特許第6283746号(P6283746)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6283746少なくとも1つのポリ水素シロキサンによって表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283746
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】少なくとも1つのポリ水素シロキサンによって表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩
(51)【国際特許分類】
   C09C 1/02 20060101AFI20180208BHJP
   C09C 3/12 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   C09C1/02
   C09C3/12
【請求項の数】15
【全頁数】53
(21)【出願番号】特願2016-537203(P2016-537203)
(86)(22)【出願日】2014年8月8日
(65)【公表番号】特表2016-531986(P2016-531986A)
(43)【公表日】2016年10月13日
(86)【国際出願番号】EP2014067044
(87)【国際公開番号】WO2015028280
(87)【国際公開日】20150305
【審査請求日】2016年4月20日
(31)【優先権主張番号】13181676.1
(32)【優先日】2013年8月26日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505018120
【氏名又は名称】オムヤ インターナショナル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レンチュ,サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】イッポリート,ファビオ
(72)【発明者】
【氏名】ゲイン,パトリック・エイ・シー
【審査官】 吉田 邦久
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−051464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 1/02
C09C 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の調製方法であって、
(a)少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を提供する工程であって、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料が、沈降炭酸カルシウム(PCC)、および/または天然粉砕炭酸カルシウム(NGCC)から選択されるものである工程と;
(b)少なくとも1つのポリ水素シロキサンを提供する工程であって、少なくとも1つのポリ水素シロキサンが、以下の式Iの少なくとも1つの化合物:
【化1】
(式中、x>yであり、x+yは、5から200の範囲であり;R、R、R、R、RおよびRは、互いに独立して、水素または1個から6個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖の飽和アルキル基であり、Rは、水素またはメチル基である)である工程と;
(c)40℃から200℃の温度での1つ以上の工程において、工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を、工程(b)の少なくとも1つのポリ水素シロキサンと、添加される少なくとも1つのポリ水素シロキサンの合計量が、工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を基準として0.7mg/mから6.0mg/mになるように、接触させる工程と;
(d)接触させる工程(c)の前および/または最中および/または後に、工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を、水と、1つ以上の工程で接触させる工程と;
(e)揮発性物質発生温度が350℃以上の表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を得るように、工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の表面の少なくとも一部に、工程(b)の少なくとも1つのポリ水素シロキサンおよびこの反応生成物を含む処理層を作成する工程と
を少なくとも含む、方法。
【請求項2】
天然粉砕炭酸カルシウム(NGCC)が大理石、石灰石または白亜および/または苦灰石の1つ以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料が、
(a)重量平均粒子直径d50が0.3μmから10.0μmの範囲であり、および/または
(b)BET窒素法によって測定される比表面積(BET)が、1.0m/gから10.0m/gの範囲である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料が、揮発性物質発生温度400℃以上という特徴を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料が、少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸およびこの塩反応生成物および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸およびこの塩反応生成物および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルおよびこの塩反応生成物のみからなる処理層を含む同じフィラー材料よりも揮発性物質発生温度が高いという特徴を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料が、水分補足感受性1.2mg/gから0.1mg/gを有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
接触させる工程(d)が、接触させる工程(c)の最中に行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程(b)の少なくとも1つのポリ水素シロキサンが、未希釈化合物として与えられるか、または水性エマルションの形態で与えられる、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(b)の少なくとも1つのポリ水素シロキサンが、水性エマルションの合計重量を基準として20.0重量%から99.0重量%の量で含む水性エマルションの形態で与えられる、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料が、接触させる工程(c)を行う前に予備加熱される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料が、40℃から200℃の範囲の温度で予備加熱される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
接触させる工程(c)が、50℃から180℃の温度で行われる、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ポリエステル製品における、請求項1から12のいずれか一項に定義される方法により調製された表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の使用。
【請求項14】
ポリエステル製品が、ポリエチレンテレフタラート(PET)、再生されたポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)および/またはポリカーボネート(PC)の製品である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
請求項1ないし12のいずれか一項に記載の方法で調製された表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の疎水性を上げ、および/または水分補足感受性を下げるための、請求項1に定義される少なくとも1つのポリ水素シロキサンの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性物質発生温度が350℃以上であり、疎水性を上げ、および/または水分補足性を下げるために少なくとも1つのポリ水素シロキサンを用いることによって少なくとも部分的に表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料、このような表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を調製するための方法、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を含む繊維および/またはフィラメントおよび/または膜および/または糸および/または通気性膜、および表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料および/または繊維および/またはフィラメントおよび/または膜および/または糸および/または通気性膜を含む物品、好ましくは、ポリエステル製品におけるこの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
実用的には、フィラー材料、特に、炭酸カルシウムを含有するフィラー材料は、多くは、通常はポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステル(PES)および/またはポリアミド(PA)から作られる繊維、フィラメント、膜および/または糸のような熱可塑性ポリマー製品中の粒状フィラーとして使用される。しかし、フィラー材料にコーティングを付与し、ポリマー組成物中のフィラー材料の分散性を高め、可能ならば、このポリマー組成物の加工能および/または繊維、フィラメント、膜、糸および/または通気性膜のような最終応用製品の特性を高めるために、添加剤が導入される。このような添加剤がないと、得られる繊維、フィラメント、膜、糸および/または通気性膜の品質が望ましくない状態まで低下するだろう。さらに、このようなフィラー材料は、一般的に、このような鉱物フィラーの適用中および/またはこのようなフィラー材料を含むポリマー製品の処理中に到達する温度で発生する揮発性物質の存在と関係があることを注記すべきである。このような揮発性物質は、例えば、以下のものであり得る:
−フィラー材料に本来関連し(「本来の揮発性物質」)、特に、水に関連しているもの、および/または
−例えば、フィラー材料をポリマープラスチック媒体にさらに分散させやすくするために、フィラー材料の処理中に導入されるもの(「添加された揮発性物質」)、および/または
−本来の有機材料および/または添加された有機材料の反応、熱分解によって、および/またはフィラー材料との反応によって発生したもので、このような反応は、特に、フィラー材料を含むポリマー材料の導入および/または処理の最中に、例えば、押出成形または混合の工程中に到達する温度によって導入されるか、または促進され得、および/または
−本来の有機材料および/または添加された有機材料の分解によって発生し、CO、水および可能な場合にはこれらの有機材料の低分子量フラクションを生成するもので、このような分解は、特に、フィラー材料を含むポリマー材料の導入および/または処理の最中に、例えば、押出成形または混合の工程中に到達する温度によって導入されるか、または促進され得る。
【0003】
このような揮発性物質が存在する結果として、空隙のない繊維、フィラメント、膜、糸および/または通気性膜を調製することが困難となり、平坦ではない表面を生じさせ、そのためにこのようなフィラー材料を含む最終的なポリマー製品の品質劣化につながる場合がある。さらに、揮発性物質は、このような繊維、フィラメント、膜、糸および/または通気性膜の引張強度および引き裂き強度を低下させる場合があり、目に見える態様、特に、目に見える均一性を悪化させる場合がある。さらに、揮発性物質は、混合工程中にフィラー材料を充填したポリマー溶融物の過剰な気泡を発生させる場合があり、真空抽出時に望ましくない生成物の蓄積が起こり、これによって、出力速度を低下させる。
【0004】
炭酸カルシウムを含有するフィラー材料のような、このような改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、多くの文書に記載されている。例えば、WO00/20336は、超微細な天然炭酸カルシウムに関し、これは、場合により、1種類または数種類の脂肪酸またはこの1種類または数種類の塩またはこれらの混合物で処理され、ポリマー組成物のためのレオロジー調整剤として使用される。
【0005】
同様に、US4,407,986は、分散剤で表面処理された沈降炭酸カルシウムに関し、この沈降炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムを結晶性ポリプロピレンと共に混練するときに潤滑剤添加剤の添加を制限するために、また、ポリプロピレンの衝撃強度を制限する炭酸カルシウム凝集物の生成を避けるために、高級脂肪酸およびこの金属塩を含んでいてもよい。
【0006】
EP0 998 522は、少なくとも10個の炭素原子を含む脂肪酸を用いた、通気性膜のための表面処理された炭酸カルシウムフィラーに関し、この処理工程の前および後のフィラーは、0.1重量%未満と水分をほとんど含んではいけない。
【0007】
改良されたレオロジー特性および接着特性を有するポリ塩化ビニルに基づく、自動車のための垂れ下がらないアンダーシール組成物に関するEP0 325 114において、実施例7は、鉱物フィラーを処理するために使用される、脂肪酸と組み合わせた12−ヒドロキシステアリン酸のアンモニウム塩の混合物(重量比で1:1)を開示する。
【0008】
WO03/082966は、架橋可能および/または架橋したナノフィラー組成物に関し、これは、任意の実施形態において、ステアリン酸、ステアレート、シラン、シロキサンおよび/またはチタネートでコーティングされていてもよく、またはコーティングされていなくてもよいフィラーをさらに含んでいてもよい。このようなナノフィラー組成物は、バリア特性、強度および熱変形温度を上げ、この組成物を医療、自動車、電子機器、建築および食品の用途に有用にするために使用される。
【0009】
US2002/0102404は、フタル酸エステルのような有機化合物と飽和および不飽和の脂肪族カルボン酸およびこの塩との組み合わせで表面がコーティングされた分散可能な炭酸カルシウム粒子を記載し、接着性組成物に使用し、粘度安定性および接着特性を高める。
【0010】
さらに、US2002/0102404は、飽和および不飽和の脂肪族カルボン酸/塩の混合物の実施を必要とする。不飽和脂肪族カルボン酸/塩が存在することによって、不飽和脂肪族カルボン酸/塩を含む任意の材料の処理中に望ましくない系中での二重結合との副反応が増加する。さらに、不飽和脂肪族カルボン酸/塩の存在によって、これらが導入された材料が変色するか、または望ましくない臭気(特に、腐ったような臭い)が発生することがある。
【0011】
WO92/02587の請求項11は、少なくとも1つの高分子量の不飽和脂肪酸、または少なくとも1つの高分子量の不飽和脂肪酸と少なくとも1つの高分子量の不飽和脂肪酸の組み合わせの鹸化したナトリウム塩溶液を、沈降炭酸カルシウムの予備加熱したスラリーに添加し、最終的に、さらなる処理工程を進める前に、炭酸カルシウムの上に望ましいレベルの脂肪酸コーティングを製造してもよいことを示す。
【0012】
JP54162746の要約書は、塩化ビニル組成物の熱安定性を高めるために使用される所与の相対量の剛性塩化ビニル樹脂、脂肪酸処理されたコロイド状炭酸カルシウムおよびステアリン酸バリウムを含む組成物を開示する。
【0013】
US4,520,073は、コーティング材料の担体として蒸気を用いた多孔性鉱物の加圧コーティングによって調製された、改良された疎水性コーティングを有する鉱物フィラー材料を記載する。前記コーティング材料は、他の選択肢の中で、長鎖脂肪酸およびこの塩から選択されてもよい。
【0014】
WO01/32787は、粒子の上に、(a)アルカリ土類金属炭酸塩および少なくとも1つの所与の脂肪族カルボン酸の反応生成物を含む第1の成分と、(b)式CH(CHCOORの化合物を含み、第1の成分よりも実質的に高い炭酸放出温度を有する第2の成分とから作られる組成物を含む疎水性材料のコーティングを含む、粒状アルカリ土類金属炭酸塩材料製品を記載する。
【0015】
WO2008/077156A2は、少なくとも1つのポリマー樹脂と、平均粒径が約5ミクロン以下および/またはトップカットが約15ミクロン未満の少なくとも1つのフィラーとを含むスパンレイド繊維に関し、少なくとも1つのフィラーは、スパンレイド繊維の合計重量に対し、約40重量%未満の量で存在する。フィラーのコーティングは、脂肪酸およびこの塩およびエステル(例えば、ステアリン酸、ステアレート、ステアリン酸アンモニウム、ステアリン酸カルシウム)から選択される少なくとも1つの有機材料であるとして記載される。
【0016】
GB2 336 366Aは、充填された熱可塑性組成物に関し、特に、押出成形方法によって製品または物品に作られる、充填された低密度ポリエチレン組成物に関する。さらに、粒状鉱物フィラーが、中性からアルカリ性の表面反応物(例えば、炭酸カルシウム)を含む場合、疎水性薬剤が、好ましくは、有機カルボン酸、または8個から28個の炭素原子を含む少なくとも1つの飽和または不飽和の炭化水素鎖を有する部分的または完全に中和されたこの塩であることがさらに記載される。
【0017】
出願人は、6個から9個の炭素原子を含む飽和脂肪族カルボン酸およびこの塩から本質的になる鉱物フィラーの表面に配置された処理層を含む、少なくとも250℃の揮発性物質発生温度を与える膜用途のための炭酸カルシウムを含有する鉱物フィラー製品を記載するWO2011/147778についても知っている。
【0018】
出願人は、6個から14個の炭素原子を含む1種類以上の脂肪族アルデヒドを用い、アルデヒドの理論合計重量が0.25mg/mから5mg/mの処理レベルで、処理された鉱物フィラー製品の表面に対し、揮発性物質発生温度が少なくとも220℃の膜用途のための表面処理された鉱物フィラー製品を製造するための方法を記載するWO2011/147802についても知っている。
【0019】
出願人は、乾燥した鉱物フィラーを少なくとも1つのC8からC24の脂肪族モノカルボン酸のII族またはIII族の塩で処理し、中間体鉱物フィラー製品を製造した後、この中間体鉱物フィラー製品を第2の工程で少なくとも1つのC8からC24脂肪族モノカルボン酸で処理し、処理された鉱物フィラー製品と揮発性物質を製造し、揮発性物質は、この生成物を25℃から300℃まで加熱すると0.25質量%未満である、処理された鉱物フィラー製品を調製するための方法を記載するWO2008/125955についても知っている。
【0020】
出願人は、鉱物フィラー表面に配置された少なくとも1つの飽和C8からC24の脂肪族カルボン酸および少なくとも1つの1つ以上の飽和C8からC24脂肪族カルボン酸の二価カチオン塩および/または三価カチオン塩の処理層を、すべての脂肪族カルボン酸塩:すべての脂肪族カルボン酸の重量比が51:49から75:25になるように含み、前記処理層は、少なくとも2.5mg/mの量で存在し、25℃から280℃の合計揮発性物質は、0.25重量%未満である、表面処理された鉱物フィラー製品を記載するWO2010/023144についても知っている。
【0021】
WO2004/031302A2は、組成物の重量を基準として、5重量%から95重量%のケイ素原子を含有する疎水性型処理剤と、5重量%から95重量%のケイ素原子を含有する機能型処理剤とからなるフィラー粒子を塗布するための処理組成物に関する。
【0022】
GB2 355 453Aは、炭酸カルシウムを、環状Si−Hを含有するシロキサンまたはSi−Hを含有するシロキサンの水性エマルションを含む表面処理剤で表面処理することを含む、疎水性炭酸カルシウムを調製する方法に関する。
【0023】
WO02/096992(A2)は、種々のフィラーとポリ有機シロキサンとを含むシリコーンゴム組成物に関する。
【0024】
WO2013/004621A1は、炭酸カルシウムと有機シリコン化合物とを含む、石膏を含有する建築材料に関する。
【0025】
WO02/055596A1は、例えば、膜、特に「通気性」膜を製造するために、疎水性にし、ポリマーに組み込むという観点での鉱物フィラーの処理に関する。
【0026】
EP0 811 035A1は、熱可塑性オレフィンまたは熱可塑性エラストマーのためのフィラー組成物に関する。この組成物は、脂肪酸誘導体および場合によりシロキサン誘導体で表面処理された、ハロゲンを含まない難燃性フィラーを含む。
【0027】
WO2007/078454A2は、(a)ポリオレフィンベース樹脂と;(b)CaCO3と混合したポリオレフィン担体樹脂とを含む膜を指し、CaCO3および担体樹脂は、重量基準で15/85から80/20の比率で存在する。
【0028】
DE 958 830Cは、天然炭酸カルシウムを処理するための方法を言及する。特に、表面活性化合物(例えば、合成または天然の脂肪酸、アミノ脂肪酸、酸アミド、脂肪族アルコール、ワックスおよび樹脂)存在下、炭酸カルシウムを粉砕することが記載されている。
【0029】
US3,160,598Aは、フィラーを含むポリエチレン組成物の製造に関する。それぞれのフィラーの周囲に薄皮を生成するように調整された媒剤によって、架橋剤がフィラー粒子上に固定されることが記載されている。薄皮を生成する固定剤は、有機酸、好ましくは、飽和高級脂肪酸である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】国際公開第2000/20336号
【特許文献2】米国特許第4407986号明細書
【特許文献3】欧州特許第0998522号明細書
【特許文献4】欧州特許第0325114号明細書
【特許文献5】国際公開第2003/082966号
【特許文献6】米国特許出願公開第2002/0102404号明細書
【特許文献7】国際公開第92/02587号
【特許文献8】特許第54162746号明細書
【特許文献9】米国特許第4520073号明細書
【特許文献10】国際公開第2001/32787号
【特許文献11】国際公開第2008/077156号
【特許文献12】英国特許第2336366号明細書
【特許文献13】国際公開第2011/147778号
【特許文献14】国際公開第2011/147802号
【特許文献15】国際公開第2008/125955号
【特許文献16】国際公開第2010/023144号
【特許文献17】国際公開第2004/031302号
【特許文献18】英国特許第2355453号明細書
【特許文献19】国際公開第2002/096992号
【特許文献20】国際公開第2013/004621号
【特許文献21】国際公開第2002/055596号
【特許文献22】欧州特許第0811035号明細書
【特許文献23】国際公開第2007/078454号
【特許文献24】独国特許第958830号明細書
【特許文献25】米国特許第3160598号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
しかし、従来技術は、ポリマー組成物に適しており、以下の複雑な技術的な問題を解決する、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料をほとんど開示していない。
−フィラー材料が、対応する繊維、フィラメント、膜、糸および通気性膜製品に使用するのに十分に疎水性であり、そのため、対応する繊維、フィラメント、膜、糸および通気性膜製品をこれにより調製するポリマー組成物中において良好なフィラー材料の分散性を有する。
−フィラー材料は、高い揮発性物質発生温度、即ち、350℃以上の揮発性物質発生温度を特徴とする。
−フィラー材料は、25℃から380℃で発生する揮発性物質の合計量が制限されるという特徴を有する。
−フィラー材料は、水分吸着が例えば1.2mg/g以下であるように、水分補足感受性が低い。
−少なくとも1つの表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料が、塩交換を受けるかどうかに拘わらず、表面処理剤と接触し、上の内容を達成し、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の表面に対応するアルカリ土類金属塩を作成する、表面処理剤を特定すること。
−このようなフィラー材料を調製するための方法を提供すること。
【0032】
従って、上述の技術的な問題に対処し、特に、このような表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を含む繊維、フィラメント、膜、糸および/または通気性膜のような最終応用製品の機械的特性を高めるための表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を提供することができる、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料が依然として必要である。
【0033】
従って、本発明の目的は、改良された表面特徴を有し、特に、高い疎水性を有する表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を提供することである。さらなる目的は、繊維、フィラメント、膜、糸および/または通気性膜のような最終応用製品に改良された機械的特性を付与する、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を提供することである。さらなる目的は、350℃以上の高い揮発性物質発生温度を有する表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を提供することである。なおさらなる目的は、25℃から380℃の温度で発生する全揮発性物質の量が制限されていることを特徴とする、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を提供することである。さらなる目的は、低い水分補足感受性を特徴とする表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を提供することである。本発明の別の目的は、簡単に取り扱うことができる表面処理剤を用いることによって調製された表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を提供することである。さらなる目的は、費用対効果が高く、穏和な条件で行うことができる方法によって、即ち、激しい熱処理を避けることによって調製された表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を提供することである。さらなる目的は、本発明の以下の記載から推測することができる。
【課題を解決するための手段】
【0034】
上述の目的および他の目的は、請求項1で定義されるような主題によって解決される。
【0035】
本発明の表面改質された炭酸カルシウムを含有するフィラー材料製品の有利な実施形態は、対応するサブクレームで定義される。
【0036】
本出願の一態様によれば、揮発性物質発生温度が350℃以上の表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料であって、前記表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、
(a)少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料と、
(b)前記少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の表面の少なくとも一部に配置された処理層とを含み、ここで、
(i)前記処理層が、少なくとも1つのポリ水素シロキサンおよびこの反応生成物を含み、
(ii)前記表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料が、表面改質された炭酸カルシウムを含有するフィラー材料を基準として合計量で0.7mg/mから6.0mg/mの前記処理層を含むものである、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料が提供される。
【0037】
本願発明者らは、驚くべきことに、上述の表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料が高い疎水性を有し、そのため、繊維および/またはフィラメントおよび/または膜および/または糸および/または通気性膜のような最終応用製品に優れた機械的特性を付与することを発見した。特に、本発明の表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、高い疎水性と、非常に低い水分補足感受性と、少なくとも350℃の高い揮発性物質発生温度を与え、25℃から380℃の温度で発生する全揮発性物質の量が制限されることが発見されている。さらに、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、激しい熱処理を行うことなく調製することができ、従って、費用対効果が高く、穏和な条件で調製することができる。これに加え、当業者は、炭酸カルシウムのようなアルカリ土類金属炭酸塩が、シランカップリング剤と安定な結合を生成することを予測しない(Gelest,Inc.Morrisville、PA 19067;Product catalogue:Silane Coupling Agents−Connecting Across Boundaries;Version 2006を参照)。
【0038】
本発明の目的のために、以下の用語は、以下の意味を有すると理解されるべきである。
【0039】
本発明の目的のために、用語「フィラー材料」は、本発明の意味において、バインダーのようなさらに高価な材料の消費を減らすため、または、製品の技術的な特性を高めるために紙、プラスチック、ゴム、塗料および接着剤などのような材料に添加される物質を指す。当業者は、それぞれの分野で使用される典型的なフィラー材料を非常によく知っている。好ましくは、フィラー材料は、鉱物由来である。
【0040】
用語「アルカリ土類金属」炭酸塩を含有するフィラー材料は、本発明の意味において、2族の元素、即ち、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)およびラジウム(Ra)を含む。アルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料が、+2の酸化状態を有するカチオンの形態で「アルカリ土類」金属を含むことがさらに理解される。
【0041】
用語「アルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料」は、アルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の合計乾燥重量を基準として、少なくとも80.0重量%のアルカリ土類金属炭酸塩、好ましくは85.0重量%から99.99重量%のアルカリ土類金属炭酸塩を含む材料を指す。例えば、「アルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料」は、炭酸カルシウムを含有するフィラー材料の合計乾燥重量を基準として、少なくとも80.0重量%、好ましくは85.0重量%から99.99重量%の炭酸カルシウムを含む、炭酸カルシウムを含有するフィラー材料を指す。本発明の目的のために、用語「炭酸カルシウムを含有するフィラー材料」は、炭酸カルシウムを含有するフィラー材料が苦灰石である場合、全モル数を基準として、少なくとも50.0モル%の炭酸カルシウムを含む材料も指す。
【0042】
用語「表面改質された」アルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、本発明の意味において、アルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の表面の少なくとも一部に配置された処理層を得るように表面処理剤と接触させられたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を指す。従って、用語「処理層」は、アルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の表面の少なくとも一部に表面処理剤およびこの反応生成物を含む層を指す。
【0043】
用語「揮発性物質発生温度」は、本出願の意味において、揮発性物質(粉砕助剤を使用または使用しない粉砕、浮遊助剤または他の薬剤を使用または使用しない選鉱、および上に明示的に列挙していない他の前処理剤を含む一般的なフィラー材料調製工程の結果として導入される揮発性物質であって、以下に記載される熱重量分析に従って検出される揮発性物質を含む。)が、熱重量測定(TGA)曲線で観察されるように発生し始める温度を指し、温度の関数(x軸)として残ったサンプルの質量(y軸)をプロットし、このような曲線の作成および解釈を以下に定義する。
【0044】
用語「ポリ水素シロキサン(polyhydrogensiloxane)」は、本発明の意味において、アルキル置換基、水素および場合によりさらなる置換基で置換された、ポリシロキサン骨格を含む化合物を指す。
【0045】
用語「反応生成物」は、本発明の意味において、少なくとも1つの炭酸カルシウムを含有するフィラー材料を、少なくとも1つのポリ水素シロキサンと、接触させることによって得られる生成物を指す。
【0046】
出願人は、前記反応生成物の少なくとも一部が、適用される少なくとも1つのポリ水素シロキサンから作られることを前提とする。さらに、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の表面に配置された反応性分子が、前記反応生成物の生成に影響を与え得ることも前提とする。
【0047】
用語「水分補足感受性」は、本発明の意味において、フィラー材料の表面に吸収される水分の量を指し、+23℃(±2℃)の温度での乾燥した表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料1gあたりの水分のmg数として決定される。
【0048】
フィラー製品の「疎水性」は、前記表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の大部分を沈殿させるのに必要な、水/エタノール混合物の体積/体積基準でのエタノールに対する最少の水の比率を決定することによって、+23℃(±2℃)で評価され、ここで、前記フィラー材料は、家庭用の茶こしを通すことによって、前記水エタノール混合物の表面に堆積する。体積/体積基準は、混合する前の両方の別個の液体の体積に関係があり、そのブレンドの体積収縮を含まない。
【0049】
フィラー材料の「比表面積」(単位m/g)という用語は、本発明の意味において、吸着ガスとして窒素を用いたBET方法を用いて決定され、この方法は当業者に周知である(ISO 9277:1995)。次いで、フィラー材料の全表面積(単位m)は、処理前のフィラー材料の比表面積と質量(単位g)を掛け算することによって得られる。
【0050】
用語「乾燥した」アルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、フィラー材料の重量に対し、0.3重量%未満の水を含むフィラー材料であると理解される。水のパーセント(残留する合計含水量に等しい。)は、Coulometric Karl Fischer測定方法に従って決定され、フィラー材料は、220℃まで加熱され、含有する水は、蒸気として放出され、窒素ガスの流れ(100ml/分)を用いて単離され、Coulometric Karl Fischer単位で決定される。
【0051】
本明細書で使用され、当該技術分野で一般的に定義されるように、「d50」値は、Micromeritics Instrument CorporationのSedigraph(商標)5100(操作する装置のソフトウェアのバージョン1.04)を用いることによって行われる測定に基づいて決定され、粒子の体積または質量の50%(中点)が、特定の値に等しい直径を有する粒子によって占められている粒径であると定義される。この方法および装置は、当業者に公知であり、フィラーおよび顔料の粒度分布を決定するために一般的に用いられる。測定は、0.1重量% Na水溶液中で行われる。サンプルを、高速攪拌機および超音波を用いて分散する。
【0052】
用語「を含む(comprising)」が本明細書の記載および特許請求の範囲で使用される場合、主要なまたは主要でない機能的重要性を有する他の指定しない要素を除外しない。
【0053】
本発明の目的のために、用語「からなる(consisting of)」は、用語「を含む(comprising of)」の好ましい実施形態であると考えられる。以下、ある群が、少なくとも特定の数の実施形態を含むと定義される場合、このことは、好ましくはこれらの実施形態のみからなるある群を開示するとも理解される。
【0054】
用語「を含む(including)」または「を有する(having)」が使用されるときはいつでも、これらの用語は、上に定義したような「を含む(comprising)」と等価の意味を有する。
【0055】
単数形の名詞に言及するときに不定冠詞または定冠詞(例えば、「1つの(a)」、「1つの(an)」または「この(the)」)が使用される場合、具体的に他の内容が述べられていない限り、複数の名詞も含む。
【0056】
本発明の別の態様によれば、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の調製方法が提供され、この方法は、
(a)少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を提供する工程と;
(b)少なくとも1つのポリ水素シロキサンを提供する工程と;
(c)40℃から200℃の温度での1つ以上の工程において、工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を、工程(b)の少なくとも1つのポリ水素シロキサンと、添加される少なくとも1つのポリ水素シロキサンの合計量が、工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を基準として0.7mg/mから6.0mg/mになるように、接触させる工程と;
(d)接触させる工程(c)の前および/または最中および/または後に、工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を、水と、1つ以上の工程で接触させる工程と;
(e)揮発性物質発生温度が350℃以上の表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を得るように、工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の表面の少なくとも一部に、工程(b)の少なくとも1つのポリ水素シロキサンおよびこの反応生成物を含む処理層を作成する工程とを少なくとも含む。
【0057】
接触させる工程(d)が、接触させる工程(c)の最中に行われることが好ましい。工程(b)の少なくとも1つのポリ水素シロキサンが、未希釈化合物として与えられるか、または水性エマルションの形態で、好ましくは、少なくとも1つのポリ水素シロキサンを、水性エマルションの合計重量を基準として20.0重量%から99.0重量%、好ましくは40.0重量%から98.0重量%、最も好ましくは50.0重量%から95.0重量%の量で含む水性エマルションの形態で与えられることがさらに好ましい。工程(a)の少なくとも1つの炭酸カルシウムを含有するフィラー材料が、接触させる工程(c)を行う前に予備加熱され、好ましくは、工程(a)の少なくとも1つの炭酸カルシウムを含有するフィラー材料は、40℃から200℃、さらに好ましくは50℃から180℃、さらになお好ましくは60℃から150℃、最も好ましくは60℃から120℃の範囲の温度で予備加熱されることも好ましい。接触させる工程(c)が、50℃から180℃、さらに好ましくは60℃から150℃、最も好ましくは60℃から120℃の温度で行われることが、さらになお好ましい。
【0058】
本発明のさらなる態様によれば、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を含む、繊維および/またはフィラメントおよび/または膜および/または糸および/または通気性膜が提供される。
【0059】
本発明のなおさらなる態様によれば、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料および/または繊維および/またはフィラメントおよび/または膜および/または糸および/または通気性膜を含む物品が提供され、この物品は、衛生製品、医療用製品およびヘルスケア製品、フィルター製品、ジオテキスタイル製品、農業および園芸用の製品、衣料、履物およびかばん用の製品、家庭用および産業用の製品、PET飲料容器のような包装製品、建築用製品などを含む群から選択される。本発明のなおさらなる態様によれば、ポリエステル製品、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)、再生されたポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)および/またはポリカーボネート(PC)の製品における、揮発性物質発生温度が350℃以上の表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の使用が提供される。本発明の別の態様によれば、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の疎水性を上げ、および/または水分補足感受性を下げるための少なくとも1つのポリ水素シロキサンの使用が提供される。
【0060】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、アラゴナイト、バテライトおよびカルサイトの鉱物結晶形態の1つ以上のような沈降炭酸カルシウム(PCC)、および/または大理石、石灰石または白亜および/または苦灰石の1つ以上のような天然粉砕炭酸カルシウム(NGCC)から選択される。
【0061】
本発明の別の実施形態によれば、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、(a)重量平均粒子直径d50が0.3μmから10.0μm、好ましくは0.5μmから5.0μm、さらに好ましくは1.0μmから3.0μm、最も好ましくは1.5μmから1.8μmの範囲であり、および/または(b)BET窒素法によって測定される比表面積(BET)が、1.0m/gから10.0m/g、さらに好ましくは3.0m/gから8.0m/gの範囲である。
【0062】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つのポリ水素シロキサンは、以下の式1の少なくとも1つの化合物であり、
【0063】
【化1】
式中、x>yであり、x+yは、5から200の範囲であり;R、R、R、R、RおよびRは、互いに独立して、水素または1個から6個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖の飽和アルキル基であり、Rは、水素またはメチル基である。
【0064】
本発明のさらに別の実施形態によれば、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、揮発性物質発生温度が400℃以上、好ましくは450℃以上、最も好ましくは500℃以上という特徴を有する。
【0065】
本発明の一実施形態によれば、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸およびこの塩反応生成物および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸およびこの塩反応生成物および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルおよびこの塩反応生成物のみからなる処理層を含む同じフィラー材料よりも揮発性物質発生温度が高いという特徴を有する。
【0066】
本発明の別の実施形態によれば、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、水分補足感受性が1.2mg/gから0.1mg/g、好ましくは1.1mg/gから0.2mg/g、さらに好ましくは1.0mg/gから0.3mg/gである。
【0067】
本発明のさらに別の実施形態によれば、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、本明細書に記載の方法によって得られたものである。
【0068】
上に示されるように、揮発性物質発生温度が350℃以上の本発明の表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、(a)および(b)の項目で示されるように、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料と、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の表面の少なくとも一部に配置された処理層とを含む。以下に、本発明のさらなる詳細、特に、本発明の表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の上述の項目について言及する。
【0069】
本発明の項目(a)によれば、揮発性物質発生温度が350℃以上の表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を含む。
【0070】
本発明の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、好ましくは、炭酸マグネシウムを含有するフィラー材料、炭酸カルシウムを含有するフィラー材料およびこれらの混合物から選択されるフィラー材料を指す。本発明の一実施形態において、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、少なくとも1つの炭酸カルシウムを含有するフィラー材料である。
【0071】
例えば、本発明の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、好ましくは、天然粉砕炭酸カルシウム(NGCC)および/または沈降炭酸カルシウム(PCC)から選択される炭酸カルシウムを含有するフィラー材料を指す。
【0072】
NGCCは、炭酸カルシウムの天然で生じる形態であると理解され、石灰岩または白亜のような堆積岩から採掘されるか、または変性大理石から採掘され、粉砕、ふるい分けおよび/または濡れた形態および/または乾燥した形態で、例えば、サイクロンまたは分級機によるフラクション化のような処理によって加工される。本発明の一実施形態において、NGCCは、大理石、白亜、苦灰石、石灰岩およびこれらの混合物を含む群から選択される。
【0073】
対照的に、PCC型の炭酸カルシウムとしては、水中で微細に分割された酸化カルシウム粒子から誘導されるか、または、イオン性塩溶液からの析出によって得られるときに当該技術分野で一般的に石灰または石灰乳のスラリーと呼ばれる、水酸化カルシウムのスラリーの炭酸化によって得られる合成炭酸カルシウム生成物が挙げられる。PCCは、菱面体晶系および/または犬牙状および/またはアラゴナイトであってもよく、好ましい合成炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムは、アラゴナイト、バテライトまたはカルサイトの鉱物結晶形態またはこれらの混合物を含む。
【0074】
「少なくとも1つの」アルカリ土類カーボネートを含有するフィラー材料という表現は、1種類以上のアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料が、本発明の表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料中に存在してもよいことを意味する。
【0075】
従って、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、2種類以上のアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の混合物であってもよいことが理解される。例えば、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料が、2種類以上のアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の混合物である場合、1つのフィラー材料は、炭酸マグネシウムを含有するフィラー材料であってもよく、一方、第2のフィラー材料またはさらなるフィラー材料は、炭酸カルシウムを含有するフィラー材料であってもよい。これに加えて、またはこれに代えて、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料が、少なくとも1つの炭酸カルシウムを含有するフィラー材料である場合、少なくとも1つの炭酸カルシウムを含有するフィラー材料は、2種類以上の炭酸カルシウムを含有するフィラー材料の混合物であってもよく、即ち、1つの炭酸カルシウムを含有するフィラー材料は、大理石であってもよく、一方、第2の炭酸カルシウムを含有するフィラー材料またはさらなる炭酸カルシウムを含有するフィラー材料は、白亜、苦灰石、石灰石、アラゴナイト、バテライトまたはカルサイトの鉱物結晶形態のPCC型、およびこれらの混合物を含む群から選択されてもよい。
【0076】
本発明の一実施形態において、少なくとも1種類のアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、1種類のアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料である。好ましくは、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、大理石、白雲大理石およびこれらの混合物から選択される少なくとも1つの炭酸カルシウムを含有するフィラー材料である。
【0077】
少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料が、少なくとも1つの炭酸カルシウムを含有するフィラー材料である場合、少なくとも1つの炭酸カルシウムを含有するフィラー材料中の炭酸カルシウムの量が、少なくとも1つの炭酸カルシウムを含有するフィラー材料の合計乾燥重量を基準として、少なくとも80.0重量%、例えば、少なくとも95.0重量%、好ましくは、97.0重量%から100.0重量%、さらに好ましくは98.5重量%から99.95重量%であることが理解される。
【0078】
少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、好ましくは、粒状の材料の形態であり、製造される製品の種類に関与する材料のために従来から使用されているような粒度分布を有していてもよい。一般的に、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、重量平均粒子直径d50が0.3μmから10.0μmの範囲であることが好ましい。例えば、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、重量平均粒子直径d50が、0.5μmから5.0μm、さらに好ましくは1.0μmから3.0μm、最も好ましくは1.5μmから1.8μmの範囲である。
【0079】
さらに、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、トップカット(d98)が15.0μm以下であってもよい。例えば、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、トップカット(d98)が12.5μm以下、好ましくは10.0μm以下、最も好ましくは7.5μm以下である。
【0080】
これに加えて、またはこれに代えて、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、ISO 9277に従うBET窒素方法によって測定されるBET比表面積(BET)が、1.0m/gから10.0m/gの範囲である。例えば、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、ISO 9277に従うBET窒素方法によって測定されるBET比表面積(BET)が、3.0m/gから8.0m/gの範囲である。
【0081】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、重量平均粒子直径d50値が、0.3μmから10.0μm、好ましくは0.5μmから5.0μm、最も好ましくは1.0μmから3.0μm、または1.5μmから1.8μmの範囲であり、BET窒素方法によって測定され、窒素を用い且つISO 9277に従うBET方法を用いて測定される比表面積(BET)が、1.0m/gから10.0m/g、さらに好ましくは3.0m/gから8.0m/gの範囲である。
【0082】
例えば、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、重量平均粒子直径d50が0.3μmから10.0μm、好ましくは0.5μmから5.0μm、最も好ましくは1.0μmから3.0μm、または1.5μmから1.8μmの大理石から選択される少なくとも1つの炭酸カルシウムを含有するフィラー材料である。この場合に、少なくとも1つの炭酸カルシウムを含有するフィラー材料は、BET窒素方法によって測定され、窒素を用い且つISO 9277に従うBET方法を用いて測定される比表面積(BET)が、1.0m/gから10.0m/g、さらに好ましくは3.0m/gから8.0m/gの範囲を示す。
【0083】
少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料(例えば、炭酸カルシウムを含有するフィラー材料)が、乾燥した粉砕材料であり、材料が、濡れた状態で粉砕され、乾燥されるか、または上述の材料の混合物であることが好ましい。一般的に、粉砕工程は、任意の従来の粉砕デバイスを用いて、例えば、精錬が、主に、第2の物体(即ち、ボールミル、ロッドミル、振動ミル、ロールクラッシャー、遠心分離衝撃ミル、垂直ビーズミル、アトライタミル、ピンミル、ハンマーミル、噴霧器、シュレッダー、デクランパー、ナイフカッター、または他のこのような当業者に公知の装置の1つ以上)との衝突から得られるような条件下で行うことができる。
【0084】
少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料(例えば、炭酸カルシウムを含有するフィラー材料)が、濡れた粉砕アルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料である場合には、粉砕工程は、自己粉砕が起こるような条件で行われてもよく、および/または水平ボールミルによる粉砕、および/または当業者に公知の他のこのような方法によって行われてもよい。このようにして得られた湿式処理された粉砕アルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料(例えば、炭酸カルシウムを含有するフィラー材料)を、例えば、乾燥前の凝集、濾過または強制蒸発のような周知の方法によって洗浄し、脱水してもよい。その後の乾燥工程は、スプレー乾燥のような1つの工程で行われてもよく、または少なくとも2つの工程で、例えば、関連する含水量を、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料(例えば、炭酸カルシウムを含有するフィラー材料)の合計乾燥重量を基準として約0.5重量%以下のレベルまで下げるために、アルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料(例えば、炭酸カルシウムを含有するフィラー材料)に第1の加熱工程を行うことによって行ってもよい。フィラーの残留する合計含水量は、195℃のオーブン中、水分を放出させ、乾燥Nを用い、100ml/分で10分間、KF電量計(Mettler Toledo coulometric KF Titrator C30、Mettler oven DO 0337と組み合わせたもの)に連続的に流すKarl Fischer電量滴定方法によって測定することができる。残留する合計含水量は、検量線により測定することができ、サンプルを含まない10分間の気体の流れのブラインド(blind)を考慮に入れることができる。残留する合計含水量は、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料(例えば、炭酸カルシウムを含有するフィラー材料)に第2の加熱工程を行うことによってさらに減るだろう。乾燥が1回より多い乾燥工程によって行われる場合には、第1の工程は、熱い空気の流れの中で加熱することによって行われてもよく、一方、第2の乾燥工程およびさらなる乾燥工程は、好ましくは、対応する容器中の大気に表面処理剤を含む間接的な加熱によって行われる。少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料(例えば、炭酸カルシウムを含有するフィラー材料)に、選鉱工程(例えば、浮遊、漂白または磁気分離工程)を行い、不純物を除去することも一般的である。
【0085】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、乾燥した粉砕炭酸カルシウムを含有するフィラー材料を含む炭酸カルシウムを含有するフィラー材料である。別の実施形態において、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、水平ボールミルで湿式粉砕され、その後、周知のスプレードライ方法を用いることによって乾燥される、炭酸カルシウムを含有するフィラー材料である。
【0086】
少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料に依存して、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、残留する合計含水量が、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の合計乾燥重量を基準として、0.01重量%から1.0重量%、好ましくは0.01重量%から0.2重量%、さらに好ましくは0.02重量%から0.15重量%、最も好ましくは0.04重量%から0.15重量%である。
【0087】
例えば、湿式粉砕され、スプレードライされた大理石を、炭酸カルシウムを含有するフィラー材料である少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料として使用する場合には、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の残留する合計含水量は、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の合計乾燥重量を基準として、好ましくは、0.01重量%から0.1重量%、さらに好ましくは0.02重量%から0.08重量%、最も好ましくは0.04重量%から0.07重量%である。PCCを、炭酸カルシウムを含有するフィラー材料である少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料として使用する場合、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の残留する合計含水量は、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の合計乾燥重量を基準として、好ましくは、0.01重量%から0.2重量%、さらに好ましくは0.05重量%から0.17重量%、最も好ましくは0.05重量%から0.10重量%である。
【0088】
本発明によれば、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の表面の少なくとも一部に配置された処理層を含む。少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の表面の少なくとも一部に配置された処理層が、少なくとも1つのポリ水素シロキサンおよびこの反応生成物を含むことが本発明の具体的な要件の1つである。
【0089】
従って、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料が、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料と、少なくとも1つのポリ水素シロキサンおよびこの反応生成物を含み、好ましくは、これらからなることが理解される。
【0090】
本発明の一実施形態において、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の合計乾燥重量を基準として90.0重量%以上の量でアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を含む。例えば、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の合計乾燥重量を基準として、92.5重量%以上、好ましくは95.0重量%以上の量の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を含む。
【0091】
表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料が、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を基準として合計量で0.7mg/mから6.0mg/mの少なくとも1つのポリ水素シロキサンおよびこの反応生成物を含み、好ましくはこれらからなる処理層を含むことが、本発明のさらなる1つの要件である。例えば、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を基準として合計量で0.7mg/mから5.0mg/m、または1.0mg/mから4.0mg/mの少なくとも1つのポリ水素シロキサンおよびこの反応生成物を含み、好ましくはこれらからなる処理層を含む。
【0092】
本発明の一実施形態において、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の合計乾燥重量を基準として0.1重量%から6.0重量%の量の少なくとも1つのポリ水素シロキサンおよびこの反応生成物を含み、好ましくは、これらからなる処理層を含む。例えば、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の合計乾燥重量を基準として0.2重量%から5.0重量%、好ましくは、0.3重量%から4.5重量%の量の少なくとも1つのポリ水素シロキサンおよびこの反応生成物を含み、好ましくは、これらからなる処理層を含む。
【0093】
従って、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料が、90.0重量%以上の量の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を含み、処理層は、好ましくは、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の合計乾燥重量を基準として0.1重量%から6.0重量%の量の少なくとも1つのポリ水素シロキサンおよびこの反応生成物を含み、好ましくは、これらからなることが理解される。または、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、92.5重量%以上の量のアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を含み、処理層は、好ましくは、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の合計乾燥重量を基準として0.2重量%から5.0重量%の量の少なくとも1つのポリ水素シロキサンおよびこの反応生成物を含み、好ましくは、これらからなる。または、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、95.0重量%以上の量の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を含み、処理層は、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の合計乾燥重量を基準として0.3重量%から4.5重量%の量の少なくとも1つのポリ水素シロキサンおよびこの反応生成物を含み、好ましくは、これらからなる。
【0094】
表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の表面の少なくとも一部は、少なくとも1つのポリ水素シロキサンおよびこの反応生成物を含む処理層を含む。
【0095】
「少なくとも1つの」ポリ水素シロキサンという表現は、1種類以上のポリ水素シロキサンが処理層に存在していてもよいことを意味することが理解される。
【0096】
従って、少なくとも1つのポリ水素シロキサンが、1種類のポリ水素シロキサンであってもよいことを注記すべきである。または、少なくとも1つのポリ水素シロキサンは、2種類以上のポリ水素シロキサンの混合物であってもよい。例えば、少なくとも1つのポリ水素シロキサンは、2種類の少なくとも1つのポリ水素シロキサンのような、2種類または3種類のポリ水素シロキサンの混合物である。
【0097】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つのポリ水素シロキサンは、1種類のポリ水素シロキサンである。
【0098】
少なくとも1つのポリ水素シロキサンが、好ましくは、以下の式Iの少なくとも1つの化合物であり、
【0099】
【化2】
式中、x>yであり、x+yは、5から200の範囲であり;R、R、R、R、RおよびRは、互いに独立して、水素または1個から6個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖の飽和アルキル基であり、Rは、水素またはメチル基であることが理解される。
【0100】
例えば、少なくとも1つのポリ水素シロキサンは、式Iの少なくとも1つの化合物であり、x+yは、10から100の範囲である。
【0101】
xおよびyが正の整数であり、xが1から200の範囲であり、yが0から200の範囲であることが理解される。
【0102】
本発明の一実施形態において、yは0以上である。例えば、yは、0である。従って、xは、好ましくは、0より大きく、さらに好ましくは、3より大きく、最も好ましくは、5より大きいことが理解される。例えば、xは、5から200、または10から100である。
【0103】
本発明の一実施形態において、R、R、R、R、RおよびRは、互いに独立して、1個から6個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖の飽和アルキル基である。例えば、R、R、R、R、RおよびRは、互いに独立して、1個から6個の炭素原子を含む直鎖の飽和アルキル基である。本発明の一実施形態において、R、R、R、R、RおよびRは、互いに独立して、メチル基またはエチル基、例えばメチル基である。
【0104】
これに加えて、またはこれに代えて、Rは、メチル基である。
【0105】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つのポリ水素シロキサンは、式Iの少なくとも1つの化合物であり、x>yであり;x+yは、5から200の範囲、例えば10から100の範囲であり、R、R、R、R、R、RおよびRは、メチル基である。
【0106】
本発明の別の実施形態において、少なくとも1つのポリ水素シロキサンは、式Iの少なくとも1つの化合物であり、x>yであり;x+yは、5から200の範囲、例えば10から100の範囲であり、R、R、R、R、RおよびRは、メチル基であり、Rは、水素である。
【0107】
例えば、少なくとも1つのポリ水素シロキサンは、式Iの少なくとも1つの化合物であり、x>yであり;yは0であり、x+yは、5から200の範囲、例えば10から100の範囲であり、R、R、R、R、RおよびRは、メチル基である。従って、少なくとも1つのポリ水素シロキサンは、好ましくは、式Iの少なくとも1つの化合物であり、yは0であり、xは、5から200の範囲、例えば10から100の範囲であり、R、R、R、R、RおよびRは、メチル基である。
【0108】
少なくとも1つのポリ水素シロキサンは、数平均分子量(M)が1000g/molから10000g/molであってもよいことも理解される。本発明の一実施形態において、少なくとも1つのポリ水素シロキサンは、数平均分子量(M)が、1500g/molから5000g/mol、好ましくは1500g/molから3500g/molである。例えば、少なくとも1つのポリ水素シロキサンは、数平均分子量(M)が1700g/molから3200g/molである。
【0109】
表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の処理層は、少なくとも1つの炭酸カルシウムを含有するフィラー材料を、少なくとも1つのポリ水素シロキサンと、接触させることによって得られる反応生成物を含むことが理解される。このような場合には、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の処理層は、好ましくは、反応生成物(例えば、少なくとも1つのポリ水素シロキサンの1つ以上の架橋した反応生成物および/または1つ以上のヒドロキシル化された反応生成物)を含む。
【0110】
本発明の一実施形態において、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の処理層は、さらに、(a)少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸およびこの塩反応生成物、および/または(b)少なくとも1つの一置換無水コハク酸およびこの塩反応生成物、および/または(c)少なくとも1つのアルキルリン酸エステルおよびこの塩反応生成物を含んでいてもよい。例えば、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の処理層は、さらに、(a)少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸およびこの塩反応生成物、または(b)少なくとも1つの一置換無水コハク酸およびこの塩反応生成物、または(c)少なくとも1つのアルキルリン酸エステルおよびこの塩反応生成物を含む。
【0111】
用語「塩反応生成物」は、本発明の意味において、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を、少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルと、接触させることによって得られる生成物を指す。前記反応生成物は、適用される少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルと、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の表面に配置された反応性分子との間に作られる。
【0112】
本発明の一実施形態において、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の処理層は、さらに、(a)少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸およびこの塩反応生成物を含む。
【0113】
「少なくとも1つの」飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸という表現は、1種類以上の飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸および対応するこの塩反応生成物が、本発明の表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の処理層に存在していてもよいことを意味することが理解される。
【0114】
従って、少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸が、1種類の飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸であってもよいことを注記すべきである。または、少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸は、2種類以上の飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸の混合物であってもよい。例えば、少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸は、2種類の飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸のような、2種類または3種類の飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸の混合物であってもよい。
【0115】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸は、1種類の飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸である。
【0116】
少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸は、好ましくは、少なくとも1つの飽和の脂肪族直鎖カルボン酸、さらに好ましくは、5個から24個の炭素原子を含む少なくとも1つの飽和の脂肪族直鎖カルボン酸である。好ましくは、少なくとも1つの飽和の脂肪族直鎖カルボン酸は、モノカルボン酸であり、即ち、少なくとも1つの飽和の脂肪族直鎖カルボン酸は、1個のカルボキシル基が存在することを特徴とする。前記カルボキシル基は、炭素骨格の末端に位置する。
【0117】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの飽和の脂肪族直鎖カルボン酸は、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、トリコシル酸、リグノセリン酸およびこれらの混合物からなるカルボン酸の群から選択される。
【0118】
本発明の別の実施形態において、少なくとも1つの飽和の脂肪族直鎖カルボン酸は、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸およびこれらの混合物を含む群から選択される。好ましくは、少なくとも1つの飽和の脂肪族直鎖カルボン酸は、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0119】
例えば、少なくとも1つの飽和の脂肪族直鎖カルボン酸は、ステアリン酸である。
【0120】
表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の処理層が、少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸を含む場合、処理層は、さらに、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を、少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸と、接触させることから得られる塩反応生成物を含む。このような場合において、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の処理層は、好ましくは、塩反応生成物、例えば、少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸の1つ以上のカルシウム塩および/またはマグネシウム塩を含む。
【0121】
これに加えて、またはこれに代えて、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の処理層は、さらに、(a)少なくとも1つの一置換無水コハク酸およびこの塩反応生成物を含む。
【0122】
「少なくとも1つの」一置換無水コハク酸という表現は、1種類以上の一置換無水コハク酸およびこの対応する塩反応生成物が、本発明の表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の処理層に存在していてもよいことを意味することが理解される。
【0123】
従って、少なくとも1つの一置換無水コハク酸が、1種類の一置換無水コハク酸であってもよいことを注記すべきである。または、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、2種類以上の一置換無水コハク酸の混合物であってもよい。例えば、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、2種類の一置換無水コハク酸のような、2種類または3種類の一置換無水コハク酸の混合物であってもよい。
【0124】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、1種類の一置換無水コハク酸である。
【0125】
少なくとも1つの一置換無水コハク酸が、置換基の炭素原子の合計数がC2からC30である、直鎖、分枝鎖の脂肪族基および環状基から選択される基で一置換された無水コハク酸からなることが理解される。
【0126】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、置換基の炭素原子の合計数がC3からC20である、直鎖、分枝鎖の脂肪族基および環状基から選択される基で一置換された無水コハク酸からなる。例えば、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、置換基の炭素原子の合計数がC4からC18である、直鎖、分枝鎖の脂肪族基および環状基から選択される基で一置換された無水コハク酸からなる。
【0127】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、置換基の炭素原子の合計数がC2からC30、好ましくは、C3からC20、最も好ましくは、C4からC18である、直鎖の脂肪族基である1つの基で一置換された無水コハク酸からなる。これに加えて、またはこれに代えて、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、置換基の炭素原子の合計数がC2からC30、好ましくは、C3からC20、最も好ましくは、C4からC18である、分枝鎖の脂肪族基である1つの基で一置換された無水コハク酸からなる。
【0128】
従って、少なくとも1つの一置換無水コハク酸が、置換基の炭素原子の合計数がC2からC30、好ましくは、C3からC20、最も好ましくは、C4からC18である、直鎖または分枝鎖のアルキル基である1つの基で一置換された無水コハク酸からなることが好ましい。
【0129】
例えば、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、置換基の炭素原子の合計数がC2からC30、好ましくは、C3からC20、最も好ましくは、C4からC18である、直鎖アルキル基である1つの基で一置換された無水コハク酸からなる。これに加えて、またはこれに代えて、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、置換基の炭素原子の合計数がC2からC30、好ましくは、C3からC20、最も好ましくは、C4からC18である、分枝鎖のアルキル基である1つの基で一置換された無水コハク酸からなる。
【0130】
用語「アルキル」は、本発明の意味において、炭素および水素で構成される直鎖または分枝鎖の飽和有機化合物を指す。言い換えると、「アルキル一置換無水コハク酸」は、側鎖の無水コハク酸基を有する直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素鎖で構成される。
【0131】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、少なくとも1つのアルキル一置換無水コハク酸である。
【0132】
好ましくは、少なくとも1つのアルキル一置換無水コハク酸は、少なくとも1つの直鎖または分枝鎖のアルキル一置換無水コハク酸である。例えば、少なくとも1つのアルキル一置換無水コハク酸は、無水エチルコハク酸、無水プロピルコハク酸、無水ブチルコハク酸、無水トリイソブチルコハク酸、無水ペンチルコハク酸、無水ヘキシルコハク酸、無水ヘプチルコハク酸、無水オクチルコハク酸、無水ノニルコハク酸、無水デシルコハク酸、無水ドデシルコハク酸、無水ヘキサデカニルコハク酸、無水オクタデカニルコハク酸およびこれらの混合物を含む群から選択される。
【0133】
従って、例えば、用語「無水ブチルコハク酸」は、直鎖および分枝鎖の無水ブチルコハク酸を含むと理解される。直鎖無水ブチルコハク酸の1つの具体例は、無水n−ブチルコハク酸である。分枝鎖の無水ブチルコハク酸の具体例は、無水iso−ブチルコハク酸、無水sec−ブチルコハク酸および/または無水tert−ブチルコハク酸である。
【0134】
さらに、例えば、用語「無水ヘキサデカニルコハク酸」は、直鎖および分枝鎖の無水ヘキサデカニルコハク酸を含むと理解される。直鎖無水ヘキサデカニルコハク酸の1つの具体例は、無水n−ヘキサデカニルコハク酸である。分枝鎖の無水ヘキサデカニルコハク酸の具体例は、無水14−メチルペンタデカニルコハク酸、無水13−メチルペンタデカニルコハク酸、無水12−メチルペンタデカニルコハク酸、無水11−メチルペンタデカニルコハク酸、無水10−メチルペンタデカニルコハク酸、無水9−メチルペンタデカニルコハク酸、無水8−メチルペンタデカニルコハク酸、無水7−メチルペンタデカニルコハク酸、無水6−メチルペンタデカニルコハク酸、無水5−メチルペンタデカニルコハク酸、無水4−メチルペンタデカニルコハク酸、無水3−メチルペンタデカニルコハク酸、無水2−メチルペンタデカニルコハク酸、無水1−メチルペンタデカニルコハク酸、無水13−エチルブタデカニルコハク酸、無水12−エチルブタデカニルコハク酸、無水11−エチルブタデカニルコハク酸、無水10−エチルブタデカニルコハク酸、無水9−エチルブタデカニルコハク酸、無水8−エチルブタデカニルコハク酸、無水7−エチルブタデカニルコハク酸、無水6−エチルブタデカニルコハク酸、無水5−エチルブタデカニルコハク酸、無水4−エチルブタデカニルコハク酸、無水3−エチルブタデカニルコハク酸、無水2−エチルブタデカニルコハク酸、無水1−エチルブタデカニルコハク酸、無水2−ブチルドデカニルコハク酸、無水1−ヘキシルデカニルコハク酸、無水1−ヘキシル−2−デカニルコハク酸、無水2−ヘキシルデカニルコハク酸、無水6,12−ジメチルブタデカニルコハク酸、無水2,2−ジエチルドデカニルコハク酸、無水4,8,12−トリメチルトリデカニルコハク酸、無水2,2,4,6,8−ペンタメチルウンデカニルコハク酸、無水2−エチル−4−メチル−2−(2−メチルペンチル)−ヘプチルコハク酸および/または無水2−エチル−4,6−ジメチル−2−プロピルノニルコハク酸である。
【0135】
さらに、例えば、用語「無水オクタデカニルコハク酸」は、直鎖および分枝鎖の無水オクタデカニルコハク酸を含むことが理解される。直鎖無水オクタデカニルコハク酸の1つの具体例は、無水n−オクタデカニルコハク酸である。分枝鎖の無水ヘキサデカニルコハク酸の具体例は、無水16−メチルヘプタデカニルコハク酸、無水15−メチルヘプタデカニルコハク酸、無水14−メチルヘプタデカニルコハク酸、無水13−メチルヘプタデカニルコハク酸、無水12−メチルヘプタデカニルコハク酸、無水11−メチルヘプタデカニルコハク酸、無水10−メチルヘプタデカニルコハク酸、無水9−メチルヘプタデカニルコハク酸、無水8−メチルヘプタデカニルコハク酸、無水7−メチルヘプタデカニルコハク酸、無水6−メチルヘプタデカニルコハク酸、無水5−メチルヘプタデカニルコハク酸、無水4−メチルヘプタデカニルコハク酸、無水3−メチルヘプタデカニルコハク酸、無水2−メチルヘプタデカニルコハク酸、無水1−メチルヘプタデカニルコハク酸、無水14−エチルヘキサデカニルコハク酸、無水13−エチルヘキサデカニルコハク酸、無水12−エチルヘキサデカニルコハク酸、無水11−エチルヘキサデカニルコハク酸、無水10−エチルヘキサデカニルコハク酸、無水9−エチルヘキサデカニルコハク酸、無水8−エチルヘキサデカニルコハク酸、無水7−エチルヘキサデカニルコハク酸、無水6−エチルヘキサデカニルコハク酸、無水5−エチルヘキサデカニルコハク酸、無水4−エチルヘキサデカニルコハク酸、無水3−エチルヘキサデカニルコハク酸、無水2−エチルヘキサデカニルコハク酸、無水1−エチルヘキサデカニルコハク酸、無水2−ヘキシルドデカニルコハク酸、無水2−ヘプチルウンデカニルコハク酸、無水iso−オクタデカニルコハク酸および/または無水1−オクチル−2−デカニルコハク酸である。
【0136】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つのアルキル一置換無水コハク酸は、無水ブチルコハク酸、無水ヘキシルコハク酸、無水ヘプチルコハク酸、無水オクチルコハク酸、無水ヘキサデカニルコハク酸、無水オクタデカニルコハク酸およびこれらの混合物を含む群から選択される。
【0137】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つのアルキル一置換無水コハク酸は、1つのアルキル一置換無水コハク酸である。例えば、1つのアルキル一置換無水コハク酸は、無水ブチルコハク酸である。または、1つのアルキル一置換無水コハク酸は、無水ヘキシルコハク酸である。または、1つのアルキル一置換無水コハク酸は、無水ヘプチルコハク酸または無水オクチルコハク酸である。または、1つのアルキル一置換無水コハク酸は、無水ヘキサデカニルコハク酸である。例えば、1つのアルキル一置換無水コハク酸は、直鎖の無水ヘキサデカニルコハク酸(例えば、無水n−ヘキサデカニルコハク酸)または分枝鎖の無水ヘキサデカニルコハク酸(例えば、無水1−ヘキシル−2−デカニルコハク酸)である。または、1つのアルキル一置換無水コハク酸は、無水オクタデカニルコハク酸である。例えば、1つのアルキル一置換無水コハク酸は、直鎖の無水オクタデカニルコハク酸(例えば、無水n−オクタデカニルコハク酸)または分枝鎖の無水オクタデカニルコハク酸(例えば、無水iso−オクタデカニルコハク酸または無水1−オクチル−2−デカニルコハク酸)である。
【0138】
本発明の一実施形態において、1つのアルキル一置換無水コハク酸は、無水ブチルコハク酸、例えば、無水n−ブチルコハク酸である。
【0139】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、2種類以上のアルキル一置換無水コハク酸の混合物である。例えば、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、2種類または3種類のアルキル一置換無水コハク酸の混合物である。
【0140】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、置換基の炭素原子の合計数がC2からC30、好ましくは、C3からC20、最も好ましくは、C4からC18である、直鎖または分枝鎖のアルケニル基である1つの基で一置換された無水コハク酸からなる。
【0141】
用語「アルケニル」は、本発明の意味において、炭素および水素で構成された直鎖または分枝鎖の不飽和有機化合物を指す。前記有機化合物は、さらに、置換基に少なくとも1つの二重結合を含み、好ましくは、1つの二重結合を含む。言い換えると、「アルケニル一置換無水コハク酸」は、側鎖の無水コハク酸基を含む直鎖または分枝鎖の不飽和炭化水素鎖で構成される。用語「アルケニル」は、本発明の意味において、cis異性体およびtrans異性体を含むと理解される。
【0142】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、少なくとも1つの直鎖または分枝鎖のアルケニル一置換無水コハク酸である。例えば、少なくとも1つのアルケニル一置換無水コハク酸は、無水エテニルコハク酸、無水プロペニルコハク酸、無水ブテニルコハク酸、無水トリイソブテニルコハク酸、無水ペンテニルコハク酸、無水ヘキセニルコハク酸、無水ヘプテニルコハク酸、無水オクテニルコハク酸、無水ノネニルコハク酸、無水デセニルコハク酸、無水ドデセニルコハク酸、無水ヘキサデセニルコハク酸、無水オクタデセニルコハク酸およびこれらの混合物を含む群から選択される。
【0143】
従って、例えば、用語「無水ヘキサデセニルコハク酸」は、直鎖および分枝鎖の無水ヘキサデセニルコハク酸を含むと理解される。直鎖の無水ヘキサデセニルコハク酸の1つの具体例は、無水n−ヘキサデセニルコハク酸、例えば、無水14−ヘキサデセニルコハク酸、無水13−ヘキサデセニルコハク酸、無水12−ヘキサデセニルコハク酸、無水11−ヘキサデセニルコハク酸、無水10−ヘキサデセニルコハク酸、無水9−ヘキサデセニルコハク酸、無水8−ヘキサデセニルコハク酸、無水7−ヘキサデセニルコハク酸、無水6−ヘキサデセニルコハク酸、無水5−ヘキサデセニルコハク酸、無水4−ヘキサデセニルコハク酸、無水3−ヘキサデセニルコハク酸および/または無水2−ヘキサデセニルコハク酸である。分枝鎖の無水ヘキサデセニルコハク酸の具体例は、無水14−メチル−9−ペンタデセニルコハク酸、無水14−メチル−2−ペンタデセニルコハク酸、無水1−ヘキシル−2−デセニルコハク酸および/または無水iso−ヘキサデセニルコハク酸である。
【0144】
さらに、例えば、用語「無水オクタデセニルコハク酸」は、直鎖および分枝鎖の無水オクタデセニルコハク酸を含むと理解される。直鎖の無水オクタデセニルコハク酸の1つの具体例は、無水n−オクタデセニルコハク酸、例えば、無水16−オクタデセニルコハク酸、無水15−オクタデセニルコハク酸、無水14−オクタデセニルコハク酸、無水13−オクタデセニルコハク酸、無水12−オクタデセニルコハク酸、無水11−オクタデセニルコハク酸、無水10−オクタデセニルコハク酸、無水9−オクタデセニルコハク酸、無水8−オクタデセニルコハク酸、無水7−オクタデセニルコハク酸、無水6−オクタデセニルコハク酸、無水5−オクタデセニルコハク酸、無水4−オクタデセニルコハク酸、無水3−オクタデセニルコハク酸および/または無水2−オクタデセニルコハク酸である。分枝鎖の無水オクタデセニルコハク酸の具体例は、無水16−メチル−9−ヘプタデセニルコハク酸、無水16−メチル−7−ヘプタデセニルコハク酸、無水1−オクチル−2−デセニルコハク酸および/または無水iso−オクタデセニルコハク酸である。
【0145】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つのアルケニル一置換無水コハク酸は、無水ヘキセニルコハク酸、無水オクテニルコハク酸、無水ヘキサデセニルコハク酸、無水オクタデセニルコハク酸およびこれらの混合物を含む群から選択される。
【0146】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、1つのアルケニル一置換無水コハク酸である。例えば、1つのアルケニル一置換無水コハク酸は、無水ヘキセニルコハク酸である。または、1つのアルケニル一置換無水コハク酸は、無水オクテニルコハク酸である。または、1つのアルケニル一置換無水コハク酸は、無水ヘキサデセニルコハク酸である。例えば、1つのアルケニル一置換無水コハク酸は、直鎖の無水ヘキサデセニルコハク酸(例えば、無水n−ヘキサデセニルコハク酸)または分枝鎖の無水ヘキサデセニルコハク酸(例えば、無水1−ヘキシル−2−デセニルコハク酸)である。または、1つのアルケニル一置換無水コハク酸は、無水オクタデセニルコハク酸である。例えば、1つのアルキル一置換無水コハク酸は、直鎖の無水オクタデセニルコハク酸(例えば、無水n−オクタデセニルコハク酸)または分枝鎖の無水オクタデセニルコハク酸(例えば、無水iso−オクタデセニルコハク酸または無水1−オクチル−2−デセニルコハク酸)である。
【0147】
本発明の一実施形態において、1つのアルケニル一置換無水コハク酸は、直鎖の無水オクタデセニルコハク酸、例えば、無水n−オクタデセニルコハク酸である。本発明の別の実施形態において、1つのアルケニル一置換無水コハク酸は、直鎖の無水オクテニルコハク酸、例えば、無水n−オクテニルコハク酸である。
【0148】
少なくとも1つの一置換無水コハク酸が1つのアルケニル一置換無水コハク酸である場合、1つのアルケニル一置換無水コハク酸が、少なくとも1つの一置換無水コハク酸の合計重量を基準として95.0重量%以上、好ましくは96.5重量%以上の量で存在することが理解される。
【0149】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、2種類以上のアルケニル一置換無水コハク酸の混合物である。例えば、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、2種類または3種類のアルケニル一置換無水コハク酸の混合物である。
【0150】
少なくとも1つの一置換無水コハク酸が、2種類以上のアルケニル一置換無水コハク酸の混合物である場合、1つのアルケニル一置換無水コハク酸は、直鎖または分枝鎖の無水オクタデセニルコハク酸であり、一方、それぞれのさらなるアルケニル一置換無水コハク酸は、無水エテニルコハク酸、無水プロペニルコハク酸、無水ブテニルコハク酸、無水ペンテニルコハク酸、無水ヘキセニルコハク酸、無水ヘプテニルコハク酸、無水ノネニルコハク酸、無水ヘキサデセニルコハク酸およびこれらの混合物から選択される。例えば、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、2種類以上のアルケニル一置換無水コハク酸の混合物であり、1つのアルケニル一置換無水コハク酸は、直鎖の無水オクタデセニルコハク酸であり、それぞれのさらなるアルケニル一置換無水コハク酸は、無水エテニルコハク酸、無水プロペニルコハク酸、無水ブテニルコハク酸、無水ペンテニルコハク酸、無水ヘキセニルコハク酸、無水ヘプテニルコハク酸、無水ノネニルコハク酸、無水ヘキサデセニルコハク酸およびこれらの混合物から選択される。または、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、2種類以上のアルケニル一置換無水コハク酸の混合物であり、1つのアルケニル一置換無水コハク酸は、分枝鎖の無水オクタデセニルコハク酸であり、それぞれのさらなるアルケニル一置換無水コハク酸は、無水エテニルコハク酸、無水プロペニルコハク酸、無水ブテニルコハク酸、無水ペンテニルコハク酸、無水ヘキセニルコハク酸、無水ヘプテニルコハク酸、無水ノネニルコハク酸、無水ヘキサデセニルコハク酸およびこれらの混合物から選択される。
【0151】
例えば、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、直鎖または分枝鎖の無水ヘキサデセニルコハク酸のような1つ以上の無水ヘキサデセニルコハク酸と、直鎖または分枝鎖の無水オクタデセニルコハク酸のような1つ以上の無水オクタデセニルコハク酸を含む、2種類以上のアルケニル一置換無水コハク酸の混合物である。
【0152】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、直鎖の無水ヘキサデセニルコハク酸と、直鎖の無水オクタデセニルコハク酸とを含む2種類以上のアルケニル一置換無水コハク酸の混合物である。または、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、分枝鎖の無水ヘキサデセニルコハク酸と、分枝鎖の無水オクタデセニルコハク酸とを含む、2種類以上のアルケニル一置換無水コハク酸の混合物である。例えば、1つ以上の無水ヘキサデセニルコハク酸は、無水n−ヘキサデセニルコハク酸のような直鎖の無水ヘキサデセニルコハク酸および/または無水1−ヘキシル−2−デセニルコハク酸のような分枝鎖の無水ヘキサデセニルコハク酸である。これに加えて、またはこれに代えて、1つ以上の無水オクタデセニルコハク酸は、無水n−オクタデセニルコハク酸のような直鎖の無水オクタデセニルコハク酸および/または無水iso−オクタデセニルコハク酸および/または無水1−オクチル−2−デセニルコハク酸のような分枝鎖の無水オクタデセニルコハク酸である。
【0153】
少なくとも1つの一置換無水コハク酸が、2種類以上のアルケニル一置換無水コハク酸の混合物である場合、1つのアルケニル一置換無水コハク酸が、少なくとも1つの一置換無水コハク酸の合計重量を基準として、20.0重量%から60.0重量%、好ましくは30.0重量%から50.0重量%の量で存在することが理解される。
【0154】
例えば、少なくとも1つの一置換無水コハク酸が、直鎖または分枝鎖の無水ヘキサデセニルコハク酸のような1つ以上の無水ヘキサデセニルコハク酸と、直鎖または分枝鎖の無水ヘキサデセニルコハク酸のような1つ以上の無水オクタデセニルコハク酸のような、2種類以上のアルケニル一置換無水コハク酸の混合物である場合、1つ以上の無水オクタデセニルコハク酸が、少なくとも1つの一置換無水コハク酸の合計重量を基準として、20.0重量%から60.0重量%、好ましくは30.0重量%から50.0重量%の量で存在することが好ましい。
【0155】
少なくとも1つの一置換無水コハク酸が、少なくとも1つのアルキル一置換無水コハク酸と、少なくとも1つのアルケニル一置換無水コハク酸との混合物であってもよいことも理解される。
【0156】
少なくとも1つの一置換無水コハク酸が、少なくとも1つのアルキル一置換無水コハク酸と少なくとも1つのアルケニル一置換無水コハク酸の混合物である場合、少なくとも1つのアルキル一置換無水コハク酸のアルキル置換基と、少なくとも1つのアルケニル一置換無水コハク酸のアルケニル置換基が、好ましくは同じであることが理解される。例えば、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、無水エチルコハク酸と無水エテニルコハク酸の混合物である。または、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、無水プロピルコハク酸と無水プロペニルコハク酸の混合物である。または、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、無水ブチルコハク酸と無水ブテニルコハク酸の混合物である。または、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、無水トリイソブチルコハク酸と無水トリイソブテニルコハク酸の混合物である。または、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、無水ペンチルコハク酸と無水ペンテニルコハク酸の混合物である。または、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、無水ヘキシルコハク酸と無水ヘキセニルコハク酸の混合物である。または、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、無水ヘプチルコハク酸と無水ヘプテニルコハク酸の混合物である。または、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、無水オクチルコハク酸と無水オクテニルコハク酸の混合物である。または、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、無水ノニルコハク酸と無水ノネニルコハク酸の混合物である。または、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、無水デシルコハク酸と無水デセニルコハク酸の混合物である。または、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、無水ドデシルコハク酸と無水ドデセニルコハク酸の混合物である。または、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、無水ヘキサデカニルコハク酸と無水ヘキサデセニルコハク酸の混合物である。例えば、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、直鎖の無水ヘキサデカニルコハク酸と直鎖の無水ヘキサデセニルコハク酸の混合物、または分枝鎖の無水ヘキサデカニルコハク酸と分枝鎖の無水ヘキサデセニルコハク酸の混合物である。または、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、無水オクタデカニルコハク酸と無水オクタデセニルコハク酸の混合物である。例えば、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、直鎖の無水オクタデカニルコハク酸と直鎖の無水オクタデセニルコハク酸の混合物、または分枝鎖の無水オクタデカニルコハク酸と分枝鎖の無水オクタデセニルコハク酸の混合物である。
【0157】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの一置換無水コハク酸は、無水ノニルコハク酸と無水ノネニルコハク酸の混合物である。
【0158】
表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の処理層が、少なくとも1つの一置換無水コハク酸を含む場合、処理層は、さらに、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を、少なくとも1つの一置換無水コハク酸と、接触させて得られる塩反応生成物を含む。このような場合において、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の処理層は、好ましくは、塩反応生成物、例えば、少なくとも1つの一置換無水コハク酸の1つ以上のカルシウム塩および/またはマグネシウム塩を含む。
【0159】
これに加えて、またはこれに代えて、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の処理層は、さらに、少なくとも1つのアルキルリン酸エステルおよびこの塩反応生成物を含んでいてもよい。
【0160】
「少なくとも1つの」アルキルリン酸エステルという表現は、1種類以上のアルキルリン酸エステルおよびこの対応する塩反応生成物が、本発明の表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の処理層に存在していてもよいことを意味することが理解される。
【0161】
従って、少なくとも1つのアルキルリン酸エステルが、1種類のアルキルリン酸エステルであってもよいことを注記すべきである。または、少なくとも1つのアルキルリン酸エステルは、2種類以上のアルキルリン酸エステルの混合物であってもよい。例えば、少なくとも1つのアルキルリン酸エステルは、2種類のアルキルリン酸エステルのような、2種類または3種類のアルキルリン酸エステルの混合物であってもよい。
【0162】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つのアルキルリン酸エステルは、1種類のアルキルリン酸エステルである。
【0163】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つのアルキルリン酸エステルは、アルキルリン酸エステルのブレンドである。例えば、アルキルリン酸エステルのブレンドは、1つ以上のリン酸モノエステルおよび/または1つ以上のリン酸ジエステルおよび/または1つ以上のリン酸トリエステルおよび場合によりリン酸を含む。
【0164】
「1つ以上の」リン酸モノエステルという表現は、1種類以上のリン酸モノエステルが、本発明の表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の処理層および/またはリン酸エステルのブレンドに存在していてもよいことを意味することが理解される。
【0165】
従って、1つ以上のリン酸モノエステルが、1種類のリン酸モノエステルであってもよいことを注記すべきである。または、1つ以上のリン酸モノエステルは、2種類以上のリン酸モノエステルの混合物であってもよい。例えば、1つ以上のリン酸モノエステルは、2種類のリン酸モノエステルのような、2種類または3種類のリン酸モノエステルの混合物であってもよい。
【0166】
本発明の一実施形態において、1つ以上のリン酸モノエステルは、アルコール置換基中の炭素原子の合計数がC6からC30の不飽和または飽和、分枝鎖または直鎖の脂肪族または芳香族のアルコールから選択される1つのアルコールでエステル化されたo−リン酸分子からなる。例えば、1つ以上のリン酸モノエステルは、アルコール置換基中の炭素原子の合計数がC8からC22、さらに好ましくは、C8からC20、最も好ましくはC8からC18の不飽和または飽和、分枝鎖または直鎖の脂肪族または芳香族のアルコールから選択される1つのアルコールでエステル化されたo−リン酸分子からなる。
【0167】
本発明の一実施形態において、1つ以上のリン酸モノエステルは、ヘキシルリン酸モノエステル、ヘプチルリン酸モノエステル、オクチルリン酸モノエステル、2−エチルヘキシルリン酸モノエステル、ノニルリン酸モノエステル、デシルリン酸モノエステル、ウンデシルリン酸モノエステル、ドデシルリン酸モノエステル、テトラデシルリン酸モノエステル、ヘキサデシルリン酸モノエステル、ヘプチルノニルリン酸モノエステル、オクタデシルリン酸モノエステル、2−オクチル−1−デシルリン酸モノエステル、2−オクチル−1−ドデシルリン酸モノエステルおよびこれらの混合物を含む群から選択される。
【0168】
例えば、1つ以上のリン酸モノエステルは、2−エチルヘキシルリン酸モノエステル、ヘキサデシルリン酸モノエステル、ヘプチルノニルリン酸モノエステル、オクタデシルリン酸モノエステル、2−オクチル−1−デシルリン酸モノエステル、2−オクチル−1−ドデシルリン酸モノエステルおよびこれらの混合物を含む群から選択される。本発明の一実施形態において、1つ以上のリン酸モノエステルは、2−オクチル−1−ドデシルリン酸モノエステルである。
【0169】
「1つ以上の」リン酸ジエステルという表現は、1種類以上のリン酸ジエステルが、本発明の表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の処理層および/またはリン酸エステルのブレンドに存在していてもよいことを意味することが理解される。
【0170】
従って、1つ以上のリン酸ジエステルが、1種類のリン酸ジエステルであってもよいことを注記すべきである。または、1つ以上のリン酸ジエステルは、2種類以上のリン酸ジエステルの混合物であってもよい。例えば、1つ以上のリン酸ジエステルは、2種類のリン酸ジエステルのような、2種類または3種類のリン酸ジエステルの混合物であってもよい。
【0171】
本発明の一実施形態において、1つ以上のリン酸ジエステルは、アルコール置換基中の炭素原子の合計数がC6からC30の不飽和または飽和、分枝鎖または直鎖の脂肪族または芳香族のアルコールから選択される2つのアルコールでエステル化されたo−リン酸分子からなる。例えば、1つ以上のリン酸ジエステルは、アルコール置換基中の炭素原子の合計数がC8からC22、さらに好ましくは、C8からC20、最も好ましくはC8からC18の不飽和または飽和、分枝鎖または直鎖の脂肪族または芳香族のアルコールから選択される2つの脂肪族アルコールでエステル化されたo−リン酸分子からなる。
【0172】
リン酸をエステル化するために使用される2個のアルコールは、アルコール置換基中の炭素原子の合計数がC6からC30の同じまたは異なる不飽和または飽和、分枝鎖または直鎖、脂肪族または芳香族のアルコールから独立して選択されてもよいことが理解される。言い換えると、1つ以上のリン酸ジエステルは、同じアルコールから誘導される2つの置換基を含んでいてもよく、または、リン酸ジエステル分子は、異なるアルコールから誘導される2つの置換基を含んでいてもよい。
【0173】
本発明の一実施形態において、1つ以上のリン酸ジエステルは、ヘキシルリン酸ジエステル、ヘプチルリン酸ジエステル、オクチルリン酸ジエステル、2−エチルヘキシルリン酸ジエステル、ノニルリン酸ジエステル、デシルリン酸ジエステル、ウンデシルリン酸ジエステル、ドデシルリン酸ジエステル、テトラデシルリン酸ジエステル、ヘキサデシルリン酸ジエステル、ヘプチルノニルリン酸ジエステル、オクタデシルリン酸ジエステル、2−オクチル−1−デシルリン酸ジエステル、2−オクチル−1−ドデシルリン酸ジエステルおよびこれらの混合物を含む群から選択される。
【0174】
例えば、1つ以上のリン酸ジエステルは、2−エチルヘキシルリン酸ジエステル、ヘキサデシルリン酸ジエステル、ヘプチルノニルリン酸ジエステル、オクタデシルリン酸ジエステル、2−オクチル−1−デシルリン酸ジエステル、2−オクチル−1−ドデシルリン酸ジエステルおよびこれらの混合物を含む群から選択される。本発明の一実施形態において、1つ以上のリン酸ジエステルは、2−オクチル−1−ドデシルリン酸ジエステルである。
【0175】
用語「リン酸トリエステル」は、本発明の意味において、アルコール置換基中の炭素原子の合計数がC6からC30、好ましくは、C8からC22、さらに好ましくはC8からC20、最も好ましくはC8からC18の同じまたは異なる不飽和または飽和、分枝鎖または直鎖の脂肪族または芳香族のアルコールから選択される3つのアルコール分子でトリエステル化されたo−リン酸分子を指す。
【0176】
「1つ以上の」リン酸トリエステルという表現は、1種類以上のリン酸トリエステルが、リン酸エステルのブレンドおよび/または本発明の表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の処理層に存在していてもよいことを意味することが理解される。
【0177】
従って、1つ以上のリン酸トリエステルが、1種類のリン酸トリエステルであってもよいことを注記すべきである。または、1つ以上のリン酸トリエステルは、2種類以上のリン酸トリエステルの混合物であってもよい。例えば、1つ以上のリン酸トリエステルは、2種類のリン酸トリエステルのような、2種類または3種類のリン酸トリエステルの混合物であってもよい。
【0178】
本発明の一実施形態において、1つ以上のリン酸トリエステルは、アルコール置換基中の炭素原子の合計数がC6からC30の同じまたは異なる不飽和または飽和、分枝鎖または直鎖の脂肪族または芳香族のアルコールから選択される3つのアルコールでエステル化されたo−リン酸分子からなる。例えば、1つ以上のリン酸トリエステルは、アルコール置換基中の炭素原子の合計数がC8からC22、さらに好ましくは、C8からC20、最も好ましくはC8からC18の同じまたは異なる不飽和または飽和、分枝鎖または直鎖の脂肪族または芳香族の脂肪族アルコールから選択される3つのアルコールでエステル化されたo−リン酸分子からなる。
【0179】
リン酸をエステル化するために使用される3個のアルコールは、アルコール置換基中の炭素原子の合計数がC6からC30の不飽和または飽和、分枝鎖または直鎖、脂肪族または芳香族のアルコールから独立して選択されてもよいことが理解される。言い換えると、1つ以上のリン酸トリエステルは、同じアルコールから誘導される3つの置換基を含んでいてもよく、または、リン酸トリエステル分子は、異なるアルコールから誘導される3つの置換基を含んでいてもよい。
【0180】
本発明の一実施形態において、1つ以上のリン酸トリエステルは、アルコール置換基中の炭素原子の合計数がC6からC30の同じまたは異なる飽和の直鎖または分枝鎖の脂肪族アルコールから選択される3つのアルコールでエステル化されたo−リン酸分子からなる。例えば、1つ以上のリン酸トリエステルは、アルコール置換基中の炭素原子の合計数がC8からC22、さらに好ましくは、C8からC20、最も好ましくはC8からC18の同じまたは異なる飽和の直鎖または分枝鎖の脂肪族アルコールから選択される3つのアルコールでエステル化されたo−リン酸分子からなる。
【0181】
本発明の一実施形態において、1つ以上のリン酸トリエステルは、アルコール置換基中の炭素原子の合計数がC6からC30、好ましくは、C8からC22、さらに好ましくは、C8からC20、最も好ましくはC8からC18の飽和直鎖脂肪族アルコールから選択される3つのアルコールでエステル化されたo−リン酸分子からなる。または、1つ以上のリン酸トリエステルは、アルコール置換基中の炭素原子の合計数がC6からC30、好ましくは、C8からC22、さらに好ましくは、C8からC20、最も好ましくはC8からC18の飽和分枝鎖脂肪族アルコールから選択される3つのアルコールでエステル化されたo−リン酸分子からなる。
【0182】
本発明の一実施形態において、1つ以上のリン酸トリエステルは、ヘキシルリン酸トリエステル、ヘプチルリン酸トリエステル、オクチルリン酸トリエステル、2−エチルヘキシルリン酸トリエステル、ノニルリン酸トリエステル、デシルリン酸トリエステル、ウンデシルリン酸トリエステル、ドデシルリン酸トリエステル、テトラデシルリン酸トリエステル、ヘキサデシルリン酸トリエステル、ヘプチルノニルリン酸トリエステル、オクタデシルリン酸トリエステル、2−オクチル−1−デシルリン酸トリエステル、2−オクチル−1−ドデシルリン酸トリエステルおよびこれらの混合物を含む群から選択される。
【0183】
例えば、1つ以上のリン酸トリエステルは、2−エチルヘキシルリン酸トリエステル、ヘキサデシルリン酸トリエステル、ヘプチルノニルリン酸トリエステル、オクタデシルリン酸トリエステル、2−オクチル−1−デシルリン酸トリエステル、2−オクチル−1−ドデシルリン酸トリエステルおよびこれらの混合物を含む群から選択される。
【0184】
表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の処理層が、少なくとも1つのアルキルリン酸エステルを含む場合、処理層は、さらに、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を、少なくとも1つのアルキルリン酸エステルと、接触させて得られる塩反応生成物を含む。このような場合において、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の処理層は、好ましくは、塩反応生成物、例えば、少なくとも1つのアルキルリン酸エステルの1つ以上のカルシウム塩および/またはマグネシウム塩を含む。
【0185】
例えば、少なくとも1つのアルキルリン酸エステルが、1つ以上のリン酸モノエステルおよび/または1つ以上のリン酸ジエステルおよび/または1つ以上のリン酸トリエステルおよび場合によりリン酸を含むアルキルリン酸エステルのブレンドである場合、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の処理層は、好ましくは、塩反応生成物、例えば、1つ以上のリン酸モノエステルの1つ以上のカルシウム塩および/またはマグネシウム塩および/または1つ以上のリン酸ジエステルの1つ以上のカルシウム塩および/またはマグネシウム塩および/または場合によりリン酸の1つ以上のカルシウム塩および/またはマグネシウム塩を含む。
【0186】
表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の処理層が、少なくとも1つのポリ水素シロキサンおよびこの反応生成物に加えて、少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸およびこの塩反応生成物、および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸およびこの塩反応生成物、および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルおよびこの塩反応生成物を含む場合、ポリ水素シロキサンおよびこの反応生成物と、少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸およびこの塩反応生成物および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸およびこの塩反応生成物および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルおよびこの塩反応生成物の重量比は、100:1から100:30である。
【0187】
例えば、ポリ水素シロキサンおよびこの反応生成物と、少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸およびこの塩反応生成物および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸およびこの塩反応生成物および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルおよびこの塩反応生成物の重量比は、80:1から100:30、例えば80:10から75:20である。
【0188】
さらに、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の処理層中の少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸およびこの塩反応生成物および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸およびこの塩反応生成物および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルおよびこの塩反応生成物の合計量は、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を基準として0.2mg/mから0.7mg/mである。例えば、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の処理層中の少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸およびこの塩反応生成物および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸およびこの塩反応生成物および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルおよびこの塩反応生成物の合計量は、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を基準として、0.3mg/mから0.6mg/mである。
【0189】
本発明の一実施形態において、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸およびこの塩反応生成物および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸およびこの塩反応生成物および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルおよびこの塩反応生成物を、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の合計乾燥重量を基準として処理層中に0.02重量%から0.6重量%の量で含む。例えば、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸およびこの塩反応生成物および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸およびこの塩反応生成物および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルおよびこの塩反応生成物を、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の合計乾燥重量を基準として処理層中に0.02重量%から0.5重量%、好ましくは0.05重量%から0.4重量%の量で含む。
【0190】
少なくとも1つのポリ水素シロキサンおよびこの反応生成物、および場合により少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸およびこの塩反応生成物および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸およびこの塩反応生成物および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルおよびこの塩反応生成物を含み、好ましくは、これらからなる処理層は、好ましくは、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の表面の少なくとも一部に配置される前記処理層の合計量が、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を基準として0.7mg/mから6.0mg/m、好ましくは0.7mg/mから5.0mg/m、または1.0mg/mから4.0mg/mの量になるように存在する。
【0191】
これに加えて、またはこれに代えて、少なくとも1つのポリ水素シロキサンおよびこの反応生成物、および場合により少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸およびこの塩反応生成物および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸およびこの塩反応生成物および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルおよびこの塩反応生成物を含み、好ましくは、これらからなる処理層は、好ましくは、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の表面の少なくとも一部に配置される前記処理層の合計量が、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の合計乾燥重量を基準として0.1重量%から6.0重量%の量になるように存在する。例えば、少なくとも1つのポリ水素シロキサンおよびこの反応生成物、および場合により少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸およびこの塩反応生成物および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸およびこの塩反応生成物および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルおよびこの塩反応生成物を含み、好ましくは、これらからなる処理層は、好ましくは、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の表面の少なくとも一部に配置される前記処理層の合計量が、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の合計乾燥重量を基準として0.2重量%から5.0重量%、好ましくは0.3重量%から4.5重量%の量になるように存在する。
【0192】
さらに、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料が、特定の特徴を有することが理解される。
【0193】
特に、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、揮発性物質発生温度が350℃以上であることが本発明の1つの要件である。例えば、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、揮発性物質発生温度が400℃以上、好ましくは450℃以上、最も好ましくは500℃以上であることを特徴とする。
【0194】
これに加えて、またはこれに代えて、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、25℃から380℃での合計揮発性物質が0.25質量%未満、好ましくは0.23質量%未満、例えば、0.04質量%から0.21質量%、好ましくは0.08質量%から0.15質量%、さらに好ましくは0.1質量%から0.12質量%であることを特徴とする。
【0195】
揮発性物質発生温度に関し、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料が、好ましくは、少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸およびこの塩反応生成物および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸およびこの塩反応生成物および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルおよびこの塩反応生成物のみからなる処理層を含む同じフィラー材料よりも揮発性物質発生温度が高いことを特徴とすることを注記すべきである。言い換えると、本発明の表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、好ましくは、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料が、少なくとも1つのポリ水素シロキサンおよびこの反応生成物を含み、好ましくは、これからなる場合に、より高い揮発性物質発生温度を特徴とする。
【0196】
これに加えて、またはこれに代えて、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、水分補足感受性が低いことを特徴とする。表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の水分補足感受性が、約+23℃(±2℃)の温度での乾燥した表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の水分補足感受性の合計が1.2mg/g以下であることが好ましい。例えば、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、約+23℃(±2℃)の温度での乾燥した表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の水分補足感受性が1.2mg/gから0.1mg/g、好ましくは1.1mg/gから0.2mg/g、さらに好ましくは1.0mg/gから0.3mg/gである。
【0197】
表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、沈降方法を用いて+23℃(±2℃)で測定した、水:エタノールの体積比が8:2より大きい疎水性を有することがさらに理解される。例えば、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、沈降方法を用いて+23℃(±2℃)で測定した、水:エタノールの体積比が7:3未満の疎水性を有する。
【0198】
本発明の一実施形態において、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料(例えば、表面改質された炭酸カルシウムを含有するフィラー材料)は、以下に記載される方法によって得られている。
【0199】
本発明の別の態様によれば、上に定義されるような表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料調製方法が提供される。この方法は、
(a)少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を提供する工程と;
(b)少なくとも1つのポリ水素シロキサンを提供する工程と;
(c)40℃から200℃の温度での1つ以上の工程において、工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を、工程(b)の少なくとも1つのポリ水素シロキサンと、添加される少なくとも1つのポリ水素シロキサンの合計量が、工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を基準として0.7mg/mから6.0mg/mになるように、接触させる工程と;
(d)接触させる工程(c)の前および/または最中および/または後に、工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を、水と、1つ以上の工程で接触させる工程と;
(e)揮発性物質発生温度が350℃以上の表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を得るように、工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の表面の少なくとも一部に、工程(b)の少なくとも1つのポリ水素シロキサンおよびこの反応生成物を含む処理層を作成する工程とを少なくとも含む。
【0200】
この方法によって調製された表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料、工程(a)で提供された少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料、工程(b)で提供された少なくとも1つのポリ水素シロキサン、工程(e)の処理層で作られる少なくとも1つのポリ水素シロキサンの反応生成物に関し、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料、少なくとも1つのポリ水素シロキサンおよびこの反応生成物を定義するときは、上に示されるような定義を参照する。
【0201】
工程(b)の少なくとも1つのポリ水素シロキサンが、接触させる工程(c)に添加される少なくとも1つのポリ水素シロキサンの合計量が、工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を基準として0.7mg/mから6.0mg/mになるように提供されることが本発明の1つの要件である。本発明の一実施形態において、工程(b)の少なくとも1つのポリ水素シロキサンは、接触させる工程(c)に添加される少なくとも1つのポリ水素シロキサンの合計量が、工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を基準として0.7mg/mから5.0mg/m、または1.0mg/mから4.0mg/mになるように提供される。
【0202】
工程(a)で提供される少なくとも1種類のアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を、1つ以上の工程で、工程(b)の少なくとも1種類のポリ水素シロキサンと接触させる工程は、好ましくは、混合条件下で起こる。当業者は、これらの混合条件(例えば、混合パレットおよび混合速度の構成)を、保有する処理装置に合わせるだろう。
【0203】
本発明の一実施形態において、この方法は、連続的な方法であってもよい。この場合には、工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を、工程(b)の少なくとも1つのポリ水素シロキサンと、接触させる工程中に一定濃度の少なくとも1つのポリ水素シロキサンが提供されるような一定流量で接触させることができる。
【0204】
または、工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を、一工程で、工程(b)の少なくとも1つのポリ水素シロキサンと接触させ、この場合、前記少なくとも1つのポリ水素シロキサンを、好ましくは一度に添加する。
【0205】
別の実施形態において、本発明の方法は、バッチ方法であってもよく、即ち、工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を、1つより多い工程で、工程(b)の少なくとも1つのポリ水素シロキサンと接触させ、この場合、前記少なくとも1つのポリ水素シロキサンを、好ましくは、ほぼ等分に分けて添加する。または、少なくとも1つのポリ水素シロキサンを、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料に対し、等しくない割合で(即ち、多い量と少ない量とで)添加することもできる。
【0206】
本発明の一実施形態によれば、接触させる工程(c)は、0.1秒から1000秒の期間にわたり、バッチ方法または連続的な方法で行われる。例えば、接触させる工程(c)は、連続的な方法であり、1つまたは複数の接触させる工程を含み、合計接触時間が、0.1秒から20秒、好ましくは、0.5秒から15秒、最も好ましくは、1秒から10秒である。
【0207】
接触させる工程(c)中の温度は、好ましくは、工程(b)の少なくとも1つのポリ水素シロキサンが液体であるように調節されることが理解される。
【0208】
「液体」状態は、本発明の意味において、材料が完全に液体である状態であると定義され、言い換えると、完全に溶解している状態である。一方、溶融現象は、Dynamic Scanning Calorimetry、DSC(DIN 51005:1983−11)によって得られるエネルギー入力に対して温度をプロットした曲線で観察されるように、エネルギーを加えると一定温度で起こり、物質は、温度を上げ始めたとき、溶融が始まってから瞬間的に溶融するものとして定性される。
【0209】
液体状態の少なくとも1つのポリ水素シロキサンは、工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の表面の少なくとも一部により均一に配置することができるので、有利である。従って、工程(a)の少なくとも1つの炭酸カルシウムを含有するフィラー材料を、工程(b)の少なくとも1つのポリ水素シロキサンと、1つ以上の工程で、40℃から200℃の温度で接触させることが本発明の1つの要件である。本発明の一実施形態において、接触させる工程(c)は、50℃から180℃、さらに好ましくは60℃から150℃、最も好ましくは、60℃から120℃の温度で行われる。例えば、接触させる工程(c)は、100℃より高く120℃まで、例えば、105℃から120℃の温度で行われる。
【0210】
工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を、工程(b)の少なくとも1つのポリ水素シロキサンと接触させる工程を行うための処理時間は、1000秒以下、好ましくは500秒以下、さらに好ましくは250秒以下、最も好ましくは0.1秒から1000秒の時間行われる。例えば、接触させる工程(c)は、0.1秒から20秒、好ましくは0.5秒から15秒、最も好ましくは1秒から10秒の時間行われる。概して、工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を、工程(b)の少なくとも1つのポリ水素シロキサンと接触させる長さは、接触中に適用される処理温度によって決定づけられる。例えば、約200℃の処理温度が適用される場合、処理時間は、例えば、約0.1程度と短い。約90℃の処理温度が適用される場合、処理時間は、例えば、約1000秒程度に長いだろう。
【0211】
本方法がさらに、接触させる工程(c)の前および/または最中および/または後に、工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を、水と、1つ以上の工程で接触させることを含むことが、本発明の方法のさらなる要件である。この接触させる工程(d)は、接触させる工程(c)の前および/または最中および/または後に、工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を、水と、接触させることによってのみ、揮発性物質発生温度が350℃以上の表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料が得られるので必要である。言い換えると、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を、少なくとも1つのポリ水素シロキサンと、水が存在しない状態で接触させると、疎水性がないか、または疎水性が単に非常に低い表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料が得られる。
【0212】
例えば、接触させる工程(d)は、工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を、工程(b)の少なくとも1つのポリ水素シロキサンと、接触させる前および後に行われる。または、接触させる工程(d)は、好ましくは、工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を、工程(b)の少なくとも1つのポリ水素シロキサンと、接触させる前または後に行われる。
【0213】
工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料と水との接触が、少なくとも1つの炭酸カルシウムを含有するフィラー材料を、少なくとも1つのポリ水素シロキサンと、接触させる前および/または後に行われる場合、工程(b)の少なくとも1つのポリ水素シロキサンは、好ましくは、未希釈化合物として与えられる。言い換えると、工程(b)の少なくとも1つのポリ水素シロキサンと水を別個に添加する。
【0214】
本発明の一実施形態において、接触させる工程(d)は、接触させる工程(c)の最中に行われる。
【0215】
工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料と、水との接触が、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を、少なくとも1つのポリ水素シロキサンと、接触させている最中に行われる場合、工程(b)の少なくとも1つのポリ水素シロキサンは、好ましくは、水性エマルションの形態で与えられる。言い換えると、工程(b)の少なくとも1つのポリ水素シロキサンと水を、接触させる工程(c)で一緒に添加する。
【0216】
例えば、提供され、接触させる工程(c)の最中に添加される水性エマルションは、少なくとも1つのポリ水素シロキサンを、水性エマルションの合計重量を基準として20.0重量%から99.0重量%の量で含む。本発明の一実施形態において、接触させる工程(c)の最中に与えられる水性エマルションは、少なくとも1つのポリ水素シロキサンを、水性エマルションの合計重量を基準として40.0重量%から98.0重量%、最も好ましくは50.0重量%から95.0重量%の量で含む。
【0217】
本発明の一実施形態において、本発明の方法は、さらに、接触させる工程(c)および/または接触させる工程(d)の前および/または最中および/または後に、工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を、1つ以上の工程で、少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸、および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸、および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルと接触させることを含む。
【0218】
少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸、少なくとも1つの一置換無水コハク酸および少なくとも1つのアルキルリン酸エステルに関し、少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸、少なくとも1つの一置換無水コハク酸、少なくとも1つのアルキルリン酸エステルを定義するときは、上に示されるような定義を参照する。
【0219】
好ましくは、少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸、および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸、および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルが、純粋な化合物として、即ち、未希釈形態で添加される。
【0220】
この場合には、本発明の方法は、さらに、工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を、少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸、および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸、および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルと、接触させることを含み、このような接触は、好ましくは、工程(a)の少なくとも1つの炭酸カルシウムを含有するフィラー材料を、工程(b)の少なくとも1つのポリ水素シロキサンと、接触させる前および/または後に行われる。本発明の一実施形態において、このような少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸、および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸、および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルとの接触は、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を、少なくとも1つのポリ水素シロキサンと、接触させる前または後に行われる。
【0221】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料と、少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸、および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸、および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルとの接触は、好ましくは、工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を、工程(b)の少なくとも1つのポリ水素シロキサンと、接触させる前に行われる。または、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料と、少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸、および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸、および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルとの接触は、好ましくは、工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を、工程(b)の少なくとも1つのポリ水素シロキサンと、接触させた後に行われる。
【0222】
好ましくは、少なくとも1つのアルカリ土類炭酸塩を含有するフィラー材料と、少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸、および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸、および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルとの接触は、工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を、工程(b)の少なくとも1つのポリ水素シロキサンと、接触させている最中に行われる。言い換えると、工程(b)の少なくとも1つのポリ水素シロキサンと、少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸、および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸、および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルとを接触させる工程(c)で一緒に添加する。
【0223】
工程(b)の少なくとも1つのポリ水素シロキサンと、少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸、および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸、および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルおよび水が、接触させる工程(c)で一緒に添加される場合、工程(b)の少なくとも1つのポリ水素シロキサンは、好ましくは、水性エマルションの形態で与えられ、一方、少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸、および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸、および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルは、純粋な化合物として添加される。
【0224】
少なくとも1つのポリ水素シロキサンの、接触させる工程(c)および/または接触させる工程(d)の前および/または最中および/または後に添加される少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸および/または少なくとも1つのアルキル無水コハク酸および/またはアルキルリン酸エステルに対する重量比は、好ましくは、100:1から100:30であることが理解される。例えば、少なくとも1つのポリ水素シロキサンの、接触させる工程(c)および/または接触させる工程(d)の前および/または最中および/または後に添加される少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸および/または少なくとも1つのアルキル無水コハク酸および/またはアルキルリン酸エステルに対する重量比は、好ましくは、80:1から100:30、例えば80:10から75:20である。
【0225】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つのポリ水素シロキサンの、接触させる工程(c)および/または接触させる工程(d)の前および/または最中および/または後に添加される少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸に対する重量比は、好ましくは、100:1から100:30、さらに好ましくは、80:1から100:30、例えば80:10から75:20である。
【0226】
さらに、少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸、および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸、および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルは、接触させる工程(c)および/または接触させる工程(d)の前および/または最中および/または後に添加される少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸、および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸、および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルの合計量が、工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を基準として0.2mg/mから0.7mg/mであるように提供される。本発明の一実施形態において、少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸、および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸、および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルは、接触させる工程(c)および/または接触させる工程(d)の前および/または最中および/または後に添加される少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸、および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸、および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルの合計量が、工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を基準として0.3mg/mから0.6mg/mであるように提供される。
【0227】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸、および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸、および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルは、少なくとも1つのポリ水素シロキサンとのブレンドの状態で与えられる。
【0228】
工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料と、少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸、および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸、および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルとの1つ以上の工程でのさらなる接触は、好ましくは、混合条件下で行う。当業者は、これらの混合条件(例えば、混合パレットおよび混合速度の構成)を、保有する処理装置に合わせるだろう。
【0229】
本発明の一実施形態において、接触させる工程(c)および/または接触させる工程(d)の前および/または最中および/または後に、工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料と、少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸、および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸、および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルとを、一定濃度の少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸、および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸、および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルが、接触させる工程(c)および/または接触させる工程(d)の前および/または最中および/または後に与えられるような一定流速で接触させることができる。
【0230】
または、接触させる工程(c)および/または接触させる工程(d)の前および/または最中および/または後に、工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を、少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸、および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸、および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルと、一工程で接触させ、この場合、前記少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸、および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸、および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルは、好ましくは、一度に添加される。
【0231】
別の実施形態において、本発明の方法は、バッチ方法であってもよく、即ち、接触させる工程(c)および/または接触させる工程(d)の前および/または最中および/または後に、工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を、少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸、および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸、および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルと、1つより多い工程で接触させ、この場合、前記少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸、および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸、および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルを、好ましくは、ほぼ等分に分けて添加する。または、少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸、および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸、および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルを、接触させる工程(c)および/または接触させる工程(d)の前および/または最中および/または後に、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料に対し、等しくない割合で(即ち、多い量と少ない量とで)添加することもできる。
【0232】
本発明の一実施形態において、接触させる工程(c)を行う前に、工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を予備加熱する(即ち、活性化する。)。言い換えると、工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、接触させる工程(c)を行う前に、40℃から200℃、好ましくは、50℃から180℃、さらに好ましくは60℃から150℃、最も好ましくは60℃から120℃の温度で処理される。
【0233】
工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の予備加熱を行うための処理時間は、30分以下、好ましくは20分以下、さらに好ましくは15分以下の期間行われる。
【0234】
本発明の一実施形態において、工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の予備加熱は、接触させる工程(c)の間に導入される温度とほぼ等しい温度で行われる。
【0235】
用語「等しい」温度は、本発明の意味において、接触させる工程(c)の間に導入される温度よりも最大で20℃、好ましくは最大で15℃、さらに好ましくは10℃、最も好ましくは最大で5℃低いかまたは高い予備加熱の温度を指す。
【0236】
従って、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を得るように処理工程(e)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の表面の少なくとも一部に作られる処理層が、工程(b)で提供される少なくとも1つのポリ水素シロキサンおよびこの反応生成物と、場合により、接触させる工程(c)および/または接触させる工程(d)の前および/または最中および/または後に場合によりさらに添加される少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸およびこの塩反応生成物および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸およびこの塩反応生成物および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルおよびこの塩反応生成物を含み、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を、少なくとも1つのポリ水素シロキサン、および場合により少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルと接触させられて得られることが理解される。このような場合において、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の処理層は、好ましくは、少なくとも1つのポリ水素シロキサンの反応生成物と、場合により、少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルの塩反応生成物を含む。例えば、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の処理層は、好ましくは、少なくとも1つのポリ水素シロキサンと、場合により塩反応生成物、例えば、少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルの1つ以上のカルシウム塩および/またはマグネシウム塩の1つ以上の架橋した反応生成物および/または1つ以上のヒドロキシル化された反応生成物のような反応生成物を含む。
【0237】
少なくとも1つのポリ水素シロキサンの反応生成物、および工程(e)の処理層で作られるような任意要素の少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルの塩反応生成物に関し、少なくとも1つのポリ水素シロキサンおよびこの反応生成物、少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸およびこの塩反応生成物、少なくとも1つの一置換無水コハク酸およびこの塩反応生成物および少なくとも1つのアルキルリン酸エステルおよびこの塩反応生成物を定義するときは、上に記載した定義を参照する。
【0238】
従って、処理工程(e)で得られる表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料(即ち、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料)は、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料と、少なくとも1つのポリ水素シロキサンおよびこの反応生成物および場合により少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸およびこの塩反応生成物および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸およびこの塩反応生成物および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルおよびこの塩反応生成物を含む処理層とを含み、好ましくは、これらからなる。処理層は、処理工程(e)で、前記工程(a)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の表面に作られる。水が、好ましくは、本発明の方法の工程(e)で得られる表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料上で検出することができないことが理解される。
【0239】
処理層は、好ましくは、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の上にある少なくとも1つのポリ水素シロキサンおよびこの反応生成物および任意要素の少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸およびこの塩反応生成物および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸およびこの塩反応生成物および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルおよびこの塩反応生成物の合計重量が、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を基準として0.7mg/mから6.0mg/m、または0.7mg/mから5.0mg/m、または1.0mg/mから4.0mg/mであることを特徴とする。
【0240】
さらに、処理層は、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の表面に、少なくとも1つのポリ水素シロキサンおよびこの反応生成物と、任意要素の少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸およびこの塩反応生成物および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸およびこの塩反応生成物および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルおよびこの塩反応生成物を、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の合計乾燥重量を基準として、0.1重量%から6.0重量%の量で含む。例えば、処理層は、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の表面に、少なくとも1つのポリ水素シロキサンおよびこの反応生成物と、任意要素の少なくとも1つの飽和脂肪族の直鎖または分枝鎖のカルボン酸およびこの塩反応生成物および/または少なくとも1つの一置換無水コハク酸およびこの塩反応生成物および/または少なくとも1つのアルキルリン酸エステルおよびこの塩反応生成物を、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の合計乾燥重量を基準として、0.2重量%から5.0重量%、好ましくは0.3重量%から4.5重量%の量で含む。
【0241】
上に定義されるように、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を調製するための方法の非常に良好な結果という観点から、本発明のさらなる態様は、本発明の方法によって得ることができる表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料に関する。
【0242】
本発明の表面改質された炭酸カルシウムを含有するフィラー材料は、繊維および/またはフィラメントおよび/または膜および/または糸および/または通気性膜のような最終応用製品に優れた機械的特性を付与する。特に、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料が、ポリマー組成物中に存在するとき、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、繊維および/またはフィラメントおよび/または膜および/または糸および/または通気性膜のような最終応用製品に優れた機械的特性を付与する。
【0243】
従って、本発明は、さらなる態様において、上に定義されるような表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を含む繊維および/またはフィラメントおよび/または膜および/または糸および/または通気性膜に関する。
【0244】
用語「繊維」は、本発明の意味において、典型的には例えば機械的な方法によって結合した繊維ウェブからなる不織布のような、線状の構造を生成する繊維布地を指す。従って、用語「繊維」は、有限の構造を指すと理解される。
【0245】
用語「糸」は、本発明の意味において、典型的には例えば機械的な方法によって結合した糸ウェブからなる不織布のような、線状の構造を生成する繊維布地を指す。従って、用語「糸」は、有限の構造を指すと理解される。糸は、単糸、双糸または複数糸として構築されてもよい。双糸または複数糸が存在する場合、1本の糸の組成は、実質的に同じであってもよい。言い換えると、1本の糸の組成は、実質的に同じ成分(即ち、少なくとも1つのポリマー樹脂および表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料)を同じ量含む。または、1本の糸の組成は、異なっていてもよい。言い換えると、1本の糸の組成は、同じ成分(即ち、少なくとも1つのポリマー樹脂および表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料)をさまざまな量で含んでいてもよく、または1本の糸の組成は、異なる成分(即ち、少なくとも1つのポリマー樹脂および/または表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料が異なっていてもよい。)を同じ量含んでいてもよく、または1本の糸の成分は、異なる成分(即ち、少なくとも1つのポリマー樹脂および表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料が異なっていてもよい。)をさまざまな量で含んでいてもよい。
【0246】
用語「フィラメント」は、本発明の意味において、繊維とは構造の長さが異なる構造を指す。従って、用語「フィラメント」は、終わりのない繊維を指すと理解される。さらに、フィラメントは、モノフィラメント、バイフィラメントまたはマルチフィラメントとして構築されてもよいことが理解される。バイフィラメントまたはマルチフィラメントが存在する場合、1本のフィラメントの組成は、実質的に同じであってもよい。言い換えると、1本のフィラメントの組成は、実質的に同じ成分(即ち、少なくとも1つのポリマー樹脂および表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料)を同じ量で含む。または、1本のフィラメントの組成は、異なっていてもよい。言い換えると、1本のフィラメントの組成は、同じ組成(即ち、少なくとも1つのポリマー樹脂および表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料)をさまざまな量で含んでいてもよく、または、1本のフィラメントの組成は、異なる成分(即ち、少なくとも1つのポリマー樹脂および/または表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料が異なっていてもよい。)を同じ量含んでいてもよく、または、1本のフィラメントの組成は、異なる成分(即ち、少なくとも1つのポリマー樹脂および/または表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料が異なっていてもよい。)をさまざまな量で含んでいてもよい。
【0247】
フィラメントおよび/または繊維および/または糸の断面は、非常にさまざまな形状を有していてもよい。フィラメントおよび/または繊維および/または糸の断面形状は、好ましくは、丸形、楕円形またはn角形であってもよく、ここでnは3以上であり、例えば、nが3である。例えば、フィラメントおよび/または繊維および/または糸の断面形状は、丸形または三葉形であり、例えば丸形である。これに加えて、またはこれに代えて、フィラメントおよび/または繊維および/または糸の断面形状は、中空である。
【0248】
フィラメントおよび/または繊維および/または糸は、このようなフィラメントおよび/または繊維および/または糸を調製するために使用される当該技術分野で公知のすべての技術によって調製されてもよいことが理解される。例えば、本発明のフィラメントおよび/または繊維および/または糸は、周知の溶融紡糸方法、スパンボンド法またはステープル繊維製造によって調製することができる。
【0249】
用語「膜」および「通気性膜」は、本発明の意味において、フィラメントおよび/または繊維とは立体構造が異なる構造を指す。従って、用語「膜」および「通気性膜」は、シートを指すと理解される。
【0250】
膜および/または通気性膜は、このような膜を調製するために使用される当該技術分野で公知のすべての技術によって調製されてもよいことが理解される。例えば、本発明の膜は、延伸/配向した膜、好ましくは、押出成形によるコーティング膜、ブロー成形された膜、工業的にブロー成形された膜、モノテープ(monotape)、キャスト成形膜などを調製するために使用される周知の技術によって調製することができる。
【0251】
従って、本発明の繊維および/またはフィラメントおよび/または膜および/または糸および/または通気性膜は、本発明の表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を含み、改良された機械的特性のような改良された材料特性を有することを特徴とする。
【0252】
従って、本発明の表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料は、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料のポリマー組成物の合計重量を基準として1.0重量%から85.0重量%の少なくとも1つのポリマー樹脂を含むポリマー組成物中に有利に導入される。
【0253】
ポリマー組成物は、少なくとも1つのポリマー樹脂を含む。ポリマー樹脂は、組成物の骨格を表し、最終的な繊維および/またはフィラメントおよび/または膜および/または糸および/または通気性膜に強度、柔軟性、靱性および耐久性を与える。
【0254】
ポリマー組成物が、繊維および/またはフィラメントおよび/または膜および/または糸および/または通気性膜を調製するのに適している限り、少なくとも1つのポリマー樹脂が、特定の樹脂材料に制限されないことが理解される。
【0255】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つのポリマー樹脂は、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーである。従って、少なくとも1つのポリマー樹脂が、ポリオレフィン、ポリアミド、ハロゲンを含有するポリマーおよび/またはポリエステルのホモポリマーおよび/またはコポリマーを含む群から選択される熱可塑性ポリマーであることが好ましい。
【0256】
例えば、少なくとも1つのポリマー樹脂がポリアミドである場合、少なくとも1つのポリマー樹脂は、好ましくは、ナイロンである。
【0257】
これに加えて、またはこれに代えて、少なくとも1つのポリマー樹脂は、ポリオレフィンのホモポリマーおよび/またはコポリマーである。例えば、少なくとも1つのポリマー樹脂は、ポリオレフィンのホモポリマーおよびコポリマーである。または、少なくとも1つのポリマー樹脂は、ポリオレフィンのホモポリマーまたはコポリマーである。
【0258】
少なくとも1つのポリマー樹脂は、好ましくは、ポリオレフィンのホモポリマーであることが理解される。
【0259】
例えば、ポリオレフィンは、ポリエチレンおよび/またはポリプロピレンおよび/またはポリブチレンであってもよい。従って、ポリオレフィンがポリエチレンである場合、ポリオレフィンは、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)のようなポリエチレンのホモポリマーおよび/またはコポリマーを含む群から選択される。
【0260】
例えば、ポリオレフィンは、ポリエチレンのホモポリマーおよび/またはコポリマーである。
【0261】
本発明で使用されるポリエチレンのホモポリマーという表現は、ポリエチレンの合計重量を基準として実質的に(即ち、99.7重量%を超える、さらになお好ましくは、少なくとも99.8重量%の)エチレン単位からなるポリエチレンを含むポリエチレンに関する。例えば、ポリエチレンのホモポリマー中にエチレン単位のみを検出することができる。
【0262】
ポリマー組成物の少なくとも1つのポリマー樹脂が、ポリエチレンのコポリマーを含む場合には、ポリエチレンは、エチレンから誘導可能な単位を主要成分として含有することが理解される。従って、ポリエチレンのコポリマーは、ポリエチレンの合計重量を基準として、少なくとも55.0重量%のエチレンから誘導可能な単位、さらに好ましくは、少なくとも60.0重量%のエチレンから誘導可能な単位を含む。例えば、ポリエチレンのコポリマーは、ポリエチレンの合計重量を基準として、60.0重量%から99.5重量%、さらに好ましくは90.0重量%から99.0重量%のエチレンから誘導可能な単位を含む。このようなポリエチレンのコポリマー中に存在するコモノマーは、CからC10のα−オレフィン、好ましくは、1−ブテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンであり、後者が特に好ましい。
【0263】
これに加えて、またはこれに代えて、ポリオレフィンは、ポリプロピレンのホモポリマーおよび/またはコポリマーである。
【0264】
本発明全体で使用されるポリプロピレンのホモポリマーという表現は、ポリプロピレンの合計重量を基準として、実質的に(即ち、99.0重量%を超える、さらになお好ましくは、少なくとも99.5重量%の、例えば少なくとも99.8重量%の)プロピレン単位からなるポリプロピレンに関する。好ましい実施形態において、ポリプロピレンのホモポリマー中にプロピレン単位のみを検出することができる。
【0265】
ポリマー組成物の少なくとも1つのポリマー樹脂が、ポリプロピレンのコポリマーを含む場合には、ポリプロピレンは、好ましくは、プロピレンから誘導可能な単位を主要成分として含む。ポリプロピレンのコポリマーは、好ましくは、プロピレンから誘導される単位と、Cおよび/または少なくとも1つのCからC10のα−オレフィンを含み、好ましくは、これらからなる。本発明の一実施形態において、ポリプロピレンのコポリマーは、プロピレンから誘導される単位と、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンからなる群から選択される少なくとも1つのα−オレフィンを含み、好ましくは、これらからなる。例えば、ポリプロピレンのコポリマーは、プロピレンから誘導される単位と、エチレンとを含み、好ましくは、これらからなる。本発明の一実施形態において、プロピレンから誘導可能な単位は、ポリプロピレンの主要な部分を構成し、即ち、ポリプロピレンの合計重量を基準として、少なくとも60.0重量%、好ましくは、少なくとも70.0重量%、さらに好ましくは、少なくとも80.0重量%、さらになお好ましくは、60重量%から99.0重量%、さらになお好ましくは、70.0重量%から99.0重量%、最も好ましくは、80.0重量%から99.0重量%を構成する。ポリプロピレンのコポリマー中のCおよび/または少なくとも1つのCからC10のα−オレフィンから誘導される単位の量は、ポリプロピレンのコポリマーの合計重量を基準として、1.0重量%から40.0重量%、さらに好ましくは、1.0重量%から30.0重量%、最も好ましくは、1.0重量%から20.0重量%の範囲である。
【0266】
ポリプロピレンのコポリマーが、プロピレンおよびエチレンから誘導される単位のみを含む場合、エチレンの量は、ポリプロピレンのコポリマーの合計重量を基準として、好ましくは、1.0重量%から20.0重量%、好ましくは、1.0重量%から15.0重量%、最も好ましくは、1.0重量%から10.0重量%の範囲である。従って、プロピレンの量は、ポリプロピレンのコポリマーの合計重量を基準として、好ましくは、80.0重量%から99.0重量%、好ましくは、85.0重量%から99.0重量%、最も好ましくは、90.0重量%から99.0重量%の範囲である。
【0267】
これに加えて、またはこれに代えて、ポリオレフィンは、ポリブチレンのホモポリマーおよび/またはコポリマーである。
【0268】
本発明で使用されるポリブチレンのホモポリマーという表現は、ポリブチレンの合計重量を基準として実質的に(即ち、99.0重量%を超える、さらになお好ましくは、少なくとも99.5重量%の、例えば、少なくとも99.8重量%の)ブチレン単位からなるポリブチレンに関する。好ましい実施形態において、ポリブチレンのホモポリマー中にブチレン単位のみを検出することができる。
【0269】
ポリマー組成物の少なくとも1つのポリマー樹脂が、ポリブチレンのコポリマーを含む場合には、好ましくは、ポリブチレンは、ブチレンから誘導可能な単位を主要成分として含有する。ポリブチレンのコポリマーは、好ましくは、ブチレンから誘導される単位と、Cおよび/またはCおよび/または少なくとも1つのCからC10のα−オレフィンを含み、好ましくは、これらからなる。本発明の一実施形態において、ポリブチレンのコポリマーは、ブチレンから誘導される単位と、エチレン、1−プロペン、1−ペンテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンからなる群から選択される少なくとも1つのα−オレフィンを含み、好ましくは、これらからなる。例えば、ポリブチレンのコポリマーは、ブチレンから誘導される単位とエチレンを含み、好ましくは、これらからなる。本発明の一実施形態において、ブチレンから誘導可能な単位は、ポリブチレンの合計重量を基準として、ポリブチレンの主要部分(即ち、少なくとも60.0重量%、好ましくは、少なくとも70.0重量%、さらに好ましくは、少なくとも80.0重量%、さらになお好ましくは、60.0重量%から99.0重量%、さらになお好ましくは、70.0重量%から99.0重量%、最も好ましくは、80.0重量%から99.0重量%)を構成する。ポリブチレンのコポリマー中のCおよび/またはCおよび/または少なくとも1つのCからC10のα−オレフィンから誘導される単位の量は、ポリブチレンのコポリマーの合計重量を基準として、1.0重量%から40.0重量%、さらに好ましくは、1重量%から30重量%、最も好ましくは、1.0重量%から20.0重量%である。
【0270】
少なくとも1つのポリマー樹脂が、ハロゲンを含有するポリマーのホモポリマーおよび/またはコポリマーである場合、少なくとも1つのポリマー樹脂は、好ましくは、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から選択される。
【0271】
少なくとも1つのポリマー樹脂が、ポリエステルのホモポリマーおよび/またはコポリマーである場合、少なくとも1つのポリマー樹脂は、好ましくは、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート(PTT)、再生されたポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)から選択されるだけではなく、分解性ポリエステル、例えば、ポリ乳酸(ポリラクチドPLA)からも選択される。
【0272】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つのポリマー樹脂は、ポリエチレンおよび/またはポリプロピレンおよび/またはポリブチレンのホモポリマーである。例えば、少なくとも1つのポリマー樹脂は、ポリエチレンとポリプロピレンのホモポリマーである。または、少なくとも1つのポリマー樹脂は、ポリエチレンまたはポリプロピレンのホモポリマーである。本発明の一実施形態において、少なくとも1つのポリマー樹脂は、ポリプロピレンのホモポリマーである。
【0273】
「少なくとも1つの」ポリマー樹脂という表現は、1種類以上のポリマー樹脂が、ポリマー組成物中に存在していてもよいことを意味する。
【0274】
従って、少なくとも1つのポリマー樹脂が、2種類以上のポリマー樹脂の混合物であってもよいことが理解される。例えば、少なくとも1つのポリマー樹脂が、2種類以上のポリマー樹脂の混合物である場合、1種類のポリマー樹脂は、ポリプロピレンのホモポリマーまたはコポリマーであり、一方、第2のポリマー樹脂またはさらなるポリマー樹脂は、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリアミド、ポリエステル、ハロゲンを含有するポリマーおよびこれらの混合物のホモポリマーおよび/またはコポリマーを含む群から選択される。
【0275】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つのポリマー樹脂は、1種類のポリマー樹脂である。好ましくは、少なくとも1つのポリマー樹脂は、ポリエチレンテレフタラート(PET)、再生されたポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)および/またはポリカーボネート(PC)のようなポリエステルである。
【0276】
ポリマー組成物のさらなる必須成分は、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料である。表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料およびこの好ましい実施形態の定義に関し、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を記述するときに上に与えられる注釈が参照される。
【0277】
ポリマー組成物は、好ましくは、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を、ポリマー組成物の合計重量を基準として1.0重量%から85.0重量%の量で含むことが理解される。
【0278】
本発明の一実施形態において、ポリマー組成物は、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を、ポリマー組成物の合計重量を基準として、5.0重量%から85.0重量%、好ましくは10.0重量%から85.0重量%の量で含む。例えば、ポリマー組成物は、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料を、ポリマー組成物の合計重量を基準として15.0重量%から80.0重量%の量で含む。
【0279】
上に定義されるように、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の揮発性物質発生温度に関して得られる非常に良好な結果という観点から、本発明のさらなる態様は、ポリエステル製品、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)、再生されたポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)および/またはポリカーボネート(PC)の製品における、上に定義されるような揮発性物質発生温度が350℃以上の表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の使用に関する。本発明のなおさらなる態様は、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の疎水性を上げ、および/または水分補足感受性を下げるための少なくとも1つのポリ水素シロキサンの使用に関する。少なくとも1つのポリ水素シロキサンに関し、少なくとも1つのポリ水素シロキサンを定義するときは、上に記載される定義を参照する。本発明の一実施形態において、少なくとも1つのポリ水素シロキサンは、表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の疎水性を上げ、水分補足感受性を下げるために使用される。
【0280】
本発明の別の態様は、上に定義されるような表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料および/または繊維および/またはフィラメントおよび/または膜および/または糸および/または通気性膜を含む物品に関する。物品は、好ましくは、衛生製品、医療用製品およびヘルスケア製品、フィルター製品、ジオテキスタイル製品、農業および園芸用の製品、衣料、履物およびかばん用の製品、家庭用および産業用の製品、PET飲料容器のような包装製品、建築用製品などを含む群から選択される。
【0281】
好ましくは、衛生製品は、赤ちゃん用おしめまたはおむつ、女性用衛生製品、成人用失禁製品、脱毛ストリップ、包帯および創傷包帯、使い捨て入浴タオルおよびフェイスタオル、使い捨てスリッパおよび履物、トップシートまたはカバーストック、コンシューマーフェイスマスク、レッグカフ、捕集/分配層、コアラップ、バックシート、ストレッチイヤー、ランディングゾーン、粉付けおよび固定システムのような吸収性衛生製品;および拭き取り布、例えば、濡れた拭き取り布、スキンケア用拭き取り布、赤ちゃん用拭き取り布、顔用拭き取り布、クレンジング用拭き取り布、手および身体用の拭き取り布、濡れティッシュ、個人衛生用拭き取り布、女性用衛生拭き取り布、抗菌性拭き取り布および医療用拭き取り布を含む群から選択される。
【0282】
好ましくは、医療用製品およびヘルスケア製品は、滅菌されていてもよい医療用製品、医療用包装、手術用使い捨てキャップのようなキャップ、保護衣料、手術用ガウン、手術用マスクおよびフェイスマスク、手術用手術着、手術用カバー、手術用ドレープ、ラップ、パック、スポンジ、手当用品、拭き取り布、ベッドリネン、汚染制御ガウン、実験用ガウン、実験用コート、アイソレーションガウン、経皮薬物送達、白布、アンダーパッド、手術パック、ヒートパック、瘻孔バッグライナー、固定テープ、インキュベーターマットレス、滅菌ラップ(CSRラップ)、創傷治癒、冷/温パック、パッチのような薬物送達システムを含む群から選択される。
【0283】
好ましくは、フィルター製品は、ガソリンフィルター、オイルフィルター、空気フィルター、水フィルター、コーヒーフィルター、ティーバッグ、医薬品用産業フィルター、鉱物処理フィルター、液体カートリッジおよびバッグフィルター、真空バッグ、アレルゲン膜および不織布層を有するラミネートを含む群から選択される。
【0284】
好ましくは、ジオテキスタイル製品は、土壌安定化剤および車道下敷剤、土台安定化剤、浸食防止、運河建築、排水システム、ジオメンブレン保護、霜保護、農業用マルチ、池および運河の水遮蔽、排水タイルのための砂侵入障壁および埋め立て地のライナーを含む群から選択される。
【0285】
好ましくは、農業および園芸用の製品は、作物カバー、植物保護、種子用ブランケット、雑草制御布、温室の覆い、根制御バッグ、生分解性植物ポット、キャピラリーマットおよび緑化用布を含む群から選択される。
【0286】
好ましくは、衣料、履物およびかばん用の製品は、オーバーコートの前側のような芯地、襟、へり部分、ウエストバンド、折り襟など、使い捨て下着、靴紐の穴部の強化、アスリート用の靴、サンダルの強化およびインナーソールライニングなどのような靴の要素、かばんの要素、結合剤、組成物および(洗浄)ケアラベルを含む群から選択される。
【0287】
好ましくは、包装製品は、乾燥剤の包装、吸収剤の包装、ギフトボックス、ファイルボックス、不織布の袋、ブックカバー、郵送封筒、エクスプレス便用封筒、クーリエ袋などの芯地を含む群から選択される。別の例として、包装製品は、PET飲料容器であってもよい。
【0288】
好ましくは、家庭用および産業用の製品は、研磨剤、ポケットスプリング、分離層、スプリングカバー、上部カバー、キルト芯地、羽布団カバー、枕ケースなどのベッドリネン、ブラインド/カーテン、小さな敷物、カーペットタイル、バスマットなどのカーペット/カーペットの芯地、カバーおよび分離材料、洗剤小袋、布地柔軟剤シート、床、内側の布地、クッションのための裏側の布地、ほこりよけ、スプリングカバー、プルストリップなどの家具/室内装飾材料、モップ、テーブル布、紅茶およびコーヒー用の袋、真空洗浄袋、壁紙、家庭用洗浄拭き取り布、床洗浄拭き取り布、洗浄拭き取り布、ペット洗浄拭き取り布などのような拭き取り布、自動車用構築物、ケーブルラッピング、土木工学、濾過パッケージ、保護衣料、一次および二次のカーペット芯地、コンポジット、海洋船舶の積層物、テーブルカバー積層物、チョップドストランドマット、機械刺繍のための芯地/安定材、多孔性が必要な包装、ガラスファイバー詰め布のような絶縁体、枕、クッション、室内装飾用パッドのようなパッド、キルトまたは掛け布団の詰め布、消費者用および医療用のフェイスマスク、郵送封筒、タープ、テントおよび輸送(木材、鋼鉄)包み材、靴カバーおよびカバーオールのような使い捨て衣料および耐候性家屋包み材を含む群から選択される。
【0289】
好ましくは、建築用製品は、家屋包み材、アスファルトの上塗り、道路および線路の路盤、ゴルフおよびテニスのコート、壁紙の芯材、防音壁の覆い、屋根材料およびタイルの下敷材、土壌安定化剤および車道下敷剤、土台安定化剤、浸食防止、運河建築、排水システム、ジオメンブレン保護、霜保護、農業用マルチ、池および運河の水遮蔽、排水タイルのための砂侵入障壁および埋め立て地のライナーを含む群から選択される。
【0290】
以下の実施例は、本発明をさらに説明してもよいが、本発明を例示された実施形態に制限することを意味しない。以下の実施例は、本発明の表面改質されたアルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の上昇した揮発性物質発生温度と、低下した水分補足感受性を示す。
【実施例】
【0291】
(測定方法)
以下の測定方法を使用し、実施例および特許請求の範囲に与えられるパラメータを評価する。
【0292】
(合計揮発性物質の測定)
本出願の目的のために、フィラー材料に関連し、25℃から350℃の温度範囲で変化する「合計揮発性物質」は、熱重量測定(TGA)の曲線で読みとれるように、温度範囲にわたるフィラー材料サンプルの質量消失%に従って特徴づけられる。
【0293】
TGA分析方法は、非常に正確に質量消失および揮発性物質発生温度に関する情報を与え、これは、一般的な知識である。例えば、「Principles of Instrumental analysis」、第5版、Skoog、Holler、Nieman、1998(first edition 1992)のChapter 31、798ページから800ページおよび多くの他の公知の参考文書に記載されている。本発明において、熱重量分析(TGA)は、500+/−50mgのサンプルに対し、走査温度25℃から980℃、速度20℃/分、空気の流速80ml/分でMettler Toledo TGA 851を用いて行われる。
【0294】
当業者は、以下のようなTGA曲線の分析によって「揮発性物質発生温度」を決定することができるだろう。TGA曲線の第1の誘導体が得られ、150℃から600℃の間の変曲点が特定される。水平線に対して45°より大きな正接傾き値を有する変曲点の中で、200℃より上の最も低い関連する温度を有する変曲点が特定される。第1の誘導体曲線のこの最も低い温度の変曲点に関連する温度値が、「揮発性物質発生温度」である。
【0295】
TGA曲線上で変化する「合計揮発両」は、Star SW 9.01ソフトウェアを用いて決定される。このソフトウェアを用い、元々のサンプルに対する質量消失を%値で得るために、曲線を、元々のサンプル重量に対して最初に正規化する。その後、25℃から350℃の温度範囲を選択し、選択された温度範囲にわたる質量消失%を得るために水平段階(ドイツ語で、「Stufe horizontal」)の選択肢を選択する。
【0296】
(粒状材料の粒度分布(直径がXより小さい粒子の質量%)および重量平均直径(d50))
本明細書で使用され、当該技術分野で一般的に定義されるように、「d50」値は、Micromeritics Instrument CorporationのSedigraph(商標)5100(操作する装置のソフトウェアのバージョン1.04)を用いることによって行われる測定に基づいて決定され、粒子の体積または質量の50%(中点)が、特定の値に等しい直径を有する粒子によって占められている粒径であると定義される。
【0297】
この方法および装置は、当業者に公知であり、フィラーおよび顔料の粒度分布を決定するために一般的に使用される。測定は、0.1重量%のNaおよび0.05重量%の低分子量ポリアクリル酸ナトリウム分散剤の水溶液中で行われる。サンプルを、高速攪拌機および超音波を用いて分散する。
【0298】
(材料のBET比表面積)
本書類全体で、フィラー材料の「比表面積」(単位m/g)は、BET方法(吸着ガスとして窒素を使用する。)を用いて決定され、この方法は当業者に周知である(ISO 9277:1995)。次いで、フィラー材料の全表面積(単位m)は、処理前のフィラー材料の比表面積と質量(単位g)を掛け算することによって得られる。
【0299】
(水分補足性)
用語「水分補足感受性」は、本発明の意味において、フィラー材料の表面に吸収される水分の量を指し、+23℃(±2℃)の温度で、それぞれ相対湿度10%および85%の雰囲気に2.5時間さらした後の乾燥処理されたフィラー材料製品1gあたりの水分のmg数で決定される。処理されたフィラー材料製品を、最初に、相対湿度10%の雰囲気に2.5時間保持し、次いで、雰囲気を相対湿度85%に変え、サンプルをさらに2.5時間保持する。次いで、相対湿度10%から80%の間の重量増加を使用し、乾燥処理されたフィラー材料製品1gあたりの水分のmg数で、水分補足性を計算する。
【0300】
(疎水性)
フィラー材料製品の「疎水性」は、前記フィラー材料製品の大部分を沈殿させるのに必要な水/エタノール混合物の体積/体積基準でのエタノールに対する最少の水の比率を決定することによって、+23℃で評価され、前記フィラー材料製品は、家庭用の茶こしを通すことによって、前記水/エタノール混合物の表面に堆積する。体積/体積基準は、混合する前の両方の別個の液体の体積に関係があり、ブレンドの体積収縮を含まない。+23℃での評価は、+23℃±1℃の温度を指す。
【0301】
体積比8:2の水/エタノール混合物は、「Handbook of Chemistry and Physics」、第84版、David R.Lide、2003(第1版 1913)に記載されるように+23℃で測定されると、典型的には、表面張力が41mN/mであり、体積比が6:4の水/エタノール混合物は、典型的には、表面張力が26mN/mである。
【0302】
(炭酸カルシウムを含有するフィラー材料の残留する合計含水量の測定)
アルカリ土類金属炭酸塩を含有するフィラー材料の残留する合計含水量は、220℃のオーブン中、水分を放出させ、乾燥Nを用い、100ml/分で10分間、KF電量計(Mettler Toledo coulometric KF Titrator C30、Mettler oven DO 0337と組み合わせたもの)に連続的に流すKarl Fischer電量滴定方法によって測定する。水を用いた検量線を作成する必要があり、サンプルを含まない10分間の気体の流れのブラインド(blind)を考慮に入れる必要がある。
【0303】
[実施例1]
この実施例は、本発明の方法に従った表面改質された炭酸カルシウムを含有するフィラー材料の調製に関する。
【0304】
表面改質された炭酸カルシウムを含有するフィラー材料製品を調製するために、カッラーラ、イタリア製の大理石を、水道水中、水平ボールミル(Dynomill)を用いて25重量%で湿式粉砕し、スプレードライした。得られた炭酸カルシウムを含有するフィラー材料は、d50が約1.7ミクロン、トップカット(d98)が5.0μm、比表面積が4.1m/g、残留する含水量が0.06重量%であることを特徴とする。
【0305】
得られたスプレードライした炭酸カルシウムを含有するフィラー材料を、以下の試験に概要を説明するようにさらに処理した。
【0306】
以下の実施例に記載されるポリ水素シロキサンの水性エマルションを使用直前に調製した。炭酸塩に添加する前に、エマルションを振り混ぜることによって激しく混合した。
【0307】
(試験1(従来技術;PA1))
500gのスプレードライした炭酸カルシウムを含有するフィラー材料をMTI Mixer(MTI Mischtechnik International GmbHから入手可能)に添加し、サンプルを120℃、3000rpmで10分間活性化した。その後、乾燥ステアリン酸と乾燥パルミチン酸粉末の1:1混合物(重量基準)を、表1に示される量でこのミキサーに導入した。ミキサーの内容物を、攪拌速度3000rpm、120℃で10分間混合した。
【0308】
得られた表面改質された炭酸カルシウムを含有するフィラー材料を、密閉したプラスチック袋に保存した。分析のために、密閉したプラスチック袋からサンプルを取り出し、すぐに分析した。結果を表2に示す。
【0309】
(試験2(従来技術;PA2))
500gのスプレードライした炭酸カルシウムを含有するフィラー材料をオーブン中、150℃で一晩加熱し、MTI Mixer(MTI Mischtechnik International GmbHから入手可能)に直接添加し、サンプルを120℃、3000rpmで10分間活性化した。その後、純度が96.5%以上のアルケニル無水コハク酸のブレンド(Cas番号68784−12−3;Hydrores AS 1000 of Kemira Oyj、フィンランド)を、表1に示される量でこのミキサーに導入した。ミキサーの内容物を、攪拌速度3000rpm、120℃で10分間混合した。
【0310】
得られた表面改質された炭酸カルシウムを含有するフィラー材料を、密閉したプラスチック袋に保存した。分析のために、密閉したプラスチック袋からサンプルを取り出し、すぐに分析した。結果を表2に示す。
【0311】
(試験3(従来技術;PA3))
500gのスプレードライした炭酸カルシウムを含有するフィラー材料をMTI Mixer(MTI Mischtechnik International GmbHから入手可能)に添加し、サンプルを120℃、3000rpmで10分間活性化した。その後、2−オクチル−1−ドデカンリン酸モノエステルおよび2−オクチル−1−ドデカンリン酸ジエステルの混合物(モノエステルとジエステルの比率は、45モル%:55モル%である。)を、表1に示される量でこのミキサーに導入した。ミキサーの内容物を、攪拌速度3000rpm、120℃で10分間混合した。
【0312】
得られた表面改質された炭酸カルシウムを含有するフィラー材料を、密閉したプラスチック袋に保存した。分析のために、密閉したプラスチック袋からサンプルを取り出し、すぐに分析した。結果を表2に示す。
【0313】
(試験4(従来技術;PA4))
500gのスプレードライした炭酸カルシウムを含有するフィラー材料をMTI Mixer(MTI Mischtechnik International GmbHから入手可能)に添加した。その後、オクタン酸(SIGMA−Aldrichオーダー番号O3907)を、表1に示される量でこのミキサーに導入した。ミキサーの内容物を、攪拌速度3000rpm、120℃で10分間混合した。
【0314】
得られた表面改質された炭酸カルシウムを含有するフィラー材料を、密閉したプラスチック袋に保存した。分析のために、密閉したプラスチック袋からサンプルを取り出し、すぐに分析した。結果を表2に示す。
【0315】
(試験5、6および10(本発明;IE1、IE2、IE6))
それぞれの試験について、500gのスプレードライした炭酸カルシウムを含有するフィラー材料をMTI Mixer(MTI Mischtechnik International GmbHから入手可能)に添加し、サンプルを120℃、3000rpmで10分間活性化した。その後、エマルションの合計重量を基準として、80重量%のポリメチル水素シロキサンの水性エマルション(CAS番号63148−57−2または9004−73−3、SILRES BS−94としてWacker Chemie AG、ドイツから入手可能)を、表1に示される量でこのミキサーに導入した。ミキサーの内容物を、攪拌速度3000rpm、120℃で10分間混合した。
【0316】
得られた表面改質された炭酸カルシウムを含有するフィラー材料を、密閉したプラスチック袋に保存した。分析のために、密閉したプラスチック袋からサンプルを取り出し、すぐに分析した。結果を表2に示す。
【0317】
(試験7(本発明;IE3))
500gのスプレードライした炭酸カルシウムを含有するフィラー材料をMTI Mixer(MTI Mischtechnik International GmbHから入手可能)に添加した。その後、エマルションの合計重量を基準として、50重量%のポリメチル水素シロキサンの水性エマルション(SILRES BS−94としてWacker Chemie AG、ドイツから入手可能)を、表1に示される量でこのミキサーに導入した。ミキサーの内容物を、攪拌速度3000rpm、100℃で10分間混合した。
【0318】
得られた表面改質された炭酸カルシウムを含有するフィラー材料を、密閉したプラスチック袋に保存した。分析のために、密閉したプラスチック袋からサンプルを取り出し、すぐに分析した。結果を表2に示す。
【0319】
(試験8(本発明;IE4))
500gのスプレードライした炭酸カルシウムを含有するフィラー材料をMTI Mixer(MTI Mischtechnik International GmbHから入手可能)に添加し、サンプルを120℃、3000rpmで5分間活性化した。その後、エマルションの合計重量を基準として、98重量%のポリメチル水素シロキサンの水性エマルション(SILRES BS−94としてWacker Chemie AG、ドイツから入手可能)を、表1に示される量でこのミキサーに導入した。ミキサーの内容物を、攪拌速度3000rpm、120℃で10分間混合した。その後、500ppmのポリジメチルシロキサン(Dow Corning 200 Fluid 1000 CS)を添加し、内容物をさらに3000rpm、120℃で5分間混合した。
【0320】
得られた表面改質された炭酸カルシウムを含有するフィラー材料を、密閉したプラスチック袋に保存した。分析のために、密閉したプラスチック袋からサンプルを取り出し、すぐに分析した。結果を表2に示す。
【0321】
(試験9(本発明;IE5))
500gのスプレードライした炭酸カルシウムを含有するフィラー材料をMTI Mixer(MTI Mischtechnik International GmbHから入手可能)に添加し、サンプルを120℃、3000rpmで10分間活性化した。その後、エマルションの合計重量を基準として、80重量%のポリメチル水素シロキサンの水性エマルション(Sigma Aldrichからオーダー番号81330として入手可能;CAS番号63148−57−2;20℃での粘度15−40mPa・s)を、表1に示される量でこのミキサーに導入した。ミキサーの内容物を、攪拌速度3000rpm、120℃で10分間混合した。
【0322】
得られた表面改質された炭酸カルシウムを含有するフィラー材料を、密閉したプラスチック袋に保存した。分析のために、密閉したプラスチック袋からサンプルを取り出し、すぐに分析した。結果を表2に示す。
【0323】
(試験11(本発明;IE7))
500gのスプレードライした炭酸カルシウムを含有するフィラー材料をMTI Mixer(MTI Mischtechnik International GmbHから入手可能)に添加した。その後、エマルションの合計重量を基準として、80重量%のポリメチル水素シロキサンの水性エマルション(SILRES BS−94としてWacker Chemie AG、ドイツから入手可能)を、表1に示される量でこのミキサーに導入した。ミキサーの内容物を、攪拌速度3000rpm、150℃で10分間混合した。
【0324】
得られた表面改質された炭酸カルシウムを含有するフィラー材料を、密閉したプラスチック袋に保存した。分析のために、密閉したプラスチック袋からサンプルを取り出し、すぐに分析した。結果を表2に示す。
【0325】
(試験12(本発明;IE8))
500gのスプレードライした炭酸カルシウムを含有するフィラー材料をMTI Mixer(MTI Mischtechnik International GmbHから入手可能)に添加し、サンプルを120℃、3000rpmで10分間活性化した。その後、80重量%のポリメチル水素シロキサンの水性エマルション(CAS番号63148−57−2または9004−73−3、SILRES BS−94としてWacker Chemie AG、ドイツから入手可能)およびオクタン酸(SIGMA−Aldrichからオーダー番号O3907で入手可能)を、表1に示される量でこのミキサーに導入した。ミキサーの内容物を、攪拌速度3000rpm、120℃で10分間混合した。
【0326】
得られた表面改質された炭酸カルシウムを含有するフィラー材料を、密閉したプラスチック袋に保存した。分析のために、密閉したプラスチック袋からサンプルを取り出し、すぐに分析した。結果を表2に示す。
【0327】
【表1】
【0328】
上に記載した表面改質された炭酸カルシウムを含有するフィラー材料の分析結果を表2に概説する。
【0329】
【表2】
【0330】
表2に与えられるデータから、本発明の表面改質された炭酸カルシウムを含有するフィラー材料が、優れた性質を示すことを推測することができる。特に、本発明の表面改質された炭酸カルシウムを含有するフィラー材料は、揮発性物質発生温度が350℃以上であり、高い疎水性で、1.2mg/g未満の低い水分補足感受性を有することが示される。