(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記インピーダンス測定回路は、前記センサープレートを流れる電流を生じさせるための被制御電圧源と前記センサープレートに印加される電圧を生じさせるための被制御電流源とからなるグループから選択される、請求項1のプリントヘッド。
前記流体移動イベントは、前記ノズルを通して流体を噴射する噴射イベントと、前記流体チャネルから流体を押し出すプライミングイベントとからなるグループから選択される、請求項1〜8のいずれかのプリントヘッド。
前記インピーダンス測定回路がさらに、前記スイッチ、前記サンプルホールド増幅器、前記DAC、及び前記ADCを制御するための状態機械を備えることからなる、請求項11を引用する請求項12をさらに引用する請求項13のプリントヘッド。
【発明を実施するための形態】
【0005】
概観
上記したように、リザーバすなわち流体室内の流体のレベルを決定するために利用できる多くの技術が存在する。たとえば、インクカートリッジ内で光ビームを反射または屈折させて、電気的な及び/またはユーザーが視認することができるインクレベル指標を生成するために、プリズムが使用されている。背圧インジケータは、リザーバ内の流体レベルを決定するための別の手段である。いくつかの印刷システムは、インクレベル(またはインク残量。以下同じ)を決定する方法として、インクジェットプリントカートリッジから噴射されるインク滴の数を数える。さらに他の技術は、印刷システムにおける流体レベルインジケータとして流体の導電率を使用する。しかしながら、流体レベルを検出するシステム及び技術の精度及びコストを改善することに関する課題が依然として存在している。
【0006】
本明細書に開示されている例示的なプリントヘッドは、従来のインクレベル検出技術を改良する流体/インクレベルセンサーを提供する。プリントヘッド流体/インクレベルセンサーは、一般に、インピーダンス測定/センサー回路を有するプリントヘッドMEMS構造の1以上の流体要素(流体素子)を組み込んでいる。MEMS構造の該流体要素は、ある種の試験室(テストチャンバ)として機能する流体チャネルを備えている。流体チャネルは、インクリザーバ内のインクの利用可能性に対応するインクレベルを有する。回路は、該チャネル内に配置された1以上のセンサー(すなわち、センサープレート)を備え、センサープレートからグランド(アース)までの該チャネル内のインクのインピーダンスを測定することによって該チャネル内のインクのレベルまたは存在を測定する。インクのインピーダンスは空気のインピーダンスよりもはるかに小さいので、該インピーダンス測定回路は、インクが該センサーに接触しているか否かを検出する。該インピーダンス測定回路はまた、残留インクの小さな膜が該センサー上に残っている(存在する)か否かを検出する。該インピーダンスは、残留インクの膜の断面積が小さくなるにつれて大きくなる。該回路を最適な動作点にバイアスするために、バイアスアルゴリズムが印刷システムにおいて実行される。該回路がバイアスされる該動作点は、ドライインク状態(すなわち、インクが存在しない状態)とウェットインク状態(すなわち、インクが存在する状態)の間の最大出力差信号を可能にする(すなわち差信号の最大化を可能にする)。プリントヘッドノズルからのインク滴の噴射/吐出やインクによるプリントヘッドのプライミングなどの異なる流体移動イベントによって、流体チャネル内のインクに背圧がかかる。該背圧によって、インクをノズルから引き出して、センサープレートの上を該チャネルを通して引き戻すことができ、これによって、該プレートが空気にさらされて、該プレートのインピーダンス(プレートインピーダンス)に測定可能な変化が引き起こされる。インピーダンス測定/センサー回路を、たとえば、該プレートを流れる測定可能な電流を生じさせる被制御電圧源(出力電圧を制御可能な電圧源)として、または、該プレートに(たとえば該プレートの両端間に)電圧応答を生じさせる電流を生じる被制御電流源(出力電流を制御可能な電流源)として実施することができる。
【0007】
被制御電圧源が該インピーダンス測定回路内に実装されているときは、センサープレートを流れる誘起された電流は、検出抵抗(器)によって測定されて、該プレートがウェット(ウェットは、流体チャネル内にインクがあることを示す)であるか、ドライ(ドライは、流体チャネル内に空気が存在することを示す)であるかの指標を提供する。バイアスアルゴリズムは、最適な動作点への該電圧源のバイアスを実行し、この最適な動作点では、微弱信号状態におけるウェットプレート状態とドライプレート状態間でセンサープレート(及び検出抵抗)の最大差電流応答が引き起こされる。被制御電流源が該インピーダンス測定回路内に実装されているときは、該プレートに(たとえば該プレートの両端間に)かかる誘起された電圧は、該プレートがウェットであるかドライであるかの(被制御電圧源と)類似の指標を提供する。バイアスアルゴリズムは、最適な動作点への該電流源のバイアスを実行し、この最適な動作点では、センサープレートに供給される電流の量によって、微弱信号状態におけるウェットプレート状態とドライプレート状態間の該プレートの最大差電圧応答が引き起こされる。
【0008】
開示されているプリントヘッド及びインピーダンス測定/検出回路は、MEMS構造(たとえば、流体チャネル及びインク室)に残ったくずや破片による汚染に対する高い耐性を含む利点を有する流体レベルセンサーを可能にする。汚染に対するこの高い耐性は、ウェット状態とドライ状態の正確な流体レベル指標を提供するのに役立つ。また、流体レベルセンサーのコストは、既存のサーマルインクジェットプリントヘッドに配置される回路及びMEMS構造を使用するがゆえに抑えられる。インピーダンス測定/検出回路のサイズ(大きさ)は、数個(たとえば2〜3個)のインクジェットノズルの空間に該回路を配置可能な程度のものである。
【0009】
1例では、プリントヘッドは、ノズル、流体チャネル、及び該流体チャネル内に配置されたセンサープレートを備える。プリントヘッドはまた、該センサープレートに結合されて、流体が該センサープレートを通過する流体移動イベント中に該チャネル内の流体のインピーダンスを測定するためのインピーダンス測定回路を備える。
【0010】
別の例では、プリントヘッドは、ノズルを流体供給スロットに流体的に(流体連絡可能に)結合する流体チャネルを備える。プリントヘッドに一体化されたインピーダンス測定回路は、該チャネル内に配置されたセンサープレートと、該センサープレート及び検出抵抗を流れる電流を生じさせるための被制御電圧源を備える。インピーダンス測定回路内のサンプルホールド増幅器は、インク滴の噴射やインクプライミングイベントなどの流体移動イベント中に検出抵抗を流れる誘起された電流の電流値を測定してホールド(保持)する。
【0011】
例示的な実施形態
図1は、センサープレートのインピーダンスを測定する流体レベルセンサーを有する流体噴射装置を実施するのに適した例示的なインクジェット印刷システム100を示している。この例では、流体噴射装置は、インクジェットプリントヘッド114として開示されている。インクジェット印刷システム100は、インクジェットプリントヘッドアセンブリ102、インク供給アセンブリ104、搭載アセンブリ106、媒体搬送アセンブリ108、電子プリンターコントローラ110、及び、インクジェット印刷システム100の種々の電気的構成要素に電力を供給する少なくとも1つの電源112を備えている。インクジェットプリントヘッドアセンブリ102は、印刷媒体118に印刷するために、複数のオリフィスすなわちノズル116を通じて、印刷媒体118に向けてインク滴を噴射する少なくとも1つの流体噴射アセンブリ114(プリントヘッド114)を備えている。印刷媒体118を、紙、カード用紙、透明フィルム(OHPフィルムなど)、ポリエステル、合板、フォームボード(foam board:発泡板)、布地、キャンバス(カンバス)などの、任意のタイプの適切なシート状物質やロール材とすることができる。ノズル116は、典型的には、1以上の列すなわちアレイをなすように配置され、インクジェットプリントヘッドアセンブリ102と印刷媒体118とが互いに相対的に移動する際に、ノズル116から適切な順番でインクを噴射することにより、文字、記号、及び/又は他の図形もしくは画像を印刷媒体118上に印刷するようになっている。
【0012】
インク供給アセンブリ104は、プリントヘッドアセンブリ102に流体インクを供給し、また、インクを格納するためのリザーバ120を備えている。インクはリザーバ120からインクジェットプリントヘッドアセンブリ102へ流れる。インク供給アセンブリ104及びインクジェットプリントヘッドアセンブリ102は、一方向インク配送システムと循環式インク配送システムのいずれかを形成することができる。一方向インク配送システムでは、インクジェットプリントヘッドアセンブリ102に供給されるインクは実質的に全て、印刷中に消費される。一方、循環式インク配送システムでは、プリントヘッドアセンブリ102に供給されるインクは、そのうちの一部だけが、印刷中に消費される。印刷中に消費されなかったインクは、インク供給アセンブリ104に戻される。
【0013】
いくつかの例では、インク供給アセンブリ104は、インクを、(インクのフィルタリング、予熱、圧力サージ吸収、ガス抜きなどのための)インク調節アセンブリ105を通じて、正圧下で、インクジェットプリントヘッドアセンブリ102へと、供給管などのインターフェース接続を介して供給する。したがって、インク供給アセンブリ104はまた、1以上のポンプ及び圧力調整器(不図示)を備えることができる。インクは、負圧下で、プリントヘッドアセンブリ102からインク供給アセンブリ104へと引き込まれる。プリントヘッドアセンブリ102の入口と出口間の圧力差は、ノズル116に適切な背圧を確立するように選択され、通常は、H2Oの約−1と約−10の間の負圧である。しかしながら、(たとえば、リザーバ120における)インク供給が耐用期限(寿命)の終わりに近づくにつれて、印刷(すなわちインク滴の噴射)またはプライミング動作中に加えられる背圧が上昇する。この上昇した背圧の強さは、インクメニスカスをノズル116から後退させて、MEMS構造の流体チャネルを通じて引き戻すのに十分なものである。プリントヘッド114上のインクレベルセンサー206(
図2)は、そのような流体移動イベント中に正確なインクレベル指標を提供するインピーダンス測定/センサー回路を備えている。
【0014】
いくつかの例では、リザーバ120は、印刷処理で使用される(異なる色もしくはインク、前処理用組成物、定着液などの)他の適切な流体を供給する複数のリザーバを備えることができる。いくつかの例では、リザーバ内の流体を、印刷用流体以外の流体とすることができる。1例では、プリントヘッドアセンブリ102とインク供給アセンブリ104は、インクジェットカートリッジまたはペン(不図示)内に共に収容される。インクジェットカートリッジは、カートリッジ本体内にそれ自体の流体供給部を含むことができ、または、たとえば、チューブ(管)を通じて該カートリッジに接続された流体リザーバ120などの外部の供給部から流体を受け取ることができる。それ自体の流体供給部を含むインクジェットカートリッジは、一般に、該流体供給部(の流体)が空になると使い捨て可能である。
【0015】
搭載アセンブリ106は、インクジェットプリントヘッドアセンブリ102を媒体搬送アセンブリ108に対して位置決めし、媒体搬送アセンブリ108は、印刷媒体118をインクジェットプリントヘッドアセンブリ102に対して位置決めする。したがって、インクジェットプリントヘッドアセンブリ102と印刷媒体118との間の領域には、ノズル116の近くにまたは隣接して印刷ゾーン122が画定される。1例では、インクジェットプリントヘッドアセンブリ102は走査型プリントヘッドアセンブリである。その場合、搭載アセンブリ106は、インクジェットプリントヘッドアセンブリ102を媒体搬送アセンブリ108に対して移動させて、印刷媒体118を走査するためのキャリッジを備える。他の例では、インクジェットプリントヘッドアセンブリ102は非走査型プリントヘッドアセンブリである。その場合、搭載アセンブリ106は、インクジェットプリントヘッドアセンブリ102を媒体搬送アセンブリ108に対して所定の位置に固定し、一方、媒体搬送アセンブリ108は、印刷媒体118をインクジェットプリントヘッドアセンブリ102に対して位置決めする。
【0016】
電子プリンターコントローラ110は、典型的には、インクジェットプリントヘッドアセンブリ102、搭載アセンブリ106、及び媒体搬送アセンブリ108と通信し及びこれらを制御するためのプロセッサ(CPU)111、ファームウェア、ソフトウェア、揮発性及び不揮発性の記憶要素(記憶装置の構成要素)を含む1以上の記憶要素113、及びその他のプリンター電子回路を含む。電子コントローラ110は、コンピュータなどのホストシステムからデータ124を受信し、データ124をメモリ(記憶装置)113に一時的に格納する。データ124は、たとえば、印刷すべき文書及び/又はファイルを表す。したがって、データ124は、インクジェット印刷システム100に対する印刷ジョブを形成し、及び、1以上の印刷ジョブコマンド及び/またはコマンドパラメータを含む。
【0017】
1実施例では、電子プリンターコントローラ110は、ノズル116からインク滴を噴射させるために、インクジェットプリントヘッドアセンブリ102を制御する。したがって、電子コントローラ110は、文字、記号、及び/または他の図形もしくは画像を印刷媒体118上に形成する噴射インク滴のパターンを画定する。噴射インク滴のパターンは、データ124からの印刷ジョブコマンド及び/またはコマンドパラメータによって決定される。1例では、電子コントローラ110は、プロセッサ111で実行可能な命令を有するバイアスアルゴリズム126をメモリ113内に含む。バイアスアルゴリズム126は、インクレベルセンサー206(
図2)を制御し、及び、ウェット状態(すなわち、インクが存在するとき)とドライ状態(すなわち、空気が存在するとき)間で、センサー206から最大の電圧応答差が生じる最適な動作/バイアス点を決定するために実行される。電子コントローラ110はさらに、プロセッサ111で実行可能な命令を有する測定モジュール128をメモリ113内に備えている。最適なバイアス点が決定された後で、測定モジュール128が実行され、これによって、インクレベルセンサー206を制御する測定サイクルが開始されて、測定された時間(この時間は、ドライ状態がMEMS構造の流体チャネル内で持続している時間である)に基づいてインクレベルが決定される。
【0018】
説明している例では、インクジェット印刷システム100は、本明細書に開示されているインクレベルセンサーを実施するのに適したサーマルインクジェット(TIJ)プリントヘッド114を有するドロップオンデマンドサーマルインクジェット印刷システムである。1実施例では、インクジェットプリントヘッドアセンブリ102は、単一のTIJプリントヘッド114を備えている。別の実施例では、インクジェットプリントヘッドアセンブリ102は、ワイドアレイのTIJプリントヘッド114を備えている。TIJプリントヘッドに関連する製造プロセスは、開示されているインクレベルセンサーの組み込みに好適であるが、圧電プリントヘッドなどの他のプリントヘッドタイプも、そのようなインクレベルセンサーを実施することができる。したがって、開示されているインクレベルセンサーは、TIJプリントヘッド114における実施には限定されず、圧電プリントヘッドなどの他の流体噴射装置における使用にも適している。
【0019】
図2は、シリコンダイ基板202中に形成された単一の流体/インク供給スロット200を有する例示的なTIJプリントヘッド114の一方の端部の底面図である。プリントヘッド114は単一の流体スロット200を有するものとして図示されているが、本明細書に開示されている原理の適用例は、1つのスロット200のみを有するプリントヘッドには限定されない。2つ以上の流体スロットを有するプリントヘッドや流体チャネル及び流体室にインクをもたらすために種々の大きさの穴を使用するプリントヘッドなどの他のプリントヘッド構成も可能である。流体スロット200は、基板202中に形成された細長いスロットであって、流体リザーバ120などの流体供給部と流体連絡(すなわち流体が行き来できるように)している。流体スロット200は、流体室204及びノズル116を含む該スロットの両側に沿って配置された流体滴発生器300を有している(流体滴発生器は液滴発生器ともいう)。
図3を参照して後述するように、基板202は、流体室204を有するチャンバ層と、ノズル116が内部に形成されているノズル層の下にある。しかしながら、説明の便宜上、下にある基板202を見せるために、
図2のチャンバ層及びノズル層は透明であると想定されている。このため、
図2では、室204及びノズル116は破線を用いて示されている。
【0020】
スロット200の両側に沿って配置された流体滴発生器300に加えて、TIJプリントヘッド114は、1以上の流体(インク)レベルセンサー206を備えている。流体レベルセンサー206は、一般に、プリントヘッド114上のMEMS構造の1以上の要素、及び、インピーダンス測定/センサー回路208を組み込んでいる。MEMS構造は、たとえば、流体スロット200、流体チャネル210、流体室204、及びノズル116を備えている。
【0021】
インピーダンス測定/センサー回路208は、流体チャネル210のフロア(底面)もしくは壁などの流体チャネル210内に配置されたセンサープレート212を備えている。インピーダンス測定/センサー回路208はまた、センサープレート212にインピーダンスを生じさせるためのソース要素(供給要素)504(
図5)及びインピーダンスを測定するための検出要素を一般的に備える他の回路214を組み込んでいる。別の実施例では、ソース要素は、電圧源及び電流源を備えることができる。検出要素は、たとえば、緩衝増幅器(バッファアンプ)、サンプルホールド増幅器、DAC(デジタル−アナログ変換器)、ADC(アナログ−デジタル変換器)、及びその他の測定回路を備えることができる。センサープレート212は、たとえばタンタルから形成された金属プレート(金属板)である。ADCや測定回路などの他の回路214の一部は、その全てが基板202上の一つの場所にはなくてもよく、基板202上の異なる位置に分散していてもよい。流体センサー206及びインピーダンス測定/センサー回路208については、
図5〜
図13に関してより詳細に後述する。
【0022】
図3は、例示的な流体滴発生器300の断面図である。各流体滴発生器300は、ノズル116、流体室204、及び流体室204内に配置された噴射要素302を備えている。ノズル116は、ノズル層310内に形成されており、流体スロット200の側部に沿ってノズル列を形成するように全体的に配置されている。噴射要素302は、シリコン基板202の上面上の絶縁層(たとえば、リンケイ酸ガラス(PSG:phosphosilicate glass))304上の金属プレート(たとえば、タンタル−アルミニウム:TaAl)から形成された熱抵抗器である。噴射要素302を覆う(または該噴射要素302の上にある)パッシベーション層306は、該噴射要素を室204内のインクから保護し、及び、崩壊する気泡の衝撃を吸収するための機械的パッシベーションまたは保護用のキャビテーションバリア(cavitation barrier)構造として作用する。チャンバ層308は、基板202をノズル層310から分離する室(チャンバ)204及び壁を有している。
【0023】
印刷中、流体滴(または液滴。以下同じ)が、対応するノズル116を通って室204から噴射され、その後、室204は、流体スロット200からの循環する流体で再充填される。より具体的には、電流が抵抗噴射要素(抵抗噴射素子ともいう)302を流れ、これによって該要素が急速に加熱される。噴射要素302の上にある(または該要素302を覆っている)パッシベーション層306に隣接する流体の薄い層は、過熱されて気化し、これによって、対応する噴射室(噴射チャンバともいう)204内に気泡(蒸気泡)が生成される。急速に膨張する気泡は、流体滴を対応するノズル116の外に押し出す。該加熱要素が冷えると、該気泡は急速に崩壊して、流体スロット200から噴射室204内へとより多くの流体が引き込まれ、これによって、ノズル116から別の流体滴を噴射する準備が整う。
【0024】
図4は、インク滴の噴射中やインクプライミング動作中などの流体移動イベント中に、インクがセンサープレートの上を引き戻されるときのいくつかの異なる段階における例示的なMEMS構造の部分上面図及び部分側面図である。上記したように、流体レベルセンサー206は、一般に、流体チャネル210、流体室204、及び専用のセンサーノズル116などのMEMS構造の要素を備えている。流体レベルセンサー206はまた、流体チャネル210の底面や壁などの流体チャネル210内に配置されたセンサープレート212を組み込んでいるインピーダンス測定/センサー回路208を備えている。インピーダンス測定/センサー回路208は、インク滴の噴射やインクプライミング動作などの流体移動イベント中に流体チャネル内にどの程度流体(インク)が存在するかしないかを検出するように動作する。リザーバ120におけるインク供給が耐用期限(寿命)の終わりに近づくと、インクメニスカスがノズル116から流体チャネル210を通って引き戻され(または後退させられ)、これによって、センサープレート212が空気にされることになるのに十分なほど、印刷またはプライミング動作中に加えられる背圧が強くなる。
図4の(a)は、インク400が、室204を満たしており、ノズル116内にインクメニスカス402を形成している通常状態を示している。この状態では、センサープレート212は流体チャネル210を満たしているインクで覆われているので、センサープレート212はウェット状態にある。プライミング動作中、または、通常のインク滴噴射による印刷動作中は、ある背圧が流体チャネル210内のインクに加えられ、これによって、
図4の(b)に示すように、インクメニスカス402が、ノズルから後退させられて、該チャネル内へと引き戻される。リザーバ120におけるインク供給が耐用期限(寿命)の終わりに近づくと、この背圧が上昇し、チャネル210及びノズル116へとインクが流れるのに要する時間も長くなる。
図4の(c)に示すように、上昇した背圧は、センサープレート212がノズル116を通じて引き込まれた空気にさらされるのに十分なほどインクメニスカスをチャネル210中へと引き戻す。センサープレート212は、リザーバに残っているインクの量及び生じた背圧の大きさに依存して、ノズル116を通って引き込まれつつある空気に多かれ少なかれさらされる。後述するように、センサー回路208は、空気にさらされたセンサープレート212を用いて、インク供給の耐用期限(寿命)の終わりの近くにおける正確なインクレベルを決定する。
【0025】
図5は、例示的なインピーダンス測定/センサー回路208の高レベルのブロック図である。上記したように、インピーダンス測定/センサー回路208は、流体チャネル210内に配置されたセンサープレート212、センサープレート212に(たとえば該プレート212の両端間に)インピーダンスを生じさせるためのソース要素504を備えている。
図6に示されているように、1例では、ソース要素504は、センサープレート212に結合されて、該プレート212及び検出抵抗600を流れる電流を生じさせるための電圧源504を備えている。この例では、検出抵抗600を通る電流を測定して、センサープレート212のインピーダンスを決定する。別の例では、
図7に示されているように、ソース要素504は、センサープレート212に結合されて、センサープレート212に(たとえば該プレート212の両端間に)かかる電圧を生じさせるための電流源504を備えている。この例では、センサープレート212に印加されている電圧を測定して、センサープレート212のインピーダンスを決定する。
【0026】
インピーダンス測定/センサー回路208は、センサープレート212及びソース要素504に加えて、DAC(デジタル−アナログ変換器)500、入力S&H(入力サンプルアンドホールド要素)502、スイッチ506、出力S&H(出力サンプルホールド要素)508、ADC(アナログ−デジタル変換器)510、状態機械(ステートマシン)512、クロック514、及び、レジスタ0xD0〜0xD6(516)などの複数のレジスタといった他の構成要素を備えている。インピーダンス測定/センサー回路208の動作は、スイッチ506が閉じてセンサープレート212を短絡している間に、ソース要素504をDAC500及び入力S&H 502で構成ないし設定する(すなわちバイアスする)ことから開始する。より詳細に後述するバイアスアルゴリズム126が、コントローラ110で実行されて、レジスタ0xD2に与えるための刺激(入力コード)を決定する。該刺激は、DAC 500から最適なバイアス電圧が出力されるようにするものであり、ソース要素504は、この最適なバイアス電圧でバイアスされる。
【0027】
ソース要素504がバイアスされた後で、測定モジュール128が、コントローラ110で実行されて、流体レベル測定サイクルを開始する。この測定サイクルの間、測定モジュール128は、状態機械512を用いてインピーダンス測定回路208を制御する。測定時間になると、状態機械512は、回路208を準備し、測定を行い、該回路をアイドル状態に戻すといういくつかの段階中を1段階ずつ回路208を進めることによって該測定を調整する。最初のステップにおいて、状態機械512が、たとえば、ライン518に信号を置くことによって、流体移動イベントを開始する。流体移動イベントは、ノズル116からインクを吐出または噴射して、該ノズル及び室204からインクを除去し、及び、流体チャネル210内に背圧スパイクを生成する。状態機械512は、次に、ある遅延時間(遅延期間)を提供する。この遅延時間は可変であるが、典型的には、約2マイクロ秒〜約32マイクロ秒の間継続する。
【0028】
この遅延時間の後、第1の回路準備段階において、スイッチ506を開く。
図6を参照すると、スイッチ506が開くと、電圧源504はセンサープレート212に結合される。加えられた電圧源504(の電圧)は、センサープレート212を覆っているインクのインピーダンスに応じて、該プレート212及び検出抵抗600を流れる電流を生じさせる。より具体的には、プレート212(の両端間)にかかる電圧V
outは、次の関係に基づく。
V
out=V
dd−I
D(R
s+R
p)
【0029】
ここで、V
ddは、供給電圧であり、I
Dは、DAC 500からのバイアス電圧V
gs(すなわち602のゲート−ソース間電圧)によって制御されるトランジスタのドレインに流れる電流である。回路208内の電圧は、
図5〜
図7においてアース(接地)記号520で示されているグランド(接地)を基準としている。
図7を参照すると、スイッチ506が開くと、電流源504がセンサープレート212に結合されて、電流源504からの電流が該プレート212に加えられる。該プレートのインピーダンスに加えられた電流、及び、(インクが存在する場合の)関連する該プレートにおけるインクの電気化学、または、(インクが存在しない場合の)関連する空気の電気化学によって、該プレート及びその化学系に電圧応答が生じる。流体チャネル210が完全にドライ状態の場合は、該インピーダンスは主に容量性であろう。流体が存在する場合は、該インピーダンスは、実数と虚数の時間変化成分の両方でありうる。電流源504から供給される電流は次の関係に基づく。
Iα(V
gs−V
t)
2
【0030】
ここで、V
gsはDAC 500からのバイアス電圧である。V
gsは、ゲート−ソース間電圧であり、V
tは、電流源504の電流生成トランジスタのゲート閾値電圧であり、該DACの電圧は該トランジスタに印加される。
【0031】
第2の回路準備段階において、状態機械512が、スイッチ506を開いて、第2の遅延時間(この遅延時間も約2〜約32マイクロ秒の間継続する)を提供する。該第2の遅延の後、状態機械512は、出力S&H増幅器508に、アナログ応答をサンプリング(すなわち測定)させる。
図6を参照すると、出力S&H増幅器508は、検出抵抗(R
s)600に流れる電流の値をサンプリングして該値をホールド(保持)する。
図7を参照すると、出力S&H増幅器508は、センサープレート212における電圧の値をサンプリングして該値をホールド(保持)する。これらの両方の例において、状態機械512は、次に、ADC510による変換を開始し、この変換によって、サンプリングされたアナログ応答値が、レジスタ0xD6に格納されるデジタル値(デジタル応答値)に変換される。該レジスタは、測定モジュール128が該レジスタ(に格納されているデータ)を読み取るまで該デジタル応答値を保持する。回路208は、次に、別の測定サイクルが開始されるまでアイドルモード(アイドル状態)にされる。
【0032】
測定モジュール128は、デジタル化された該デジタル応答値をR
detect閾値と比較して、該センサープレートがドライ状態にあるか否かを判定する。測定された応答がR
detect閾値を超えている場合には、ドライ状態が存在し、そうでなければ、ウェット状態が存在する(R
detect閾値の計算については後述する)。ドライ状態が検出されたことは、センサープレート212が空気にさらされるのに十分な程度に流体チャネル内210内のインクが背圧によって引き戻されていることを示している。追加の測定サイクルを通じて、ドライ状態が持続した(すなわち、該センサープレートが空気にさらされた)時間の長さが測定され、該時間の長さを用いてドライ状態を生成している背圧の大きさを補間する(補間によって求める)。背圧は、インク供給の耐用期限の終わりの近くにおいて(または該期限の終わりに近づくにつれて)予測可能に上昇するので、インクレベルの正確な決定を行うことができる。
【0033】
上記したように、バイアスアルゴリズム126は、コントローラ110で実行されて、ソース要素504をバイアスするための、DAC500からの最適なバイアス電圧を決定する。バイアスアルゴリズム126は、バイアス電圧を決定する一方で、流体レベルセンサー206(すなわち、インピーダンス測定回路208及びMEMS構造)を制御する。バイアスアルゴリズム126から見れば、
図8に示すように、流体レベルセンサー206は、入力または刺激を受けて出力または応答を提供するブラックボックス要素である。入力電圧は、インピーダンス測定回路208のレジスタ0xD2に与えられる0〜255(8ビット)の数値(入力コード)を用いて設定される。レジスタ0xD2に入力された数値またはコードは、DAC 500に与えられる刺激であり、該DACから出力されるアナログ電圧は、その刺激に10mVを乗じたものである。したがって、ソース要素504をバイアスするために利用できるDAC500からのアナログバイアス電圧の範囲は、0〜2.55Vである。インピーダンス測定回路208からの出力または応答は、8ビットレジスタ0xD6に格納されているデジタルコード(デジタル符号)である。
【0034】
バイアスアルゴリズムは、入力コードと出力コード間のインピーダンス測定回路208の刺激対応答関係を用いて、センサープレート212がウェットである(すなわち、インクが、MEMS流体チャネル210内に存在して、該プレートを覆っている)ときと、センサープレート212がドライである(すなわち、インクがMEMS流体チャネル210から引き戻されて(ないし後退させられて)、空気が該プレートを取り囲んでいる)ときとの間で、最適な出力デルタ信号(すなわち最大応答電圧)を提供する。
図9に示すように、刺激(入力コード)が最小のプリチャージ電圧カウント値から最大のプリチャージ電圧カウント値まで(すなわち、0から255まで、つまり、S
minからS
maxまで)走査される(移動させられる)と、応答(出力コード)は、3つの異なる領域、すなわち、オフ領域、活性領域、及び飽和領域を経る応答波形を生成する。これらの3つの領域は共に、くずれ気味の「S」の形状を形成する。
図9は、入力刺激のこの範囲にわたる、ドライ応答曲線900、ウェット応答曲線902、及び、該ウェット応答曲線と該ドライ応答曲線の差を示す差曲線904を示している。
図9の応答曲線は、それらの応答が強い好適な状態を示している。一般に、最大の信号差(すなわち、最大の差応答曲線)は、センサープレート212が、チャネル一杯のインクで完全にウェット状態にあるときと、センサープレート212が該チャネル内の空気と最大限に接触して完全にドライ状態にあるときの間に生じる。
【0035】
流体/インクが存在するときと存在しないときとで(すなわち、ウェット状態とドライ状態とで)応答曲線は変わるが、MEMS構造内に伝導性もしくは導電性のくずないし破片やインク残留物などの汚染物がほとんど存在しないかまたは全く存在しないときに、その変化はより大きい。したがって、
図9の強い応答曲線によって示されているように、応答は最初は強い。しかしながら、時間が経つにつれて、MEMS構造は、流体チャネル及び流体室内のインク残留物で汚染される場合があり、具体的には、ドライ応答が弱まって、ウェット応答に近づく。汚染物は、ドライ状態においてドライ応答を弱める伝導もしくは導電状態を生じさせ、これによって、ドライ応答とウェット応答の差が小さくなる。
図10は、弱いドライ応答曲線1000、弱いウェット応答曲線1002、及び弱い差応答曲線1004の例を示しており、この場合、MEMS構造内の汚染物の存在などの好ましくない状態によってそれらの応答が弱められている。
図10からわかるように、弱いウェット応答曲線と弱いドライ応答曲線との差は、
図9の強い応答曲線で示されている差よりもずっと小さい。
図9に示されている強い差曲線904は、容易に評価ないし判断することができる、ウェット状態とドライ状態との間のはっきりとした相違ないし区別を提供している。しかしながら、弱い応答状態の下では、ウェット状態とドライ状態の相違を見出す(すなわち、それらの状態を区別する)ことは、それらの間の差が小さいためにより難しくなっている。バイアスアルゴリズム126は、(
図10に示されている)弱い応答差曲線1004における差の最適な点を見つける。該最適な点において、流体/インクレベル測定は、ウェット状態とドライ状態との間の最大の応答を提供する。
【0036】
図11(a.1、a.2、a.3、b.1、b.2、b.3、c.1、c.2、c.3)は、製造プロセス、供給電圧及び温度(これらプロセス、電圧及び温度をPV&Tという)などのプロセス及び環境条件の違いに応じた、弱いドライ応答曲線1100、弱いウェット応答曲線1102、及び、それらの差の例を示している。
図11のa.1、a.2、及びa.3は、プロセス条件が最悪(W)で、供給電圧が5.5Vで、温度が摂氏15度(これらは、それらの図において「W;5.5V;15C」で示されている)の場合における、それぞれ、1×(すなわち1倍)、10×(すなわち10倍)、及び100×(すなわち100倍)という入力刺激範囲に対する曲線の例を示している。
図11のb.1、b.2、及びb.3は、プロセス条件が最良(B)で、供給電圧が4.5Vで、温度が摂氏110度(これらは、それらの図において「B;4.5V;110C」で示されている)の場合における、それぞれ、1×(すなわち1倍)、10×(すなわち10倍)、及び100×(すなわち100倍)という入力刺激範囲に対する曲線の例を示している。
図11のc.1、c.2、及びc.3は、プロセス条件が典型的(T)で、供給電圧が5.0Vで、温度が摂氏60度(これらは、それらの図において「T;5.0V;60C」で示されている)の場合における、それぞれ、1×(すなわち1倍)、10×(すなわち10倍)、及び100×(すなわち100倍)という入力刺激範囲に対する曲線の例を示している。いくつかの場合では、応答曲線の活性領域は、PV&Tの変化に起因してその傾きが変わる。他の場合では、応答曲線の活性領域は、該領域が、オフ領域内の前の方から開始するか後の方から開始するかというようにその配置がシフト(または変化)する。
図11のa.1〜a.3、b.1〜b.3、及びc.1〜c.3におけるドライ及びウェット応答曲線は、PV&T条件の変化によって生じうるそのような傾き及び開始点の変化を示している。
図11のa.1〜a.3、b.1〜b.3、及びc.1〜c.3における差曲線1104は、該入力刺激範囲に対する及びPV&T条件の変化に対するウェット応答曲線とドライ応答曲線との差を示している。
【0037】
図12は、刺激に対してプロットされたドライ応答とウェット応答の差の例を示している。
図11に示されている差曲線1104を重ねて
図12が作成されている。これは、差曲線のピークの高さ、差曲線の開始部分(アプローチ)及び減衰部分の勾配、差曲線に沿った刺激軸の中心の配置がすべて、PV&Tに応じて変わることを例示することを意図したものである。
【0038】
図13は、本開示の1実施形態による、ウェット応答に対してプロットされた複合差曲線の1例1300を示している。差曲線の基準を、刺激ではなく応答に対してシフトする(すなわち変える)ことによって、PV&Tの相違からの分離(独立性)の尺度が得られる。バイアスアルゴリズム126は、差が小さい場合に、ウェット状態とドライ状態の間の最大のインクレベル測定応答を提供する最適な差位置がどこにあるかという解を見つける。したがって、その解は、PV&Tのそのような変化に対して耐性があり、かつ、可能なかぎり大きなマージン(余裕)を提供するはずのものである。したがって、
図13に示されているように、差曲線1104を、入力刺激の関数ではなく、ウェット応答曲線1102の関数として見ることによって、PV&Tによる変化(またはPV&Tの変化)の大部分を除去することができる。これは、プロセス、電圧及び温度(PV&T)によって、所与の刺激に対する出力値が大きく変化するからである。しかしながら、ドライ状態(インクなし)とウェット状態(インクあり)との間の差は、PV&Tによってそれほど変化しないので、この差を用いて、PV&Tによって引き起こされる変化の大部分を除去することができる。差曲線の複合体は、全てのプロセス及び環境(PV&T)条件にわたって決定された多くの差曲線を重ね合わせることによって形成された領域を取り囲んでいる。したがって、該複合差曲線の上にある領域は、PV&T条件の影響を受けない存在可能な信号応答領域を表している。複合差曲線の中心は、ドライ状態とウェット状態間の出力応答値(たとえば電圧応答)を最大にするピーク応答(R
peak)を実現するために、インクレベル測定がなされるべき位置(場所)を表している。R
peak応答の位置は、最小のウェット応答R
minと最大のウェット応答R
max間の距離(または長さ)に対する割合として表される。したがって、複合差曲線1300におけるR
peakの位置はR
pd%と呼ばれる。さらに、1つの測定サイクル中において、位置R
pd%における複合差曲線1300のピークの高さは、ドライ状態が存在するときに予期される(R
minとR
max間の距離(長さ)に対する割合としての)最小差(D
min%と呼ぶ場合がある)を表している。
【0039】
バイアスアルゴリズム126は、複合差曲線1300のR
pd%に配置されているピーク応答R
peakを生じる入力刺激値S
peakを決定する。該アルゴリズムは、レジスタ0xD2に最小刺激(S
min)を入力し、応答をサンプリングしてレジスタ0xD6に格納する。該アルゴリズムはまた、レジスタ0xD2に最大刺激(S
max)を入力し、応答をサンプリングしてレジスタ0xD6に格納する。レジスタ0xD6内のこれらの2つの値は、応答の両極端のそれぞれの値、すなわち、R
minとR
maxである。この場合、ピーク応答値R
peakを、次のように計算することができる。
R
peak=R
min+(R
pd%×(R
max−R
min))
【0040】
さらに、対応する刺激値S
peakを、種々のアプローチによって見いだすことができる。刺激を、たとえば、S
minからS
maxへと走査(移動)させて、応答がR
peakに達したときに止めることができる。別のアプローチは、二分探索を使用することである。ピーク応答R
peakを生じる刺激値S
peakは、インピーダンス測定回路208内のソース要素504を最適にバイアスすることによって、センサープレート212においてドライプレート状態とウェットプレート状態間の最大の応答を測定できるようにするためにレジスタ0xD2に与えられる入力コードである。
【0041】
上記したように、ある1つの測定サイクルにおいて、測定モジュール128は、センサープレート212に印加された測定された応答電圧とR
detect閾値を比較することによって、センサープレート212がドライ状態にあるか否かを判定することができる。測定された応答がR
detectを超えている場合にはドライ状態が存在し、そうでない場合にはウェット状態が存在する。R
detect閾値は、次の式によって計算される。
R
detect=R
peak+((R
max−R
min)×(D
min%/2))
【0042】
応答電圧において予期される最小差D
min%は、ドライ状態の場合とウェット状態の場合の間でノイズマージンを共有するために分割される(すなわち2で割られる)。