(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6283756
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】動物用靴
(51)【国際特許分類】
A01K 13/00 20060101AFI20180208BHJP
A61D 9/00 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
A01K13/00 A
A61D9/00
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-14342(P2017-14342)
(22)【出願日】2017年1月30日
【審査請求日】2017年1月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513101755
【氏名又は名称】有限会社エクラン
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】葛生 裕子
【審査官】
門 良成
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−124959(JP,A)
【文献】
米国特許第07677206(US,B1)
【文献】
特開2012−055596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 13/00
A01K 15/00
A61D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4足歩行する動物の足を保護する動物用靴であって、
該動物用靴は、足先から包み込むように袋状に形成される袋体と、
該袋体に装着される、正常な足の姿勢に矯正するための部材であって、正常な姿勢の足の裏面に沿って設けられる裏面部及びその後面に沿って設けられる後面部を少なくとも有する矯正部材と、を備え、
該矯正部材は、弾性変形可能であり、そして、前記裏面部から前記後面部に連なる接続部は、前記裏面部と前記後面部とが離れる方向には屈曲変形しにくい程の剛性を有しており、かつ前記後面部は、矩形弯曲板状に形成され、
前記接続部は、前記裏面部及び前記後面部よりもその厚さが厚く形成されていることを特徴とする動物用靴。
【請求項2】
前記矯正部材は、熱可塑性樹脂、ゴム、樹脂発泡体またはゲルにて一体成形されてなることを特徴とする請求項1に記載の動物用靴。
【請求項3】
さらに、足に拘束するためのベルト部材を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の動物用靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4足歩行する動物の足に履かせて、その足を保護する動物用靴に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、夏場のアスファルト路面の熱さ、及び冬場の融雪剤や路面の冷たさから足を保護するための動物用靴が提案されている。しかしながら、近年では、人間の高齢化と共に動物、例えば犬の高齢化も進んでおり、病気等の原因により足の運びが悪く、足を引きずって歩行したり、足の裏を地面につけず、足の甲を地面につけた状態で歩行したり、足先の爪を擦りながら歩行する、いわゆるナックリングの障害を持った犬が増加しており、従来から提案された動物用靴では、ナックリングの障害を持った犬に対応することができなかった。
【0003】
上述した問題に鑑みて、特許文献1に記載の動物用ナックリング装具が提案されている。当該特許文献1に記載の動物用ナックリング装具は、剛性を有するL字形をした保持部材を、例えば、犬の前足の指節関節が位置する部分の後方及び下側に配置して、装着用のベルトなどの装着具により装着するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−55596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載のナックリング装具では、剛性を有するL字形をした保持部材を採用しているので、動物が歩行する際、保持部材が足の動作に追従することができず、保持部材により正常な歩行動作を妨げる虞がある。
【0006】
そして、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、足を保護しつつ、ナックリングの障害を持った動物に対して、正常な足の姿勢を保持して、正常な歩行動作を維持することができる動物用靴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明は、4足歩行する動物の足を保護する動物用靴であって、該動物用靴は、足先から包み込むように袋状に形成される袋体と、該袋体に装着される、正常な足の姿勢に矯正するための部材であって、正常な姿勢の足の裏面に沿って設けられる裏面部及びその後面に沿って設けられる後面部を少なくとも有する矯正部材と、を備え、該矯正部材は、弾性変形可能であり、そして、前記裏面部から前記後面部に連なる接続部は、前記裏面部と前記後面部とが離れる方向には屈曲変形しにくい程の剛性を有しており、かつ前記後面部は、矩形弯曲板状に形成され、
前記接続部は、前記裏面部及び前記後面部よりもその厚さが厚く形成されていることを特徴とするものである。
請求項1の発明では、動物用靴の袋体により足を保護することができる。また、矯正部材は裏面部、後面部及び接続部を有しているので、例えば、ナックリングの障害を持った犬に対して、例えば、前足であれば、指節関節の角度を正常な状態に保持することができる。また、矯正部材は、弾性変形可能であり、後面部が裏面部に対して、接続部を中心に前側へは即ち裏面部と後面部とが近づく方向へは、弾性的に屈曲変形しつつ、後側へは即ち裏面部と後面部とが離れる方向へは、屈曲変形しにくいので、正常な歩行動作を維持することができる。
さらに、接続部は、裏面部及び後面部よりもその厚さが厚く形成されているので、簡易な構造で、接続部の剛性を、裏面部と後面部とが離れる方向には屈曲変形しにくい程の剛性に容易に設定することができる。
【0010】
請求項
2に記載した発明は、請求項
1に記載した発明において、前記矯正部材は、熱可塑性樹脂、ゴム、樹脂発泡体またはゲルにて一体成形されてなることを特徴とするものである。
請求項
2の発明では、斯様な矯正部材を装着することにより、装着による違和感を抑えることができる。
【0011】
請求項
3に記載した発明は、請求項1
または2に記載した発明において、さらに、足に拘束するためのベルト部材を備えることを特徴とするものである。
請求項
3の発明では、正常な歩行動作を促進させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る動物用靴では、袋体により足を保護することができる。また、ナックリングの障害を持った動物に対して、矯正部材により、正常な足の姿勢に矯正して保持することができ、且つ正常な歩行動作を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る動物用靴を動物の足に履かせた状態の斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態に係る動物用靴の平面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1実施形態に係る動物用靴の側面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1実施形態に係る動物用靴に採用した矯正部材の側面図である。
【
図5】
図5は、他の実施形態に係る矯正部材の側面図である。
【
図6】
図6は、さらに他の実施形態に係る矯正部材の側面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2実施形態に係る動物用靴を動物の足に履かせた状態の斜視図である。
【
図8】
図8(a)は、本発明の第2実施形態に係る動物用靴に採用した矯正部材の側面図であり、(b)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を
図1〜
図8に基づいて詳細に説明する。
まず、本発明の第1実施形態に係る動物用靴1aを、
図1〜
図6に基づいて説明する。
図1〜
図3に示すように、本発明の第1実施形態に係る動物用靴1aは、ナックリングの障害を持った動物に対して適用されるものであり、動物の足を保護しつつ、正常な足の姿勢を保持するためのものである。本動物用靴1aは、足先から包み込むように袋状に形成される袋体3と、該袋体3に装着され、ナックリングの障害を持った足を、正常な足の姿勢に矯正するための矯正部材4aと、を備えている。
【0015】
図1〜
図3に示すように、袋体3は、例えば犬の前足であれば、足先から手根球の手前までの範囲を包み込む大きさに形成される。袋体3は、防水性及び通気性の良い素材、例えばナイロン系やポリエステル系等の素材を縫製して構成される。なお、袋体3で、素材が二重に重なっている部位等には、通気性を良くするために、一方の素材にメッシュ加工が施される。本実施形態では、袋体3の、袋体3を足に履かせた際の前面に位置する素材にメッシュ加工が施されている。また、袋体3には、その外面で、地面に接触する部位から先端部位に至る範囲に、発泡ゴム等で構成されるシート状の断熱部材12が縫着される。該断熱部材12の地面と接触する面には、滑り止めとして凹凸状に加工(エンボス加工)されたものがある。
【0016】
矯正部材4aは、
図1、
図3及び
図4に示すように、正常な姿勢の足の裏面に沿って設けられる裏面部7と、正常な姿勢の足の後面に沿って設けられる後面部8と、裏面部7から後面部8に連なる接続部9とからなる側面視略く字状に形成される。詳しくは、矯正部材4aは、例えば犬の前足であれば、裏面部7が前足の裏面で指肉球から掌肉球に至る範囲に配置でき、接続部9が前足の指節関節部分に配置でき、また後面部8が前足の後面で中手骨部位に沿って手根球の手前まで配置できるように形成される。裏面部7は、矩形平板状に形成される。後面部8は、矩形弯曲板状に形成される。裏面部7と後面部8とは、緩やかな湾曲状に延びる接続部9により接続されている。裏面部7、後面部8及び接続部9の幅長は略同じである。裏面部7と後面部8との間の角度αは、種々の動物及び前後の足に対応して、適宜決定される。例えば、当該矯正部材4aを犬の前足に対応させる際には、前足の指節関節が正常な角度を保持できるように、裏面部7と後面部8との間の角度αが適宜決定される。
【0017】
裏面部7及び後面部8はその厚みが略同じであり、接続部9は、裏面部7及び後面部8よりもその厚みが厚く形成される。接続部9は、外面が膨出するようにしてその厚みを厚く形成している。この接続部9の剛性により、裏面部7と後面部8とが近接する方向には屈曲し易く、一方、離れる方向には屈曲変形しにくい、言い換えれば、後面部8が裏面部7に対して、接続部9を中心に前側には屈曲変形しやすく、後側には屈曲変形しにくくなる。矯正部材4aは、柔らかく弾力性に優れた、熱可塑性樹脂、ゴム、樹脂発泡体またはゲルにて一体成形される。
【0018】
矯正部材4aは、例えば、熱可塑性エラストマー(TPE)にて成形される。熱可塑性エラストマーは、高温で可塑化され、プラスチックのように加工が可能であり、常温ではゴム弾性体の性質を示す高分子材料である。矯正部材4aには、熱可塑性エラストマーであって、特に、ジエン系やウレタン系を採用するのが好ましい。とりわけ好ましくは、ポリエーテルポリウレタンエラストマーあるいはポリエステルポリウレタンエラストマーである。また、矯正部材4aの材質として、天然ゴム、合成天然ゴム、ブタジェンゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エチレン・酢酸ビニルゴム等を採用してもよい。
【0019】
なお、矯正部材4aの接続部9が、裏面部7と後面部8とが近接する方向には屈曲し易く、一方、離れる方向には屈曲変形しにくくなる程度の剛性を有するように、矯正部材4aの材質(弾性率)、裏面部7及び後面部8の厚さ、接続部9の最大厚さ及び矯正部材4aの幅長が適宜決定される。そして、矯正部材4aは、袋体3の外面で、袋体3を足に履かせた際の後面から下面に至る範囲に接着剤等により装着される。なお、矯正部材4aを、袋体3の内面に装着してもよい。また、矯正部材4aを袋体3に装着する他の実施形態として、袋体3の、袋体3を足に履かせた際の後面で、後述する各ベルト部材16、16の内側に、下方に開口するポケット(図示略)を形成しておき、該ポケットに矯正部材4aの後面部8を挿入しつつ、矯正部材4aの裏面部7を袋体3の底面に面ファスナ等の係止手段にて係止する形態を採用してもよい。本実施形態は、袋体3と矯正部材4aとを着脱自在に構成する形態である。
【0020】
なお、他の実施形態に係る矯正部材4aでは、
図5に示すように、裏面部7の大きさを、例えば、犬の前足であれば掌肉球の全範囲または一部を覆う大きさに形成するようにしている。
【0021】
さらに他の実施形態に係る矯正部材4aとして、
図6に示すように、当該矯正部材4aを、上述した材料にて、裏面部7、後面部8及び接続部9の厚さを同じに一体成形し、接続部9の外面の一部に、矯正部材4a本体の材料よりも硬く弾性率の大きい、例えば、ポリプロピレン等の補強板17を接着するようにしてもよい。なお、この実施形態の場合、裏面部7と後面部8とが近接する方向に屈曲しやすいように、補強板17の一部と、接続部9の外面とを接着するようにしたほうが良い。
【0022】
図1〜
図3に示すように、袋体3の外面で、袋体3を足に履かせた際の後面(矯正部材4aの後面部8が装着される面)に、帯状のベルト部材16の一端側が縫着されている。なお、矯正部材4aの後面部8を、ベルト部材16の一端側と袋体3の外面との間に挟むように、ベルト部材16の一端側を袋体3の外面に縫着するようにしている。ベルト部材16の一端には、ベルト部材16の他端を挿入して折り返すためのリング状金具17が取り付けられている。ベルト部材16の他端はベルト部材16の表面の適宜箇所に係止される。その係止手段には面ファスナが採用される。
【0023】
本実施形態では、袋体3の外面には、ベルト部材16、16は間隔を置いて2本装着されている。2本のベルト部材16、16のうち、一方のベルト部材16は、一端側を袋体3に縫着して、他端を袋体3の周りを一方向に回すように延在させて、他方のベルト部材16は、一端側を袋体3に縫着して、他端を袋体3の周りを他方向に回すように延在させている。そして、本動物用靴1aを足に履かせた後、各ベルト部材16の他端を袋体3の周りを回すように延在させて、リング状金具17に挿入して折り返し、その他端を面ファスナより各ベルト部材16の表面の適宜箇所に係止する。その結果、各ベルト部材16により、矯正部材4aの後面部8を足の後面にフィットさせて拘束することができる。
【0024】
以上説明した、第1実施形態に係る動物用靴1aを、ナックリングの障害を持った、例えば犬の前足に履かせると、矯正部材4aの裏面部7、後面部8及び接続部9により、前足の指節関節の角度を正常な状態に保持することができ、前足の姿勢を正常に保持することができる。さらに、第1実施形態に係る動物用靴1aでは、矯正部材4aは、弾性変形可能であり、接続部9の剛性により、裏面部7と後面部8とが近接する方向には屈曲し易く、一方、離れる方向には屈曲変形しにくいので、歩行の際には後面部8が足の動作に追従することができ、矯正部材4aを装着した動物用靴1aであっても、正常な歩行動作を維持することができる。
【0025】
また、第1実施形態に係る動物用靴1aでは、矯正部材4aを、柔らかく弾力性のある、熱可塑性樹脂、ゴム、樹脂発泡体またはゲルにて一体成形しているので、矯正部材4aを装着することによる違和感を抑えることができ、さらには、矯正部材4aの後面部8を、足に拘束するためのベルト部材16を備えているので、正常な歩行動作で快適に歩行させることができる。
【0026】
次に、本発明の第2実施形態に係る動物用靴1bを、
図7及び
図8に基づいて説明する。第2実施形態に係る動物用靴1bを説明する際には、第1実施形態に係る動物用靴1aとの相違点のみを説明する。
袋体3には、
図7に示すように、袋体3を足に履かせた際の両側面の位置で、各ベルト部材16、16の内側に、下方に開口するポケット19、19がそれぞれ形成される。
【0027】
矯正部材4bは、
図8に示すように、正常な姿勢の足の裏面に沿って設けられる裏面部7と、該裏面部7に接続され、正常な姿勢の足の両側面に沿って設けられる一対の側面部20とから構成される。各側面部20は、矩形平板状に形成される。各側面部20は、袋体3のポケット19に挿入できる大きさに形成される。この矯正部材4bの側面部20が、袋体3のポケット19に着脱自在に装着される。裏面部7と各側面部20との間の角度αは、種々の動物及び前後の足に対応して、適宜決定される。
図8に示す実施形態では、側面部20が足の両側面に沿うように一対設けられているが、側面部20を足の一側面だけに沿うように片方だけ設けてもよい。
【0028】
そして、第2実施形態に係る動物用靴1bでは、まず、動物用靴1bの袋体3を、例えば犬の前足に履かせて、前足の指節関節の角度を正常にした後に、矯正部材4bの各側面部20を袋体3の各ポケット19にそれぞれ挿入しつつ、矯正部材4bの裏面部7を袋体3の底面に面ファスナ等の係止手段にて係止するようにする。
【0029】
これにより、第2実施形態に係る動物用靴1bにおいても、第1実施形態に係る動物用靴1aと同様の効果を奏することができ、さらに、矯正部材4bと袋体3とが着脱自在に構成されているので、第2実施形態に係る動物用靴1bを、容易に動物の足に履かせることができる。
【0030】
上述した第1及び第2実施形態に係る本動物用靴1a、1bは、犬や猫等、4足歩行する動物の前足や後足に適用でき、特に、ナックリングの障害を持った動物に対して適用されるものである。
【符号の説明】
【0031】
1a、1b 動物用靴,3 袋体,4a、4b 矯正部材,7 裏面部,8 後面部,9 接続部,16 ベルト部材,20 側面部
【要約】
【課題】足を保護しつつ、ナックリングの障害を持った動物に対して、正常な足の姿勢を保持して、正常な歩行動作を維持することができる動物用靴を提供する。
【解決手段】本動物用靴1aは、足先から包み込むように袋状に形成される袋体3と、該袋体3に装着される、正常な足の姿勢に矯正するための部材であって、正常な姿勢の足の裏面に沿って設けられる裏面部7及びその後面に沿って設けられる後面部8を少なくとも有する矯正部材4aと、を備え、該矯正部材4aは、弾性変形可能であり、裏面部7から後面部8に連なる接続部9は、裏面部7と後面部8とが離れる方向に屈曲変形しにくい程の剛性を有する。これにより、本動物靴1aでは、足を保護しつつ、ナックリングの障害を持った動物に対して、正常な足の姿勢を保持して、正常な歩行動作を維持することができる。
【選択図】
図3