特許第6283878号(P6283878)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6283878パネル一体型タッチセンサおよびパネル一体型タッチセンサの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283878
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】パネル一体型タッチセンサおよびパネル一体型タッチセンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20180215BHJP
【FI】
   G06F3/041 650
   G06F3/041 660
   G06F3/041 662
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-255580(P2013-255580)
(22)【出願日】2013年12月11日
(65)【公開番号】特開2015-114793(P2015-114793A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】313001332
【氏名又は名称】積水ポリマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106220
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100115613
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 寧司
(72)【発明者】
【氏名】大澤 祐太
【審査官】 星野 裕
(56)【参考文献】
【文献】 実開平03−041336(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0238119(US,A1)
【文献】 特開2004−160900(JP,A)
【文献】 特開平09−197990(JP,A)
【文献】 特開平10−027053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ電極を有するセンサフィルムと、このセンサフィルムを覆う操作パネルと、を備えるパネル一体型タッチセンサにおいて、
前記操作パネルが表面にセンサ領域を有しており、
前記操作パネルにおける前記センサ領域と前記操作パネルにおける前記センサ領域の周囲との境界に、鋭角状に切れ込んだ峡谷部を有することを特徴とするパネル一体型タッチセンサ。
【請求項2】
操作パネルが、周囲を厚肉部で囲まれた内側にドーム状に突き出した薄肉部からなる前記センサ領域を有する請求項1記載のパネル一体型タッチセンサ。
【請求項3】
センサフィルムのセンサ電極を有する部分が、ドーム状の前記薄肉部に追従し、このドーム状内に入り込んでいる請求項2記載のパネル一体型タッチセンサ。
【請求項4】
センサ電極を有するセンサフィルムと、薄肉部とその薄肉部を囲む厚肉部とを備え表面には薄肉部の部分が凹んだ窪みを有し裏面にはこの窪みに対応する部分を含めて段差を有しない単調な面を有する操作パネルと、を位置合わせを行う工程と、
金型によって操作パネルとセンサフィルムとを押圧しながら貼り合せ、薄肉部をドーム状に膨らませて変形させる工程と、を実行するパネル一体型タッチセンサの製造方法。
【請求項5】
JIS K6253規定のA硬度で30°〜60°の硬さの貼合せパッドを設けた金型で、センサフィルム側に貼合せパッドを当てて押圧する請求項4記載のパネル一体型タッチセンサの製造方法。
【請求項6】
センサ電極を有するセンサフィルムと、表面にはセンサ領域が凹んだ窪みを有し裏面にはこの窪みに対応する部分を含めて段差を有しない単調な面を有する操作パネルと、を位置合わせし、
柔軟性を有する貼合せパッドを備えた下型と、操作パネルのセンサ領域に対応する部位に、立壁で囲われた周囲から逆ドーム状に凹んだ形状のキャビティを有する山型との間で、貼合せパッドがセンサフィルムを押圧するようにして型締めし、
貼合せパッドが前記キャビティまでセンサフィルムと操作パネルを押圧し、周囲が鋭角状に切れ込んだ峡谷部からドーム状に入り込んだセンサ領域を有する操作パネルと、該ドーム状に沿ってその内側にセンサ電極の部分がドーム状に突き出したセンサフィルムと、が一体となったパネル一体型タッチセンサを製造するパネル一体型タッチセンサの製造方法。
【請求項7】
下型の貼合せパッドの表面が、操作パネル裏面の段差を有しない単調な面よりは傾きが大きな面としている請求項6記載のパネル一体型タッチセンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作パネルにセンサフィルムを一体化したパネル一体型タッチセンサとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器の入力操作には、センサフィルムが用いられることが多くなってきたが、その表面形状はフラットなデザインが主流となっている。フラットな外観は、従来のメカニカルスイッチとの差別化という点では新規であり、その斬新性が好まれてきたが、そうした一方で操作面が分かり難く、タッチ操作をするときには操作面に視線を向ける必要があった。
【0003】
そこで、操作する場所を認識しやすいよう、表面に凹凸を設ける技術が提案されており、例えば特開2009−043473号公報(特許文献1)にそうした技術が記載されている。しかしながらこの技術では、平坦なセンサフィルムの表面に膨らみを持たせた操作パネルが設けられており、厚みが厚い部分ではセンサの感度が低下するという課題があった。
【0004】
また別の技術として、特開2012−003779号公報(特許文献2)には、3次元Rを有する成形体とセンサフィルムを一体とした技術が記載されている。しかしながらこの技術では、全体がなだらかな曲面を描くセンサフィルムであるため、依然として操作パネルに触れただけでは操作部分がわからないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−043473号公報
【特許文献2】特開2012−003779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記発明で達成できない課題を解決するものである。即ち、操作パネル表面に凹凸形状のセンサ領域を有し、操作パネルへ視線を向けなくてもセンサ領域がわかるパネル一体型タッチセンサを提供するものである。加えて、従来は成形が困難であった鋭角状に切れ込んだ凹部(峡谷部)を有するパネル一体型タッチセンサを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、センサ電極を有するセンサフィルムと、このセンサフィルムを覆う操作パネルと、を備えるパネル一体型タッチセンサについて、前記操作パネルが表面にセンサ領域を有しており、前記操作パネルにおける前記センサ領域と前記操作パネルにおける前記センサ領域の周囲との境界に、鋭角状に切れ込んだ峡谷部を有することを特徴とするパネル一体型タッチセンサを提供する。
【0008】
センサフィルムを覆う操作パネルを有するため、センサフィルムが直接外部に剥き出しにならず、センサ電極等を設けたセンサフィルムを保護することができる。また、センサフィルムとは別部材とすることで、操作パネル表面に複雑な形状を施すことができ、また、種々の加飾層を設けることができる。
センサ電極を備えるセンサフィルムを有するため、タッチセンサとして用いることができる。
【0009】
前記操作パネルが表面にセンサ領域を有しており、前記操作パネルにおける前記センサ領域と前記操作パネルにおける前記センサ領域の周囲との境界に鋭角状に切れ込んだ峡谷部を有するため、操作者が操作面を視認しなくても峡谷部に触れることでセンサ領域を認識でき、タッチ操作を行うことができる。また、タッチセンサでありながら峡谷部を有する凹凸形状のある表面であるため、表面が単調な平面である従来タイプのタッチセンサに比べてデザイン性のあるタッチセンサとすることができる。そして、パネル一体型タッチセンサとしたため、タッチセンサを備える外装品として車輌や電子機器に組み込むことができる。
【0010】
操作パネルが、周囲を厚肉部で囲まれた内側にドーム状に突き出した薄肉部からなる前記センサ領域を有するパネル一体型タッチセンサとすることができる。
操作パネルが厚肉部と薄肉部とを有するため、デザイン性のある操作パネルとすることができ、厚肉部があるため、外力に対して強度のあるタッチセンサとすることができる。
そして、周囲を厚肉部で囲まれた内側にドーム状に突き出した薄肉部からなるセンサ領域を有するため、操作部位を見なくても簡単に操作できるタッチセンサであり、センサ領域がドーム状に突き出しているため、感度が優れたタッチセンサである。
【0011】
センサフィルムのセンサ電極を有する部分が操作パネルのドーム状の薄肉部に追従してこのドーム状内に入り込んでいるパネル一体型タッチセンサとすることができる。センサ電極に対応するセンサ領域が薄肉部となっており、ドーム状内にセンサフィルムのセンサ電極部分が入り込んでいるため、指などとの接触部位とセンサ電極の距離が短く、感度の高いタッチセンサとすることができる。
【0012】
また、センサ電極を有するセンサフィルムと、薄肉部とその薄肉部を囲む厚肉部とを備え表面には薄肉部の部分が凹んだ窪みを有し裏面にはこの窪みに対応する部分を含めて段差を有しない単調な面を有する操作パネルと、を位置合わせを行う工程と、金型によって操作パネルとセンサフィルムとを押圧しながら貼り合せ、薄肉部をドーム状に膨らませて変形させる工程と、を実行するパネル一体型タッチセンサの製造方法を提供する。
【0013】
操作パネルの裏面を段差を有しない単調な面としたため、センサフィルムを隙間無く重ね合わせて両者を一体化することができる。そして、操作パネルとセンサフィルムとを金型によって押圧しながら貼り合せる際に、その両者の間にエアが入り込むのを防ぎ、歩留まり良くパネル一体型タッチセンサを製造することができる。また、裏面が段差を有しない単調な面とした操作パネルとフィルム状のセンサフィルムとを金型によって押圧しながら両者を貼り合わせ、薄肉部をドーム状に膨らませて変形させるため、操作パネルの表面に鋭角状に切れ込む峡谷部を有していてもセンサフィルムが切れたり必要以上に伸びたりすることなく操作パネルとセンサフィルムとが一体化したパネル一体型タッチセンサを得ることができる。
【0014】
JIS K6253規定のA硬度で30°〜60°の硬さの貼合せパッドを設けた金型で、センサフィルム側に貼合せパッドを当てて押圧する工程を含むパネル一体型タッチセンサの製造方法とすることができる。
JIS K6253規定のA硬度で30°〜60°の硬さの貼合せパッドを設けた一方側の金型で、センサフィルム側に貼合せパッドを当てて押圧するため、他方側の金型に設けた凹みに貼合せパッドを追従させ変形させて押し込むことができ、操作パネルの薄肉部とセンサフィルムのセンサ電極部分とを一体としてドーム状に変形することができる。そのため、感度の良いパネル一体型タッチセンサを得ることができる。
【0015】
そしてまた、センサ電極を有するセンサフィルムと、表面にはセンサ領域が凹んだ窪みを有し裏面にはこの窪みに対応する部分を含めて段差を有しない単調な面を有する操作パネルと、を位置合わせし、柔軟性を有する貼合せパッドを備えた下型と、操作パネルのセンサ領域に対応する部位に、立壁で囲われた周囲から逆ドーム状に凹んだ形状のキャビティを有する山型との間で、貼合せパッドがセンサフィルムを押圧するようにして型締めし、貼合せパッドが前記キャビティまでセンサフィルムと操作パネルを押圧し、周囲が鋭角状に切れ込んだ峡谷部からドーム状に突き出すセンサ領域を有する操作パネルと、該ドーム状に沿ってその内側にセンサ電極の部分がドーム状に入り込んだセンサフィルムと、が一体となったパネル一体型タッチセンサを製造するパネル一体型タッチセンサの製造方法を提供する。
【0016】
こうした製造方法としたため、表面に鋭角状に切れ込んだ峡谷部を有するデザイン性の高い操作面を有し、センサフィルムが切れたり、必要以上に伸びたりせず、感度が良好なタッチセンサを製造することができる。
【0017】
そして、下型については、貼合せパッドの表面に操作パネル裏面の段差を有しない単調な面よりは傾きが大きな面を有するものとしたため、操作パネルとセンサフィルムとの貼合せの際のエアの混入をさらに起こしにくくすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のパネル一体型タッチセンサによれば、鋭角状に切れ込んだ峡谷部をセンサ領域の周囲に有するパネル一体型タッチセンサとすることができる。
また、本発明のパネル一体型タッチセンサの製造方法によれば、鋭角状に切れ込んだ峡谷部をセンサ領域の周囲に有するパネル一体型タッチセンサを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】パネル一体型タッチセンサの概略斜視図である。
図2図1のA−A線断面図である。
図3】パネル一体型タッチセンサに組み付ける前のセンサフィルムであり、分図3(A)はその平面図、分図3(B)はその左側面図をそれぞれ示す。
図4】パネル一体型タッチセンサの一の製造工程を示す説明図である。
図5】パネル一体型タッチセンサの別の製造工程を示す説明図である。
図6】パネル一体型タッチセンサのまた別の製造工程を示す説明図である。
図7】パネル一体型タッチセンサのさらに別の製造工程を示す説明図である。
図8】パネル一体型タッチセンサの最後の製造工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明について実施形態に基づきさらに詳細に説明する。図1および図2にはパネル一体型タッチセンサ11を示す。このパネル一体型タッチセンサ11は、操作パネル12とセンサフィルム13とを有している。
【0021】
操作パネル12は、後述するセンサフィルム13の表面側に設けてセンサフィルム13を覆い、保護し、またパネル一体型タッチセンサ11の外形を形成する部材である。この操作パネル12が各種電子機器の筐体の一部を構成していても良い。こうした操作パネル12は樹脂材からなる樹脂プレート12aで形成され、その表面には指などの接触を感知するセンサ領域12bを設けている。このセンサ領域12bは、ドーム状に突出した薄肉部12cで形成しており、この薄肉部12cの周囲が鋭角状に切れ込んだ峡谷部12dとなっている。そしてこの峡谷部12dを介してその周囲には操作パネル12の基本骨格となる肉厚の厚肉部12eとなっている。
【0022】
ここで、峡谷部12dが鋭角状に切れ込んでいる状態とは、峡谷部12を形成する薄肉部12c側の斜面に接する接線と厚肉部12e側の斜面に接する接線とで作る角度が鋭角であることを意味している。
操作パネル12の表面には加飾層12fを設け、センサ領域12bを示すスイッチ表示を形成したり、操作パネル12に着色したりしている。一方で、操作パネル12の裏面は、厚肉部12eから薄肉部12cにかけて段差を有しない単調な面となっており、滑らかに連続的に繋がる面としている。
【0023】
操作パネル12の材質には、熱可塑性樹脂を用いる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂などを挙げることができる。
操作パネル12の表面に設けた加飾層12fは、例えば塗層、印刷層、樹脂層などとして形成することができる。但しこの加飾層12fは、操作パネル12とは別の樹脂フィルムに加飾要素を印刷形成した加飾フィルムとして設けることもできる。この場合には、この加飾フィルムを操作パネル12に積層する。
【0024】
パネル一体型タッチセンサ11に組み付ける前のセンサフィルム13を図3に示す。センサフィルム13は、基材となる樹脂フィルム13a上にセンサ電極13bを設けたものであり、センサ電極13bはレジスト層13cで被覆している。また、センサ電極13bからは配線13dが延び、この配線は樹脂フィルム13aの端部に設けた電極端子13eにつながっている。そしてこの電極端子13eを外部に設けたICチップなどのある解析回路部に接続し、センサ電極13bから得た検知信号を解析する。
【0025】
樹脂フィルム13aは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリウレタン(PU)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリエーテルサルフォン(PES)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)などから形成することができる。
樹脂フィルム13aには、透明な樹脂フィルムを用いることができる。パネル一体型タッチセンサ11をディスプレイとしても用いるような場合に、センサフィルム13の裏面に設けたディスプレイからの表示を樹脂フィルム13aを通じて視認させる必要があるからである。したがってここで言う透明とは、センサフィルム13の裏面に設けた表示を、センサフィルム13の表面から視認できる程度の透明性をいう。
樹脂フィルム13aには、導電性高分子との密着性を高めるプライマー層や、帯電防止等を目的とするオーバーコート層などを設けて表面処理を施しても良い。
【0026】
センサ電極13bは、導電性高分子を含む層で形成することが好ましい。導電性高分子を用いることとしたのは、液状の塗液を形成し印刷形成することができ、ITO等と比べて安価にセンサ電極13bを得ることができるからである。センサ電極13bとなる導電性高分子の材質には、センサフィルム13を透明にするには、ポリパラフェニレンまたはポリアセチレン、PEDOT−PSS(ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルホン酸)等が例示できる。
【0027】
センサ電極13bの層厚は、0.04μm〜1μmが好ましく、0.06μm〜0.4μmがさらに好ましい。層厚が0.04μm未満であるとセンサ電極13bの抵抗値が高くなりすぎるおそれがあり、層厚が1μmを超えると透明性が低くなるおそれがあるからである。なお、センサ電極13bの層厚は、樹脂フィルム13aにセンサ電極13bを塗布し、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定することができる。
【0028】
配線13dは、例えば、銅、アルミニウム、銀またはそれらの金属を含む合金等の高導電性金属を含む導電ペーストや導電インキから形成されることが好ましい。また、これらの金属や合金の中でも導電性が高く、銅よりも酸化し難いという理由から銀配線とすることが好ましい。
電極端子13eは、配線13dの先端をカーボンインキで覆うことで形成することができる。
【0029】
レジスト層13cは、センサ電極13b間の導通防止と、センサ電極13bを紫外線や、引っ掻き等から保護するために設けられる絶縁性の被膜であり、透明性がある方が好ましい。また、銀ペーストや金属からなる配線13dの硫化を防止する用途としても好適である。
レジスト層13cとなる樹脂には、硬質の樹脂が選択され、例えば、アクリル系やウレタン系、エポキシ系、ポリオレフィン系の樹脂、その他の樹脂を用いることができるが、ポリイソシアネート成分とポリオール成分を含んでなる原料組成物を硬化させたポリウレタン系樹脂層やポリウレタン・ポリウレア系樹脂層とすることは好ましい一態様である。硬度調整がし易く、強度が高いからである。
【0030】
レジスト層13cの厚さは、通常は、6μm〜30μmであり、好ましくは10μm〜20μmである。その理由は、厚すぎると柔軟性に乏しくなり、薄すぎるとセンサ電極13bの保護が不十分となるおそれがあるからである。
【0031】
操作パネル12とセンサフィルム13との積層にあたり、その界面に接着層14を設けることができる。接着層14には、ホットメルト接着剤、粘着剤、両面粘着テープ等を用いることができる。ホットメルト接着剤は、常温ではタックがないため、センサフィルム13を操作パネル12と一体化するときに、不用意に金型や操作パネル12に付着することがなく、作業性が良いというメリットがある。一方、粘着剤や両面粘着テープは、表面が粘着性を有しているため仮止めでき、位置合せが容易であるというメリットがある。
【0032】
ホットメルト接着剤や粘着剤による接着層14の厚さは、通常は6μm〜40μmであり、好ましくは12μm〜30μmである。その理由は、薄すぎると接着力が弱くなるおそれがあり、逆に厚すぎても接着力はそれ以上向上せず、センサフィルム13の厚みをいたずらに厚くするだけであるからである。一方、両面粘着テープによる接着層14の厚さは、25μm〜100μmであることが好ましい。その理由は、厚すぎると透明性が低下するおそれがあり、薄すぎると接着力が弱くなるおそれがあるとともに、作業性が悪くなるためである。
【0033】
次にパネル一体型タッチセンサ11の一の製造方法を図4図8に示す。
ここでは、操作パネル12とセンサフィルム13とを別々に成形しておき(図示せず)、一体成形により両者を固着して製造する方法について説明する。
【0034】
センサフィルム13は、樹脂フィルム13aの表面にセンサ電極13b、配線13d、電極端子13e、レジスト層13cをそれぞれ印刷等で形成し、樹脂フィルム13aの裏面には接着層14を形成する。接着層14はホットメルト樹脂や粘着剤では印刷形成し、両面粘着テープでは貼り付けて形成する。一方、操作パネル12は射出成形等により成形し表面に加飾層12fを設ける。加飾層12fは、操作パネル12上に転写フィルムから転写したり、操作パネル12に直接印刷したりして形成することができるが、加飾層12fを設けた樹脂フィルムを操作パネル12の成形時にインサート成形したり、加飾層12fとなる樹脂と操作パネル12となる樹脂を二色成形したりする方法も採用することができる。
【0035】
金型に挿入するときの操作パネル12の表面は、図4で示すように、薄肉部12cがドーム状に形成されておらず、厚肉部12eとの間に窪み12gを有するだけで峡谷部12dも形成されていない。一方、操作パネル12の裏面は、窪みが無く、厚肉部12eと薄肉部12cとを含む全体がなだらかな弓なりのカーブを描き、段差を有しない単調な曲面となっている。そして、全体的に弓形の2次元Rを形成している。
【0036】
センサフィルム13と操作パネル12とを一体化するのに用いる金型は、以下の特徴を有している。
下型15は、センサフィルム13を押圧する押圧面(上面)にドーム状の貼合せパッド15aを備えている。貼合せパッド15aは操作パネル12の薄肉部12cをドーム状に形成できるように柔軟性があることが要求される。そのため、貼合せパッド15aは所定の硬さを有するゴム状弾性を有する材質で形成することが好ましい。
【0037】
そうした貼合せパッド15aの硬さは、好ましくはJIS K6253規定のA硬度で30°〜60°である。30°より柔らかいと、圧力が側面側に逃げて、薄肉部12cに十分な圧力がかからないおそれがある。60°よりも硬いと貼合せパッド15aが変形し難く、繰り返し使用による耐久性が不十分となるおそれがある。
上型16は、操作パネル12の完成品の外形に即した形状に形成されており、所定のセンサ領域12bを形成できるよう立壁で囲われた周囲から逆ドーム状に凹んだ形状のキャビティ16aを有している。
【0038】
操作パネル12とセンサフィルム13は、下型15にセットする。このとき、下型15も上型16も所定の温度に加熱しておくことが好ましい。この加熱温度は、操作パネル12とセンサフィルム13の材料に依存して決定する。一例を示すと、ポリカーボネート樹脂からなる操作パネル12と、ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いたセンサフィルム13の場合は、両金型15、16の温度は80℃〜150℃とすることが好ましく、より好ましくは90℃〜120℃である。
金型温度が80℃未満では、両樹脂が十分に加熱されてないため、変形し難かったり、変形させた部分が白化したりするおそれがある。一方、金型温度が150℃を超えると、操作パネル12が必要以上に軟化し、金型15,16を開いたときに成形品が歪んでしまうおそれがある。但し、金型温度を150℃を超える温度としても、金型15,16を冷却してから開くようにすれば、冷却工程が含まれるという不都合はあるが、歪みを生じさせずに成形品を得ることができる。
【0039】
センサフィルム13の位置を規定するガイド(図示せず)に沿ってセンサフィルム13を下型15に配置し、その上側に操作パネル12を配置する。図5で示すように、下型15の貼合せパッド15aの表面は、操作パネル12の裏面よりも、やや急なカーブを描いている。こうした下型15を用いることで、上型16を下降させて型締めする際にセンサフィルム13や操作パネル12の中央から周囲に向かって順次圧力が加わるようにすることで、センサフィルム13と操作パネル12の間への気泡の混入を防止することができる。
【0040】
次に、下型15と上型16を型締めしていくが、図6で示すように、上型16に操作パネル12が嵌まり、上型16のキャビティ16aの形状に対して操作パネル12の薄肉部12cが変形しない状態から、両金型15,16を閉じた状態で所定時間加圧・加熱すると、図7で示すように、貼合せパッド15aが所定の柔軟性を有するため、薄肉部12cとセンサフィルム13とをキャビティ16aに沿う位置まで押圧して変形させる。こうして、薄肉部12cをドーム状に形成し、センサフィルム13をこれに追従させてドーム状に形成することができる。その後、図8で示すように、両金型15,16を開けば操作パネル12とセンサフィルム13とが一体化したパネル一体型タッチセンサ11を得ることができる。
【0041】
パネル一体型タッチセンサ11は、厚肉部12eの部分が操作パネル12の基本骨格を形成するため、剛性の高いパネル一体型タッチセンサとすることができる。そして、タッチ操作の際に操作パネル12が歪んだり、軋んだりすることがなく、安定感のある入力操作ができる。
また、薄肉部12cと厚肉部12eとの境界が峡谷部12dとなっており、センサ領域12bとなる薄肉部12cとその周囲である厚肉部12eとの境界が明確で、操作パネル12へ視線を向けなくても操作部位を認識することができる。
【0042】
上記実施形態は本発明の一例であり、こうした形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に反しない限度において、各部材の形状、材質、製造方法等の変更形態を含むものである。例えば、下型15に貼合せパッド15aを設けて押圧することで薄肉部12cをドーム状に形成したが、高温高圧の空気により薄肉部12cを変形させる方法等でドーム状に形成することもできる。
【符号の説明】
【0043】
11 パネル一体型タッチセンサ
12 操作パネル
12a 樹脂プレート
12b センサ領域
12c 薄肉部
12d 峡谷部
12e 厚肉部
12f 加飾層
12g 窪み
13 センサフィルム
13a 樹脂フィルム
13b センサ電極
13c レジスト層
13d 配線
13e 電極端子
14 接着層
15 下型
15a 貼合せパッド
16 上型
16a キャビティ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8