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特許6283859ペリオスチン遺伝子の発現抑制核酸分子、ペリオスチン遺伝子の発現抑制方法、およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283859
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】ペリオスチン遺伝子の発現抑制核酸分子、ペリオスチン遺伝子の発現抑制方法、およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20180215BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20180215BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20180215BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180215BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20180215BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   C12N15/00 GZNA
   C12N15/00 A
   A61P27/02
   A61P43/00 111
   A61K31/7088
   A61K48/00
【請求項の数】17
【全頁数】50
(21)【出願番号】特願2014-508085(P2014-508085)
(86)(22)【出願日】2013年3月29日
(86)【国際出願番号】JP2013059494
(87)【国際公開番号】WO2013147140
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2016年2月26日
(31)【優先権主張番号】特願2012-78114(P2012-78114)
(32)【優先日】2012年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(73)【特許権者】
【識別番号】513059397
【氏名又は名称】株式会社アクアセラピューティクス
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100129137
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 ゆみ
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(72)【発明者】
【氏名】吉田 茂生
(72)【発明者】
【氏名】濱崎 智洋
(72)【発明者】
【氏名】石川 桂二郎
(72)【発明者】
【氏名】水谷 隆之
(72)【発明者】
【氏名】石橋 達朗
(72)【発明者】
【氏名】大木 忠明
(72)【発明者】
【氏名】中間 崇仁
【審査官】 飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/017919(WO,A1)
【文献】 LIU,Y. et al,Enhanced proliferation, invasion, and epithelial-mesenchymal transition of nicotine-promoted gastric cancer by periostin,World journal of gastroenterology,2011年,Vol.17, No.21,p.2674-80
【文献】 WATANABE,T. et al,PERIOSTIN regulates MMP-2 expression via the alpha v beta 3 integrin/ERK pathway in human periodontal ligament cells,Archives of Oral Biology,2012年 1月,Vol.57, No.1,p.52-59
【文献】 Homo sapiens periostin, osteoblast specific factor (POSTN), transcript variant 1, mRNA,GenBank [online],2008年10月21日,Accession No.NM_006475
【文献】 YOSHIDA,S. et al,Increased expression of periostin in vitreous and fibrovascular membranes obtained from patients with proliferative diabetic retinopathy,Investigative ophthalmology & visual science,2011年,Vol.52, No.8,p.5670-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
A61K 31/7088
A61K 48/00
A61P 27/02
A61P 43/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)、(2)、または(3)の核酸分子を含むことを特徴とする、ペリオスチン遺伝子の発現抑制核酸分子。
(1)下記NI−0079、NI−0082、NI−0083、NI−0084、NI−0085、NI−0087、NI−0091、NI−0092、NI−0093、NI−0094、NI−0095、NI−0097、NI−0098、またはNI−0099の二本鎖核酸分子であり、
各二本鎖核酸分子において、下の配列がペリオスチン遺伝子の発現抑制配列を含むアンチセンス鎖であり、上の配列が、前記発現抑制配列とアニーリングする相補配列を含むセンス鎖である二本鎖核酸分子
(2)下記NK−0144、NK−0147、またはNK−0148の一本鎖核酸分子
(3)下記PK−0076、PK−0079、またはPK−0080の一本鎖核酸分子であり、
各一本鎖核酸分子において、リンカーLxおよびLyは、下記式(I−8a)で表される一本鎖核酸分子
【化4】
【請求項2】
前記発現抑制配列が、さらに、オーバーハング配列を有し、
前記ヌクレオチドの3’末端に、前記オーバーハング配列が付加されている、請求項記載の発現抑制核酸分子。
【請求項3】
前記相補配列が、さらに、オーバーハング配列を有し、
前記ヌクレオチドの3’末端に、前記オーバーハング配列が付加されている、請求項1または2記載の発現抑制核酸分子。
【請求項4】
前記オーバーハング配列が、1〜3塩基長である、請求項2または3記載の発現抑制核酸分子。
【請求項5】
請求項1からのいずれか一項に記載の発現抑制核酸分子を含むことを特徴とする、組成物。
【請求項6】
請求項1からのいずれか一項に記載の発現抑制核酸分子を含むことを特徴とする、眼疾患用医薬。
【請求項7】
前記眼疾患が、網膜症、黄斑変性症、翼状片、結膜炎、眼内血管新生および眼の線維瘢痕からなる群から選択された少なくとも1つの疾患である、請求項記載の眼疾患用医薬。
【請求項8】
前記網膜症が、増殖糖尿病網膜症または増殖性硝子体網膜症である、請求項記載の眼疾患用医薬。
【請求項9】
ペリオスチン遺伝子の発現を抑制する方法であって、
ヒトを除く非ヒト動物に、請求項1からのいずれか一項に記載の発現抑制核酸分子を使用することを特徴とする抑制方法。
【請求項10】
前記発現抑制核酸分子を、細胞、組織または器官に投与する工程を含む、請求項記載の抑制方法。
【請求項11】
前記発現抑制核酸分子を、in vivoまたはin vitroで投与する、請求項または10記載の抑制方法。
【請求項12】
請求項1からのいずれか一項に記載の発現抑制核酸分子を、ヒトを除く非ヒト動物に投与する工程を含むことを特徴とする、眼疾患の治療方法。
【請求項13】
前記眼疾患が、網膜症、黄斑変性症、翼状片、結膜炎、眼内血管新生および眼の線維瘢痕からなる群から選択された少なくとも1つの疾患である、請求項12記載の治療方法。
【請求項14】
前記網膜症が、増殖糖尿病網膜症または増殖性硝子体網膜症である、請求項13記載の治療方法。
【請求項15】
眼疾患の治療のために使用する請求項1からのいずれか一項に記載の発現抑制核酸分子。
【請求項16】
前記眼疾患が、網膜症、黄斑変性症、翼状片、結膜炎、眼内血管新生および眼の線維瘢痕からなる群から選択された少なくとも1つの疾患である、請求項15記載の発現抑制核酸分子。
【請求項17】
前記網膜症が、増殖糖尿病網膜症または増殖性硝子体網膜症である、請求項16記載の発現抑制核酸分子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼疾患の原因となるペリオスチン遺伝子の発現抑制核酸分子、ペリオスチン遺伝子の発現抑制方法、およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、糖尿病患者の増加に伴い、合併症の一つである糖尿病網膜症(Diabetic Retinopathy:DR)患者が増加している。糖尿病網膜症は、病期によって、単純糖尿病網膜症、前増殖糖尿病網膜症および増殖糖尿病網膜症(Proliferative Diabetic Retinopathy:PDR)に分類されている。中でも、増殖糖尿病網膜症は、視力の低下だけでなく、失明に至るおそれがある。
【0003】
また、眼疾患としては、同様に、加齢黄斑変性症(Age-related Macular Degeneration:AMD)等の黄斑変性症も問題となっている。黄斑変性症は、加齢やストレス等が原因となり、黄斑が変性して視力が低下する疾患である。この疾患も、重篤な場合は失明に至るおそれがある。
【0004】
これらの眼疾患は、網脈絡膜が酸欠状態等に陥り、酸素を補うために、網膜上下に新生血管が形成されることが発端となる。新生血管は、脆弱なため、破れて出血し易く、出血した血液が光路を遮ること等によって、視力が低下する。また、前記新生血管は、増殖組織といわれる線維性膜へと進展し、これが原因となって牽引性網膜剥離を生じることもある。そして、このような状態が維持され、繰り返されることによって、重篤化すると、失明に至るおそれがある(特許文献1)。このため、これらの眼疾患に関しては、治療薬となりうる新たな候補物質の提供が求められている。
【0005】
これらの眼疾患については、ペリオスチン遺伝子の発現が関与していることが報告されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011‐220969号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】S. Yoshida et al., Investigative Ophthalmology & Visual Science, 2011, Vol.52, No.8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、ペリオスチン遺伝子の発現を抑制する新たな分子の提供、ならびに、それを用いた発現抑制方法および眼疾患の治療方法等の用途の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明のペリオスチン遺伝子の発現抑制核酸分子は、ペリオスチン遺伝子の発現抑制配列として、下記(as1)、(as2)または(as3)のヌクレオチドを含むことを特徴とする。
(as1)配列番号1〜19のいずれか一つの塩基配列からなるヌクレオチド
(as2)前記(as1)の塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換および/または付加された塩基配列からなり、ペリオスチン遺伝子の発現抑制機能を有するヌクレオチド
(as3)前記(as1)の塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、ペリオスチン遺伝子の発現抑制機能を有するヌクレオチド
【0010】
本発明の組成物は、本発明の前記発現抑制核酸分子を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の眼疾患用医薬は、本発明の前記発現抑制核酸分子を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の抑制方法は、ペリオスチン遺伝子の発現抑制方法であって、本発明の前記発現抑制核酸分子を使用することを特徴とする。
【0013】
本発明の眼疾患の治療方法は、本発明の前記発現抑制核酸分子を、患者に投与する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の発現抑制核酸分子によれば、ペリオスチン遺伝子の発現抑制が可能である。このため、本発明は、ペリオスチン遺伝子の発現が原因となる眼疾患、例えば、増殖糖尿病網膜症または黄斑変性症等の各種眼疾患の治療に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の核酸分子の一例を示す模式図である。
図2図2は、本発明の核酸分子のその他の例を示す模式図である。
図3図3は、本発明の核酸分子のその他の例を示す模式図である。
図4図4は、本発明の核酸分子のその他の例を示す模式図である。
図5図5は、本発明の実施例1におけるin vitroでのペリオスチン遺伝子発現量の相対値を示すグラフである。
図6図6は、本発明の実施例2の結果であり、(A)は、マウスの眼の線維性増殖組織の体積を示すグラフであり、(B)は、マウスの眼の新生血管の体積を示すグラフである。
図7図7は、本発明の実施例3におけるin vitroでのペリオスチン遺伝子発現量の相対値を示すグラフである。
図8図8は、本発明の実施例4におけるin vitroでのペリオスチン遺伝子発現量の相対値を示すグラフである。
図9図9は、本発明の実施例4におけるin vitroでのペリオスチン遺伝子発現量の相対値を示すグラフである。
図10図10は、本発明の実施例5におけるin vitroでのペリオスチン遺伝子発現量の相対値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書で使用する用語は、特に言及しない限り、当該技術分野で通常用いられる意味で用いることができる。
【0017】
<発現抑制核酸分子>
本発明の発現抑制核酸分子(以下、「本発明の核酸分子」ともいう)は、前述のように、発現抑制用の核酸分子であり、ペリオスチン遺伝子の発現抑制配列として、下記(as1)、(as2)または(as3)のヌクレオチドを含むことを特徴とする。
(as1)配列番号1〜19のいずれか一つの塩基配列からなるヌクレオチド
(as2)前記(as1)の塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換および/または付加された塩基配列からなり、ペリオスチン遺伝子の発現抑制機能を有するヌクレオチド
(as3)前記(as1)の塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、ペリオスチン遺伝子の発現抑制機能を有するヌクレオチド
【0018】
以下、前記(as1)、(as2)または(as3)のヌクレオチドを、asヌクレオチドといい、それぞれ、as1ヌクレオチド、as2ヌクレオチド、as3ヌクレオチドという。
【0019】
本発明において、ペリオスチン遺伝子の発現の抑制は、特に制限されず、例えば、遺伝子の転写自体の抑制でも、遺伝子の転写産物を分解することによる抑制でもよい。また、ペリオスチン遺伝子の発現の抑制は、例えば、本来の機能を有するペリオスチンタンパク質の発現の抑制であってもよく、タンパク質が発現される場合、前記タンパク質は、例えば、前記機能が阻害されたタンパク質でもよいし、前記機能が欠失したタンパク質でもよい。
【0020】
前記発現抑制配列は、例えば、前記asヌクレオチドからなる配列でもよいし、前記asヌクレオチドを含む配列でもよい。
【0021】
前記発現抑制配列の長さは、特に制限されず、例えば、18〜32塩基長であり、好ましくは19〜30塩基長であり、より好ましくは19、20、21塩基長である。本発明において、例えば、塩基数の数値範囲は、その範囲に属する正の整数を全て開示するものであり、例えば、「1〜4塩基」との記載は、「1、2、3、4塩基」の全ての開示を意味する(以下、同様)。
【0022】
前記as1ヌクレオチドの配列を以下に示す。なお、前記配列番号1〜19の塩基配列からなるヌクレオチド、前記ヌクレオチドからなる発現抑制配列、前記ヌクレオチドを含む発現抑制配列、および前記ヌクレオチドを含む核酸分子は、それぞれ、以下に示す名称(配列番号の前の名称)で表わすこともある。
NI−0079(配列番号1)
5’-AAGUAUUUCUUUUUGGUGC-3’
NI−0080(配列番号2)
5’- GAAGUAUUUCUUUUUGGUG-3’
NI−0081(配列番号3)
5’-AAUCUGGUUCCCAUGGAUG-3’
NI−0082(配列番号4)
5’-UUUCUAGGACACCUCGUGG-3’
NI−0083(配列番号5)
5’-UUGUUUGGCAGAAUCAGGA-3’
NI−0084(配列番号6)
5’-UCAAUAACUUGUUUGGCAG-3’
NI−0085(配列番号7)
5’-AGCUCAAUAACUUGUUUGG-3’
NI−0086(配列番号8)
5’-UUGCUGUUUUCCAGCCAGC-3’
NI−0087(配列番号9)
5’-UGGUUUGCUGUUUUCCAGC-3’
NI−0088(配列番号10)
5’-GAUGCCAAGCCUAAUUGGG-3’
NI−0091(配列番号11)
5’-UGAUUCGAGCACAAUUAAC-3’
NI−0092(配列番号12)
5’-UACUGUUAUACUGUCACCG-3’
NI−0093(配列番号13)
5’-UAAGCACACGGUCAAUGAC-3’
NI−0094(配列番号14)
5’-UAAUUGGGCUACCAGGUCG-3’
NI−0095(配列番号15)
5’-AUCAGAUCGUUGAUUUAGG-3’
NI−0096(配列番号16)
5’-UUCAGGAUAUUAGUGACUC-3’
NI−0097(配列番号17)
5’-UCCUUUCUAGGACACCUCG-3’
NI−0098(配列番号18)
5’-AUCCUUUCUAGGACACCUC-3’
NI−0099(配列番号19)
5’-UUUGCUGUUUUCCAGCCAG-3’
【0023】
前記as2ヌクレオチドにおいて、「1もしくは数個」は、特に制限されない。「1もしくは数個」は、例えば、1〜7個であり、好ましくは、1〜5個、より好ましくは、1〜4個、さらに好ましくは、1個、2個または3個である。前記as2ヌクレオチドは、例えば、前記as1ヌクレオチドと同様の機能を有していればよく、より詳細には、ペリオスチン遺伝子の発現抑制機能を有していればよい。「および/または」とは、少なくともいずれか1つの意味であり、「からなる群から選択された少なくとも1つの」と表すこともできる(以下、同様)。
【0024】
前記as3ヌクレオチドにおいて、同一性は、例えば、90%以上であり、好ましくは、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上である。前記as3ヌクレオチドは、例えば、前記as1ヌクレオチドと同様の機能を有していればよく、より詳細には、ペリオスチン遺伝子の発現抑制機能を有していればよい。前記同一性は、例えば、BLAST、FASTA等の解析ソフトウェアを用いて、デフォルトのパラメータにより算出できる(以下、同様)。
【0025】
前記発現抑制配列は、前述のように、前記asヌクレオチドからなる配列でもよいし、前記asヌクレオチドを含む配列でもよい。後者の場合、前記発現抑制配列は、例えば、さらに、オーバーハングを有する形態があげられる。前記発現抑制配列において、前記オーバーハングは、例えば、前記asヌクレオチドの3’末端および5’末端の少なくとも一方に付加されてもよく、好ましくは前記3’末端に付加されている。
【0026】
前記オーバーハングは、特に制限されず、例えば、長さおよび配列も、特に制限されない。前記オーバーハングは、例えば、(N)で表わすことができる。Nは、塩基であり、例えば、天然の塩基でもよいし、人工塩基でもよい。前記天然塩基は、例えば、A、C、G、UおよびTがあげられる。前記nは、正の整数であり、オーバーハングの塩基長を示す。前記オーバーハング(N)の長さ(n)は、例えば、1、2、3塩基長であり、好ましくは1または2塩基長であり、より好ましくは2塩基長である。前記オーバーハング(N)の長さが2塩基長以上の場合(n≧2)、連続する塩基(N)は、例えば、同じ塩基でもよいし、異なる塩基でもよい。前記オーバーハング(N)の配列は、例えば、siRNAのアンチセンスのオーバーハングが適用できる。前記(N)nは、例えば、3’側または5’側から、UU、CU、UC、GA、AG、GC、UA、AA、CC、GU、UG、CG、AU、TT等が例示できる。
【0027】
前記発現抑制配列が前記オーバーハングを有する場合、前記発現抑制配列は、例えば、前記as1ヌクレオチドと前記オーバーハングとが連結された配列があげられる。具体例として、前記as1ヌクレオチドと前記オーバーハングとが連結された配列番号20〜38のいずれか一つの塩基配列(nは正の整数)からなるヌクレオチドがあげられる。以下の配列において、(N)は、オーバーハングであり、特に制限されず、前述の通りであり、その長さ(n)は、好ましくは2塩基長である。また、各配列の横に、オーバーハングの一例(5’-3’方向に記載)を示すが、本発明は、これには限定されない。また、下記配列において、(N)を除く領域が、前記as2ヌクレオチドまたは前記as3ヌクレオチドであってもよい。
【0028】
NI−0079(配列番号20)
TT 5’-AAGUAUUUCUUUUUGGUGC(N)n-3’
NI−0080(配列番号21)
TT 5’-GAAGUAUUUCUUUUUGGUG(N)n-3’
NI−0081(配列番号22)
TT 5’-AAUCUGGUUCCCAUGGAUG(N)n-3’
NI−0082(配列番号23)
TT 5’-UUUCUAGGACACCUCGUGG(N)n-3’
NI−0083(配列番号24)
TT 5’-UUGUUUGGCAGAAUCAGGA(N)n-3’
NI−0084(配列番号25)
TT 5’-UCAAUAACUUGUUUGGCAG(N)n-3’
NI−0085(配列番号26)
TT 5’-AGCUCAAUAACUUGUUUGG(N)n-3’
NI−0086(配列番号27)
TT 5’-UUGCUGUUUUCCAGCCAGC(N)n-3’
NI−0087(配列番号28)
TT 5’-UGGUUUGCUGUUUUCCAGC(N)n-3’
NI−0088(配列番号29)
TT 5’-GAUGCCAAGCCUAAUUGGG(N)n-3’
NI−0091(配列番号30)
AG 5’-UGAUUCGAGCACAAUUAAC(N)n-3’
NI−0092(配列番号31)
UC 5’-UACUGUUAUACUGUCACCG(N)n-3’
NI−0093(配列番号32)
AU 5’-UAAGCACACGGUCAAUGAC(N)n-3’
NI−0094(配列番号33)
GU 5’-UAAUUGGGCUACCAGGUCG(N)n-3’
NI−0095(配列番号34)
AU 5’-AUCAGAUCGUUGAUUUAGG(N)n-3’
NI−0096(配列番号35)
CG 5’-UUCAGGAUAUUAGUGACUC(N)n-3’
NI−0097(配列番号36)
UG 5’-UCCUUUCUAGGACACCUCG(N)n-3’
NI−0098(配列番号37)
GU 5’-AUCCUUUCUAGGACACCUC(N)n-3’
NI−0099(配列番号38)
CU 5’-UUUGCUGUUUUCCAGCCAG(N)n-3’
【0029】
本発明の核酸分子は、さらに、前記発現抑制配列とアニーリングする相補配列を有することが好ましい。前記相補配列は、例えば、前記発現抑制配列における前記asヌクレオチドに対して相補的なヌクレオチド(以下、相補的ヌクレオチドという)を含む。前記相補配列は、前記相補的ヌクレオチドを含む配列でもよいし、前記相補的ヌクレオチドからなる配列でもよい。
【0030】
前記相補配列は、例えば、前記発現抑制配列とアニーリング可能であればよい。前記相補配列における前記相補的ヌクレオチドと、前記発現抑制配列における前記asヌクレオチドとは、その相補性が、例えば、90%以上であり、好ましくは、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上であり、より好ましくは100%である。なお、前記発現抑制配列と前記相補配列とは、例えば、前者のasヌクレオチドと後者の相補的ヌクレオチドとが、前述のような相補性を示すことが好ましく、前者のasヌクレオチド以外の領域および後者の相補的ヌクレオチド以外の領域は、相補的でもよいし、非相補的でもよい。前記発現抑制配列と前記相補配列とをアライメントした際、前者のasヌクレオチド以外の領域および後者の相補的ヌクレオチド以外の領域は、例えば、対応する配列が存在してもよいし、存在しなくてもよい。具体例として、前者のasヌクレオチド以外の領域および後者の相補的ヌクレオチド以外の領域は、例えば、前記オーバーハングがあげられる。すなわち、前記発現抑制配列と前記相補配列とをアライメントした際、前記発現抑制配列は、3’側(または5’側)にオーバーハングが突出した形状となり、前記相補配列は、5’側(または3’側)にオーバーハングが突出した形状となってもよい。
【0031】
前記相補的ヌクレオチドは、例えば、下記(s1)(s2)または(s3)のヌクレオチドがあげられる。
(s1)前記(as1)の塩基配列に相補的な塩基配列からなるヌクレオチド
(s2)前記(as2)の塩基配列に相補的な塩基配列からなるヌクレオチド
(s3)前記(as3)の塩基配列に相補的な塩基配列からなるヌクレオチド
【0032】
以下、前記(s1)、(s2)または(s3)のヌクレオチドを、sヌクレオチドといい、それぞれs1ヌクレオチド、s2ヌクレオチド、s3ヌクレオチドという。
【0033】
前記相補配列は、例えば、前記sヌクレオチドからなる配列でもよいし、前記sヌクレオチドを含む配列でもよい。
【0034】
前記相補配列の長さは、特に制限されず、例えば、18〜32塩基長であり、好ましくは19〜30塩基長であり、より好ましくは19、20、21塩基長である。
【0035】
前記s1ヌクレオチドの配列の具体例を以下に示す。前記配列番号39〜57の配列は、それぞれ、前記配列番号1〜19の塩基配列からなるas1ヌクレオチドに完全に相補的である。なお、前記配列番号39〜57の塩基配列からなるヌクレオチド、前記ヌクレオチドからなる発現抑制配列、前記ヌクレオチドを含む発現抑制配列、および前記ヌクレオチドを含む核酸分子を、それぞれ、以下に示す名称(配列番号の前の名称)で表わすこともある。
NI−0079(配列番号39)
5’-GCACCAAAAAGAAAUACUU-3’
NI−0080(配列番号40)
5’-CACCAAAAAGAAAUACUUC-3’
NI−0081(配列番号41)
5’-CAUCCAUGGGAACCAGAUU-3’
NI−0082(配列番号42)
5’-CCACGAGGUGUCCUAGAAA-3’
NI−0083(配列番号43)
5’-UCCUGAUUCUGCCAAACAA-3’
NI−0084(配列番号44)
5’-CUGCCAAACAAGUUAUUGA-3’
NI−0085(配列番号45)
5’-CCAAACAAGUUAUUGAGCU-3’
NI−0086(配列番号46)
5’-GCUGGCUGGAAAACAGCAA-3’
NI−0087(配列番号47)
5’-GCUGGAAAACAGCAAACCA-3’
NI−0088(配列番号48)
5’-CCCAAUUAGGCUUGGCAUC-3’
NI−0091(配列番号49)
5’-GUUAAUUGUGCUCGAAUCA-3’
NI−0092(配列番号50)
5’-CGGUGACAGUAUAACAGUA-3’
NI−0093(配列番号51)
5’-GUCAUUGACCGUGUGCUUA-3’
NI−0094(配列番号52)
5’-CGACCUGGUAGCCCAAUUA-3’
NI−0095(配列番号53)
5’-CCUAAAUCAACGAUCUGAU-3’
NI−0096(配列番号54)
5’-GAGUCACUAAUAUCCUGAA-3’
NI−0097(配列番号55)
5’-CGAGGUGUCCUAGAAAGGA-3’
NI−0098(配列番号56)
5’-GAGGUGUCCUAGAAAGGAU-3’
NI−0099(配列番号57)
5’-CUGGCUGGAAAACAGCAAA-3’
【0036】
前記相補配列は、前述のように、前記相補的ヌクレオチドからなる配列でもよいし、前記相補的ヌクレオチドを含む配列でもよい。後者の場合、前記相補配列は、例えば、さらに、オーバーハングを有する形態があげられる。前記相補配列において、前記オーバーハングは、例えば、前記相補的ヌクレオチドの3’末端および5’末端の少なくとも一方に付加されてもよく、好ましくは前記3’末端に付加されている。
【0037】
前記オーバーハングは、特に制限されず、前記発現抑制配列における記載を援用できる。前記相補配列における前記オーバーハング(N)の配列は、例えば、siRNAのセンスのオーバーハングが適用できる。前記(N)nは、例えば、5’側または3’側から、UU、CU、UC、CA、AC、GA、AG、GC、UA、AA、CC、UG、GU、CG、AU、TT、GG等が例示できる。
【0038】
前記相補配列が前記オーバーハングを有する場合、前記相補配列は、例えば、前記s1ヌクレオチドと前記オーバーハングとが連結された配列があげられる。具体例として、前記sヌクレオチドと前記オーバーハングとが連結された配列番号58〜76のいずれか一つの塩基配列(nは正の整数)からなるヌクレオチドがあげられる。以下の配列において、(N)は、オーバーハングであり、特に制限されず、前述の通りであり、その長さ(n)は、好ましくは2塩基長である。また、各配列の横に、オーバーハングの一例を示すが、本発明は、これには限定されない。また、下記配列において、(N)を除く領域が、前記s2ヌクレオチドまたは前記s3ヌクレオチドであってもよい。
NI−0079(配列番号58)
5’-GCACCAAAAAGAAAUACUU(N)n-3’ TT
NI−0080(配列番号59)
5’-CACCAAAAAGAAAUACUUC(N)n-3’ TT
NI−0081(配列番号60)
5’-CAUCCAUGGGAACCAGAUU(N)n-3’ TT
NI−0082(配列番号61)
5’-CCACGAGGUGUCCUAGAAA(N)n-3’ TT
NI−0083(配列番号62)
5’-UCCUGAUUCUGCCAAACAA(N)n-3’ TT
NI−0084(配列番号63)
5’-CUGCCAAACAAGUUAUUGA(N)n-3’ TT
NI−0085(配列番号64)
5’-CCAAACAAGUUAUUGAGCU(N)n-3’ TT
NI−0086(配列番号65)
5’-GCUGGCUGGAAAACAGCAA(N)n-3’ TT
NI−0087(配列番号66)
5’-GCUGGAAAACAGCAAACCA(N)n-3’ TT
NI−0088(配列番号67)
5’-CCCAAUUAGGCUUGGCAUC(N)n-3’ TT
NI−0091(配列番号68)
5’-GUUAAUUGUGCUCGAAUCA(N)n-3’ UC
NI−0092(配列番号69)
5’-CGGUGACAGUAUAACAGUA(N)n-3’ AA
NI−0093(配列番号70)
5’-GUCAUUGACCGUGUGCUUA(N)n-3’ CA
NI−0094(配列番号71)
5’-CGACCUGGUAGCCCAAUUA(N)n-3’ GG
NI−0095(配列番号72)
5’-CCUAAAUCAACGAUCUGAU(N)n-3’ UU
NI−0096(配列番号73)
5’-GAGUCACUAAUAUCCUGAA(N)n-3’ GA
NI−0097(配列番号74)
5’-CGAGGUGUCCUAGAAAGGA(N)n-3’ UC
NI−0098(配列番号75)
5’-GAGGUGUCCUAGAAAGGAU(N)n-3’ CA
NI−0099(配列番号76)
5’-CUGGCUGGAAAACAGCAAA(N)n-3’ CC
【0039】
下記表1および表2に、前記asヌクレオチドと前記sヌクレオチドとの組合せを例示する。本発明は、これらの例示には制限されない。また、下記配列において、asヌクレオチドおよびsヌクレオチドが、それぞれ、3’末端に(N)nのオーバーハングを有してもよく、または、5’末端に(N)nのオーバーハングを有してもよく、前記(N)nは、2塩基長が好ましい。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
本発明の核酸分子の構成単位は、特に制限されず、例えば、ヌクレオチド残基があげられる。前記ヌクレオチド残基は、例えば、リボヌクレオチド残基およびデオキシリボヌクレオチド残基があげられる。前記ヌクレオチド残基は、例えば、修飾されていない非修飾ヌクレオチド残基および修飾された修飾ヌクレオチド残基があげられる。
【0043】
本発明の核酸分子は、例えば、RNA分子である。本発明の核酸分子は、例えば、リボヌクレオチド残基のみからなるRNA分子でもよいし、リボヌクレオチド残基の他に、デオキシリボヌクレオチド残基および/または非ヌクレオチド残基を含むRNA分子でもよい。
【0044】
本発明の核酸分子は、例えば、前記二本鎖核酸分子でもよいし、前記一本鎖核酸分子でもよい。以下に、本発明の核酸分子について、前記二本鎖核酸分子および前記一本鎖核酸分子を例にあげて説明する。
【0045】
(1)二本鎖核酸分子
本発明の核酸分子が二本鎖核酸分子の場合、二本の一本鎖核酸を含み、一方の一本鎖核酸が前記発現抑制配列を有していればよい。前記二本鎖核酸分子は、例えば、いわゆるsiRNA、またはsiRNAの前駆体等があげられる。前記二本鎖核酸分子は、例えば、一方の一本鎖核酸、すなわち、そのアンチセンス鎖が、前記発現抑制配列を有し、他方の一本鎖核酸、すなわち、そのセンス鎖が、前記相補配列を有することが好ましい。前記アンチセンス鎖は、例えば、前記発現抑制配列からなる一本鎖核酸でもよいし、前記発現抑制配列を含む一本鎖核酸でもよい。前記センス鎖は、例えば、前記相補配列からなる一本鎖核酸でもよいし、前記相補配列を含む一本鎖核酸でもよい。
【0046】
前記二本鎖核酸分子において、各一本鎖核酸の長さは、特に制限されない。前記アンチセンス鎖は、例えば、18〜32塩基長であり、好ましくは19〜30塩基長であり、より好ましくは19、20、21塩基長である。前記センス鎖は、例えば、18〜32塩基長であり、好ましくは19〜30塩基長であり、より好ましくは19、20、21塩基長である。
【0047】
前記アンチセンス鎖および前記センス鎖は、それぞれ、3’末端および5’末端の少なくとも一方にオーバーハングを有することが好ましい。前記オーバーハングの長さは、例えば、例えば、1、2、3塩基長であり、好ましくは1または2塩基長であり、より好ましくは2塩基長である。前記オーバーハングの配列は、特に制限されず、例えば、前述の例示があげられる。
【0048】
(2)一本鎖核酸分子
本発明の核酸分子が一本鎖核酸分子の場合、前記発現抑制配列を有していればよく、その他の形態は、特に制限されない。
【0049】
前記核酸分子は、例えば、1本の一本鎖から構成される一本鎖核酸分子であり、例えば、前記発現抑制配列と前記相補配列とを、アニーリング可能な方向で有している。
【0050】
前記発現抑制配列と前記相補配列との連結順序は、特に制限されず、例えば、前記発現抑制配列の3’末端と前記相補配列の5’末端とが連結してもよく、前記発現抑制配列の5’末端と前記相補配列の3’末端とが連結してもよく、好ましくは前者である。前記一本鎖核酸分子は、例えば、前記発現抑制配列と前記相補配列とが、直接的に連結してもよいし、間接的に連結してもよい。前記直接的な連結は、例えば、ホスホジエステル結合による連結があげられる。前記間接的な連結は、例えば、リンカー領域を介した連結があげられる。
【0051】
前記リンカー領域は、例えば、ヌクレオチド残基から構成されてもよいし、非ヌクレオチド残基から構成されてもよく、前記ヌクレオチド残基および非ヌクレオチド残基から構成されてもよい。前記ヌクレオチド残基は、例えば、リボヌクレオチド残基およびデオキシリボヌクレオチド残基があげられる。
【0052】
以下に、前記一本鎖核酸分子の具体例として、分子内アニーリングにより1カ所にループを有する第1形態と、2カ所にループを有する第2形態とを例示する。本発明は、これには制限されない。
【0053】
(2−1)第1形態
前記一本鎖核酸分子の第1形態として、5’側領域および3’側領域が互いにアニーリングして、二本鎖構造(ステム構造)を形成する分子があげられる。これは、shRNA(small hairpin RNAまたはshort hairpin RNA)の形態とも言える。shRNAは、ヘアピン構造をとっており、一般的に、一つのステム領域と一つのループ領域とを有する。
【0054】
本形態の核酸分子は、例えば、領域(X)、リンカー領域(Lx)および領域(Xc)を含み、前記領域(X)と前記領域(Xc)との間に、前記リンカー領域(Lx)が連結された構造があげられる。そして、前記領域(Xc)が、前記領域(X)と相補的であることが好ましく、具体的には、前記領域(X)および前記領域(Xc)のうち一方が、前記発現抑制配列を含み、他方が、前記相補配列を含むことが好ましい。前記領域(X)と前記領域(Xc)とは、それぞれ、前記発現抑制配列および前記相補配列のいずれかを有するため、前記核酸分子は、例えば、分子内アニーリングにより、前記領域(X)と前記領域(Xc)との間でステム構造を形成でき、前記リンカー領域(Lx)がループ構造となる。
【0055】
前記核酸分子は、例えば、5’側から3’側にかけて、前記領域(Xc)、前記リンカー領域(Lx)および前記領域(X)を、前記順序で有してもよいし、3’側から5’側にかけて、前記領域(Xc)、前記リンカー領域(Lx)および前記領域(X)を、前記順序で有してもよい。前記発現抑制配列は、例えば、前記領域(X)と前記領域(Xc)のいずれに配置してもよく、前記相補配列の上流側、すなわち、前記相補配列よりも5’側に配置することが好ましい。
【0056】
本形態の核酸分子の一例を、図1の模式図に示す。図1(A)は、前記核酸分子における各領域の順序の概略を示す模式図であり、図1(B)は、前記核酸分子が、前記分子内において二重鎖を形成している状態を示す模式図である。図1(B)に示すように、前記核酸分子は、前記領域(Xc)と前記領域(X)との間で、二重鎖が形成され、前記Lx領域が、その長さに応じてループ構造をとる。図1は、あくまでも、前記領域の連結順序および二重鎖を形成する各領域の位置関係を示すものであり、例えば、各領域の長さ、前記リンカー領域(Lx)の形状等は、これに制限されない。
【0057】
前記核酸分子において、前記領域(Xc)および前記領域(X)の塩基数は、特に制限されない。以下に各領域の長さを例示するが、本発明は、これには制限されない。
【0058】
前記核酸分子において、前記領域(X)の塩基数(X)と前記領域(Xc)の塩基数(Xc)との関係は、例えば、下記(3)または(5)の条件を満たし、前者の場合、具体的には、例えば、下記(11)の条件を満たす。
X>Xc ・・・(3)
X−Xc=1〜10、好ましくは1、2または3、
より好ましくは1または2 ・・・(11)
X=Xc ・・・(5)
【0059】
前記領域(X)または前記領域(Xc)が前記発現抑制配列を含む場合、前記領域は、例えば、前記発現抑制配列のみからなる領域でもよいし、前記発現抑制配列を含む領域でもよい。前記発現抑制配列の塩基数は、例えば、前述の通りである。前記発現抑制配列を含む領域は、例えば、前記発現抑制配列の5’側および/または3’側に、さらに付加配列を有してもよい。前記付加配列の塩基数は、例えば、1〜31塩基であり、好ましくは1〜21塩基であり、より好ましくは1〜11塩基である。
【0060】
前記領域(X)の塩基数は、特に制限されない。前記領域(X)が前記発現抑制配列を含む場合、その下限は、例えば、19塩基である。その上限は、例えば、50塩基であり、好ましくは30塩基であり、より好ましくは25塩基である。前記領域(X)の塩基数の具体例は、例えば、19〜50塩基であり、好ましくは19〜30塩基、より好ましくは19〜25塩基である。
【0061】
前記領域(Xc)の塩基数は、特に制限されない。その下限は、例えば、19塩基であり、好ましくは20塩基であり、より好ましくは21塩基である。その上限は、例えば、50塩基であり、好ましくは40塩基であり、より好ましくは30塩基である。
【0062】
前記リンカー領域(Lx)は、それ自体の領域内部において、自己アニーリングを生じない構造であることが好ましい。前記リンカー領域(Lx)は、例えば、前述のように、前記ヌクレオチド残基から構成されてもよいし、前記非ヌクレオチド残基から構成されてもよいし、前記両者を含んでもよい。
【0063】
前記リンカー領域(Lx)が前記ヌクレオチド残基を含む場合、その長さは、特に制限されない。前記リンカー領域(Lx)は、例えば、前記領域(X)と前記領域(Xc)とが二重鎖を形成可能な長さであることが好ましい。前記リンカー領域(Lx)の塩基数は、その下限が、例えば、1塩基であり、好ましくは2塩基であり、より好ましくは3塩基であり、その上限が、例えば、100塩基であり、好ましくは80塩基であり、より好ましくは50塩基、40塩基、30塩基、20塩基、10塩基である。
【0064】
前記核酸分子の全長は、特に制限されない。前記核酸分子において、前記塩基数の合計(全長の塩基数)は、下限が、例えば、38塩基であり、好ましくは42塩基であり、より好ましくは50塩基であり、さらに好ましくは51塩基であり、特に好ましくは52塩基であり、その上限は、例えば、300塩基であり、好ましくは200塩基であり、より好ましくは150塩基であり、さらに好ましくは100塩基であり、特に好ましくは80塩基である。前記核酸分子において、前記リンカー領域(Lx)を除く塩基数の合計は、下限が、例えば、38塩基であり、好ましくは42塩基であり、より好ましくは50塩基であり、さらに好ましくは51塩基であり、特に好ましくは52塩基であり、上限が、例えば、300塩基であり、好ましくは200塩基であり、より好ましくは150塩基であり、さらに好ましくは100塩基であり、特に好ましくは80塩基である。
【0065】
(2−2)第2形態
前記一本鎖核酸分子の第2形態として、5’側領域および3’側領域が、それぞれ別個に分子内アニーリングして、2つの二本鎖構造(ステム構造)を形成する分子があげられる。これは、例えば、国際公開WO2012/005368号公報およびWO2012/017979の開示を援用できる。
【0066】
本形態の核酸分子は、例えば、5’側から3’側にかけて、5’側領域(Xc)、内部領域(Z)および3’側領域(Yc)を、前記順序で含む構造があげられる。前記内部領域(Z)は、内部5’側領域(X)および内部3’側領域(Y)が連結して構成され、前記5’側領域(Xc)が、前記内部5’側領域(X)と相補的であり、前記3’側領域(Yc)が、前記内部3’側領域(Y)と相補的であることが好ましい。そして、前記内部領域(Z)、前記5’側領域(Xc)および前記3’側領域(Yc)の少なくとも一つが、前記発現抑制配列を含むことが好ましい。
【0067】
前記核酸分子において、前記5’側領域(Xc)は、前記内部5’側領域(X)と相補的であり、前記3’側領域(Yc)は、前記内部3’側領域(Y)と相補的である。このため、5’側において、前記領域(Xc)が前記領域(X)に向かって折り返し、前記領域(Xc)と前記領域(X)とが、自己アニーリングによって、二重鎖を形成可能であり、また、3’側において、前記領域(Yc)が前記領域(Y)に向かって折り返し、前記領域(Yc)と前記領域(Y)とが、自己アニーリングによって、二重鎖を形成可能である。
【0068】
前記内部領域(Z)は、前述のように、前記内部5’領域(X)と前記内部3’領域(Y)が連結されている。前記領域(X)と前記領域(Y)は、例えば、直接的に連結され、その間に介在配列を有していない。前記内部領域(Z)は、前記5’側領域(Xc)および前記3’側領域(Yc)との配列関係を示すために、「前記内部5’側領域(X)と前記内部3’側領域(Y)が連結して構成される」と表わすものであって、前記内部領域(Z)において、前記内部5’側領域(X)と前記内部3’側領域(Y)とが、例えば、前記核酸分子の使用において、別個の独立した領域であることを限定するものではない。すなわち、例えば、前記内部領域(Z)が、前記発現抑制配列を有する場合、前記内部領域(Z)において、前記領域(X)と前記領域(Y)とにわたって、前記発現抑制配列が配置されてもよい。
【0069】
前記核酸分子において、前記5’側領域(Xc)と前記内部5’側領域(X)とは、例えば、直接連結してもよいし、間接的に連結してもよい。前者の場合、直接的な連結は、例えば、ホスホジエステル結合による連結があげられる。後者の場合、例えば、前記領域(Xc)と前記領域(X)との間に、リンカー領域(Lx)を有し、前記リンカー領域(Lx)を介して、前記領域(Xc)と前記領域(X)とが連結している形態があげられる。
【0070】
前記核酸分子において、前記3’側領域(Yc)と前記内部3’側領域(Y)とは、例えば、直接連結してもよいし、間接的に連結してもよい。前者の場合、直接的な連結は、例えば、ホスホジエステル結合による連結があげられる。後者の場合、例えば、前記領域(Yc)と前記領域(Y)との間に、リンカー領域(Ly)を有し、前記リンカー領域(Ly)を介して、前記領域(Yc)と前記領域(Y)とが連結している形態があげられる。
【0071】
前記核酸分子は、例えば、前記リンカー領域(Lx)および前記リンカー領域(Ly)の両方を有してもよいし、いずれか一方を有してもよい。後者の場合、例えば、前記5’側領域(Xc)と前記内部5’側領域(X)との間に前記リンカー領域(Lx)を有し、前記3’側領域(Yc)と前記内部3’側領域(Y)との間に前記リンカー領域(Ly)を有さない、つまり、前記領域(Yc)と前記領域(Y)とが直接連結された形態があげられる。また、後者の場合、例えば、前記3’側領域(Yc)と前記内部3’側領域(Y)との間に前記リンカー領域(Ly)を有し、前記5’側領域(Xc)と前記内部5’側領域(X)との間に前記リンカー領域(Lx)を有さない、つまり、前記領域(Xc)と前記領域(X)とが直接連結された形態があげられる。
【0072】
前記リンカー領域(Lx)および前記リンカー領域(Ly)は、それぞれ、それ自体の領域内部において、自己アニーリングを生じない構造であることが好ましい。前記リンカー領域(Lx)および前記リンカー領域(Ly)は、例えば、前述のように、前記ヌクレオチド残基から構成されてもよいし、前記非ヌクレオチド残基から構成されてもよいし、前記両者を含んでもよい。
【0073】
本形態の核酸分子について、前記リンカー領域を有さない一例を、図2の模式図に示す。図2(A)は、前記核酸分子について、5’側から3’側に向かって、各領域の順序の概略を示す模式図であり、図2(B)は、前記核酸分子が、前記分子内において二重鎖を形成している状態を示す模式図である。図2(B)に示すように、前記核酸分子は、前記5’側領域(Xc)が折り返し、前記5’側領域(Xc)と前記内部5’側領域(X)との間で二重鎖が形成され、前記3’側領域(Yc)が折り返し、前記3’側領域(Yc)と前記内部3’側領域(Y)との間で二重鎖が形成される。図2は、あくまでも、各領域の連結順番および二重鎖を形成する各領域の位置関係を示すものであり、例えば、各領域の長さ等は、これに制限されない。
【0074】
前記核酸分子について、前記リンカー領域を有する一例を、図3の模式図に示す。図3(A)は、前記核酸分子について、5’側から3’側に向かって、各領域の順序の概略を示す模式図であり、図3(B)は、前記核酸分子が、前記分子内において二重鎖を形成している状態を示す模式図である。図3(B)に示すように、前記核酸分子は、前記5’側領域(Xc)と前記内部5’側領域(X)との間、前記内部3’側領域(Y)と前記3’側領域(Yc)との間で、二重鎖が形成され、前記Lx領域および前記Ly領域が、ループ構造をとる。図3は、あくまでも、各領域の連結順番および二重鎖を形成する各領域の位置関係を示すものであり、例えば、各領域の長さ等は、これに制限されない。
【0075】
前記核酸分子において、前記5’側領域(Xc)、前記内部5’側領域(X)、前記内部3’側領域(Y)および前記3’側領域(Yc)の塩基数は、特に制限されない。以下に各領域の長さを例示するが、本発明は、これに制限されない。
【0076】
前記5’側領域(Xc)は、前述のように、例えば、前記内部5’側領域(X)の全領域に相補的でもよい。この場合、前記5’側領域(Xc)は、例えば、前記内部5’側領域(X)と同じ塩基長であり、前記内部5’側領域(X)の5’末端から3’末端の全領域に相補的な塩基配列からなることが好ましい。前記5’側領域(Xc)は、より好ましくは、前記内部5’側領域(X)と同じ塩基長であり、且つ、前記5’側領域(Xc)の全ての塩基が、前記内部5’側領域(X)の全ての塩基と相補的である、つまり、例えば、完全に相補的であることが好ましい。なお、これには制限されず、例えば、前述のように、1もしくは数塩基が非相補的でもよい。
【0077】
また、前記5’側領域(Xc)は、前述のように、例えば、前記内部5’側領域(X)の部分領域に相補的でもよい。この場合、前記5’側領域(Xc)は、例えば、前記内部5’側領域(X)の部分領域と同じ塩基長であり、すなわち、前記内部5’側領域(X)よりも、1塩基以上短い塩基長の塩基配列からなることが好ましい。前記5’側領域(Xc)は、より好ましくは、前記内部5’側領域(X)の前記部分領域と同じ塩基長であり、且つ、前記5’側領域(Xc)の全ての塩基が、前記内部5’側領域(X)の前記部分領域の全ての塩基と相補的である、つまり、例えば、完全に相補的であることが好ましい。前記内部5’側領域(X)の前記部分領域は、例えば、前記5’側領域(X)における、5’末端の塩基(1番目の塩基)から連続する塩基配列からなる領域(セグメント)であることが好ましい。
【0078】
前記3’側領域(Yc)は、前述のように、例えば、前記内部3’側領域(Y)の全領域に相補的でもよい。この場合、前記3’側領域(Yc)は、例えば、前記内部3’側領域(Y)と同じ塩基長であり、前記領域(Y)の5’末端から3’末端の全領域に相補的な塩基配列からなることが好ましい。前記3’側領域(Yc)は、より好ましくは、前記内部3’側領域(Y)と同じ塩基長であり、且つ、前記3’側領域(Yc)の全ての塩基が、前記内部3’側領域(Y)の全ての塩基と相補的である、つまり、例えば、完全に相補であることが好ましい。なお、これには制限されず、例えば、前述のように、1もしくは数塩基が非相補的でもよい。
【0079】
また、前記3’側領域(Yc)は、前述のように、例えば、前記内部3’側領域(Y)の部分領域に相補的でもよい。この場合、前記3’側領域(Yc)は、例えば、前記内部3’側領域(Y)の部分領域と同じ塩基長であり、すなわち、前記内部3’側領域(Y)よりも、1塩基以上短い塩基長の塩基配列からなることが好ましい。前記3’側領域(Yc)は、より好ましくは、前記内部3’側領域(Y)の前記部分領域と同じ塩基長であり、且つ、前記3’側領域(Yc)の全ての塩基が、前記内部3’側領域(Y)の前記部分領域の全ての塩基と相補的である、つまり、例えば、完全に相補であることが好ましい。前記内部3’側領域(Y)の前記部分領域は、例えば、前記内部3’側領域(Y)における、3’末端の塩基(1番目の塩基)から連続する塩基配列からなる領域(セグメント)であることが好ましい。
【0080】
前記核酸分子において、前記内部領域(Z)の塩基数(Z)と、前記内部5’側領域(X)の塩基数(X)および前記内部3’側領域(Y)の塩基数(Y)との関係、前記内部領域(Z)の塩基数(Z)と、前記5’側領域(Xc)の塩基数(Xc)および前記3’側領域(Yc)の塩基数(Yc)との関係は、例えば、下記式(1)および(2)の条件を満たす。
Z=X+Y ・・・(1)
Z≧Xc+Yc ・・・(2)
【0081】
前記核酸分子において、前記内部5’側領域(X)の塩基数(X)と前記内部3’側領域(Y)の塩基数(Y)の長さの関係は、特に制限されず、例えば、下記式のいずれの条件を満たしてもよい。
X=Y ・・・(19)
X<Y ・・・(20)
X>Y ・・・(21)
【0082】
前記核酸分子において、前記内部5’側領域(X)の塩基数(X)、前記5’側領域(Xc)の塩基数(Xc)、前記内部3’側領域(Y)の塩基数(Y)および前記3’側領域(Yc)の塩基数(Yc)の関係は、例えば、下記(a)〜(d)のいずれかの条件を満たす。
(a)下記式(3)および(4)の条件を満たす。
X>Xc ・・・(3)
Y=Yc ・・・(4)
(b)下記式(5)および(6)の条件を満たす。
X=Xc ・・・(5)
Y>Yc ・・・(6)
(c)下記式(7)および(8)の条件を満たす。
X>Xc ・・・(7)
Y>Yc ・・・(8)
(d)下記式(9)および(10)の条件を満たす。
X=Xc ・・・(9)
Y=Yc ・・・(10)
【0083】
前記(a)〜(d)において、前記内部5’側領域(X)の塩基数(X)と前記5’側領域(Xc)の塩基数(Xc)の差、前記内部3’側領域(Y)の塩基数(Y)と前記3’側領域(Yc)の塩基数(Yc)の差は、例えば、下記条件を満たすことが好ましい。
(a)下記式(11)および(12)の条件を満たす。
X−Xc=1〜10、好ましくは1、2、3または4、
より好ましくは1、2または3 ・・・(11)
Y−Yc=0 ・・・(12)
(b)下記式(13)および(14)の条件を満たす。
X−Xc=0 ・・・(13)
Y−Yc=1〜10、好ましくは1、2、3または4、
より好ましくは1、2または3 ・・・(14)
(c)下記式(15)および(16)の条件を満たす。
X−Xc=1〜10、好ましくは1、2または3、
より好ましくは1または2 ・・・(15)
Y−Yc=1〜10、好ましくは1、2または3、
より好ましくは1または2 ・・・(16)
(d)下記式(17)および(18)の条件を満たす。
X−Xc=0 ・・・(17)
Y−Yc=0 ・・・(18)
【0084】
前記(a)〜(d)の核酸分子について、それぞれの構造の一例を、図4の模式図に示す。図4は、前記リンカー領域(Lx)および前記リンカー領域(Ly)を含む核酸分子であり、(A)は、前記(a)の核酸分子、(B)は、前記(b)の核酸分子、(C)は、前記(c)の核酸分子、(D)は、前記(d)の核酸分子の例である。図4において、点線は、自己アニーリングにより二重鎖を形成している状態を示す。図4の核酸分子は、前記内部5’側領域(X)の塩基数(X)と前記内部3’側領域(Y)の塩基数(Y)を、前記式(20)の「X<Y」として表わすが、これには制限されず、前述のように、前記式(19)の「X=Y」でも、前記式(21)の「X>Y」でもよい。また、図4は、あくまでも、前記内部5’側領域(X)と前記5’側領域(Xc)との関係、前記内部3’側領域(Y)と前記3’側領域(Yc)との関係を示す模式図であり、例えば、各領域の長さ、形状等は、これには制限されず、また、リンカー領域(Lx)およびリンカー領域(Ly)の有無も、これには制限されない。
【0085】
前記(a)〜(c)の核酸分子は、例えば、前記5’側領域(Xc)と前記内部5’側領域(X)、および、前記3’側領域(Yc)と前記内部3’側領域(Y)が、それぞれ二重鎖を形成することによって、前記内部領域(Z)において、前記5’側領域(Xc)および前記3’側領域(Yc)のいずれともアライメントできない塩基を有する構造であり、二重鎖を形成しない塩基を有する構造ともいえる。前記内部領域(Z)において、前記アライメントできない塩基(二重鎖を形成しない塩基ともいう)を、以下、「フリー塩基」という。図4において、前記フリー塩基の領域を、「F」で示す。前記領域(F)の塩基数は、特に制限されない。前記領域(F)の塩基数(F)は、例えば、前記(a)の核酸分子の場合、「X−Xc」の塩基数であり、前記(b)の核酸分子の場合、「Y−Yc」の塩基数であり、前記(c)の核酸分子の場合、「X−Xc」の塩基数と「Y−Yc」の塩基数との合計数である。
【0086】
他方、前記(d)の核酸分子は、例えば、前記内部領域(Z)の全領域が、前記5’側領域(Xc)および前記3’側領域(Yc)とアライメントする構造であり、前記内部領域(Z)の全領域が二重鎖を形成する構造ともいえる。なお、前記(d)の核酸分子において、前記5’側領域(Xc)の5’末端と前記3’側領域(Yc)の3’末端は、未連結である。
【0087】
前記核酸分子について、各領域の長さを以下に例示するが、本発明は、これには制限されない。
【0088】
前記5’側領域(Xc)、前記3’側領域(Yc)、および前記内部領域(Z)における前記フリー塩基(F)の塩基数の合計は、例えば、前記内部領域(Z)の塩基数となる。このため、前記5’側領域(Xc)および前記3’側領域(Yc)の長さは、例えば、前記内部領域(Z)の長さ、前記フリー塩基の数(F)およびその位置に応じて、適宜決定できる。
【0089】
前記内部領域(Z)の塩基数は、例えば、19塩基以上である。前記塩基数の下限は、例えば、19塩基であり、好ましくは20塩基であり、より好ましくは21塩基である。前記塩基数の上限は、例えば、50塩基であり、好ましくは40塩基であり、より好ましくは30塩基である。前記内部領域(Z)の塩基数の具体例は、例えば、19塩基、20塩基、21塩基、22塩基、23塩基、24塩基、25塩基、26塩基、27塩基、28塩基、29塩基、または、30塩基である。
【0090】
前記内部領域(Z)が前記発現抑制配列を含む場合、前記内部領域(Z)は、例えば、前記発現抑制配列のみから構成される領域でもよいし、前記発現抑制配列を含む領域でもよい。前記発現抑制配列の塩基数は、例えば、前述の通りである。前記内部領域(Z)が前記発現抑制配列を含む場合、前記発現抑制配列の5’側および/または3’側に、さらに付加配列を有してもよい。前記付加配列の塩基数は、例えば、1〜31塩基であり、好ましくは1〜21塩基であり、より好ましくは1〜11塩基であり、さらに好ましくは1〜7塩基である。
【0091】
前記内部領域(Z)において、前記発現抑制配列の位置は、特に制限されず、前述のように、前記内部5’側領域(X)でもよいし、前記内部3’側領域(Y)でもよいし、前記内部5’領域(X)と前記内部3’側領域(Y)とにわたって配置されてもよい。前記核酸分子が、例えば、前記相補配列を有する場合、その位置も特に制限されず、例えば、前記内部5’側領域(X)に対応する前記5’側領域(Xc)でもよいし、前記内部3’側領域(Y)に対する前記3’側領域(Yc)でもよい。また、前記発現抑制配列が、前記内部5’領域(X)と前記内部3’側領域(Y)とにわたって配置されている場合、例えば、前記相補配列は、前記5’側領域(Xc)と前記3’側領域(Yc)とに分断されてもよい。前記相補配列が2つに分断されている場合、例えば、前記フリー塩基に該当する箇所が欠失した配列でもよい。、
【0092】
前記5’側領域(Xc)の塩基数は、例えば、1〜29塩基であり、好ましくは1〜11塩基であり、より好ましくは1〜7塩基であり、さらに好ましくは1〜4塩基であり、特に好ましくは1塩基、2塩基、3塩基である。前記内部領域(Z)または前記3’側領域(Yc)が前記発現抑制配列を含む場合、例えば、このような塩基数が好ましい。具体例として、前記内部領域(Z)の塩基数が、19〜30塩基(例えば、19塩基)の場合、前記5’側領域(Xc)の塩基数は、例えば、1〜11塩基であり、好ましくは1〜9塩基、1〜7塩基であり、より好ましくは1〜4塩基であり、さらに好ましくは1塩基、2塩基、3塩基である。
【0093】
前記5’側領域(Xc)が前記発現抑制配列を含む場合、前記5’側領域(Xc)は、例えば、前記発現抑制配列のみから構成される領域でもよいし、前記発現抑制配列を含む領域でもよい。前記発現抑制配列の長さは、例えば、前述の通りである。前記5’側領域(Xc)が前記発現抑制配列を含む場合、前記発現抑制配列の5’側および/または3’側に、さらに付加配列を有してもよい。前記付加配列の塩基数は、例えば、1〜11塩基であり、好ましくは1〜7塩基である。
【0094】
前記3’側領域(Yc)の塩基数は、例えば、1〜29塩基であり、好ましくは1〜11塩基であり、より好ましくは1〜7塩基であり、さらに好ましくは1〜4塩基であり、特に好ましくは1塩基、2塩基、3塩基である。前記内部領域(Z)または前記5’側領域(Xc)が前記発現抑制配列を含む場合、例えば、このような塩基数が好ましい。具体例として、前記内部領域(Z)の塩基数が、19〜30塩基(例えば、19塩基)の場合、前記3’側領域(Yc)の塩基数は、例えば、1〜11塩基であり、好ましくは1〜9塩基、1〜7塩基であり、より好ましくは1〜4塩基であり、さらに好ましくは1塩基、2塩基、3塩基である。
【0095】
前記3’側領域(Yc)が前記発現抑制配列を含む場合、前記3’側領域(Yc)は、例えば、前記発現抑制配列のみから構成される領域でもよいし、前記発現抑制配列を含む領域でもよい。前記発現抑制配列の長さは、例えば、前述の通りである。前記3’側領域(Yc)が前記発現抑制配列を含む場合、前記発現抑制配列の5’側および/または3’側に、さらに付加配列を有してもよい。前記付加配列の塩基数は、例えば、1〜11塩基であり、好ましくは1〜7塩基である。
【0096】
前述のように、前記内部領域(Z)、前記5’側領域(Xc)および前記3’側領域(Yc)の塩基数は、例えば、前記式(2)の「Z≧Xc+Yc」で表わすことができる。具体例として、「Xc+Yc」の塩基数は、例えば、前記内部領域(Z)と同じ、または、前記内部領域(Z)より小さい。後者の場合、「Z−(Xc+Yc)」は、例えば、1〜10、好ましくは1〜4、より好ましくは1、2または3である。前記「Z−(Xc+Yc)」は、例えば、前記内部領域(Z)における前記フリー塩基の領域(F)の塩基数(F)に相当する。
【0097】
前記一本鎖核酸分子において、前記5’側領域(Xc)の末端と前記3’側領域(Yc)の末端は、例えば、分子内アニーリングした状態において、前記内部領域(Z)に対して、5’側または3’側に位置することが好ましい。前者の場合、前記5’側領域(Xc)の塩基数(Xc)と、前記3’側領域(Yc)の塩基数(Yc)は、Xc<Ycの関係である。そして、塩基数(Xc)は、例えば、1〜11塩基であり、好ましくは1〜9塩基であり、より好ましくは1〜7塩基であり、さらに好ましくは1〜4塩基であり、特に好ましくは1塩基、2塩基、3塩基であり、前記5’側領域(Xc)と前記内部領域(Z)の塩基数(Z)との関係(Xc/Z)が、例えば、1/50〜1/2、好ましくは1/40〜1/3、より好ましくは1/30〜1/4である。後者の場合、前記5’側領域(Xc)の塩基数(Xc)と、前記3’側領域(Yc)の塩基数(Yc)は、Xc>Ycの関係である。そして、塩基数(Yc)は、例えば、1〜11塩基であり、好ましくは1〜9塩基であり、より好ましくは1〜7塩基であり、さらに好ましくは1〜4塩基であり、特に好ましくは1塩基、2塩基、3塩基であり、前記3’側領域(Yc)と前記内部領域(Z)の塩基数(Z)との関係(Yc/Z)が、例えば、例えば、1/50〜1/2、好ましくは1/40〜1/3、より好ましくは1/30〜1/4である。
【0098】
前記リンカー領域(Lx)および(Ly)は、それぞれ、それ自体の領域内部において、自己アニーリングを生じない構造であることが好ましい。前記リンカー領域(Lx)および(Ly)は、例えば、前述のように、前記ヌクレオチド残基から構成されてもよいし、前記非ヌクレオチド残基から構成されてもよいし、前記両者を含んでもよい。
【0099】
前記リンカー領域(Lx)および前記リンカー領域(Ly)が、前述のようにヌクレオチド残基を含む場合、その長さは、特に制限されない。前記リンカー領域(Lx)は、例えば、前記内部5’側領域(X)と前記5’側領域(Xc)とが二重鎖を形成可能な長さであることが好ましく、前記リンカー領域(Ly)は、例えば、前記内部3’側領域(Y)と前記3’側領域(Yc)とが二重鎖を形成可能な長さであることが好ましい。前記リンカー領域(Lx)および前記リンカー領域(Ly)の長さは、例えば、同じでも異なってもよく、また、その塩基配列も、同じでも異なってもよい。前記リンカー領域(Lx)および前記リンカー領域(Ly)の塩基数は、その下限が、例えば、1塩基であり、好ましくは2塩基であり、より好ましくは3塩基であり、その上限が、例えば、100塩基であり、好ましくは80塩基であり、より好ましくは50塩基、40塩基、30塩基、20塩基、10塩基である。前記各リンカー領域の塩基数は、具体例として、例えば、1〜50塩基、1〜30塩基、1〜20塩基、1〜10塩基、1〜7塩基、1〜4塩基等が例示できるが、これには制限されない。
【0100】
前記核酸分子の全長は、特に制限されない。前記核酸分子において、前記塩基数の合計(全長の塩基数)は、下限が、例えば、38塩基であり、好ましくは42塩基であり、より好ましくは50塩基であり、さらに好ましくは51塩基であり、特に好ましくは52塩基であり、その上限は、例えば、300塩基であり、好ましくは200塩基であり、より好ましくは150塩基であり、さらに好ましくは100塩基であり、特に好ましくは80塩基である。前記核酸分子において、前記リンカー領域(Lx)およびリンカー領域(Ly)を除く塩基数の合計は、下限が、例えば、38塩基であり、好ましくは42塩基であり、より好ましくは50塩基であり、さらに好ましくは51塩基であり、特に好ましくは52塩基であり、上限が、例えば、300塩基であり、好ましくは200塩基であり、より好ましくは150塩基であり、さらに好ましくは100塩基であり、特に好ましくは80塩基である。
【0101】
本形態の核酸分子は、例えば、5’末端と3’末端とが、結合してもよいし、未結合でもよい。前者の場合、本形態の核酸分子は、環状の一本鎖核酸分子である。後者の場合、本形態の核酸分子は、例えば、両末端の未結合を維持できることから、5’末端が非リン酸基であることが好ましい。
【0102】
(2−3)第3形態
前記一本鎖核酸分子の第3形態として、前記リンカー領域が、非ヌクレオチド構造である分子があげられる。これは、例えば、国際公開WO2012/005368号公報およびWO2012/017979の開示を援用できる。
【0103】
本形態の核酸分子は、前記第1形態および前記第2形態の核酸分子において、前記リンカー領域(Lx)および/または前記リンカー領域(Ly)が、非ヌクレオチド構造を有する以外は、前述の説明を援用できる。
【0104】
前記非ヌクレオチド構造は、特に制限されず、例えば、ピロリジン骨格、ピペリジン骨格、ポリアルキレングリコール等があげられる。前記ポリアルキレングリコールは、例えば、ポリエチレングリコールがあげられる。
【0105】
前記ピロリジン骨格は、例えば、ピロリジンの5員環を構成する炭素が、1個以上、置換されたピロリジン誘導体の骨格でもよく、置換される場合、例えば、C−2の炭素以外の炭素原子であることが好ましい。前記炭素は、例えば、窒素、酸素または硫黄で置換されてもよい。前記ピロリジン骨格は、例えば、ピロリジンの5員環内に、例えば、炭素−炭素二重結合または炭素−窒素二重結合を含んでもよい。前記ピロリジン骨格において、ピロリジンの5員環を構成する炭素および窒素は、例えば、水素が結合してもよいし、後述するような置換基が結合してもよい。前記リンカー領域(Lx)は、前記領域(X)および前記領域(Xc)と、前記リンカー領域(Ly)は、前記領域(Y)および前記領域(Yc)と、例えば、前記ピロリジン骨格のいずれの基を介して結合してもよく、好ましくは、前記5員環のいずれか1個の炭素原子と窒素であり、好ましくは、前記5員環の2位の炭素(C−2)と窒素である。前記ピロリジン骨格としては、例えば、プロリン骨格、プロリノール骨格等があげられる。前記プロリン骨格およびプロリノール骨格等は、例えば、生体内物質およびその還元体であるため、安全性にも優れる。
【0106】
前記ピペリジン骨格は、例えば、ピペリジンの6員環を構成する炭素が、1個以上、置換されたピペリジン誘導体の骨格でもよく、置換される場合、例えば、C−2の炭素以外の炭素原子であることが好ましい。前記炭素は、例えば、窒素、酸素または硫黄で置換されてもよい。前記ピペリジン骨格は、例えば、ピペリジンの6員環内に、例えば、炭素−炭素二重結合または炭素−窒素二重結合を含んでもよい。前記ピペリジン骨格において、ピペリジンの6員環を構成する炭素および窒素は、例えば、水素基が結合してもよいし、後述するような置換基が結合してもよい。前記リンカー領域(Lx)は、前記領域(X)および前記領域(Xc)と、前記リンカー領域(Ly)は、前記領域(Y)および前記領域(Yc)と、例えば、前記ピペリジン骨格のいずれの基を介して結合してもよく、好ましくは、前記6員環のいずれか1個の炭素原子と窒素であり、より好ましくは、前記6員環の2位の炭素(C−2)と窒素である。
【0107】
前記リンカー領域は、例えば、前記非ヌクレオチド構造からなる非ヌクレオチド残基のみを含んでもよいし、前記非ヌクレオチド構造からなる非ヌクレオチド残基と、ヌクレオチド残基とを含んでもよい。
【0108】
前記リンカー領域は、例えば、下記式(I)で表わされる。
【化1】
【0109】
前記式(I)中、例えば、
およびXは、それぞれ独立して、H、O、SまたはNHであり;
およびYは、それぞれ独立して、単結合、CH、NH、OまたはSであり;
は、環A上のC−3、C−4、C−5またはC−6に結合する水素原子または置換基であり、
は、n個の原子からなるアルキレン鎖であり、ここで、アルキレン炭素原子上の水素原子は、OH、OR、NH、NHR、NR、SH、もしくはSRで置換されても置換されていなくてもよく、または、
は、前記アルキレン鎖の一つ以上の炭素原子が、酸素原子で置換されたポリエーテル鎖であり、
ただし、Yが、NH、OまたはSの場合、Yに結合するLの原子は炭素であり、ORに結合するLの原子は炭素であり、酸素原子同士は隣接せず;
は、m個の原子からなるアルキレン鎖であり、ここで、アルキレン炭素原子上の水素原子は、OH、OR、NH、NHR、NR、SHもしくはSRで置換されても置換れていなくてもよく、または、
は、前記アルキレン鎖の一つ以上の炭素原子が、酸素原子で置換されたポリエーテル鎖であり、
ただし、Yが、NH、OまたはSの場合、Yに結合するLの原子は炭素であり、ORに結合するLの原子は炭素であり、酸素原子同士は隣接せず;
、R、RおよびRは、それぞれ独立して、置換基または保護基であり;
lは、1または2であり;
mは、0〜30の範囲の整数であり;
nは、0〜30の範囲の整数であり;
環Aは、前記環A上のC−2以外の1個の炭素原子が、窒素、酸素、硫黄で置換されてもよく、
前記環A内に、炭素−炭素二重結合または炭素−窒素二重結合を含んでもよく、
前記領域(Xc)および前記領域(X)は、それぞれ、−OR−または−OR−を介して、前記リンカー領域(Lx)に結合し、
前記領域(Yc)および前記領域(Y)は、それぞれ、−OR−または−OR−を介して、前記リンカー領域(Ly)に結合し、
ここで、RおよびRは、存在しても存在しなくてもよく、存在する場合、RおよびRは、それぞれ独立して、ヌクレオチド残基または前記構造(I)である。
【0110】
前記式(I)中、XおよびXは、例えば、それぞれ独立して、H、O、SまたはNHである。前記式(I)中において、XがHであるとは、Xが、Xの結合する炭素原子とともに、CH(メチレン基)を形成することを意味する。Xについても同様である。
【0111】
前記式(I)中、YおよびYは、それぞれ独立して、単結合、CH、NH、OまたはSである。
【0112】
前記式(I)中、環Aにおいて、lは、1または2である。l=1の場合、環Aは、5員環であり、例えば、前記ピロリジン骨格である。前記ピロリジン骨格は、例えば、プロリン骨格、プロリノール骨格等があげられ、これらの二価の構造が例示できる。l=2の場合、環Aは、6員環であり、例えば、前記ピペリジン骨格である。環Aは、環A上のC−2以外の1個の炭素原子が、窒素、酸素または硫黄で置換されてもよい。また、環Aは、環A内に、炭素−炭素二重結合または炭素−窒素二重結合を含んでもよい。環Aは、例えば、L型およびD型のいずれでもよい。
【0113】
前記式(I)中、Rは、環A上のC−3、C−4、C−5またはC−6に結合する水素原子または置換基である。Rが前記置換基の場合、置換基Rは、1でも複数でも、存在しなくてもよく、複数の場合、同一でも異なってもよい。
【0114】
置換基Rは、例えば、ハロゲン、OH、OR、NH、NHR、NR、SH、SRまたはオキソ基(=O)等である。
【0115】
およびRは、例えば、それぞれ独立して、置換基または保護基であり、同一でも異なってもよい。前記置換基は、例えば、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクリルアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、ヘテロシクリルアルケニル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリールアルキル、シリル、シリルオキシアルキル等があげられる。以下、同様である。置換基Rは、これらの列挙する置換基でもよい。
【0116】
前記保護基は、例えば、反応性の高い官能基を不活性に変換する官能基であり、公知の保護基等があげられる。前記保護基は、例えば、文献(J. F. W. McOmie, 「Protecting Groups in Organic Chemistry」 Prenum Press, London and New York, 1973)の記載を援用できる。前記保護基は、特に制限されず、例えば、tert−ブチルジメチルシリル基(TBDMS)、ビス(2−アセトキシエチルオキシ)メチル基(ACE)、トリイソプロピルシリルオキシメチル基(TOM)、1−(2−シアノエトキシ)エチル基(CEE)、2−シアノエトキシメチル基(CEM)およびトリルスルフォニルエトキシメチル基(TEM)、ジメトキシトリチル基(DMTr)等があげられる。RがORの場合、前記保護基は、特に制限されず、例えば、TBDMS基、ACE基、TOM基、CEE基、CEM基およびTEM基等があげられる。この他にも、シリル含有基もあげられる。以下、同様である。
【0117】
前記式(I)中、Lは、n個の原子からなるアルキレン鎖である。前記アルキレン炭素原子上の水素原子は、例えば、OH、OR、NH、NHR、NR、SH、もしくはSRで置換されてもよいし、置換されていなくてもよい。または、Lは、前記アルキレン鎖の1つ以上の炭素原子が酸素原子で置換されたポリエーテル鎖でもよい。前記ポリエーテル鎖は、例えば、ポリエチレングリコールである。なお、Yが、NH、OまたはSの場合、Yに結合するLの原子は炭素であり、ORに結合するLの原子は炭素であり、酸素原子同士は隣接しない。つまり、例えば、YがOの場合、その酸素原子とLの酸素原子は隣接せず、ORの酸素原子とLの酸素原子は隣接しない。
【0118】
前記式(I)中、Lは、m個の原子からなるアルキレン鎖である。前記アルキレン炭素原子上の水素原子は、例えば、OH、OR、NH、NHR、NR、SHもしくはSRで置換されてもよいし、置換されていなくてもよい。または、Lは、前記アルキレン鎖の1つ以上の炭素原子が酸素原子で置換されたポリエーテル鎖でもよい。なお、Yが、NH、OまたはSの場合、Yに結合するLの原子は炭素であり、ORに結合するLの原子は炭素であり、酸素原子同士は隣接しない。つまり、例えば、YがOの場合、その酸素原子とLの酸素原子は隣接せず、ORの酸素原子とLの酸素原子は隣接しない。
【0119】
のnおよびLのmは、特に制限されず、それぞれ、下限は、例えば、0であり、上限も、特に制限されない。nおよびmは、例えば、前記リンカー領域(Lx)または(Ly)の所望の長さに応じて、適宜設定できる。nおよびmは、例えば、製造コストおよび収率等の点から、それぞれ、0〜30が好ましく、より好ましくは0〜20であり、さらに好ましくは0〜15である。nとmは、同じでもよいし(n=m)、異なってもよい。n+mは、例えば、0〜30であり、好ましくは0〜20であり、より好ましくは0〜15である。
【0120】
、R、RおよびRは、例えば、それぞれ独立して、置換基または保護基である。前記置換基および前記保護基は、例えば、前述と同様である。
【0121】
前記式(I)において、水素原子は、例えば、それぞれ独立して、Cl、Br、FおよびI等のハロゲンに置換されてもよい。
【0122】
前記領域(Xc)および前記領域(X)は、前記リンカー領域(Lx)に、前記領域(Yc)および前記領域(Y)は、前記リンカー領域(Ly)に、例えば、それぞれ、−OR−または−OR−を介して、結合する。ここで、RおよびRは、存在しても存在しなくてもよい。RおよびRが存在する場合、RおよびRは、それぞれ独立して、ヌクレオチド残基または前記式(I)の構造である。Rおよび/またはRが前記ヌクレオチド残基の場合、前記リンカー領域(Lx)および前記リンカー領域(Ly)は、例えば、ヌクレオチド残基Rおよび/またはRを除く前記式(I)の構造からなる前記非ヌクレオチド残基と、前記ヌクレオチド残基とから形成される。Rおよび/またはRが前記式(I)の構造の場合、前記リンカー領域(Lx)および前記リンカー領域(Ly)は、例えば、前記式(I)の構造からなる前記非ヌクレオチド残基が、2つ以上連結された構造となる。前記式(I)の構造は、例えば、1個、2個、3個または4個含んでもよい。このように、前記構造を複数含む場合、前記(I)の構造は、例えば、直接連結されてもよいし、前記ヌクレオチド残基を介して結合してもよい。他方、RおよびRが存在しない場合、前記リンカー領域(Lx)および前記リンカー領域(Ly)は、例えば、前記式(I)の構造からなる前記非ヌクレオチド残基のみから形成される。
【0123】
前記領域(Xc)および前記領域(X)、ならびに、前記領域(Yc)および前記領域(Y)と、前記−OR−および−OR−との結合の組合せは、特に制限されず、例えば、以下のいずれかの条件があげられる。
条件(1)
前記領域(Xc)は、−OR−を介して、前記領域(X)は、−OR−を介して、前記式(I)の構造と結合し、
前記領域(Yc)は、−OR−を介して、前記領域(Y)は、−OR−を介して、前記式(I)の構造と結合する。
条件(2)
前記領域(Xc)は、−OR−を介して、前記領域(X)は、−OR−を介して、前記式(I)の構造と結合し、
前記領域(Yc)は、−OR−を介して、前記領域(Y)は、−OR−を介して、前記式(I)の構造と結合する。
条件(3)
前記領域(Xc)は、−OR−を介して、前記領域(X)は、−OR−を介して、前記式(I)の構造と結合し、
前記領域(Yc)は、−OR−を介して、前記領域(Y)は、−OR−を介して、前記式(I)の構造と結合する。
条件(4)
前記領域(Xc)は、−OR−を介して、前記領域(X)は、−OR−を介して、前記式(I)の構造と結合し、
前記領域(Yc)は、−OR−を介して、前記領域(Y)は、−OR−を介して、前記式(I)の構造と結合する。
【0124】
前記式(I)の構造は、例えば、下記式(I−1)〜式(I−9)が例示でき、下記式において、nおよびmは、前記式(I)と同じである。下記式において、qは、0〜10の整数である。
【化2】
【0125】
前記式(I−1)〜(I−9)において、n、mおよびqは、特に制限されず、前述の通りである。具体例として、前記式(I−1)において、n=8、前記(I−2)において、n=3、前記式(I−3)において、n=4または8、前記(I−4)において、n=7または8、前記式(I−5)において、n=3およびm=4、前記(I−6)において、n=8およびm=4、前記式(I−7)において、n=8およびm=4、前記(I−8)において、n=5およびm=4、前記式(I−9)において、q=1およびm=4があげられる。前記式(I−4)の一例(n=8)を、下記式(I−4a)に、前記式(I−8)の一例(n=5、m=4)を、下記式(I−8a)に示す。
【化3】
【0126】
前記核酸分子において、前記リンカー以外の領域の構成単位は、それぞれ、前記ヌクレオチド残基が好ましい。前記各領域は、例えば、下記(1)〜(3)の残基で構成される。
(1)非修飾ヌクレオチド残基
(2)修飾ヌクレオチド残基
(3)非修飾ヌクレオチド残基および修飾ヌクレオチド残基
【0127】
前記核酸分子において、前記リンカー領域の構成単位は、特に制限されず、例えば、前記ヌクレオチド残基および前記非ヌクレオチド残基があげられる。前記リンカー領域は、例えば、前記ヌクレオチド残基のみから構成されてもよいし、前記非ヌクレオチド残基のみから構成されてもよいし、前記ヌクレオチド残基と前記非ヌクレオチド残基から構成されてもよい。前記リンカー領域は、例えば、下記(1)〜(7)の残基で構成される。
(1)非修飾ヌクレオチド残基
(2)修飾ヌクレオチド残基
(3)非修飾ヌクレオチド残基および修飾ヌクレオチド残基
(4)非ヌクレオチド残基
(5)非ヌクレオチド残基および非修飾ヌクレオチド残基
(6)非ヌクレオチド残基および修飾ヌクレオチド残基
(7)非ヌクレオチド残基、非修飾ヌクレオチド残基および修飾ヌクレオチド残基
【0128】
前記核酸分子が、前記リンカー領域(Lx)および前記リンカー領域(Ly)の両方を有する場合、例えば、両方の構成単位が同じでもよいし、異なってもよい。具体例として、例えば、両方のリンカー領域の構成単位が前記ヌクレオチド残基である形態、両方のリンカー領域の構成単位が前記非ヌクレオチド残基である形態、一方の領域の構成単位が前記ヌクレオチド残基であり、他方のリンカー領域の構成単位が非ヌクレオチド残基である形態等があげられる。
【0129】
前記一本鎖核酸分子の具体例として、前記第2形態の核酸分子(以下、NKともいう)および前記第3形態の核酸分子(以下、PKともいう)を以下に示す。
【0130】
前記NKの具体例を、以下に示す。各NKは、5’末端から3’末端方向の配列で示し、5’側の四角で囲んだ領域が、前記リンカー(Lx)であり、3’側の四角で囲んだ領域が、前記リンカー(Lx)であり、下線部が、前記asヌクレオチドである。核配列において、前記リンカー(Lx)および前記リンカー(Ly)の配列は、特に制限されず、各領域内でアニーリングが生じない配列、つまり、ループを形成する配列であることが好ましい。各NKについて、前記リンカー(Lx)および前記リンカー(Ly)を任意のnで示した配列と、具体的な塩基で示した配列とを、例示する。nは、例えば、a、c、gまたはuである(以下、同様)。なお、これらは例示であって、本発明を限定するものではない。
【0131】
【表3】
【0132】
前記PKの具体例を、以下に示す。各PKは、5’末端から3’末端方向の配列で示し、5’側の四角で囲んだ領域が、前記リンカー(Lx)であり、3’側の四角で囲んだ領域が、前記リンカー(Lx)であり、下線部が、前記asヌクレオチドである。核配列において、前記リンカー(Lx)および前記リンカー(Ly)の構造は、特に制限されず、前述のような、ピロリジン骨格、ピペリジン骨格の構造があげられる。なお、これらは例示であって、本発明を限定するものではない。
【0133】
【表4】
【0134】
NK−0144(配列番号84)、NK−0145(配列番号86)、NK−0146(配列番号88)、NK−0147(配列番号90)およびNK−0148(配列番号92)、ならびにPK−0076(配列番号93)、PK−0077(配列番号94)、PK−0078(配列番号95)、PK−0079(配列番号96)、PK−0080(配列番号97)について、ステム形成とループ形成の状態を、以下に示す。下記配列において、矢印は、5’末端と3’末端とが未結合であることを示し、5’は、5’末端を示す。また、下記配列において、下線部は、前記asヌクレオチドである。
【0135】
【表5】
【0136】
前記NKおよびPKにおける前記asヌクレオチドの種類を以下に示す。
【0137】
【表6】
【0138】
本発明の核酸分子は、例えば、前記ヌクレオチド残基のみから構成される分子、前記ヌクレオチド残基の他に前記非ヌクレオチド残基を含む分子等があげられる。本発明の核酸分子において、前記ヌクレオチド残基は、前述のように、例えば、前記非修飾ヌクレオチド残基のみでもよいし、前記修飾ヌクレオチド残基のみでもよいし、前記非修飾ヌクレオチド残基および前記修飾ヌクレオチド残基の両方でもよい。前記核酸分子が、前記非修飾ヌクレオチド残基と前記修飾ヌクレオチド残基を含む場合、前記修飾ヌクレオチド残基の個数は、特に制限されず、例えば、「1もしくは数個」であり、具体的には、例えば、1〜5個、好ましくは1〜4個、より好ましくは1〜3個、最も好ましくは1または2個である。本発明の核酸分子が、前記非ヌクレオチド残基を含む場合、前記非ヌクレオチド残基の個数は、特に制限されず、例えば、「1もしくは数個」であり、具体的には、例えば、1〜8個、1〜6個、1〜4個、1、2または3個である。
【0139】
前記核酸分子が、例えば、前記非修飾リボヌクレオチド残基の他に前記修飾リボヌクレオチド残基を含む場合、前記修飾リボヌクレオチド残基の個数は、特に制限されず、例えば、「1もしくは数個」であり、具体的には、例えば、1〜5個、好ましくは1〜4個、より好ましくは1〜3個、最も好ましくは1または2個である。前記非修飾リボヌクレオチド残基に対する前記修飾リボヌクレオチド残基は、例えば、リボース残基がデオキシリボース残基に置換された前記デオキシリボヌクレオチド残基でもよい。前記核酸分子が、例えば、前記非修飾リボヌクレオチド残基の他に前記デオキシリボヌクレオチド残基を含む場合、前記デオキシリボヌクレオチド残基の個数は、特に制限されず、例えば、「1もしくは数個」であり、具体的には、例えば、1〜5個、好ましくは1〜4個、より好ましくは1〜3個、最も好ましくは1または2個である。
【0140】
前記ヌクレオチド残基は、例えば、構成要素として、糖、塩基およびリン酸を含む。前記ヌクレオチド残基は、前述のように、例えば、リボヌクレオチド残基およびデオキシリボヌクレオチド残基があげられる。前記リボヌクレオチド残基は、例えば、糖としてリボース残基を有し、塩基として、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)およびウラシル(U)を有し、前記デオキシリボース残基は、例えば、糖としてデオキシリボース残基を有し、塩基として、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)およびチミン(T)を有する。
【0141】
前記ヌクレオチド残基は、未修飾ヌクレオチド残基および修飾ヌクレオチド残基があげられる。前記未修飾ヌクレオチド残基は、前記各構成要素が、例えば、天然に存在するものと同一または実質的に同一であり、好ましくは、人体において天然に存在するものと同一または実質的に同一である。
【0142】
前記修飾ヌクレオチド残基は、例えば、前記未修飾ヌクレオチド残基を修飾したヌクレオチド残基である。前記修飾ヌクレオチド残基は、例えば、前記未修飾ヌクレオチド残基の構成要素のいずれが修飾されてもよい。本発明において、「修飾」は、例えば、前記構成要素の置換、付加および/または欠失、前記構成要素における原子および/または官能基の置換、付加および/または欠失であり、「改変」ということができる。前記修飾ヌクレオチド残基は、例えば、天然に存在するヌクレオチド残基、人工的に修飾したヌクレオチド残基等があげられる。前記天然由来の修飾ヌクレオチド残基は、例えば、リンバックら(Limbach et al.、1994、Summary:the modified nucleosides of RNA、Nucleic Acids Res.22:2183〜2196)を参照できる。また、前記修飾ヌクレオチド残基は、例えば、前記ヌクレオチドの代替物の残基でもよい。
【0143】
前記ヌクレオチド残基の修飾は、例えば、リボース−リン酸骨格(以下、リボリン酸骨格)の修飾があげられる。
【0144】
前記リボリン酸骨格において、例えば、リボース残基を修飾できる。前記リボース残基は、例えば、2’位炭素を修飾でき、具体的には、例えば、2’位炭素に結合する水酸基を、水素またはフルオロ等のハロゲンに置換できる。前記2’位炭素の水酸基を水素に置換することで、リボース残基をデオキシリボースに置換できる。前記リボース残基は、例えば、立体異性体に置換でき、例えば、アラビノース残基に置換してもよい。
【0145】
前記リボリン酸骨格は、例えば、非リボース残基および/または非リン酸を有する非リボリン酸骨格に置換してもよい。前記非リボリン酸骨格は、例えば、前記リボリン酸骨格の非荷電体があげられる。前記非リボリン酸骨格に置換された、前記ヌクレオチドの代替物は、例えば、モルホリノ、シクロブチル、ピロリジン等があげられる。前記代替物は、この他に、例えば、人工核酸モノマー残基があげられる。具体例として、例えば、PNA(ペプチド核酸)、LNA(Locked Nucleic Acid)、ENA(2’−O,4’−C−Ethylenebridged Nucleic Acid)等があげられ、好ましくはPNAである。
【0146】
前記リボリン酸骨格において、例えば、リン酸基を修飾できる。前記リボリン酸骨格において、糖残基に最も隣接するリン酸基は、αリン酸基と呼ばれる。前記αリン酸基は、負に荷電し、その電荷は、糖残基に非結合の2つの酸素原子にわたって、均一に分布している。前記αリン酸基における4つの酸素原子のうち、ヌクレオチド残基間のホスホジエステル結合において、糖残基と非結合である2つの酸素原子は、以下、「非結合(non−linking)酸素」ともいう。他方、前記ヌクレオチド残基間のホスホジエステル結合において、糖残基と結合している2つの酸素原子は、以下、「結合(linking)酸素」という。前記αリン酸基は、例えば、非荷電となる修飾、または、前記非結合酸素における電荷分布が非対称型となる修飾を行うことが好ましい。
【0147】
前記リン酸基は、例えば、前記非結合酸素を置換してもよい。前記酸素は、例えば、S(硫黄)、Se(セレン)、B(ホウ素)、C(炭素)、H(水素)、N(窒素)およびOR(Rは、アルキル基またはアリール基)のいずれかの原子で置換でき、好ましくは、Sで置換される。前記非結合酸素は、例えば、両方が置換されていることが好ましく、より好ましくは、両方がSで置換される。前記修飾リン酸基は、例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレネート、ボラノホスフェート、ボラノホスフェートエステル、ホスホネート水素、ホスホロアミデート、アルキルまたはアリールホスホネート、およびホスホトリエステル等があげられ、中でも、前記2つの非結合酸素が両方ともSで置換されているホスホロジチオエートが好ましい。
【0148】
前記リン酸基は、例えば、前記結合酸素を置換してもよい。前記酸素は、例えば、S(硫黄)、C(炭素)およびN(窒素)のいずれかの原子で置換でき、前記修飾リン酸基は、例えば、Nで置換した架橋ホスホロアミデート、Sで置換した架橋ホスホロチオエート、およびCで置換した架橋メチレンホスホネート等があげられる。前記結合酸素の置換は、例えば、本発明の核酸分子の5’末端ヌクレオチド残基および3’末端ヌクレオチド残基の少なくとも一方において行うことが好ましく、5’側の場合、Cによる置換が好ましく、3’側の場合、Nによる置換が好ましい。
【0149】
前記リン酸基は、例えば、前記リン非含有のリンカーに置換してもよい。前記リンカーは、例えば、シロキサン、カーボネート、カルボキシメチル、カルバメート、アミド、チオエーテル、エチレンオキサイドリンカー、スルホネート、スルホンアミド、チオホルムアセタール、ホルムアセタール、オキシム、メチレンイミノ、メチレンメチルイミノ、メチレンヒドラゾ、メチレンジメチルヒドラゾ、およびメチレンオキシメチルイミノ等を含み、好ましくは、メチレンカルボニルアミノ基およびメチレンメチルイミノ基を含む。
【0150】
本発明の核酸分子は、例えば、3’末端および5’末端の少なくとも一方のヌクレオチド残基が修飾されてもよい。前記修飾は、例えば、3’末端および5’末端のいずれか一方でもよいし、両方でもよい。前記修飾は、例えば、前述の通りであり、好ましくは、末端のリン酸基に行うことが好ましい。前記リン酸基は、例えば、全体を修飾してもよいし、前記リン酸基における1つ以上の原子を修飾してもよい。前者の場合、例えば、リン酸基全体の置換でもよいし、欠失でもよい。
【0151】
前記末端のヌクレオチド残基の修飾は、例えば、他の分子の付加があげられる。前記他の分子は、例えば、後述するような標識物質、保護基等の機能性分子があげられる。前記保護基は、例えば、S(硫黄)、Si(ケイ素)、B(ホウ素)、エステル含有基等があげられる。前記標識物質等の機能性分子は、例えば、本発明の核酸分子の検出等に利用できる。
【0152】
前記他の分子は、例えば、前記ヌクレオチド残基のリン酸基に付加してもよいし、スペーサーを介して、前記リン酸基または前記糖残基に付加してもよい。前記スペーサーの末端原子は、例えば、前記リン酸基の前記結合酸素、または、糖残基のO、N、SもしくはCに、付加または置換できる。前記糖残基の結合部位は、例えば、3’位のCもしくは5’位のC、またはこれらに結合する原子が好ましい。前記スペーサーは、例えば、前記PNA等のヌクレオチド代替物の末端原子に、付加または置換することもできる。
【0153】
前記スペーサーは、特に制限されず、例えば、−(CH−、−(CHN−、−(CHO−、−(CHS−、O(CHCHO)CHCHOH、無塩基糖、アミド、カルボキシ、アミン、オキシアミン、オキシイミン、チオエーテル、ジスルフィド、チオ尿素、スルホンアミド、およびモルホリノ等、ならびに、ビオチン試薬およびフルオレセイン試薬等を含んでもよい。前記式において、nは、正の整数であり、n=3または6が好ましい。
【0154】
前記末端に付加する分子は、これらの他に、例えば、色素、インターカレート剤(例えば、アクリジン)、架橋剤(例えば、ソラレン、マイトマイシンC)、ポルフィリン(TPPC4、テキサフィリン、サッフィリン)、多環式芳香族炭化水素(例えば、フェナジン、ジヒドロフェナジン)、人工エンドヌクレアーゼ(例えば、EDTA)、親油性担体(例えば、コレステロール、コール酸、アダマンタン酢酸、1−ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3−ビス−O(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3−プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ミリスチン酸、O3−(オレオイル)リトコール酸、O3−(オレオイル)コール酸、ジメトキシトリチル、またはフェノキサジン)およびペプチド複合体(例えば、アンテナペディアペプチド、Tatペプチド)、アルキル化剤、リン酸、アミノ、メルカプト、PEG(例えば、PEG−40K)、MPEG、[MPEG]、ポリアミノ、アルキル、置換アルキル、放射線標識マーカー、酵素、ハプテン(例えば、ビオチン)、輸送/吸収促進剤(例えば、アスピリン、ビタミンE、葉酸)、合成リボヌクレアーゼ(例えば、イミダゾール、ビスイミダゾール、ヒスタミン、イミダゾールクラスター、アクリジン−イミダゾール複合体、テトラアザマクロ環のEu3+複合体)等があげられる。
【0155】
本発明の核酸分子は、前記5’末端が、例えば、リン酸基またはリン酸基アナログで修飾されてもよい。前記リン酸基は、例えば、5’一リン酸((HO)2(O)P-O-5’)、5’二リン酸((HO)2(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’)、5’三リン酸((HO)2(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’)、5’−グアノシンキャップ(7−メチル化または非メチル化、7m-G-O-5’-(HO)(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’)、5’−アデノシンキャップ(Appp)、任意の修飾または非修飾ヌクレオチドキャップ構造(N-O-5’-(HO)(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’)、5’一チオリン酸(ホスホロチオエート:(HO)2(S)P-O-5’)、5’一ジチオリン酸(ホスホロジチオエート:(HO)(HS)(S)P-O-5’)、5’−ホスホロチオール酸((HO)2(O)P-S-5’)、硫黄置換の一リン酸、二リン酸および三リン酸(例えば、5’−α−チオ三リン酸、5’−γ−チオ三リン酸等)、5’−ホスホルアミデート((HO)2(O)P-NH-5’、(HO)(NH2)(O)P-O-5’)、5’−アルキルホスホン酸(例えば、RP(OH)(O)-O-5’、(OH)2(O)P-5’-CH2、Rはアルキル(例えば、メチル、エチル、イソプロピル、プロピル等))、5’−アルキルエーテルホスホン酸(例えば、RP(OH)(O)-O-5’、Rはアルキルエーテル(例えば、メトキシメチル、エトキシメチル等))等があげられる。
【0156】
前記ヌクレオチド残基において、前記塩基は、特に制限されない。前記塩基は、例えば、天然の塩基でもよいし、非天然の塩基でもよい。前記塩基は、例えば、天然由来でもよいし、合成品でもよい。前記塩基は、例えば、一般的な塩基、その修飾アナログ等が使用できる。
【0157】
前記塩基は、例えば、アデニンおよびグアニン等のプリン塩基、シトシン、ウラシルおよびチミン等のピリミジン塩基があげられる。前記塩基は、この他に、イノシン、チミン、キサンチン、ヒポキサンチン、ヌバラリン(nubularine)、イソグアニシン(isoguanisine)、ツベルシジン(tubercidine)等があげられる。前記塩基は、例えば、2−アミノアデニン、6−メチル化プリン等のアルキル誘導体;2−プロピル化プリン等のアルキル誘導体;5−ハロウラシルおよび5−ハロシトシン;5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシン;6−アゾウラシル、6−アゾシトシンおよび6−アゾチミン;5−ウラシル(プソイドウラシル)、4−チオウラシル、5−ハロウラシル、5−(2−アミノプロピル)ウラシル、5−アミノアリルウラシル;8−ハロ化、アミノ化、チオール化、チオアルキル化、ヒドロキシル化および他の8−置換プリン;5−トリフルオロメチル化および他の5−置換ピリミジン;7−メチルグアニン;5−置換ピリミジン;6−アザピリミジン;N−2、N−6、およびO−6置換プリン(2−アミノプロピルアデニンを含む);5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシン;ジヒドロウラシル;3−デアザ−5−アザシトシン;2−アミノプリン;5−アルキルウラシル;7−アルキルグアニン;5−アルキルシトシン;7−デアザアデニン;N6,N6−ジメチルアデニン;2,6−ジアミノプリン;5−アミノ−アリル−ウラシル;N3−メチルウラシル;置換1,2,4−トリアゾール;2−ピリジノン;5−ニトロインドール;3−ニトロピロール;5−メトキシウラシル;ウラシル−5−オキシ酢酸;5−メトキシカルボニルメチルウラシル;5−メチル−2−チオウラシル;5−メトキシカルボニルメチル−2−チオウラシル;5−メチルアミノメチル−2−チオウラシル;3−(3−アミノ−3−カルボキシプロピル)ウラシル;3−メチルシトシン;5−メチルシトシン;N4−アセチルシトシン;2−チオシトシン;N6−メチルアデニン;N6−イソペンチルアデニン;2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン;N−メチルグアニン;O−アルキル化塩基等があげられる。また、プリンおよびピリミジンは、例えば、米国特許第3,687,808号、「Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering」、858〜859頁、クロシュビッツ ジェー アイ(Kroschwitz J.I.)編、John Wiley & Sons、1990、およびイングリッシュら(Englischら)、Angewandte Chemie、International Edition、1991、30巻、p.613に開示されるものが含まれる。
【0158】
前記修飾ヌクレオチド残基は、これらの他に、例えば、塩基を欠失する残基、すなわち、無塩基のリボリン酸骨格を含んでもよい。また、前記修飾ヌクレオチド残基は、例えば、米国仮出願第60/465,665号(出願日:2003年4月25日)、および国際出願第PCT/US04/07070号(出願日:2004年3月8日)に記載される残基が使用でき、本発明は、これらの文献を援用できる。
【0159】
本発明の核酸分子は、例えば、標識物質を含み、前記標識物質で標識化されてもよい。前記標識物質は、特に制限されず、例えば、蛍光物質、色素、同位体等があげられる。前記標識物質は、例えば、ピレン、TAMRA、フルオレセイン、Cy3色素、Cy5色素等の蛍光団があげられ、前記色素は、例えば、Alexa488等のAlexa色素等があげられる。前記同位体は、例えば、安定同位体および放射性同位体があげられ、好ましくは安定同位体である。前記安定同位体は、例えば、被ばくの危険性が少なく、専用の施設も不要であることから取り扱い性に優れ、また、コストも低減できる。また、前記安定同位体は、例えば、標識した化合物の物性変化がなく、トレーサーとしての性質にも優れる。前記安定同位体は、特に制限されず、例えば、H、13C、15N、17O、18O、33S、34Sおよび36Sがあげられる。
【0160】
本発明の核酸分子は、前述のように、ペリオスチン遺伝子の発現抑制ができる。このため、本発明の核酸分子は、例えば、ペリオスチン遺伝子の発現が原因となる眼疾患の治療剤として使用できる。本発明において、「治療」は、例えば、前記眼疾患の予防、前記眼疾患の改善、前記眼疾患の予後の改善の意味を含み、いずれでもよい。
【0161】
前記眼疾患は、特に制限されず、網膜症、黄斑変性症、翼状片、結膜炎、眼内血管新生、眼手術後の線維瘢痕等があげられ、前記網膜症は、例えば、増殖性糖尿病網膜症、増殖硝子体網膜症等の増殖性網膜症等があげられる。
【0162】
本発明の核酸分子の使用方法は、特に制限されず、例えば、前記投与対象に、前記核酸分子を投与すればよい。
【0163】
前記投与対象は、例えば、細胞、組織または器官があげられる。前記投与対象は、例えば、ヒト、ヒトを除く非ヒト動物あげられる。前記非ヒト動物は、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、イヌ等の非ヒト哺乳類動物等があげられる。前記投与は、例えば、in vivoでもin vitroでもよい。
【0164】
前記細胞は、特に制限されず、例えば、ヒトおよびマウス等の、ARPE−19等の網膜色素上皮細胞、およびNIH3T3等の線維芽細胞等の各種培養細胞、ES細胞、造血幹細胞等の幹細胞、初代培養細胞等の生体から単離した細胞等があげられる。前記細胞は、例えば、ヒト受精卵、ならびに、ヒト胚およびヒト個体内の細胞を除く。
【0165】
本発明の核酸分子に関しては、後述する本発明の組成物、眼疾患用医薬、ペリオスチン遺伝子の発現抑制方法および眼疾患の治療方法等の記載を参照できる。
【0166】
本発明の核酸分子は、前述のように、ペリオスチン遺伝子の発現を抑制できることから、例えば、眼疾患用医薬として有用である。
【0167】
<発現ベクター>
本発明の発現ベクターは、本発明の核酸分子をコードするDNAを含むことを特徴とする。本発明の発現ベクターは、前記DNAを含むことが特徴であり、その他の構成は、何ら制限されない。本発明の発現ベクターは、例えば、ベクターに発現可能なように前記DNAが挿入されている。前記DNAを挿入するベクターは、特に制限されず、例えば、一般的なベクターが使用でき、ウイルスベクターおよび非ウイルスベクター等があげられる。前記非ウイルスベクターは、例えば、プラスミドベクターがあげられる。
【0168】
本発明のベクターによれば、例えば、in vivoまたはin vitroでの投与によって、投与された対象内で、本発明の発現抑制核酸分子を発現できる。
【0169】
<組成物>
本発明の組成物は、本発明の発現抑制核酸分子を含むことを特徴とする。本発明の組成物は、前記本発明の発現抑制核酸分子を含むことが特徴であり、その他の構成は、何ら制限されない。
【0170】
本発明の組成物によれば、ペリオスチン遺伝子の発現を抑制できるため、本発明の組成物は、例えば、抑制用試薬ということもできる。本発明によれば、例えば、ペリオスチン遺伝子が存在する対象、特に、ペリオスチン遺伝子の発現が相対的に高い対象、相対的に高くなると予測される対象に投与することで、ペリオスチン遺伝子の発現を抑制できる。投与対象は、例えば、前述の通りである。
【0171】
また、本発明の発現抑制核酸分子は、前述のように、眼疾患の治療に使用できることから、本発明の組成物は、眼疾患用の薬学的組成物、眼疾患の治療薬、眼疾患用医薬ともいえる。
【0172】
本発明によれば、例えば、眼疾患の患者に投与することで、ペリオスチン遺伝子の発現を抑制し、前記眼疾患を治療できる。前記眼疾患は、例えば、前述の通りであって、増殖糖尿病網膜症、加齢黄斑変性症等の黄斑変性症等があげられる。本発明において、「治療」は、前述のように、例えば、前記眼疾患の予防、前記眼疾患の改善、前記眼疾患の予後の改善の意味を含み、いずれでもよい。
【0173】
前記投与方法は、特に制限されず、例えば、投与対象に応じて適宜決定できる。前記投与対象が、生体から分離された細胞等の場合、例えば、トランスフェクション試薬を使用する方法、エレクトロポレーション法、ナノバブル法等があげられる。前記投与対象が生体の場合、例えば、非経口投与、経口投与等があげられる。非経口投与は、例えば、局所投与、静脈内投与等があげられる。前記眼疾患に対する投与部位は、例えば、眼、血管等があげられる。眼へに直接投与する場合、その投与方法は、特に制限されず、例えば、点眼、点入、硝子体内注射、結膜下注射、テノン嚢下注射、前房内投与等があげられる。本発明の組成物の投与条件、例えば、投与回数、投与量等は、特に制限されない。
【0174】
本発明の組成物の形態は、特に制限されず、例えば、注射液、点滴静注液、点眼液、眼軟膏等である。
【0175】
本発明の組成物において、前記発現抑制核酸分子の配合量は、特に制限されない。前記発現抑制核酸分子の投与条件は、特に制限されない。硝子体注射の場合、例えば、ヒト成人男子の眼球1個に対する1回あたりの投与量(合計)は、例えば、0.01〜10mgであり、好ましくは0.1〜1mgであり、投与回数は、例えば、2週間〜8週間に1回である。本発明の組成物において、前記核酸分子の配合量は、例示した投与条件を実現できるような濃度で含まれていることが好ましい。
【0176】
本発明の組成物は、例えば、本発明の発現抑制核酸分子のみを含んでもよいし、さらにその他の添加物を含んでもよい。前記添加物の配合量は、前記発現抑制核酸分子の機能を妨げるものでなければ、特に制限されない。前記添加物は、特に制限されず、例えば、薬学的に許容された添加物が好ましい。前記添加物の種類は、特に制限されず、例えば、投与対象の種類に応じて適宜選択できる。
【0177】
本発明の組成物において、前記添加物は、例えば、前記発現抑制核酸分子と複合体を形成するものが好ましい。この場合、前記添加物は、例えば、複合化剤ともいえる。本発明の組成物において、前記発現抑制核酸分子を複合体とすることによって、例えば、前記発現抑制核酸分子を効率よくデリバリーできる。前記発現抑制核酸分子と前記複合化剤との結合は、特に制限されず、例えば、非共有結合があげられる。前記複合体は、例えば、包接複合体があげられる。
【0178】
前記複合化剤は、特に制限されず、ポリマー、シクロデキストリン、アダマンチン等があげられる。前記シクロデキストリンは、例えば、線状シクロデキストリンコポリマー、線状酸化シクロデキストリンコポリマー等があげられる。
【0179】
前記添加剤は、この他に、例えば、担体、標的細胞への結合物質、縮合剤、融合剤、賦形剤、基剤、安定化剤、保存剤等があげられる。
【0180】
<ペリオスチン遺伝子の発現抑制方法>
本発明の抑制方法は、前述のように、ペリオスチン遺伝子の発現を抑制する方法であって、前記本発明の発現抑制核酸分子、前記本発明の組成物または前記眼疾患用医薬を使用することを特徴とする。本発明の抑制方法は、本発明の発現抑制核酸分子を使用することが特徴であって、その他の工程および条件は、何ら制限されない。
【0181】
本発明の抑制方法は、例えば、ペリオスチン遺伝子が存在する対象、特に、ペリオスチン遺伝子の発現が相対的に高い対象または相対的に高くなると予測される対象に、前記発現抑制核酸分子を投与する工程を含む。前記投与工程により、例えば、前記投与対象に前記発現抑制核酸分子を接触させる。前記投与対象は、例えば、前述のような、細胞、組織または器官があげられる。前記投与対象は、例えば、前述と同様に、ヒト、前記非ヒト動物があげられる。前記投与は、例えば、in vivoでもin vitroでもよい。
【0182】
本発明の抑制方法は、例えば、前記発現抑制核酸分子を単独で投与してもよいし、前記発現抑制核酸分子を含む前記本発明の組成物を投与してもよい。前記投与方法は、特に制限されず、例えば、投与対象の種類に応じて適宜選択でき、前述の記載が援用できる。
【0183】
<治療方法>
本発明の眼疾患の治療方法は、前述のように、本発明の発現抑制核酸分子を、患者に投与する工程を含むことを特徴とする。本発明の治療方法は、眼疾患の治療に、本発明の発現抑制核酸分子を使用することが特徴であって、その他の工程および条件は、何ら制限されない。本発明が対象とする眼疾患は、例えば、前述の通りであって、増殖糖尿病網膜症等の網膜症、加齢黄斑変性症等の黄斑変性症等があげられる。
【0184】
本発明の治療方法は、例えば、前記本発明の抑制方法等を援用できる。前記投与方法は、特に制限されず、例えば、前述のように、非経口投与および経口投与のいずれでもよい。
【0185】
<発現抑制核酸分子の使用>
本発明の発現抑制核酸分子は、ペリオスチン遺伝子の発現またはペリオスチンタンパク質の機能の抑制のための核酸分子、または、眼疾患の治療のための核酸分子である。また、本発明の発現抑制核酸分子は、ペリオスチン遺伝子の発現抑制剤または眼疾患用医薬の製造のための核酸分子である。
【0186】
以下、実施例等により、本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0187】
(実施例1)
siRNAを合成し、in vitroにおけるヒトペリオスチン遺伝子の発現抑制を確認した。
【0188】
(1)siRNA
実施例のsiRNAとして、下記配列の二本鎖RNAを合成した。各二本鎖RNAにおいて、上の配列がセンス鎖、下の配列がアンチセンス鎖とした。センス鎖の3’末端のオーバーハングおよびアンチセンス鎖の3’末端のオーバーハングは、いずれも、n=2であり、TTとした。
【0189】
【表7】
【0190】
また、ネガティブコントロールとして、アンチセンス鎖の塩基配列をスクランブルした、下記二本鎖RNAを使用した。
【0191】
【表8】
【0192】
(2)ペリオスチン遺伝子の発現量の測定
細胞は、ヒト網膜色素上皮細胞株ARPE−19(American Type Culture Collection:ATCC)を使用した。培養条件は、37℃、5%COとした。培地は、10%FBSを含むDMEM(Invitrogen)を使用した。
【0193】
まず、細胞を、前記培地中で培養し、その培養液を、24穴プレートに、400μLずつ5×10細胞/ウェルとなるように分注し、さらに、前記ウェル中の細胞を24時間培養した後、トランスフェクション試薬RNAiMAX(Invitrogen)を用いて、添付プロトコールに従って、前記二本鎖RNAをトランスフェクションした。具体的には、前記ウェルあたり、前記二本鎖RNAと前記トランスフェクション試薬との複合体100μlと、前記細胞の懸濁液400μl(5×10細胞)とを添加し、全量を500μl、前記二本鎖RNAの最終濃度を10nmol/Lとした。
【0194】
トランスフェクション後、前記ウェル中の細胞を24時間培養した。そして、RNeasy Mini Kit(Qiagen)を用い、添付のプロトコールに従って、RNAを回収した。次に、逆転写酵素(商品名SuperScript III、Invitrogen)を用い、添付のプロトコールに従って、前記RNAからcDNAを合成した。そして、得られたcDNAを鋳型としてPCRを行い、ペリオスチン遺伝子の発現量および内部標準であるβ−アクチン遺伝子の発現量を測定した。前記ペリオスチン遺伝子の発現量は、前記β−アクチン遺伝子の発現量により補正した。前記PCRにおいて、ペリオスチン遺伝子およびβ−アクチンの増幅には、それぞれ以下のプライマーセットを使用した。発現量は、二本鎖RNAを添加していない非添加細胞群を1として、相対的に比較した。
【0195】
ペリオスチン遺伝子増幅用プライマーセット
5’-TGCCCAGCAGTTTTGCCCAT-3’ (配列番号79)
5’-CGTTGCTCTCCAAACCTCTA-3’ (配列番号80)
β−アクチン遺伝子増幅用プライマーセット
5’-GCCACGGCTGCTTCCAGCTCCTC-3’ (配列番号81)
5’-AGGTCTTTGCGGATGTCCACGTCAC-3’(配列番号82)
【0196】
なお、コントロール1として、前記二本鎖RNAおよび前記トランスフェクション試薬を添加していない細胞についても、遺伝子発現量を測定した(−)。また、コントロール2として、トランスフェクションにおいて、前記二本鎖RNAを未添加とし、前記トランスフェクション試薬のみを添加した細胞についても、遺伝子発現量を測定した(mock)。
【0197】
(3)結果
これらの結果を、図5に示す。図5は、ペリオスチン遺伝子発現量の相対値を示すグラフであり、縦軸は、相対遺伝子発現量である。図5に示すように、前記実施例の二本鎖RNAは、コントロール(−およびmock)およびネガティブコントロールよりも低い値を示したことから、いずれも発現抑制活性を有することが確認できた。中でも、NI−0079、NI-0082、NI−0083、NI−0084、NI−0085は、極めて強い発現抑制活性を示した。
【0198】
(実施例2)
脈絡膜新生血管(choroidal neovascularization:CNV)のモデルマウスを使用して、本発明の核酸分子により、新生血管および繊維性増殖組織の形成が抑制されることを確認した。
【0199】
(1)核酸分子
実施例のsiRNAとして、前記実施例1のNI−0079を使用した。また、実施例の一本鎖核酸分子として、以下に示すNK−0144およびPK−0076を使用した。NK−0144およびPK−0076において、前記siRNAのアンチセンス鎖と共通する配列番号1のas1ヌクレオチドを下線で示す。
【表9】
【0200】
前記PK−0076において、リンカー(Lx)とリンカー(Ly)の構造は、前記(I−8a)に示す下記構造とした。
【化4】
【0201】
ネガティブコントロールは、前記実施例1と同じNI−0000を使用した。
【0202】
(2)モデルマウスの作成
ケタラール(登録商標)注射液(50mg/mL)とセラクタール(登録商標)2%注射液とを、体積比9:1で混合し、この混合液を、カルシウムおよびマグネシウム未添加のPBS(−)で5倍希釈した。得られた麻酔用希釈液を、170μL/匹の条件でマウス(C57BL/6JJcl、オス、6−8週齢、日本クレア)の腹腔に、シリンジで注射し、全身麻酔した。前記マウスに、ミドリン(登録商標)P 1滴を点眼し、散瞳し、続いて、コンタクトレンズ用の角膜装着補助剤であるスコピゾル眼科溶液 1滴を点眼した。そして、麻酔下のマウスの眼に、下記条件でレーザーを照射した。
機器
ZEISS 30 SL−M
設定
power:100mW
spot size:75μm
duration:0.1sec、4shots/眼
【0203】
(3)核酸分子の投与
レーザー照射を行った日および照射7日目のマウスに、ミドリン(登録商標)P 1滴を点眼し、散瞳し、続いて、前記麻酔用希釈液を、前述と同様の条件で前記マウスに注射し、全身麻酔した。そして、0.1nmol/μLに調製した前記核酸分子を、0.1nmol/eyeとなるように、前記マウスの硝子体内に注入した。前記注入は、33G針付きハミルトンシリンジ(♯701)を使用し、手術用顕微鏡で眼球内を観察しながら行った。そして、前記マウスに、抗菌点眼薬クラビット点眼液(商品名)0.5% 1滴を点眼した。
【0204】
(4)薬効評価
前記核酸分子を投与した前記マウスを、遮光条件下、所定期間(21日間)飼育した後、過麻酔により安楽死させた。前記マウスから、眼球を摘出し、4%PFA(パラホルムアルデヒド)で1時間、固定処理した。固定した眼球から、脈絡膜を採取し、前記PBS(−)に浸漬した。そして、前記脈絡膜に対して、常法にしたがって、Flat Mount免疫染色を行い、イソレクチンB4およびコラーゲンI型を染色した。蛍光顕微鏡を用いて、イソレクチンB4の染色による新生血管の形成確認およびコラーゲンI型の染色による線維性増殖組織の形成確認を行い、共焦点レーザー顕微鏡を用いて、立体構築画像から、新生血管および線維性増殖組織の体積を定量化した。定量化には、定量化ソフトとしてNIS−Elemenを使用した。
【0205】
これらの結果を、図6に示す。図6において、(A)は、繊維性増殖組織の体積を示すグラフであり、(B)は、新生血管の体積を示すグラフであり、それぞれ、縦軸は、体積(μm)を示す。
【0206】
図6に示すように、NI−0000のコントロールと比較して、実施例のNI−0079、NK−0144およびPK−0076は、いずれも繊維性増殖組織の体積および新生血管の体積が減少し、実施例の中でも、NK−0144がより優れ、PK−0076がさらに優れた結果を示した。これらの結果から、実施例の核酸分子によれば、繊維性増殖組織および新生血管の増加を抑制できることがわかった。
【0207】
(実施例3)
siRNAを合成し、in vitroにおけるヒトペリオスチン遺伝子の発現抑制を確認した。
【0208】
実施例のsiRNAとして、下記配列の二本鎖RNAを合成した。各二本鎖RNAにおいて、上の配列がセンス鎖、下の配列がアンチセンス鎖とした。センス鎖の3’末端のオーバーハングおよびアンチセンス鎖の3’末端のオーバーハングは、いずれも、n=2とした。そして、これらのsiRNAを使用した以外は、前記実施例1と同様にして、相対遺伝子発現量を測定した。
【0209】
【表10】
【0210】
これらの結果を、図7に示す。図7は、ペリオスチン遺伝子発現量の相対値を示すグラフであり、縦軸は、相対遺伝子発現量である。図7に示すように、前記実施例の二本鎖RNAは、コントロール(−およびmock)およびネガティブコントロールよりも低い値を示したことから、いずれも発現抑制活性を有することが確認できた。
【0211】
(実施例4)
一本鎖核酸分子を合成し、in vitroにおけるヒトペリオスチン遺伝子の発現抑制を確認した。
【0212】
実施例の一本鎖核酸分子として、下記配列の一本鎖RNA(NKおよびPK)を合成した。下記配列において、前記as1ヌクレオチドを下線で示す。また、一本鎖RNAである各PKにおいて、リンカー(Lx)およびリンカー(Ly)の構造は、それぞれ、前記実施例1に記載した前記(I−8a)の構造とした。そして、これらの一本鎖核酸分子を使用した以外は、前記実施例1と同様にして、相対遺伝子発現量を測定した。
【0213】
【表11】
【0214】
これらの結果を、図8および9に示す。図8は、一本鎖RNA(NK)を使用した場合におけるペリオスチン遺伝子発現量の相対値を示すグラフであり、図9は、一本鎖RNA(PK)を使用した場合におけるペリオスチン遺伝子発現量の相対値を示すグラフであり、両図において、縦軸は、相対遺伝子発現量である。図8および図9に示すように、前記実施例の一本鎖RNAは、いずれも、コントロール(−およびmock)およびネガティブコントロールよりも低い値を示したことから、いずれも発現抑制活性を有することが確認できた。
【0215】
(実施例5)
siRNAを合成し、in vitroにおけるマウスペリオスチン遺伝子の発現抑制を確認した。
【0216】
実施例のsiRNAとして、NI−0079〜NI−0088およびNI−0094〜NI−0099を使用した。そして、細胞として、マウス線維芽細胞株NIH3T3を使用し、4×10細胞/ウェルとなるように培養に使用した以外は、前記実施例1と同様にして、相対遺伝子発現量を測定した。
【0217】
これらの結果を、図10に示す。図10は、ペリオスチン遺伝子発現量の相対値を示すグラフであり、縦軸は、相対遺伝子発現量である。図10に示すように、前記実施例のsiRNAは、いずれも、コントロール(−およびmock)およびネガティブコントロールよりも低い値を示したことから、いずれも発現抑制活性を有することが確認できた。
【0218】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【0219】
この出願は、2012年3月29日に出願された日本出願特願2012−78114を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0220】
本発明の核酸分子によれば、ペリオスチン遺伝子の発現またはペリオスチンタンパク質の機能を抑制できる。このため、本発明は、ペリオスチン遺伝子の発現またはペリオスチンタンパク質が原因となる眼疾患、具体的には、例えば、増殖糖尿病網膜症および加齢黄斑変性症等の黄斑変性症の治療に有効である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]