(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。第一の実施の形態のシリンダ装置C1および第二の実施の形態のシリンダ装置C2において、共通の符号が付された部材、部品は、同一の構成を備えている。よって、説明の重複を避けるため、第一の実施の形態のシリンダ装置C1の説明中で詳細に説明し、第二の実施の形態のシリンダ装置C2の説明では詳しい説明を省略する。
【0021】
<第一の実施の形態>
第一の実施の形態におけるシリンダ装置C1は、基本的には、
図1に示すように、シリンダ2と、シリンダ2内に摺動自在に挿入されるピストン3と、シリンダ2内に挿入されてピストン3に連結されるロッド4と、シリンダ2内にピストン3で区画したロッド側室5とピストン側室6と、タンク7と、ロッド側室5とタンク7とを連通する減衰通路8と、減衰通路8の途中に設けたリリーフ弁RVと減衰弁Vとを備えて構成されており、所謂片ロッド型のシリンダ装置として構成されている。
【0022】
また、前記ロッド側室5とピストン側室6には作動油等の液体が充填されるとともに、タンク7には、液体のほかに気体が充填されている。なお、タンク7内は、特に、気体を圧縮して充填して加圧状態とする必要は無い。
【0023】
以下、シリンダ装置C1の各部について詳細に説明する。シリンダ2は筒状であって、その
図1中右端は蓋13によって閉塞され、
図1中左端には環状のロッドガイド14が取り付けられている。また、前記ロッドガイド14内には、シリンダ2内に移動自在に挿入されるロッド4が摺動自在に挿入されている。このロッド4は、一端をシリンダ2外へ突出させており、シリンダ2内の他端をシリンダ2内に摺動自在に挿入されるピストン3に連結している。
【0024】
シリンダ装置C1は、図示はしないが、ロッド4が鉄道車両の台車と車体の一方に、シリンダ2が台車と車体の他方に連結されて、台車と車体との間に介装される。シリンダ装置C1は、片ロッド型に設定されているので、両ロッド型のシリンダ装置に比較してストローク長を確保しやすく、シリンダ装置C1の全長が短くなって、鉄道車両への搭載性が向上する。
【0025】
なお、ロッドガイド14の外周とシリンダ2との間は図示を省略したシール部材によってシールされており、これによりシリンダ2内は密閉状態に維持されている。そして、シリンダ2内にピストン3によって区画されるロッド側室5とピストン側室6には、前述のように液体として作動油が充填されている。
【0026】
また、このシリンダ装置C1の場合、ロッド4の断面積をピストン3の断面積の二分の一にして、ピストン3のロッド側室5側の受圧面積がピストン側室6側の受圧面積の二分の一となるようになっている。よって、シリンダ装置C1の伸長時と収縮時とでシリンダ2内から減衰通路8を通じてタンク7へ排出される流量が等しくなる。
【0027】
戻って、ロッド4の
図1中左端とシリンダ2の右端を閉塞する蓋13とには、図示しない取付部を備えており、このシリンダ装置C1を鉄道車両における車体と台車との間に介装できる。
【0028】
そして、本例のシリンダ装置C1にあっては、ロッド側室5とピストン側室6とが第一通路9によって連通されており、この第一通路9の途中には、第一開閉弁10が設けられている。この第一通路9は、シリンダ2外でロッド側室5とピストン側室6とを連通しているが、ピストン3に設けられてもよい。
【0029】
第一開閉弁10は、電磁開閉弁とされており、ロッド側室5とピストン側室6とを連通する連通ポジションとロッド側室5とピストン側室6との連通を絶つ遮断ポジションとを備えており、通電時には第一通路9を開放してロッド側室5とピストン側室6とを連通する。
【0030】
また、本例のシリンダ装置C1にあっては、ピストン側室6とタンク7とが第二通路11によって連通されており、この第二通路11の途中には、第二開閉弁12が設けられている。第二開閉弁12は、電磁開閉弁とされており、ピストン側室6とタンク7とを連通する連通ポジションと、ピストン側室6とタンク7との連通を絶つ遮断ポジションとを備えており、通電時には第二通路11を開放してピストン側室6とタンク7とを連通する。
【0031】
また、
図1に示すように、本例のシリンダ装置C1は、ピストン側室6からロッド側室5へ向かう流れのみを許容する整流通路30を備えている。なお、整流通路30は、ピストン3以外に設けてもよい。さらに、本例のシリンダ装置C1は、タンク7からピストン側室6へ向かう流れのみを許容する吸込通路31を備えている。
【0032】
したがって、この本例のシリンダ装置C1にあっては、第一開閉弁10および第二開閉弁12が遮断ポジションを採る場合にあって、外力を受けて伸長すると、圧縮されるロッド側室5から作動油が減衰通路8を通じてタンク7へ押し出される。そして、拡大するピストン側室6には吸込通路31を通じてタンク7から作動油が供給される。したがって、この伸長作動時には、シリンダ装置C1は、リリーフ弁RVおよび減衰弁Vで減衰通路8を通過する作動油の流れに抵抗を与えて、ロッド側室5内の圧力を上昇させて伸長に対抗する減衰力を発揮する。なお、この場合、減衰通路8を通過する作動油の流量は、ピストン3の断面積からロッド4の断面積を引いた値にピストン3の移動量を乗じた量になる。
【0033】
反対に、第一開閉弁10および第二開閉弁12が遮断ポジションを採る場合にあって、外力を受けてシリンダ装置C1が収縮すると、整流通路30を介して圧縮されるピストン側室6からロッド側室5へ作動油が移動する。また、シリンダ装置C1の収縮時には、ロッド4がシリンダ2内に侵入するため、ロッド4がシリンダ2内に侵入する体積分の作動油がシリンダ2内で過剰となって減衰通路8を通じてタンク7へ排出される。この収縮作動時には、シリンダ装置C1は、リリーフ弁RVおよび減衰弁Vで減衰通路8を通過する作動油の流れに抵抗を与えて、シリンダ2内の圧力を上昇させて収縮に対抗する減衰力を発揮する。なお、この場合、減衰通路8を通過する作動油の流量は、ロッド4の断面積にピストン3の移動量を乗じた量になる。ここで、ロッド4の断面積は、ピストン3の断面積の二分の一に設定されているので、シリンダ装置C1が伸長しても収縮してもピストン3の移動量が同じであれば、減衰通路8を通過する作動油の流量は等しくなる。よって、シリンダ装置C1は、伸縮両側でピストン3の移動速度が同じであれば、等しい減衰力を発揮できる。
【0034】
なお、第一開閉弁10も第二開閉弁12も非通電時に遮断ポジションを採るので、電力供給不能な失陥時には、本例のシリンダ装置C1は、前述のように伸縮に対して必ず減衰力を発揮するので、パッシブなダンパとして機能する。
【0035】
また、本例のシリンダ装置C1にあっては、第一開閉弁10を連通ポジションとして第二開閉弁12を遮断ポジションとする場合、ロッド側室5とピストン側室6が第一通路9を介して連通されるがピストン側室6とタンク7との連通が絶たれる。この状態でシリンダ装置C1が外力を受けて収縮すると、ロッド4がシリンダ2内に侵入する体積分の作動油がシリンダ2から減衰通路8へ排出され、前記同様に収縮に対抗する減衰力を発揮する。他方、この状態で、シリンダ装置C1が伸長すると、縮小するロッド側室5から拡大するピストン側室6へ第一通路9を介して作動油が移動し、ロッド4がシリンダ2から退出する体積分の作動油が吸込通路31を介してタンク7からシリンダ2内へ供給される。よって、この場合、作動油が減衰通路8へ流れないので、シリンダ装置C1は減衰力を発揮しない。
【0036】
さらに、本例のシリンダ装置C1にあっては、第一開閉弁10を遮断ポジションとして第二開閉弁12を連通ポジションとする場合、ロッド側室5とピストン側室6の連通が絶たれるが、ピストン側室6とタンク7とが第二通路11を介して連通される。この状態でシリンダ装置C1が外力を受けて伸長すると、ロッド側室5の縮小に伴ってロッド側室5から作動油が減衰通路8へ排出され、前記同様に伸長に対抗する減衰力を発揮する。他方、この状態で、シリンダ装置C1が収縮すると、縮小するピストン側室6から拡大するピストン側室6へ整流通路30を介して作動油が移動し、ロッド4がシリンダ2内へ侵入する体積分の作動油が第二通路11を介してピストン側室6からタンク7内へ排出される。よって、この場合、作動油が減衰通路8へ流れないので、シリンダ装置C1は減衰力を発揮しない。
【0037】
このように、このシリンダ装置C1では、伸長と収縮のいずれか一方を選択して減衰力を発揮する片利きのダンパとして機能できるようになっている。
【0038】
なお、このシリンダ装置C1の場合、シリンダ2内に混入したエアをロッド側室5からタンク7へ排出できるようにエア抜き用のオリフィス26が設けられている。
【0039】
つづいて、減衰通路8は、ロッド側室5とタンク7とを連通している。減衰通路8には、開弁圧を調節可能な可変リリーフ弁であるリリーフ弁RVが設けられており、このリリーフ弁RVの下流、つまり、減衰通路8のリリーフ弁RVよりタンク7側に減衰弁Vが設けられている。
【0040】
リリーフ弁RVは、前述のように可変リリーフ弁とされており、具体的には、ソレノイドへの通電量によって開弁圧を調節できる可変電磁リリーフ弁とされている。本例では、リリーフ弁RVは、ソレノイドへの通電量を大きくすると開弁圧が小さくなり、通電量を小さくすると開弁圧が大きくなるようになっており、非通電時に開弁圧を最大とする。
【0041】
減衰弁Vは、通過する作動油の流量が増加すると流路面積を小さくするノーマルオープン型の減衰弁とされている。減衰弁Vは、具体的には、
図2に示すように、減衰通路8の途中に設けられてロッド側室5とタンク7の双方に通じる弁孔20aを有するハウジング20と、弁孔20a内に軸方向移動可能に収容される弁体21と、弁孔20a内に収容されて固定されるばね受22と、弁体21とばね受22との間に介装されて弁体21を附勢するばね23とを備えて構成されている。
【0042】
ハウジング20は、弁孔20aを形成する中空部を有し、内周に
図2中右方から中径部20bと、中径部20bより小径な小径部20cと、小径部20cと中径部20bより大径な大径部20dとを備えている。また、ハウジング20は、小径部20cと大径部20dとの間の段部で形成された環状の弁座20eと、外方から開口して中径部20bに通じる通路20fと、大径部20dから外方に開口する通路20gとを備えている。また、弁孔20aの中径部20b側が通路20fおよび減衰通路8を通じてロッド側室5へ連通され、弁孔20aの大径部20d側が通路20gおよび減衰通路8を通じてタンク7へ連通されている。
【0043】
弁体21は、小径部20c内に摺動自在に挿入される摺動軸部21aと、摺動軸部21aに連なり弁座20eに離着座する摺動軸部21aの外径より大径で大径部20dの内径より小径のフランジ部21bと、フランジ部21bの後端に連なる後方軸部21cとを備えている。
【0044】
また、弁体21は、後方軸部21cの後端である
図2中左方から開口して軸方向へ延びる軸方向孔21dと、フランジ部21bの側部から開口して径方向へ延び、軸方向孔21dに通じてフランジ部21bの反対側の側部に開口する径方向孔21eと、摺動軸部21aの先端から軸方向へ沿って開口して軸方向孔21dに通じる第二減衰
弁通路としての軸方向オリフィスO1と、摺動軸部21aの側部から開口して径方向へ延び、軸方向孔21dに通じる複数の第一減衰
弁通路としての径方向オリフィスO2とを備えている。
【0045】
そして、弁体21は、摺動軸部21aの外周を小径部20cの内周に摺動自在に挿入した状態でハウジング20の弁孔20a内に収容されており、弁孔20a内で軸方向への移動が許容されている。
【0046】
ばね受22は、弁孔20a内であって弁体21よりも
図2中左方となる後方から螺着されて弁孔20aの
図2中左端を閉塞しており、ばね受22と弁体21との間にはばね23が圧縮状態で介装されている。ばね受22は、ハウジング20に設けた弁孔20aの大径部20dに螺合される円柱状のばね受本体22aと、ばね受本体22aから弁体21側へ伸びて弁体21の後退量を規制するストッパとしてのストッパ部22bとを備えている。ばね23は、コイルばねとされていて、ストッパ部22bおよび後方軸部21cの外周に配置されるとともに、ばね受22のばね受本体22aと弁体21のフランジ部21bとの間に介装されており、ストッパ部22bと後方軸部21cとによって径方向の移動が規制される。これにより、ばね23が圧縮される際にばね23の胴曲りが規制される。また、弁体21のフランジ部21bの反弁座側端にばね23の一端が当接しており、弁体21のフランジ部21bは、ばね受として機能している。
【0047】
弁体21は、ばね23によって附勢され、中径部20bに流れる流量が少ない状態では、フランジ部21bが弁座20eに着座するようになっている。この状態では、摺動軸部21aの先端側が小径部20cよりも
図2中右方へ突出して中径部20bに径方向で対向し、径方向オリフィスO2が中径部20bに面して小径部20cにて閉塞されないように、摺動軸部21aと小径部20cの軸方向長さがそれぞれ設定される。つまり、フランジ部21bが弁座20eに着座する状態では、軸方向オリフィスO1と径方向オリフィスO2は、閉塞されないので、これらオリフィスO1,O2は有効とされて両者でロッド側室5とタンク7との連通が許容される。
【0048】
他方、弁体21がハウジング20に対して
図2中左方へ後退し、つまり、弁座20eからフランジ部21bが離間する方向へ弁体21が移動し、径方向オリフィスO2が小径部20cの内周に対向するようになると径方向オリフィスO2が閉塞され始める。そして、弁体21の後退量が増えると、径方向オリフィスO2が小径部20cの内周によって閉塞される面積が増加して、径方向オリフィスO2の有効流路面積が減少し、径方向オリフィスO2の開口全体が小径部20cの内周に完全に対向すると径方向オリフィスO2が閉塞される。径方向オリフィスO2が閉塞されると軸方向オリフィスO1のみが有効となり、減衰弁Vの流路面積は軸方向オリフィスO1の面積に制限される。
【0049】
弁孔20aは、中径部20bが通路20fを通じてロッド側室5に通じており、大径部20dに開口する通路20gを介してタンク7に通じており、弁体21には、摺動軸部21aの断面積を受圧面積としてリリーフ弁RVの下流の圧力が作用する。よって、弁体21は、通過する流量が増加して圧力損失が高くなるとばね23の附勢力に打ち勝ってハウジング20内を
図2中左方へ後退するようになる。弁体21の後退量は、摺動軸部21aに作用する圧力の大きさに比例するので、圧力が大きくなると後退量が大きくなって径方向オリフィスO2が徐々に閉塞される。弁体21は、ある程度後退すると、ばね受22のストッパ部22bに当接してそれ以上の後退が規制されるので、摺動軸部21aが小径部20cから抜け出ない。このように、減衰弁Vは、ノーマルオープン型に設定されていて、通過する作動油の流量が増し圧力損失が高くなると流路面積を小さくするようになっている。そして、本例では、径方向オリフィスO2は流路面積を減少させる第一減衰弁通路を構成し、弁体21の後退状況に関わらず中径部20bに常に開口して有効に機能する軸方向オリフィスO1は第二減衰弁通路を構成している。
【0050】
このように構成されたシリンダ装置C1の減衰力特性は、ピストン速度が低速域にある場合には、
図3中線aで示すように、オリフィス26の二乗特性が表れ、ピストン速度が上昇してリリーフ弁RVが開弁するようになると
図3中線bで示すように、リリーフ弁RVの開弁圧に流量増加に伴うオーバーライドが重畳されるリリーフ弁RVの特性が表れる。さらに、ピストン速度が上昇して高速域に達すると、流量増加に伴って減衰弁Vの径方向オリフィスO2の流路面積が減少するので、シリンダ装置C1の減衰力特性は、
図3中線cで示すように、減衰係数が徐々に大きくなっていく特性となる。さらに、ピストン速度が上昇して減衰弁Vの流路面積が最小流路面積である軸方向オリフィスO1の流路面積となると、シリンダ装置C1の減衰力特性は、その後のピストン速度の上昇に対して、
図3中線dで示すように、減衰力が大きくなっていく特性となる。なお、リリーフ弁RVの開弁圧を調節すると、減衰弁Vが流路面積を減少しない範囲において、シリンダ装置C1の減衰力を高低調節できる。
【0051】
なお、本例の減衰弁Vでは、弁体21がストッパ部22bに当接すると弁体21のハウジング20に対する後退が規制されるようになっており、ストッパ部22bはばね23が最圧縮される以前に弁体21を停止させる。よって、弁体21が最大限に後退してもばね23の線材同士が密着しないので、ばね23に軸方向の過大な荷重が作用せず、ばね23を保護できる。
【0052】
このように構成されたシリンダ装置C1は、第一開閉弁10および第二開閉弁12を遮断ポジションとする場合、外力によって伸縮するとリリーフ弁RVおよび減衰弁Vを介して作動油がシリンダ2内からタンク7へ排出される。そして、リリーフ弁RVへ供給する通電量を調節して開弁圧を調節すると、シリンダ装置C1が発生する減衰力を調節できる。
【0053】
また、第一開閉弁10を連通ポジションとして第二開閉弁12を遮断ポジションとする場合および第一開閉弁10を遮断ポジションとして第二開閉弁12を連通ポジションとする場合には、前述したように、伸長或いは収縮のいずれか一方に対してのみシリンダ装置C1が減衰力を発揮するモードとなる。よって、たとえば、このモードを選択すれば、減衰力を発揮する方向が鉄道車両の台車の振動により車体を加振してしまう方向である場合、そのような方向には減衰力を出さないようにシリンダ装置C1を片効きのダンパとできる。よって、このシリンダ装置C1では、カルノップのスカイフック理論に基づくセミアクティブ制御を容易に実現できるため、シリンダ装置C1をスカイフックセミアクティブダンパとして機能させ得る。
【0054】
つづいて、鉄道車両の走行中に大きな地震が発生するなどして、電力供給が途絶えた制御失陥時には、第一開閉弁10および第二開閉弁12が遮断ポジションを採り、前述のようにシリンダ装置C1はパッシブダンパとして機能する。この状態では、シリンダ装置C1が伸縮すると必ずシリンダ2内から作動油が排出され、排出された作動油は、リリーフ弁RVと減衰弁Vを通過してタンク7へ流入する。したがって、この制御失陥時にあっても、リリーフ弁RVと減衰弁Vが作動油の流れに抵抗を与えて、シリンダ装置C1は減衰力を発揮するが、大地震によって台車が激しく振動して車体との相対速度が速くなると、シリンダ装置C1の伸縮速度であるピストン速度も高速となる。シリンダ装置C1が高速で伸縮する場合、減衰弁Vと通過する作動油の流量が多くなり、これにより減衰弁Vは流路面積を減少させるため、シリンダ装置C1が発揮する減衰力は平常時に比較して大きくなる。
【0055】
つまり、減衰弁Vは流路面積を減少させるため、リリーフ弁RVのみで減衰力を発揮するのに比較してシリンダ装置C1は、
図3中の線c,dで示すように高い減衰力を発揮する。以上より、本発明のシリンダ装置C1にあっては、車体が著大な振動を呈しても高減衰力を発揮して車体振動を低減でき、鉄道車両が走行中に地震が発生しても車体振動が速やかに低減されて脱線を効果的に抑制できる。
【0056】
そして、本発明のシリンダ装置C1では、従来のシリンダ装置のように非常時通路、ノーマルクローズ型とノーマルオープン型の二つの開閉弁、およびパッシブ弁を設けずに減衰通路8に減衰弁Vを設けるのみで地震時の脱線を防止できる。よって、本発明のシリンダ装置C1によれば、地震時の脱線を効果的に防止でき、シリンダ装置C1が安価で済み、且つ、シリンダ装置C1が従来のシリンダ装置と比較して小型化できる。
【0057】
なお、減衰弁Vが流路面積を減少し始めるピストン速度としては、たとえば、20cm/sに設定しており、平常時では減衰弁Vが流路を減少しないように配慮している。このようにすると、通常使用域に減衰弁Vが流路を減少させてシリンダ装置C1が高減衰力を発揮して、平常時における鉄道車両の乗心地の悪化を防止できる。減衰弁Vが流路面積を減少し始めるピストン速度は、前記した数値以外に設定してもよい。
【0058】
また、本例のシリンダ装置C1にあっては、ロッド側室5とピストン側室6とを連通する第一通路9の途中に設けた第一開閉弁10と、ピストン側室6とタンク7とを連通する第二通路11の途中に設けた第二開閉弁12と、ピストン側室6からロッド側室5へ向かう流れのみを許容する整流通路30と、タンク7からピストン側室6へ向かう流れのみを許容する吸込通路31とを備えている。よって、本例のシリンダ装置C1では、カルノップのスカイフック理論に基づくセミアクティブ制御を容易に実現でき、シリンダ装置C1をスカイフックセミアクティブダンパとして機能させ得る。なお、整流通路30を第一開閉弁10の遮断ポジションに統合し、吸込通路31を第二開閉弁12の遮断ポジションに統合してもよい。また、シリンダ装置C1の構成から第一通路9、第一開閉弁10、第二通路11および第二開閉弁12を廃止する場合には、シリンダ装置C1はパッシブダンパとして機能する。よって、シリンダ装置C1をスカイフックセミアクティブダンパとして機能させる必要がなく、パッシブダンパとしてのみ機能させる場合には、第一通路9、第一開閉弁10、第二通路11および第二開閉弁12を廃止してもよい。
【0059】
なお、本例のシリンダ装置C1では、リリーフ弁RVを可変リリーフ弁としているが、減衰力を可変にしない場合には、リリーフ弁RVを開弁圧が一定のリリーフ弁としてもよい。このようにシリンダ装置C1を構成しても、地震時には減衰弁Vが流路面積を減少させて減衰力を高くでき、脱線を防止できる。
【0060】
また、本例の減衰弁Vでは、弁体21がフランジ部21bの側部に開口して径方向オリフィスO2(第一減衰弁通路)と軸方向オリフィスO1(第二減衰弁通路)に通じる軸方向孔21dに連通する径方向孔21eを備えている。このように減衰弁Vが構成されると、径方向孔21eは、ばね23と干渉しない位置に設けられているため、径方向孔21eを通過した作動油は、ばね23の線材間を通過せずに済む。径方向孔21eを廃止して軸方向孔21dのみとすると、ロッド側室5からタンク7へ向かう作動油は、軸方向孔21dの後方軸部21cの後端側の開口からばね23内に流出し、ばね23の線材間を抜けて通路20gへ向かうようになる。このようにすると、弁体21の後退によって、ばね23が圧縮されてばね23の線材間隔が狭まると、作動油が線材間を抜ける際にばね23が抵抗となるので、減衰弁Vの弁体21の作動にダンピングが効いてしまって動きが緩慢となったり、減衰力特性を狙い通りにチューニングし難くなったりする場合がある。よって、ばね23の内周側以外に出口を持つ通路にて径方向オリフィスO2(第一減衰弁通路)と軸方向オリフィスO1(第二減衰弁通路)を通路20gへ連通させるようにするとこのような問題も解決できる。
【0061】
また、本例では、径方向オリフィスO2を同一円周上に複数設けているが、
図4に示すように、径方向オリフィスO2を軸方向にずらして複数設けておいて、弁体21の後退に応じて径方向オリフィスO2が順次閉塞されていくようにし、弁体21の後退に応じて流路面積が段階的に減少するようにしてもよい。
【0062】
さらには、
図5に示すように、弁体21がストッパ部22bに当接して弁体21の後退が規制されても、径方向オリフィスO2が完全に閉塞されないようにしてもよい。このように、弁体21の後退が規制された状態で、減衰弁Vの最小の流路面積を決するようにすれば、軸方向オリフィスO1を廃止してもよい。つまり、ストッパを設ける場合、軸方向オリフィスO1を廃止できるようになるので、弁体21の加工がその分容易となる。この場合、径方向オリフィスO2が第一減衰
弁通路および第二減衰
弁通路として機能し、本例では、弁体21がストッパ部22bに当接して弁体21の後退が規制された状態で径方向オリフィスO2の閉塞されない部分が第二減衰
弁通路となる。つまり、ストッパ部22bにより弁体21の後退が規制されても、常に弁孔20aへの開口を維持する径方向オリフィスO2の部分が第二減衰
弁通路となる。また、ストッパを設ける場合であっても、
図2に示すように、軸方向オリフィスO1を設けて径方向オリフィスO2が弁体21の後退に伴って完全に閉塞されるようにすれば、減衰弁Vの最小の流路面積を必ず軸方向オリフィスO1の流路面積に設定できる利点がある。つまり、径方向オリフィスO2のみを設ける場合、弁体21の最大後退位置の設定で径方向オリフィスO2の最大閉塞度合が決まるので、ばね受22の設置位置のチューニングによって減衰弁Vの最小の流路面積を決める必要があるため、製品ごとにチューニングが必要となる。また、ばね受22の設置位置を変更するとばね23の圧縮長さが変化するので減衰弁Vの特性が変化し、チューニングが難しくなる。よって、径方向オリフィスO2(第一減衰弁通路)と弁体21のハウジング20に対する移動によっては閉塞されない軸方向オリフィスO1(第二減衰弁通路)とを設けた減衰弁Vでは、シリンダ装置C1の減衰力特性のチューニングが容易となり、ばね23の圧縮長を変更しても最小流路面積に影響を与えない利点がある。
【0063】
なお、ストッパ部22bは、ばね受22に設けているが、ハウジング20にばね受22とは別個に取付けてもよく、たとえば、ハウジング20の内周にCリングや弁孔20a内に突出するピン等をストッパとして設けておき、弁体21の後退時にストッパをフランジ部21bに当接させて弁体21の後退を規制してもよい。
【0064】
また、弁体21を附勢するばね23のばね定数を小さくすると、リリーフ弁RVの下流の圧力によって弁体21を後退させる力がばね23に与えている初期荷重を超えると、弁体21が素早く移動して径方向オリフィスO2(第一減衰弁通路)を閉塞できるので、速やかに地震時に対応した高減衰力を出力できる減衰力特性へ移行できる。反対にばね定数を大きくすると、弁体21の移動が緩やかとなるので、減衰力特性の急変を緩和でき鉄道車両における乗心地の悪化を防止できる。
【0065】
<第二の実施の形態>
第二の実施の形態におけるシリンダ装置C2は、
図6に示すように、第一の実施の形態のシリンダ装置C1の構成に、ロッド側室5へ作動油を供給するポンプPを設けたものである。具体的には、タンク7とロッド側室5とを連通する供給通路16を設け、この供給通路16に作動油をタンク7から吸い上げてロッド側室5へ吐出するポンプPと、ポンプPの吐出側にロッド側室5からタンク7へ向かう作動油の流れを阻止する逆止弁17を設けている。
【0066】
ポンプPは、モータ15によって駆動されるようになっていて、一方向のみに液体を吐出するポンプとされており、その吐出口は供給通路16によってロッド側室5へ連通され、吸込口はタンク7に通じている。よって、ポンプPは、モータ15によって駆動されると、タンク7から作動油を吸込んでロッド側室5へ作動油を供給する。
【0067】
前述のようにポンプPは、一方向のみに作動油を吐出するのみで回転方向の切換動作がないので、回転切換時に吐出量が変化するといった問題は皆無であり、安価なギアポンプ等を使用できる。さらに、ポンプPの回転方向が常に同一方向であるので、ポンプPを駆動する駆動源であるモータ15にあっても回転切換に対する高い応答性が要求されず、その分、モータ15も安価なものを使用できる。なお、逆止弁17は、シリンダ装置C2が外力によって強制的に伸縮させられる際に、ポンプP側への作動油の逆流を阻止するために設けてある。
【0068】
つづいて、前記のように構成されたシリンダ装置C2に所望の伸長方向の推力を発揮させる場合、モータ15を回転させポンプPからシリンダ2内へ作動油を供給しつつ、第一開閉弁10を連通ポジションとし第二開閉弁12を遮断ポジションとする。すると、ロッド側室5とピストン側室6とが連通状態におかれて両者にポンプPから作動油が供給され、ピストン3が
図6中左方へ押されシリンダ装置C2は伸長方向の推力を発揮する。ロッド側室5内およびピストン側室6内の圧力がリリーフ弁RVの開弁圧を上回ると、リリーフ弁RVが開弁して作動油が減衰通路8を介してタンク7へ逃げる。よって、ロッド側室5内およびピストン側室6内の圧力は、リリーフ弁RVに与える電流量で決まるリリーフ弁RVの開弁圧にコントロールされる。そして、シリンダ装置C2は、ピストン3におけるピストン側室6側とロッド側室5側の受圧面積差にリリーフ弁RVによってコントロールされるロッド側室5内およびピストン側室6内の圧力を乗じた値の伸長方向の推力を発揮する。
【0069】
これに対して、シリンダ装置C2に所望の収縮方向の推力を発揮させる場合、モータ15を回転させてポンプPからロッド側室5内へ作動油を供給しつつ、第一開閉弁10を遮断ポジションとし第二開閉弁12を連通ポジションとする。すると、ピストン側室6とタンク7が連通状態におかれるとともにロッド側室5にポンプPから作動油が供給されるので、ピストン3が
図6中右方へ押されシリンダ装置C2は収縮の推力を発揮する。そして、前述と同様に、リリーフ弁RVへ与える電流量の調節により、シリンダ装置C2は、ピストン3におけるロッド側室5側の受圧面積とリリーフ弁RVによってコントロールされるロッド側室5内の圧力を乗じた収縮方向の推力を発揮する。
【0070】
このように第二の実施の形態におけるシリンダ装置C2は、アクチュエータとして機能できるのである。また、このシリンダ装置C2にあっては、第一の実施の形態のシリンダ装置C1の説明で理解できるように、第一開閉弁10と第二開閉弁12の開閉のみでダンパとして機能もできる。つまり、モータ15でポンプPを駆動している状況にあっても、シリンダ装置C2が外力で強制的に伸縮させられる際には、スカイフックセミアクティブダンパとしてもパッシブダンパとして機能でき、リリーフ弁RVの開弁圧の調節で減衰力も調節できる。このように、シリンダ装置C2は、アクチュエータとして機能するのみならず、モータ15の駆動状況に関わらず、第一開閉弁10と第二開閉弁12の開閉のみでダンパとしても機能できる。そして、シリンダ装置C2が推力或いは減衰力を発揮すべき方向は、第一開閉弁10と第二開閉弁12の開閉のみで制御され、推力と減衰力を発揮すべき方向が同じである場合には第一開閉弁10と第二開閉弁12の開閉状態は一致する。よって、シリンダ装置C2では、アクチュエータとスカイフックセミアクティブダンパの状態の切換えを、ポンプPの停止と駆動の切換えや、面倒かつ急峻な第一開閉弁10と第二開閉弁12の切換動作を伴わずに行える。したがってシリンダ装置C2は、応答性および信頼性が高いシステムとなる。
【0071】
また、シリンダ装置C2におけるポンプPからの作動油供給および伸縮作動による作動油の流れは、ロッド側室5、ピストン側室6を順に通過して最終的にタンク7へ還流するようになっている。よって、ロッド側室5あるいはピストン側室6内に気体が混入しても、シリンダ装置C2の伸縮作動によって自立的にタンク7へ排出されるので、推力発生の応答性の悪化を阻止できる。
【0072】
したがって、シリンダ装置C2の製造にあたって、面倒な油中での組立や真空環境下での組立を強いられず、作動油の高度な脱気も不要となるので、生産性が向上するとともに製造コストをさらに低減できる。さらに、ロッド側室5あるいはピストン側室6内に気体が混入しても、気体は、シリンダ装置C2の伸縮作動によって自立的にタンク7へ排出されるので、性能回復のためのメンテナンスを頻繁に行う必要もなくなり、保守面における労力とコスト負担を軽減できる。
【0073】
このように構成されたシリンダ装置C2にあっても、流量の増加によって流路面積を減少させる減衰弁Vを備えているため、リリーフ弁RVのみで減衰力を発揮するのに比較してピストン速度が高速域において高い減衰力を発揮する。よって、本発明のシリンダ装置C2にあっても、車体が著大な振動を呈しても高減衰力を発揮して車体振動を低減でき、鉄道車両が走行中に地震が発生しても車体振動が速やかに低減されて脱線を効果的に抑制できる。
【0074】
そして、本発明のシリンダ装置C2でにあっても、従来のシリンダ装置のように非常時通路、ノーマルクローズ型とノーマルオープン型の二つの開閉弁、およびパッシブ弁を設けずに減衰通路8に減衰弁Vを設けるのみで地震時の脱線を防止できる。よって、本発明のシリンダ装置C2によれば、地震時の脱線を効果的に防止でき、シリンダ装置C2が安価で済み、且つ、シリンダ装置C2が従来のシリンダ装置に比較して小型化できる。
【0075】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形および変更が可能である。