対するロータ装置の回転角を検査する方法であって、ロータ装置の制御の前提としているロータ装置の回転角が、当該回転角に対応する目標相電流及び/又は目標相電圧により設定され、制御の前提としているロータ装置の回転角と、実際のロータ装置の回転角との間の偏差を検査する方法において、前記電気機械は、複数の巻線を有し、当該複数の巻線内の複数の相電流及び/又は前記複数の巻線間の複数の相電圧を検出する制御装置が設けられており、以下のステップ:
a)複数の前記相電流のうち少なくとも一つ及び/又は複数の前記相電圧のうち少なくとも一つを検出し、
b)検出された前記相電流と当該相電流に対応する目標相電流との間、及び/又は、検出された前記相電圧と当該相電圧に対応する目標相電圧との間の少なくとも一つの偏差を、前記相電流と当該相電流に対応する目標相電流との間の位相シフトに基づいて検出し、
c)前記偏差の一つが許容範囲外にあるときに角度エラーと判定する、
ステップを有する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
a)複数の前記相電流及び/又は複数の前記相電圧を検出し、
b)検出された複数の前記相電流とこれらの相電流にそれぞれ対応する目標相電流との間、及び/又は、検出された複数の前記相電圧とこれらの相電圧に対応する目標相電圧との間の複数の前記偏差を検出し、
c)複数の前記偏差が許容範囲外にあるときに角度エラーと判定する、
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、
前記位相シフトは、前記相電流と前記目標相電流の反転のときにおいて検出されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、
前記相電流の前記反転は、同じ相の前記相電圧により特定されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法において、
前記相電圧は、空間ベクトル変調により、前記電気機械の電気的な回転から、一つのセクタに対応付けられ、前記偏差は、前記相電圧のセクタ切替えと前記目標相電圧のセクタ切替えとの間の間隔により特定されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の方法において、
前記偏差は、予め決められた期間にわたって平均され、前記偏差の平均が許容範囲外にあるときに角度エラーと判定されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の方法において、
前記制御装置は、前記目標相電流及び前記目標相電圧からずれた補償相電流及び補償相電圧を、前記偏差を小さくするように特定し、前記補償相電流及び/又は前記補償相電圧が、前記目標相電流又は前記目標相電圧から閾値以上ずれるとすぐ角度エラーと判定されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の方法において、
センサ装置がステータ装置に対するロータ装置の角度位置を測定し、センサ装置による角度エラーの検出により、前記角度エラーの判定を補うことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、
前記センサ装置は、測定信号とレファレンス信号を生成し、前記レファレンス信号に対する前記測定信号の前記偏差が許容範囲内のときに角度エラーが判定されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか一項の記載の方法において、
d)角度エラーと判定されるとすぐに、前記電気機械のスイッチが遮断されるか又は非常運転に切り替えられることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか一項の記載の方法を実施するための装置。
【請求項12】
請求項11に記載の装置において、
ステータ装置に対するロータ装置の角度位置を測定するセンサ装置を有し、当該センサ装置は、測定信号とレファレンス信号を生成することを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の装置において、
前記制御装置は、マイクロコントローラと、ゲート・ドライブ・ユニットと、三つのハーフブリッジを有するスイッチ回路と、前記巻線間の前記相電圧を測定する測定装置とを有していることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項11から13のいずれか一項に記載の装置を有した自動車のためのステアリング補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流で駆動される電気機械のステータ装置に対するロータ装置の角度エラー状態を判定する方法並びに本発明による方法を実施するための装置及び当該装置を有するステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気モータによりサポートされた自動車のステアリングの致命的な誤りが、いわゆる“セルフステアリング”である。この場合には、モータが、何らかのドライバーの意向も無いのにトルクを生じたり、或いは、生成されたトルクが、ドライバーが要求しているものよりも遥かに大きく、そのために意図しなかった自動車のステアリングが生じかねない。
【0003】
セルフステアリングの原因は、とりわけ、ロータ角度ないしモータ角度、つまりは固定位置の参照点に対するロータの角度の検出ミスにある。このエラーは、可能性としてはかなり低いけれども、その影響は極めて危険なので、何らかの監視が必ず必要となる。ここで、角度エラーは、例えば電気モータの角度が20°といった或る特定の大きさを超えた時点ではじめて危険なものとして格付けされる。このとき、完全な360°分の電気的な回転は、360°のロータの機械的な回転をコイル対の数で割ったものに相当する。
【0004】
危険な角度エラーと判定されたときには、ステアリング補助は、直ちにスイッチオフされ、これにより、システムが手動ハンドル操作による安全な状態に移行する。例えば小さな角度エラーといった危険性が少ない状態でのスイッチオフを避けるために、ステアリング補助は、弱くすることもできる。
【0005】
モータ角度の測定には、様々な方法が存在する。よくある測定は、レゾルバと呼ばれる磁気的なセンサと信号処理とにより行われる。公知の方法では、モータ角度エラーの誤りの原因は、センサ、レゾルバ及び信号処理間における全体的な作用の連鎖内での様々な箇所が考えられ得る。
【0006】
一つの原因として、例えばモータ領域では、例えばロータ軸に固定されたロータリーエンコーダが正常に固定されておらず、ずれてしまっており、そのためにロータリーエンコーダとロータ軸との関係が変わってしまうようなときがあり得る。センサ領域における原因は、例えば、磁場の歪み、金属製の異物、短絡・断線・構成部材のずれ等々に起因するセンサ素子内での誤作動、アナログないしデジタル信号処理における誤り、或いは、センサの回路が保持プレート上に正しく配置されていないこと等によって生じ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、したがって、電気機械のロータ角の信頼性のある監視を実現できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、冒頭に述べた類の方法において、電気機械が複数の巻線を有し、複数の巻線内の複数の相電流及び/又は複数の巻線間の複数の相電圧を検出する制御装置が設けられ、以下のステップ:
a) 複数の相電流のうち少なくとも一つ及び/又は複数の相電圧のうち少なくとも一つを検出し、
b) 検出された前記相電流と当該相電流に対応する目標相電流との間、及び/又は、検出された前記相電圧と当該相電圧に対応する目標相電圧との間の少なくとも一つの偏差を検出し、
c)偏差の一つが許容範囲外にあるときに角度エラーと判定する、
ステップを有する方法により解決される。
【0009】
本発明の前提となる考え方は、モータ角度が、モータ制御のための最も重要な入力量の一つであり、モータを制御するための制御回路に入力されるという点にある。誤りのある角度情報、つまり、コントローラが前提としているモータ角度と、実際のモータ角度との間にズレがあることで、実際のモータ角度に合わせられていないモータ制御になってしまう。この結果、モータ巻線内に流れる実際の相電流が、制御装置により設定される目標相電流と異なるということになる。このようなエラーがあると、実際の相電流の時間的変化が目標相電流のものからずれるという形で、相電流の偏差となって現れる。
【0010】
そのため、ステップa)では、少なくとも一つの相においてモータ巻線内に実際に流れる相電流及び/又は少なくとも一つの相に印加している相電圧が検出される。相電流は、電流センサにより直接的に測定(zurueckgemessen)することもできるし、相電圧を介して間接的に検出することもできる。
【0011】
ステップb)では、同じ相の、実際に流れる相電流と目標相電流との間の偏差が検出される。この偏差は、少なくとも一つの相について検出される。
【0012】
ステップc)では、相電流ないし相電圧と、目標相電流ないし目標相電圧との間の少なくとも一つの偏差を評価することにより角度エラーの判定が行われる。検出された各偏差は、許容範囲内になければならない。そうでないときに、角度エラーと判定される。
【0013】
代替的には、デバウンシングにより角度エラーが判定される。つまり、予め設定された回数(Haeufigkeit)における偏差が許容範囲外にあるときに、角度エラーと判定される。この場合、回数は、連続して数えてもよいし、或いは、決められた数周期内での許容差を超える回数を検出してもよい。
【0014】
本方法のステップは、一つの相の各周期において、電気機械の運転中、継続的に実施される。永久磁石同期電動機(permanenterregter Synchronmotor)の場合、ステップa)からc)が、相U,V,Wの少なくとも一つについて実行される。
【0015】
本発明による方法は、有利には、さらに以下のように実施される:
a)複数の相電流及び/又は複数の相電圧を検出し、
b)検出された複数の相電流と、これらの相電流にそれぞれに対応する複数の目標相電流との間の偏差、及び/又は、検出された複数の相電圧と、これらの相電圧に対応する複数の目標相電圧との間の偏差を検出し、
c)これらの偏差が許容範囲外にあるときに角度エラー状態と判定する。
【0016】
このようにして、存在するかもしれない偏差について、全ての相電流ないし相電圧の検証が行なわれるので、角度エラー判定の信頼性が高まる。
【0017】
本発明による方法は、有利には、さらに、相電流と当該相電流に対応する目標相電流との間の位相シフトに基づいて偏差が検出されるように構成される。位相シフトは、電気的なモータ角度に関連させて測定される。
【0018】
本発明による方法は、有利には、さらに、位相シフトが、相電流と目標相電流の反転のときにおいて検出されるように実施される。
【0019】
本発明による方法は、有利には、さらに、相電流の反転が、同じ相の相電圧により特定されるように実施される。
【0020】
本発明による方法は、有利には、さらに、空間ベクトル変調により、相電圧が、電気機械の電気的な回転から一つのセクタに対応付けられており、偏差は、相電圧のセクタ切替えと目標相電圧のセクタ切替えの間の間隔により特定されるように実施される。
【0021】
本発明による方法は、有利には、さらに、偏差は、予め決められた期間にわたって平均され、偏差の平均が許容範囲外にあるときに角度エラーと判定されるように実施される。
【0022】
好ましくは、モータの電気的な回転の間、相電圧と目標相電圧のセクタ切替えの間の位相シフトが検出され平均される。このためには、位相シフトの量を加算し、セクタ切替えの数で(通常は、6個のセクタ切替えで)割り算すればよい。
【0023】
上述の本方法の発展態様により、相電流を直接測定しない方法が可能なので、本方法は、低コストで電流センサを用いることなく代用できる。特に、大電流を用いる応用の場合には、この発展態様は特に有利である。
【0024】
本発明による方法は、有利には、さらに、制御装置は、目標相電流及び目標相電圧からずれた補償相電流及び補償相電圧を、上記偏差を小さくするように特定し、当該補償相電流及び/又は補償相電圧が、目標相電流又は目標相電圧から閾値以上ずれるとすぐに角度エラーと判定されるように実施される。補償電流ないし補償電圧は、電気機械を制御するための他の入力量であり、これにより、目標相電流ないし目標相電圧に対する実際の相電流ないし相電圧の偏差を減らすことができる。補償電流ないし補償電圧の大きさにより、取り得る角度エラーを帰納的に推定することができる。このようにして、取り得る角度エラーを判定することが、より高い信頼性と正確性をもって行うことができる。
【0025】
本発明による方法は、有利には、さらに、電気機械が、ステータ装置に対するロータ装置の角度位置を測定するセンサ装置を有し、角度エラー状態が、センサ装置と位相差とにより検出されるように実施される。
【0026】
本発明による方法は、有利には、さらに、センサ装置が、測定信号とレファレンス信号を生成し、位相差が閾値を超え、レファレンス信号に対する測定信号のずれが許容範囲内にあるときに、角度エラー
が判定されるように実施される。測定信号とレファレンス信号との間で測定される角度値は、互いに90°離れており、複素数三角関数形式(trigonometrischen Formel )を用いてセンサ測定を検証することができる。
【0027】
この発展態様により、センサ装置内でのエラーが排除されたときにはじめて、角度エラーを判定することができる。このようにして、角度エラー状態の原因を特に正確に検出することが可能になる。このために、冗長なセンサ信号間のずれが許容範囲を超えていないか点検される。超えているようであれば、センサから伝えられた角度エラー状態の原因がセンサそのものにあることを上記ずれから確かめることができる。さらに、この発展態様は、冗長な信号の比較によりセンサ内のエラーが特に速く分かり、その結果、相応の対策も速く講じることができるため、とりわけ有利である。
【0028】
本発明による方法は、有利にも、さらに、d)角度エラー状態と判定されるとすぐに、電気機械のスイッチが遮断されるか又は非常運転に切り替えられるように実施される。
【0029】
非常運転には、例えば、トルク負荷がより小さな電気機械の運転等が含まれ得る。ステアリング補助(Lenkhilfe)の場合であれば、電気機械は、非常運転においては、最小限度のステアリングの補助を提供できよう。
【0030】
また、上記の実施態様による本方法を実施する装置に係る本発明の第二の観点により課題が解決される。
【0031】
本発明による装置は、有利にはさらに、装置が、ステータ装置に対するロータ装置の角度位置を測定するセンサ装置を有し、当該センサ装置が、測定信号とレファレンス信号を生成するように構成される。
【0032】
本発明による装置は、有利にはさらに、制御装置が、マイクロコントローラと、ゲート・ドライブ・ユニットと、三つのハーフブリッジを有するスイッチ回路と、巻線間の前記相電圧を測定する測定装置とを有しているように構成される。
【0033】
さらに、本発明は、上記の実施形態による装置を備えた自動車用ステアリング補助に係る第三の観点を含む。
【0034】
他の好ましい実施形態は、以下の図に基づいた実施例の記載より明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明による方法を実施するための装置を示す図である。
【
図2a】
図1のマイクロコントローラの第一実施例を概略的に示す図である。
【
図2b】
図1のマイクロコントローラの第二実施例を概略的に示す図である。
【
図3】相電流と目標相電流の時間的変化の一例を示す図である。
【
図4】相電圧と目標相電圧の時間的変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、本発明による方法を実施する装置の概略的な構成を示す。
【0037】
この装置は、マイクロコントローラ2a,2b、ゲート・ドライブ・ユニット3、三つのハーフブリッジH1,H2,H3を有するスイッチ回路の構成のパワー出力部4及び巻線間の相電圧を測定する測定装置5を有する制御装置1を備える。パワー出力部4を介して制御装置1は電気機械7と電気的に接続されている。さらに、回転角センサとして形成されたセンサ装置6が、ステータ装置に対するロータ装置の角度位置を測定するために設けられており、このセンサ装置6が測定信号とレファレンス信号を生成し、この信号をマイクロコントローラに伝送する。
【0038】
制御装置1において、マイクロコントローラ2a,2bは、ゲート・ドライブ・ユニット3と電気的に接続されている。ゲート・ドライブ・ユニット3は、パワー出力部4と電気的に接続されている。パワー出力部4は、ハーフブリッジH1,H2,H3を備え、これらハーフブリッジが接続点HA1,HA2,HA3を介して電気機械7の巻線W1,W2,W3と電気的に接続されている。測定装置5は、接続点HA1,HA2,HA3と巻線W1,W2,W3との間に延びる配線とそれぞれ接続されており、巻線W1,W2,W3間にかかっている相電圧U,V,Wを検知する。代替的に、測定装置5の代わりに、ここでは不図示の電流センサを用いることができる。測定装置5も回転角センサ6もそれらのデータをマイクロコントローラ2に伝達する。
【0039】
図2a及び
図2bは、マイクロコントローラ2a,2bの概略的な構成を二つの異なる実施例で示すものである。
【0040】
いずれの実施例も第一の入力部20を有し、この入力部を介して、ドライバーの要望に対応するトルク信号が入る。さらに、回転角センサ6から伝達される信号を取得するための二つの入力部21a,21bがある。入力部21aは、レファレンス信号を取得する。入力部21bは、目標信号(Nutzsignal)を取得する。本実施例においては、レファレンス信号はアナログであり、目標信号はデジタルである。さらに他の入力部22が、実際の相電流80u,80v,80wないし相電圧84u,84v,84wを取得するために設けられている。
【0041】
図2aは、相電流80u,80v,80wのマイクロコントローラ2aの第一実施例を示す。
図2bには、マイクロコントローラ2bの一変形例が示されている。このマイクロコントローラは、相電圧84u,84v,84wを取得するように構成されており、そのためにさらに信号処理ユニットPWMMを有している。さらに、相電流80u,80v,80wも相電圧84u,84v,84wも取得されるような実施例も考えられる。
【0042】
マイクロコントローラ2a,2bは、さらに出力部25を有する。この出力部を介して、パルス幅が変調された信号が、ゲート・ドライブ・ユニット3への電流(Stromfluss)として伝達される。
【0043】
本発明による方法は、基本的には二つの異なる方法で実施することができる。先ず、
図2aの実施例に基づいて本方法の流れを詳しく説明する。
【0044】
先ず、相電流80u,80v,80wが電流センサを用いて検出され、マイクロコントローラ2aの解析ユニットACSに伝達される。次に、検出された相電流80u,80v,80wが解析ユニットACSにより解析される。これに関し、検出された相電流と、相に割り当てられた目標相電流82u,82v,82wの一つとの間の偏差、或いは巻線U,V,W内に流れる電流が、測定或いは相電圧84u,84v,84wに基づく計算により求められる。制御ユニットMCは、目標相電流82u,82v,82wを解析ユニットACSに入力部23を介して伝達する。解析ユニットACSは、実際の相電流80u,80v,80wと目標相電流82u,82v,82wとの間の各位相シフト83u,83v,83w(
図3参照)を検出する。好ましくは、位相シフト83u,83v,83wは、ゼロ点横断時或いは電流の反転時に検出される。解析ユニットACSにより、相電流80u,80v,80wの偏差ないし位相シフト83u,83v,83wが許容範囲外にあるときに、角度エラー状態と判定される。このような場合になると、出力部27を介して角度エラーが出力される。
【0045】
本発明による方法は、
図2bの実施例によると次のように進行する:
【0046】
先ず、相電圧84u,84v,84wが相電圧測定ユニット5により検出され、マイクロコントローラに伝達される。相電圧84u,84v,84wは、巻線ユニットU−V,U−W及びV−W間の電圧に対応する。
【0047】
相電圧は、信号処理ユニットPWMを用いることで、空間ベクトル変調により電気機械の電気的な回転からセクタ88に対応付けられる。電気機械の電気的な回転は、6個のセクタを有する。ここで、0°から360°の範囲のどの位相角度89のときに、モータの電気的回転がセクタの切替えを起こしたかが分かる。相電圧84u,84v,84wのセクタ切替えの位相角度は、信号処理ユニットPWMから解析ユニットACSへと入力部24を介して伝達される。入力部23を介して、解析ユニットは、目標相電圧85u,85v,85wがセクタ切替えを実行すべき位相角度を受け取る。解析ユニットACSによりセクタ切替え間の偏差ないし位相シフト87が求められる。解析ユニットACSは、少なくとも、セクタ切替え間の位相シフトが許容範囲外にあるときに、角度エラー状態と判定する。代替的に、予め決められた期間にわたって偏差87を平均し、偏差87の平均値が許容範囲外にあるときに、角度エラーと認定することも考えられる。
【0048】
これに代えて、本方法は、相電圧84u,84v,84wのセクタ切替えを用いて相電流80u,80v,80wの反転を検出するように実施することもできる。次に、相電流80u,80v,80wと目標相電流82u,82v,82wとの間の位相シフトが、相80u,80v,80wと目標相電流82u,82v,82wの反転に基づいて検出される。
【0049】
本方法は、さらに、制御ユニットMCにより、目標相電流及び目標相電圧からの偏差を小さくするように補償相電流及び補償相電圧が特定され、補償相電流及び/又は補償相電圧が閾値を超えるとすぐに角度エラーと判定されるように実施することができる。
【0050】
さらに、本方法の二つの実施例は、回転角センサ6を用いて追加で角度エラー状態を検出することで補うことができる。特に、測定信号のレファレンス信号に対する偏差が許容範囲内にあり、こうして先ずは回転角センサ6がエラーを有さないとなってはじめて角度エラー状態を出力することが好ましい。このために、マイクロコントローラ2a,2bは第二の解析ユニットPMASを有し、当該ユニットに、目標信号とレファレンス信号とが伝達され、これら二つの信号が比較される。許容範囲を超える測定信号とレファレンス信号との間の偏差のときに、エラーが出力部28を介して出力される。さらに、第二の解析ユニットPMASは、好ましくはEEPROM記憶素子とされた記憶ユニットに電気的に接続されている(符号29)。記憶ユニットは、モータをスイッチオフする前の最後のモータ角度位置を記憶し、運転を再度行うときにこれらを伝達する。
【0051】
さらに、本方法は補足されて、角度エラー状態と判定されるとすぐにスイッチが遮断されるか非常運転に切り替えられる。このために、マイクロコントローラ2a,2bがスイッチオフされるか、非常運転プログラムがマイクロコントローラ2a,2bにより開始される。