特許第6283934号(P6283934)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6283934
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】熱交換器用の流体通路
(51)【国際特許分類】
   B23K 1/00 20060101AFI20180215BHJP
   B23K 1/19 20060101ALI20180215BHJP
   B23K 1/20 20060101ALI20180215BHJP
   B23K 3/00 20060101ALI20180215BHJP
   F28F 1/02 20060101ALI20180215BHJP
   B23K 101/14 20060101ALN20180215BHJP
   B23K 103/10 20060101ALN20180215BHJP
【FI】
   B23K1/00 330L
   B23K1/00 330K
   B23K1/19 D
   B23K1/19 F
   B23K1/20 F
   B23K3/00 S
   F28F1/02 B
   B23K101:14
   B23K103:10
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-519068(P2013-519068)
(86)(22)【出願日】2011年7月12日
(65)【公表番号】特表2013-531563(P2013-531563A)
(43)【公表日】2013年8月8日
(86)【国際出願番号】EP2011061839
(87)【国際公開番号】WO2012007452
(87)【国際公開日】20120119
【審査請求日】2014年4月14日
【審判番号】不服2016-1828(P2016-1828/J1)
【審判請求日】2016年2月5日
(31)【優先権主張番号】102010031468.4
(32)【優先日】2010年7月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ペーター エングラート
(72)【発明者】
【氏名】ベルント グリューネンヴァルト
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー クルツ
【合議体】
【審判長】 平岩 正一
【審判官】 栗田 雅弘
【審判官】 近藤 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第6209202(US,B1)
【文献】 欧州特許出願公開第0302232(EP,A1)
【文献】 特開2008−114255(JP,A)
【文献】 特開2008−100283(JP,A)
【文献】 特表2009−524000(JP,A)
【文献】 特開2002−130969(JP,A)
【文献】 特開2006−317027(JP,A)
【文献】 特開2002−327994(JP,A)
【文献】 特開2002−71286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K1/00
F28F1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚の板(1)を有する熱交換器用の流体通路であって、
前記板(1)がアルミニウム基合金で構成された少なくとも1つのコア領域を備え、
前記流体通路の内部に配置された少なくとも1つの折り曲げられた構造(4)を有し、前記少なくとも1つの折り曲げられた構造(4)が、前記板の表面(3)に当接し、前記板とフラックスレス半田付け可能であり、
1枚の前記板(1)が、第1折り曲げ部分(5a)及び第2折り曲げ部分(5b)を備えた折り曲げ部分(5)を有し、これらの第1折り曲げ部分(5a)及び第2折り曲げ部分(5b)が前記板(1)の反対側の縁部領域を曲げることによって形成されており、前記第1折り曲げ部分(5a)及び前記第2折り曲げ部分(5b)は互いに当接してフラックスで濡らされた状態で互いに半田付けされ得る第1及び第2半田付け領域を有し、
細管間隙(8)が、前記第1及び第2折り曲げ部分(5a、5b)の前記第1及び第2半田付け領域との間に形成されており、前記毛細管間隙(8)が、前記第1及び第2半田付け領域との間の接触面(5a、5bを含み、
前記板(1)の前記半田付け領域が、フラックスの湿潤下で半田付け可能な前記折り曲げ部分(5a、5b)に形成されており、前記折り曲げ部分(5a、5b)に隣接する90°よりも大きく曲げられた湾曲部(6)が設けられており、
前記接触面は、前記流体通路の外面(2)から内面(3)にわたって形成されており、前記接触面と前記湾曲部(6)との間に前記洗浄通路(9)が形成されている、
ことを特徴とする流体通路。
【請求項2】
前記板(1)の前記コア領域が少なくとも約0.03%のマグネシウム含有量を有することを特徴とする請求項1に記載の流体通路。
【請求項3】
前記板(1)が少なくとも1つの片側の半田メッキを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の流体通路。
【請求項4】
前記板(1)の前記コア領域が約0.1%〜約1.0%のマグネシウム含有量を有し、前記半田メッキが約2.5%未満のマグネシウム含有量を有する請求項3に記載の流体通路。
【請求項5】
前記半田メッキの前記マグネシウム含有量が約0.03%〜約0.8%であることを特徴とする請求項3に記載の流体通路。
【請求項6】
前記構造が、前記流体通路に挿入されたアルミニウム合金で構成されたタービュレータとして形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の流体通路。
【請求項7】
前記タービュレータの材料がマグネシウムを含まず、前記板(1)が、前記タービュレータとフラックスレス半田付けするためにマグネシウムを含むことを特徴とする請求項6に記載の流体通路。
【請求項8】
前記タービュレータの材料が0.7%未満のマグネシウムを含み、および/または0.03%〜0.8%のマグネシウム含有量を有する半田メッキを含むことを特徴とする請求項6に記載の流体通路。
【請求項9】
前記流体通路が、前記折り曲げ部(5)を有する扁平管として形成されており、前記折り曲げ部(5)が前記扁平管の長手方向に延びていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の流体通路。
【請求項10】
前記構造が、少なくとも1つのフレーム(4)として形成されており、前記フレーム(4)が、前記板(1)の前記表面(3)に当接し、前記板から形成されていることを特徴とする請求項9に記載の流体通路。
【請求項11】
前記湾曲部(6)の長さLおよび前記板(1)の厚さDは、
L>2*Dが適用されることを特徴とする請求項9又は10に記載の流体通路。
【請求項12】
180°曲げられた前記湾曲部(6)の場合には、前記扁平管の幅Bについて、
L<(B−2.5*D)が適用されることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の流体通路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器用の流体通路に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器、特に自動車用の熱交換器の構造では、半田付け工程から生じるフラックスの残渣をできるだけ小さくする要求がますます高まっている。近年、冷却剤のフラックス成分の濃度が高すぎる場合に、例えば、循環するエンジン冷却剤を損なうことがあることが新しく認識された。
【0003】
特許文献1は、溶接された扁平管を使用するアルミニウム熱交換器を製造するための方法を開示している。この場合、冷却剤を案内する扁平管内部はフラックスレス半田付けされ、ここで、形成された溝が、支持壁に対する反対側管壁と結合されるか、または管に挿入された内側部分がフラックスレス半田付けされる。扁平管の外壁は従来の方法でフラックスによって覆われ、このフラックスは、取り付け前に行われる管壁の溶接により管内部に達することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第0 781 623 B1号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1 287 941 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、フラックスを有する流体案内室のできるだけ小さい負荷を有する熱交換器用の流体通路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、本発明によれば、請求項1に記載の流体通路の際立った特徴によって解決される。
【発明の効果】
【0007】
半田付け工程前に半田付け箇所の間で通路が開口することにより、従来技術と比較して流体通路を極めて柔軟に構成することができる。
【0008】
さらに有利には、例えば扁平管を製造するために、半田付け工程前に設けられる溶接継目を省略することができる。フラックスを用いて半田付け領域または相手部材を半田付けすることによって、おそらくは、小さなフラックス量が流体通路の内部に達し、したがって、案内された流体とその後接触する。さらに、流体通路の内部に配置された構造のフラックスレス半田付けは、流体通路の所望の構造、例えば、機械的強化、仕切壁および/または乱流によって得られる手段を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明による流体通路は、各流体を案内するアルミニウムをベースとする構造、特に、スタックディスク構造の熱交換器の場合、折り曲げられた扁平管または流体案内室を意味している。フラックスを用いて行われる板の半田付け領域の半田付けは特に流体通路の液密閉鎖を有効にもたらし、この場合、フラックスによる半田付けの好都合な工程安全性が特に有利である。例えば、相手部材は流体通路の別の部分片を対象とすることができ、例えば多部品の扁平管の場合、扁平管の半部を対象とすることができる。例えば、折り曲げ閉鎖部のみを有する一体的に折り曲げられた扁平管の場合、板の他の部分も対象とすることができる。
【0010】
本発明によるフラックスはアルミニウムの硬質半田付けに適切な各添加剤を意味している。とりわけ、フラックスとして、カリウムアルミニウムフッ化物(登録商標ノコロック)、およびフッ化セシウムおよび/またはフッ化リチウムおよび/またはフッ化亜鉛とカリウムアルミニウムフッ化物との混合物が使用される。さらに、上記のフラックスとの混合物として、カリウムシリコンフッ化物およびシリコン粉末も使用される。好ましくは、折り曲げ部をシール半田付けするために、熱伝達体用のアルミニウム折り曲げ管の場合、ノコロックという登録商標で販売されているフラックスの使用が、最初に使用された技術として浸透している。フラックスは、粉末、懸濁液、ペースト等として塗布され、半田付け直前に溶融し、半田付けされるべき表面を清掃し、そして金属加工されていない酸化物なしのアルミニウム表面を形成し、これらのアルミニウム表面は、濡らして結合させることができるようにするために液体半田を必要とする。
【0011】
本発明の特に好ましい実施形態では、少なくとも半田付け工程中に、毛細管間隙が半田付け領域と相手部材との間に形成されており、この場合、毛細管間隙は接触面と洗浄通路とを含む。さらに、相手部材は板の別の半田付け領域であることが好ましいが、不可欠なものではない。例えば、種々の部分の半田付け領域は同一の表面であることができる。これによって、半田付け工程中に、毛細管間隙を通した溶融フラックスの搬送、および洗浄通路を通した収集および/または排出を全体的に行うことができる。アルミニウム合金がマグネシウムを含んでいる場合にも、フラックスによる半田付けを可能にするために、このような構成が特に良く適していることが試験で証明された。一般に、従来技術によれば、マグネシウムを含む合金の場合、マグネシウム成分が加熱中に拡散し、半田付け工程のためのフラックスによって、有毒な結晶、例えばフッ化マグネシウム結晶を形成することが前提とされる。好ましい実施形態の驚くほど良い機能に関する可能であるが、不可欠ではない正しい説明は、すなわち毛細管間隙から洗浄通路に流れるフラックスによってこのような結晶を洗い流すことであった。
【0012】
この場合、本発明によるマグネシウムなしの合金は、アルミニウム合金のマグネシウム含有量が0.03%未満であることを意味する。本発明では、合金に対するすべてのパーセントデータは重量%と解釈されるべきである。
【0013】
一般に有利には、板のコア領域は少なくとも約0.03%、特に好ましくは約0.1〜約0.3%のマグネシウム含有量を含む。好ましくは一般に、コア領域のマグネシウム含有量は約1.0%未満である。これによって、機械的特性を向上させることができる。コア領域が別のコーティング、例えば保護メッキを備えない場合、このマグネシウム含有量は、板の表面への構造のフラックスレス半田付けをさらに改良するかまたは可能にする。
【0014】
好ましい実施形態では、板は少なくとも1つの片側の半田メッキを有し、この場合、半田メッキは約2.5%未満のマグネシウム含有量を有することが特に好ましいが、不可欠なものではない。マグネシウム含有量のこの上限はフラックスレス半田付けのために十分であり、蒸発するマグネシウムによる隣接するフラックスを含む半田付けの負の影響に対して、十分な制限を与える。この場合、特に最適化された実施形態では、半田メッキのマグネシウム含有量は約0.03%〜約0.8%である。
【0015】
代替実施形態または追加実施形態では、構造は、流体通路に挿入されたアルミニウム合金からなるタービュレータとして形成されている。例えば、タービュレータは内部リブの公知の各形状、例えば波形リブ、フレームリブ等を有することができる。タービュレータのフラックスレス半田付けが特に有効であるが、その理由は、半田付けの個別の妨害の発生が、例えばプロセスパラメータの好ましくない偏差において、例えば半田付け領域と相手部材との液密半田付けの場合よりも優れて許容され得るからである。この場合、特に有利な発展形態では、タービュレータの材料はマグネシウムを含まず(またはマグネシウム含有量が<0.03%であり)、ここで、板はタービュレータとのフラックスレス半田付けのためにマグネシウムを含む。これによって、タービュレータが、大きな表面を大部分備え、これらの大きな表面により、好ましくない状況下において、低いマグネシウム含有量でも、隣接するフラックスを含む半田付けが妨害されることがある程度に、マグネシウムを全体的に蒸発させることがあるような状況が考慮される。この代わりの実施形態では、タービュレータの材料が、0.7%未満のマグネシウムを含み、および/または0.03%〜0.8%のマグネシウム含有量を有する半田メッキを含むことが意図されている。コア材料のおよび/またはタービュレータの存在し得る半田メッキのこのようなマグネシウム濃度も通常無害であることが試験で明らかになっている。
【0016】
本発明の一般に好ましい実施形態では、流体通路は、管の長手方向に延びる折り曲げ部を有する扁平管として形成されており、この場合、折り曲げ部は板の半田付け領域として形成されている。管の長手方向に延びる折り曲げ部は、本発明によれば、平面に半田付け可能な各継目箇所を意味する。例えば、折り曲げ部は扁平管の幅広側にまたは幅狭側に延びることができる。特に最後の例では、折り曲げ部を管のクリップロックとして形成することができる。折り曲げ部が幅広側に延び、扁平管にフレームが設けられている場合、折り曲げ部の半田付け箇所および隣接するフレームを扁平管の反対側側面に設けることが有効である。
【0017】
一般に非常に好ましくは、本発明による扁平管のフラックスで濡らされて半田付けされた折り曲げ部は、十分な安全距離を保証するために、最も近いフラックスレス半田付け箇所から2mm、特に好ましくは4mmの最小距離を有する。
【0018】
本発明の可能な形態では、構造は、板から形成された少なくとも1つのフレームとして形成することができ、このフレームが板の表面に当接する。フレームによって多室扁平管を形成できることが好ましいが、不可欠なものではない。単室扁平管にも多室扁平管にも、挿入されるタービュレータを設けることができるかまたは設けなくてもよいことが理解される。
【0019】
この場合、本発明の好ましい詳細な形態では、板の半田付け領域が、フラックスの湿潤下で平面に半田付け可能な折り曲げ部分と、それに隣接する90°よりも大きく曲げられた湾曲部とを備えることが意図されている。湾曲部は、表面に配置するために、および/または例えば折り曲げ部分に直接隣接する洗浄通路を形成するために、規定された楕円形縁部を提供する。この場合、使用される材料に応じて、特に好ましくは、湾曲部の長さLおよび板の厚さDには、
L>2Dが適用され、
ここで、特に180°曲げられた湾曲部の場合には扁平管の幅Bについて、
L<(B−2.5D)がさらに適用されることを意図することができる。
【0020】
これによって、全体的には、板のまたは湾曲部の正面側切断縁が、フラックスで濡らされた半田付け箇所またはフラックスを案内する領域(例えば洗浄通路)から十分な最小距離に位置決めされていることが保証される。これにより、例えば、場合によっては高いマグネシウム含有量を有する切断縁で露出した板のコア材料が、蒸発しかつフラックスと反応するマグネシウムによって、半田付け工程を妨害しないことが許容されている。
【0021】
一般に有利には、フラックスは半田付け工程前に板の反対側表面の少なくとも一部の平面に過度に塗布される。この場合、特に、適切な形状の板縁部または相手部材において、フラックスは、フラックスレス半田付けが行われる流体通路の内部領域に流入しないかまたはほとんど流入しない。特に好ましくは、フラックスは、熱噴霧法および塗布フラックス法のグループの方法を用いて塗布される。熱噴霧法では、フラックスは、空気流による粉末搬送によって高エネルギーの高温ガス流に流入される。フラックスは部分的または完全に溶融し、したがって表面に塗布される。とりわけ、プラズマ噴霧法、レーザ誘導噴霧法および高温ガス噴霧法が知られている。塗布フラックス法は、特に、しかし非排他的に、特許文献2による方法を意味する。
【0022】
フラックスの荷重は、塗布方法に関係なく、有利には3〜40g/m、好ましくは5〜20g/m、特に好ましくは7〜14g/mである。
【0023】
本発明の別の利点および特徴は、以下に説明する実施例からならびに従属請求項から明らかである。
【0024】
以下において、本発明の複数の好ましい実施例を示し、添付図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明による流体通路の第1の実施形態を示している。
図2】本発明による流体通路の第2の実施形態を示している。
図3】本発明による流体通路の第3の実施形態を示している。
図4】本発明による流体通路の第4の実施形態を示している。
図5】本発明による流体通路の第5の実施形態を示している。
図6】本発明による流体通路の第5の実施形態を示している。
図7図1図6による実施形態のうちの1つの折り曲げ部の詳細断面図を示している。
図8図7の折り曲げ部の第1の変形例を示している。
図9図7の折り曲げ部の第2の変形例を示している。
図10本発明の参考例(本発明の範囲に入らない)で、クリップ管形態の流体通路を示している。
図11本発明の参考例(本発明の範囲に入らない)で、タービュレータが使用される、図10の流体通路の変形例を示している。
【実施例】
【0026】
図1に示した流体通路は、単一の板1から形成された扁平管として形成されている。板1は、本発明ではマグネシウム含有量を有するアルミニウム合金からなる。本発明では、一般に不可欠ではないが、少なくとも外面2において半田メッキを板のコア領域に塗布することができる。本発明のおよびすべての別の実施例について、半田メッキがない場合に板全体に対応するコア領域には、および半田メッキには、以下の合金が好ましい(重量%のすべてのデータ)。
【0027】

板のコア領域/基本材料
最小 好適 最大
Al 残基 残基 残基
Si 0 − 1.2
Fe 0 0〜0.4 0.7
Cu 0.1 0.3〜0.8 1.2
Mn 0 − 2.0
Mg 0.03 0.1〜0.3 1.0
Cr 0 0〜0.2 0.5
Zn 0 − 2.5
Ti 0 0〜0.10 0.3
Sn 0 − 0.05
Zr 0 − 0.2
Bi 0 − 0.05
Sr 0 − 0.05


半田メッキ
最小 好適 最大
Al 残基 残基 残基
Si 5〜6 7〜11 20
Fe 0 0〜0.2 0.8
Cu 0 0〜0.3 1
Mn 0 − 0.15
Mg 0 0.03〜0.8 2.5
Cr 0 − 0.05
Zn 0 0〜2.0 4
Ti 0 0〜0.10 0.2
Sn 0 − 0.05
Zr 0 − 0.05
Bi 0 0〜0.20 0.5
Sr 0 0〜0.05 0.2

扁平管は、本発明では、折り曲げられた2つのフレーム4と、長手方向に沿って管を閉鎖するための折り曲げ部5とを有する多室扁平管として形成されている。
【0028】
折り曲げ部5は本発明では扁平管の幅広側に配置されている。折り曲げ部5は第1の折り曲げ部分5aと第2の折り曲げ部分5bとを含み、これらの折り曲げ部分5a、5bのそれぞれは、板1の反対側縁部領域を90°曲げることによって形成される。折り曲げ部分5a、5bにはそれぞれ1つの湾曲部6が180°で隣接する。折り曲げ部分5a、5bは湾曲部6の領域で板の内面3の配置領域7または扁平管の内面に当接する。配置領域7に加えて、折り曲げ部分5a、5bの各々が、本発明による半田付け領域または相手部材を形成する。
【0029】
接触面を介して互いに当接する折り曲げ部分5a、5bは毛細管間隙8を中間に形成する。半田付け領域7と湾曲部6との間には折り曲げ部の洗浄通路9が形成されており、この洗浄通路9において毛細管間隙8は開口し、毛細管間隙8よりも大きい直径を有する。
【0030】
フレーム4は、扁平管の内径に一致しかつ配置領域10で板1の内面3に当接する高さを有する。配置領域10は半田付け領域7の反対側の扁平管側面にあるので、配置領域10と配置領域7との間には特に大きな距離が存在する。
【0031】
フレーム4は、流体通路の内部に配置された本発明による構造を形成し、この構造は、そこに第1のフラックスレス半田付け箇所を形成するために、配置領域10で板の内面3に当接する。
【0032】
折り曲げ部5は、その折り曲げ部分5a、5bならびに配置領域7により、半田付け工程においてフラックスで濡らされる第2の半田付け箇所を形成する。このため、第1の実施例では、折り曲げ部5の側面の扁平管の外側幅広側全体にフラックス11が設けられている。フラックス11は、塗布フラックス法を用いて塗布されたノコロック(登録商標)を対象とする。
【0033】
半田付け前に開口した折り曲げ部によって、両方の半田付け箇所の間に開口通路が存在する。特に、溶融したフラックスは第2の半田付け箇所から第1の半田付け箇所に直接流れることがあるが、本発明によれば、実際にはこのことが防止される可能性が幾何学的に存在する。
【0034】
外面には、熱交換器全体を形成する部材のスタックのリブまたは他の構造を取り付けることができる(図示せず)。このように予め取り付けられた構造は半田付け炉内に搬送されて加熱される。この場合、第1のフラックスレス半田付け箇所も、フラックスで濡らされた第2の半田付け箇所も、同じ半田付け工程で同時に半田付けされる。
【0035】
対応する温度において、外側に塗布されたフラックスは最初に液化され、毛細管間隙8に流入する。本発明の実施例では、フラックスは過度に存在する。フラックスは毛細管移動して間隙8を貫流した後に洗浄通路9に収集される。さらに、不可欠ではないが、詳細な形態に応じて、排出部も洗浄通路から扁平管の正面側の形状を介して設けることができる(図示せず)。
【0036】
本発明では、洗浄通路が別個に作用するため、第1のフラックスレス半田付け箇所4、10の湿潤は行われない。半田付け箇所4、10では、選択された材料に基づいてフラックスレス半田付けが行われ、その結果、フレーム4が構造として反対側板面に半田付けされる。これによって、流体通路の機械的固定が達成され、複数の分離室が形成される。
【0037】
図2図4による実施例は、フラックスの外側塗布が全面で行われないことによってのみ第1の実施例と区別される。
【0038】
図2による実施例では、1つのみの選択的塗布が、折り曲げ部5の領域を介して広い細片で部分的にのみ行われる。
【0039】
図3による実施例では、塗布は線状にのみ折り曲げ部の毛細管で直接行われ、この場合、毛細管の開始点は充填されている。
【0040】
図4による実施例では、塗布は折り曲げ部5の側方の2つの狭い細片でそれぞれ行われる。適切に濡らしたフラックスが液化した後、このフラックスも毛細管間隙に流入する。
【0041】
図1図4の実施例の各々では、過度のフラックスが塗布されている。
【0042】
図5による実施例は、折り曲げ部分5a、5bへの直接塗布を示しており、この場合、塗布は、管を折り曲げる間にまたは管を完全に折り曲げる前に行われる。
【0043】
図6は、管を折り曲げる前に、湾曲部6が当接する半田付け領域7にフラックスが塗布された実施例を示している。この実施例では、塗布された半田の少なくとも一部が、洗浄通路によって確実に受容されず、原則として、フラックスレス半田付けすべきフレームに対して側面に流れることがある。このような所望でない湿潤を防止するために、図6による実施例では、塗布されたフラックス量は過度ではなく、規定して量定されている。このような規定の量定は、図5による実施例についても可能な改良として考慮される。
【0044】
図7図9は、上記の実施例の各々と組み合わせ可能である湾曲部6の種々の変形例を示している。特に、板のコア領域がマグネシウムを多く含み、マグネシウムを同様に含む半田によってメッキされている場合、板の縁部の開口した正面は加熱時に大量のマグネシウムを遊離させることができる。流出するマグネシウムは、フッ化マグネシウムの形成下で、許容不可能なフラックスの膨張を半田継目に生じさせる可能性がある。
【0045】
したがって好ましくは、板厚D、湾曲部の長さLおよび管幅Bについて以下の関係が適用される。
【0046】
L>2
この場合、湾曲部は、各角度が明確に90°を超えるように(例えば図9参照)、特に180°(図7図8参照)に曲げることができる。
【0047】
湾曲部が180°である場合、正面縁部と反対側板側面とが近づきすぎることを回避するための(図8参照)可能性について、以下の関係にも留意されたい。
【0048】
L<B−2.5
一般に、湾曲部6の正面縁部が折り曲げ部分5a、5bの壁部にも接触しないことが有効であることに留意されたい。この場合、好ましくは、少なくともほぼ板厚Dの安全距離を守るべきである。フラックスが設けられた(フラックス処理された)領域(それぞれ同様に半田付けされる)と、フラックスが設けられていない(フラックス処理されていない)領域(それぞれ同様に半田付けされる)との間の距離が、約2〜4mm、または3〜5mmであると有利である。
【0049】
また、1つまたは複数のフレーム4が管壁の反対側内面に当接すると有利である。
【0050】
全体的には、マグネシウムが、望ましくない領域に向かって蒸発または拡散するか、あるいはフラックスが湾曲部6の正面縁部の領域に流れることを防止することが特に有効である。
【0051】
図10の参考例では、折り曲げ部は、先の実施例と同様に、扁平管の幅広側ではなく幅狭側に設けられている。板1の2つの反対側縁部はそれぞれ円弧状の湾曲部12、13を有するので、前記反対側縁部は閉鎖状態で形状接続的に互いに係合する。このようにして、扁平管がクリップ管として形成されている。内側にある湾曲部12の外面と、外側にある湾曲部13の内面とが相対して当接し、その結果、前記湾曲部12の外面と前記湾曲部13の内面との間に毛細管間隙8が形成されている。先の実施例と同様に作用する洗浄通路は、外側にある湾曲部13の端部と、内側にある湾曲部12の段部12aとの間の間隙によって形成されている。
【0052】
フラックスの塗布は、先の実施例と同様の方法で、管の外面に、あるいは湾曲部12、13の互いに半田付けした面の一方または両方に適切に行うことができる。
【0053】
扁平管はその内部に、先の実施例と同様に、少なくとも2つのフラックスレス半田付けしたフレーム4を有するので、前記扁平管は多室扁平管による構造である。
【0054】
図11は、折り曲げ部5が図10と同様に形成されている別の参考例を示している。図10との違いは、板1の内面とフラックスレス半田付けされるタービュレータ14の形態の構造が管に挿入されていることである。タービュレータ14は本発明では波形リブとして形成されている。要求に応じて、タービュレータを図10のような多室扁平管にも挿入できることが意図される。
【0055】

タービュレータには以下の合金が好ましい。
【0056】
最小 好適 最大
Al 残基 残基 残基
Si 0 0.2〜0.6 1.2
Fe 0 0〜0.4 0.7
Cu 0 − 0.7
Mn 0 − 2.0
Mg 0 0〜0.7 3.0
Cr 0 0〜0.2 0.5
Zn 0 − 3.5
Ti 0 − 0.3
Sn 0 − 0.2
Zr 0 − 0.2
Bi 0 − 0.05
Sr 0 − 0.05

非常に好ましい実施形態では、タービュレータはマグネシウムを有しない(<0.03%のマグネシウム含有量)。これによって、タービュレータの表面がしばしば大きくなるため、マグネシウムの望ましくない大きな蒸発が防止される。フラックスレス半田付けのために望ましいマグネシウムは、このような形態では、板材および/または板の半田メッキによって完全に設けられる。原則として、タービュレータも半田メッキを含むことができる。
【0057】
一般には、以下のことが適用される。管内面へのフレームのフラックスレス半田付けまたは内部タービュレータと管内面とのフラックスレス半田付けと、フラックスを含む折り曲げ部の半田付けとの組み合わせが、管の基本材料および半田メッキに適切な材料、または内部タービュレータの場合にはタービュレータの基本材料およびタービュレータの半田メッキに適切な材料を必要とする。
【0058】
メッキされたおよびメッキされていない接合相手部材の変形例は以下のことが好ましい。
【0059】
−管板の内側と外側が半田メッキされ、フレームおよび折り曲げ部のみがあり、タービュレータがない。
【0060】
−管板の内側と外側が半田メッキされ、折り曲げ部のみがあり、フレームがなく、タービュレータが未加工である。
【0061】
−管板の外側のみが半田メッキされ、タービュレータの両側が半田メッキされる。
【0062】
内部のフラックスレス半田付けに関する材料の概念は以下のことが好ましい。
【0063】
−ある最小の割合のマグネシウムを含む(半田/管基本材料/半田および/または半田/タービュレータ材料/半田からなる)通常の3層構造の材料の概念。さらに、管および挿入されたタービュレータのために、マグネシウムを含む合金を使用することが、使用されるアルミニウム材料の強度特性を向上させる可能性を示している。
【0064】
−排出機構により、フラックスレス半田付け時には、ほんのわずかな割合のマグネシウムのみを半田に含めればよい(<0.10%)(タービュレータ用の半田/管材料/半田/カバー層またはカバー層/半田/管材料/半田/カバー層等からなる)4層構造または5層構造による複数層の概念としても知られている多層の概念。管の基本材料も、小さい割合のマグネシウムを含むことができるが、全体的にはMgを有しないように(<0.03%)選択することもできる。
【0065】
必要に応じて、種々の実施例の個々の特徴が互いに組み合わせ可能であることが理解される。
【符号の説明】
【0066】
1 単一の板
2 外面
3 板の内面
4 フレーム
4 半田付け箇所
5 折り曲げ部
5a 第1の折り曲げ部分
5b 第2の折り曲げ部分
6 湾曲部
7 板の内面3の配置領域
7 半田付け領域
8 毛細管間隙
9 洗浄通路
10 配置領域
10 半田付け箇所
11 フラックス
12 円弧状の湾曲部
12a 湾曲部12の段部
13 円弧状の湾曲部
14 タービュレータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11