特許第6283812号(P6283812)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283812
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】荷重測定装置および荷重測定センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/16 20060101AFI20180215BHJP
   G01L 1/10 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   G01L1/16 G
   G01L1/16 C
   G01L1/10 A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-121519(P2015-121519)
(22)【出願日】2015年5月29日
(65)【公開番号】特開2016-224020(P2016-224020A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2017年5月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517163445
【氏名又は名称】株式会社エスオラボ
(74)【代理人】
【識別番号】100128532
【弁理士】
【氏名又は名称】村中 克年
(72)【発明者】
【氏名】長田 佐
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭54−41233(JP,B1)
【文献】 特許第5366446(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L1/10
G01L1/16
G01G3/13
G01G3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電材料を2枚の電極で挟んで形成した圧電素子を、複数個積層して形成するとともに、前記各圧電素子間のインピーダンス変化に基づき前記複数個の圧電素子に作用する荷重負荷を検出する荷重検出部と、
前記圧電素子をそれぞれ含み、交流電源により所定の共振周波数で駆動される複数の共振回路とを有するとともに、
前記共振回路は、共振周波数特性が、一つの共振回路の共振周波数特性の高周波側で、かつ他の共振回路の共振周波数特性の低周波側に交点を持ち、該交点が前記荷重負荷の基準点になるように形成したことを特徴とする荷重測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載する荷重測定装置において、
積層方向において隣接する2つの圧電素子のうち、前記積層方向で相対向する一方の前記電極間に絶縁層を挟んで形成した静電容量を前記共振回路の回路素子とすることを特徴とする荷重測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載する荷重測定装置において、
複数個の圧電素子は、絶縁層の上面に一方の電極、該電極の上面に前記圧電材料、該圧電材料の上面に他方の電極、該他方の電極の上面に他の絶縁層を順次積層して形成した同構成のものを複数個積層して形成したことを特徴とする荷重測定装置。
【請求項4】
請求項1に記載する荷重測定装置の2組を組合わせ、荷重負荷が作用する一方の荷重測定装置の電極の間のインピーダンスに基づく電圧と、前記荷重負荷の影響を受けることなく圧電素子の周囲温度に基づき他方の荷重測定装置の電極の間のインピーダンスに基づく電圧との差分に基づき前記荷重負荷の測定値の温度補正を行うようにしたことを特徴とする荷重測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電体を用いた高感度のインピーダンス変化型の荷重測定装置に関するものである。例えば起き上がりの見守りや、脈拍数や呼吸数、血圧などの圧力や荷重・力の計測に適している。
【背景技術】
【0002】
圧電体は、応力や力を受けると電荷が発生する。これを利用した圧電型の荷重や力センサとして利用されている。しかし、電荷が漏洩するため、静的感度を持たせるために工夫が必要である。
【0003】
振動型または共振型は、圧電体が応力を受けたときの共振周波数の変化を検出するもので静的な感度を有するが、ある特定の共振点の移動を追尾するため、検出回路は複雑となる。
【0004】
これらの問題を解決するものとして、たとえば特許第4178600号に圧電体の共振点近傍で一定周波数かつ一定振幅の電流を与え、圧電体のインピーダンス変化を検出する荷重や力の測定を簡単な回路で実現する測定装置が提案されている。
【0005】
しかし、検出感度が小さく共振の尖鋭度Qを高くすると測定範囲が狭くなり、荷重や力の増減に対して十分な感度が得られないという欠点があった。また、素子の物性に起因する焦電効果に対する改善策が難しいなどの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4178600号
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】長田 佐著 「圧電セラミックによる圧力センサ」 自動化技術、1982年
【0009】
大内英俊、長田 佐、河西敏雄共著「圧電素子を利用した力センサの静特性の改善」精密工学会誌、2001年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
解決しようとする問題点は、ピエゾ効果には圧電効果と焦電効果がある。荷重や力の検出では、荷重や力の増減に対して圧電体自体のインピーダンスの変化が少なく、十分な感度が得られないという欠点があった。また、圧電素子の物性に起因する焦電効果に対する改善策が難しいなどの問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、抵抗RとコイルLとコンデンサCの直列共振回路において、周波数が変化すると、リアクタンス分が変化する原理を用いた。周波数の変化に伴うリアクタンスXの変化は次の通りである。
直列共振回路において、共振周波数fからΔfに変化すると、
となり、
電源電圧Eときの電流Iは(1)式となる。
する。本発明は、この知見に基づいてなされている。
【0012】
ると図2の直列共振回路におけるEmとEsmは電源電圧Emより昇圧する。
すなわち、(2)式より、PVDF圧電素子両端電圧Esmとコイル両端電圧Emは電源電圧Eと選択度Qの積となり電源電圧より昇圧するので、検出感度がQで任意に得られる。
【0013】
上述の如き知見に基づき、十分な感度を有するとともに、圧電素子の物性に起因する焦電効果に対する改善も実現し得る本発明の第1の態様は、
圧電材料を2枚の電極で挟んで形成した圧電素子を、複数個積層して形成するとともに、前記各圧電素子間のインピーダンス変化に基づき前記複数個の圧電素子に作用する荷重負荷を検出する荷重検出部と、
前記圧電素子をそれぞれ含み、交流電源により所定の共振周波数で駆動される複数の共振回路とを有するとともに、
前記共振回路は、共振周波数特性が、一つの共振回路の共振周波数特性の高周波側で、かつ他の共振回路の共振周波数特性の低周波側に交点を持ち、該交点が前記荷重負荷の基準点になるように形成したことを特徴とする。
本態様によれば、図4に基づき、後に詳細に説明するが、圧電素子に荷重負荷が作用することにより一方の共振周波数特性においては基準点(荷重負荷=0)にあった電圧が低下するとともに、他方の共振周波数特性においては基準点(荷重負荷=0)にあった電圧が上昇する。この結果、両者の相対的な差として検出される荷重負荷の検出値の感度を上昇させ、荷重負荷の検出値を高精度なものとすることができる。
本発明の第2の態様は、
第1の態様に記載する荷重測定装置において、
積層方向において隣接する2つの圧電素子のうち、前記積層方向で相対向する一方の前記電極間に絶縁層を挟んで形成した静電容量を前記共振回路の回路素子とすることを特徴とする。
本態様によれば、図3に基づき後に詳述するように、圧電素子の電極間の絶縁層を利用して共振回路の回路素子である静電容量を形成することができる。
本発明の第3の態様は、
第2の態様に記載する荷重測定装置において、
複数個の圧電素子は、絶縁層の上面に一方の電極、該電極の上面に前記圧電材料、該圧電材料の上面に他方の電極、該他方の電極の上面に他の絶縁層を順次積層して形成した同構成のものを複数個積層して形成したことを特徴とする。
本態様によれば、図3に基づき後に詳述するように、絶縁層、一方の電極、圧電材料、他方の電極、他の絶縁層をこの順序で積層したものを一ユニットとして、当該ユニットを順次積層するだけで第2の態様に記載する構造を形成することができる。
本発明の第4の態様は、
第1の態様に記載する荷重測定装置の2組を組合わせ、荷重負荷が作用する一方の荷重測定装置の電極の間のインピーダンスに基づく電圧と、前記荷重負荷の影響を受けることなく圧電素子の周囲温度に基づき他方の荷重測定装置の電極の間のインピーダンスに基づく電圧との差分に基づき前記荷重負荷の測定値の温度補正を行うようにしたことを特徴とする。
本態様によれば、図8に基づき後に詳述する、圧電材料の焦電効果による影響をキャンセルすることができる。
発明において、荷重検出は図3(a)に示すように、二つのPVDF圧電素子1とPVDF圧電素子2を上下に重ね合わせた一対とした。同図(b)は荷重測定センサの構成を略図で示した。絶縁膜ポリエステル薄膜コーティング面(8)をCs1とし、もう一方のポリエステル薄膜コーティング面(9)をCs2とすると電極(4)と電極(5)間の誘電体となる。その結果、合成静電量Cs1+Cs2=Csとなり、一対化することでPVDF圧電素子1に容量Csが付加された形となる。






【0014】
電圧の共振特性を合わせたPVDF圧電素子に上記の容量CをPVDF圧電素子1に付加したときの、一対の共振周波数特性を調べた結果を図4に示した。正弦波発生電源Eの周波数をわずか変化させながら、かつ一定振幅の電流をPVDF圧電素子1(1)とPVDF圧電素子2(2)に別途に与え、両端子間電圧Esmプロットした。図示したようにPVDF圧電素子1の方は僅かに共振点が低い方に移動した。
【0015】
上記の、PVDF圧電素子1(1)とPVDF圧電素子2(2)を重ね合わせた一対で構成した荷重測定センサであり、それぞれの出力電圧はPVDF圧電素子1(1)の電極間電圧ESm1とVDF圧電素子2(2)の電極間電圧ESm2とする。
【0016】
図4のfS0で示す点は、一対のPVDF圧電素子の電極間電圧(ESm1=ESm2)が同じ電圧になるように、正弦波発生電源(13)の周波数を固定して設定した。
【0017】
図面より、一対のPVDF圧電素子1(1)とPVDF圧電素子2(2)に、外力が加わると素子の電圧の周波数はわずかにfso+△fに移動する。PVDF圧電素子1(1)の端子間電圧Esm1は、周波数をfsoのときより低い値となる。同様に、PVDF圧電素子2(2)の端子間電圧Esm2は、周波数fs0のときより高い値となり差動出力電圧が得られる。






【発明の効果】
【0018】
本発明の荷重測定センサは、荷重や力を加えると電圧の周波数の高い方に移動する振動型センサの原理を利用している。圧電素子の直列共振回路の選択度Qの利用により、検出感度が任意に設定できる。
【0019】
2つの圧電素子を重ね合わせた一対構成によって、生成した静電容量を利用すると両者に僅かの共振点の差異が生じた。一対の圧電素子に与える外力を増減するとそれに応じて周波数が移動し、これに対応して、両者の素子間電圧が増減するので、それぞれの端子間電圧は検出手段(14)で外力の増減が高感度で検出できる荷重測定センサが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は直列共振回路の周波数変化と電流の関係を示した説明図である。
図2図2は圧電素子の等価回路を示した説明図である。
図3図3はPVDF圧電素子の構成を示した説明図である。
図4図4は測定原理を示した説明図である。
図5図5は荷重測定センサの構成を示した説明図である。
図6図6は荷量測定センサの等価回路を示した説明図である。
図7図7は出力―荷重特性を示した。(実施例1)
図8図8は温度補正回路のブロック線図を示した。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0021】
荷重測定センサは高分子圧電材料からなり、外力を受けるPVDF圧電素子である。高分子圧電材料としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデンおよび/またはポリフッ化ビニルを主成分とする共重合体、奇数ナイロン、ポリ尿素、ビニリデンシシアナイドを主成分とする共重合体、ポリウレタン、アクリロニトリル系共重合体、およびポリ塩化ビニールの中から選択された材料などを採用できる。
【0022】
本発明の実施形態の荷重測定センサの構成を図5に示す。回路は抵抗(11)とコイル(12)と荷重測定センサとして高分子圧電材料を用いた直列共振回路である。
共振周波数を合わせた圧電素子2つを上下に重ね合わせ固定して、一対の荷重センサとした。圧電素子間の出力電圧を検出手段(14)により荷重の大きさを検出した。
素子の電極表面はポリエステル薄膜(8)、(9)で絶縁されているので、2つの素子の電極同士は接触しない構成である。
【0023】
圧電素子の電圧の共振周波数を合わせた二つのPVDF圧電素子のポリエステル薄膜コーティング面(8)をCS1とし、もう一方のポリエステル薄膜コーティング面(9)をCS2とすると電極(4)と電極(5)間ではポリエステル薄膜コーティング面が誘電体となり、静電容量 CS1+CS2=Cが生成され、容量CはPVDF圧電素子1に付加し、2つの圧電素子の共振周波数に僅かに差異を生じさせた荷重測定センサである。
【0024】
上記より、2つの圧電素子を一対にした荷重測定センサは、外部から荷重や力を同時に受けることとなる。外力が加わると共振特性により、図6に示す素子間電圧Esm2は増加し、もう一方の素子間電圧Esm1は減少するので差動出力電圧の荷重測定センサが提供できる。なお、コイルの両端の電圧振幅を取り出しても良い。
【0025】
図4に示すように、PVDF圧電素子1(1)のΔfの時の端子間電圧Esm1とPVD圧電素子2(2)のΔfの端子間電圧Esm2が同電位になるように、正弦波発生電源(13)周波数を可変して図中のfS0点に固定して設定した。
【0026】
圧電素子の出力電圧の周波数の急峻化により、PVDF圧電素子1(1)とPVDF圧電素子2(2)に、外力が加わると周波数はわずか(fS0+Δf(図4参照)に移動する。PVDF圧電素子1(1)の端子間電圧Esmは、周波数をfS0のときのより低い値となる。同様に、PVDF圧電素子2(2)の端子間電圧Esmは、周波数をfS0のときのより高い値となる。荷重測定センサの出力電圧は差動出力電圧が得られる。したがって、本発明によれば荷重や力が高感度での測定できる。
【実施例1】
【0027】
図6は、本発明の1実施例の等価回路図であって、PVDF圧電素子(厚さ:28μm、電極寸法:10×15mm)を2枚上下に重ね一対にして、抵抗(50Ω)11とコイル(1.5mH)12を直列接続した直列共振回路に、PVDF圧電素子の共振点近傍の一定周波数fS0(約164kHz、2Vp−p)、振幅一定の電圧を正弦波発生電源13で印加した。
【0028】
上記検出部の出力電圧ESm1と出力電圧ESm2の差動出力電圧を、検出手段14で荷重の大きさの計測をした。
【0029】
上記検出手段によって荷重を加えたときの出力電圧の関係を、出力電圧―荷重特性を図7に示す。加えた荷重に応じて出力電圧が直線的に変化し荷重測定装置として良好な結果が得られた。
【実施例2】
【0030】
圧電素子の物性に起因する焦電性は、温度を変えたとき外力を与えない状態で自発分極により、無荷重状態でも電圧が素子間に発生する。とくに、高感度が必要な微弱な荷重や力の測定において、焦電効果の影響は無視できない。
【0031】
図8に実施例2の、温度補正のブロック線図を示す。一対構成のセンサを2組によるもので、温度検出に荷重測定センサを利用した実施例を示す。PVDF圧電素子(厚さ:28μm、電極寸法:10×15mm)1とPVDF圧電素子(厚さ:28μm、電極寸法:10×15mm)2を2枚上下に重ね一対にした。抵抗(50Ω)11とコイル(1.5mH)12の直列共振回路に、PVDF圧電素子の共振点近傍の一定周波数fS0(約164kHz)、一定振幅の電圧の正弦波発生電源13で圧電素子を励振した。
【0032】
図に示すように、荷重測定センサ出力電圧(A)と温度検出センサ出力電圧(C)は温度補正増幅器(E)入力であり、荷重測定センサ出力電圧(B)と温度検出センサ出力電圧(D)を温度補正増幅器(F)入力として、演算すると温度補正が行われ後、出力電圧は増幅回路(G)により荷重の大きさを検出した実施例である。なお、温度検出センサは荷重や力のダミーとして用いた。図には示していないが、約20度から40度の範囲までの増幅回路(G)の出力電圧の変化は数mV以内であることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本荷重測定装置は、介護・医療監視用として起き上がり、胎児心拍モニター、無呼吸モニター、脈拍モニター、体圧分布センサ、血圧モニター、体温モニターなどに用いても好適である。
【符号の説明】
【0034】
1 PVDF圧電素子1
2 PVDF圧電素子2
3 PVDF圧電素子2の電極
4 PVDF圧電素子2の電極
5 PVDF圧電素子1の電極
6 PVDF圧電素子1の電極
7 PVDF圧電素子2のアクリルコーティング面
8 PVDF圧電素子2のポリエステル薄膜面
9 PVDF圧電素子1のポリエステル薄膜面
10 PVDF圧電素子1のアクリルコーティング面
11 抵抗
12 コイル
13 正弦波発生定電流電源
14 検出手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8