(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283870
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】電池寿命を延長させるための構造および方法
(51)【国際特許分類】
H01M 2/10 20060101AFI20180215BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
H01M2/10 J
H01M2/10 V
H01M10/44 P
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-202623(P2016-202623)
(22)【出願日】2016年10月14日
(62)【分割の表示】特願2013-529396(P2013-529396)の分割
【原出願日】2011年9月19日
(65)【公開番号】特開2017-54820(P2017-54820A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2016年11月10日
(31)【優先権主張番号】61/403,625
(32)【優先日】2010年9月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516131957
【氏名又は名称】バッテルー,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100119987
【弁理士】
【氏名又は名称】伊坪 公一
(72)【発明者】
【氏名】ファリボルズ フランキー ルーフパーバー
【審査官】
近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−192770(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3131477(JP,U)
【文献】
特表2002−510853(JP,A)
【文献】
特開2002−330548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
H01M 10/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の電池の動作寿命を延長させるための電池スリーブであって、
導電性正極と、
前記導電性正極の下に延在する絶縁層であって、前記電池スリーブが電池と連結されるときに、前記導電性正極は電池の正端子上に配置され、前記絶縁層は前記導電性正極と前記電池の正端子との間に挟まれ、前記導電性正極を前記電池の正端子から電気的に絶縁し、前記絶縁層の一部は電池の外周に適合して、前記電池スリーブを電池に固定し、前記絶縁層の一部は前記電池の側面に沿って前記電池の底部まで延在する、絶縁層と、
前記電池スリーブが前記電池と連結されるとき、電池の負端子と電気的に接するように構成されている導電性負極と、
前記電池の動作寿命期間中、前記電池によって供給される正および負の電圧を受電し、
かつ前記電池スリーブの前記導電性正極上に一定の出力電圧を発生させるように構成されている電圧調整回路と、
を備え、
前記電圧調整回路は、前記電池スリーブの絶縁層の一部に内蔵され、前記電圧調整回路の複数の端子は、前記電池スリーブの絶縁層内に延在する配線を通じて、前記導電性正極と、前記導電性負極と、前記電池の正端子とに接続されることを特徴とする電池スリーブ。
【請求項2】
前記電圧調整回路が、前記導電性正極付近の前記電池スリーブの上側部分の中に内蔵されている、請求項1に記載の電池スリーブ。
【請求項3】
前記電圧調整回路が、前記導電性負極付近の前記電池スリーブの下側部分の中に内蔵されている、請求項1に記載の電池スリーブ。
【請求項4】
前記電池スリーブは、前記電池と連結されるとき、前記電池の正端子が前記絶縁層によって被覆されることにより、前記正端子が外部から利用できず、前記電池スリーブの前記導電性正極が前記電池の新規の正端子として機能するように構成されている、請求項1に記載の電池スリーブ。
【請求項5】
寿命延長回路構成を備える電池であって、
請求項1に記載の電池スリーブを備えることを特徴とする電池。
【請求項6】
前記電池が、使い捨て電池または再充電式電池である、請求項5に記載の電池。
【請求項7】
1つ以上の電池の動作寿命を延長させるための電池調整システムにおいて、
請求項1に記載の電池スリーブを備える電池を有し、
前記電池スリーブの出力電圧を外部装置に提供することを特徴とする電池調整システム。
【請求項8】
前記1つ以上の電池が、1つ以上の使い捨て電池または1つ以上の再充電式電池である、請求項7に記載の電池調整システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年9月20日出願の米国仮特許出願第61/403,625号に対し優先権の利益を主張し、同仮出願の全てをそのまま参考文献としてここに援用する。
【0002】
本発明は、概略的には電池技術に関し、より詳細には使い捨て式および充電式電池などの電池の動作寿命を延長させる技術に関する。
【背景技術】
【0003】
大部分の家電機器では電池が使用される。電池は、乾電池の一次電池、二次電池および充電式電池という観点から分類される。電子機器は高感度なものが多く、適切に作動するには非常に正確な電圧が必要である。ある場合には、電子機器に電圧を提供する電池があまりにも劣化すると、機器が信頼できない出力を提供するだけでなく、低電圧が機器を損傷する可能性もある。よって、電子機器の製造者の多くは、電池の電圧水準を検出する回路構成を併置し、電圧水準がある水準を下回って低下すると、回路がオフに切り替わるようにしている。例として、新しい未使用の単三電池は1.5Vを供給する。電池を利用する機器によって充電が消費されると、経時的に電池の電圧は低下し始める。
【0004】
単三電池などの使い捨て電池を使用する電子機器には、電池電圧が10%程度低下すると作動を停止するように設計されているものがいくつかある。このことは、単三電池の電圧が約1.4V〜1.35Vまで低下すると、電池は機器が使用するのにはもはや適していないこと、かつ新しい電池と交換しなければならないことを意味している。したがって、0Vから1.35Vまでの全電圧範囲は、無駄になり、かなり非効率な結果となる。これは、ほんの10%の炭酸飲料しか消費されず、習慣的に残りが廃棄されるという状況と類似する。このことが、非常に無駄かつ非効率的であることは明らかである。
【0005】
電池のコストに影響を与える別の要因は、電池を製造するのに使用されるいくつかの材料は、採鉱するのが困難なものであり、場合によってはレアアース材料であるということである。それらの材料には、中国などの国でしか見つかっていないものもいくつかあり、中国はそのような材料の輸出制限を開始したことから、そのような材料コストは上昇し続けている。
【0006】
電池の非効率性に関する不利な経済的影響の他にも、深刻な環境的な影響が存在する。毎年約30億個の電池が販売されている。電池は、地下水などの天然資源の中に入っていく可能性のある毒性物質を含んでいるという理由から、電池は、特別な環境リスクを引き起こすものである。電池はさらに、生分解性ではない。多くの自治体及び国は、電池の再生利用についての法律および地方条例を有している。さらに、電池の製造および流通と関連付けられる二酸化炭素排出量への関心が高まっている。これらの材料を採鉱し、材料を電池の中に入れ、電池を包装し、世界中に出荷する工程は、多くのエネルギーを必要とし、多くの温室効果ガスを発生させる。したがって、電池の使用効率を改善すると、かなりの経済的並びに環境的な恩恵をもたらすことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、使い捨ておよび再充電式電池などの電池の効率性を改善する技術の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態は、電池の寿命を大幅に増やすための技術を提供する。1つの実施形態によれば、1つ以上の電池の動作寿命を延長させるための電池スリーブは、導電性正極と、電池スリーブが電池と連結されるときに、導電性正極を電池の正端子から電気的に隔離している状態で、導電性正極が電池の正端子より上に配置されるように、導電性正極の下に延在する絶縁層と、を含む。
【0009】
別の実施形態では、電池スリーブは、電池スリーブが電池と連結されるときに、電池の負端子と電気的に接するように構成されている導電性負極をさらに含む。
【0010】
別の実施形態では、電池スリーブは、電池の正および負の端子を受け、かつ導電性正極に電気的に接続される出力端子に出力信号を提供するように構成されている電圧調整回路(voltage regulator circuit、以下、「電圧調整器」ともいう。)をさらに含む。
【0011】
別の実施形態では、電池スリーブは、電池の動作寿命期間中、電池によって提供される正および負の電圧を受電し、かつ電池スリーブの導電性正極上に実質的に一定の出力電圧を発生させるように構成されている電圧調整回路をさらに含む。
【0012】
別の実施形態では、電圧調整器(voltage regulator)は、導電性正極付近の電池スリーブの上側部分の中に内蔵されている。代替実施形態では、電圧調整器は、導電性負極付近の電池スリーブの下側部分の中に内蔵されている。
【0013】
別の実施形態では、電池スリーブが電池と連結されるとき、スリーブの導電性正極が電池の新規の正端子として機能する。
【0014】
別の実施形態では、電池スリーブは、電池スリーブが電池と連結されるとき、電池の正端子が絶縁層によって被覆されることにより、正端子が外部と電気的にアクセス不能であるように構成されている。
【0015】
さらに別の実施形態では、電池スリーブは、電池スリーブが電池と連結されるとき、電池の負端子が外部と電気的にアクセス可能であるように構成されている。
【0016】
本発明の別の実施形態によれば、1つ以上の電池の動作寿命を延長させるための電池スリーブは、電池スリーブが少なくとも1つの電池と連結されるとき、少なくとも1つの電池の新規の正端子として機能するように構成されている導電性正極を含む。
【0017】
1つの実施形態では、電池スリーブは、少なくとも1つの電池の動作寿命期間中、少なくとも1つの電池によって提供される電圧を受電し、かつ実質的に一定の出力電圧を発生させるように構成されている電圧調整器をさらに含む。
【0018】
別の実施形態では、電池スリーブは、導電性正極の下に延在する絶縁層をさらに含み、電池スリーブは、電池スリーブが電池と連結されるときに、絶縁層が導電性正極を電池の正端子から絶縁している状態で、導電性正極が電池の正端子より上に配置されるように構成されている。
【0019】
別の実施形態では、電池スリーブは、電池スリーブが電池と連結されるときに、導電性負極が電池の負端子と電気的に接するように構成されている導電性負極をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】1つの実施形態による電池調整システム110を示す図である。
【
図2】1つの実施形態による電池スリーブの簡易図を示す図である。
【
図3】1つの実施形態による、電池と連結される電池スリーブの側面図を示す図である。
【
図4】1つの実施形態によるスリーブの底部分に沿って調整回路が配置されている電池スリーブの簡易図を示す図である。
【
図5】電池スリーブが、2つの直列に接続された電池と連結するように構成されている実施形態を示す簡易図である。
【
図6A】調整器およびスリーブは、スリーブが、調整された出力電圧と共に電池の正端子を外部装置に提供するように構成されている、さらに別の実施形態を示す図である。
【
図6B】調整器およびスリーブは、スリーブが、調整された出力電圧と共に電池の正端子を外部装置に提供するように構成されている、さらに別の実施形態を示す図である。
【
図7】様々な実施形態の利点を図示する実際の測定値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明についての以下の説明では、本明細書の一部を成す添付図面について言及しており、これら添付図面には、実施可能な特定の実施形態を例証として示している。それらの実施形態について、当業者が本発明を実施することが可能となるように詳細な説明がなされており、また、他の実施形態を利用してもよく、また本開示の範囲を逸脱することなく工程、電気的または機械的な変更を加えることができることを理解されたい。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきものではない。
【0022】
図1は、1つの実施形態による電池調整システム(以下、単に「システム」ともいう。)110を示す。電池103の正端子104は、電圧調整器(以下、単に「調整器」ともいう。)105の入力端子101に接続される。電池103の接地端子100は、電池調整器105の接地入力端子106に接続される。1つの実施形態では、電池の負端子100は、電圧調整器105が物理的に位置する場所と繋ぐ必要がある。これは、後述する電池スリーブの一部を成す可撓性PCBを介して実現され得る。電圧調整器105の出力端子(以下、単に「出力」ともいう。)102は、電池調整システム110の出力を提供する。電池103の正端子104と電圧調整器105の出力102との間に絶縁体が設置される。
【0023】
次に、電池調整システム110の動作について説明する。システム110の1つの例示的実施形態では、システム110の出力102は、1.5Vに調整される。新しい単三電池は、1.5Vから1.6Vの範囲で調整器105に電圧を提供する。次に、調整器105の出力102は、1.5Vに調整され、このようにして、電池調整システム110の出力が1.5Vに固定される。動作中、電池調整システム110を使用している装置が電池103から供給される電流を消費する際、電池は、化学エネルギー貯蔵手段を介して電池の中に当初収容された電荷を徐々に失う。これは、電池103から出力される電圧出力の経時的な低下を引き起こす。しかしながら、調整器の入力電圧が1.5Vを下回って低下しても、調整器105は、出力端子102において一定の1.5Vを提供し続ける。このことにより、電池103が提供する電圧が、調整器105が動作することができる最小電圧に減少するまで、実質的には、電池調整システム110を使用している装置に一定の電圧を提供する。この例では、およそ0.7Vから0.8Vである。これにより、端末装置は、より長い期間、電池103を利用することができる。さらに、電池内に貯蔵される電荷のより多くのものが廃棄される前に使用される。
【0024】
図2は、本発明による電池スリーブ(以下、単に「スリーブ」ともいう。)200の簡易図を示す。スリーブ200は、電池103と連結したとき、電池最上部の端子104を被覆する。スリーブ200は、電池103の上側部分の周囲にぴったりと適合する上側部分を有する。スリーブ200は、一般的には、電池と連結されたとき、電池の全体寸法ができるだけ大きくならないように設計される。スリーブ200は、絶縁体(図示せず)を含み、この絶縁体は、電池103の正端子104を電池スリーブ200の新規の正端子204から電気的に隔離する。スリーブ200は、底部導体205を含む底部区分をさらに含み、底部導体は、電池103の負端子100に電気的に接続している。1つ以上の導電配線202は、底部導体205をスリーブ200の上側部分に内蔵される調整回路(図示せず)に繋げる。
【0025】
図3は、1つの実施形態による、電池103と連結されるスリーブ300の側面図を示す。スリーブ300は、電池103の最上部分の周囲を包み、絶縁体312で電池103の正端子104から絶縁される最上部の導体電極304を有する。この実施形態では、調整器105は、スリーブ300の上側部分に内蔵されている。スリーブ300の中に延在する導電配線306は、調整器105の入力端子101を電池103の正端子104に接続する。スリーブ300の中に延在する別の導電配線310は、電池103の負端子100を調整器105の入力端子106に接続する。スリーブ300の中に延在する別の第3の導電配線308は、調整器105の出力端子102をスリーブ最上部の導体電極304に接続する。導電配線306、308および310は、互いに絶縁しあう。上述のように、動作中、最上部の導電性電極304は、電池の「新規の」正端子として機能する。
【0026】
図4の代替実施形態では、調整器405は、スリーブ400の底部分に設置され、その底部分は、電池103がスリーブ400に挿入されたとき、電池103の負端子100が位置する場所に近接する場所である。この実施形態では、電池103の正端子104は、スリーブ400を通って調整器405があるスリーブの底部まで延在する導電配線412で繋がれている。底部まで繋がれる導電配線412は、調整器405の入力端子101に接続され、調整器405の他方の入力106は、スリーブ400の底部に存在する、電池103の負端子100を受ける。電圧調整器405の出力端子102は、その後、導電配線414で繋がれ、スリーブ400の最上部の導体電極404に接続される。先の実施形態のように、スリーブの最上部の導体電極404は、絶縁層410によって電池103の正端子104とは絶縁されている。この実施形態では、2つの導電配線412、414は、スリーブ400の上側部分と下側部分の間に延在している。
【0027】
図5は、スリーブ500が、直列に接続された2つの電池103A、103Bと連結するように構成されている実施形態を示す簡易図である。この例示的な実施形態では、電池103A、103Bは、3Vの出力を提供する単三電池である。調整器505は、
図5ではスリーブ500の外側にあり、雑音(clutter)を最小限に抑えるようになっている。実際には、調整器505は、スリーブ500に内蔵される。調整器505は、上記実施形態と類似の様式で使用される。先の実施形態のように、2つの電池の電圧が使用によって低下する際、調整器505は、新しい電池の2倍の電圧と同等の一定の調整電圧を提供する。
【0028】
図6Aおよび
図6Bは、さらに別の実施形態を示し、これらの図では調整器とスリーブが、外部装置に対する電池の正端子を調整出力電圧と共に提供するように構成されている。
図6Aは、電池103の正端子104および負端子100が電圧調整器605に相互接続している状態を示す。明確化のために、調整器がスリーブから離れて示されているが、実際には、調整器はスリーブに内蔵されるであろう。
図6Aは、スリーブの底部電極612を電池103の負端子100から絶縁する絶縁体610も図示する。
図6Bは、調整器605の物理的位置をより正確に反映しており、調整器は、スリーブの底部沿いにある。この実施形態では、電圧調整器605の出力102は、電池の電圧に対して直列の電圧(series voltage)として使用される。電池が新しい場合、当初の電圧調整器605の出力102は、0Vまたは負に設定され、スリーブが外部機器へ提供する電圧を1.5Vに確実に維持する。電池の電荷が経時的に低下する際、電圧調整器605は、出力102の電圧を1.5V−V
電池と実質的に等しい電圧に維持する。言い換えれば、調整器は、電池103が提供する電圧を監視し、調整電圧を下回って低下するようであれば、電圧を発生し、電池電圧の低下分を補う。例として、電池が使用され、その電圧が1.1Vに低下する際、電圧調整器605は、出力102に0.4Vの電圧を提供する。
【0029】
本発明の実施形態によれば、電池スリーブは電池との連結時に、電池の正端子を外部装置から隔離し、動作中、電池電圧を一定の電圧に調整し、元の電池電圧の代わりに調整された一定の電圧を外部装置に提供する。このような電池スリーブの利点は、電池の出力電圧が外部機器の許容動作電圧を下回って低下した後であっても、外部機器が一定の電圧を続けて受電し、故に継続して動作し、かつ継続して電池から電荷を取り出すことができる点である。このような動作状態は、電池の出力電圧が、電圧調整システムの動作可能範囲を下回って低下するときまで続けられる。単三電池の例では、電池スリーブがない場合、電池が1.5Vから1.4Vまたは1.35Vまで低下すれば、捨てる必要がある。しかしながら、スリーブがあれば、電池電圧は、0.8Vまたは0.7Vの低さまで低下してもよく、その間も外部機器は続けて1.5Vを得る。電池スリーブの電流水準は、終端システムの必要電流に合致する必要があることに注目されたい。
【0030】
電池の寿命という観点でそのような装置の潜在的な利益について考えれば、有意な恩恵があることが分かるであろう。例えば、上記の例の単三電池は、概略的には、1.5Vから1.4Vの範囲の電池出力と同等の電荷を使用する。これは、0.1V低下すれば電池の寿命が終わることを意味する。電圧が0.8Vに達するまで電池を使用することができれば、0.7V低下後に電池の寿命が終わることになる。時間対電圧低下を線形関数で表すと仮定すれば、この例では、電池の寿命を7倍改善することができる。しかしながら、好都合なことに時間対電圧低下は、完全に線形であるとは言えない。電池電圧が0.1Vだけ低下するのにかかる時間は、高い電圧時と対比すると低い電圧時には長くなる。これは、一定の電流が電池から引き出される場合、1.5Vから1.4Vまで放電するよりも、1.2Vから1.1Vまで放電する方がより長く電池を使用できることを意味する。これは、電池寿命が延長する程度は、上記の例における7の因数よりも高い可能性があることを意味する。
【0031】
調整回路は、電池寿命が延長される程度を減らす、ある種の効率を有するが、寿命減少はかなり微少であることに注目されたい。動作中に、調整器自身、一定量の電流を電池から得て使用する。多くの市販のDC−DC変換器は、約95%の高い効率を有する。すなわち、電池によって提供される電源の5%を変換器が使用し、残りをエンドユーザーが利用することができる。しかしながら、変換器の使用による5%の効率損失は、電池の効率で増える700%と比べればごく僅かである。さらに注目しておきたいことは、変換効率は、使用によって電池電圧が低下するにつれ低下し得ることである。例えば、電池電圧が1.5Vから1Vまで低下するにつれ、変換器の効率は、50%〜60%へと低下し得る。しかしながら、電池の電圧が動作可能な電圧範囲(すなわち、1.4Vから1.5V)を下回って低下していたので、50%の効率は、電池を廃棄する現下の取り組みにおける有意な改善である。
【0032】
本発明は、魅力ある経済性を有する。本発明の実施に関連付けられるコストが存在するが、当該コストは、電池寿命を5〜7個の電池相当に延長することで実現したコスト削減による相殺を上回る。本発明の実装は、上記の様々な実施形態で説明したように電池の外側で行われ得る、または代替的に、電池製造業者が、調整回路およびそれに関連する接続部を製造過程の間に電池筐体の内部に組み込むこともある。しかしながら、取り付け可能なスリーブの実装は、それを何度も繰り返して再使用することができるという追加的な利点を有する。すなわち、スリーブ内部の電池が完全に消耗すると、消耗した電池は廃棄され、別の電池がスリーブ内部に置き換えられる。このように、スリーブのコストは、多くの電池間で分散され、したがって電池あたりの追加コストは非常に小さくなる。取り付け可能なスリーブは、既存の電池製造工程、機器および工場に変更を加える必要がないという追加の恩恵(調整器が電池の内側に組み込まれる実装に関して)を有する。
【0033】
全部ではないが、大部分の電子機器の電池室(compartment)が電池スリーブを収容するように改造する必要がないことに注目されたい。スリーブは、電池の高さを僅かに増やすが、電池を所定の位置に保持するのに使用される電池室のばねは、増えた高さを収容することができる。ばねの長さは、一般的には、5mmから10mmの範囲のものである。スリーブに起因する電池の高さの増加量は、約1mmである。高さの増加は、スリーブ付きの電池を電池室に挿入するときに、ばねが1ミリメートル余計に縮むことで容易に調整できる。スリーブの厚さは、勿論、技術が進歩するにつれ削減され得る。正および負の両方の端子が電池の同じ端部に沿って配置され得る、9V電池などの電池では、スリーブが電池の大きさに与える影響がさらに小さくなる。当該電池では、スリーブは電池の正端子を電圧調整器の出力から隔離するために絶縁体を備える、単なるオスからメスへの変換器である。
【0034】
別の実施形態では、複数の電池を直列に設置することができ、1つのスリーブが、
図5に示しているもののような直列の電池を包み込むことができる。
図5の実施形態で説明するように、直列接続された電池の出力電圧は、電圧調整器への入力として使用することができ、調整器によって提供される一定の出力電圧が外部装置に供給される。次に説明するように、当該直列接続された電池の寿命は、単独の電池の場合よりさらに延びることに注目されたい。単独の単三電池は、スリーブ無しで使用する場合、電圧が1.5Vから1.35Vに低下すると廃棄される。スリーブ付きで使用される場合、電池は0.8Vに下がるまで使用することができる。電池の放電時間が電池の放電速度に線形的に関連する場合、寿命の延長時間は、0.7V/0.15Vまたは4倍を上回る。対照的に、2つの単三電池が直列に接続され、スリーブを使用していない場合、2つの電池は、直列接続された電池の電圧が3Vから2.7Vまで低下すると廃棄される必要がある。スリーブ付きで使用する場合、直列接続された電池は3Vから0.8Vに下がるまで使用することができる。その場合、寿命の延長時間は、(3−0.8)/(3−2.7)=2.2/0.3に比例し、この式は、電池寿命の延長は7倍を上回るという結果になる。これにより、出力電圧と時間の間には直線関係が推測される。しかしながら、先に説明したように、1.5Vから1.4Vまで0.1Vだけ低下するのにかかる時間は、1.3Vから1.2Vまで達するのにかかる時間よりかなり短い。これは、スリーブを使用する場合、好都合なことに電池寿命はさらに延長されることを意味する。
【0035】
さらに別の実施形態では、本発明の装置は、再充電式電池と併せて使用される。影効果と呼ばれる再充電式電池が原因の現象がある。電池が少量だけ放電され、その後完全に充電される場合、および工程が何度も繰り返される場合、電池が電荷を保持する能力を失う。本実施形態は、再充電式電池がより長い時間動作することを可能にし、故に、エンドユーザーによって行われる頻繁な再充電の必要性を削減する。
【0036】
別の既知の現象として、再充電式電池が一定の限界を超えて放電することを許容される場合、その電池が充電することのできる回数が著しく減少することがある。本実施形態は、電池が低い方の限界に達したことを検出すると、出力電圧を遮断する電圧検出システムを含んでおり、故に、電池が充電することのできる回数を増やしている。
【0037】
1つの実施形態では、金属上シリコン印刷技術を、スリーブ、調整回路およびその関連する回路構成を実施するのに使用することができる。構成回路を加工するのにシリコン以外の材料を使用する新しい技術がある。これらのタイプの印刷シリコンは、場合によっては、ステンレス鋼上に印刷され、電池の周りに広がるスリーブを形成するのに使用することができる。これはより良い熱特性を可能にさせる。
【0038】
さらに別の実施形態では、端子を電池の一方の側から他方の側へ繋ぐのに可撓性PCBを使用することができる。これらの可撓性を有する薄い層は、スリーブを非常に薄くすることができる。
【0039】
さらに別の実施形態では、システムが調整器システムの最大電流出力性能を非常に高くすることを可能にする一方で、効率は、終端システムが通常動作する出力電流水準で最大となるように、調整器システムの効率を調整することができる。例えば、電池が、遠隔制御システムの平均電流消費が50mAである遠隔制御システムで使用される場合、電圧上昇システムは、DC−DC変換システムであってもよく、その出力電流水準で可能な限り高くなるように設定される。
【0040】
図7は、様々な実施形態の利点を図解する測定結果を示す。測定には、3つの一般的な単三電池の銘柄、パナソニック、デュラセルおよびソニーを選択した。固定電流50mAを引き出す能動負荷回路構成がこれらの電池の出力に設置され、各電池の電圧を経時的に測定した。横軸は時間を示し、縦軸は電池電圧を示す。これらの新しい電池の開始電圧は1.6Vであった。電池が、多くの電子機器が動作を停止する1.39Vに達するのにかかった時間が記載されている。パナソニック製電池は、その水準に達するのに6.3時間かかり、一方、ソニー製電池は4.5時間かかった。パナソニック製電池は、本発明による調整器と併せて使用される場合、1.5Vの提供を停止するまでに27.9時間かかり、ソニー製電池が調整器と併せて使用される場合、1.5Vの提供を停止するまでに32時間かかった。したがって、調整器を備えれば、電池を取り換えることが必要となるまでの時間が4.5〜7倍に延びた。このようにして、製造され、結果的に廃棄される電池の総数が4分の1〜7分の1に減少する。このことは、全ての電池材料を抽出すること、電池製造、店舗への電池運搬、電池包装および最終的には埋め立てられる全ての毒性材料に関する二酸化炭素排出量を考慮する場合、地球にとって重大な影響を与える。
【0041】
本明細書においては特定の実施形態について図示および説明してきたが、当業者であれば理解されるように、同じ目的を達成するように計算および設計される如何なる方法も説明した特定の実施形態の代わりに使用してもよい。本開示の多くの適合性は、当業者には明白であろう。したがって、本出願は、本開示のどのような適合性または変形物も含むように意図されるものである。