(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃料パイプ接続部及びアース接続部を有する導電性のフィラーネックと、外面に導電層を形成した燃料パイプとを、前記アース接続部を用いて電気的に接続する燃料供給装置のアース構造において、
前記アース接続部は、前記フィラーネックと一体に形成した立片と、当該立片の先端に形成され、前記燃料パイプ接続部の外周に差し込んだ前記燃料パイプにより押圧されて、前記燃料パイプの外面に沿う方向に回動し、燃料パイプ押圧面を前記燃料パイプの導電層に押し付ける燃料パイプ押圧部とを有し、前記フィラーネックの本体部の前記燃料パイプ接続部と対向する位置に形成されていることを特徴とする燃料給油装置のアース構造。
前記燃料パイプ押圧面に、前記燃料パイプの導電層に食い込ませるための1乃至複数の接続突起を形成したことを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の燃料給油装置のアース構造。
前記接続突起として、前記燃料パイプ押圧面からの突出高さが異なる複数の前記接続突起を前記燃料パイプ押圧面に形成するか、形成位置により前記燃料パイプ押圧面からの突出高さが変化する1乃至複数の前記接続突起を前記燃料パイプ押圧面に形成することを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載の燃料給油装置のアース構造。
前記燃料パイプ押圧面を、前記燃料パイプ接続部の外面に沿ったV字面、湾曲面又は傾斜面に形成することを特徴とする請求項3乃至請求項6のいずれか1項に記載の燃料給油装置のアース構造。
【背景技術】
【0002】
燃料給油装置は、車外から挿入される給油ノズル(給油ガン)を受け入れて、車体内に設置された燃料タンクへの給油を可能にするものであり、燃料給油装置と燃料タンクとは樹脂製の燃料パイプを介して接続される。また、燃料給油装置の給油ノズル挿入側の端部には、人によって開閉される燃料キャップが備えられている。このような構成においては、燃料の流動による静電気の帯電を防止するため、及び、燃料キャップを開閉する際に人体に帯電した静電気が燃料キャップに放電して人に不快感を与えることを防止するため、発生した静電気を、燃料キャップ、フィラーネック及び燃料パイプを通じて車体に流すためのアース構造を設ける必要がある。
【0003】
従来、この種のアース構造としては、フィラーネックを導電性樹脂にて形成すると共に、樹脂製の燃料パイプの外層に導電層を形成し、フィラーネックと燃料パイプの導電層とを電気的に接続するものが提案されている。
【0004】
図17及び
図18に従来知られているこの種のアース構造の一例を示す(特許文献1の段落0015〜0017及び
図3、
図4参照。)。これらの図において、符号100はフィラーネックに形成された筒状の燃料パイプ接続部、符号200は燃料パイプ接続部100に一端が接続された燃料パイプを示している。燃料パイプ接続部100に対する燃料パイプ200の接続は、燃料パイプ接続部100の外周に燃料パイプ200を差し込むことによって行われる。燃料パイプ接続部100の外周には、環状に形成された複数条の抜け止め突起110と、抜け止め突起110の外周に差し込まれた燃料パイプ200を電気的に接続するアース接続部120と、抜け止め突起110の外周に差し込まれた燃料パイプ200の回り止め突起130とが形成されている。一方、燃料パイプ200の外層には、導電性樹脂などからなる導電層201が形成されている。
【0005】
アース接続部120は、燃料パイプ接続部100の外面から起立された立片121と、立片121の上端から燃料パイプ接続部100の外面と平行に張り出され、その先端が燃料パイプ接続部100の先端側に向けられた押圧部122をもって、L字形に形成されている。押圧部122の内面(燃料パイプ接続部100の外面と対向する面)には、押圧部122と燃料パイプ200との電気的な接続をより確実にするための接続用突起123が設けられる。
【0006】
アース接続部120と燃料パイプ200との電気的な接続は、燃料パイプ200の先端が立片121に突き当てるまで燃料接続部100の外周に燃料パイプ200を差し込み、押圧部122の内面に形成された接続用突起123を、燃料パイプ200の外面に形成された導電層201に食い込ませることにより行われる。このとき、燃料パイプ200の先端には、燃料パイプ接続部100に形成された回り止め突起130が食い込み、燃料パイプ接続部100に対する燃料パイプ200の回転が防止される。特許文献1には、燃料供給装置のアース構造をこのようにすることの効果として、押圧部122の内面に形成された接続用突起123を燃料パイプ200の外周に形成された導電層201に食い込ませるので、アース接続部120と燃料パイプ200との電気的な接続を確実にとることができる、と記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の燃料給油装置のアース構造は、アース接続部120がL字形に形成されているので、アース接続部120の寸法や強度によっては、必ずしもアース接続部120と燃料パイプ200とを安定に接続することができず、これらの間の電気的な接続にばらつきが生じやすいという問題がある。即ち、アース接続部120の剛性が低い場合には、
図19に示すように、燃料パイプ200が差し込まれることによりアース接続部120が弾性変形するため、アース接続部120に形成された接続用突起123がその全長に亘って燃料パイプ200の導電層201に接触することができず、アース接続部120と燃料パイプ200との間の電気的な接続が不安定になる。反対に、アース接続部120の剛性が高い場合には、燃料パイプ200が差し込まれてもアース接続部120が弾性変形しないため、アース接続部120に形成された接続用突起123によって燃料パイプ200の導電層201が損傷されやすく、やはりアース接続部120と燃料パイプ200との間の電気的な接続が不安定になる。さらに、アース接続部120の強度が適当であったとしても、燃料パイプ接続部100の外面とアース接続部120の内面との間の隙間の大きさが大きい場合には、アース接続部120に形成された接続用突起123と燃料パイプ200の導電層201との接触面積が小さくなり、アース接続部120と燃料パイプ200との間の電気的な接続が不安定になる。反対に、前記隙間が小さい場合には、アース接続部120に形成された接続用突起123によって燃料パイプ200の導電層201が損傷されやすく、やはりアース接続部120と燃料パイプ200との間の電気的な接続が不安定になる。
【0009】
本発明は、このような従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、アース接続部の設計及び製造が容易で、しかもアース接続部と燃料パイプとを電気的に確実に接続可能な燃料給油装置のアース構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、このような技術的課題を解決するため、燃料パイプ接続部及びアース接続部を有する導電性のフィラーネックと、外面に導電層を形成した燃料パイプとを、前記アース接続部を用いて電気的に接続する燃料供給装置のアース構造において、前記アース接続部は、前記フィラーネックと一体に形成した立片と、当該立片の先端に形成され、前記燃料パイプ接続部の外周に差し込んだ前記燃料パイプにより押圧されて、前記燃料パイプの外面に沿う方向に回動し、燃料パイプ押圧面を前記燃料パイプの導電層に押し付ける燃料パイプ押圧部とを有
し、前記フィラーネックの本体部の前記燃料パイプ接続部と対向する位置に形成されていることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によると、燃料パイプにより押圧されて回動する燃料パイプ押圧部をアース接続部に備えるので、立片及び燃料パイプ押圧部を含むアース接続部の寸法精度や強度にある程度のばらつきがあったとしても、常に燃料パイプ押圧面の全面を燃料パイプの導電層に押し付けることができる。また、燃料パイプが、燃料パイプ押圧面と燃料パイプ接続部の外面との隙間に無理やり差し込まれるということがないので、燃料パイプに形成された導電層が燃料供給装置の組立時に損傷することがない。よって、アース接続部と燃料パイプとの電気的な接続を安定かつ確実に行うことができ、燃料供給装置のアース構造の組立性及び信頼性を高めることができる。
また、かかる構成によると、アース接続部が燃料パイプ接続部の外方に突出しないので、燃料供給装置をコンパクトに形成することができる。
【0012】
また本発明は、前記構成の燃料給油装置のアース構造において、前記立片の長さ方向の一部に、前記燃料パイプ押圧部の回動を容易にするためのヒンジ部を設けたことを特徴とする。
【0013】
かかる構成によると、燃料パイプの装着時に燃料パイプ押圧部をより回動しやすくできるので、アース接続部と燃料パイプとの電気的な接続をより確実に行うことができる。
【0018】
また本発明は、前記構成の燃料給油装置のアース構造において、前記燃料パイプ押圧面に、前記燃料パイプの導電層に食い込ませるための1乃至複数の接続突起を形成したことを特徴とする。
【0019】
かかる構成によると、接続突起を燃料パイプの導電層に食い込ませることができるので、アース接続部と燃料パイプの導電層との電気的な接続を、より安定かつ確実に行うことができる。
【0020】
また本発明は、前記構成の燃料給油装置のアース構造において、前記燃料パイプ押圧面に、複数の前記接続突起を千鳥状に配置したことを特徴とする。
【0021】
かかる構成によると、燃料パイプ押圧面に複数の接続突起を分散して配置するので、アース接続部と燃料パイプの導電層との電気的な接続を、より安定かつ確実に行うことができる。
【0022】
また本発明は、前記構成の燃料給油装置のアース構造において、前記燃料パイプ押圧面に、平面形状が波形の前記接続突起を1乃至複数個形成したことを特徴とする。
【0023】
かかる構成によると、直線状の接続突起を備える場合に比べて、接続突起と燃料パイプとの接触距離を長くできるので、アース接続部と燃料パイプの導電層との電気的な接続を、より安定かつ確実に行うことができる。
【0024】
また本発明は、前記構成の燃料給油装置のアース構造において、前記接続突起として、前記燃料パイプ押圧面からの突出高さが異なる複数の前記接続突起を前記燃料パイプ押圧面に形成するか、形成位置により前記燃料パイプ押圧面からの突出高さが変化する1乃至複数の前記接続突起を前記燃料パイプ押圧面に形成することを特徴とする。
【0025】
かかる構成によると、アース接続部の寸法精度や強度のばらつきが大きい場合にも、接続突起と燃料パイプとの接触機会を多くできるので、アース接続部と燃料パイプの導電層との電気的な接続を、より安定かつ確実に行うことができる。
【0026】
また本発明は、前記構成の燃料給油装置のアース構造において、前記燃料パイプ押圧面を、前記燃料パイプ接続部の外面に沿ったV字面、湾曲面又は傾斜面に形成することを特徴とする。
【0027】
かかる構成によると、燃料パイプ押圧面と燃料パイプとの接触面積を増加できるので、アース接続部と燃料パイプの導電層との電気的な接続を、より安定かつ確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によると、燃料パイプにより押圧されて回動する燃料パイプ押圧部をアース接続部に備えるので、アース接続部と燃料パイプとの電気的な接続を安定かつ確実に行うことができ、燃料供給装置のアース構造の組立性及び信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る燃料給油装置の実施形態を、図を用いて説明する。
【0031】
実施形態に係る燃料給油装置1は、
図1及び
図2に示すように、フィラーパイプ10、キャップナット20、ノズルガイド30、フィラーネック40、キャッププロテクタ50、フィラーパイプ10とフィラーネック40との間の隙間を密封するOリング60、フィラーネック40にOリング61、62を介して接続される燃料パイプ63、64から構成される。フィラーパイプ10は、車体に開口された給油口に臨む位置に配置される。また、燃料パイプ64は、
図3に示すように、樹脂製の基部64aの外面に導電層64bを形成して成る。なお、
図3の例では、燃料パイプ64が基部64aと導電層64bの2層構造になっているが、基部64aは2層以上の多層構造とすることができ、その場合にも導電層64bは、燃料パイプ64の最外層に形成される。導電層64bは、導電性樹脂等をもって形成される。なお、本実施形態においては、燃料パイプ63には導電層が設けられない。
【0032】
フィラーパイプ10は、給油ノズルの挿入口を構成する部品であり、例えばステンレス鋼板等の高強度の金属材料をもって、筒状に形成される。本例のフィラーパイプ10は、
図4に詳細に示すように、その長さ方向に燃料キャップ装着部11とフィラーネック連結部12とが段部13を介して連続的に形成され、燃料キャップ装着部11の端部には、燃料キャップ(図示省略)を装着して燃料の吹きこぼれを防止するための鍔状の燃料キャップ装着面14が形成される。また、フィラーネック連結部12の開口端側の内周面には、フィラーネック40を係合するための係合段部15が形成される。
【0033】
キャップナット20は、燃料キャップをフィラーパイプ10に着脱可能に螺合するための部品であり、例えば繊維強化ポリアミド樹脂等の耐衝撃性、剛性、及び長寿命性に優れた樹脂材料を用いた樹脂成形品であって、リング状に形成される。また、樹脂成形品に代えて、例えばアルミニウム合金やマグネシウム合金等のダイカスト成形品を用いることもできる。本例のキャップナット20は、
図5に詳細に示すように、外面にノズルガイド30の端部を当接するための段部21が形成され、該段部21を介して一方の周面には、フィラーネック40に対するキャップナット20の回り止め突起として機能する2つの第1係合突起22a、22bが対向に形成される。これら2つの第1係合突起22a、22bは、フィラーネック40に対するキャップナット20の取付方向を規制するため、互いに異なる横幅に形成される。また、段部21を介して他方側の端面には、キャップナット20に対するノズルガイド30の回り止め突起として機能する2つの第2係合突起23a、23bが対向に形成される。これら2つの第2係合突起23a、23bも、キャップナット20に対するノズルガイド30の取付方向を規制するため、互いに異なる横幅に形成される。さらに、キャップナット20の内面の周方向には、燃料キャップAを螺合するための螺旋状のねじ山24が形成される。ねじ山24の周方向長さは、キャップナット20の内面の1周の長さよりも短くなるように調整される。これにより、2分割の金型を用いて、樹脂製又はダイカスト製のキャップナットを成形できるので、キャップナット20の生産性を高めることができ、燃料給油装置1の低コスト化を図ることができる。
【0034】
ノズルガイド30は、車体に開口された給油口を通して車外から挿入された給油ノズルを一定位置に保持するための部品であり、例えばポリアセタール樹脂等の耐衝撃性及び耐摩耗性に優れた樹脂材料をもって漏斗状に形成される。即ち、本例のノズルガイド30は、
図6に詳細に示すように、給油ノズル挿入部31と、燃料導入部32と、これらをつなぐ傾斜部33とを有し、給油ノズル挿入部31の端面には、キャップナット20に形成された2つの第2係合突起23a、23bを係合するための2つの係合凹部34a、34bが形成される。これら2つの係合凹部34a、34bは、横幅が異なる第2係合突起23a、23bを個別に係合できるように、互いに異なる大きさに形成される。また、傾斜部33の外面から燃料導入部32の外面に亘る部分には、フィラーネック40に対するノズルガイド30の回り止め突起、給油される燃料の整流板及び燃料タンクからの吹き返し防止部材として機能する2枚の係合突起35a、35bが平行に形成される。さらに、傾斜部33の一部には、通気孔36が形成される。
【0035】
フィラーネック40は、ノズルガイド30内に挿入された給油ノズルから供給される燃料を燃料タンクに導くための部品であり、金属材料又は導電性樹脂材料を用いて形成される。フィラーネック40の形成材料として、金属材料又は導電性樹脂材料を用いるのは、燃料給油装置のアース作業を容易化するためである。これについては、後に詳細に説明する。本例のフィラーネック40は、
図1及び
図2に示すように、筒状の本体部41と、本体部41の末端に一端が連結された燃料導出パイプ42と、燃料導出パイプ42から分岐されたブリーザパイプ43と、本体部41と一体に形成され、ブリーザパイプ43の外面と対向に配置されたアース接続部49を有している。なお、本明細書においては、燃料導出パイプ42及びブリーザパイプ43を総称して、「燃料パイプ接続部」ということがある。本体部41の端面には、キャップナット20の周面に形成された2つの第1係合突起22a、22bを係合するための2つの係合凹部44a、44bが形成される。また、本体部41の外周面には、Oリング60の装着溝45と、フィラーパイプ10に形成された係合段部15に係合される係止爪46と、キャッププロテクタ50に対するフィラーネック40の回り止め突起47と、キャッププロテクタ50の位置決め突起48とが形成される。また、燃料導出パイプ42の外周面には、Oリング61の装着溝42aと、燃料パイプ63の脱落防止用突起42bと、燃料パイプ63のストッパ42cが形成され、ブリーザパイプ43の外周面には、Oリング62の装着溝43aと、燃料パイプ64の脱落防止用突起43bと、燃料パイプ64のストッパ43cが形成される。
【0036】
アース接続部49は、
図7乃至
図9に拡大して示すように、フィラーネック40の本体部41から起立された立片71と、立片71の先端に形成され、ブリーザパイプ43の外面と対向に配置された燃料パイプ押圧部72と、燃料パイプ押圧部72のブリーザパイプ43の外面との対向面(燃料パイプ押圧面)72aに突設された接続突起73を有している。立片71は、ブリーザパイプ43の外周に差し込まれた燃料パイプ64によって燃料パイプ押圧部72が押圧されたとき、燃料パイプ64の差し込み位置に応じて、矢印Aの方向又は矢印Bの方向に燃料パイプ押圧部72を回動可能な適度の弾性を有するように形成される。また、燃料パイプ押圧部72は、主部72b及び燃料パイプ導入部72cをもって略への字形に形成される。燃料パイプ押圧部72の主部72bは、燃料パイプ押圧面72aとブリーザパイプ43の外面との間に適度な間隙、即ち、燃料パイプ64を挿入可能で、かつ燃料パイプ押圧面72aに形成された接続突起73を燃料パイプ64の外面に形成された導電層64bに接触又は導電層内に食い込ませることが可能な間隙をもって配置される。一方、燃料パイプ押圧部72の燃料パイプ導入部72cは、先端側に至るほど、燃料パイプ押圧面72aとブリーザパイプ43の外面との間の間隙が大きくなるように傾斜させる。本実施形態では、
図8に明示するように、燃料パイプ押圧面72aに複数の接続突起73が千鳥状に配置されている。そして、
図9に示すように、燃料パイプ押圧面72aの幅方向の中央部に配置される接続突起73は、燃料パイプ押圧面72aからの突出高さが低く、燃料パイプ押圧面72aの幅方向の両側部に配置される接続突起73は、燃料パイプ押圧面72aからの突出高さが高くなるように形成される。
【0037】
ブリーザパイプ43の先端側から燃料パイプ64の一端を差し込むと、まず燃料パイプ64の先端が燃料パイプ導入部72cに当接する。この状態からさらに燃料パイプ64を押し込んでゆくと、その押圧力により燃料パイプ押圧部72が
図7に示す矢印Aの方向に回動し、燃料パイプ押圧面72aとブリーザパイプ43の外面との間の間隙が大きくなって、当該間隙内への燃料パイプ64の挿入が容易になる。そして、燃料パイプ64の先端の位置が立片71の設定位置を超えると、今度は燃料パイプ押圧部72が
図7に示す矢印Bの方向に回動し、燃料パイプ64の先端がストッパ43cに当接した段階で、燃料パイプ押圧面72aの全面が燃料パイプ64の導電層64bに均一に押し付けられる。これにより、
図9に示すように、燃料パイプ押圧面72aに形成された複数の接続突起73が、燃料パイプ64の導電層64bに均一に押し込まれ、フィラーネック40と燃料パイプ64とを容易かつ確実に電気的に接続することができる。
【0038】
キャッププロテクタ50は、衝突時の衝撃や車体の変形から給油口を守るための部品であり、例えば繊維強化ポリアミド樹脂等の耐衝撃性、剛性、及び長寿命性に優れた樹脂材料をもって、漏斗状に形成される。即ち、本例のキャッププロテクタ50は、
図1に示すように、椀状部51と、当該椀状部51の底面に連なる円筒部52とから構成されており、円筒部52の周方向には、フィラーネック40に形成された回り止め突起47を挿入するための係合溝53が形成される。
【0039】
以下、実施形態に係る燃料給油装置の組立方法について説明する。
【0040】
まず、フィラーネック40の本体部41内に、燃料導入部32側からノズルガイド30を挿入する。本体部41内に挿入されたノズルガイド30は、2枚の係合突起35a、35bを本体部41内に形成された図示しない嵌合部に嵌合され、フィラーネック40に対する位置決めと回り止めとが行われる。また、これにより、給油される燃料の整流と燃料タンクからの吹き返し防止が可能となる。
【0041】
次いで、フィラーネック40の本体部41に、キャップナット20を装着する。本体部41に対するキャップナット20の装着は、キャップナット20の周面に形成された2つの第1係合突起22a、22bを本体部41の端面に形成された2つの係合凹部44a、44bに係合すると共に、キャップナット20の端面に形成された2つの第2係合突起23a、23bをノズルガイド30の端面に形成された2つの係合凹部34a、34bに係合することにより行う。これにより、フィラーネック40及びノズルガイド30に対するキャップナット20の位置決めが行われる。この場合、第1係合突起22aと22b、係合凹部34aと34b、及び、係合凹部44aと44bは、それぞれ異なる横幅に形成されているので、特定の係合突起が特定の係合凹部に確実に係合され、ノズルガイド30及びフィラーネック40に対するキャップナット20の取付方位を誤ることがない。なお、第2係合突起23a、23b及び係合凹部34a、34bについては、形成を省略することもできる。
【0042】
次いで、フィラーネック40に形成されたOリングの装着溝45にOリング60を装着した後、フィラーネック40の本体部41に、フィラーパイプ10を被着する。フィラーネック40の本体部41に対するフィラーパイプ10の被着は、フィラーパイプ10内にフィラーネック40の本体部41を差し込み、フィラーネック連結部12の内周面に形成された係合段部15に、フィラーネック40に形成された係止爪46を係合することにより行われる。これにより、
図2に示すように、キャップナット20がフィラーパイプ10に形成された燃料キャップ装着面14の裏面に当接され、キャップナット20が固定される。また、フィラーネック40の外面とフィラーパイプ10の内面との間の隙間がOリング60によって密封される。
【0043】
次いで、フィラーネック40の本体部41に、キャッププロテクタ50を取り付ける。フィラーネック40に対するキャッププロテクタ50の取付けは、本体部41の外周面に形成された回り止め突起47をキャッププロテクタ50に形成された係合溝53内に挿入し、キャッププロテクタ50の端面に本体部41の外周面に形成された位置決め突起48に当接することにより行われる。フィラーネック40とキャッププロテクタ50とは、ビス等を用いて固定することもできる。
【0044】
最後に、フィラーネック40に形成されたOリングの装着溝42a、43aに、それぞれOリング61、62を装着した後、フィラーネック40に形成された燃料導出パイプ42及びブリーザパイプ43の外周に燃料パイプ63、64をそれぞれ連結する。燃料導出パイプ42と燃料パイプ63との間の隙間はOリング61で密封され、プリーザパイプ43と燃料パイプ64との間の隙間はOリング62で密封される。
【0045】
燃料パイプ63、64は、導電性のパイプ保持装置を介して、図示しない車体に固定される。これにより、燃料パイプ64の導電層64bが車体と電気的に接続され、燃料供給装置がアースされる。
【0046】
本例の燃料給油装置1は、燃料パイプ64により押圧されて回動する燃料パイプ押圧部72をアース接続部49に備えるので、立片71及び燃料パイプ押圧部72を含むアース接続部49の寸法精度や強度を高精度に規制しなくても、常に燃料パイプ押圧面72の全面を燃料パイプ64の導電層64bに押し付けることができる。また、燃料パイプ64が燃料パイプ押圧面72とブリーザパイプ43の外面との隙間に無理やり差し込まれないので、燃料パイプ64の導電層64bが燃料供給装置の組立時に損傷しない。よって、アース接続部49と燃料パイプ64との電気的な接続を安定かつ確実に行うことができ、燃料供給装置のアース構造の組立性及び信頼性を高めることができる。さらに、本例の燃料給油装置1は、燃料パイプ押圧面72aに複数の接続突起73を千鳥状に配置したので、アース接続部49と燃料パイプ64の導電層64bとの電気的な接続を、より安定かつ確実に行うことができる。
【0047】
アース接続部49の構成は、前記実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。以下に、種々の変形例を列挙する。
【0048】
前記実施形態では、燃料パイプ押圧面72aの幅方向の中央部及び両側部に、それぞれ燃料パイプ押圧面72aからの突出高さが異なる複数個の接続突起73を形成したが、
図10に示すように、燃料パイプ押圧面72aの幅方向の両側部に、燃料パイプ押圧面72aからの突出高さが同一の1乃至複数個の接続突起73を形成することもできる。
【0049】
前記実施形態では、燃料パイプ押圧面72aに複数個の接続突起73を点状に形成したが、
図11に示すように、燃料パイプ押圧面72aに連続する波形の接続突起73を形成することもできる。なお、
図11においては、波形の接続突起73を1条のみ形成した例が示されているが、燃料パイプ押圧面72aには、複数条の波形の接続突起73を形成することもできる。かかる構成によると、接続突起73と導電層64bとの接触距離を長くできるので、両者の電気的な接続を、より安定かつ確実に行うことができる。
【0050】
前記実施形態では、燃料パイプ押圧面72aに複数個の接続突起73を点状に形成したが、
図12に示すように、燃料パイプ押圧面72aに連続する直線形の接続突起73を形成することもできる。この場合、燃料パイプ押圧面72aからの接続突起73の突出高さを、一定とするのではなく、
図13に示すように、その位置に応じて変化させることもできる。かかる構成によると、アース接続部49の寸法精度や強度のばらつきが大きい場合にも、接続突起73と燃料パイプ64との接触機会を多くできるので、アース接続部49と導電層64bとの電気的な接続を、より安定かつ確実に行うことができる。なお、
図12においては、直線形の接続突起73を1条のみ形成した例が示されているが、燃料パイプ押圧面72aには、複数条の直線形の接続突起73を形成することもできる。かかる構成によると、接続突起73と導電層64bとの接触距離を長くできるので、両者の電気的な接続を、より安定かつ確実に行うことができる。
【0051】
前記実施形態では、燃料パイプ押圧面72aに複数個の接続突起73を点状に形成したが、
図14に示すように、燃料パイプ押圧面72a自体を、ブリーザパイプ43の外面に沿ったV字面、湾曲面又は傾斜面に形成することもできる。かかる構成によると、燃料パイプ押圧面72aと燃料パイプ64との接触面積を大きくできるので、アース接続部49と導電層64bとの電気的な接続を、より安定かつ確実に行うことができる。
【0052】
前記実施形態では、アース接続部49の立片71を、一定厚さの板材をもって形成したが、
図15に示すように、立片71の高さ方向の一部に、ヒンジ71aを形成することもできる。かかる構成によると、燃料パイプ64の装着時に燃料パイプ押圧部72をより回動しやすくできるので、アース接続部49と導電層64bとの電気的な接続を、より安定かつ確実に行うことができる。
【0053】
前記実施形態では、アース接続部49をフィラーネック40の本体部41に形成したが、
図16に示すように、アース接続部49をブリーザパイプ43の外面に形成することもできる。かかる構成によると、燃料パイプ64の接続作業時にアース接続部49を視認しやすいので、燃料パイプ64の接続作業性を高めることができる。
【0054】
その他、前記実施形態では、ブリーザパイプ43の外周に差し込まれる燃料パイプ64の導電層64aと電気的に接続されるアース接続部49を例にとって説明したが、燃料導出パイプ42の外周に差し込まれる燃料パイプ63に導電層を形成すると共に、フィラーネック40の所要の位置に、当該導電層と電気的に接続されるアース接続部49を形成することもできる。