(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1、2に記載の技術では基板上のナノ粒子の粒子径を測定することはできなかった。
【0008】
本発明は前記従来の問題に鑑みてなされたもので、前処理が容易であり、非破壊で基板上のナノ粒子の粒子径を簡易に測定することができる蛍光X線分析装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の蛍光X線分析装置は、基板上に載せられた多数のナノ粒子である試料に1次X線を照射するX線源と、基板の表面への1次X線の照射角度を調整する照射角度調整手段と、試料から発生する蛍光X線の強度を測定する検出手段と、前記照射角度調整手段による照射角度の調整ごとに、試料から発生する蛍光X線の強度を前記検出手段によって測定し、照射角度の変化に対する蛍光X線の強度の変化として試料プロファイルを作成して、試料プロファイルにおいて蛍光X線が最大強度を示すピーク照射角度位置を算出するピーク位置算出手段と、ナノ粒子の粒子径が一定で既知であって、前記一定の粒子径が相異なる複数の標準試料について、前記ピーク位置算出手段が算出したピーク照射角度位置とナノ粒子の粒子径との相関関係である検量線を作成する粒子径検量線作成手段と、未知試料について前記ピーク位置算出手段が算出したピーク照射角度位置を前記粒子径検量線作成手段が作成した検量線に適用して未知試料のナノ粒子の粒子径を算出する粒子径算出手段と、を備える。
【0010】
本発明の蛍光X線分析装置によれば、ピーク照射角度位置とナノ粒子の粒子径との相関関係である検量線を作成して未知試料のピーク照射角度位置を検量線に適用し、基板上に載せられたナノ粒子の粒子径を算出するので、前処理が容易であり、非破壊で簡易に測定することができる。
【0011】
本発明の蛍光X線分析装置は、未知試料のナノ粒子の粒子径が前記検量線の所定の粒子径範囲を逸脱すると、警告を表示する表示手段を備えるのが好ましい。この場合には、検量線の所定の粒子径範囲を逸脱すると、粒子径算出値の信頼性が低くなることを測定者に注意喚起することができる。未知試料の粒子径が小さくなると、試料プロファイルのピーク強度が急激に低下するため、粒子径算出値の誤差が大きくなる。また、粒子径が大きくなると、検量線の勾配が緩やかになり、粒子径算出値の誤差が大きくなる。
【0012】
本発明の蛍光X線分析装置は、前記ピーク位置算出手段が作成した試料プロファイルの半値幅を算出する半値幅算出手段を備え、未知試料について前記半値幅算出手段によって算出された半値幅が所定の上限半値幅を超えると、警告を表示する表示手段を備えるのが好ましい。異なる粒子径が混在する試料の試料プロファイルは、各粒子径の粒子での試料プロファイルの重ね合わせとなるため、試料プロファイルの幅が広くなる。この場合には、試料プロファイルの半値幅が所定の上限半値幅を超えると、警告を前記表示手段に表示するので、粒子径が不揃いであることを測定者に注意喚起することができる。
【0013】
本発明の蛍光X線分析装置は、試料のナノ粒子の元素を同定する同定手段と、前記同定手段によって同定された元素に対応した励起線を自動選択して1次X線とする励起線自動選択手段と、を備えるのが好ましい。この場合には、未知試料のナノ粒子の元素を効率よく励起でき、測定精度を向上することができる。
【0014】
本発明の蛍光X線分析方法では、基板上に載せられた多数のナノ粒子である試料に1次X線を照射するX線源と、基板の表面への1次X線の照射角度を調整する照射角度調整手段と、試料から発生する蛍光X線の強度を測定する検出手段と、ナノ粒子の粒子径が一定で既知であって、前記一定の粒子径が相異なる複数の標準試料と、を準備し、前記照射角度調整手段を用いて照射角度を調整した1次X線を前記標準試料に照射して、照射角度の調整ごとに、前記標準試料から発生する蛍光X線の強度を前記検出手段によって測定し、照射角度の変化に対する蛍光X線の強度の変化として試料プロファイルを作成して、試料プロファイルにおいて蛍光X線が最大強度を示すピーク照射角度位置を求め、前記標準試料について求めたピーク照射角度位置とナノ粒子の粒子径との相関関係である粒子径検量線を作成する。
【0015】
本発明の蛍光X線分析方法では、さらに、未知試料を準備し、前記照射角度調整手段を用いて照射角度を調整した1次X線を未知試料に照射して、照射ごとに、未知試料から発生する蛍光X線の強度を前記検出手段によって測定し、照射角度の変化に対する蛍光X線の強度の変化として試料プロファイルを作成して、試料プロファイルにおいて蛍光X線が最大強度を示すピーク照射角度位置を求め、未知試料について求めたピーク照射角度位置を前記粒子径検量線に適用して未知試料のナノ粒子の粒子径を求める。
【0016】
この蛍光X線分析方法によれば、ピーク照射角度位置とナノ粒子の粒子径との相関関係である検量線を作成して未知試料のピーク照射角度位置を検量線に適用し、基板上に載せられたナノ粒子の粒子径を算出するので、前処理が容易であり、非破壊で簡易に測定することができる。
【0017】
本発明の蛍光X線分析方法では、試料のナノ粒子の元素を同定し、同定した元素に対応した励起線を選択して1次X線とするのが好ましい。この場合には、未知試料のナノ粒子の元素を効率よく励起でき、測定精度を向上することができる。
【0018】
本発明の蛍光X線分析方法では、ナノ粒子の粒子径が1nm〜100nmである試料を分析するのが好ましい。この場合には、より精度のよいナノ粒子の粒子径を求めることができる。本明細書において、試料とは標準試料と未知試料とを含む。
【0019】
請求の範囲および/または明細書および/または図面に開示された少なくとも2つの構成のどのような組合せも、本発明に含まれる。特に、請求の範囲の各請求項の2つ以上のどのような組合せも、本発明に含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の第1実施形態の蛍光X線分析装置について、図にしたがって説明する。
図1に示すように、この蛍光X線分析装置は、基板10上に載せられた多数のナノ粒子である試料1に1次X線6を照射するX線源3と、試料1から発生する蛍光X線7の強度を測定する検出手段8と、基板の表面10aへの1次X線6の照射角度αを調整する照射角度調整手段5と、を備えている。検出手段8は、例えばSDD、SSDなどの半導体検出器であり、高計数まで計数できるSDDが好ましい。
【0022】
図2に示すように試料1は、例えば、シリコンウエハである基板10上に載せられた多数のナノ粒子1であり、各ナノ粒子がばらばらに基板10上に存在している。試料1が載せられた基板10は、試料台20(
図1)に載置される。ナノ粒子1は基板の表面10a上に均一に分布するように載せられるのが好ましい。
【0023】
図1に示すように、X線源3は、ターゲットからX線2を発生するX線管13と、そのX線管13から発生するX線2を単色化する分光素子4とを含み、その分光素子4で単色化されたX線が、試料1に照射される1次X線6となる。X線管13は、例えばモリブデンX線管である。この蛍光X線分析装置は、斜入射蛍光X線分析装置であり、1次X線6は、そのほとんどが反射X線12となるような、つまりいわゆる全反射現象を起こすような、例えば1度以下の微小な照射角度αで基板表面10aに入射されるが、その照射角度αは、試料台20の下に設けられたスイベルステージなどの照射角度調整手段5により、調整される。
【0024】
また、この蛍光X線分析装置は、以下のピーク位置算出手段11、粒子径検量線作成手段21、粒子径算出手段22、半値幅算出手段23、表示手段24を含むコンピュータである制御手段9を備える。制御手段9は、照射角度調整手段5を駆動することにより、照射角度αの調整を行う。ピーク位置算出手段11は、照射角度調整手段5による1次X線6の照射角度の調整ごとに、試料1から発生する蛍光X線7の強度を検出手段8によって測定し、照射角度の変化に対する蛍光X線7の強度の変化として試料プロファイルを作成して、試料プロファイルにおいて蛍光X線7が最大強度を示すピーク照射角度位置を算出する。
【0025】
粒子径検量線作成手段21は、ナノ粒子1の粒子径が一定で既知であって、前記一定の粒子径が相異なる複数の標準試料1について、ピーク位置算出手段11が算出したピーク照射角度位置とナノ粒子1の粒子径との相関関係である検量線を作成する。粒子径算出手段22は、未知試料1についてピーク位置算出手段11が算出したピーク照射角度位置を粒子径検量線作成手段21が作成した検量線に適用して未知試料1のナノ粒子1の粒子径を算出する。
【0026】
表示手段24は、未知試料1のナノ粒子1の粒子径が、検量線の所定の粒子径範囲、例えば、5nm〜80nmの範囲を逸脱すると、「粒子径が所定の粒子径範囲を外れているため信頼性が低下しています」と、警告を表示する。所定の粒子径範囲は、例えば、標準試料1またはそれと同様の粒子径が一定で既知である試料1を繰り返し測定し、粒子径算出手段22によって算出された粒子径のばらつきから、必要に応じて定めることができる。
【0027】
半値幅算出手段23は、ピーク位置算出手段11が作成した試料プロファイルの半値幅を算出し、未知試料1について算出した半値幅が所定の上限半値幅を超えると、例えば、算出された粒子径に代えて、または算出された粒子径とともに「異なる粒子径のものが所定量以上に含まれます」と警告を表示手段24に表示させる。半値幅算出手段23の動作の詳細については後記する。
【0028】
次に、本発明の第1実施形態の蛍光X線分析装置の動作について説明する。ナノ粒子1の粒子径が一定で既知であって、一定の粒子径が相異なる複数の標準試料1、例えば、基板10上載せられた多数の金のナノ粒子1の粒子径が、それぞれ、5nm(ナノメータ)、10nm、20nm、30nm、50nm、100nmである標準試料1が準備されている。最初に、5nmの粒子径の標準試料1が試料台20(
図1)に載置され、照射角度調整手段5による照射角度αの調整ごとに、1次X線6が5nmの粒子径の標準試料1に照射され、5nmの粒子径の標準試料1から発生する蛍光X線7の強度が検出手段8によって測定される。その後、10nm、20nm、30nm、50nm、100nmの粒子径の標準試料1が順次測定される。
【0029】
ピーク位置算出手段11は、照射角度調整手段5による照射角度αの調整ごとに、それぞれの標準試料1から発生する蛍光X線7の強度を検出手段8によって測定し、照射角度αの変化に対する蛍光X線7の強度の変化として試料プロファイルを作成して、試料プロファイルにおいて蛍光X線7が最大強度を示すピーク照射角度位置を算出する。作成された試料プロファイルを
図3に示す。
図3では横軸が照射角度、縦軸が蛍光X線強度を示している。
図3から分かるように、蛍光X線7が最大強度を示すピーク照射角度位置は、粒子径が大きくなるにしたがって照射角度の低角度側にシフトするとともに、試料プロファイルの半値幅が広くなる。
【0030】
粒子径検量線作成手段21は、ピーク位置算出手段11によって算出されたピーク照射角度位置とナノ粒子1の粒子径との相関関係である検量線を作成する。作成された検量線を
図4に示す。
図4は横軸が粒子径、縦軸がピーク照射角度位置を示している。この検量線によって未知試料1に含まれるナノ粒子1の平均的な粒子径を算出することができる。
【0031】
半値幅算出手段23は、
図3に示される試料プロファイルのデータのうち、臨界角である0.11°以上の部分のデータを省いたデータに対して曲線近似を行って、ピーク位置算出手段11が作成した標準試料1の試料プロファイルの半値幅を算出し、標準試料1について算出した標準半値幅と標準試料1の粒子径との相関関係を求め、表示手段24に表示させる。その相関関係図を
図5に示す。
図5の横軸は粒子径(nm)、縦軸は標準試料1の試料プロファイルの半値幅(°)であり、標準半値幅と標準試料1の粒子径との相関関係は黒丸印のプロット点を結んだ曲線で示されている。
【0032】
異なる粒子径が混在する試料の試料プロファイルは、各粒子径の粒子での試料プロファイルの重ね合わせとなるため、試料プロファイルの幅が、粒子径が一定の試料に比べて広くなり、粒子径を精度よく測定することができない。予め求めた標準試料1の粒子径の上限半値幅を半値幅算出手段23に入力すると、半値幅算出手段23が標準試料1の粒子径と予め求めた標準試料1の粒子径の上限半値幅との相関関係を求める。その相関関係は
図5に示す白丸印のプロット点を結んだ曲線で表示手段24に表示される。この上限半値幅曲線によって未知試料1の算出された半値幅が、上限半値幅以下であるか、否かを判断することができる。これにより、測定者は異なる粒子径が混在して所定の粒子径の均一性から外れる未知試料1を選別することができる。
【0033】
この上限半値幅は、複数の粒径の試料プロファイルを重ね合わせるシミュレーションによる計算や、実際に複数の粒径の粒子を混合した試料の実測値に基づき定めることができる。例えば、粒子径20nmの粒子に粒子径40nmの粒子が20重量%混在すると、20nmの粒子の試料プロファイルと40nmの粒子の試料プロファイルとを重ね合わせたシミュレーションによる計算では、半値幅は0.09°になる。このようにして、粒子径20nmの粒子の上限半値幅を定めることができる。他の粒子径の粒子の上限半値幅についても同様にして求めた。
【0034】
次に、基板10上に載せられた多数のナノ粒子である未知試料1Aを測定すると、未知試料1Aについて、粒子径算出手段22は、ピーク位置算出手段11が算出したピーク照射角度位置を粒子径検量線作成手段21が作成した検量線(
図4)に適用して未知試料1Aの粒子径12nmを算出する。粒子径が5nmの標準試料1を最低の粒子径の標準試料1として検量線を作成したが、この検量線を外挿して適用すれば、粒子径が1nmのナノ粒子1についても測定することができ、この蛍光X線分析装置によれば、ナノ粒子の粒子径が1nm〜100nmである試料1を分析することができる。
【0035】
未知試料1Aの粒子径12nmが算出されると、半値幅算出手段23が、未知試料1Aの試料プロファイルの半値幅0.07°を算出する。半値幅算出手段23は、算出された未知試料1Aの粒子径12nmを上限半値幅の相関関係を示す
図5の白丸印のプロット点を結んだ曲線に適用して粒子径12nmの上限半値幅0.075°を求め、粒子径12nmの算出された半値幅0.07°が、求めた粒子径12nmの上限半値幅0.075°以下であるか、否かを判断する。未知試料1Aの試料プロファイルの半値幅0.07°は上限半値幅0.075°以下であったので、警告は表示手段24に表示されない。
【0036】
次に、未知試料1Bを測定すると、粒子径算出手段22が未知試料1Bの粒子径20nmを算出し、半値幅算出手段23が、未知試料1Bの試料プロファイルの半値幅0.10°を算出する。算出された半値幅0.10°は粒子径20nmの上限半値幅0.09°を超えているので、半値幅算出手段23は、例えば、「異なる粒子径の粒子が所定量以上に含まれます」との警告を表示手段24に表示させる。この警告によって、未知試料1Bの中に異なる粒子径の粒子が所定量以上含まれていることを測定者に注意喚起することができる。この場合における所定量とは、粒子径20nmの粒子に混在する粒子径40nmの粒子の量であって、具体的には例えば粒子径20nmの粒子の量の20重量%の量をいう。「異なる粒子径の粒子が所定量以上に含まれます」との警告によって、測定者は所定の一定粒子径を有すべき製品である未知試料1から異なる粒子径の粒子が所定量以上に含まれる試料を除外することができ、当該製品の品質を向上することができる。
【0037】
以上のように、本発明の第1実施形態の蛍光X線分析装置によれば、ピーク照射角度位置とナノ粒子の粒子径との相関関係である検量線を作成して未知試料1のピーク照射角度位置を検量線に適用し、基板上に載せられたナノ粒子の粒子径を算出するので、前処理が容易であり、非破壊で簡易に測定することができる。
【0038】
本発明の第2実施形態の蛍光X線分析装置について、
図6にしたがって説明する。第2実施形態の蛍光X線分析装置は、第1実施形態の蛍光X線分析装置とは異なるX線源35を備え、さらに、X線源35を制御する励起線自動選択手段32と、同定手段31と、を備える。第2実施形態の蛍光X線分析装置は、X線源35、励起線自動選択手段32、同定手段31を備える構成が第1実施形態の蛍光X線分析装置と異なるだけであるので、その異なる構成についてのみ説明する。励起線自動選択手段32と同定手段31とは制御手段9に含まれている。同定手段31は検出手段8からの出力に基づいて試料1のナノ粒子の元素を同定する。X線源35は、2つのX線管、例えばモリブデンX線管13および銅X線管33と分光素子4とを有する。励起線自動選択手段32は、X線管選択手段(図示なし)を制御して同定された元素に対応した励起線を発生するX線管を選択し、分光角度調整手段(図示なし)を制御して同定された元素に対応した励起線の分光角度に設定する。
【0039】
これにより同定手段31によって同定された元素に対応した励起効率の良い励起線を自動選択して1次X線とする。例えば、金(Au)や亜鉛(Zn)のナノ粒子にはモリブデンX線管13を用い、銀(Ag)やチタンニウム(Ti)のナノ粒子には銅X線管33を用いる。
【0040】
本発明の第2実施形態の蛍光X線分析装置の動作について説明する。同定手段31が未知試料1Cのナノ粒子の元素を同定する。ナノ粒子1の元素が、例えば、チタンニウムと同定されると、励起線自動選択手段32がチタンニウムに対応した励起線を発生する銅X線管33を自動選択し、分光素子4をチタンニウムに対応した励起線の分光角度に設定する。励起線が自動選択されると、本発明の第1実施形態の蛍光X線分析装置と同様に、未知試料1Cを測定し、予め銀のナノ粒子の標準試料1(金のナノ粒子と同じ粒子径の標準試料)を測定して作成した検量線を用いて未知試料1Cの粒子径15nmを算出する。標準試料1と未知試料1Cとの測定には、自動選択された同じ励起線を用いる。
【0041】
以上のように、本発明の第2実施形態の蛍光X線分析装置によれば、本発明の第1実施形態の蛍光X線分析装置と同様の作用効果に加え、未知試料1であるナノ粒子の元素を同定することができるとともに、同定された元素に対応した励起線、および同定された元素に適した標準試料1を用いて検量線を作成し、未知試料1のナノ粒子の粒子径を算出するので、より正確な粒子径を算出することができる。
【0042】
本発明の第3実施形態の蛍光X線分析方法について説明する。基板上に載せられた多数のナノ粒子である試料1に1次X線6を照射するX線源3と、基板の表面10aへの1次X線6の照射角度αを調整する、例えばスイベルステージなどの照射角度調整手段5と、試料1から発生する蛍光X線7の強度を測定する検出手段8と、を準備する。次に、ナノ粒子の粒子径が一定で既知であって、一定の粒子径が相異なる複数の標準試料1、例えば、基板上に載せられた多数の金のナノ粒子1の粒子径が、それぞれ、5nm(ナノメータ)、10nm、20nm、30nm、50nm、100nmである標準試料1を準備する。最初に、照射角度調整手段5による照射角度の調整ごとに、1次X線6を5nmの粒子径の標準試料1に照射し、5nmの粒子径の標準試料1から発生する蛍光X線7の強度を検出手段8により測定する。その後、10nm、20nm、30nm、50nm、100nmの粒子径の標準試料1を順次測定する。
【0043】
このように、照射角度調整手段5による照射角度の調整ごとに、1次X線6を照射し、それぞれの標準試料1から発生する蛍光X線7の強度を検出手段8によって測定し、照射角度の変化に対する蛍光X線7の強度の変化として試料プロファイルを作成して、試料プロファイルにおいて蛍光X線7が最大強度を示すピーク照射角度位置を求める。
図3と同様の試料プロファイルが得られる。
【0044】
求めたピーク照射角度位置とナノ粒子1の粒子径との相関関係である粒子径検量線を作成する。作成した粒子径検量線は
図4と同様の検量線となる。
【0045】
次に、基板上に載せられた多数のナノ粒子である未知試料1Aを標準試料1と同様にして測定し、未知試料1Aについて、求めたピーク照射角度位置を作成した粒子径検量線に適用して未知試料1Aの粒子径12nmを求める。粒子径が5nmの標準試料1を最低の粒子径の標準試料1として粒子径検量線を作成したが、この粒子径検量線を外挿して適用すれば、粒子径が1nmのナノ粒子1についても測定することができる。
【0046】
この蛍光X線分析方法によれば、ピーク照射角度位置とナノ粒子の粒子径との相関関係である検量線を作成して未知試料1のピーク照射角度位置を検量線に適用するので、前処理が容易であり、非破壊で基板上のナノ粒子の粒子径が1nm〜100nmである試料1を簡易に測定することができる。この蛍光X線分析方法は第1実施形態の蛍光X線分析装置を用いてもよいが、ピーク位置算出手段11、粒子径検量線作成手段21、粒子径算出手段22を用いなくてもよい。
【0047】
本発明の第4実施形態の蛍光X線分析方法について説明する。本発明の第4実施形態の蛍光X線分析方法は、本発明の第3実施形態の蛍光X線分析方法に加え、試料1のナノ粒子の元素を同定し、同定した元素に対応した励起線を選択して1次X線とする分析方法であるので、第3実施形態の蛍光X線分析方法と異なる工程について説明する。
【0048】
測定者が、例えば、検出手段8の出力に基づいて未知試料1Cのナノ粒子の元素を同定する。ナノ粒子の元素を、例えば、チタンニウムと同定すると、測定者がチタンニウムに対応した励起線を発生する銅X線管33を選択し、分光素子4をチタンニウムに対応した励起線の分光角度に設定する。励起線を選択すると、本発明の第3実施形態の蛍光X線分析方法と同様に、銀のナノ粒子の標準試料1を測定して粒子径検量線を作成し、未知試料1Cを測定して未知試料1Cの粒子径15nmを求める。
【0049】
本発明の第4実施形態の蛍光X線分析方法によれば、本発明の第3実施形態の蛍光X線分析方法と同様の作用効果に加え、未知試料1であるナノ粒子の元素を同定することができるとともに、同定された元素に対応した励起線、および同定された元素に適した標準試料1を用いて検量線を作成し、未知試料1のナノ粒子の粒子径を算出するので、より正確な粒子径を算出することができる。
【0050】
なお、本発明の第1、第2実施形態の蛍光X線分析装置では、照射角度調整手段5としてスイベルステージを備えているが、これに限ったものではなく、分光素子4の分光角度を調整して基板の表面10aへの1次X線6の照射角度αを調整してもよい。本発明の第2実施形態の蛍光X線分析装置および第4実施形態の蛍光X線分析方法では、2つのX線管を有するX線源について説明したが、3つ以上のX線管を有するX線源であってもよい。また、X線源は、1つのX線管について分光素子の分光角度を変えることによって励起線が選択されるものでもよい。
【0051】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施例を説明したが、当業者であれば、本件明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。したがって、そのような変更および修正は、添付の請求の範囲から定まるこの発明の範囲内のものと解釈される。