【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「新エネルギーベンチャー技術革新事業(燃料電池・蓄電池)」「サブミクロン炭素繊維を用いたリチウムイオン電池向け高容量負極材の開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0039】
第1の発明は炭素−珪素(C−Si)複合材である。前記複合材はカーボンブラック(CB)を有する。前記複合材は珪素(Si)粒子を有する。前記CBと前記Si粒子とは、樹脂熱分解物を介して、結合している。これによって、充放電によりSi粒子が変形した場合でも、前記複合材の導電性が確保できた。サイクル特性が向上した。カーボンブラックを具備しているので、サイクル特性が向上した。導電性が向上した。
【0040】
前記カーボンブラックは、好ましくは、一次粒径(分散状態におけるCB粒子の粒径)が21〜69nmであった。より好ましくは、69nm未満であった。更に好ましくは、60nm以下であった。もっと好ましくは、55nm以下であった。前記CB粒子の一次粒径が大き過ぎた場合、サイクル特性が低下する傾向が有った。前記CB粒子の一次粒径が小さ過ぎた場合、サイクル特性が低下する傾向が有った。前記一次粒径(平均一次粒径)は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)によって求められる。比表面積測定法(ガス吸着法)によっても求められる。X線散乱法によっても求められる。上記一次粒径(平均一次粒径)の値はTEMによって求められた値である。
【0041】
前記Si粒子は、好ましくは、粒径が0.05〜3μmであった。より好ましくは、0.1μm以上であった。更に好ましくは0.2μm以上であった。もっと好ましくは0.25μm以上であった。特に好ましくは0.3μm以上であった。より好ましくは、2.5μm以下であった。大き過ぎた場合、C−Si複合材の膨張が大きかった。サイクル特性が低下する傾向が有った。初回クーロン効率が低下する傾向が有った。小さ過ぎた場合、サイクル特性が低下する傾向が有った。初回クーロン効率が低下する傾向が有った。前記大きさは、エネルギー分散型X線分光法(EDS: Energy DispersiveX-ray Spectroscopy)によって、求められた。Siの特性X線(1.739eV)に注目して電子線が操作された。ケイ素のX線マッピングが行われた。得られた画像からSi粒子の大きさが求められた。
【0042】
前記C−Si複合材は、好ましくは、樹脂分解物(熱分解物)が、前記Si粒子の表面に、存在している。より好ましくは、前記Si粒子が前記分解物で覆われている。全面被覆が好ましい。但し、実質的に覆われている場合でも良い。本発明の特長が大きく損なわれなければ、Si粒子の一部が覆われていなくても良い。Si粒子が前記分解物で覆われていると、Si粒子(表面)はリチウムイオン二次電池の電解液に接触し難い。この為、副反応が、Si粒子(表面)と電解液との間で、起こり難い。この結果、不可逆容量が下がる。
【0043】
前記C−Si複合材は、別の実施形態として、樹脂分解物(熱分解物)が、Si粒子(粒径:0.05〜3μm)の表面に、存在している場合が挙げられる。好ましくは、前記Si粒子が前記分解物で覆われている。全面被覆が好ましい。但し、実質的に覆われている場合でも良い。本発明の特長が損なわれなければ、Si粒子の一部が覆われていなくても良い。本要件の理由は前述されている。
【0044】
前記C−Si複合材は、好ましくは、Si含有量が20〜96質量%であった。より好ましくは、40質量%以上であった。より好ましくは、95質量%以下であった。前記Si量が少な過ぎた場合、活物質としての容量が低下した。前記Si量が多すぎた場合、導電性が低下した。サイクル特性が低下した。
【0045】
前記C−Si複合材は、好ましくは、炭素含有量が4〜80質量%であった。より好ましくは、5質量%以上であった。更に好ましくは7質量%以上であった。もっと好ましくは、10質量%以上であった。より好ましくは、60質量%以下であった。炭素含有量が少な過ぎた場合、サイクル特性が低下した。
【0046】
前記Si含有量はC−Si分析によって求められた。すなわち、C−Si分析装置において、質量既知のC−Si複合材の燃焼が行われた。赤外線測定によりC量が定量された。前記C量が差し引かれた。これにより、Si含有量が求められた。これから判る通り、「C含有割合=C量/(C量+Si量)、Si含有割合=Si量/(C量+Si量)」である。
【0047】
前記C−Si複合材は不純物が含まれていても良い。C,Si成分以外の成分を排除するものではない。
【0048】
前記複合材は、電極の充填密度が重要な場合は、略球状のものが好ましい。サイクル特性が重要な場合は、略繊維状のものが好ましい。
【0049】
前記粒状(略球状)のものは、好ましくは、1μm〜20μm(直径)の粒子であった。1μm未満の小さな場合、比表面積が大きく、電解液との副反応が相対的に増えた。不可逆容量が増加した。20μmを越えて大きな場合、電極作製時の取扱いが困難であった。より好ましくは2μm以上であった。更に好ましくは5μm以上であった。より好ましくは15μm以下であった。更に好ましくは10μm以下であった。形状は完全な球状でなくても良い。例えば、
図9に示される不定形であってもよい。直径は走査型電子顕微鏡(SEM)によって求められる。レーザー散乱法によっても求められる。上記値はSEMによって求められた値である。
【0050】
前記繊維状(略繊維状)のものは、好ましくは、繊維径が0.5μm〜6.5μm、繊維長が5μm〜65μmの繊維であった。前記直径が大き過ぎた場合、電極作製時の取扱いが困難であった。前記直径が小さ過ぎた場合、生産性が低下した。前記長さが短すぎた場合、繊維形状の特徴が失われた。前記長さが長すぎた場合、電極作製時の取扱いが困難であった。より好ましい直径は0.8μm以上であった。より好ましい直径は5μm以下であった。より好ましい長さは10μm以上であった。より好ましい長さは40μm以下であった。前記直径は前記複合材のSEM写真から求められた。前記複合材のSEM写真から繊維状複合材がランダムに10本抽出され、その平均直径が求められた。前記繊維状複合材が10本未満(N本)の場合、N本の前記複合材から平均直径が求められた。前記長さは繊維状複合材のSEM写真から求められた。前記繊維状複合材のSEM写真から繊維状複合材がランダムに10本抽出され、その平均長さが求められた。前記繊維状複合材が10本未満(N本)の場合、N本の前記複合材から平均長さが求められた。
【0051】
前記球状複合材と前記繊維状複合材とが混合使用されると、電極密度とサイクル特性との両立が可能になった。
【0052】
前記複合材は、好ましくは、その比表面積が5〜50m
2/gのものであった。より好ましくは8m
2/g以上のものであった。より好ましくは35m
2/g以下のものであった。比表面積が大き過ぎた場合、電解液との副反応が増えた。不可逆容量が大きくなった。比表面積が小さ過ぎた場合、前記複合材のサイズが大きく、電極作製が困難となった。前記比表面積の値はBET法で求められた値である。
【0053】
前記樹脂は、好ましくは、熱可塑性樹脂であった。熱可塑性樹脂としては、例えばポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、セルロース樹脂(カルボキシメチルセルロース(CMC)等)、ポリオレフィン(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等)、エステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET)等)、アクリル(メタクリル)系樹脂などが挙げられる。勿論、これ等に限られない。前記樹脂は熱分解されるので、熱分解時に有害ガスが発生しないタイプのものが好ましい。前記樹脂は、好ましくは、水溶性樹脂であった。前記樹脂の中で好ましい樹脂はポリビニルアルコール系の樹脂であった。最も好ましい樹脂はPVAであった。PVA単独の場合は勿論であるが、本発明の特長が大きく損なわれない程度であれば、その他の樹脂が併用されても良い。樹脂は、主成分がPVAの場合も含まれる。「PVAが主成分」とは「PVA量/全樹脂量≧50wt%」を意味する。好ましくは60wt%以上、更に好ましくは70wt%以上、より更に好ましくは80wt%以上、特に好ましくは90wt%以上である。PVAが最も好ましかった理由は次の通りであった。PVAの分解物(熱分解物)はリチウムイオン二次電池の電解液と副反応が起き難かった。この為、不可逆容量が下がる。更に、PVAは、加熱分解時に、水と二酸化炭素になり易い。残留炭化物が少ない。この結果、前記C−Si複合材におけるSi含有量が低下しない。例えば、ポリエチレングリコール(分子量20,000、和光純薬工業株式会社製)が用いられた場合、PVAが用いられた場合に比べて、変性時(加熱時)に残留炭化物が多かった。この結果、Si含有量が低下した。かつ、不可逆容量が大きかった。例えば、初回クーロン効率が低かった(43%)。サイクル特性が低かった(32%)。
【0054】
前記PVAは、好ましくは、平均分子量(重合度)が2200〜4000のものであった。更に好ましくは、3000以下であった。重合度はJIS K 6726に準じて求められた。例えば、1部のPVAが100部の水に溶解した。粘度(30℃)がオストワルド粘度計(相対粘度計)にて求められた。重合度(PA)が、次の式(1)〜(3)より、求められた。
式(1) log(PA)=1.613×log{([η]×104)/8.29}
式(2) [η]={2.303×log[ηrel]}/C
式(3) [ηrel]=t1/t0
PA:重合度、[η]:極限粘度、ηrel:相対粘度、C:試験溶液の濃度(g/L)、t0:水の落下秒数(s)、t1:試験溶液の落下秒数(s)
【0055】
前記PVAは、好ましくは、鹸化度が75〜90mol%のものであった。更に好ましくは、80mol%以上であった。鹸化度はJIS K 6726に準じて求められた。例えば、推定鹸化度に応じて、1〜3部の試料、水100部、フェノールフタレイン液3滴が加えられて完全に溶解した。0.5mol/LのNaOH水溶液25mlが加えられ、撹拌後、2時間放置された。0.5mol/LのHCl水溶液25mlが加えられた。0.5mol/LのNaOH水溶液にて滴定が行われた。鹸化度(H)は、次の式(1)〜(3)より、求められた。
式(1) X1={(a−b)×f×D×0.06005}/{S×(P/100)}×100
式(2) X2=(44.05×X1)/(60.05−0.42×X1)
式(3) H=100−X2
X1:残存酢酸基に相当する酢酸量(%)
X2:残存酢酸基(モル%)
H:鹸化度(モル%)
a:0.5mol/lNaOH溶液の使用量(ml)
b:空試験での0.5mol/lNaOH溶液の使用量(ml)
f:0.5mol/lNaOH溶液のファクター
D:規定液の濃度(0.1mol/l又は0.5mol/l)
S:試料採取量(g)
P:試料の純分(%)
【0056】
前記複合材は、前記特徴を有さないC−Si複合材が含まれていても良い。例えば、(本発明の特徴を有するC−Si複合材の体積量)/(本発明の特徴を有するC−Si複合材の体積量+本発明の特徴を有さないC−Si複合材の体積量)≧0.5であれば、本発明の特徴が大きく損なわれなかった。好ましくは、前記比が0.6以上である。より好ましくは、前記比が0.7以上である。更に好ましくは、前記比が0.8以上である。もっと好ましくは、前記比が0.9以上である。体積量比は電子顕微鏡観察などの方法で求められる。この観点から、前記直径は「平均直径」であると言える。前記長さは「平均長さ」であると言える。前記粒径は「平均粒径」であると言える。
【0057】
前記複合材は、例えば電池の負極材である。
【0058】
第2の発明は負極である。例えば、二次電池の負極である。前記負極は前記複合材が用いられて構成されてなる。
【0059】
第3の発明は二次電池である。前記二次電池は前記負極を具備する。
【0060】
第4の発明は炭素−珪素複合材製造方法である。前記製造方法は分散液作製工程を具備する。前記製造方法は溶媒除去工程を具備する。前記製造方法は変性工程を具備する。前記分散液作製工程の一例は、樹脂、カーボンブラック、珪素、及び溶媒を含む分散液が作製される工程である。前記分散液作製工程の他の例は、樹脂、珪素(粒径が0.05〜3μm)、及び溶媒を含む分散液が作製される工程である。前記溶媒除去工程は、前記分散液から溶媒が除去される工程である。これによって、C−Si複合材前駆体が得られる。前記変性工程は、前記C−Si複合材前駆体がC−Si複合材に変性する工程である。前記製造方法は、好ましくは、更に、解砕工程を具備する。好ましくは、更に、分級工程を具備する。
【0061】
前記溶媒除去方法には、例えば遠心紡糸法(
図1,2参照)、延伸紡糸法(
図3参照)、静電紡糸法、ゲル固化紡糸法などの方法が採用される。前記分散液が紡糸され繊維状C−Si複合材前駆体を得る方法、前記分散液を基材上に塗工・乾燥してフィルム状C−Si複合材前駆体を得る方法、前記分散液を前記溶媒と相溶性が良く、かつ、PVAが溶けない溶媒中に滴下し、球状C−Si複合材前駆体を得る方法が挙げられる。
【0062】
遠心紡糸法または静電紡糸法が採用された場合、不織布が得られる。延伸紡糸法が採用された場合、例えば糸(又は、繊維(長繊維))が得られる。前記紡糸によって得られるのは繊維材(例えば、不織布、糸、又はフィラメント(モノフィラメント又はマルチフィラメント))である。前記繊維材の繊維はC−Si複合材前駆体である。好ましい紡糸方法は延伸紡糸法(特に好ましくは、延伸倍率が2〜50倍)であった。他の好ましい紡糸方法は遠心紡糸法(特に、好ましくは、円盤回転数が1000〜100000rpm)であった。
【0063】
前記変性工程は、前記C−Si複合材前駆体がC−Si複合材に変性する工程である。この工程は、基本的には、加熱工程である。この加熱工程では、前記複合材前駆体が、例えば50〜3000℃に加熱される。好ましくは100℃以上であった。より好ましくは500℃以上であった。好ましくは1500℃以下であった。より好ましくは1000℃以下であった。PVAは融点よりも熱分解温度が低いので、前記複合材前駆体の形状を維持したままでの変性が可能である。
【0064】
前記解砕工程は前記複合材が砕かれる工程である。前記複合材が不織布の場合、前記解砕工程によって、不織布は解かれ、繊維そのものになる。勿論、絡み合った状態のものもある。糸も解かれる。長繊維は切断される。長繊維は短繊維になる。シートは粒子状になる。粒子状の場合は更に小さな粒子状になる。前記解砕工程は、例えば粉砕工程である。例えば、叩かれる工程である。例えば、切断工程である。例えば、切断される。
【0065】
前記分級工程は、所定の大きさのC−Si複合材を得る工程である。前記分級工程は、例えば篩工程である。例えば、気流分級工程である。
【0066】
前記樹脂、前記カーボンブラック、前記Si粒子は、上記内容の通りである。
【0067】
前記分散液中の前記樹脂(例えば、PVA)の濃度は、好ましくは、50〜200g/Lであった。より好ましくは、60g/L以上であった。より好ましくは、150g/L以下であった。
【0068】
前記分散液中のCBの濃度は、好ましくは、1〜100g/Lであった。より好ましくは、2g/L以上であった。より好ましくは、20g/L以下であった。
前記CBは、前記PVA100質量部に対して、好ましくは、1〜60質量部であった。より好ましくは、2質量部以上であった。より好ましくは、50質量部以下であった。
【0069】
前記Si粒子の濃度は、好ましくは、10〜100g/Lであった。より好ましくは、30g/L以上であった。より好ましくは、90g/L以下であった。
【0070】
前記分散液(前記分散液作工程後における分散液:前記溶媒除去工程に供給する前段階での分散液)の粘度は、好ましくは、10〜10000mPa・Sであった。前記粘度は共軸二重円筒型粘度計による粘度である。前記分散液は、好ましくは、固形分濃度が0.1〜50質量%であった。
【0072】
[分散液作製工程(工程I)]
分散液は、例えば樹脂と、珪素と、溶媒とを含む。特に好ましくは、カーボンブラックを更に含む。
【0073】
前記樹脂がPVAの例で説明される。その他の樹脂の場合もPVAに準じる。
【0074】
前記PVAは、紡糸性の観点から、好ましくは、重合度が2200〜4000であった。より好ましくは3000以下であった。好ましくは、鹸化度が75〜90mol%であった。より好ましくは80mol%以上であった。重合度が小さ過ぎた場合、紡糸時に、糸が切れ易かった。重合度が大き過ぎた場合、紡糸が困難であった。鹸化度が低すぎた場合、水に溶け難く、紡糸が困難であった。鹸化度が大きすぎた場合、粘度が高く、紡糸が困難であった。
【0075】
前記分散液は、必要に応じて、ビニル樹脂(例えば、ポリビニルアルコール共重合体、ポリビニルブチラール(PVB)等)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、アクリル樹脂(例えば、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、ポリアクリロニトリル(PAN)等)、フッ素樹脂(例えば、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)等)、天然物由来高分子(例えば、セルロース樹脂、セルロース樹脂誘導体(ポリ乳酸、キトサン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)等))、エンジニアリングプラスチック樹脂(ポリエーテルスルホン(PES)等)、ポリウレタン樹脂(PU)、ポリアミド樹脂(ナイロン)、芳香族ポリアミド樹脂(アラミド樹脂)、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂の群の中から選ばれる一種または二種以上を含有しても良い。その量は本発明の効果を損なわない範囲である。
【0076】
前記分散液は、特に好ましくは、一次粒径(平均一次粒径)が21nm〜69nmのCBを含む。一次粒径が21nm未満のCBが用いられた場合、得られた炭素繊維の比表面積は増す。しかし、嵩密度が低下した。分散液の固形分濃度が高くならず、取り扱いが困難であった。一次粒径が69nmを越えたCBが用いられた場合、得られた炭素繊維の比表面積が小さくなった。接触抵抗が大きかった。前記CB粒子の一次粒径が大き過ぎた場合、サイクル特性が低下する傾向が有った。前記CB粒子の一次粒径が小さ過ぎた場合、サイクル特性が低下する傾向が有った。
【0077】
前記溶媒は、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、シクロヘキサノール等)、エステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、非プロトン性極性溶媒(例えば、N,N’−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメチルアセトアミド等)、ハロゲン化炭化水素(例えば、クロロホルム、テトラクロロメタン、ヘキサフルオロイソプロピルアルコール等)、酸(酢酸、蟻酸など)の群の中から選ばれる一種または二種以上が用いられる。環境面から、好ましくは、水またはアルコールであった。特に好ましくは水であった。
【0078】
前記分散液は前記Si粒子を含有する。前記Si粒子(金属ケイ素粒子)は、実質的に、ケイ素単体である。「実質的」とは、工程上含まれる不純物や、保管中に粒子表面が酸化された場合等による不純物の含有が有る場合も含まれると言う意味である。本発明の前記粒子は、Si単体が含まれている粒子であれば制限はない。例えば、粒子表面が他成分で被覆されたものであっても良い。他成分からなる粒子中に、Si単体が分散した構造であっても良い。例えば、Si粒子が炭素で被覆された粒子が例示される。Si粒子がSiO2中に分散した粒子が例示される。前記複合粒子の場合は、前記複合粒子の粒径が前記範囲内に入っていれば良い。前記炭素繊維に含まれているSi成分が単体であるか化合物であるかの判断は、X線回折測定(XRD)など公知の測定方法で判断できる。
【0079】
前記分散液は、強度や導電性の観点から、必要に応じて、カーボンナノチューブ(例えば、シングルウォールカーボンナノチューブ(SWNT)、マルチウォールカーボンナノチューブ(MWNT)、これ等の混合物)等を含有しても良い。
【0080】
前記分散液は、必要に応じて、分散剤を含有する。前記分散剤は、例えば界面活性剤である。界面活性剤は、低分子系のものでも、高分子系のものでも良い。
【0081】
前記PVA(樹脂)と前記Siとは、好ましくは、次の割合である。前記PVAが多すぎると、Siの含有量が下がる。逆に、前記PVAが少なすぎると、紡糸、塗工等の溶媒除去工程が困難になる。従って、好ましくは、前記PVA100質量部に対して、前記Siが5〜200質量部(より好ましくは10〜100質量部)であった。
【0082】
前記CBが含まれる場合、[前記Si粒子の質量]/[前記CBの質量+前記Si粒子の質量]=20〜94%が好ましかった。又、前記粒子と前記CBとの総量が、前記PVA100質量部に対して、好ましくは、5〜200質量部(より好ましくは10〜100質量部)であった。前記CBが多すぎると、負極活物質としての容量が低下した。前記CBが少なすぎると、導電性が失われた。
【0083】
前記分散液における固形分(溶媒以外の成分)の濃度が高すぎると、紡糸等溶媒除去工程が困難であった。逆に、前記濃度が低すぎても、紡糸等溶媒除去工程が困難であった。好ましくは、前記固形分の濃度が0.1〜50質量%(より好ましくは、1〜30質量%。更に好ましくは、5〜20質量%)であった。前記分散液の粘度が高すぎると、例えば溶媒除去工程に紡糸を採用した場合、紡糸時に、分散液がノズルから吐出され難かった。逆に、前記粘度が低すぎると、紡糸が困難であった。従って、前記分散液の粘度(紡糸時における粘度:粘度計は共軸二重円筒型粘度計)は、好ましくは、10〜10000mPa・S(より好ましくは、50〜5000mPa・S。更に好ましくは、500〜5000mPa・S)であった。
【0084】
前記分散液作製工程は、例えば混合工程と微細化工程とを有する。前記混合工程は、前記PVAと前記Si(及びCB)とが混合される工程である。前記微細化工程は、前記Si(及びCB)が微細化される工程である。前記微細化工程は、前記Si(及びCB)に剪断力が付与される工程である。これにより、CBの場合は二次凝集が解かれる。前記混合工程と前記微細化工程とは、どちらが先でも良い。同時に行われても良い。
【0085】
前記混合工程においては、前記PVAと前記Si(及びCB)との双方が粉体の場合と、一方が粉体で他方が溶液(分散液)の場合と、双方が溶液(分散液)の場合とが有る。操作性の観点から、好ましくは、前記PVA及び前記Si(及びCB)が、共に、溶液(分散液)の場合である。
【0086】
前記微細化工程では、例えばメディアレスビーズミルが用いられる。或いは、ビーズミルが用いられる。又は、超音波照射機が用いられる。異物の混入を防ぎたい場合、好ましくは、メディアレスビーズミルが用いられる。Si(及びCB)の粒径を制御したい場合、好ましくは、ビーズミルが用いられる。簡便な操作で行いたい場合、好ましくは、超音波照射機が用いられる。本発明においては、Si(及びCB)の粒径制御が大事であるから、ビーズミルが用いられた。
【0087】
[溶媒除去工程:紡糸工程(繊維材(炭素珪素複合繊維前駆体)の作製工程:工程II)]
前記溶媒除去工程は、前記分散液から溶媒が除去される工程である。特に溶媒除去工程の中でも繊維状の複合材前駆体(炭素珪素複合繊維前駆体)を得る工程を紡糸工程と呼ぶ。
紡糸工程には例えば、
図1,2の遠心紡糸装置が用いられた。
図1は遠心紡糸装置の概略側面図である。
図2は遠心紡糸装置の概略平面図である。図中、1は回転体(円盤)である。前記円盤1は空洞体である。前記円盤1の壁面にはノズル(又は孔)が設けられている。前記円盤1の内部(空洞部)2(図示せず)に紡糸原液が充填される。円盤1が高速回転させられる。これによって、紡糸原液が遠心力によって引き伸ばされる。そして、溶媒は揮発しつつ、捕集板3上に堆積する。この堆積によって、不織布4が形成される。
【0088】
遠心紡糸装置は、円盤1の加熱装置を有していても良い。紡糸原液連続供給装置を有していても良い。遠心紡糸装置は
図1,2のものに限定されない。例えば、円盤1は縦型であっても良い。或いは、円盤1は上部に固定されていても良い。円盤1は公知のスプレードライ装置で使用されるベル型ディスクやピン型ディスクであっても良い。捕集板3は、バッチ式では無く、連続式であっても良い。捕集板3は、公知のスプレードライ装置で使用される逆円錐形の筒であっても良い。溶媒蒸発空間全体の加熱は、溶媒が早く乾燥するので、好ましい。円盤1の回転速度(角速度)は、好ましくは、1,000〜100,000rpmであった。より好ましくは、5,000〜50,000rpmであった。速度が遅すぎると、延伸倍率が低いからである。速度は高速の方が好ましい。しかし、或る上限値を越えても、大きな改善は得られ難い。逆に、装置に掛かる負担が大きくなった。従って、好ましくは、100,000rpm以下とした。円盤1と捕集板3との間の距離が短すぎると、溶媒が蒸発し難い。逆に、長すぎると、装置が必要以上に大きくなる。好ましい距離は装置の大きさによっても異なる。円盤の直径が10cmの場合は、円盤1と捕集板3との間の距離は、例えば20cm〜3mであった。
【0089】
遠心紡糸装置の代わりに、延伸紡糸装置が用いられても良い。
図3は乾式延伸紡糸装置の概略図である。乾式延伸紡糸装置が用いられたが、湿式延伸紡糸装置が用いられても良い。乾式延伸紡糸法は、固化が空気中で行われる方法である。湿式延伸紡糸法は、ポリビニルアルコールが溶けない溶媒中で行われる方法である。何れの方法も用いることが出来る。
図3において、11はタンク(分散液(ポリビニルアルコール、カーボンブラック(一次粒径が21〜69nm)、及び溶媒が含まれる。)のタンク)である。12は紡糸ノズルである。タンク11内の分散液が、紡糸ノズル12を介して、紡糸される。この時、加熱空気13によって、溶媒が蒸発する。糸14として巻き取られる。湿式延伸紡糸では、加熱空気の代わりに、ポリビニルアルコールが溶けない溶剤が用いられる。延伸倍率が大き過ぎると、糸が切れる。延伸倍率が小さ過ぎると、繊維径が細くならない。好ましい延伸倍率は2〜50倍であった。3倍以上が更に好ましい。20倍以下が更に好ましい。本工程によって、炭素繊維前駆体製の長繊維(糸)が得られる。
【0090】
延伸紡糸法および遠心紡糸法は、静電紡糸法よりも、高粘度の液(固形分濃度が高い分散液)を用いることが出来た。遠心紡糸法は、静電紡糸法よりも、湿度(温度)の影響を受け難い。長時間に亘って、安定した紡糸が可能であった。延伸紡糸法および遠心紡糸法は生産性が高かった。遠心紡糸法は、遠心力を利用した紡糸法である。従って、紡糸時における延伸倍率が高い。この為と想像されたが、繊維中における炭素粒子の配向度が高かった。導電性が高かった。得られた炭素繊維の径は小さかった。繊維径のバラツキが少なかった。金属粉の混入が少なかった。不織布の場合、表面積が大きかった。
【0091】
本工程(紡糸工程)で得られた繊維材は複合材前駆体で構成されている。前記前駆体は、PVAとSi粒子との混合物(好ましくは、CBが更に含まれる。)である。前記不織布(前駆体製)が複数枚積層されても良い。積層された不織布がロールなどで圧縮されても良い。圧縮により、膜厚や密度が、適宜、調節される。糸(フィラメント)はボビンに巻かれていても良い。
【0092】
不織布(繊維前駆体製)が捕集体から剥離して取り扱われる。或は、前記不織布が捕集体に付着したままで取り扱われる。又は、綿あめを製造する場合の如く、生成した不織布が棒で巻き取られても良い。
繊維状の複合材を得る場合には、前記遠心紡糸法、延伸紡糸法、静電紡糸法以外にも、ゲル固化紡糸法が採用できる。
球状の複合材を得る場合には、前記分散液をポリエステルフィルムや離型紙などの基材上にバーコータ、ダイコータ、キスコータ、ロールコータなどで塗工・乾燥してフィルム状C−Si複合材前駆体を得る方法、前記分散液を前記溶媒と相溶性が良く、かつ、PVAが溶けない溶媒中に滴下し、凝固させることによって球状C−Si複合材前駆体を得る方法も採用できる。
【0093】
[変性工程(工程III)]
変性工程は、前記複合材前駆体がC−Si複合材に変性する工程である。
この工程は、基本的には、加熱工程である。この加熱工程では、前記複合材前駆体が、例えば50〜3000℃に加熱される。更に好ましくは100℃以上であった。もっと好ましくは500℃以上であった。更に好ましくは1500℃以下であった。もっと好ましくは1000℃以下であった。
PVAの熱分解温度は融点よりも低い。この為、熱処理によっても、前記前駆体の形状が維持されている。
【0094】
[解砕工程(工程IV)]
本工程は、前記工程で得られた複合材の大きさを小さくする工程である。本工程は、例えば前記工程II(或いは、前記工程III)で得られた複合材前駆体(複合材)が粉砕される工程である。前記粉砕によってより小さな複合材前駆体(複合材)が得られる。前記繊維材が叩かれることによっても、前記繊維材は解かれる。すなわち、繊維が得られる。
【0095】
粉砕には、例えばカッタミル、ハンマーミル、ピンミル、ボールミル、又はジェットミルが用いられる。湿式法、乾式法の何れの方法でも採用できる。但し、非水系電解質二次電池などの用途に用いられる場合は、乾式法の採用が好ましい。
【0096】
メディアレスミルが用いられると、繊維の潰れが防止される。従って、メディアレスミルの採用は好ましい。例えば、カッターミルやエアージェットミルの採用は好ましい。
【0097】
本工程IVの条件は、炭素繊維の長さや粒径に影響する。
【0098】
[分級工程(工程V)]
本工程は、前記工程IVで得られた繊維から所望の大きさのものが選ばれる工程である。例えば、篩(目開き20〜300μm)を通過した複合材が用いられる。目開きが小さな篩が用いられた場合、利用されない複合材の割合が多くなる。これはコスト増を引き起こす。目開きが大きな篩が用いられた場合、利用される複合材の割合が多くなる。しかし、複合材の品質のバラツキが大きい。篩と同等の方法が用いられても良い。例えば、気流分級(サイクロン分級)が用いられても良い。
【0099】
[電極]
前記複合材は、電気素子(電子素子も電気素子の中に含まれる)の部材に用いられる。例えば、リチウムイオン電池負極の活物質に用いられる。リチウムイオンキャパシタ負極の活物質に用いられる。
リチウムイオン電池は各種の部材(例えば、正極、負極、セパレータ、電解液)からなる。正極(又は、負極)は次のようにして構成される。活物質(正極活物質、又は負極活物質)、導電剤、結着剤などを含む混合物が、集電体(例えば、アルミ箔や銅箔など)上に積層される。これによって、正極(又は、負極)が得られる。
本発明の複合材は単体で負極活物質として用いても良く、公知の負極活物質と併用してもよい。併用の場合、(前記複合材量)/(全活物質量)が、好ましくは、3〜50質量%である。更に好ましくは5質量%以上であった。もっと好ましくは10質量%以上であった。更に好ましくは30質量%以下であった。もっと好ましくは20質量%以下であった。公知の負極活物質は、例えば難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維、又は活性炭などが挙げられる。リチウムと合金を形成可能な金属元素の単体、合金および化合物、並びにリチウムと合金を形成可能な半金属元素の単体、合金および化合物からなる群の中の少なくとも一種を含んでいるものも用いられる(これらを以下合金系負極活物質と称する)。
【0100】
前記金属元素(又は半金属元素)としては、スズ(Sn),鉛(Pb),アルミニウム,インジウム(In),ケイ素(Si),亜鉛(Zn),アンチモン(Sb),ビスマス(Bi),カドミウム(Cd),マグネシウム(Mg),ホウ素(B),ガリウム(Ga),ゲルマニウム(Ge),ヒ素(As),銀(Ag),ジルコニウム(Zr),イットリウム(Y)またはハフニウム(Hf)が挙げられる。具体的な化合物例としては、LiAl,AlSb,CuMgSb,SiB
4,SiB
6,Mg
2Si,Mg
2Sn,Ni
2Si,TiSi
2,MoSi
2,CoSi
2,NiSi
2,CaSi
2,CrSi
2,Cu
5Si,FeSi
2,MnSi
2,NbSi
2,TaSi
2,VSi
2,WSi
2,ZnSi
2,SiC,Si
3N
4,Si
2N
2O,SiO
V(0<v≦2),SnO
w(0<w≦2),SnSiO
3,LiSiO,LiSnO等が挙げられる。リチウムチタン複合酸化物(スピネル型、ラムステライト型等)も好ましい。
【0101】
正極活物質は、リチウムイオンを吸蔵および放出できる物質であれば良い。好ましい例としては、例えばリチウム含有複合金属酸化物、オリビン型リン酸リチウムなどが挙げられる。
【0102】
リチウム含有複合金属酸化物は、リチウムと遷移金属とを含む金属酸化物である。或いは、金属酸化物中の遷移金属の一部が異種元素によって置換された金属酸化物である。遷移金属元素として、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄の群の中の少なくとも一種以上を含有するものがより好ましい。リチウム含有複合金属酸化物の具体例としては、例えばLi
kCoO
2,Li
kNiO
2,Li
kMnO
2,Li
kCo
mNi
1−mO
2,Li
kCo
mM
1−mO
n,Li
kNi
1−mM
mO
n,Li
kMn
2O
4,Li
kMn
2−mMnO
4(Mは、Na,Mg,Sc,Y,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Al,Cr,Pb,Sb,Bの群の中から選ばれる少なくとも一つの元素である。k=0〜1.2,m=0〜0.9,n=2.0〜2.3)等が挙げられる。
【0103】
オリビン型結晶構造を有し、一般式Li
xFe
1−yM
yPO
4(Mは、Co,Ni,Cu,Zn,Al,Sn,B,Ga,Cr,V,Ti,Mg,Ca,Srの群の中から選ばれる少なくとも一つの元素である。0.9<x<1.2,0≦y<0.3)で表される化合物(リチウム鉄リン酸化物)を用いることも出来る。このようなリチウム鉄リン酸化物としては、例えばLiFePO
4が好適である。
【0104】
リチウムチオレートとしては、ヨーロッパ特許第415856号公報に述べられている一般式X−S−R−S−(S−R−S)n−S−R−S−X′で表される化合物が用いられる。
【0105】
リチウムチオレート及び硫黄を含む炭素繊維を正極活物質として用いる場合は、これら活物質自体にリチウムイオンが含まれていない為、対極としてはリチウム箔などリチウムを含む電極が好ましい。
【0106】
セパレータは多孔質膜により構成される。二種以上の多孔質膜が積層されたものでも良い。多孔質膜としては、合成樹脂(例えばポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等)製の多孔質膜が例示される。セラミック製の多孔質膜が用いられても良い。
【0107】
電解液は非水溶媒と電解質塩とを含有する。非水溶媒は、例えば環状炭酸エステル(炭酸プロピレン、炭酸エチレン等)、鎖状エステル(炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル等)、エーテル類(γ−ブチロラクトン、スルホラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等)である。これらは単独でも、混合物(二種以上)でも良い。炭酸エステルは、酸化安定性の観点から、好ましい。
【0108】
電解質塩は、例えばLiBF
4,LiClO
4,LiPF
6,LiSbF
6,LiAsF
6,LiAlCl
4,LiCF
3SO
3,LiCF
3CO
2,LiSCN、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiBCl,LiB
10Cl
10、ハロゲン化リチウム(LiCl,LiBr,LiI等)、ホウ酸塩類(ビス(1,2−ベンゼンジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(2,3−ナフタレンジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(2,2’−ビフェニルジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(5−フルオロ−2−オレート−1−ベンゼンスルホン酸−O,O’)ホウ酸リチウム等)、イミド塩類(LiN(CF
3SO
2)
2,LiN(CF
3SO
2)(C
4F
9SO
2)等)である。LiPF
6,LiBF
4等のリチウム塩は好ましい。LiPF
6は特に好ましい。
【0109】
電解液として、高分子化合物に電解液が保持されたゲル状の電解質が用いられても良い。前記高分子化合物は、例えばポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンとポリヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリカーボネート等である。電気化学的安定性の観点から、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイドの構造を持つ高分子化合物が好ましい。
【0110】
導電剤は、例えばグラファイト(天然黒鉛、人造黒鉛など)、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等)、導電性繊維(炭素繊維、金属繊維)、金属(Al等)粉末、導電性ウィスカー(酸化亜鉛、チタン酸カリウムなど)、導電性金属酸化物(酸化チタン等)、有機導電性材料(フェニレン誘導体など)、フッ化カーボン等である。
【0111】
結着剤は、例えばポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ヘキシル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ヘキシル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルホン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、変性アクリルゴム、カルボキシメチルセルロース等である。
【0112】
以下、具体的な実施例が挙げられる。但し、本発明は以下の実施例にのみ限定されない。本発明の特長が大きく損なわれない限り、各種の変形例や応用例も本発明に含まれる。
【0113】
[実施例1]
PVA(商品名:ポバール224:鹸化度88mol%、重合度2400:株式会社クラレ製)60質量部、カーボンブラック(一次粒径35nm、鉄分1ppm)5質量部、金属Si(平均粒径0.4μm、キンセイマテック株式会社製)35質量部、及び水500質量部が、ビーズミルで、混合された。カーボンブラック・金属Si分散液(PVAは溶解)が得られた。
【0114】
遠心紡糸装置(
図1,2参照、ノズルと捕集体との距離;20cm、円盤回転数:10,000rpm)が用いられた。前記分散液が用いられ、前記遠心紡糸装置によって、紡糸(脱水)が行われた。不織布(C−Si複合材前駆体)が捕集板上に作製された。
【0115】
得られた不織布が加熱(800℃、1時間、還元雰囲気中)された。
【0116】
得られた不織布(C−Si複合材)がミキサーで処理された。これにより解砕が行われた。すなわち、繊維状C−Si複合材が得られた。
【0117】
得られた繊維状C−Si複合材が分級された。分級には、篩(目開き:75μm)が用いられた。
【0118】
得られた繊維状C−Si複合材が走査型電子顕微鏡(VHX‐D500 (株)キーエンス製)で測定された。その結果が
図4に示される。本実施例で得られたC−Si複合材は繊維状(直径:2μm、長さ:40μm、
図4の中央の大きい方の繊維)であった。
【0119】
得られた繊維状C−Si複合材が透過型電子顕微鏡(JEM−ARM200F 日本電子(株)製)で測定された。その電子顕微鏡写真が
図5,6に、Siマッピング図が
図7に示される。
図5、
図6は繊維の一部分の写真である。一次粒径35nmのカーボンブラックが確認できた(
図6参照)。平均粒径0.4μmのSi粒子が確認できた(
図7参照)。点線で囲んだ菱形に近い部分が、Si粒子の部分である。実線で囲んだ球形に近い部分が、CBの部分である。矢印で示した菱形でも球形でもない部分が、PVA熱分解物の部分である。Si粒子とCBとが、PVA熱分解物を介して、結合していることが確認できた。Si粒子表面がPVA熱分解物で覆われていることが確認できた。
【0120】
炭素/珪素分析装置(EMIA‐920V2 (株)堀場製作所製)が用いられ、炭素/珪素分析が行われた。炭素成分は35質量%であった。珪素成分は65質量%である。
【0121】
比表面積(BET法、BELSORP−max−N−VP・日本ベル(株)製)は12m
2/gであった。
【0122】
前記C−Si複合材20質量部、人造黒鉛74質量部、カルボキシメチルセルロース2質量部、及びスチレン−ブタジエン共重合体粒子4質量部が、水400質量部に、分散させられた。この分散液が銅箔上に塗工された。乾燥後にプレスされた。リチウムイオン電池負極が得られた。得られた電極の質量と膜厚が計測された。電極密度は1.60g/cm
2であった。リチウム箔(対極)が用いられた。エチレンカーボネート/ジエチレンカーボネート(1/1(体積比):電解液)が用いられた。1mol%のLiPF
6(電解質)が用いられた。リチウムイオン電池のコインセルが作製された。
【0123】
前記コインセルに定電流(充放電レート:0.1C)で充放電が行われた。放電容量が測定された。充放電曲線が
図8に示される。放電容量は657mAh/g、不可逆容量が86%であった。充放電が20回繰り返された後の放電容量は598mAh/gであった。サイクル特性(20サイクル後の放電容量の初回放電容量に対する割合)は91%であった。結果が表−1に示される。
【0124】
[実施例2]
PVA(鹸化度98mol%、重合度2400)60質量部、カーボンブラック(一次粒径50nm)、金属Si(平均粒径2μm)が用いられた以外は、実施例1と同様に行われた。実施例1と同様なC−Si複合材が得られた。本実施例で得られたC−Si複合材は繊維状(直径:5μm、長さ:55μm)であった。その他の特性が表−1に記される。
【0125】
[実施例3]
カーボンブラック(一次粒径35nm)32質量部、金属Si(平均粒径0.1μm)8質量部が用いられた以外は、実施例1と同様に行われた。実施例1と同様なC−Si複合材が得られた。本実施例で得られたC−Si複合材は繊維状(直径:0.5μm、長さ:5μm)であった。その他の特性が表−1に記される。
【0126】
[実施例4]
カーボンブラック(一次粒径35nm)1質量部、金属Si(平均粒径0.4μm)39質量部が用いられた。加熱後に得られた不織布(繊維状C−Si複合材製)がジェットミルにて粉状に粉砕された。前記以外は実施例1と同様に行われた。実施例1と同様なC−Si複合材が得られた。本実施例で得られたC−Si複合材は略球状(直径:4μm)であった。その他の特性が表−1に記される。
【0127】
[実施例5]
PVA(鹸化度88mol%、重合度2400)60質量部、カーボンブラック(一次粒径23nm)5質量部、金属Si(平均粒径0.4μm)35質量部、及び水500質量部が、ビーズミルで、混合された。カーボンブラック−金属珪素分散液(PVAは溶解)が得られた。
【0128】
離型紙上に上記分散液が塗工(乾燥後の膜厚が15μm)された。120℃で10分間乾燥された。これにより、シート(繊維状C−Si複合材前駆体)が得られた。
【0129】
得られたシートが加熱(800℃、1時間、還元雰囲気中)された。
【0130】
得られたシート(繊維状C−Si複合材)がジェットミルにて粉状に粉砕された。これにより実施例1と同様なC−Si複合材が得られた。本実施例で得られたC−Si複合材は略球状(直径:15μm)であった。前記C−Si複合材が用いられて実施例1と同様に行われた。その他の特性が表−1に記される。
【0131】
[実施例6]
PVA(鹸化度88mol%、重合度2400)60質量部、カーボンブラック(一次粒径35nm)5質量部、金属Si(平均粒径0.4μm)35質量部、及び水500質量部が、ビーズミルで、混合された。カーボンブラック・金属珪素分散液(PVAは溶解)が得られた。
【0132】
上記分散液が撹拌されたイソプロピルアルコール中に滴下された。得られた沈殿物が篩によって回収された。120℃で10分間乾燥の乾燥により、溶媒の除去が行われた。
【0133】
得られた粉体(C−Si複合材前駆体)が加熱(800℃、1時間、還元雰囲気中)された。
【0134】
得られた粉体(C−Si複合材)がジェットミルにて粉状に粉砕された。これにより、実施例1と同様なC−Si複合材が得られた。本実施例で得られたC−Si複合材は略球状(直径:2μm)であった。前記C−Si複合材が用いられて実施例1と同様に行われた。その他の特性が表−1に記される。
【0135】
[実施例7]
PVA(鹸化度88mol%、重合度2400)80質量部、金属Si(平均粒径0.4μm)20質量部、及び水500質量部が用いられた以外は、実施例1と同様に行われた。本実施例ではCBが用いられていない。本実施例で得られた複合材は、Si粒子の表面がPVA熱分解物で覆われていた。本実施例で得られた複合材は繊維状(直径:4μm、長さ:45μm)であった。その他の特性が表−1に記される。
【0136】
[実施例8]
実施例1で得られたC−Si複合材と、実施例6で得られたC−Si複合材とが混合(前者/後者=50/50(質量比)された。この混合C−Si複合材が用いられた以外は、実施例1と同様に行われた。その結果が表−1に記される。
【0137】
[実施例9]
実施例1において、カーボンブラック(一次粒径:75nm)が用いられた以外は、同様に行われた。実施例1と同様なC−Si複合材が得られた。本実施例で得られたC−Si複合材は繊維状(直径:3μm、長さ:25μm)であった。その他の特性が表−1に記される。
【0138】
[実施例10]
実施例1において、カーボンブラック(一次粒径:15nm)が用いられた以外は、同様に行われた。実施例1と同様なC−Si複合材が得られた。本実施例で得られたC−Si複合材は繊維状(直径:1μm、長さ:15μm)であった。その他の特性が表−1に記される。
【0139】
[実施例11]
実施例1において、金属Si(平均粒径:0.02μm)が用いられた以外は、同様に行われた。実施例1と同様なC−Si複合材が得られた。本実施例で得られたC−Si複合材は繊維状(直径:2μm、長さ:35μm)であった。その他の特性が表−1に記される。
【0140】
[実施例12]
実施例1において、金属Si(平均粒径:5μm)が用いられた以外は、同様に行われた。実施例1と同様なC−Si複合材が得られた。本実施例で得られたC−Si複合材は繊維状(直径:6μm、長さ:25μm)であった。その他の特性が表−1に記される。
【0141】
[比較例1]
カーボンブラック(一次粒径35nm、鉄分1ppm)7質量部、金属Si(平均粒径0.4μm)13質量部、人造黒鉛74質量部、カルボキシメチルセルロース2質量部、及びスチレン−ブタジエン共重合体粒子4質量部が、水400質量部に、分散させられた。この分散液が銅箔上に塗工された。乾燥後にプレスされた。リチウムイオン電池負極が得られた。リチウム箔(対極)が用いられた。エチレンカーボネート/ジエチレンカーボネート(1/1(体積比):電解液)が用いられた。1mol%のLiPF
6(電解質)が用いられた。リチウムイオン電池のコインセルが作製された。
実施例1と同様な評価が行われた。その結果が表−1に記される。
尚、本比較例1の材料には本発明の特徴が認められなかった。
【0142】
[比較例2]
実施例7において、金属Si(平均粒径:0.02μm)が用いられた以外は、同様に行われた。その結果が表−1に記される。
【0143】
[比較例3]
実施例7において、金属Si(平均粒径:5μm)が用いられた以外は、同様に行われた。その結果が表−1に記される。
【0145】
実施例と比較例1との対比から次のことが判る。金属Siとカーボンブラックとを混ぜて負極に添加しただけでは不可逆容量が大きく、サイクル特性が向上していない。初回クーロン効率が低い。
【0146】
上記実施例のC−Si複合材における珪素の含有量が高い。リチウムイオン電池負極材として好適(例えば、導電性が高い。高容量。不可逆容量が小さい。サイクル寿命が長い。)である。上記実施例のC−Si複合材は簡単に得られている。
【解決手段】繊維(その平均径が0.5μm〜6.5μm、その平均長さが5μm〜65μm)である炭素−珪素複合材であって、樹脂熱分解物が、0.05〜3μm(粒径)の珪素粒子の表面に、存在してなる。