(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
測定対象レンズとなる撮影レンズから撮像素子までの距離及び前記撮像素子の傾きを、同じ構成を有する第1投光部、第2投光部、第3投光部、第4投光部及び第5投光部で構成されている投光装置を用いて測定するための撮像素子の位置計測方法であって、
前記第1投光部から出射される測定用光は、前記測定対象レンズに垂直に入射するようになっており、
前記第2投光部、前記第3投光部、前記第4投光部及び前記第5投光部から出射される測定用光は、いずれも前記投光装置の光軸に対して所定の入射角で、前記測定対象レンズに入射するようになっており、
前記各投光部から出射される前記各測定用光は、それぞれ発散光と収束光で構成されており、
前記第1投光部から出射される前記測定用光による第1集光パターンを測定することにより、撮影レンズから撮像素子までの距離を求め、
前記第2投光部から出射される前記測定用光による第2集光パターン、及び、前記第3投光部から出射される前記測定用光による第3集光パターンを測定することにより、前記
撮像素子Y軸方向の傾き角を求め、
前記第4投光部から出射される前記測定用光による第4集光パターン、及び、前記第5投光部から出射される前記測定用光による第5集光パターンを測定することにより、前記
撮像素子X軸方向の傾き角を求めることを特徴とする撮像素子の位置計測方法。
前記各投光部は光源となる投光素子と、前記投光素子から出射された発散光を平行光にする投光レンズと、前記投光レンズから出射された平行光を入射する集光レンズと、前記集光レンズによる集光後の発散光を入射するシリンドリカルレンズとを具備している請求項1又は請求項2に記載の撮像素子の位置計測方法に用いる投光装置。
前記シリンドリカルレンズは、片面がシリンドリカル面で、もう片面は平面である、平凸シリンドリカルレンズであり、前記投光レンズは、コリメータレンズである請求項3に記載の投光装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、光学チャートを使用せず、簡単な構成を有する投光部から出射される収束光及び発散光の集光スポット(収束光による集光スポット及び発散光による集光スポット)で形成される集光パターンによって、撮影レンズから撮像素子までの距離、及び撮像素子の傾きを簡単に測定できるようにした撮像素子の位置計測方法、及び、当該方法に用いる複数の投光部で構成される投光装置に関する。
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。また、後述する本発明の実施形態では、測定対象であるデジタルカメラ装置として、撮影レンズと撮像素子とを備えるカメラモジュールを用いる。なお、本発明は必ずしも以下の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲において、その構成を種々に変更し得ることは言うまでも無い。また、測定対象として、カメラモジュールに限定されることはなく、画像を取得する撮像装置、例えば、デジタルカメラを測定対象とすることもできる。
【0018】
本発明に係る投光装置は、同じ構成を有する複数の投光部で構成されている。そして、本発明に係る撮像素子の位置計測方法では、本発明の投光装置を用いて、測定対象となるカメラモジュールに対し、その撮影レンズ(以下、単に「測定対象レンズ」とも言う。)から撮像素子までの距離、及び当該撮像素子の傾きを測定する。
【0019】
図2(A)は本発明に係る投光装置における投光部110、投光部110から出射される収束光、収束光による集光スポット230を説明するための模式図である。
図2(B)は本発明に係る投光装置における投光部110、投光部110から出射される発散光、発散光による集光スポット240を説明するための模式図である。また、
図3は本発明に係る撮像素子の位置計測方法及び投光装置100を説明するための模式図である。
【0020】
図2及び
図3を参照して、本発明の投光部、本発明の投光装置、及び本発明の撮像素子の位置計測方法について説明する。
【0021】
本発明に係る投光装置は、測定用光(発散光及び収束光)を出射する、同じ構成を有する複数の投光部110で構成される。本発明の投光装置の一実施例として、例えば、
図3に示されるように、本発明の投光装置100は、同じ構成を有する5つの投光部110(以下、これら5つの投光部を、「投光部A」、「投光部B」、「投光部C」、「投光部D」及び「投光部E」とも言う。)で構成されている。
【0022】
本発明の投光部110は、
図2(A)に模式的に示されたようにY軸方向に収束光を、
図2(B)に模式的に示されたようにX軸方向に発散光を、出射するようになっている。本発明で言う「測定用光」とは、
図2に示されたような発散光及び収束光を意味する。
【0023】
また、本発明に係る撮像素子の位置計測方法では、
図3に示されたように、投光装置100の投光部Aから出射される測定用光は、撮影レンズ210によって撮像素子220に集光パターンA’として結像され、投光装置100の投光部Bから出射される測定用光は、撮影レンズ210によって撮像素子220に集光パターンB’として結像され、投光装置100の投光部Cから出射される測定用光は、撮影レンズ210によって撮像素子220に集光パターンC’として結像され、投光装置100の投光部Dから出射される測定用光は、撮影レンズ210によって撮像素子220に集光パターンD’として結像され、投光装置100の投光部Eから出射される測定用光は、撮影レンズ210によって撮像素子220に集光パターンE’として結像されるようになっている。
【0024】
本発明では、これらの集光パターン(集光パターンA’、集光パターンB’、集光パターンC’、集光パターンD’及び集光パターンE’)を構成する集光スポット(即ち、収束光による集光スポットと発散光による集光スポット)の直径(以下、単に、「収束光による集光スポット径」、「発散光による集光スポット径」とも言う。)を計測することにより、撮影レンズ210と撮像素子220とを備えるカメラモジュール200に対し、撮影レンズ210(測定対象レンズ)から撮像素子220までの距離、及び撮像素子220の傾きを求める(測定)するようにしている。
【0025】
図4は、投光部Aの発散光方向の入射様子を説明するための模式図である。また、
図5は、投光部Aの収束光方向の入射様子を説明するための模式図である。更に、
図6は、投光部B、投光部C、投光部D又は投光部Eの収束光方向の入射様子を説明するための模式図である。
図4及び
図5を参照して、投光部Aの具体的な構成例を説明する。
【0026】
図4及び
図5に示されたように、投光部Aは、光源となるレーザーダイオード(LD)等の投光素子111と、投光素子111から出射された拡散光を平行光にする投光レンズ112と、投光レンズ112から出射された平行光を入射する集光レンズ113と、集光レンズ113による集光後の発散光を入射するシリンドリカルレンズ114とを具備している。
【0027】
本発明で使用されるシリンドリカルレンズ114は、片面がシリンドリカル面で、もう片面は平面である、平凸シリンドリカルレンズであり、即ち、Y軸方向に凸レンズの曲率を持つシリンドリカル面で、X軸方向に曲率のない平面である平凸シリンドリカルレンズである。
図4はシリンドリカルレンズ114の平面を示しており、集光レンズ113による集光後の発散光がシリンドリカルレンズ114の平面側(X軸方向)に入射し、そして、シリンドリカルレンズ114から出射された発散光を、本発明の測定用光としての発散光とする。また、
図5はシリンドリカルレンズ114のシリンドリカル面を示しており、集光レンズ113による集光後の発散光がシリンドリカルレンズ114のシリンドリカル面側(Y軸方向)に入射し、そして、シリンドリカルレンズ114から出射された収束光を、本発明の測定用光としての収束光とする。
【0028】
本発明では、シリンドリカルレンズ114から出射された測定用光(発散光及び収束光)を測定対象レンズ(撮影レンズ210)に入射させる。
【0029】
また、投光部Aでは、投光素子111の光軸、投光レンズ112の光軸、集光レンズ113の光軸、及びシリンドリカルレンズ114の光軸を全て一致させて構成されている。以下、これらの光軸(即ち、Z軸)を単に、「投光装置の光軸」又は「光軸」とも言う。
【0030】
図4及び
図5に示された光軸上の点aは、集光レンズ113の集光点を示す。また、
図5に示された光軸上の点bは、シリンドリカルレンズ114の収束光側集光点を示す。
【0031】
なお、投光素子111として、上述したレーザーダイオード(LD)のほか、発光ダイオードを用いることもできる。また、投光レンズ112として、例えば、コリメータレンズを用いることができる。
【0032】
図3に示された投光装置100において、投光部Aから出射される測定用光は、撮影レンズ210(測定対象レンズ)に垂直に入射するようになっており、撮影レンズ210(測定対象レンズ)から撮像素子220に結像された集光パターンA’までの距離(以下、この距離をZ
Aで表す。)を測定するための測定用光である。つまり、Z
Aは、撮影レンズ210(測定対象レンズ)から、投光部Aから出射される測定用光によって撮像素子220に結像された集光パターンA’までの距離である。
【0033】
本発明では、測定したZ
Aを撮影レンズから撮像素子までの距離とする。
【0034】
図3に示された投光装置100において、投光部Bから出射される測定用光は、投光装置の光軸に対して入射角αで(この入射角αは
図6に示されている。)、撮影レンズ210(測定対象レンズ)に入射するようになっており、撮影レンズ210(測定対象レンズ)から撮像素子220に結像された集光パターンB’までの距離(以下、この距離をZ
Bで表す。)を測定するための測定用光である。つまり、Z
Bは、撮影レンズ210(測定対象レンズ)から、投光部Bから出射される測定用光によって撮像素子220に結像された集光パターンB’までの距離である。
【0035】
図3に示された投光装置100において、投光部Cから出射される測定用光は、投光装置の光軸に対して入射角αで(この入射角αは
図6に示されている。)、撮影レンズ210(測定対象レンズ)に入射するようになっており、撮影レンズ210(測定対象レンズ)から撮像素子220に結像された集光パターンC’までの距離(以下、この距離をZ
Cで表す。)を測定するための測定用光である。つまり、Z
Cは、撮影レンズ210(測定対象レンズ)から、投光部Cから出射される測定用光によって撮像素子220に結像された集光パターンC’までの距離である。
【0036】
本発明では、Z
BとZ
Cを測定し、測定したZ
Bと測定したZ
Cの距離差分dz1から、撮像素子Y軸方向の傾き角γを求めることができる。
【0037】
図3に示された投光装置100において、投光部Dから出射される測定用光は、投光装置の光軸に対して入射角αで(この入射角αは
図6に示されている。)、撮影レンズ210(測定対象レンズ)に入射するようになっており、撮影レンズ210(測定対象レンズ)から撮像素子220に結像された集光パターンD’までの距離(以下、この距離をZ
Dで表す。)を測定するための測定用光である。つまり、Z
Dは、撮影レンズ210(測定対象レンズ)から、投光部Dから出射される測定用光によって撮像素子220に結像された集光パターンD’までの距離である。
【0038】
図3に示された投光装置100において、投光部Eから出射される測定用光は、投光装置の光軸に対して入射角αで(この入射角αは
図6に示されている。)、撮影レンズ210(測定対象レンズ)に入射するようになっており、撮影レンズ210(測定対象レンズ)から撮像素子220に結像された集光パターンE’までの距離(以下、この距離をZ
Eで表す。)を測定するための測定用光である。つまり、Z
Eは、撮影レンズ210(測定対象レンズ)から、投光部Eから出射される測定用光によって撮像素子220に結像された集光パターンE’までの距離である。
【0039】
本発明では、Z
DとZ
Eを測定し、測定したZ
Dと測定したZ
Eの距離差分dz2から、撮像素子X軸方向の傾き角δを求めることができる。
【0040】
本発明の撮像素子の位置計測方法を用いて、撮影レンズから撮像素子までの距離(Z
A)、及び撮像素子の傾き(撮像素子X軸方向の傾き角δ及び撮像素子Y軸方向の傾き角γ)を測定する際に、投光装置(投光部)と測定対象レンズ(撮影レンズ)の位置関係について、測定対象レンズ(撮影レンズ)への入射角の大きさが測定用光の発散光も測定用光の収束光も同じになるようにするため、
図5に示されたように、集光レンズ113の集光点aとシリンドリカルレンズ114の収束光側集光点bの中間に測定対象レンズ(撮影レンズ210)を設置するようにしており、集光レンズ113の集光点aからシリンドリカルレンズ114の収束光側集光点bまでの距離を2Lとすると、集光レンズ113の集光点aから測定対象レンズの設置位置までの距離はLとなる。
【0041】
つまり、Lは本発明の投光装置の既知パラメータで、測定対象レンズを設置するための固定値であり、集光レンズ113の集光点aからシリンドリカルレンズ114の収束光側集光点bまでの距離の半分はLとなる。
【0042】
本発明では、集光レンズ113の集光点aとシリンドリカルレンズ114の収束光側集光点bの中間に測定対象レンズ(撮影レンズ210)を設置することにより、測定用光の発散光の測定対象レンズへの入射角の大きさは、測定用光の収束光の測定対象レンズへの入射角の大きさと等しくなる。以下、測定用光の発散光の測定対象レンズへの入射角をθとするとともに、測定用光の収束光の測定対象レンズへの入射角をもθとする。また、このθを単に、「測定用光の測定対象レンズへの入射角」とも言う。
【0043】
図7は、本発明の投光部Aの発散光方向の入射時における測定対象レンズの発散光側集光点、及び、測定対象レンズの焦点位置から測定対象レンズの発散光側集光点までの距離(測定対象レンズの発散光側集光距離のずれ量Z1)を説明するための模式図である。
図7を参照して、測定対象レンズの発散光側集光距離のずれ量Z1の算出方法について説明する。
【0044】
本発明では、本発明の投光部Aの発散光方向の入射時において、
図7に示されたように、点p1、点p2及び点p3で構成される三角形と、点p1、点p4及び点p5で構成される三角形は相似であるため、また、測定対象レンズの焦点位置における点p4点p5間距離は2fθであるため、下記数1が成立する。
(数1)
Z1/(f+Z1)=2fθ/d
ただし、fは測定対象レンズの焦点距離であり、θは測定用光(発散光)の測定対象レンズへの入射角であり、dは測定対象レンズの有効口径(入射瞳)である。
【0045】
上記数1から、下記数2が得られる。
(数2)
d・Z1=2fθ(f+Z1)
上記数2から、下記数3が得られる。
(数3)
Z1=2f
2θ/(d−2fθ)
本発明では、測定用光(発散光)が近軸光線であるため、θを(d/2)/Lで近似した上で、上記数3を整理すると、下記数4が得られる。
(数4)
Z1=f
2/(L−f)
このように、本発明では、Lもfも既知であるため、上記数4に基づいて、測定対象レンズの発散光側集光距離のずれ量Z1を算出することができる。
【0046】
図8は、本発明の投光部Aの発散光方向の入射時において、撮像素子が測定対象レンズの焦点位置より前方の場合の撮像素子に結像された発散光による集光スポットを説明するための模式図である。
図9は、本発明の投光部Aの発散光方向の入射時において、撮像素子が測定対象レンズの焦点位置の場合の撮像素子に結像された発散光による集光スポットを説明するための模式図である。
図10は、本発明の投光部Aの発散光方向の入射時において、撮像素子が測定対象レンズの焦点位置より後方の場合の撮像素子に結像された発散光による集光スポットを説明するための模式図である。
【0047】
本発明の投光部Aにおいて、
図8、
図9及び
図10に示されたように、測定対象レンズの発散光側集光点(測定対象レンズの焦点距離f+測定対象レンズの発散光側集光距離のずれ量Z1)までの任意の測定対象レンズから撮像素子までの距離Zでの撮像素子上の発散光による集光スポット径d’は、下記数5で表せる。ちなみに、
図8、
図9及び
図10に示されている距離Zは、
図3に示されている撮影レンズ210から撮像素子220に結像された集光パターンA’までの距離Z
Aである。
【0048】
また、
図8は撮像素子が測定対象レンズ(撮影レンズ210)の焦点位置より前方の場合(Z<f)を示しており、
図9は撮像素子が測定対象レンズ(撮影レンズ210)の焦点位置の場合(Z=f)を示しており、
図10は撮像素子が測定対象レンズ(撮影レンズ210)の焦点位置より後方の場合(Z>f)を示している。
図8、
図9及び
図10では、下記数5が成立する。
(数5)
(f+Z1−Z)/(f+Z1)=d’/d
ただし、Zは測定対象レンズから撮像素子までの距離であり、d’は測定対象レンズから撮像素子までの距離Zでの撮像素子上の発散光による集光スポット径である。
【0049】
上記数5から、下記数6が得られる。
(数6)
Z=−((f+Z1)/d)d’+(f+Z1)
上記数6から分かるように、距離Z(距離Z
A)は、撮像素子上の発散光による集光スポット径d’と一次式で表される。
【0050】
換言すれば、撮像素子上の発散光による集光スポット径d’だけを測定すれば、上記のように、f、Z1及びdが既知のため、上記数6に基づき、距離Z(距離Z
A)を求めることができる。
【0051】
図11は、本発明の投光部Aの収束光方向の入射時において、測定対象レンズの収束光側集光点、測定対象レンズの焦点位置から測定対象レンズの収束光側集光点までの距離(測定対象レンズの収束光側集光距離のずれ量Z2)、及び、撮像素子が測定対象レンズの焦点位置の場合の撮像素子に結像された収束光による集光スポットを説明するための模式図である。
図12は、本発明の投光部Aの収束光方向の入射時において、撮像素子が測定対象レンズの焦点位置より後方の場合の撮像素子に結像された収束光による集光スポットを説明するための模式図である。
図13は、本発明の投光部A収束光方向の入射時において、撮像素子が測定対象レンズの焦点位置より前方の場合の撮像素子に結像された収束光による集光スポットを説明するための模式図である。
【0052】
図11を参照して、測定対象レンズの収束光側集光距離のずれ量Z2の算出方法について説明する。
【0053】
本発明では、本発明の投光部Aの収束光方向の入射時において、本発明の投光部Aの発散光方向の入射時と同じように、
図11に示されたように、下記数7が成立する。
(数7)
Z2/(f−Z2)=2fθ/d
ただし、fは測定対象レンズの焦点距離であり、θは測定用光(収束光)の測定対象レンズへの入射角であり、dは測定対象レンズの有効口径(入射瞳)である。
【0054】
上記数7から、下記数8が得られる。
(数8)
d・Z2=2fθ(f−Z2)
上記数8から、下記数9が得られる。
(数9)
Z2=2f
2θ/(d+2fθ)
本発明では、測定用光(収束光)が近軸光線であるため、θを(d/2)/Lで近似した上で、上記数9を整理すると、下記数10が得られる。
(数10)
Z2=f
2/(L+f)
このように、本発明では、Lもfも既知であるため、上記数10に基づいて、測定対象レンズの収束光側集光距離のずれ量Z2を算出することができる。
【0055】
本発明の投光部Aにおいて、
図11、
図12及び
図13に示されたように、測定対象レンズの収束光側集光点(測定対象レンズの焦点距離f−測定対象レンズの収束光側集光距離のずれ量Z2)から後方の任意の測定対象レンズから撮像素子までの距離Zでの撮像素子上の収束光による集光スポット径d’’は、下記数11で表せる。ちなみに、
図11、
図12及び
図13に示されている距離Zは、
図3に示されている撮影レンズ210から撮像素子220に結像された集光パターンA’までの距離Z
Aである。
【0056】
また、
図13は撮像素子が測定対象レンズ(撮影レンズ210)の焦点位置より前方の場合(Z<f)を示しており、
図11は撮像素子が測定対象レンズ(撮影レンズ210)の焦点位置の場合(Z=f)を示しており、
図12は撮像素子が測定対象レンズ(撮影レンズ210)の焦点位置より後方の場合(Z>f)を示している。
図11、
図12及び
図13では、下記数11が成立する。
(数11)
Z−(f−Z2)/(f−Z2)=d’’/d
ただし、Zは測定対象レンズから撮像素子までの距離であり、d’’は測定対象レンズから撮像素子までの距離Zでの撮像素子上の収束光による集光スポット径である。
【0057】
上記数11から、下記数12が得られる。
(数12)
Z=((f−Z2)/d)d’’+(f−Z2)
上記数12から分かるように、距離Z(距離Z
A)は、撮像素子上の収束光による集光スポット径d’’と一次式で表される。
【0058】
換言すれば、撮像素子上の収束光による集光スポット径d’’だけを測定すれば、上記のように、f、Z2及びdが既知のため、上記数12に基づき、距離Z(距離Z
A)を求めることができる。
【0059】
上記数6より撮像素子上の発散光による集光スポット径d’の式に変形すると、下記数13が得られる。
(数13)
d’=(−Z+(f+Z1))/((f+Z1)/d)
また、上記数12より撮像素子上の収束光による集光スポット径d’’の式に変形すると、下記数14が得られる。
(数14)
d’’=(Z−(f−Z2))/((f−Z2)/d)
このように、数13は本発明の投光部Aにおいて、発散光入射による集光スポット径d’を表しており、また、数14は本発明の投光部Aにおいて、収束光入射による集光スポット径d’’を表している。
【0060】
上記数13、数14及び
図14の集光パターンのイメージ図を参照すれば分かるように、本発明では、撮像素子が測定対象レンズの焦点位置より前方の場合に、発散光入射による集光スポット径d’(即ち、
図8のd’)は、収束光入射による集光スポット径d’’(即ち、
図13のd’’)より大きい。
【0061】
また、撮像素子が測定対象レンズの焦点位置の場合に、発散光入射による集光スポット径d’(即ち、
図9のd’)は、収束光入射による集光スポット径d’’(即ち、
図11のd’’)と等しい。
【0062】
更に、撮像素子が測定対象レンズの焦点位置より後方の場合に、発散光入射による集光スポット径d’(即ち、
図10のd’)は、収束光入射による集光スポット径d’’(即ち、
図12のd’’)より小さい。
【0063】
本発明では、投光部Aからの発散光入射(X軸方向)による集光スポット径d’、と投光部Aからの収束光入射(Y軸方向)による集光スポット径d’’を同時に測定し、測定して得られたd’及びd’’のうち、値の大きい方を、距離Z(距離Z
A)を求める際に必要な集光スポット径として用いるようにしている。
【0064】
即ち、測定して得られたd’及びd’’のうち、d’の値が大きい場合に、d’を用い、上記数6に基づき、距離Z(距離Z
A)を求めるようにする。また、測定して得られたd’及びd’’のうち、d’’の値が大きい場合に、d’’を用い、上記数12に基づき、距離Z(距離Z
A)を求めるようにする。
【0065】
本発明では、撮像素子をZ軸ステージなどで移動させながら、集光スポット径とZ距離の測定を行うキャリブレーションを行えば、集光スポット径から距離Z(距離Z
A)を物理量として求めることができる。
【0066】
以上のように、本発明では、投光部Aから出射される測定用光による集光パターンA’を測定することにより、即ち、投光部Aからの発散光入射による集光スポット径d’、と投光部Aからの収束光入射による集光スポット径d’’を同時に測定することにより、撮影レンズから撮像素子までの距離Z
Aを求めることができる。
【0067】
以上では、本発明の投光部Aと撮影レンズから撮像素子までの距離Z
Aの測定原理ついて説明した。
【0068】
本発明では、上述したように、投光部B、投光部C、投光部D及び投光部Eから出射される測定用光は、いずれも投光装置の光軸に対して入射角αで(この入射角αは
図6に示されている。)、測定対象レンズに入射するようになっている。撮影レンズ210(測定対象レンズ)から撮像素子220に結像された集光パターンB’までの距離Z
B、撮影レンズ210(測定対象レンズ)から撮像素子220に結像された集光パターンC’までの距離Z
C、撮影レンズ210(測定対象レンズ)から撮像素子220に結像された集光パターンD’までの距離Z
D、及び撮影レンズ210(測定対象レンズ)から撮像素子220に結像された集光パターンE’までの距離Z
Eの測定原理は、撮影レンズから撮像素子までの距離Z(撮影レンズ210(測定対象レンズ)から撮像素子220に結像された集光パターンA’までの距離Z
A)と同じであるため、その説明は省略する。
【0069】
本発明では、
図6に示されたように、投光部Bから出射される測定用光は、入射角αで撮影レンズ210(測定対象レンズ)に入射するように設置される。投光部Bによる集光パターンB’は、撮像素子220の中央(即ち、投光部Aによる集光パターンA’の中心)からfαの位置にある(
図3参照)。つまり、集光パターンA’の中心から集光パターンB’の中心までの距離はfαになる。
【0070】
また、
図6に示されたように、投光部Cから出射される測定用光も同様に、入射角αで撮影レンズ210(測定対象レンズ)に入射するように設置され、
図3に示されたように、投光部Bとは反対側のfαの位置へ集光パターンC’が結像される。
【0071】
本発明では、集光パターンB’及び集光パターンC’を測定することにより、Z
BとZ
Cを求めることができ、求めたZ
Bと求めたZ
Cの距離差分dz1から、下記数15に基づいて、撮像素子Y軸方向の傾き角γを求めることができる。
(数15)
γ=arctan(dz1/2fα)
ただし、dz1はZ
BとZ
Cの距離差分である。
【0072】
同様に、本発明では、
図6に示されたように、投光部Dから出射される測定用光は、入射角αで撮影レンズ210(測定対象レンズ)に入射するように設置される。投光部Dによる集光パターンD’は撮像素子220の中央(即ち、投光部Aによる集光パターンA’の中心)からfαの位置にある(
図3参照)。つまり、集光パターンA’の中心から集光パターンD’の中心までの距離はfαになる。
【0073】
また、
図6に示されたように、投光部Eから出射される測定用光も同様に、入射角αで撮影レンズ210(測定対象レンズ)に入射するように設置され、
図3に示されたように、投光部Dとは反対側のfαの位置へ集光パターンE’が結像される。
【0074】
本発明では、集光パターンD’及び集光パターンE’を測定することにより、Z
DとZ
Eを求めることができ、求めたZ
Dと求めたZ
Eの距離差分dz2から、下記数16に基づいて、撮像素子X軸方向の傾き角δを求めることができる。
(数16)
δ=arctan(dz2/2fα)
ただし、dz2はZ
DとZ
Eの距離差分である。
【0075】
以上のように、本発明の撮像素子の位置計測方法によれば、光学チャートを使用せず、同じ構成を有する「投光部A」、「投光部B」、「投光部C」、「投光部D」及び「投光部E」で構成されている本発明の投光装置100を用いて、これらの投光部から出射される測定用光による集光パターン(発散光入射による集光スポット径及び収束光入射による集光スポット径)を1位置の測定で計測することによって、撮影レンズから撮像素子までの距離(Z
A)、及び撮像素子の傾き(撮像素子X軸方向の傾き角δ及び撮像素子Y軸方向の傾き角γ)を求めることができる。
【0076】
また、本発明では、撮影レンズ210(測定対象レンズ)に対して、撮像素子220が傾いていた場合に、撮像素子X軸方向の傾き角δ及び撮像素子Y軸方向の傾き角γが3°であっても、集光スポット径が0.2%以下の変化量であるため、測定距離値に与える影響は実用上問題ない。
【0077】
本発明によれば、撮影レンズから撮像素子までの距離(Z
A)、及び撮像素子の傾き(撮像素子X軸方向の傾き角δ及び撮像素子Y軸方向の傾き角γ)が一回の測定で算出できることにより、デジタルカメラ装置(例えば、カメラモジュール)の製造段階で、撮影レンズと撮像素子との位置調整(位置決め)をリアルタイムで値を確認しながら、行えるメリットは大きく、カメラモジュールの位置調整時間の短縮等に貢献することができる。