特許第6284032号(P6284032)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284032
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】打込機
(51)【国際特許分類】
   B25C 7/00 20060101AFI20180215BHJP
【FI】
   B25C7/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-174047(P2014-174047)
(22)【出願日】2014年8月28日
(65)【公開番号】特開2016-47590(P2016-47590A)
(43)【公開日】2016年4月7日
【審査請求日】2017年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】日立工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094983
【弁理士】
【氏名又は名称】北澤 一浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095946
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 伸
(74)【代理人】
【識別番号】100099829
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 朗子
(74)【代理人】
【識別番号】100192337
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】馬場 徳和
【審査官】 中里 翔平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−236252(JP,A)
【文献】 特開平09−295283(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0078734(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25C 7/00
B25C 1/00− 1/18
B27F 7/00− 7/38
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
該ハウジング内に収容されたモータと、
止具を射出するノーズ部と、
該止具を該ノーズ部に供給するマガジンと、
該ハウジング内に往復動可能に設けられ打撃方向に移動して該ノーズ部に供給された該止具を打撃する打撃部と、
該打撃部の反打撃方向への移動によって弾性エネルギが蓄積され、該蓄積された弾性エネルギの解放によって該打撃部を該打撃方向に加速させる第1付勢部と、
該ハウジング内に往復可能に設けられ該打撃部の該打撃方向への移動の際に該反打撃方向に移動するよう構成されたウェイト部と、
該ウェイト部の打撃方向への移動によって弾性エネルギが蓄積され、該蓄積された弾性エネルギの解放によって該ウェイト部を該反打撃方向に加速させる第2付勢部と、
該第1付勢部及び該第2付勢部に弾性エネルギを蓄積させた後に該蓄積された弾性エネルギを解放する駆動機構と、を備え、
該駆動機構は、第1面と該第1面の反対側の面である第2面とを有し該モータの駆動によって回転し該回転に伴って該打撃部を該反打撃方向に移動させて該第1付勢部に弾性エネルギを蓄積させる第1カム部と該回転に伴って該ウェイト部を該打撃方向に移動させて該第2付勢部に弾性エネルギを蓄積させる第2カム部とを有する回転体を備え、
該第1カム部は該第1面及び該第2面のいずれか一方から突出し、該第2カム部は該第1面及び該第2面のいずれか他方から突出することを特徴とする打込機。
【請求項2】
該第1付勢部は、該打撃部の該反打撃方向への移動によって該反打撃方向に圧縮されて弾性エネルギを蓄積するように構成され、
該第2付勢部は、該ウェイト部の該打撃方向への移動によって該打撃方向に圧縮されて弾性エネルギを蓄積するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の打込機。
【請求項3】
該第1付勢部及び該第2付勢部のいずれか一方は、第1弾性部及び第2弾性部を有し、
該第1付勢部及び該第2付勢部のいずれか他方は、該往復動方向から見て該第1弾性部と該第2弾性部との間に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の打込機。
【請求項4】
該打撃部は、内側空間を画成する壁部と爪部とを有し、
該回転体及び該ウェイト部は、該往復動方向から見て該内側空間に収容され、
該第2面は、該第1面よりも該ウェイト部側に位置し、
該爪部は、該往復動方向から見て該壁部から該第1面に向かう方向に突出し且つ該回転体の該回転に伴って該第1カム部と当接し該打撃部を該反打撃方向に移動させるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の打込機。
【請求項5】
該ウェイト部は、内側空間を画成する壁部と爪部とを有し、
該回転体及び該打撃部は、該往復動方向から見て該内側空間に収容され、
該第1面は、該第2面よりも該打撃部側に位置し、
該爪部は、該往復動方向から見て該壁部から該第2面に向かう方向に突出し且つ該回転体の該回転に伴って該第2カム部と当接し該ウェイト部を該打撃方向に移動させるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の打込機。
【請求項6】
該駆動機構は、該回転体を少なくとも3つ以上備え、
該少なくとも3つ以上の回転体は、該往復動方向に並んで配置されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の打込機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は打込機に関し、特に電動式の打込機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築内装の幅木、回り縁等の被打込材を建築物に取付ける際に釘頭の小さい細径の仕上げ用釘等の止具が広く用いられており、当該止具を被打込材に打込むための打込機も広く用いられている。このような打込機においては、打込動作を操作するためのトリガと、止具を射出する射出口が形成されたノーズと、止具を打撃するプランジャと、プランジャを止具の打撃方向へ付勢するバネと、バネを圧縮解放する圧縮解放機構と、圧縮解放機構を駆動させるモータとを備え、圧縮によって弾性エネルギが蓄積されたバネを解放することでプランジャを打撃方向に加速させて止具を射出口から被打込材に打込む構成の打込機が知られている(特許文献1)。
【0003】
当該打込機における圧縮解放機構は、動力伝達ピンを有したギヤを備えており、ギヤがモータの駆動によって回転することでカムがプランジャを移動させてバネを圧縮する。また、当該打込機においては、ノーズを被打込材に当接させた状態でトリガを操作することで止具の打込みを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−056613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の打込機においては、止具の打込の際にプランジャの加速に対する反作用として打込機本体に反動が生じるため、止具が被加工材に完全に打込まれる前にノーズが被打込材から離反してしまうことがある。このため、止具が完全に被打込材に打込まれずに止具の一部が被打込材から飛び出した状態となり、作業の仕上げ程度が悪化するという問題があった。また、当該反動を抑えるためにユーザがノーズを被打込材に必要以上に押し付けることで、被打込材が損傷する場合もあり、作業の仕上げ程度が悪化するという問題があった。さらに、上述の打込機においては、ギヤの片面のみに設けられた動力伝達ピンでバネの付勢力に抗してプランジャを反打撃方向に移動させてバネの圧縮を行う構成であるため、バネの圧縮過程で動力伝達ピンがプランジャから打撃方向の力を受けることにより、ギヤ及びギヤを支承している部分に打撃方向の力が断続して加えられる。このため、打込機の使用回数が増加するとギヤ及びギヤを支承している部分が破損する場合があり、打込機の故障の原因となってしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、打込機本体に生じる反動を抑制することで、操作性及び仕上げ程度を良好とし、且つ故障を抑制した打込機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、ハウジングと、該ハウジング内に収容されたモータと、止具を射出するノーズ部と、該止具を該ノーズ部に供給するマガジンと、該ハウジング内に往復動可能に設けられ打撃方向に移動して該ノーズ部に供給された該止具を打撃する打撃部と、該打撃部の反打撃方向への移動によって弾性エネルギが蓄積され、該蓄積された弾性エネルギの解放によって該打撃部を該打撃方向に加速させる第1付勢部と、該ハウジング内に往復動可能に設けられ該打撃部の該打撃方向への移動の際に該反打撃方向に移動するよう構成されたウェイト部と、該ウェイト部の打撃方向への移動によって弾性エネルギが蓄積され、該蓄積された弾性エネルギの解放によって該ウェイト部を該反打撃方向に加速させる第2付勢部と、該第1付勢部及び該第2付勢部に弾性エネルギを蓄積させた後に該蓄積された弾性エネルギを解放する駆動機構と、を備え、該駆動機構は、該第1面と該第1面の反対側の面である第2面とを有し該モータの駆動によって回転し該回転に伴って該打撃部を該反打撃方向に移動させて該第1付勢部に弾性エネルギを蓄積させる第1カム部と該回転に伴って該ウェイト部を該打撃方向に移動させて該第2付勢部に弾性エネルギを蓄積させる第2カム部とを有する回転体を備え、該第1カム部は該第1面及び該第2面のいずれか一方から突出し、該第2カム部は該第1面及び該第2面のいずれか他方から突出することを特徴とする打込機を提供する。
【0008】
このような構成によると、打撃部が打撃方向に移動して止具を打撃する際(打込みの際)に、ウェイト部が反打撃方向に移動するため、打込みの際の反動及び振動を抑制することができる。これにより、打込機の操作性を良好にし、且つ作業の仕上げ程度を良好にすることができる。また、回転体が第1付勢部の付勢力に抗しながら打撃部を反打撃方向に移動させる打撃部駆動用の第1カム部及び第2付勢部の付勢力に抗しながらウェイト部を打撃方向に移動させるウェイト部駆動用の第2カム部を有しているため、第1付勢部及び第2付勢部のそれぞれに弾性エネルギを蓄積させる際に回転体に対して相反する方向の力が加えられる。このため、回転体に一の方向の力のみが加わる場合と比較して、回転体及び回転体を支承している部分が負担する荷重を往復動において略均等にすることができる。軽減することができる。これにより、回転体及び回転体を支承している部分の破損等を抑制することができ、打込機自体の故障を抑制し、打込機を長寿命とすることができる。また、回転体が打撃部駆動用の第1カム部及びウェイト部駆動用の第2カム部の両方を有しているため、打撃部を移動させ且つ第1付勢部に弾性エネルギを蓄積させる機構の他にウェイト部を移動させ且つ第2付勢部に弾性エネルギを蓄積させる機構を別途設ける必要がない。このため、打込機本体の反動の抑制をシンプルな構成且つ低コストで実現することできる。さらに、第1カム部は第1面に設けられており、第2カム部は第1面とは反対側の面である第2面に設けられているため、同一面に打撃部駆動用の第1カム部及びウェイト部駆動用の第2カム部が設けられている場合と比較して、回転体、打撃部及びウェイト部の構成を簡素することができ、打込機自体の構成を簡素化することができる。
【0009】
上記構成において、該第1付勢部は、該打撃部の該反打撃方向への移動によって該反打撃方向に圧縮されて弾性エネルギを蓄積するように構成され、該第2付勢部は、該ウェイト部の該打撃方向への移動によって該打撃方向に圧縮されて弾性エネルギを蓄積するように構成されていることが好ましい。
【0010】
このような構成によると、第1付勢部及び第2付勢部をそれぞれ相反する方向に圧縮させることで、第1付勢部及び第2付勢部に弾性エネルギを蓄積させることができる。このため、当該弾性エネルギを解放することにより打撃部及びウェイト部をそれぞれ相反する方向に加速させることができる。
【0011】
また、該第1付勢部及び該第2付勢部のいずれか一方は、第1弾性部及び第2弾性部を有し、該第1付勢部及び該第2付勢部のいずれか他方は、該往復動方向から見て該第1弾性部と該第2弾性部との間に設けられていることが好ましい。
【0012】
このような構成によると、打込みの際に打込機に発生するモーメントを抑制することができる。すなわち、打撃方向と第1弾性部から第2弾性部に向かう方向とのそれぞれに直交する仮想軸周りのモーメントを抑制することができる。このため、打込みの際に打込機が回転することを抑制することができ、操作性を向上させることができる。
【0013】
また、該打撃部は、内側空間を画成する壁部と爪部とを有し、該回転体及び該ウェイト部は、該往復動方向から見て該内側空間に収容され、該第2面は、該第1面よりも該ウェイト部側に位置し、該爪部は、該往復動方向から見て該壁部から該第1面に向かう方向に突出し且つ該回転体の該回転に伴って該第1カム部と当接し該打撃部を該反打撃方向に移動させるように構成されていることが好ましい。
【0014】
このような構成によると、往復動方向から見て打撃部がウェイト部よりも外側に位置するため、いわゆる際打ちをすることができる。これにより、壁際等に止具を打込むことができ作業性を向上させることができる。
【0015】
また、該ウェイト部は、内側空間を画成する壁部と爪部とを有し、該回転体及び該打撃部は、該往復動方向から見て該内側空間に収容され、該第1面は、該第2面よりも該打撃部側に位置し、該爪部は、該往復動方向から見て該壁部から該第2面に向かう方向に突出し且つ該回転体の該回転に伴って該第2カム部と当接し該ウェイト部を該打撃方向に移動させるように構成されていることが好ましい。
【0016】
このような構成によると、往復動方向から見てウェイト部が打撃部よりも外側に位置するため、ウェイト部が打撃部よりも大型化する。このため、ウェイト部の質量を重くすることができるため、打込みの際の反動をより抑制することができる。
【0017】
該駆動機構は、該回転体を少なくとも3つ以上備え、該少なくとも3つ以上の回転体は、該往復動方向に並んで配置されていることが好ましい。
【0018】
このような構成によると、該複数の回転体は、該往復動方向に並んで配置されているため、打撃部及びウェイト部の移動距離を長くすることができる。これにより、打込力を大きくすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の打込機によれば、操作性及び仕上げ程度を良好にし、且つ故障を抑制した打込機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施の形態による釘打機全体の内部構造を示す一部断面側面図であり、外側移動部が下死点に位置し且つ内側移動部が上死点に位置している状態を示す図である。
図2】本発明の第1の実施の形態による釘打機の駆動機構及び打撃機構を示す一部断面側面図であり、外側移動部が上死点に位置し且つ内側移動部が下死点に位置している状態を示す図である。
図3】本発明の第1の実施の形態による釘打機の駆動機構及び打撃機構を示す後面側斜視図である。
図4】本発明の第1の実施の形態による釘打機の駆動機構及び打撃機構を示す前面側斜視図である。
図5】本発明の第1の実施の形態による釘打機の打撃機構を示す後面側斜視図である。
図6】本発明の第1の実施の形態による釘打機の打撃機構を示す前面側斜視図である。
図7】本発明の第1の実施の形態による釘打機の打撃機構を示す図1のVII−VII断面図である。
図8】本発明の第1の実施の形態による釘打機の駆動機構及び打撃機構を示す図1のVIII−VIII断面図である。
図9】本発明の第1の実施の形態による釘打機の打撃機構を示す図7のIX−IX断面図であり、外側移動部が下死点の位置し且つ内側移動部が上死点に位置している状態を示している。
図10】本発明の第1の実施の形態による釘打機の打撃機構を示す図7のIX−IX断面図であり、外側移動部が上死点の位置し且つ内側移動部が下死点に位置している状態を示している。
図11】本発明の第1の実施の形態による釘打機の外側移動部本体を示す図であり、(a)は後面側斜視図、(b)は前面側斜視図である。
図12】本発明の第1の実施の形態による駆動機構及び外側移動部の動作を示す図8のXII−XII断面図であり、(a)は時刻t0、(b)は時刻t1、(c)は時刻t2、(d)は時刻t3、(e)は時刻t4における状態を示している。
図13】本発明の第1の実施の形態による駆動機構及び内側移動部の動作を示す図8のXIII−XIII断面図であり、(a)は時刻t0、(b)は時刻t1、(c)は時刻t2、(d)は時刻t3、(e)は時刻t4における状態を示している。
図14】本発明の第2の実施の形態による釘打機全体の内部構造を示す一部断面側面図であり、外側移動部が上死点に位置し且つ内側移動部が下死点に位置している状態を示す図である。
図15】本発明の第2の実施の形態による釘打機の打撃機構を示す一部断面側面図であり、外側移動部が上死点に位置し且つ内側移動部が下死点に位置している状態を示す図である。
図16】本発明の第3の実施の形態による釘打機の駆動機構及び打撃機構を示す一部断面側面図であり、外側移動部が下死点に位置し且つ内側移動部が上死点に位置している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態による打込機について図1乃至図16に基づき説明する。以下の説明において、具体的な数値に言及した場合、例えば、角度について「90°」、回転数について「2000rpm」、時間について「20ms」等のように言及した場合、当該数値と完全に一致する場合だけでなく、当該数値と略同一である場合も含むものとする。また、位置関係等に言及した場合、例えば、平行、直交、反対等のように言及した場合、完全に平行、直交、反対等である場合だけでなく、略平行、略直交、略反対等である場合を含むものとする。
【0022】
最初に本発明の第1の実施の形態による打込機である釘打機1について図1乃至図13に基づき説明する。
【0023】
図1に示されているように釘打機1は、ハウジング2と、モータ3と、駆動機構4と、止具である図示せぬ釘を打撃する外側移動部54及び打込動作時の反動を抑制する内側移動部52を有する打撃機構5と、ノーズ部6と、マガジン7とを備えている。釘打機1は、電動式であって、釘を幅木、回り縁等の被打込材に打込むための工具である。図1は、釘打機1全体の内部構造を示す一部断面側面図であり、外側移動部54が下死点に位置し且つ内側移動部52が上死点に位置している状態を示す図である。なお、図1においてノーズ部6に対してマガジン7が設けられている方向を後方向、後方向と逆の方向を前方向と定義する。また、モータ3に対してマガジン7が設けられている方向を下方向と定義し、下方向と逆の方向を上方向と定義する。さらに、釘打機1を後方から見た場合の左を左方向、右を右方向と定義する。
【0024】
図1に示されているようにハウジング2は、釘打機1の外郭をなす部分であり、ナイロンまたはポリカーボネイト等の樹脂から構成されている。ハウジング2は、ハンドル部21と、モータ収容部22と、後部接続部23と、機構収容部24とを有している。
【0025】
ハンドル部21は、釘打機1が使用される際にユーザによって把持される部分であり、前後方向に延びる略円筒形状をなしている。ハンドル部21は、トリガ21A及びスイッチ機構21Bを備えている。トリガ21Aは、モータ3の駆動を操作するためのスイッチであり、ハンドル部21の前部下側に設けられている。スイッチ機構21Bは、ハンドル部21内部においてトリガ21Aの上方に収容されており、トリガ21Aが上方に押し込まれた場合にオンとなる。
【0026】
モータ収容部22は、ハンドル部21と平行に前後方向に延びており、モータ3及び減速機構31を備えている。モータ3は、モータ収容部22の内部の前後方向略中央に収容されており、回転軸3Aを有している。回転軸3Aは、前後方向に延びる軸であってモータ3の駆動によって回転運動を行う。
【0027】
減速機構31は、遊星歯車機構であり、モータ収容部22内部においてモータ3の前方に設けられている。減速機構31は、回転軸3Aの周囲に配置され回転軸3Aと噛合した遊星ギヤと、回転軸3Aと同軸に配置されたリングギアと、回転軸3Aと同軸回転するキャリアギヤ31Bを備えるキャリア31Aとを備えている。遊星ギヤは、キャリア31Aに回転可能に支承されており、回転軸3Aの周りを公転する。遊星ギヤが当該公転を行うことで回転軸3Aの回転は、減速されると共にキャリア31Aを介してキャリアギヤ31Bに伝達される。キャリアギヤ31Bは、駆動機構4と噛合しており、回転軸3Aの回転力を駆動機構4に伝達する。本実施の形態において減速機構31は、一段の遊星歯車機構であるが多段の遊星歯車機構であっても良い。
【0028】
後部接続部23は、上下方向に延び、ハンドル部21の後部とモータ収容部22の後部とを接続している。後部接続部23は、制御基板23A及び電源接続部23Bを備えている。制御基板23Aは、図示せぬ電気回路及びFET等のスイッチング素子を含む平板形状の基板であって、後部接続部23内部に収容されている。制御基板23Aは、モータ3、スイッチ機構21B、後述の第1マイクロスイッチ24A及び後述の第2マイクロスイッチ7Aのそれぞれと接続されており、スイッチ機構21B、第1マイクロスイッチ24A及び第2マイクロスイッチ7Aのそれぞれが出力する信号に基づいて釘打機1の制御を行う。
【0029】
電源接続部23Bは、後部接続部23の後面に電池パックPを装着可能に形成されている。電池パックPは、その内部に釘打機1の駆動源となる複数の二次電池セルを有している。電源接続部23Bは、電池パックPを装着した状態で当該二次電池セルの電力をモータ3及び制御基板23Aに供給可能に構成されている。
【0030】
機構収容部24は、上下方向に延び、ハンドル部21の前端部及びモータ収容部22の前端部に接続されている。機構収容部24は、駆動機構4と、打撃機構5と、第1マイクロスイッチ24Aとを備えている。
【0031】
図2乃至図4に示されているように駆動機構4は、ギヤホルダ41と、第1ギヤ42と、第2ギヤ43とを備えている。図2は、駆動機構4及び打撃機構5を示す一部断面側面図であり、外側移動部54が上死点に位置し且つ内側移動部52が下死点に位置している状態を示す図である。図3は駆動機構4及び打撃機構5を示す後面側斜視図であり、図4は駆動機構4及び打撃機構5を示す前面側斜視図である。
【0032】
図2に示されているようにギヤホルダ41は、上下方向に延びる部材であって、機構収容部24の後部の内壁に固定されており、キャリア挿通部41A、第1支持軸41B及び第2支持軸41Cを有している。
【0033】
図2及び図3に示されているようにキャリア挿通部41Aは、略直方体形状をなしており、ギヤホルダ41の下端部に設けられている。キャリア挿通部41Aには、挿通孔41aが形成されている。挿通孔41aは、キャリア挿通部41Aを前後方向に貫通する孔であり、減速機構31のキャリアギヤ31Bが挿通されている。
【0034】
図2に示されているように第1支持軸41Bは、前後方向に延びる軸であって、キャリア挿通部41Aの上方においてギヤホルダ41から前方に突出するように設けられている。また第2支持軸41Cは、前後方向に延びる軸であって、第1支持軸41Bの上方においてギヤホルダ41から前方に突出するように設けられている。
【0035】
第1ギヤ42は、前面視において略円形状をなす平歯車であって、第1支持軸41Bによって第1支持軸41Bの軸心を中心として回転可能に支承されている。第1ギヤ42は、キャリアギヤ31Bと噛合しており、キャリアギヤ31Bが回転することによって前面視において時計回りに回転駆動する。第1ギヤ42の後面には第1後面42Aが規定され、前面には第1前面42Bが規定されている。また第1ギヤ42は、第1後面カム42C及び第1前面カム42Dを備えている。第1ギヤ42は、回転体の一例である。
【0036】
第1後面42Aは、第1ギヤ42のモータ3側の面であり、第1ギヤ42の回転軸心(第1支持軸41Bの軸心)に対して直交している。第1前面42Bは、第1ギヤ42の反モータ3側の面すなわち第1後面42Aの反対側の面であり、第1ギヤ42の回転軸心に対して直交している。第1後面42Aは第1面の一例であり、第1前面42Bは第2面の一例である。
【0037】
第1後面カム42Cは、ローラカムであり、第1後面42Aにおいて第1ギヤ42の回転軸心から所定量離間した位置から後方に突出するように設けられている。第1後面カム42Cは、第1ギヤ42の回転によって後面視において第1ギヤ42の回転軸心を中心として円運動を行う。また、第1後面カム42Cは、第1ギヤ42の回転すなわち当該円運動に伴って、打撃機構5の外側移動部54を上方に移動させるように構成されている。第1後面カム42Cは、第1カム部の一例である。
【0038】
第1前面カム42Dは、ローラカムであり、第1前面42Bにおいて第1ギヤ42の回転軸心から所定量離間した位置から前方に突出するように設けられている。第1前面カム42Dは、第1ギヤ42の回転によって前面視において第1ギヤ42の回転軸を中心として円運動を行う。また、第1前面カム42Dは、第1ギヤ42の回転すなわち当該円運動に伴って、打撃機構5の内側移動部52を下方に移動させるように構成されている。第1前面カム42Dは、第2カム部の一例である。
【0039】
第2ギヤ43は、前面視において略円形状をなす平歯車であって、第2支持軸41Cによって第2支持軸41Cの軸心を中心として回転可能に支承されている。第2ギヤ43は、第1ギヤ42と噛合しており、第1ギヤ42の回転によって前面視において反時計回りに回転駆動する。第2ギヤ43の後面には第2後面43Aが規定され、前面には第2前面43Bが規定されている。また第2ギヤ43は、第2後面カム43C及び第2前面カム43Dを備えている。第2ギヤ43は、回転体の一例である。
【0040】
第2後面43Aは、第2ギヤ43のモータ3側の面であり、第2ギヤ43の回転軸心(第2支持軸41Cの軸心)に対して直交している。第2前面43Bは、第2ギヤ43の反モータ3側の面すなわち第2後面43Aの反対側の面であり、第2ギヤ43の回転軸心に対して直交している。第2後面43Aは第1面の一例であり、第2前面43Bは第2面の一例である。
【0041】
第2後面カム43Cは、ローラカムであり、第2後面43Aにおいて第2ギヤ43の回転軸心から所定量離間した位置から後方に突出するように設けられている。第2後面カム43Cは、第2ギヤ43の回転によって後面視において第2ギヤ43の回転軸心を中心として円運動を行う。また、第2後面カム43Cは、第2ギヤ43の回転すなわち当該円運動に伴って、打撃機構5の外側移動部54を上方に移動させるように構成されている。第2後面カム43Cは、第1カム部の一例である。
【0042】
第2前面カム43Dは、ローラカムであり、第2前面43Bにおいて第2ギヤ43の回転軸心から所定量離間した位置から前方に突出するように設けられている。第2前面カム43Dは、第2ギヤ43の回転によって前面視において第2ギヤ43の回転軸心を中心として円運動を行う。また、第2前面カム43Dは、第2ギヤ43の回転すなわち当該円運動に伴って、打撃機構5の内側移動部52を下方に移動させるように構成されている。第2前面カム43Dは、第2カム部の一例である。
【0043】
図2図5乃至図10に示されているように打撃機構5は、ホルダ部51と、内側移動部52と、内側スプリング53と、外側移動部54と、スプリング部55とを備えている。図5及び図6は、図3及び図4から駆動機構4を捨象した図であり、図5は打撃機構5を示す後面側斜視図、図6は打撃機構5を示す前面側斜視図である。また図7は、打撃機構5を示す図1のVII−VII断面図であり、図8は、駆動機構4及び打撃機構5を示す図1のVIII−VIII断面図である。さらに図9及び図10は、打撃機構5を示す図7のIX−IX断面図であり、図9は外側移動部54が下死点に位置し且つ内側移動部52が上死点に位置している状態、図10は外側移動部54が上死点に位置し且つ内側移動部52が下死点に位置している状態を示している。
【0044】
ホルダ部51は、機構収容部24内部に収容され、内側移動部52及び外側移動部54を上下方向に摺動可能に支持しており、トップホルダ511と、ボトムホルダ512と、ガイドバー部513と、内側ガイド514とを備えている。
【0045】
図2図5乃至図7に示されているようにトップホルダ511は、本体部511A、右リブ511B、左リブ511C、前リブ511D、後右リブ511E及び後左リブ511Fを備えている。本体部511Aは、左右方向に延びる略直方体形状をなしており、その上面は機構収容部24上部の内壁から下方に延びるリブの下端と当接している。図5乃至図7に示されているように右リブ511B及び左リブ511Cは、本体部511Aの底面の右端部及び左端部からそれぞれ下方に延出するリブであって、それぞれの前後方向の長さは本体部511Aの前後方向の長さと略同一である。
【0046】
図2及び図6に示されているように前リブ511Dは、本体部511Aの底面の前端部から下方に延出するリブであって、右リブ511Bの前端部と左リブ511Cの前端部とを接続している。図5に示されているように後右リブ511Eは、本体部511Aの底面の後端部から下方に延出するリブであって、右リブ511Bの後端部から左方向に所定の長さ延びている。後左リブ511Fは、本体部511Aの底面の後端部から下方に延出するリブであって、左リブ511Cの後端部から右方向に所定の長さ延びている。また、後右リブ511Eの左端面と後左リブ511Fの右端面との間にはリブが形成されていない空間が画成されている。
【0047】
図2及び図7に示されているようにボトムホルダ512は、トップホルダ511の下方且つ機構収容部24の下端部に位置しており、基部512Aと、右鍔部512Bと、左鍔部512Cと、右バンパ512Dと、左バンパ512Eと、右接続部512F、左接続部512Gとを備えている。
【0048】
基部512Aは、左右方向に延びる略直方体形状をなし、その上面の左右方向略中央は内側スプリング53の下端と当接している。図7に示されているように右鍔部512Bは、左右方向に延びる略直方体形状をなし、その左部は右接続部512Fによって基部512Aの右部と一体に接続されている。左鍔部512Cは、左右方向に延びる略直方体形状をなし、その右部は左接続部512Gによって基部512Aの左部と一体に接続されている。
【0049】
右バンパ512D及び左バンパ512Eは、外側移動部54が上死点から加速して下死点へ到達した際の衝撃を吸収する緩衝材であり、それぞれ右鍔部512Bの上面と左鍔部512Cの上面に設けられている。右バンパ512D及び左バンパ512Eによって、釘の打込みの際の反動を抑制することができる。
【0050】
図5及び図6に示されているようにガイドバー部513は、外側移動部54の上下方向における摺動をガイドする部分であって、上下方向に延びる平板形状の4本のバー、すなわち右前バー513A、左前バー513B、右後バー513C及び左後バー513Dを備えている。
【0051】
右前バー513Aの上端部は、トップホルダ511の本体部511Aの前面の右部にネジで固定され、下端部は、ボトムホルダ512の右鍔部512Bの前面にネジで固定されている。左前バー513Bの上端部は、本体部511Aの前面の左部にネジで固定され、下端部は、ボトムホルダ512の左鍔部512Cの前面にネジで固定されている。右後バー513Cの上端部は、本体部511Aの後面の右部にネジで固定され、下端部は、右鍔部512Bの後面にネジで固定されている。左後バー513Dの上端部は、本体部511Aの後面の左部にネジで固定され、下端部は、左鍔部512Cの後面にネジで固定されている。
【0052】
図2図5乃至図10に示されているように内側ガイド514は、上下方向に延びる略円管形状をなす部材であって、内側移動部52を上下方向に摺動可能に支持している。内側ガイド514の上端は、トップホルダ511の本体部511Aの底面に当接しており(図7)、上端部の前端は、前リブ511Dの後面に当接している(図2)。また、内側ガイド514の下端は、ボトムホルダ512の基部512Aの上面に当接している。さらに内側ガイド514の下端部の周面の一部は、ボトムホルダ512の右鍔部512B、左鍔部512C、右接続部512F及び左接続部512Gに当接している。
【0053】
図5に示されているように内側ガイド514の後部には、上下方向に延びる長孔514aが形成されている。長孔514aは後述の内側アーム部52Bのアーム接続部52Dの上下方向における移動を許容しており、その上下方向の長さは、内側移動部52の摺動可能距離と略同一である。また、図7乃至図10に示されているように内側ガイド514の内部上端部には、上面視において略環形状をなす、内側バンパ514Aが収容されている。内側バンパ514Aは、内側移動部52が下方から加速して上方へ移動した際の衝撃を吸収するための緩衝材である。
【0054】
図5図7乃至図10に示されているように内側移動部52は、釘の打込時の反動を抑制するいわゆるカウンターバランサー(カウンターウェイト)としての役割を果たす部材であり、金属材料により成形された内側移動部本体52Aと、内側アーム部52Bと、右爪部52Eと、左爪部52Fとを備えている。内側移動部本体52Aは、上下方向に延びる略円柱形状をなす部材であって、内側ガイド514内部に上下方向に摺動可能に支持されている。内側アーム部52Bは、アーム本体52C及びアーム接続部52Dを有している。内側移動部52は、ウェイト部の一例である。
【0055】
図5及び図8に示されているようにアーム本体52Cは、内側移動部本体52Aの後方に位置し、後面視において左右方向に延びる矩形をなす平板形状の部材であって、アーム接続部52Dを介して内側移動部本体52Aの後部にネジで固定且つ接続されている。またアーム本体52Cは、第1ギヤ42、第2ギヤ43よりも前方に位置しており、上面視において第1ギヤ42、第2ギヤ43と対向している。
【0056】
右爪部52Eは、アーム本体52Cの後面の上端部右部から後方に突出し、且つ左右方向に延びるように形成されている。左爪部52Fは、アーム本体52Cの後面の下端部左部から後方に突出し、且つ左右方向に延びるように形成されている。図2及び図8に示されているように右爪部52E及び左爪部52Fの後端は、第1ギヤ42の第1前面カム42D及び第2ギヤ43の第2前面カム43Dの前端よりも後方に位置しており、右爪部52Eの上面は第2前面カム43Dと当接可能、左爪部52Fの上面は第1前面カム42Dと当接可能に構成されている。
【0057】
図7に示されているように内側スプリング53は、圧縮コイルバネであり、内側ガイド514の内部に収容されており、その上端は内側移動部本体52Aの底面に当接し、その下端はボトムホルダ512の基部512Aの上面に当接している。図7及び図9の状態から内側移動部52を下方に移動させることで内側スプリング53は圧縮され、当該圧縮によって内側スプリング53に弾性エネルギが蓄積される。また、当該蓄積された弾性エネルギが解放されることによって内側スプリング53は、内側移動部52を上方に付勢するとともに加速させる。内側スプリング53は、第2付勢部の一例である。
【0058】
図2図5及び図6に示されているように外側移動部54は、ホルダ部51に上下方向に摺動可能に支持されており、上死点から加速して下死点に移動することで釘を打撃するように構成されている。外側移動部54は、外側移動部本体54Aとロッド54Bとを備えている。外側移動部54は、打撃部の一例である。
【0059】
図11(a)及び(b)に示されているように外側移動部本体54Aは、ロッド保持部541と、右アーム部542と、下爪部542Cと、左アーム部543と、上爪部543Cと、底部544とを備えている。また外側移動部本体54Aの一部は、内側空間54aを画成している。なお、図11(a)は、外側移動部本体54Aを示す後面側斜視図であり、図11(b)は、外側移動部本体54Aを示す前面側斜視図である。
【0060】
ロッド保持部541は、保持部本体541A及びロッド接続部541Bを有している。保持部本体541Aは、前面視において左右方向に延びる略平板形状をなしている。図8に示されているように保持部本体541Aは、内側移動部52よりも前方で且つ前後方向において右前バー513A及び左前バー513Bとの間に位置し、ロッド保持部541の前面は右前バー513A及び左前バー513Bと対向し、後面は内側ガイド514と対向している。ロッド接続部541Bは、保持部本体541Aの前面の左右方向略中央下部から前方に突出するとともに下方に延出するように設けられている。
【0061】
図11(a)及び(b)に示されているように右アーム部542は、右延出部542Aと、右後板部542Bとを備えている。右延出部542Aは、ロッド保持部541の右端部からロッド保持部541と一体に後方に延出している。図3及び図8に示されているように右延出部542Aは、第1ギヤ42、第2ギヤ43及び内側移動部52よりも右方に位置している。
【0062】
右後板部542Bは、右延出部542Aの後端部から左方(左延出部543Aに向かう方向)に延出している。右後板部542Bは、第1ギヤ42、第2ギヤ43及び内側移動部52よりも後方に位置しており、右後板部542Bの前面は、上面視において第1ギヤ42の第1後面42A及び第2ギヤ43の第2後面43Aと対向している。
【0063】
下爪部542Cは、左右方向に延び、右後板部542Bの前面の下端部左部から前方に突出し、言い換えれば上面視において第1後面42A又は第2後面43Aに向かって突出している。下爪部542Cの前端は、第1ギヤ42の第1後面カム42C及び第2ギヤ43の後端よりも前方に位置しており、下爪部542Cの下面は第1後面カム42Cと当接可能に構成されている。釘打機1における下爪部542Cは爪部の一例である。
【0064】
図11(a)及び(b)に示されているように左アーム部543は、左延出部543Aと、左後板部543Bとを備えている。左延出部543Aは、ロッド保持部541の左端部からロッド保持部541と一体に後方に延出している。図3及び図8に示されているように左延出部543Aは、第1ギヤ42、第2ギヤ43及び内側移動部52よりも左方に位置している。
【0065】
左後板部543Bは、左延出部543Aの後端部から右方(右延出部542Aに向かう方向)に延出している。左後板部543Bは、第1ギヤ42、第2ギヤ43及び内側移動部52よりも後方に位置しており、左後板部543Bの前面は、上面視において第1ギヤ42の第1後面42A及び第2ギヤ43の第2後面43Aと対向している。
【0066】
上爪部543Cは、左右方向に延び、左後板部543Bの前面の上端部右部から前方に突出し、言い換えれば上面視において第1後面42A又は第2後面43Aに向かって突出している。上爪部543Cの前端は、第1ギヤ42の第1後面カム42C及び第2ギヤ43の後端よりも前方に位置しており、上爪部543Cの下面は第2後面カム43Cと当接可能に構成されている。釘打機1における上爪部543Cは、爪部の一例である。
【0067】
図11(a)及び(b)に示されているように底部544は、底面視において左右方向に延びる平板形状をなしており、保持部本体541Aの下端縁と右延出部542A前部の下端縁と左延出部543A前部の下端縁とを接続している。図7及び図8に示されているように底部544の上面はスプリング部55と当接し、当該上面の左右方向略中央には孔544aが形成されている。孔544aは内側ガイド514の上下方向の挿通を許容している。また底部544の底面は、外側移動部54が上死点から下死点に移動した際に右バンパ512D及び左バンパ512Eに当接可能に構成されている。
【0068】
図8に示されているように内側空間54aは、保持部本体541Aの後面と右延出部542Aの左面と右後板部542Bの前面と左延出部543Aの右面と左後板部543Bの前面とにより画成されている。内側空間54aは、上面視において第1ギヤ42、第2ギヤ43及び内側移動部52を収容しており、言い換えれば、第1ギヤ42、第2ギヤ43及び内側移動部52は、上面視において内側空間54a内部に配置されている。保持部本体541A、右延出部542A、右後板部542B、左延出部543A及び左後板部543Bは、壁部の一例である。
【0069】
図2に示されているようにロッド54Bは、上下方向に延びる棒状の部材であって、外側移動部本体54Aと一体に上死点から下死点に移動可能に構成されている。ロッド54Bの上端部は外側移動部54のロッド接続部541Bに接続されている。ロッド54Bの下端はノーズ部6の後述の射出孔6a内部において上下方向に摺動可能に構成されている。また、ロッド54Bの下端は、外側移動部54が上死点に位置している場合はノーズ部6の後述の射出孔6a内部において上部に位置し、外側移動部54が下死点に位置している場合は射出孔6aの略下端に位置するように構成されている。
【0070】
図5乃至図8に示されているようにスプリング部55は、右スプリング55A及び左スプリング55Bを備えている。右スプリング55A及び左スプリング55Bは、圧縮コイルバネであり、ホルダ部51の内部に収容されている。図7に示されているように右スプリング55Aは、内側スプリング53の右方に配置されており、その上端は本体部511Aの底面に当接し、その下端は外側移動部54の底部544の上面の右部に当接している。左スプリング55Bは、内側スプリング53の左方に配置されており、その上端は本体部511Aの底面に当接し、その下端は底部544の上面の左部に当接している。釘打機1におけるスプリング部55は、第1付勢部の一例である。また、右スプリング55Aは第1弾性部又は第2弾性部の一例であり、左スプリング55Bは第1弾性部又は第2弾性部の一例である。
【0071】
また、図8に示されているように、上面視において右スプリング55Aと左スプリング55Bとの間に内側スプリング53は設けられている。詳細には、内側スプリング53は上面視において右スプリング55Aと左スプリング55Bとを結ぶ仮想線分L上に設けられている。なお、点A1は右スプリング55Aの上面視における中心を示し、点A2は左スプリング55Bの上面視における中心を示し、破線で表された仮想線分Lは、点A1と点A2とを結ぶ仮想線分である。
【0072】
図7及び図9の状態から外側移動部54を上方に移動させることで右スプリング55A及び左スプリング55Bは圧縮され、当該圧縮によって右スプリング55A及び左スプリング55Bにそれぞれ弾性エネルギが蓄積される。また、それぞれ蓄積された弾性エネルギが解放されることによって右スプリング55A及び左スプリング55Bは、外側移動部54を下方に付勢するとともに加速させる。
【0073】
第1マイクロスイッチ24Aは、外側移動部54が上死点に達した場合にオン状態となるスイッチであり、機構収容部24内部の上部に設けられている。また、第1マイクロスイッチ24Aは、外側移動部54が上死点から下死点への移動を開始して上死点から僅かに下方に移動した際にオフとなるように構成されており、オン状態からオフ状態となったときに制御基板23Aに信号を出力する。制御基板23Aは当該信号を受信した場合には、モータ3の駆動を停止させる。
【0074】
図1及び図2に示すように、ノーズ部6は、ボトムホルダ512の前面から下方に延びるように設けられており、その内部には射出孔6aが形成されている。射出孔6aは、上下方向に延びる孔であって、ロッド54Bを摺動可能に支持している。
【0075】
マガジン7は、ノーズ部6の後部から後方に延出するように設けられており、マガジン7内に収容された釘をノーズ部6に供給するように構成されている。またマガジン7は釘の残量を検出可能に構成された第2マイクロスイッチ7Aを備えている。第2マイクロスイッチ7Aは、釘の残量が所定量未満となった場合に制御基板23Aに信号を出力する。
【0076】
次に釘打機1の動作について説明する。外側移動部54は、初期状態において下死点に位置し、右バンパ512D及び左バンパ512Eと当接している(図1図7及び図9の状態)。内側移動部52は、初期状態において上死点に位置し、内側バンパ514Aに当接した状態である(図1図7及び図9の状態)。
【0077】
当該初期状態において、ユーザがハンドル部21を把持して釘打機1を被打込材の上面に対して略直交するように保持し、トリガ21Aを上方に押し込むとモータ3が駆動を開始する。モータ3が駆動を開始すると、回転軸3Aが回転駆動され、減速機構31を介して回転軸3Aの回転が駆動機構4に伝達される。回転が伝達された駆動機構4は外側移動部54を右スプリング55A及び左スプリング55Bの付勢力に抗しながら上方に移動させるとともに内側移動部52を内側スプリング53の付勢力に抗しながら下方に移動させる。
【0078】
外側移動部54が上方に移動すると、右スプリング55A及び左スプリング55Bは上方に圧縮され、右スプリング55A及び左スプリング55Bに弾性エネルギが蓄積される。また、内側移動部52が下方に移動すると、内側スプリング53は下方に圧縮され、内側スプリング53に弾性エネルギが蓄積される。
【0079】
駆動機構4は、外側移動部54を上死点、且つ内側移動部52を下死点(図2及び図10の状態)まで移動させる。外側移動部54が上死点に達した際に第1マイクロスイッチ24Aはオン状態となる。その後、駆動機構4はそれぞれのスプリングに蓄積された弾性エネルギを解放する。当該弾性エネルギが解放されると、外側移動部54は右スプリング55A及び左スプリング55Bに付勢されて下方すなわち打撃方向に加速し、内側移動部52は内側スプリング53に付勢されて上方すなわち反打撃方向に加速する。このとき外側移動部54の下方への移動によって第1マイクロスイッチ24Aはオン状態からオフ状態となり、第1マイクロスイッチ24Aはモータ3を停止させるための信号を制御基板23Aに出力する。当該信号を受信した制御基板23Aは、モータ3を停止させる。
【0080】
下方に加速された外側移動部54はロッド54Bで釘を打撃し、右バンパ512D及び左バンパ512Eに当接し図1図7及び図9に示されている初期状態すなわち下死点に戻る。当該動作と同時に内側移動部52は外側移動部54の打撃方向とは反対の方向である反打撃方向に移動し、内側バンパ514Aと当接して図1図7及び図9に示されている初期状態すなわち上死点に戻る。
【0081】
このように、駆動機構4によって外側移動部54の下死点から上死点までの移動と内側移動部52の上死点から下死点への移動とが同時に行われ、右スプリング55A、左スプリング55B及び内側スプリング53のそれぞれのスプリングに蓄積された弾性エネルギが略同時に解放され、外側移動部54及び内側移動部52は略同時にそれぞれ下方(打撃方向)及び上方(反打撃方向)に加速されて、外側移動部54は上死点から下死点へ瞬時に移動してノーズ部6に供給された釘を打撃し、内側移動部52は下死点から上死点へ瞬時に移動する一連の動作によって打込動作は行われる。
【0082】
ここで、図12及び図13を参照して打込動作における駆動機構4、外側移動部54及び内側移動部52の動作について詳細に説明する。図12は、図8のXII−XII断面図であり、駆動機構4及び外側移動部54の動作を時系列で示している。図12の(a)は時刻t0(初期状態)、(b)は時刻t1、(c)は時刻t2、(d)は時刻t3、(e)は時刻t4における状態を示している。図13は、図8のXIII−XIII断面図であり、駆動機構4及び内側移動部52の動作を時系列で示している。図12の(a)は時刻t0(初期状態)、(b)は時刻t1、(c)は時刻t2、(d)は時刻t3、(e)は時刻t4における状態を示している。図12及び図13における回転方向R1は第1ギヤ42の回転方向を示し、回転方向R2は第2ギヤ43の回転方向を示している。なお、前述の図8の状態は、図12(b)及び図13(b)の状態と対応している。
【0083】
まず、駆動機構4及び外側移動部54の動作について説明する。図12(a)に示されているように、初期状態(時刻t0)において第1後面カム42Cは、第1ギヤ42の回転に伴う第1後面カム42Cの移動軌跡上において最も下方且つ左右方向略中央に位置している。また、初期状態において第2後面カム43Cは、第2ギヤ43の回転に伴う第2後面カム43Cの移動軌跡上における最も上方の位置の右側且つ僅かに下方に位置している。また、外側移動部54の下爪部542Cは第1後面カム42Cの右側において僅かに上方に位置している。なお、第1後面カム42Cの移動軌跡は後面視において第1ギヤ42の回転軸心を中心とした円を描き、第2後面カム43Cの移動軌跡は後面視において第2ギヤ43の回転軸心を中心とした円を描く。なお、外側移動部54が下死点に位置している状態であり、図12(a)の状態は、図1図7及び図9の状態に対応している。
【0084】
時刻t0でモータ3の回転軸3Aの回転力が駆動機構4に伝達されると、第1ギヤ42は回転方向R1の方向に回転を開始し、第2ギヤ43は回転方向R2の方向に回転を開始する。時刻t0で第1ギヤ42及び第2ギヤ43の回転が開始された後、時刻t1で第1後面カム42C及び第2後面カム43Cは、図12(b)に示されている状態となり、第1後面カム42Cは外側移動部54の下爪部542Cの下面に当接する。
【0085】
時刻t1の後、第1後面カム42Cは、第1ギヤ42の回転に伴い時刻t2まで下爪部542Cの下面を上方に押圧しながら移動し且つ外側移動部54を右スプリング55A及び左スプリング55Bの付勢力に抗しながら上方に移動させる。すなわち、時刻t1から時刻t2までの間、第1ギヤ42は下方向に力を受けながら外側移動部54を上方に移動させる。また、当該移動によって右スプリング55A及び左スプリング55Bは圧縮され、右スプリング55A及び左スプリング55Bに弾性エネルギが蓄積される。時刻t2で第1後面カム42C及び第2後面カム43Cは、図12(c)に示されている状態となり、第2後面カム43Cは外側移動部54の上爪部543Cの下面に当接する。このとき、第1後面カム42Cは下爪部542Cに未だ当接した状態である。
【0086】
時刻t2で第2後面カム43Cが上爪部543Cの下面に当接した直後、第1後面カム42Cと下爪部542Cとの当接は解除される。第2後面カム43Cは、第2ギヤ43の回転に伴い時刻t2から時刻t3まで上爪部543Cの下面を上方に押圧しながら移動し且つ外側移動部54を右スプリング55A及び左スプリング55Bの付勢力に抗しながら上方に移動させる。すなわち、時刻t2から時刻t3までの間、第2ギヤ43は下方向に力を受けながら外側移動部54を上方に移動させる。また、当該移動によって右スプリング55A及び左スプリング55Bは圧縮され、右スプリング55A及び左スプリング55Bに弾性エネルギが蓄積される。時刻t3で第1後面カム42C及び第2後面カム43Cは、図12(d)に示されている状態となる。このとき、第2後面カム43Cは上爪部543Cに未だ当接した状態である。なお、図12(d)に示されている状態は、外側移動部54が上死点に位置している状態であり、図2及び図10の状態と対応している。
【0087】
時刻t3の直後、第2後面カム43Cと上爪部543Cとの当接は解除され、時刻t4で図12(e)の状態となる。当該当接の解除によって右スプリング55A及び左スプリング55Bのそれぞれに蓄積された弾性エネルギが解放され、外側移動部54は上死点から下死点に加速しながら移動し、釘を打撃する。
【0088】
次に、駆動機構4及び内側移動部52の動作について説明する。図13(a)に示されているように、初期状態(時刻t0)において第1前面カム42Dは、第1ギヤ42の回転に伴う第1前面カム42Dの移動軌跡上における最も下方の位置の右側且つ僅かに上方に位置している。また、初期状態において第2前面カム43Dは、第2ギヤ43の回転に伴う第2前面カム43Dの移動軌跡上において最も上方且つ左右方向略中央に位置している。また、内側移動部52の右爪部52Eは第2前面カム43Dの右側において僅かに下方に位置している。なお、第1前面カム42Dの移動軌跡は前面視において第1ギヤ42の回転軸心を中心とした円を描き、第2前面カム43Dの移動軌跡は前面視において第2ギヤ43の回転軸心を中心とした円を描く。なお、図13(a)の状態は、内側移動部52が上死点に位置している状態であり、図1図7及び図9の状態に対応している。
【0089】
時刻t0でモータ3の回転軸3Aの回転力が駆動機構4に伝達されると、第1ギヤ42は回転方向R1の方向に回転を開始し、第2ギヤ43は回転方向R2の方向に回転を開始する。時刻t0で第1ギヤ42及び第2ギヤ43の回転が開始された後、時刻t1で第1前面カム42D及び第2前面カム43Dは、図13(b)に示されている状態となり、第2前面カム43Dは内側移動部52の右爪部52Eの上面に当接する。第2前面カム43Dと右爪部52Eとの当接は、第1後面カム42Cと下爪部542Cとの当接と略同時である。
【0090】
時刻t1の後、第2前面カム43Dは、第2ギヤ43の回転に伴い時刻t2まで右爪部52Eの上面を下方に押圧しながら移動し且つ内側移動部52を内側スプリング53の付勢力に抗しながら下方に移動させる。すなわち、時刻t1から時刻t2までの間、第2ギヤ43は上方向に力を受けながら内側移動部52を下方に移動させる。また、当該移動によって内側スプリング53は圧縮され、内側スプリング53に弾性エネルギが蓄積される。時刻t2で第1前面カム42D及び第2前面カム43Dは、図13(c)に示されている状態となり、第1前面カム42Dは内側移動部52の左爪部52Fの上面に当接する。第1前面カム42Dと左爪部52Fとの当接は、第2後面カム43Cと上爪部543Cとの当接と略同時である。また、このとき第2前面カム43Dは右爪部52Eに未だ当接した状態である。
【0091】
時刻t2で第1前面カム42Dが左爪部52Fの上面に当接した直後、第2前面カム43Dと右爪部52Eとの当接は解除される。第1前面カム42Dは、第1ギヤ42の回転に伴い時刻t2から時刻t3まで左爪部52Fの上面を下方に押圧しながら移動し且つ内側移動部52を内側スプリング53の付勢力に抗しながら下方に移動させる。すなわち、時刻t2から時刻t3までの間、第1ギヤ42は上方向に力を受けながら内側移動部52を下方に移動させる。また、当該移動によって内側スプリング53は圧縮され、内側スプリング53に弾性エネルギが蓄積される。時刻t3で第1前面カム42D及び第2前面カム43Dは、図13(d)に示されている状態となる。このとき、第1前面カム42Dは左爪部52Fに未だ当接した状態である。なお、図13(d)に示されている状態は、内側移動部52が下死点に位置している状態であり、図2及び図10の状態と対応している。
【0092】
時刻t3の直後、第1前面カム42Dと左爪部52Fとの当接は解除され、時刻t4で図13(e)の状態となる。当該当接の解除によって内側スプリング53に蓄積された弾性エネルギが解放され、内側移動部52は下死点から上死点に加速しながら移動する。第1前面カム42Dと左爪部52Fとの当接の解除は、第2後面カム43Cと上爪部543Cとの当接の解除と略同時であり、内側移動部52の下死点から上死点への移動と外側移動部54の上死点から下死点への移動とは略同時になされる。このため、外側移動部54の移動に起因して釘打機1に発生する反動を内側移動部52の移動によって相殺することができる。
【0093】
また、時刻t4では第1マイクロスイッチ24Aが制御基板23Aにモータ3を停止させるための信号を出力する。当該信号を受信した制御基板23Aはモータ3を停止させ、駆動機構4は、図12(a)及び図13(a)の状態に戻る。
【0094】
このように、本発明の第1の実施の形態による釘打機1によると、ハウジング2内に上下方向に往復動可能に設けられ打撃方向(下方向)に移動して釘を打撃する外側移動部54と、外側移動部54を打撃方向に加速させるスプリング部55と、ハウジング内に上下方向に往復動可能に設けられ外側移動部54の打撃方向への移動の際に反打撃方向(上方向)に移動するよう構成された内側移動部52と、内側移動部52の打撃方向への移動によって弾性エネルギが蓄積され、蓄積された弾性エネルギの解放によって内側移動部52を反打撃方向に加速させる内側スプリング53と、スプリング部55及び内側スプリング53に弾性エネルギを蓄積させた後に当該蓄積された弾性エネルギを解放する駆動機構4とを備えているため、打込みの際の反動及び振動を抑制することができる。これにより、打込機の操作性を良好にし、且つ作業の仕上げ程度を良好にすることができる。
【0095】
また、釘打機1において第1ギヤ42は、スプリング部55の付勢力に抗しながら外側移動部54を反打撃方向に移動させる外側移動部54駆動用の第1後面カム42Cと、内側スプリング53の付勢力に抗しながら内側移動部52を打撃方向に移動させる内側移動部52駆動用の第1前面カム42Dとを有しているため、スプリング部55及び内側スプリング53のそれぞれに弾性エネルギを蓄積させる際に第1ギヤ42に対して打込動作中に相反する方向の力が加えられる。例えば、図12における時刻t1から時刻t2までは第1ギヤ42は下方向に力を受け、時刻t2から時刻t3までは上方向に力を受ける。このため、第1ギヤ42に上方向のみ又は下方向のみの力が断続的に加わる場合と比較して、第1ギヤ42及び第1ギヤ42を支承している第1支持軸41Bが負担する荷重を上下方向(往復動方向)において略均等にすることができる。これにより、第1ギヤ42及び第1支持軸41Bが上方向寄り又は下方向寄りに傾く等の故障及び破損を抑制することができ、釘打機1自体の故障を抑制し、釘打機1を長寿命とすることができる。なお、上記効果は第2ギヤ43についても同様である。
【0096】
また、釘打機1において第1ギヤ42は、外側移動部54駆動用の第1後面カム42C及び内側移動部52駆動用の第1前面カム42Dの両方を有しているため、外側移動部54を移動させ且つスプリング部55に弾性エネルギを蓄積させる機構の他に内側移動部52を移動させ且つ内側スプリング53に弾性エネルギを蓄積させる機構を別途設ける必要がない。このため、釘打機1本体の反動の抑制をシンプルな構成且つ低コストで実現することできる。上記効果は第2ギヤ43についても同様である。
【0097】
さらに、釘打機1において第1ギヤ42は、第1後面42Aと第1後面42Aの反対側の面である第1前面42Bとを有しており、第1後面カム42Cは第1後面42Aから突出し、第1前面カム42Dは第1前面42Bから突出している構成すなわち両面にカムを備えたギヤであるため、同一面から(例えば、第1後面42Aのみ又は第1前面42Bのみから)外側移動部54駆動用の第1後面カム42C及び内側移動部52駆動用の第1前面カム42Dの2つのカムが突出している場合と比較して、第1ギヤ42、外側移動部54及び内側移動部52の構成を簡素化することができ、釘打機1自体の構成を簡素化することができる。上記効果は第2ギヤ43についても同様である。
【0098】
また、釘打機1のスプリング部55は、外側移動部54の反打撃方向への移動によって反打撃方向に圧縮されて弾性エネルギを蓄積するように構成され、内側スプリング53は、内側移動部52の打撃方向への移動によって打撃方向に圧縮されて弾性エネルギを蓄積するように構成されているため、すなわち、スプリング部55の圧縮方向と内側スプリング53の圧縮方向とを相反する方向とすることで、外側移動部54及び内側移動部52をそれぞれ相反する方向に加速させることができる。
【0099】
また、釘打機1においてスプリング部55は、右スプリング55A及び左スプリング55Bを有しており、且つ内側スプリング53は、往復動方向(上下方向)から見て右スプリング55A及び左スプリング55Bとの間に設けられているため、打込みの際に釘打機1に発生するモーメントを抑制することができる。すなわち、打撃方向と右スプリング55Aから左スプリング55Bに向かう方向(左右方向)とのそれぞれに直交する仮想軸周りのモーメントを抑制することができる。このため、打込みの際に釘打機1が当該仮想軸を中心として回転することを抑制することができ、操作性を向上させることができる。
【0100】
さらに釘打機1は、内側空間54aを画成する保持部本体541Aと右延出部542Aと右後板部542Bと左延出部543Aと左後板部543Bとを有し、第1ギヤ42及び内側移動部52は往復動方向から見て内側空間54aに収容され、第1前面42Bは第1後面42Aよりも内側移動部52側に位置し、下爪部542Cは往復動方向から見て右後板部542Bから第1後面42Aに向かう方向に突出するとともに第1ギヤ42の回転に伴って第1後面カム42Cと当接し外側移動部54を反打撃方向に移動させるように構成されているため、往復動方向から見て釘を打撃する外側移動部54がカウンターバランサーである内側移動部52よりも外側に位置する。このため、内側移動部52よりも外側で釘を打撃することができ、外側移動部54の前端部を釘打機1の前端部に配置することで、機構収容部24の前側が障害物に当接してしまい釘を打込めない場所であっても釘を打込むことができる、いわゆる際打ちが可能となる。これにより、壁際等に止具を打込むことができ作業性を向上させることができる。上記効果は、第2ギヤ43及び上爪部543Cについても同様である。
【0101】
また、釘打機1において、図12の(a)から(e)に示されている後面視による第1後面カム42Cと第2後面カム43Cと下爪部542Cと上爪部543Cの位置関係は、図13の(a)から(e)に示されている前面視による第1前面カム42Dと第2前面カム43Dと右爪部52Eと左爪部52Fとの位置関係を180°回転させた構成となっている。すなわち、図12に示されている当該位置関と図13に示されている当該位置関係とは、第1ギヤ42の回転軸心と第2ギヤ43の回転軸心とを結ぶ線分の中心点に関して対称である。このため、外側移動部54及び内側移動部52の移動及び加速(巻上げ及び打出し)を略同時に行うことができる。
【0102】
次に、図14及び図15に基づいて本発明の第2の実施の形態による釘打機200について説明する。基本的な構成は第1の実施の形態の釘打機1と同様である。以下の説明において、上述した第1の実施の形態による釘打機1の構成要素と同じ部材や要素は同じ参照番号を付して、説明を省略する。
【0103】
図14及び図15に示されているように、釘打機200は、ホルダ部251と、ノーズ部206と、内側移動部252と、外側移動部254とを備えている。図14は、釘打機200全体の内部構造を示す一部断面側面図であり、外側移動部254が上死点に位置し且つ内側移動部252が下死点に位置している状態を示す図である。また、図15は、釘打機200の打撃機構205を示す一部断面側面図であり、外側移動部254が上死点に位置し且つ内側移動部252が下死点に位置している状態を示す図である。
【0104】
図14及び図15に示されているようにホルダ部251は、機構収容部24内部に収容され、内側移動部252及び外側移動部254を上下方向に摺動可能に支持しており、ボトムホルダ212を備えている。図14に示されているようにボトムホルダ212は、ホルダ部251の下部に設けられており、水平部212A及び垂直部212Bを有している。
【0105】
図15に示されているように水平部212Aは、底面視において左右方向に延びる矩形状をなす部分であって、その上面には上面視において環形状をなす内側バンパ214Aが設けられている。また水平部212Aには、上下方向に貫通する挿通孔212aが形成されており、後述のロッド252Bの挿通を許容している。垂直部212Bは、水平部212Aの後端部から下方に延出し、前面視において左右方向に延びる部分である。
【0106】
図14に示されているようにノーズ部206は、垂直部212Bの前面から下方に延びるように設けられており、その内部には射出孔206aが形成されている。射出孔206aは、上下方向に延びる孔であって、ロッド252Bを摺動可能に支持している。
【0107】
内側移動部252は、内側ガイド514内部を上下方向に往復摺動可能に設けられており、内側移動部本体252Aとロッド252Bとを備えている。内側移動部本体252Aは、略円筒形状をなしており、その外周面は内側ガイド514の内周面と摺接している。また、内側移動部本体252Aの上面とトップホルダ511の下面との間には内側スプリング253が設けられている。内側スプリング253は、内側移動部252の上方へ移動によって圧縮され、内側スプリング253に弾性エネルギが蓄積される。当該蓄積された弾性エネルギの解放により内側移動部252は、下方に付勢され加速される。また、内側移動部252のアーム本体52Cの上端部左部からは左右方向に延びる左爪部252Fが後方に突出しており、上下方向において略中央かつ右部からは左右方向に延びる図視せぬ右爪部が後方に突出している。内側移動部252は打撃部の一例であり、内側スプリング253は第1付勢部の一例である。
【0108】
ロッド252Bは、内側移動部本体252Aの下面から下方に延びる棒状の部材であり、内側移動部本体252Aが上死点から下死点へ移動する際にマガジン7に供給された釘を打撃するように構成されている。また、ロッド252Bの下端は、内側移動部252が上死点に位置している場合はノーズ部206の射出孔206a内部において上部に位置し、内側移動部252が下死点に位置している場合は射出孔206aの略下端に位置するように構成されている。
【0109】
外側移動部254は、釘の打込時の反動を抑制するいわゆるカウンターバランサー(カウンターウェイト)としての役割を果たす部材であり、金属材料により成形されている。外側移動部254の左後板部543Bの前面の下端部右部からは、左右方向に延びる下爪部243Cが前方に突出しており、右後板部542Bの上端部左部からは左右方向に延びる図示せぬ上爪部が前方に突出している。また、外側移動部254とボトムホルダ212との間にはスプリング部55が設けられており、外側移動部254の下方の移動によってスプリング部55は圧縮され弾性エネルギが蓄積される。外側移動部254はウェイト部の一例であり、釘打機200におけるスプリング部55は第2付勢部の一例である。下爪部243C及び当該上爪部は、爪部の一例である。
【0110】
次に釘打機200の動作について説明する。外側移動部254は、初期状態において上死点に位置した状態である。内側移動部252は、初期状態において下死点に位置した状態である。当該初期状態において、モータ3が駆動を開始すると、回転軸3Aが回転駆動され、減速機構31を介して回転軸3Aの回転が駆動機構4に伝達される。回転が伝達された駆動機構4は外側移動部254をスプリング部55の付勢力に抗しながら下方に移動させるとともに内側移動部252を内側スプリング253の付勢力に抗しながら上方に移動させる。
【0111】
外側移動部254が下方に移動すると、スプリング部55は下方に圧縮され、スプリング部55に弾性エネルギが蓄積される。また、内側移動部252が上方に移動すると、内側スプリング253は上方に圧縮され、内側スプリング253に弾性エネルギが蓄積される。
【0112】
駆動機構4は、外側移動部254を下死点、且つ内側移動部252を上死点まで移動させる。その後、駆動機構4はそれぞれのスプリングに蓄積された弾性エネルギを解放する。当該弾性エネルギが解放されると、外側移動部254はスプリング部55に付勢されて上方すなわち反打撃方向に加速し、内側移動部252は内側スプリング253に付勢されて下方すなわち打撃方向に加速する。
【0113】
下方に加速された内側移動部252はロッド252Bで釘を打撃し、内側バンパ214Aに当接し図14及び図15に示されている初期状態すなわち下死点に戻る。当該動作と同時に外側移動部254は内側移動部252の打撃方向とは反対の方向である反打撃方向に移動して初期状態すなわち上死点に戻る。
【0114】
このように、駆動機構4によって内側移動部252の下死点から上死点までの移動と外側移動部254の上死点から下死点への移動とが同時に行われ、右スプリング55A、左スプリング55B及び内側スプリング253のそれぞれのスプリングに蓄積された弾性エネルギが略同時に解放され、内側移動部252及び外側移動部254は略同時にそれぞれ下方(打撃方向)及び上方(反打撃方向)に加速されて、内側移動部252は上死点から下死点へ瞬時に移動してノーズ部206に供給された釘を打撃し、外側移動部254は下死点から上死点へ瞬時に移動する一連の動作によって打込動作は行われる。
【0115】
釘打機200の打込動作における駆動機構4の第1前面カム42D及び第2前面カム43Dと内側移動部252の左爪部252F及び図示せぬ右爪部との当接及び位置関係は、図12に示されている関係と同様である。また、釘打機200における駆動機構4の第1後面カム42C及び第2後面カム43Cと外側移動部254の下爪部243C及び図示せぬ上爪部との当接及び位置関係は、図13に示されている関係と同様である。
【0116】
このように、本発明の第2の実施の形態による釘打機200は、第1ギヤ42及び内側移動部252は往復動方向から見て内側空間54aに収容され、往復動方向から見てカウンターバランサーである外側移動部254が釘を打撃する内側移動部252よりも外側に位置している。これにより、外側移動部254が内側移動部252よりも大型化し、外側移動部254の質量を重くすることができる、打込みの際の反動をより抑制することができる。また、外側移動部254の質量及び大きさの設計自由度を向上させることができる。
【0117】
また、釘打機200における釘打機1と同一の構成及び要素からは本発明の第1の実施の形態による釘打機1と同様の作用及び効果を生じる。
【0118】
次に、図16に基づいて本発明の第3の実施の形態による釘打機300について説明する。基本的な構成は第1の実施の形態の釘打機1と同様である。以下の説明において、上述した第1の実施の形態による釘打機1の構成要素と同じ部材や要素は同じ参照番号を付して、説明を省略する。
【0119】
図16に示されているように、釘打機300は第3支持軸341Dを有するギヤホルダ41と第3ギヤ344とを備えている。第3支持軸341Dは、前後方向に延びる軸であって、第2支持軸41Cの上方においてギヤホルダ41から前方に突出するように設けられている。
【0120】
第3ギヤ344は、前面視において略円形状をなす平歯車であって、第3支持軸341Dによって第3支持軸341Dの軸心を中心として回転可能に支承されている。第3ギヤ344は、第2ギヤ43と噛合しており、第2ギヤ43の回転によって前面視において時計回りに回転駆動する。第3ギヤ344の後面には第3後面344Aが規定され、第3後面344Aの反対側の面である前面には第3前面344Bが規定されている。また第3ギヤ344は、第3後面カム344C及び図視せぬ第3前面カムを備えている。第3後面カム344Cは、第3後面344Aから後方に突出し且つ外側移動部54と当接可能に構成されており、且つ第3ギヤ344の回転に伴って外側移動部54を上方に移動させるように構成されている。第3前面カムは、第3前面344Bから前方に突出し且つ内側移動部52と当接可能に構成されており、且つ第3ギヤ344の回転に伴って内側移動部52を下方に移動させるように構成されている。第3後面344Aは第1面の一例であり、第3前面344Bは第2面の一例である。また、第3後面カム344Cは、第1カム部の一例であり、第3前面カムは第2カム部の一例である。
【0121】
釘打機300の動作について説明する。モータ3が回転を開始すると前面視において第1ギヤ42が時計回りに、第2ギヤ43が反時計回りに、第3ギヤ344が時計回りに回転する。外側移動部54は、第1ギヤ42の第1後面カム42C、第2ギヤ43の第2後面カム43C及び第3ギヤ344の第3後面カム344Cの順に当接且つ上方に押圧されて、上死点まで移動する。内側移動部52は、第1ギヤ42の第1前面カム42D、第2ギヤ43の第2前面カム43D及び第3ギヤ344の第3前面カムの順に当接且つ下方に押圧されて、下死点まで移動する。その後、内側移動部52及び外側移動部54は、略同時にそれぞれ上方及び下方に加速する。外側移動部54は上死点から下死点に移動する際に釘を打撃し、内側移動部52は下死点から上死点に移動することで打込みの際の反動を抑制する。
【0122】
このように、本発明の第3の実施の形態による釘打機300は、第1ギヤ42、第2ギヤ43及び第3ギヤ344を備え、すなわち内側移動部52及び外側移動部54を移動させるカムを備えるギヤ(両面にカムを備えるギヤ)を3個備えており、当該3個のギヤは上下方向に並んで配置されているため、内側移動部52及び外側移動部54の移動距離を長くすることができる。これにより、釘打機300の左右方向の寸法を大きくすることなく、内側移動部52及び外側移動部54の加速距離を長くすることができ、打込力を大きくすることができる。なお、本発明の第3の実施の形態による釘打機300においては、当該両面にカムを備えるギヤを3個備えていたが、4個以上備えていてもよい。
【0123】
また、釘打機300における釘打機1と同一の構成及び要素からは本発明の第1の実施の形態による釘打機1と同様の作用及び効果を生じる。
【0124】
本発明による打込機は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、右スプリング55A、左スプリング55B及び内側スプリング53を空気バネに置き換えてもよく、また、磁力を用いて内側移動部52及び外側移動部54に付勢力を付加する構成としてもよい。また、右スプリング55A、左スプリング55B及び内側スプリング53はそれぞれ圧縮バネであったが、伸延することで弾性エネルギを蓄積し、伸延状態が解除されることで弾性エネルギを解放する引張バネであってもよい。さらに、本発明の実施の形態による釘打機1、200及び300においては、両面にカムを備えるギヤを複数個備えていたが、1個のみ備える構成であってもよい。
【符号の説明】
【0125】
1、200、300…釘打機、 2…ハウジング、 3…モータ、 3A…回転軸、 4…駆動機構、 5、205…打撃機構、 6、206…ノーズ部、 6a、206a…射出孔、 7…マガジン、 41…ギヤホルダ、 42…第1ギヤ、 42A…第1後面、 42B…第1前面、 42C…第1後面カム、 42D…第1前面カム、 43…第2ギヤ、 43A…第2後面、 43B…第2前面、 43C…第2後面カム、 43D…第2前面カム、 51、251…ホルダ部、 52、252…内側移動部、 52E…右爪部、 52F、252F…左爪部、 53、253…内側スプリング、 54、254…外側移動部、 54B、252B…ロッド、 54a…内側空間、 55…スプリング部、 55A…右スプリング、 55B…左スプリング、 206a…射出孔、 212A…水平部、 212B…垂直部、 212a…挿通孔、 344…第3ギヤ、 344A…第3後面、 344C…第3後面カム、 541A…保持部本体、 542A…右延出部、 542B…右後板部、 542C…下爪部、 543A…左延出部、 543B…左後板部、 543C…上爪部、 L…仮想線分、 P…電池パック
図1
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