(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283842
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】着せ替え式車両
(51)【国際特許分類】
B62D 25/00 20060101AFI20180215BHJP
【FI】
B62D25/00
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-217919(P2013-217919)
(22)【出願日】2013年10月18日
(65)【公開番号】特開2015-77949(P2015-77949A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2016年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115200
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修之
(72)【発明者】
【氏名】藤下 修
(72)【発明者】
【氏名】大澤 秀彰
(72)【発明者】
【氏名】殿村 裕一
(72)【発明者】
【氏名】和田 広文
(72)【発明者】
【氏名】芝垣 登志男
(72)【発明者】
【氏名】畑 延広
(72)【発明者】
【氏名】池内 淳
(72)【発明者】
【氏名】岩井 純子
(72)【発明者】
【氏名】櫛笥 和英
(72)【発明者】
【氏名】村治 慶一
【審査官】
川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−130824(JP,A)
【文献】
実開平03−038287(JP,U)
【文献】
特表2008−534372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00 − 25/08
B62D 25/14 − 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の車体構造体に複数のボデー群から選択された一のボデーを装着する着せ替え式車両であって、
それぞれのボデーを構成する全体形状及び、各要素は、互いに異なるように形成され、
前記車体構造体には、予め所定位置にボデーを組み付けるための組付点を設けており、
前記組付点は、異なるボデーを装着する時に共通して使用される、
ことを特徴とし、
前記各要素は、それぞれ前記車体構造体に前記組付点を使用して脱着可能であり、
ドア部と、隣り合う前記各要素と、を分ける割線が複数のボデー群で共通している、
ことを特徴とする着せ替え式車両。
【請求項2】
着せ替え式車両において、屋根を構成するルーフ部を除くボデーが交換可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載の着せ替え式車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一の車体構造体に、複数のボデー群から選択された一群のボデーを装着する、着せ替え式車両に関する。
【背景技術】
【0002】
着せ替え式車両の構造としては、同一のフレームに複数のタイプの車体が変更可能に取付けられるものや、車体下部を構成するアンダー部材を合成樹脂で形成し、ピラー部材、車体上部を構成する車体パネル部材など複数の部材を、前記アンダー部材に接合固定した車体構造とすることにより、アンダー部材の剛性と強度を向上させ、パネル部材の取付け剛性も向上させたものがある。
【0003】
上記着せ替え式車両の構造によれば、車両を買い替えることなく、異なるタイプの車体を得ることが可能であり、また、実用に耐え得る剛性と強度を得ることができる。
【0004】
しかしながら、異なるタイプの車両に交換する場合の、パネル部材等の組付点の変動については考慮されておらず、車両タイプ毎に異なる組付点が必要となり、製造コストが増大する等の問題点がある。
【0005】
例えば、特許文献1は、車体前部において、車体前部空間と車室を仕切るダッシュパネルよりも車室側には各種車両用補機類に対応するダッシュパネルの少なくとも一部分が、この一部分を除く他のダッシュパネル部分に対して開閉または脱着自在に取付けられ、同一のフレームに複数のタイプの車体を変更可能に取付けることができるが、そもそも組付点への影響を与える部分を変更し得るものではない。
【0006】
また、特許文献2は、車体下部を構成するアンダー部材を合成樹脂で形成し、ピラー部材や、車体上部を構成する車体パネル部材など複数の部材を、上記アンダー部材に接合固定する車体構造とすることにより、アンダー部材の剛性と強度が向上し、パネル部材の取付け剛性も向上され、パネル部材を交換することによって異なるタイプの車両を得ることが可能な構造となっている。しかしながら、特許文献2の車両構造においても、タイプ毎のパネル部材の組付点については言及されておらず、車両タイプ毎に異なる組付点が必要となり、製造コストが増大する等の問題が残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平3−38287号公報
【0008】
【特許文献2】特開平1−111575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上の問題に鑑みて本発明は創作されたものであり、本発明は、着せ替え式車両において、着せ替え工程で使用する組付点を複数のタイプの車両で共通化し、車両を買い換えることなく異なるタイプの車体を得ることを実現しながら、製造コストの増大を抑制可能な車両の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決すべく提供される本発明の着せ替え式車両は、同一の車体構造体に複数のボデー群から選択された一のボデーを装着する着せ替え式車両であって、それぞれのボデーを構成する全体形状及び、各要素は、互いに異なるように形成され、前記車体構造体には、予め所定位置にボデーを組み付けるための組付点を設けており、前記組付点は、異なるボデーを装着する時に共通して使用される、走行に必要な動力装置、パワートレイン、車体骨格、シャシ、車輪、操縦手段、搭乗空間などを備えた車体構造体と、前記車体構造体に脱着可能な複数のボデー群と、を有し、前記複数のボデー群から選択した一つのボデー群に含まれるボデー部材を、車体構造体に対して取付ける着せ替え工程で使用する組付点を、予め前記車体構造体の所定位置に設けている。
また、前記各要素は、それぞれ前記車体構造体に前記組付点を使用して脱着可能である。
さらに、ドア部と、隣り合う前記各要素と、を分ける割線が複数のボデー群で共通している、
【0011】
換言すれば、複数のボデー群から選択した一つのボデー群を車体構造体に装着した車両から、ボデー群を取外し、異なるボデー群を選択して装着する場合において、前記車体構造体には予め所定の位置に、ボデー群に含まれるボデー部材を装着するための組付点を設けている。前記により、いずれのボデー群を選択した場合でも、前記車体構造体に前記ボデー部材を装着するために使用する組付点は同一であり、車両タイプ毎に異なる組付点を設ける必要がなく、製造コストの増大を抑制することとなる。
【0012】
上述した構成とすることにより、製造者にとって従来型車両からの製造コストの増大を抑制できるものとなり、結果、ユーザーが買い求めやすい価格で、着せ替え式車両を提供することが可能となる。
【0013】
また、前記着せ替え式車両において、屋根を構成するルーフ部を除くボデーが交換可能であっても良い。着せ替えを行った場合に、ルーフ部のみを交換せず車両の外観をボデーの色と屋根の色とが異なるツートーンカラーとすることができる。これによりデザインの選択肢を増やすことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、製造コストの増大を抑制しながら、車両を買い換えることなく、異なるタイプの車体を得ることが可能な、着せ替え式車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る着せ替え式車両(A)の図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る着せ替え式車両の、着せ替え後の車両(B)の図である。
【
図3】車体構造体に、ボデー群を構成する部材を装着する過程と、組付点の一部を示す略図である。
【
図4】ボデー群を構成する部材と、各々の組付点を示す略図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る着せ替え式車両(A)の略側面視である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る着せ替え式車両の、着せ替え後の車両(B)の略側面視である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る着せ替え式車両10について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1〜
図2は2種類の着せ替え式車両10、100の斜視図が示されており、ここでは
図1を着せ替え式車両(A)、
図2を着せ替え式車両(B)を示している。
【0017】
図1に示すように、着せ替え式車両10、100は、
図3に示す車体構造体30に、複数のボデー群から選択した一つのボデー群を装着する点に特徴を有するため、これに着目して説明する。
尚、
図1〜6において、下2桁が同一な番号は、同種の部品を示している。
【0018】
図1に示すように、着せ替え式車両(A)10は、
図3に示す車体構造体30に、一つのボデー群を装着して構成される。
図3、
図4は、車体構造体に、ボデー群を構成する部材を装着する過程と、組付点の一部とを示している。
【0019】
そして、前記ボデー群を構成する部材は、概ねドア部20と、図示しないルーフ部と、エンジンフード部22と、トランクリッド部23と、前輪フェンダ部24と、後輪フェンダ部25と、前部バンパ部27と、図示しない後部バンパ部と、ロッカーパネル部29と、に大別される。
【0020】
図3に示すように、ボデー群を構成する各々の部材は車体構造体30に脱着可能であり、前記車体構造体に予め所定位置に設けている組付点35、36、37,38,39と40(ネジ穴、嵌合用孔等)を利用して、前記ボデー群を構成する部材をネジ止めや嵌合(スナップ止め等)で装着する。
【0021】
図1に示す着せ替え式車両(A)10から、
図2に示す着せ替え式車両(B)100へ着せ替える工程では、ボデー群を構成する部材であるドア部20と、前輪フェンダ部24と、後輪フェンダ部25と、さらに他にボデー群を構成する部材を車体構造体30から取外す。
【0022】
上記の工程により、
図1に示した着せ替え式車両10は、車体構造体30のみの状態となる。
【0023】
次に、ボデー群から
図2に示した着せ替え式車両(B)を準備し、車体構造体30へ順次装着することにより、
図2に示す車両(B)への着せ替えが完了する。
【0024】
図1に示す着せ替え式車両と、
図2に示す着せ替え式車両と、で
組付点を共通化する手段としては、一例として、
前記組付点を予め前記車体構造体の所定位置に設けると共に、選択したボデー群に含まれるボデー部材の各々にも、前記組付点に対応する位置にネジ止めや嵌合に使用可能な孔部等を設けておけばよい。
【0025】
前記の手段によれば、
図1の車両と、
図2の車両と、の組付点を簡易な方法で共通化することが可能である。
【0026】
前記した手段を用いる場合、予め前記車体構造体の所定位置に設けられた組付点を、必ずしも全て使用する必要はなく、一部のみを用いても良い。
【0027】
また、
図1に示す着せ替え式車両(A)10と、
図2に示す着せ替え式車両(B)100と、で各々のボデーを構成する全体形状及び、各要素を、互いに異なるように形成した場合においても、上述した手段を用いることにより、組付点を共通化することが可能である。
【0028】
一例として、
図1の車両のロッカーパネル部29と、
図2の車両のロッカーパネル部129と、の形状は
図5〜
図6に示すように異なるが、
図4に示す組付点37は、前記
図1の車両のロッカーパネル部29と、前記
図2の車両のロッカーパネル部129と、の共通の組付点として使用することが可能である。
【0029】
付言すれば、
図2の車両のロッカーパネル部129の取付けに、組付点37に加えて、後輪フェンダ部125の組付点38を流用し、取付け強度を向上させることも可能である。
【0030】
詳述すると、後輪フェンダ部125の組付点38のうち、
図2の車両のロッカーパネル部129と重なる38a、38c、38f、38h、のいずれか一つ、または複数を、ロッカーパネル部129を車体構造体30へ装着するための組付点として使用し、後輪フェンダ部125の車体構造体への装着は、組付点38のうち、残る組付点で行いながら、後輪フェンダ部125の取付け強度も確保可能な構成とすることもできる。
【0031】
上述した例の場合、
図1の車両(A)のロッカーパネル部29と、
図2の車両(B)のロッカーパネル部129と、の形状は
図5〜
図6に示すように異なる。そのため、前記ロッカーパネル部129と隣り合う部品の形状も変更が必要となり、それぞれのボデーを構成するボデー部材を分ける割線も変更されるが、上述した手段を用いることにより、組付点を共通化することは可能である。
【0032】
詳述すると、
図1の車両のロッカーパネル部29と、
図2の車両のロッカーパネル部129と、で形状が異なるため、
図5〜
図6に示すように、
図1の車両の後輪フェンダ部25と、
図2の車両の後輪フェンダ部125と、の形状は異なり、ロッカーパネル部と後輪フェンダ部とを分ける割線Lの位置も変更されるが、
図4に示す組付点38を、前記
図1の車両(A)の後輪フェンダ部25と、前記
図2の車両(B)の後輪フェンダ部125と、の共通の組付点として使用可能なように設定しておけばよい。。
【0033】
また、
図1に示す着せ替え式車両(A)と、
図2に示す着せ替え式車両(B)と、で各々のボデーを構成する全体形状及び、各要素を、互いに異なるように形成した場合において、一部の要素を同一形状となるように形成し、又は着せ替えを行わない、場合でも、上述した手段を用いることにより、組付点を共通化することは可能である。
【0034】
代表的には、各要素を互いに異なるように形成し、ドア部20のみを同一形状に形成し、又は着せ替えを行わない場合、前記ドア部20(=120)と、隣り合う部材(前輪フェンダ部、ロッカーパネル部、後輪フェンダ部)と、を分ける割線(それぞれL1、L2、L3)のみ変更しなれば、他の割線の変更、即ち他の各要素の形状を変更しても、上述した手段を用いて組付点を共通化することに何ら支障はなく、ボデーを構成する全体形状を異なるように形成することが可能である。
【0035】
前記実施形態においては、ドア部20のみを同一形状に形成し、又は着せ替えを行わない、としたが、ドア部20とロッカーパネル部29等、二つ以上の要素を同一形状に形成し、または着せ替えを行わなくても良い。さらには、同一形状に形成し、または着せ替えを行わない要素は、ドア部やロッカーパネル部に限定されない。
【0036】
以上、本発明の着せ替え式車両についての実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲および明細書等に記載の精神や教示を逸脱しない範囲で他の変形例、改良例が得られることが当業者は理解できるであろう。
【符号の説明】
【0037】
10 着せ替え式車両(A)
12 着せ替え式車両(B)
20 ドア部
22 エンジンフード部
23 トランクリッド部
24 前輪フェンダ部
25 後輪フェンダ部
27 前部バンパ部
28 後部バンパ部
29 ロッカーパネル部
30 車体構造体
35 前輪フェンダ部の組付点
36 ボデー群を構成する一部材の組付点
37 ロッカーパネル部の組付点
38 後輪フェンダ部の組付点
39 前部バンパ部の組付点
40 後部バンパ部の組付点
120 着せ替え式車両(B)のドア部
125 着せ替え式車両(B)の後輪フェンダ部
129 着せ替え式車両(B)のロッカーパネル部
L ロッカーパネル部と後輪フェンダ部との割線
L1 ドア部と前輪フェンダ部との割線
L2 ドア部とロッカーパネルとの割線
L3 ドア部と後輪フェンダ部との割線