(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
溶融状態の熱可塑性樹脂製シートを、金型のキャビティから離間状態でキャビティのまわりにはみ出すように、キャビティの側方に配置する段階と、配置された熱可塑性樹脂製シートとキャビティとで協働して形成された第1密閉空間内で、熱可塑性樹脂製シートと対向し、かつ金型のキャビティから離間状態でキャビティのまわりにはみ出すように保持された加飾シートを熱可塑性樹脂製シートに対して、積層するように面接着させる段階と、前記第1密閉空間内をキャビティ側から真空吸引することにより、面接着された熱可塑性樹脂製シートおよび加飾シートをキャビティに対して押圧して、賦形する段階と、を有し、
前記熱可塑性樹脂製シートのキャビティの側方への配置段階は、溶融状態の熱可塑性樹脂製シートを押し出す段階を有する、ことを特徴とする加飾成形方法。
溶融状態の熱可塑性樹脂製シートを、金型のキャビティから離間状態でキャビティのまわりにはみ出すように、キャビティの側方に配置する段階と、配置された熱可塑性樹脂製シートとキャビティとで協働して形成された第1密閉空間内で、熱可塑性樹脂製シートと対向し、かつ金型のキャビティから離間状態でキャビティのまわりにはみ出すように保持された加飾シートを熱可塑性樹脂製シートに対して、積層するように面接着させる段階と、前記第1密閉空間内をキャビティ側から真空吸引することにより、面接着された熱可塑性樹脂製シートおよび加飾シートをキャビティに対して押圧して、賦形する段階と、を有し、
前記面接着段階は、加飾シートを金型により保持した後に、熱可塑性樹脂製シートとキャビティとで協働して第1密閉空間を形成する段階を有する、ことを特徴とする加飾成形方法。
前記面接着段階は、熱可塑性樹脂製シートと加飾シートとで協働して、前記第1密閉空間内を加飾シートにより仕切る態様で、両シートの間に第2密閉空間を形成する段階と、該第2密閉空間を真空吸引することにより、加飾シートを熱可塑性樹脂製シートに対して面接着させる段階とを有する、請求項3に記載の加飾成形方法。
溶融状態の熱可塑性樹脂製シートを、金型のキャビティから離間状態でキャビティのまわりにはみ出すように、キャビティの側方に配置する段階と、配置された熱可塑性樹脂製シートとキャビティとで協働して形成された第1密閉空間内で、熱可塑性樹脂製シートと対向し、かつ金型のキャビティから離間状態でキャビティのまわりにはみ出すように保持された加飾シートを熱可塑性樹脂製シートに対して、積層するように面接着させる段階と、前記第1密閉空間内をキャビティ側から真空吸引することにより、面接着された熱可塑性樹脂製シートおよび加飾シートをキャビティに対して押圧して、賦形する段階と、を有し、
加飾シートは、非通気性のシートである、ことを特徴とする加飾成形方法。
金型の外周面に対して外嵌可能な貫通部を有する枠体で、その環状端面には、溶融状態の成形材料シートに対して当接可能な当接面が形成され、該当接面は、外周側には、熱可塑性樹脂製シートに対して当接可能な熱可塑性樹脂製シート用環状当接面と、内周側には、加飾シートの外周部に対して当接可能な加飾シート用環状当接面とを有し、
該枠体は、熱可塑性樹脂製シートと加飾シートとを面接着するためのエア排出用貫通孔を備え、
該熱可塑性樹脂製シート用環状当接面は、前記加飾シート用環状当接面に対して突出する、ことを特徴とする、加飾シートによる加飾成形用金型部品。
前記加飾成形用金型部品は、環状一体品であり、前記熱可塑性樹脂製シート用環状当接面は、前記環状端面の外周縁まで及び、前記加飾シート用環状当接面は、前記環状端面の内周縁まで及び、前記熱可塑性樹脂製シート用環状当接面と前記加飾シート用環状当接面との間に段差が形成される、請求項6に記載の加飾シートによる加飾成形用金型部品。
前記加飾成形用金型部品は、外枠体と内枠体とを有し、前記外枠体は、前記熱可塑性樹脂製シート用環状当接面を有し、前記内枠体は、前記加飾シート用環状当接面を有し、前記外枠体と前記内枠体とは、前記外枠体の内周面が前記内枠体の外周面に対して摺動可能に、互いに相対移動可能である、請求項6に記載の加飾シートによる加飾成形用金型部品。
前記加飾成形用金型部品は、前記外枠体の内周面が前記内枠体の外周面に対して突出する際、露出するように、エア排出用貫通孔を前記外枠体の厚み方向に設ける、請求項8に記載の加飾シートによる加飾成形用金型部品。
一方の側に、環状ピンチオフ部と環状ピンチオフ部の内側に形成されたキャビティとを有する金型であって、請求項6ないし請求項9のいずれか1項に記載の前記加飾シートによる加飾成形用金型部品が、前記当接面が前記キャビティ側に位置するように、前記金型の外周側面に外嵌するように設けられ、前記キャビティには、前記熱可塑性樹脂製シート用環状当接面が金型のキャビティの側方に配置された熱可塑性樹脂製シートに当接することにより、熱可塑性樹脂製シートの外面、前記加飾成形用金型部品の内周面およびキャビティにより形成される第1密閉空間を真空吸引するための真空吸引孔が設けられる、ことを特徴とする加飾シートによる加飾成形用金型。
熱可塑性樹脂を押出成形により賦形し、一次成形された熱可塑性樹脂を垂下する形態で押し出す一次成形部と、一次成形部により押し出された熱可塑性樹脂をブロー成形あるいは真空成形により二次成形する二次成形部とを有する、熱可塑性樹脂の成形装置において、前記一次成形部は、熱可塑性樹脂を溶融混練する溶融混練手段と、溶融混練した熱可塑性樹脂を所定量貯留する貯留手段と、貯留された熱可塑性樹脂を溶融状態のシート状に垂下するように、間欠的に押し出す押出スリットと、を有し、前記二次成形部は、請求項10に記載の前記加飾シートによる加飾成形用金型を有することを特徴とする加飾シートによる加飾成形装置。
さらに、前記第1密閉空間、および前記熱可塑性樹脂製シートの表面、前記加飾成形用金型部品の内周面および前記加飾シートの表面により形成される第2密閉空間を真空吸引する単一の共用真空ポンプと、先端部には、前記第1密閉空間および前記第2密閉空間それぞれに連通する分岐部を備え、該真空ポンプに接続される吸引管とが設けられる、請求項11に記載の加飾シートによる加飾成形装置。
請求項7に記載の加飾シートによる加飾成形用金型部品を、前記当接面がキャビティ側に位置するように、金型の外周側面に外嵌するように準備する段階と、加飾シートを前記段差により保持する段階と、前記熱可塑性樹脂製シート用環状当接面が熱可塑性樹脂製シートに当接するまで、前記加飾成形用金型部品を型締め方向に移動させることにより、前記熱可塑性樹脂製シートの表面、前記加飾成形用金型部品の内周面およびキャビティの表面により、前記第1密閉空間を形成するとともに、前記熱可塑性樹脂製シートの表面、前記加飾成形用金型部品の内周面および前記加飾シートの表面により、前記第2密閉空間を形成する段階と、を有する、請求項4に記載の加飾成形方法。
請求項8に記載の加飾シートによる加飾成形用金型部品を、前記当接面がキャビティ側に位置するように、金型の外周側面に外嵌するように準備する段階と、前記加飾シート用環状当接面を少なくともピンチオフ部の頂部より突出する位置まで、前記内枠体を型締め方向に移動させる段階と、加飾シートを前記加飾シート用環状当接面の外周縁から突出しないように、前記加飾シート用環状当接面により保持する段階と、前記熱可塑性樹脂製シート用環状当接面が熱可塑性樹脂製シートに当接するまで、前記外枠体を型締め方向に移動させることにより、前記熱可塑性樹脂製シートの表面、前記加飾成形用金型部品の内周面およびキャビティの表面により、前記第1密閉空間を形成するとともに、前記熱可塑性樹脂製シートの表面、前記加飾成形用金型部品の内周面および前記加飾シートの表面により、前記第2密閉空間を形成する段階と、を有する、請求項4に記載の加飾成形方法。
さらに、ピンチオフ部より外側の熱可塑性樹脂製シートまたは加飾シートの部分にピンを刺す段階と、ピンを介して前記第2密閉空間内を真空吸引する段階とを有する、請求項13または請求項14に記載の加飾成形方法。
前記加飾シートの面接着段階は、前記第2密閉空間内を真空吸引するとともに、加飾シートの表面、前記加飾成形用金型部品の内周面、およびキャビティにより形成される第3密閉空間内に空気を吹き込む段階を有する、請求項13または請求項14に記載の加飾成形方法。
前記加飾シートの保持段階は、加飾シートの表面、前記加飾成形用金型部品の内周面、およびキャビティにより形成される第3密閉空間内を真空吸引する段階を有する、請求項13または請求項14に記載の加飾成形方法。
溶融状態の熱可塑性樹脂製シートを、金型のキャビティから離間状態でキャビティのまわりにはみ出すように、キャビティの側方に配置する段階と、配置された熱可塑性樹脂製シートとキャビティとで協働して形成された第1密閉空間内で、熱可塑性樹脂製シートと対向し、かつ金型のキャビティから離間状態でキャビティのまわりにはみ出すように保持された加飾シートを熱可塑性樹脂製シートに対して、積層するように面接着させる段階と、前記第1密閉空間内をキャビティ側から真空吸引することにより、面接着された熱可塑性樹脂製シートおよび加飾シートをキャビティに対して押圧して、賦形する段階と、を有し、
前記加飾シートは、前記樹脂製シートと同材質の樹脂製であり、前記加飾シートは、溶融状態の前記樹脂製シートに対して、面接着される、ことを特徴とする加飾成形方法。
溶融状態の熱可塑性樹脂製シートを、金型のキャビティから離間状態でキャビティのまわりにはみ出すように、キャビティの側方に配置する段階と、配置された熱可塑性樹脂製シートとキャビティとで協働して形成された第1密閉空間内で、熱可塑性樹脂製シートと対向し、かつ金型のキャビティから離間状態でキャビティのまわりにはみ出すように保持された加飾シートを熱可塑性樹脂製シートに対して、積層するように面接着させる段階と、前記第1密閉空間内をキャビティ側から真空吸引することにより、面接着された熱可塑性樹脂製シートおよび加飾シートをキャビティに対して押圧して、賦形する段階と、を有し、
前記加飾シートは、前記樹脂製シートと異材質の樹脂製シート部と、不織布製のシート部とが積層されており、前記加飾シートは、溶融状態の前記樹脂製シートに対して、不織布製のシート部を対向させて押圧することにより、アンカー効果に基づいて、面接着される、ことを特徴とする加飾成形方法。
前記加飾シートと前記樹脂製シートとの間に第2密閉空間を形成する際、前記加飾シートと前記樹脂製シートとの間に空気溜まりを形成しないように、第2密閉空間内の空気を外部に排気しつつ、前記加飾シートと前記樹脂製シートとを面接着する段階を有する、請求項4に記載の加飾成形方法。
前記金型の枠体に設けた貫通孔を通じて、前記加飾シートと前記樹脂製シートとの間の第2密閉空間を真空吸引することにより、前記加飾シートと前記樹脂製シートとを面接着する段階を有する、請求項24に記載の加飾成形方法。
前記加飾シートと対応するキャビティとの間の第3密閉空間内を加圧することにより、前記加飾シートを前記樹脂製シートに対して押圧しつつ、前記金型の枠体に設けた貫通孔を通じて、第2密閉空間内の空気を外部に排気することにより、前記加飾シートと前記樹脂製シートとを面接着する段階を有する、請求項24に記載の加飾成形方法。
前記第2密閉空間を真空吸引する際、前記内枠体を型締め方向に移動させることにより、前記加飾シートを前記樹脂製シートに近づけながら行う段階をさらに有する、請求項14に記載の加飾成形方法。
請求項8に記載の加飾シートによる加飾成形用金型部品を、前記当接面がキャビティ側に位置するように、一対の分割金型の少なくとも一方の外周側面に外嵌するように準備する段階と、一対の分割形式の金型のキャビティのまわりにはみ出す形態で、互いに間隔を隔てた2条の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートを、一対の分割形式の金型間に位置決めする段階と、前記加飾シート用環状当接面を少なくともピンチオフ部の頂部より突出する位置まで、前記内枠体を型締め方向に移動させる段階と、加飾シートを前記加飾シート用環状当接面の外周縁から突出しないように、前記加飾シート用環状当接面により保持する段階と、前記熱可塑性樹脂製シート用環状当接面が対応する熱可塑性樹脂製シートに当接するまで、前記外枠体を型締め方向に移動させることにより、前記対応する熱可塑性樹脂製シートの表面、前記加飾成形用金型部品の内周面および前記加飾シートの表面により、第2密閉空間を形成する段階と、該第2密閉空間を真空吸引することにより、加飾シートを熱可塑性樹脂製シートに対して面接着させる段階と、熱可塑性樹脂製シートに対して面接着した加飾シートの表面、前記加飾成形用金型部品の内周面および前記キャビティの表面により形成される第1密閉空間内をキャビティ側から真空吸引することにより、面接着された熱可塑性樹脂製シートおよび加飾シートをキャビティに対して押圧して、賦形する一方、一対の分割形式の金型を型締して、一対の分割形式の金型内に密閉空間を形成する段階とを有し、それにより、2条の熱可塑性樹脂製シートの周縁同士を溶着し、さらに、該密閉空間内から加圧することにより、あるいは型締された他方の分割金型を通じて該密閉空間内を吸引することにより、該密閉空間内の他方の分割金型のキャビティに対向する熱可塑性樹脂製シートを賦形する段階と、を有する、ことを特徴とする加飾成形方法。
前記分割金型の型締段階は、前記第1密閉空間内をキャビティ側から真空吸引することにより、面接着された熱可塑性樹脂製シートおよび加飾シートをキャビティに対して押圧して、賦形する段階が完了した後に行う、請求項28に記載の加飾成形方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明に係る樹脂成形品の成形装置の第1実施形態を図面を参照しながら、以下に詳細に
説明する。
本実施形態では、樹脂成形品として、二条の熱可塑性樹脂製シートPを用いた二重壁構造の成形品を対象としており、二条の熱可塑性樹脂製シートPを同時に成形し、その際、各熱可塑性樹脂製シートPについて、溶融状態の熱可塑性樹脂をシート状にTダイの押出スリットより下方に垂下する形態で押し出し、二次成形において、下方に押し出された二条の熱可塑性樹脂製シートPを用いて分割金型の型締を通じて真空成形により樹脂成形品を成形する。
【0024】
図1に示すように、樹脂成形品の成形装置10は、熱可塑性樹脂を押出成形により賦形し、一次成形された熱可塑性樹脂を垂下する形態で押し出す一次成形部と、一次成形部により押し出された熱可塑性樹脂をブロー成形あるいは真空成形により二次成形する二次成形部とを有し、一次成形部は、押出装置12を有し、押出装置12は、熱可塑性樹脂を溶融混練する溶融混練手段と、溶融混練した熱可塑性樹脂を所定量貯留する貯留手段と、貯留された熱可塑性樹脂を溶融状態のシート状に垂下するように、間欠的に押し出す押出スリットと、を有する。
一方、二次成形部は、押出装置12の下方に配置された型締装置14を有し、押出装置12から押出された溶融状態の熱可塑性樹脂製シートを型締装置14に送り、型締装置14により溶融状態の熱可塑性樹脂製シートを成形するようにしている。
【0025】
押出装置12は、従来既知のタイプであり、その詳しい説明は省略するが、ホッパー16
が付設されたシリンダー18と、シリンダー18内に設けられたスクリュー(図示せず)と、スクリューに連結された油圧モーター20と、シリンダー18と内部が連通したアキュムレータ24と、アキュムレータ24内に設けられたプランジャー26とを有し、ホッパー16から投入された樹脂ペレットが、シリンダー18内で油圧モーター20によるスクリューの回転により溶融、混練され、溶融状態の樹脂がアキュムレータ24室に移送されて一定量貯留され、プランジャー26の駆動によりTダイ28に向けて溶融樹脂を送り、押出スリット34を通じて熱可塑性樹脂製シートが押し出され、間隔を隔てて配置された一対のローラー30によって挟圧されながら下方へ向かって送り出されて分割金型32の間に垂下される。これにより、後に詳細に説明するように、熱可塑性樹脂製シートが上下方向(押出方向)に一様な厚みを有する状態で、分割金型32の間に配置される。
【0026】
押出装置12の押出の能力は、成形する樹脂成形品の大きさ、熱可塑性樹脂製シートのドローダウンあるいはネックイン発生防止の観点から適宜選択する。より具体的には、実用的な観点から、間欠押出における1ショットの押出量は好ましくは1〜10kgであり、押出スリット34からの樹脂の押出速度は、数百kg/時以上、より好ましくは700kg/時以上である。また、熱可塑性樹脂製シートPのドローダウンあるいはネックイン発生防止の観点から、熱可塑性樹脂製シートの押出工程はなるべく短いのが好ましく、樹脂の種類、MFR値、メルトテンション値に依存するが、一般的に、押出工程は40秒以内、より好ましくは10〜20秒以内に完了するのがよい。このため、熱可塑性樹脂の押出スリット34からの単位面積、単位時間当たりの押出量は、50kg/時cm
2 以上、より好ましくは150kg/時cm
2以上である。例えば、スリット間隔が0.5mm、スリットの幅方向の長さが1000mmのTダイ28の押出スリット34から、密度0.9g/cm
3 の熱可塑性樹脂を用いて厚さ1.0mm、幅1000mm、押出方向の長さが2000mmの熱可塑性樹脂製シートとして15秒間で押し出す場合、1.8kgの熱可塑性樹脂を1ショット15秒間で押し出したこととなり、押出速度は432kg/時であり、単位面積当りの押出速度は約86kg/時cm
2 と算出することができる。
【0027】
後に説明するように、一対のローラー30の回転により一対のローラー30間に挟み込まれた熱可塑性樹脂製シートPを下方に送り出すことで、熱可塑性樹脂製シートPを延伸薄肉化することが可能であり、押し出される熱可塑性樹脂製シートPの押出速度と一対のローラー30による熱可塑性樹脂製シートPの送り出し速度との関係を調整することにより、ドローダウンあるいはネックインの発生を防止することが可能であるから、樹脂の種類、特にMFR値およびメルトテンション値、あるいは単位時間当たりの押出量に対する制約を小さくすることが可能である。
【0028】
図1に示すように、Tダイ28に設けられる押出スリット34は、鉛直下向きに配置され、押出スリット34から押し出された熱可塑性樹脂製シートは、そのまま押出スリット34から垂下する形態で、鉛直下向きに送られるようにしている。
【0029】
Tダイ28より押出されたシートは、分割金型32間に垂下された状態で、つまり型締めされる時点において押出し方向の厚みが均一となるように調整することが好ましい。この場合、スリット隙間Aを押出し開始から徐々に広げ、押出し終了時に最大となるように変動させる。これによりTダイ28より押出されるシートの厚みは押出し開始から徐々に厚くなるが、溶融状態で押出されたシートは自重により引き伸ばされてシートの下方から上方へ徐々に薄くなるため、スリット隙間Aを広げて厚く押出した分とドローダウン現象により引き伸ばされて薄くなった分が相殺されて、シート上方から下方にわたって均一な厚みに調整することができる。
【0030】
図2および
図3を参照して、一対のローラー30について説明すれば、一対のローラー30は、押出スリット34の下方において、各々の回転軸が互いに平行にほぼ水平に配置され、一方が回転駆動ローラー30Aであり、他方が被回転駆動ローラー30Bである。より詳細には、
図1に示すように、一対のローラー30は、押出スリット34から下方に垂下する形態で押し出される熱可塑性樹脂製シートPに関して、線対称となるように配置される。それぞれのローラーの直径およびローラーの軸方向長さは、成形すべき熱可塑性樹脂製シートPの押出速度、シートの押出方向長さおよび幅、ならびに樹脂の種類等に応じて適宜設定すればよいが、後に説明するように、一対のローラー30間に熱可塑性樹脂製シートPを挟み込んだ状態で、ローラーの回転により熱可塑性樹脂製シートPを円滑に下方に送り出す観点から、回転駆動ローラー30Aの径は、被回転駆動ローラー30Bの径より若干大きいのが好ましい。ローラーの径は50〜300mmの範囲であることが好ましく、熱可塑性樹脂製シートとの接触においてローラーの曲率が大きすぎてもまた、小さすぎても熱可塑性樹脂製シートがローラーへ巻き付く不具合の原因となる。
【0031】
回転駆動ローラー30Aには、ローラー回転駆動手段94およびローラー移動手段96が
付設され、ローラー回転駆動手段94により、回転駆動ローラー30Aは、その軸線方向を中心に回転可能とされ、一方ローラー移動手段96により、回転駆動ローラー30Aは、一対のローラー30を包含する平面内で被回転駆動ローラー30Bとの平行な位置関係を保持しつつ、被回転駆動ローラー30Bに向かって近づき、あるいは被回転駆動ローラー30Bから離れるように移動されるようにしている。
【0032】
より詳細には、ローラー回転駆動手段94は、回転駆動ローラー30Aに連結した回転駆動モータ98であり、回転駆動モータ98の回転トルクをたとえば歯車減速機構(図示せず)を介して回転駆動ローラー30Aに伝達するようにしている。回転駆動モータ98は、従来既知のものであり、その回転数を調整可能なように回転数調整装置100が付設されている。この回転数調整装置100は、たとえば電動モーターに対する電流値を調整するものでよく、後に説明するように、熱可塑性樹脂製シートPが押出スリット34から押し出される押出速度と、一対のローラー30の回転により熱可塑性樹脂製シートPが下方に送り出される送り出し速度との相対速度差を、熱可塑性樹脂製シートPの押出速度に応じて、調整するようにしている。
熱可塑性樹脂製シートのローラーによる送り出し速度は、例えば直径100mmの一対のローラーを用いて、送り出し方向に長さ2000mmの熱可塑性樹脂製シートを15秒間で送り出す場合、1ショット15秒間で約6.4回転することとなり、ローラーの回転速度は約25.5rpmと算出することができる。ローラーの回転速度を上げ下げすることで熱可塑性樹脂製シートPの送り出し速度を容易に調整することができる。
【0033】
図2に示すように、被回転駆動ローラー30Bが回転駆動ローラー30Aと同調して回転駆動するように、被回転駆動ローラー30Bは、その端周面102に亘ってローラーの回転軸を中心に回転可能な第1歯車104を有し、一方回転駆動ローラー30Aは、その端周面107に亘ってローラーの回転軸を中心に回転可能な、第1歯車104と噛み合う第2歯車108を有する。
【0034】
図3に示すように、ローラー移動手段96は、ピストンーシリンダ機構からなり、ピストンロッド109の先端が、回転駆動ローラー30Aをその軸線方向に回転可能に支持するカバー117に連結され、たとえば空気圧を調整することにより、ピストン113をシリンダー115に対して摺動させ、それにより回転駆動ローラー30Aを水平方向に移動するようにし、以て一対のローラー30同士の間隔を調整可能としている。この場合、後に説明するように、シート状樹脂の最下部が一対のローラー30の間に供給される前に、一対のローラー30同士の間隔を供給されるシート状樹脂の厚みより広げて(
図3(A)の間隔D1を構成する開位置)、シート状樹脂が円滑に一対のローラー30の間に供給されるようにし、その後に一対のローラー30同士の間隔を狭めて、一対のローラー30によりシート状樹脂を挟み込み(
図3(A)の間隔D2を構成する閉位置)、ローラーの回転によりシート状樹脂を下方に送り出すようにしている。ピストン113のストロークは、開位置と閉位置との距離となるように設定すればよい。また、空気圧を調整することにより、シート状樹脂が一対のローラー30の間を通過する際、ローラーからシート状樹脂に作用する押圧力を調整することも可能である。押圧力の範囲は、一対のローラー30が回転することにより、一対のローラー30の表面とシート状樹脂の表面との間に滑りが生じない一方で、一対のローラー30によりシート状樹脂が引きちぎられることのないようにしてシート状樹脂が確実に下方に送り出されるように定められ、樹脂の種類に依存するが、たとえば0.05MPAないし6MPAである。
【0035】
回転駆動ローラー30Aには、一対のローラー30の回転によりシート状樹脂が下方に送り出される際、それぞれ、シート状樹脂を回転駆動ローラー30Aの各端に向かって案内するように方向付けられたヘリカル状の一対の浅溝112がその外周面に亘って設けられる。これにより、シート状樹脂が一対のローラー30を通過することで、シート状樹脂の幅を広げる向きに張った状態とすることが可能である。浅溝112のピッチおよび深さは、シート状樹脂の材質、設定されるローラーの回転速度等に応じて、適宜設定すればよい。ちなみに、
図2における浅溝のピッチは、理解を容易にするために誇張して描いている。
なお、回転駆動ローラー30Aには、シート状樹脂の温度に応じて、ローラーの表面温度を調整する表面温度調整手段を付設してもよく、その構成は、たとえばローラーの内部に冷媒を通し、この冷媒を循環させることにより、ローラーの表面が一対のローラー30により挟み込まれた溶融状態のシート状樹脂により過度に加熱されないように熱交換するようにしてもよい。なお、ローラーの外周面は、耐熱被覆されるのがよい。
【0036】
一方、型締装置14も、押出装置12と同様に、従来既知のタイプであり、その詳しい説明は省略するが、2つの分割形式の金型32A,Bと、金型32A,Bを溶融状態のシート状熱可塑性樹脂製シートPの供給方向に対して略直交する方向に、開位置と閉位置との間で移動さ
せる金型駆動装置とを有する。
【0037】
図1に示すように、2つの分割形式の金型32A,Bは、キャビティ116を対向させた状態で配置され、それぞれキャビティ116が略鉛直方向を向くように配置される。それぞれのキャビティ116の表面には、溶融状態の熱可塑性樹脂製シートに基づいて成形される成形品の外形、および表面形状に応じて凹凸部が設けられる。2つの分割形式の金型32A,Bそれぞれにおいて、キャビティ116のまわりには、ピンチオフ部118が形成され、このピンチオフ部118は、キャビティ116のまわりに環状に形成され、対向する金型32A,Bに向かって突出する。これにより、2つの分割形式の金型32A,Bを型締する際、それぞれのピンチオフ部118の先端部が当接し、溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPの周縁にパーティングラインPLが形成されるようにしている。
【0038】
図4に示すように、金型32A,Bは、ほぼ同様な構造であり、いずれも、一方の側に、環状ピンチオフ部118と環状ピンチオフ部118の内側に形成されたキャビティ116とを有する。
一方の金型32Aには、加飾シートDによる加飾成形用金型部品200が、当接面がキャビティ116側に位置するように、金型32の外周側面に外嵌するように設けられ、キャビティ116には、熱可塑性樹脂製シートPの外面、加飾成形用金型部品200の内周面およびキャビティ116により形成される第1密閉空間230を真空吸引するための真空吸引孔122(
図5参照)が設けられる。
加飾シートDによる加飾成形用金型部品200は、金型32の外周面204に対して外嵌可能な貫通部203を有する枠体で、その環状端面には、溶融状態の成形材料シートに対して当接可能な当接面が形成され、当接面は、外周側には、熱可塑性樹脂製シートPに対して当接可能な熱可塑性樹脂製シート用環状当接面202と、内周側には、加飾シートDの外周部260に対して当接可能な加飾シート用環状当接面206とを有し、熱可塑性樹脂製シート用環状当接面202は、加飾シート用環状当接面206に対して突出可能としている。
【0039】
より詳細には、熱可塑性樹脂製シート用環状当接面202は、金型32のキャビティ116の側方に配置された熱可塑性樹脂製シートPに当接するように構成され、そのために、加飾成形用金型部品200は、互いに嵌合関係をなす外枠体208と内枠体210とを有し、外枠体208は、熱可塑性樹脂製シート用環状当接面202を有し、内枠体210は、加飾シート用環状当接面206を有し、外枠体208と内枠体210とは、型枠移動装置に(図示せず)により、外枠体208の内周面252が内枠体210の外周面204に対して摺動可能に、互いに相対移動可能であり、外枠体208に、エア排出用貫通孔212を有する。エア排出用貫通孔212は、たとえば、外枠体208の環状方向に間隔を隔てて複数設けるのでもよい。
より具体的には、
図12に示すように、外枠体208は、控え位置(
図12(B))と、熱可塑性樹脂製シートPに当接する当接位置(
図12(A))との間で移動可能であり、外枠体208が当接位置に位置する際、外枠体208が内枠体210に対して型締め方向に突出し、それにより、外枠体208の厚み方向に設けたエア排出用貫通孔212が露出可能としている。
同様に、
図13に示すように、内枠体210は、控え位置(
図13(B))と、加飾シートDに当接する当接位置(
図13(A))との間で移動可能であり、内枠体210が当接位置に位置する際、内枠体210が、少なくとも、後に説明する金型32のピンチオフ部118より型締め方向に突出し、それにより、内枠体210の型締め方向に設けたエア排出用貫通孔219を介して内枠体210の加飾シート用環状当接面206に当接する加飾シートDを真空吸引することにより、保持するようにしている。エア排出用貫通孔219は、たとえば、内枠体210の環状方向に間隔を隔てて複数設けるのでもよい。
それにより、
図7に示すように、外枠体208が当接位置に位置するとともに、内枠体210が当接位置に位置することにより、熱可塑性樹脂製シートPの内表面248、外枠体208の内周面250および加飾シートDの外表面258により、第2密閉空間232が形成され、エア排出用貫通孔212を介して第2密閉空間232を真空吸引可能なようにしている。
熱可塑性樹脂製シート用環状当接面202および加飾シート用環状当接面206それぞれの幅W1、W2は、その目的用途、すなわち、熱可塑性樹脂製シート用環状当接面202においては、熱可塑性樹脂製シートに当接した状態で、第1密閉空間230を真空吸引する際、当接状態を維持できる観点、一方、加飾シート用環状当接面206においては、加飾シートDに当接した状態で、第2密閉空間232を真空吸引する際、当接状態を維持できる観点から決定すればよい。
他方の金型32Bについては、金型32Aとは異なり、加飾シートDによる加飾成形を行わないことから、加飾シートDによる加飾成形用金型部品200は設置せず、金型32Bの外周部には、型枠33Bが摺動可能に外嵌し、図示しない型枠移動装置により、型枠33Bが金型32Bに対して相対的に移動可能としている。より詳細には、型枠33Bは、金型32Bに対して金型32Aに向かって突出することにより、金型32A,B間に配置された熱可塑性樹脂製シートP1の側面に当接可能としている。
【0040】
加飾成形用金型部品200は、
図17に示すように、分割金型32Aを四角形で囲むように設けられており、外枠体208においては、熱可塑性樹脂シートPと当接する熱可塑性樹脂製シート用環状当接面202に吸引開口部271を有するともに、内枠体210においては、加飾シートDと当接する加飾シート用環状当接面206に吸引開口部270を有するように構成している。吸引開口部270、271はそれぞれ、いずれも環状体をなす熱可塑性樹脂製シート用環状当接面202および加飾シート用環状当接面206の環状方向に所定間隔を隔てて複数設けられて、空気を吸引するものであり、吸引開口部270、271の吸引により加飾シートDおよび熱可塑性樹脂シートPを加飾シート用環状当接面206および熱可塑性樹脂製シート用環状当接面202それぞれに吸引し、加飾シートDおよび熱可塑性樹脂シートPを対応する当接面に密着させることにしている。なお、吸引開口部270は、様々な形状(例えば、円状、楕円状、多角形状など)で形成することが可能であるが、
図17に示すように溝状(線状)に形成することが好ましい。例えば、吸引開口部270、271を孔状(点状)にした場合は、加飾シートDおよび熱可塑性樹脂シートPを対応する当接面に部分的に吸着することになり、吸引開口部270、271により吸着されていない部分の加飾シートDおよび熱可塑性樹脂シートPが対応する当接面から浮いてしまう場合がある。このため、吸引開口部270、271を溝状(線状)に形成することで、加飾シートDおよび熱可塑性樹脂シートPを対応する当接面に溝状に吸着することができるため、吸引開口部270、271により吸着されていない部分の加飾シートDおよび熱可塑性樹脂シートPを対応する当接面から浮き難くさせることができる。
【0041】
金型駆動装置については、従来と同様のものであり、その説明は省略するが、2つの分割形式の金型32A,Bはそれぞれ、金型駆動装置により駆動され、開位置において、2つ
の分割金型32A,Bの間に、溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPが配置可能なようにさ
れ、一方閉位置において、2つの分割金型32A,Bのピンチオフ部118が当接し、環
状のピンチオフ部118が互いに当接することにより、2つの分割金型32A,B内に密
閉空間が形成されるようにしている。なお、開位置から閉位置への各金型32A,Bの移
動について、閉位置は、溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPの中心線の位置とし、各金型32
32A,Bが金型駆動装置により駆動されてその位置に向かって移動するようにしている
。
【0042】
図5に示すように、一方の分割金型32Aの内部にある真空吸引室120Aにより、吸引穴122Aを介してキャビティ116Aに連通し、真空吸引室120Aから吸引穴122Aを介して吸引することにより、キャビティ116Aに向かって加飾シートD/フィルムと一体化された熱可塑性樹脂製シートPを吸着させて、キャビティ116Aの外表面に沿った形状に賦形するようにしている。
一方の分割金型32Bの内部にも真空吸引室120Bが設けられ、真空吸引室120Bは吸引穴122Bを介してキャビティ116Bに連通し、真空吸引室120Bから吸引穴122Bを介して吸引することにより、キャビティ116Bに向かって熱可塑性樹脂製シートPを吸着させて、キャビティ116Bの外表面に沿った形状に賦形するようにしている。
【0043】
熱可塑性樹脂製シートPは、ポリプロピレン、エンジニアリングプラスチックス、オレフィン系樹脂などから形成されたシートからなる。より詳細には、熱可塑性樹脂製シートPは、ドローダウン、ネックインなどにより肉厚のバラツキが発生することを防止する観点から溶融張力の高い樹脂材料を用いることが好ましく、一方で金型32への転写性、追従性を良好とするため流動性の高い樹脂材料を用いることが好ましい。
【0044】
具体的にはエチレン、プロピレン、ブテン、イソプレンペンテン、メチルペンテン等のオレフィン類の単独重合体あるいは共重合体であるポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン)であって、230℃におけるMFR(JIS K−7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)が3.0g/10分以下、さらに好ましくは0.3〜1.5g/10分のもの、またはアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ポリスチレン、高衝撃ポリスチレン(HIPS樹脂)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等の非晶性樹脂であって、200℃におけるMFR(JIS K−7210に準じて試験温度200℃、試験荷重2.16kgにて測定)が3.0〜60g/10分、さらに好ましくは30〜50g/10分でかつ、230℃におけるメルトテンション(株式会社東洋精機製作所製メルトテンションテスターを用い、余熱温度230℃、押出速度5.7mm/分で、直径2.095mm、長さ8mmのオリフィスからストランドを押し出し、このストランドを直径50mmのローラに巻き取り速度100rpmで巻き取ったときの張力を示す)が50mN以上、好ましくは120mN以上のものを用いて形成される。
【0045】
また、熱可塑性樹脂製シートPには衝撃により割れが生じることを防止するため、水素添加ス
チレン系熱可塑性エラストマーが30wt%未満、好ましくは15wt%未満の範囲で添加されていることが好ましい。具体的には水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしてスチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体、水添スチレン−ブタジエンゴムおよびその混合物が好適であり、スチレン含有量が30wt%未満、好ましくは20wt%未満であり、230℃におけるMFR(JIS K−7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)は1.0〜10g/10分、好ましくは5.0g/10分以下で、かつ1.0g/10分以上あるものがよい。
【0046】
さらに、熱可塑性樹脂製シートPには添加剤が含まれていてもよく、その添加剤としては
、シリカ、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機フィラー、可塑剤、安定剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤等が挙げられる。
具体的にはシリカ、マイカ、ガラス繊維等を成形樹脂に対して50wt%以下、好ましくは30〜40wt%添加する。
【0047】
加飾シートDは、樹脂製シートと同材質の樹脂製であり、加飾シートDは、溶融状態の樹脂製シートに対して、面接着される。変形例として、加飾シートDは、樹脂製シートと異材質の樹脂製シート部と、不織布製のシート部とが積層されており、加飾シートDは、溶融状態の樹脂製シートに対して、不織布製のシート部を対向させて押圧することにより、アンカー効果に基づいて、面接着される。いずれの場合も、加飾シートDは、非通気性のシートであっても、加飾成形が可能であり、後に説明するように、従来のように、通気性を具備させるために加飾シートDに微細な貫通孔を設け、加飾シートDの美的外観が劣化するのを回避することが可能である。
なお、加飾シートDが、樹脂製シートと同材質の樹脂製である場合には、溶融状態の樹脂製シートに対して、面溶着が可能であるが、加飾シートDが、樹脂製シートと異材質の樹脂製シート部と、不織布製のシート部とが積層される場合には、溶融状態の樹脂製シートに対して、面溶着ではなく、面接着される。
【0048】
図14に示すように、第1密閉空間230、第2密閉空間232、第3密閉空間234および第4密閉空間262それぞれを真空吸引するのに、単一の真空ポンプ240を採用して、共用化を図っている。より詳細には、単一の真空ポンプ240と、第1密閉空間230、第2密閉空間232、第3密閉空間234および第4密閉空間262それぞれとを接続する吸引管244AないしDを設け、吸引管244AないしDそれぞれに仕切弁245AないしDを設置することにより、たとえば、単一の真空ポンプ240により第1密閉空間230を真空吸引する場合には、仕切弁245Aを開、仕切弁245BないしDを閉とすればよい。これにより、真空ポンプの共用化を通じてコストダウンを達成している。
【0049】
以上の構成を有する樹脂成形品の成形装置10の作用を、図面を参照しながら以下に説明
する。
まず、
図18に示すように、それぞれの分割金型32A,Bにおいて、溶融混練した熱可塑性樹脂をアキュムレータ24内に所定量貯留し、Tダイ28に設けられた所定間隔の押出スリット34から、貯留された熱可塑性樹脂を単位時間当たり所定押出量で間欠的に押し出すことにより、熱可塑性樹脂はスウェルし、溶融状態のシート状に下方に垂下するように所定の厚みにて所定押出速度で押し出される。
【0050】
次いで、ピストンーシリンダー機構96を駆動することにより、
図3(A)に示すように、一対のローラー30を開位置に移動し、押出スリット34の下方に配置された一対のローラー30同士の間隔を熱可塑性樹脂製シートPの厚みより広げることにより、下方に押し出された
溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPの最下部が一対のローラー30間に円滑に供給されるようにする。なお、ローラー30同士の間隔を熱可塑性樹脂製シートPの厚みより広げるタイミングは、押し出し開始後でなく、ワンショットごとに二次成形が終了時点で行ってもよい。
次いで、ピストンーシリンダー機構96を駆動することにより、
図3(B)に示すように、一対のローラー30同士を互いに近接させて閉位置に移動し、一対のローラー30同士の間隔を狭めて熱可塑性樹脂製シートPを挟み込み、ローラーの回転により熱可塑性樹脂製シートPを下方に送り出す。その際、ローラー30の回転によりスウェルした状態の熱可塑性樹脂製シートPが一対のローラー30に送られている間、一対のローラー30による熱可塑性樹脂製シートPの下方への送り出し速度が、熱可塑性樹脂製シートPの押出速度以上となるようにローラーの回転速度を調整する。
より詳細には、スウェルした状態の熱可塑性樹脂製シートPが一対のローラー30に下方に送り出されるにつれて、鉛直方向に垂下する熱可塑性樹脂製シートPの長さが長くなり、それに起因して垂下する熱可塑性樹脂製シートPの上部ほど熱可塑性樹脂製シートPの自重により薄肉化されるところ(ドローダウンあるいはネックイン)、その一方で一対のローラー30による送り出し速度を押出速度以上となるようにローラーの回転速度を調整することにより、熱可塑性樹脂製シートPは一対のローラー30により下方に引っ張られ、熱可塑性樹脂製シートPは延伸薄肉化される。
このとき、時間経過とともにローラーの回転速度を低下させて、送り出し速度を熱可塑性
樹脂製シートの押出速度に近づけるように調整する。
【0051】
たとえば、
図6(A)に示すように、熱可塑性樹脂製シートPの押出速度を一定にする一方、ローラーの回転速度を時間経過とともに段階的に減少させてもよいし、
図6(B)に示すように、ローラーの回転速度を一定にする一方、熱可塑性樹脂製シートPの押出速度を時間経過とともに段階的に減少させてもよいし、
図6(C)に示すように、ローラーの回転速度の方が大きい範囲内でローラーの回転速度および熱可塑性樹脂製シートPの押出速度ともに時間経過とともに段階的に変動させてもよい。
いずれの場合であっても、時間経過とともに、一対のローラー30の回転による熱可塑性樹脂製シートPの下方への送り出し速度と、熱可塑性樹脂製シートPの押出速度との相対速度差が縮まることから、熱可塑性樹脂製シートPの上部ほど一対のローラー30による下方への引っ張り力が低下し、相対的にこのような引っ張り力に伴う延伸薄肉化が低減され、ドローダウンあるいはネックインに伴う薄肉化を相殺し、ドローダウンあるいはネックインを有効に防止し、以て押出方向に一様な厚みを形成することが可能である。
【0052】
この場合、変形例として、押出スリット34の間隔の調整とローラーの回転速度の調整とを連動させてもよい。より詳細には、時間経過とともに、ローラーの回転速度を低下することにより、一対のローラー30による熱可塑性樹脂製シートPの下方への送り出し速度を低下させるとともに、スリット隙間調整装置を用いて、押出スリット34の間隔を広げてもよい。これにより、一次成形の段階で、時間経過とともに、押出スリット34から下方に押し出される熱可塑性樹脂製シートPの厚みが厚肉化すると同時に、一対のローラー30による熱可塑性樹脂製シートPの延伸薄肉効果が低減することから、熱可塑性樹脂製シートPの上部ほど、熱可塑性樹脂製シートPの厚肉化および熱可塑性樹脂製シートPの延伸薄肉効果の低減の相乗効果により、より有効にドローダウンあるいはネックインを防止することが可能となる。
【0053】
特に、
図6(B)および
図6(C)のように、熱可塑性樹脂製シートPの成形中に、熱可塑性樹脂製シートPの押出速度を変動させる場合には、通常、プランジャー26による単位時間当たりの溶融樹脂の押出量を変動させる必要があり、溶融樹脂の押出量を変動させれば押出スリット34から押し出された直後の溶融樹脂のスウェルが影響を受けることから、このようなスウェルに伴う熱可塑性樹脂製シートPの厚肉化の影響を防止するために、ローラーの回転速度の調整とともに押出スリット34の間隔の調整を併行して行うのが好ましい。
より具体的には、単位時間当たりの押出量を増大するほど一次成形の開始から二次成形終了までの成形時間を短縮し、それにより成形効率を向上するとともに、二次成形前に熱可塑性樹脂製シートPが垂下している時間を短縮することでドローダウンあるいはネックイン発生の可能性を低減することが可能であるが、一方において、単位時間当たりの押出量を増大するほど押出スリット34から押し出される熱可塑性樹脂製シートPのスウェルが促進され、そのスウェルに伴う厚肉化に応じて、一対のローラー30同士の間隔の調整が必要となることがある。この点において、押出スリット34の間隔を調整することにより、熱可塑性樹脂製シートPのスウェルによる厚肉化自体を調整すれば技術的に有利である。
【0054】
この場合、押出スリット34の間隔の調整のみを単独で行うことにより、押し出される熱可塑性樹脂製シートPの厚みを調整することは可能であるが、一対のローラー30の回転速度の調整により熱可塑性樹脂製シートPの厚みを調整する方が、以下の点で技術的に有利である。
【0055】
第1に、一対のローラー30の回転速度の調整の方が押出スリット34の間隔の調整より熱可塑性樹脂製シートPの厚みを容易に調整できる点である。より詳細には、溶融樹脂の単位時間当たりの押出量が一定の場合、押出スリット34の間隔が狭いほど熱可塑性樹脂製シートPのスウェルが低減するが、その一方で押出圧力が高まることから熱可塑性樹脂製シートPのスウェルが促進されるため、押出スリット34から押し出された直後の熱可塑性樹脂製シートPの厚みを所望に調整するのは困難であり、現場での試行錯誤により押出スリット34の間隔を決定する必要があり、ましてや成形中に押出スリット34の間隔を変動させて、スウェル後の厚みを調整するのは困難である。
【0056】
第2に、一対のローラー30の回転速度の調整の方が押出スリット34の間隔の調整より熱可塑性樹脂製シートPの厚みに対する応答性に優れる点である。より詳細には、押出スリット34の間隔を変動させる場合、押出スリット34から押し出された直後の熱可塑性樹脂製シートPの厚みが定常状態に達するまでに時間を要し、そのために押し出し直後の熱可塑性樹脂製シートPの部分は二次成形に利用することができず、歩留りの低下が引き起こされる。それに対して、一対のローラー30の回転速度の調整の場合、回転速度の変動に伴い、一対のローラー間に挟み込まれた熱可塑性樹脂製シートPの下方への送り出し速度が変動し、それにより一対のローラーによる熱可塑性樹脂製シートPの引っ張り力が変動し、熱可塑性樹脂製シートPの延伸薄肉化が行われることから、熱可塑性樹脂製シートPの厚みに対する応答性に優れ、歩留りの低下を抑制することが可能である。
【0057】
第3に、一対のローラー30の回転速度の調整の方が押出スリット34の間隔の調整より二次成形による型締直前の熱可塑性樹脂製シートPの厚みを調整できる点である。より詳細には、ドローダウンあるいはネックインにより型締前の熱可塑性樹脂製シートPの厚みが押出方向に不均一であると、ブロー成形あるいは真空成形による賦形作用に悪影響を及ぼすところ、金型32の型締直前に熱可塑性樹脂製シートPの厚みの均一性を確保するのがより好ましく、この点で、押出による一次成形と、ブロー成形あるいは真空成形による二次成形との間で厚みを調整する方が有利である。
【0058】
第4に、加飾シートDの熱可塑性樹脂製シートPへの面接着を円滑かつ確実に行うことが可能となる点である。より詳細には、一対のローラー30により、二次成形直前に熱可塑性樹脂製シートPの厚みを押し出し方向に一様に調整できるので、熱可塑性樹脂製シートPの加飾シートに対向する表面と加飾シートの表面との間に、空気溜まりを形成することなく、密着して面接着させることが可能となる。
【0059】
二次成形に関し、
図18に示すように、押出方向に一様な厚みを形成した2条の熱可塑性樹脂製シートPを一対のローラー30の下方に配置された分割金型32間に配置する。より詳細には、一対の分割形式の金型32のキャビティ116のまわりにはみ出す形態で、互いに間隔を隔てた2条の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPを、一対の分割形式の金型32間に配置する。
次いで、
図1に示すように、内枠体210の加飾シート用環状当接面206を少なくともピンチオフ部118の頂部より突出する位置まで、内枠体210を型締め方向に移動させる。より詳細には、外枠体208は、静止状態で、枠体移動装置により、内枠体210を外枠体208に対して型締め方向に移動させる。
【0060】
次いで、
図1に示すように、加飾シートDを加飾シート用環状当接面206の外周縁220から突出しないように、加飾シート用環状当接面206により保持する。より詳細には、加飾シート用環状当接面206の外周縁220から突出しないような大きさに調整した加飾シートDを、たとえば、共用真空ポンプ240により、加飾シート用環状当接面206から吸引開口部270を介して真空吸引することにより、保持する。
この場合、加飾シートDが帯電性を具備する場合には、静電気を利用して、加飾シート用環状当接面206により保持してもよいし、あるいは、加飾シート用環状当接面206にピンを設け、そこに引っ掛けてもよい。
次いで、
図7に示すように、熱可塑性樹脂製シート用環状当接面202が対応する熱可塑性樹脂製シートP2に当接するまで、外枠体208を型締め方向に移動させることにより、対応する熱可塑性樹脂製シートP2の内表面248、外枠体208の内周面250および加飾シートDの外表面258により、第2密閉空間232を形成する。より詳細には、内枠体210は、加飾シートDを保持したまま静止状態で、枠体移動装置により、外枠体208を内枠体210に対して型締め方向に移動させて、対応する熱可塑性樹脂製シートP2に当接させ、それにより、熱可塑性樹脂製シートP2、加飾成形用金型部品200の内周面250およびキャビティ116の表面により形成される第1密閉空間230が、内枠体210により保持されている加飾シートDにより仕切られ、具体的には、対応する熱可塑性樹脂製シートP2の内面248、外枠体208の内枠体210から型締め方向に突出する部位の内周面250および加飾シートDの外表面258により、第2密閉空間232が形成され、一方、加飾シートDの内表面261、内枠体210の内周面254およびキャビテイ116の表面により、第3密閉空間234が形成される。
【0061】
次いで、
図8に示すように、第2密閉空間232を真空吸引することにより、加飾シートDを熱可塑性樹脂製シートP2に対して面接着させる。より詳細には、共用真空ポンプ240を作動してエア排出用貫通孔212を介して、第2密閉空間232内の空気を真空吸引することにより、加飾シートDと熱可塑性樹脂製シートP2との間に、空気溜まりを形成することなしに、加飾シートDと熱可塑性樹脂製シートP2とを密着させた状態で、面接着させて一体積層化する。
この場合、加飾シートDが熱可塑性樹脂製シートP2と同材質の樹脂であれば、加飾シートDが溶融状態の熱可塑性樹脂製シートP2に対して押圧されることで、溶着することが可能であり、一方、加飾シートDが、熱可塑性樹脂製シートP2と異材質の樹脂製シート部と、不織布製のシート部とが積層されている場合、加飾シートDは、溶融状態の熱可塑性樹脂製シートP2に対して、不織布製のシート部を対向させて押圧することにより、アンカー効果に基づいて、面接着される。その際、加飾シートDの吸引開口部270を介しての真空吸引は継続しておくのが好ましい。
【0062】
次いで、
図9に示すように、熱可塑性樹脂製シートP2に対して面接着した加飾シートDの表面256、加飾成形用金型部品200の内周面250およびキャビティ116の表面により形成される第1密閉空間230内をキャビティ116側から真空吸引することにより、面接着された熱可塑性樹脂製シートP2および加飾シートDをキャビティ116に対して押圧して、賦形する。より詳細には、共用真空ポンプ240を作動して、エア排出用貫通孔212を介して、第1密閉空間230内の空気を真空吸引することにより、熱可塑性樹脂製シートP2および加飾シートDを一体で賦形する。この場合、従来のように、加飾シートDをキャビティ116の表面に保持した状態で、キャビティ116側から真空吸引により、熱可塑性樹脂製シートP2をキャビティ116に押圧して賦形する場合には、加飾シートDには通気性が必要であり、その分、加飾シートDの美観性が損なわれていたところ、このような制約なしに、熱可塑性樹脂製シートP2および加飾シートDを一体で賦形することが可能である。
なお、他方の熱可塑性樹脂製シートP1については、金型32Bにより同様に賦形する。
【0063】
次いで、
図10に示すように、一対の分割形式の金型32を型締して、一対の分割形式の金型32内に密閉空間を形成する。より詳細には、外枠体208は、対応する熱可塑性樹脂製シートPに当接したまま、一方内枠体210は、加飾シートDの外周部を保持したまま、ともに静止状態で、加飾成形用金型部品200に対して分割金型32を型締め方向に互いのピンチオフ部118が当接するまで移動させ、それにより、2条の熱可塑性樹脂製シートP1,2の周縁同士が溶着し、パーティングラインが形成されるとともに、二条の熱可塑性樹脂製シートP1,2の内部に密閉中空部が形成される。
【0064】
次いで、
図11に示すように、分割金型32を型開きして、成形された樹脂成形品を取り出し、パーティングラインまわりに形成されたバリを除去する。これで二次成形が完了す
る。この場合、真空吸引は停止する。
一次成形において溶融樹脂を間欠的に押し出すたびに、以上のような工程を繰り返すことにより、シート状の樹脂成形品を次々に成形することが可能である。
以上のように、一次成形(押出成形)により熱可塑性樹脂を間欠的に溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPとして押し出し、二次成形(ブロー成形あるいは真空成形)により押し出されたシー
ト状樹脂を分割金型32を用いて成形することが可能である。この場合、吸引前の二条の熱可塑性樹脂製シートPの上下方向の厚みを一様としていることから、ブロー比により引き起こされる厚みの分布に起因して、賦形工程が満足に行われないような事態を防止することが可能である。
【0065】
押し出し段階の変形例として、溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPを押出スリット34より押し出すのではなく、溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPは、溶融状態の筒状熱可塑性樹脂製シートを長手方向に切断することにより形成されるのでもよく、あるいは溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPは、いったん成形した後、再加熱して溶融状態とされるのでもよい。
【0066】
加飾シートDの保持段階の変形例として、加飾シートDの表面256、加飾成形用金型部品200の内周面250、およびキャビティ116により形成される第3密閉空間234内を真空吸引することにより、加飾シートDを加飾シート用環状当接面206により保持するのでもよいし、あるいは加飾シート用環状当接面206を通じて加飾シートDを真空吸引あるいは静電気により付着させつつ、バックアップとして第3密閉空間234内を真空吸引するのでもよい。
【0067】
加飾シートDの保持段階と第1密閉空間230の形成段階との順序について、前述のように、加飾シートDを金型32により保持した後に、熱可塑性樹脂製シートPとキャビティ116とで協働して第1密閉空間230を形成するのに限らず、外枠体208を型締め方向に移動させて第1密閉空間230を形成した後に、加飾シートDを内枠体210の加飾シート用環状当接面206により保持するのでもよいし、あるいは、加飾シートDの保持と第1密閉空間230の形成とを同時併行で行ってもよい。
【0068】
第2密閉空間232の真空吸引段階の変形例として、金型32の外枠体208に設けたエア排出用貫通孔212を通じて、真空吸引する代替として、ピンチオフ部118より外側の熱可塑性樹脂製シートPまたは加飾シートDの部分にピンを刺す段階と、ピンを介して第2密閉空間232内を真空吸引する段階とを有するのでもよい。また、外枠体208にエア排出用貫通孔212を設ける段階と、エア排出用貫通孔212を介して第2密閉空間232内を真空吸引する段階とを有するのでもよく、その場合、エア排出用貫通孔212を加飾成形用金型部品200のエア排出用貫通孔212の延び方向に設ける段階を有するか、エア排出用貫通孔212を外枠体208の内枠体210からの突出部分に対して、厚み方向に設ける段階を有するのでもよい。この場合、エア排出用貫通孔212を厚み方向に設ける方が、エア排出用貫通孔212の長さを短くすることが可能であり、エア排出用貫通孔212の閉塞可能性を低減し、閉塞の際の処理を簡便にすることが可能である。
【0069】
加飾シートDの熱可塑性樹脂シートへの溶着段階の変形例として、第2密閉空間232を真空吸引する際、内枠体210を型締め方向に移動させることにより、加飾シートDを樹脂製シートに近づけながら行う段階をさらに有するのでもよく、あるいは第2密閉空間232内を真空吸引するとともに、加飾シートDの表面256、加飾成形用金型部品200の内周面250、およびキャビティ116により形成される第3密閉空間234内に空気を吹き込む段階を有するのでもよい。これにより、加飾シートDの熱可塑性樹脂シートへの溶着をより確実に達成することが可能である。
【0070】
分割金型32の型締め段階と、第1密閉空間230を真空吸引することによる賦形段階との順序について、上述のように、第1密閉空間230を真空吸引することにより、一体積層化された加飾シートDおよび熱可塑性樹脂製シートPをキャビティ116に対して押圧して賦形した後、分割金型32を型締めするのに限定されることなく、型締めにより2条の熱可塑性樹脂製シートPが周縁部以外の部位で溶着しない限り、真空吸引による賦形段階が、時間的に、分割金型32の型締め段階にまで及んでもよい。
この場合、一体積層化された加飾シートDおよび熱可塑性樹脂製シートPに対して、複雑な形状を賦形する際、分割金型32の型締めにより分割金型32内に形成された密閉空間を加圧しつつ、キャビティ116側から真空吸引することにより、真空吸引のみに比べ、所望の形状を賦形することが可能である。
【0071】
変形例として、本実施形態のように中空構造を有する樹脂成形品ではなく、中空部に樹脂製中芯、あるいは金属製インサートを挿入して、サンドイッチ構造を有する樹脂成形品を成形してもよい。
樹脂製中芯の場合、配置のタイミングは、金型32の型開き後型締め前であればよく、分割金型32を型締めする前に、二条の熱可塑性熱可塑性樹脂製シートPのいずれかに溶着すればよく、金属製インサートの場合は、二条の熱可塑性熱可塑性樹脂製シートPのいずれかを対応する分割金型32のキャビティ116より真空吸引することにより、中空部の一部を構成する凹部を形成した後、凹部内に金属製インサートを保持すればよい。
別の変形例として、中空構造を有する樹脂成形品あるいはサンドイッチ構造を有する樹脂成形品を対象に、加飾シートDを2枚用いて、2条の熱可塑性樹脂シートの各側に貼り付けてもよい。この場合、一対の分割金型32それぞれにおいて、その外周側面に加飾成形用金型部品200を外嵌させて、本実施形態のように、それぞれの分割金型32において、加飾シートDを対応する熱可塑性樹脂シートに溶着させた後、一体積層化した加飾シートDおよび対応する熱可塑性樹脂シートを真空吸引することにより、賦形すればよい。
【0072】
以上のように、従来のように、筒状熱可塑性樹脂製シートを利用して中空部を有する樹脂成形品を成形すると、ブロー比の関係で、一様な厚みの成形品を成形するのが技術的に困難であるところ、本実施形態によれば、一様な厚みを備えた二条の熱可塑性樹脂製シートPを利用して、二次成形により二条の熱可塑性樹脂製シートPの周縁部同士を溶着することにより、一様な厚みを備えた中空部を有する成形品を成形することが可能である。
より詳細には、本実施形態によれば、二条の熱可塑性樹脂製シートPを利用して内部に中空部を有する樹脂成形品を成形する場合に、一対のローラー30の回転数の調整を通じて各シート状樹脂を二次成形する前に押し出し方向に厚みが一様となるようにすることにより、二次成
形の賦形に悪影響を与えることなしに二次成形により所望の厚みを有するシート状に成形することが可能であることから、このような二条の熱可塑性樹脂製シートPを利用して、金型32の型締により熱可塑性樹脂製シートPの周縁同士を溶着させて内部に中空部を有する樹脂成型品を成形するのに、熱可塑性樹脂製シートPの周縁同士を確実に溶着させ、それにより内部に中空部を有するにも係わらず十分な強度を具備した樹脂成形品を得ることが可能である。
【0073】
特に、以上の構成を有する加飾成形方法によれば、いったん加飾シートDを熱可塑性樹脂製シートPに対して、積層するように面接着させたうえで、面接着された熱可塑性樹脂製シートPおよび加飾シートDをキャビティ116に対して押圧して、賦形することにより、従来のように、予めキャビティ116に加飾シートDを配置した状態で、キャビティ116側からの真空吸引を通じて、熱可塑性樹脂製シートPをキャビティ116に対して押圧することにより、通気性を具備した加飾シートDを熱可塑性樹脂製シートPに対して溶着させると同時に賦形する必要なしに、通気性なしの加飾シートDを用いて加飾成形が可能であり、加飾シートDの表面256の外観を損なうことがない。
【0074】
一方、キャビティ116の側方に配置された熱可塑性樹脂製シートPとキャビティ116とで協働して形成された第1密閉空間230内に、熱可塑性樹脂製シートPと対向し、かつ金型32のキャビティ116から離間状態でキャビティ116のまわりにからはみ出すように保持された加飾シートDを熱可塑性樹脂製シートPに対して面接着させることにより、第1密閉空間230内に収容可能な所定長さとした加飾シートDを熱可塑性樹脂製シートPに対して面接着することが可能であり、たとえば、従来のように、圧着ローラーにより、加飾シートDと熱可塑性樹脂製シートPとを圧着した状態で金型32のキャビティ116に送り込むのとは異なり、金型32のピンチオフ部118の外周部の成形材料のバリ部分について、加飾シートDが溶着されていない熱可塑性樹脂製シートPのみとすることが可能であり、それによりリサイクルが容易となり、成形材料の歩留まりの向上を達成可能である。
【0075】
また、たとえば、本実施形態のように、二次成形として真空成形を行う場合に限らず、金型32を利用してプレス成形あるいはブロー成形を行う場合にも、加飾成形用金型部品200を単に既存の金型32の外周側面に外嵌することにより、既存の金型32自体に大幅な改造、修正を行う必要なしに、加飾シートDを用いた加飾成形を行うことが可能となる。
【0076】
以下、本発明の第2の実施形態を図面を参照しながら説明する。以下の説明において、第1の実施形態と同様な構成要素には同様な参照番号を付することにより、その説明は省略し、本実施形態の特徴について、詳細に説明する。
第1実施形態においては、中空構造を有する樹脂成形品、または内部に中芯あるいはインサートを配置してサンドイッチパネル構造を有する樹脂成形品であって、片側あるいは両面に加飾シートDを貼り付けている樹脂成形品を対象に、加飾シートDおよび2条の樹脂シートを用いて、分割金型32により成形しているのに対して、本実施形態の特徴は、中実構造を有する樹脂成形品であって、片面に加飾シートDを貼り付けている樹脂成形品を対象に、加飾シートDおよび1条の樹脂シートを用いて、単一金型32により成形している点にある。
さらに、第1実施形態においては、加飾成形用金型部品200として、互いに相対移動可能な外枠体208と内枠体210とを有する構造を採用するのに対して、本実施形態の特徴は、加飾成形用金型部品200として、段差部211を有する環状一体品を採用する点にある。
【0077】
より詳細には、
図16に示すように、単一金型32が、キャビティ116がほぼ鉛直方向を向くように配置され、キャビティ116のまわりには、ピンチオフ部118が環状に形成されているとともに、加飾成形用金型部品200が金型32の外周面204に対して外嵌するように付設されている。
図17に示すように、加飾成形用金型部品200は、環状一体品であり、熱可塑性樹脂製シート用環状当接面202は、環状端面205の外周縁220まで及び、加飾シート用環状当接面206は、環状端面205の内周縁222まで及び、熱可塑性樹脂製シート用環状当接面202と加飾シート用環状当接面206との間に段差211が形成される。
段差部211の高さは、熱可塑性樹脂製シートPが熱可塑性樹脂製シート用環状当接面202に対して当接しつつ、加飾シートDが加飾シート用環状当接面206に対して当接した状態で、熱可塑性樹脂製シートPの内面248と、加飾シートDの外面258と、段差211部の内周面とにより第2密閉空間232が形成されるように、設定すればよい。
段差部211を設けた加飾成形用金型部品200を採用することにより、第1実施形態と異なり、型枠移動手段を省略することが可能である一方、第1実施形態のように、型枠移動手段による外枠体208と内枠体210との間の相対移動ができないことから、外枠体208の内枠体210に対する突出度合は、段差部211により固定であるが、加飾シートDの厚み等に応じて、段差部211の異なる種々の加飾成形用金型部品200を用意してもよい。
【0078】
この場合の加飾成形方法は、加飾成形用金型部品200を、当接面がキャビティ116側に位置するように、金型32の外周側面に外嵌するように準備する段階と、加飾シートDを段差211により保持する段階と、熱可塑性樹脂製シート用環状当接面202が熱可塑性樹脂製シートPに当接するまで、加飾成形用金型部品200を型締め方向に移動させることにより、熱可塑性樹脂製シートPの表面、加飾成形用金型部品200の内周面250および加飾シートDの表面256により、第2密閉空間232を形成する段階と、を有し、それ以降の段階は、第1実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0079】
なお、変形例として、第1実施形態における分割金型32Aに対する分割金型32Bのように、単一金型32の側方に、加圧チャンバ(図示せず)を設け、加圧チャンバにより形成した第2密閉空間232を真空吸引することにより、加飾シートDを熱可塑性樹脂製シートPに対して溶着させた後、第1密閉空間230を真空吸引することにより、一体積層化した加飾シートDおよび熱可塑性樹脂製シートPをキャビティ116に押圧して賦形する際、一体積層化した加飾シートDおよび熱可塑性樹脂製シートPを挟み込む形態で加圧チャンバを分割金型32Aに当接させることにより、熱可塑性樹脂製シートPの外面246と加圧チャンバとの間に第4密閉空間262を形成し、第4密閉空間262を加圧しながら、第2密閉空間232を真空吸引することにより、特に、キャビティ116により一体積層化した加飾シートDおよび熱可塑性樹脂製シートPに対して複雑な形状を賦形する場合に、キャビティ116の凹凸に沿った所望の形状を賦形することが容易となる。
【0080】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱しない範囲内において、当業者であれば、種々の修正あるいは変更が可能である。
たとえば、第1実施形態においては、加飾成形用金型部品200を用いて、熱可塑性樹脂シートと、加飾成形用金型部品200の内周面250と、金型32のキャビティ116の表面とにより構成される第1密閉空間230を仕切る態様で、加飾シートDを加飾成形用金型部品200の内枠体210により保持し、それにより熱可塑性樹脂シートと、加飾成形用金型部品200の内周面250と、加飾シートDとにより第2密閉空間232を形成し、第2密閉空間232を真空吸引することにより、加飾シートDを熱可塑性樹脂シートに対して溶着させる場合を説明したが、それに限定されることなく、一体積層化した加飾シートDおよび熱可塑性樹脂シートを第1密閉空間230を真空吸引することにより賦形することが可能である限り、加飾シートDにより第2密閉空間232を形成しなくてもよく、その場合には、たとえば、マニピュレータにより加飾シートDを保持し、熱可塑性樹脂シートに対して押圧することにより、溶着させればよい。
【0081】
たとえば、第1実施形態においては、加飾成形用金型部品200を用いて、熱可塑性樹脂シートと、加飾成形用金型部品200の内周面250と、金型32のキャビティ116の表面とにより構成される第1密閉空間230を仕切る態様で、加飾シートDを加飾成形用金型部品200の内枠体210により保持し、それにより熱可塑性樹脂シートと、加飾成形用金型部品200の内周面250と、加飾シートDとにより第2密閉空間232を形成し、第2密閉空間232を真空吸引することにより、加飾シートDを熱可塑性樹脂シートに対して溶着させる場合を説明したが、それに限定されることなく、一体積層化した加飾シートDおよび熱可塑性樹脂シートを第1密閉空間230を真空吸引することにより賦形することが可能である限り、加飾シートDにより第2密閉空間232を真空吸引しなくてもよく、その場合には、加飾シートDと樹脂製シートとの間に第2密閉空間232を形成する際、加飾シートDと樹脂製シートとの間に空気溜まりを形成しないように、第2密閉空間232内の空気を外部に排気しつつ、加飾シートDと樹脂製シートとを面接着するのに、加飾シートDと対応するキャビティ116との間の第3密閉空間234内を加圧することにより、加飾シートDを樹脂製シートに対して押圧しつつ、金型32の外枠体208に設けた212 エア排出用貫通孔を通じて、第2密閉空間232内の空気を外部に排気することにより、加飾シートDと樹脂製シートとを面接着するのでもよい。
【0082】
たとえば、第1実施形態においては、加飾成形用金型部品200として、外枠体208を内枠体210に対して型締め方向に移動させることにより、外枠体208を対応する熱可塑性樹脂シートに当接させて、第1密閉空間230を形成する場合を説明したが、それに限定されることなく、内枠体210の先端と金型32のピンチオフ部118の先端との間の位置関係の調整のために、逆に、内枠体210を外枠体208に対して型締め方向あるいはその逆方向に移動させてもよい。
【0083】
また、第1実施形態における成形品の用途としては、カーゴフロアボードに用いられるサンドイッチパネル10として、外観を呈するおもて面側表皮材シートに対して加飾シートを貼り合わせる場合があり、加えて、カーゴフロアボードに用いられるサンドイッチパネルに限定されることなく、フットレスト、サイドドアトリム、シートバック、リアーパーセルシェルフ、ドアパネル、座席シート等の自動車内装材、機械器具のキャリングケース、弱電製品の部品、壁材、パーティション等の建築用内装材、椅子等の家具、その他にも、タンク、ダスト、ケース、ハウジング、トレイ、コンテナ等の用途に好適に用いられる。
【0084】
たとえば、第1実施形態においては、熱可塑性樹脂シートP2と加飾シートDと面接着させて積層体を形成した後に、第1密閉空間230を金型32A側から真空吸引して、積層体を賦形するものと説明したが、それに限定されることなく、積層体を形成した後に、外枠体208と内枠体210とを一体として、加飾シートDの内表面261が金型32Aのピンチオフ部118に当接まで金型32A側に移動して、加飾シートDの内表面261、ピンチオフ部118の内周面および金型32Aのキャビティ116により密閉空間を形成して、この密閉空間を金型32A側から真空吸引して、積層体を賦形してもよい。