特許第6284068号(P6284068)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋インキSCホールディングス株式会社の特許一覧 ▶ トーヨーケム株式会社の特許一覧

特許6284068活性エネルギー線硬化性組成物およびそれを用いたインデックスマッチング層および積層体
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6284068
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性組成物およびそれを用いたインデックスマッチング層および積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/20 20060101AFI20180215BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20180215BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20180215BHJP
   C08F 2/46 20060101ALI20180215BHJP
   C08F 292/00 20060101ALI20180215BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20180215BHJP
   C08L 51/10 20060101ALI20180215BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20180215BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20180215BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20180215BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20180215BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   B32B27/20 Z
   B32B27/30 A
   C08F2/44 A
   C08F2/46
   C08F292/00
   C08K3/22
   C08L51/10
   B32B7/02 103
   B32B7/02 104
   H01B5/14 A
   C09J11/04
   C09J4/02
   C09J5/00
【請求項の数】4
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2017-97565(P2017-97565)
(22)【出願日】2017年5月16日
【審査請求日】2017年5月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 光人
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−002112(JP,A)
【文献】 特開2014−152197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00−43/00
C08F 2/44
C08F 2/46
C08F 292/00
C08K 3/22
C08L 51/10
C09J 4/02
C09J 5/00
C09J 11/04
H01B 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上にインデックスマッチング層および透明導電層をこの順に有する積層体におけるインデックスマッチング層を形成するための、金属酸化物を含む活性エネルギー線硬化性組成物であって、以下(1)〜(4)を満たすことを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物。
(1)金属酸化物は、平均粒子径が4〜200nmであり、酸化ジルコニウムと、酸化チタンおよび/または酸化亜鉛と、を95/5〜40/60の質量比で含有する。
(2)活性エネルギー線硬化性組成物の固形分100質量%中、分子量が700未満のペンタエリスリトールアクリレート系化合物を10〜80質量%含有する。
(3)(メタ)アクリロイル基を6個以上有し、重量平均分子量が700〜10000であるアクリレート樹脂を含有し、アクリレート樹脂がポリエステルアクリレートおよび/またはウレタンアクリレートである。
(4)アクリレート樹脂と、ペンタエリスリトールアクリレート系化合物との質量比率は80/20〜50/50である。
【請求項2】
酸化チタンおよび/または酸化亜鉛の比表面積が、20〜160m/gであることを特徴とする、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項3】
活性エネルギー線を6500mJ/cm照射された前記積層体の、JIS K5600−5−6に準じた接着試験によって測定される前記基材に対する前記インデックスマッチング層の接着性が、剥離面積が15%未満である、請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項4】
基材上に、請求項1〜いずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物であるインデックスマッチング層、および透明導電層をこの順に有する積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化性組成物およびそれを用いたインデックスマッチング層および積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タッチパネル用途等にポリエステル等の基材上に透明導電層を設けた透明導電性の積層体が用いられている。透明導電層としては酸化インジウム錫(ITO)等の金属酸化物の薄膜が一般的に用いられており、基材上にスパッタリング法や真空蒸着法によって積層されている。
タッチパネルの動作方式として、抵抗膜式が主流であるが、近年、静電容量式が急速に拡大している。抵抗膜式タッチパネルに用いられる透明導電性を有する積層体は、一般的にパターン化されていない透明導電層で構成されている。一方、静電容量式タッチパネルには、通常、パターン化された透明導電層が積層された透明導電性の積層体が用いられている。
【0003】
静電容量式タッチパネルに用いられている透明導電性を有する積層体は、通常、フォトリソエッチング等によって、透明導電層がパターン化されており、平面視上透明導電層のパターン部と非パターン部が存在する。このような透明導電層のパターン化された透明導電性を有する積層体を用いた静電容量式タッチパネルは、透明導電層のパターン部が視認される、いわゆる「骨見え」という原料が問題となっており、表示装置としての品質を低下させる。
例えば特許文献1、2などに透明導電層パターンの骨見えを抑制することが提案されている。また、特許文献3には多量の透明導電性を有する積層体を製造するにあたり透明性および多量の活性エネルギー線照射にも耐えうる接着性と、透明導電性を有する積層体が提案されている。更に特許文献4には内部応力および硬化収縮が改善されたインデックスマッチング積層体について提案されている。
【0004】
近年では積層体の用途によって基材の片面あるいは両面に多層化され、それら各層の形成時や透明導電層のパターン化の際に多量の活性エネルギー線が照射される場合がある。その場合、特許文献1や特許文献2の技術では、透明導電層パターンの骨見え抑制の効果がみられるものの、インデックスマッチング層が多量の活性エネルギー線を受けた場合には基材との接着性が低下してしまうといった課題があった。また、基材とインデックスマッチング層の接着性を確保するために、活性エネルギー線の積算光量が多量にならないように層構成を設計しようとすると、積層体の層構成が限定されてしまうという問題が生じていた。なお、特許文献3の技術では、透明導電性を有する積層体を製造するにあたり透明性および多量の活性エネルギー線照射にも耐えうる接着性と、透明導電性を有する積層体が開示されている。しかし、更なる接着性の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−084075号公報
【特許文献2】国際公開WO2012/176481号公報
【特許文献3】特開2017−35816号公報
【特許文献4】特開2014−209333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、活性エネルギー線の照射量にかかわらず、透明性および耐擦傷性が良好であり、基材および透明導電層に対する接着性を保持することができるインデックスマッチング層を形成するための活性エネルギー線硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題に対して鋭意研究を重ねた結果、以下に記載の活性エネルギー線硬化性組成物を用いることで解決することを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、基材上にインデックスマッチング層および透明導電層をこの順に有する積層体におけるインデックスマッチング層を形成するための、金属酸化物を含む活性エネルギー線硬化性組成物であって、以下(1)〜(4)を満たすことを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
(1)金属酸化物は、平均粒子径が4〜200nmであり、酸化ジルコニウムと、酸化チタンおよび/または酸化亜鉛と、を95/5〜40/60の質量比で含有する。
(2)活性エネルギー線硬化性組成物の固形分100質量%中、分子量が700未満のペンタエリスリトールアクリレート系化合物を10〜80質量%含有する。
(3)(メタ)アクリロイル基を6個以上有し、重量平均分子量が700〜10000であるアクリレート樹脂を含有し、アクリレート樹脂がポリエステルアクリレートおよび/またはウレタンアクリレートである。
(4)アクリレート樹脂と、ペンタエリスリトールアクリレート系化合物との質量比率は80/20〜50/50である。
【0009】
また本発明は、酸化チタンおよび/または酸化亜鉛の比表面積が、20〜160m/gであることを特徴とする、前記活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0010】
また本発明は、活性エネルギー線を6500mJ/cm照射された前記積層体の、JIS K5600−5−6に準じた接着試験によって測定される前記基材に対する前記インデックスマッチング層の接着性が、剥離面積が15%未満である、前記活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0012】
また本発明は、基材上に、前記活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物であるインデックスマッチング層、および透明導電層をこの順に有する積層体に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、活性エネルギー線の照射量にかかわらず、透明性および耐擦傷性が良好であり、基材および透明導電層に対する接着性を保持することができるインデックスマッチング層を形成するための活性エネルギー線硬化性組成物を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0015】
以下、本発明を構成するそれぞれの要素について、詳細に説明する。
【0016】
基材上にインデックスマッチング層および透明導電層をこの順に有する積層体におけるインデックスマッチング層を形成するための、金属酸化物を含む活性エネルギー線硬化性組成物であって、以下(1)および(2)を満たすことを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物である。
(1)金属酸化物は、平均粒子径が4〜200nmであり、酸化ジルコニウムと、酸化チタンおよび/または酸化亜鉛と、を99/1〜30/70の質量比で含有する。
(2)活性エネルギー線硬化性組成物の固形分100質量%中、ペンタエリスリトールアクリレート系化合物を10〜80質量%含有する。
【0017】
<基材>
本発明の基材としては、以下に限定されないが、ポリエステルフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリオレフィンフィルム、シクロオレフィン系フィルム、アクリル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム等があげられる。特にポリエステルフィルム、中でもポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好ましく用いられる。上記基材の厚みは、所望の用途に応じて適宜選択すればよいが、20μmから300μmの範囲が適当であり、50μmから250μmの範囲が好ましく、50μmから200μmの範囲がより好ましい。
【0018】
また、基材の屈折率は、基材、インデックスマッチング層、透明導電層を順に有する積層体全体における視認性に大きく寄与する点から、好ましくは1.45〜1.75であり、より好ましくは、1.45〜1.70である。
【0019】
上記基材は、その表面に有機物および/または無機物からなる層をさらに有していてもよく、その具体例としては他の層との接着性を上げるための易接着層が挙げられる。易接着層としてはコロナ放電処理、UV−オゾン処理、プラズマ処理、プライマー処理など種々のものが挙げられ、組み合わせて処理されていても良い、中でも、特にプライマー処理もしくはコロナ放電処理された基材が好ましく、プライマー処理された基材であることがより好ましい。
【0020】
<インデックスマッチング層>
本発明において、「インデックスマッチング層」とは、タッチパネル等の表示装置に用いられる積層体を形成する層であって、PETフィルム等の基材と透明導電層との間に、基材上の透明導電層を有する部分と透明導電層を有さない部分との光学特性の差を小さくすることを目的として設けられる層のことをいう。なお以下に限定されないが、インデックスマッチング層の膜厚としては0.02〜30μmのものが好ましく、屈折率としては1.4〜2.0であることが好ましい。
【0021】
<活性エネルギー線硬化性組成物>
また、以下に本発明のインデックスマッチング層を形成するための活性エネルギー線硬化性組成物について説明する。
【0022】
活性エネルギー線硬化性組成物とは、紫外線や電子線等の活性エネルギー線の照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂成分を含有する組成物をいう。活性エネルギー線硬化性組成物の塗工後に、活性エネルギー線を照射することによって硬化させてインデックスマッチング層が形成される。該樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する樹脂が機械的膜強度(耐擦傷性、鉛筆硬度)に優れる点から好ましく、例えば、ペンタエリスリトールアクリレート系化合物等のアクリレート基を有する化合物が挙げられる。
【0023】
<金属酸化物>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物に含まれる金属酸化物は、平均粒子径が4〜200nmであり、この範囲であるとインデックスマッチング層の透明性に優れる。より好ましくは10〜100nmである。本明細書において、金属酸化物の平均粒子径とは、組成物中に分散された状態での平均粒子径を示し、動的光散乱法で測定した粒度分布におけるD50値である。動的光散乱測定は例えば、日機装(株)社製「ナノトラックUPA」などを用いて測定できる。
【0024】
また、酸化ジルコニウムと、酸化チタンおよび/または酸化亜鉛との平均粒子径の比率は1.0:0.3〜1.0:1.8であることが好ましく、1.0:0.5〜1.0:1.5であることがより好ましい。酸化チタンと酸化亜鉛を両方使用する場合は、それぞれの平均粒子径と、酸化ジルコニウムの平均粒子径との比率が上記範囲内であることが好ましい。
【0025】
酸化ジルコニウムと、酸化チタンおよび/または酸化亜鉛との質量比率は、紫外線などの活性エネルギー線を効果的に遮断するため、酸化ジルコニウム/酸化チタン・酸化亜鉛が99/1〜30/70の質量比で含有することが好ましい。さらに好ましくは、95/5〜40/60である。また、酸化ジルコニウムと、酸化チタンおよび/または酸化亜鉛は、活性エネルギー線硬化性組成物の固形分100質量%中、合計で10〜80質量%含有することが好ましい。
【0026】
また、上記金属酸化物の一次粒子径は、4〜200nmが好ましい。上記範囲であると、紫外線等の活性エネルギー線をより効果的に遮断できる。酸化ジルコニウムと、酸化チタンおよび/または酸化亜鉛との一次粒子径の比率は1.0:10〜1.0:0.3であることが好ましく、1.0:5〜1.0:0.4であることがより好ましい。酸化チタンと酸化亜鉛を両方使用する場合は、それぞれの一次粒子径と、酸化ジルコニウムの一次粒子径との比率が上記範囲内であることが好ましい。
【0027】
本明細書において、金属酸化物の一次粒子径とは、透過型電子顕微鏡を用いた測定により得られる値のことであり、5点以上の測定値の平均値をとることが好ましい。
【0028】
上記金属酸化物は、表面を有機物もしくは無機物で処理されていても良い。酸化チタンとしてはルチル型結晶であることが好ましく、酸化亜鉛としては六方晶であることが好ましい。
なお、金属酸化物の粒子形状は、特に限定されるものではないが、例えば、球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状、または不定形状であり、好ましくは、球状である。
【0029】
上記酸化チタンおよび酸化亜鉛は、比表面積が、20〜160m/gであることが好ましく、30〜150m/gであることがより好ましい。比表面積は、JIS Z 8830:2001に記載の測定方法により測定できる。比表面積が上記範囲であると、インデックスマッチング層の透明性が良好となり、更に活性エネルギー線を積算光量として多量に照射した場合でも、基材への接着性が良好に維持できる。
【0030】
本発明において金属酸化物は、酸化ジルコニウムと酸化チタンの組み合わせであることが好ましい。
【0031】
上記酸化チタンおよび酸化亜鉛は、真密度が、3〜6.5であることが好ましい。また、かさ密度は0.20〜0.40g/cmであることが好ましい。
【0032】
以下の説明において、(メタ)アクリレートとはメタクリレートとアクリレート、(メタ)アクリルとはメタクリルとアクリルの併記であることを意味する。
【0033】
<ペンタエリスリトールアクリレート系化合物>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、固形分100質量%中、ペンタエリスリトールアクリレート系化合物を10〜80質量%含有する。好ましくは20〜70質量%である。また、上記金属酸化物の合計とペンタエリスリトールアクリレート系化合物との質量比率(金属酸化物/ペンタエリスリトールアクリレート系化合物)が、90/10〜15/85で含有することが好ましい。
【0034】
本明細書においてペンタエリスリトールアクリレート系化合物とは、ペンタエリスリトールトリアクリレート(分子量298)、ペンタエリスリトールトリメタクリレート(分子量340)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(分子量352)、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート(分子量408)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(分子量524)、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート(分子量594)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(分子量578)、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート(分子量662)、等のペンタエリスリトール構造と(メタ)アクリレート構造を有する化合物、さらにこれらの化合物のペンタエリスリトール構造と(メタ)アクリレート構造の間に、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなどのポリエーテル構造を有している化合物であり、分子量が700未満のものである。なお、これらペンタエリスリトール(メタ)アクリレート系化合物は、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
上記したうち、ペンタエリスリトールトリアクリレート(分子量298)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(分子量352)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(分子量524)およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(分子量578)が好ましい。
【0035】
また、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の水酸基を有さないペンタエリスリトールアクリレート系化合物は、後述のアクリレート樹脂を得るための原料として使用するペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の製品中に含まれている。そのため、得られる樹脂組成物は、アクリレート樹脂と、ペンタエリスリトールアクリレート系化合物との混合物となっている。
【0036】
<アクリレート樹脂>
上記活性エネルギー線硬化性組成物において、更に、(メタ)アクリロイル基を6個以上有し、重量平均分子量が700〜10000であるアクリレート樹脂(ただし、上記ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート系化合物を除く)を含有しても良い。該アクリレート樹脂の含有量は組成物固形分100質量%中、5〜45質量%が好ましく、10〜40質量%で含有することがより好ましい。また、塗工性の観点から、重量平均分子量は1000〜8000であることがさらに好ましい。また、粘度としては、B型粘度計で60℃において、500〜30000mPa・sであることが好ましい。
該樹脂としては、塗膜強度、耐摩擦(擦傷)性の観点よりウレタンアクリレート、ポリエポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等の、多官能の(メタ)アクリレート樹脂を好適に使用することができる。中でもポリエステルアクリレートおよび/またはウレタンアクリレートであることが好ましい。
【0037】
なお、上記アクリレート樹脂を含有する場合、ペンタエリスリトールアクリレート系化合物との質量比率(アクリレート樹脂/ペンタエリスリトールアクリレート系化合物)は90/10〜10/90であることが好ましく、80/20〜50/50であることがより好ましい。
【0038】
<ポリエポキシアクリレート>
ポリエポキシアクリレートは、例えばエポキシ樹脂のグリシジル基を(メタ)アクリル酸でエステル化して、官能基を(メタ)アクリレート基としたものが挙げられ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂への(メタ)アクリル酸付加物、ノボラック型エポキシ樹脂への(メタ)アクリル酸付加物等がある。
【0039】
<ウレタンアクリレート>
ウレタンアクリレートは、例えば、ポリイソシアネートと水酸基を有する(メタ)アクリレート類とを反応させて得られるもの、ポリオールとポリイソシアネートとをイソシアネート基過剰の条件下に反応させてなるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを、水酸基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得られるもの等がある。あるいは、ポリオールとポリイソシアネートとを水酸基過剰の条件下に反応させてなる水酸基含有ウレタンプレポリマーを、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得ることもできる。
【0040】
以下に、ウレタンアクリレートの製造方法について示すが一例であり、これらに限定されない。
例えば、ウレタンアクリレートは、ポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートを、適当なウレタン化触媒の存在下で、酸素雰囲気下、60〜100℃、4〜8時間の条件で攪拌して得ることができる。
ウレタン化触媒の具体例としては、ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、ジブチル錫ジラウレ−ト、トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン、2,6,7−トリメチル−1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン等を挙げることができる。これらの中で、特に、ジブチル錫ジラウレ−ト等が好ましい。
【0041】
上記ポリイソシアネートは、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。例えば、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジメリールジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、ビス−クロロメチル−ジフェニルメタン−ジイソシアネート、2,6−ジイソシアネート−ベンジルクロライドやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が挙げられる。これらは3量体となってイソシアヌレート環構造となっていても良い。これらのポリイソシアネートは単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
中でも好ましくはトリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、およびヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体である。
【0042】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸1−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(メタ)アクリル酸エチル−α−(ヒドロキシメチル)、単官能(メタ)アクリル酸グリセロール等の(メタ)アクリル酸エステル類、あるいはこれらの(メタ)アクリレートと、ε−カプロラクトンの開環付加により末端に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルや、上記水酸基含有(メタ)アクリレートに対してエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを繰り返し付加したアルキレンオキサイド付加(メタ)アクリル酸エステル等の水酸基含有の(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。中でもトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一種が好ましい。
【0043】
<ポリエステルアクリレート>
ポリエステルアクリレートは、例えば、多塩基酸及び多価アルコールを重縮合して得られるポリエステルポリカルボン酸と、カルボキシル基または水酸基含有(メタ)アクリレートとを反応させて得ることができる。
上記、多塩基酸としては、脂肪族系、脂環族系、及び芳香族系が挙げられ、それぞれ特に制限が無く使用できる。例えば脂肪族系多塩基酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、スベリン酸、マレイン酸、クロロマレイン酸、フマル酸、ドデカン二酸、ピメリン酸、シトラコン酸、グルタル酸、イタコン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等が挙げられ、これらの脂肪族ジカルボン酸及びその無水物が利用できる。又、無水コハク酸の誘導体(メチル無水コハク酸物、2,2−ジメチル無水コハク酸、ブチル無水コハク酸、イソブチル無水コハク酸、ヘキシル無水コハク酸、オクチル無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸、フェニル無水コハク酸等)、無水グルタル酸の誘導体(無水グルタル酸、3−アリル無水グルタル酸、2,4−ジメチル無水グルタル酸、2,4−ジエチル無水グルタル酸、ブチル無水グルタル酸、ヘキシル無水グルタル酸等)、無水マレイン酸の誘導体(2−メチル無水マレイン酸、2,3−ジメチル無水マレイン酸、ブチル無水マレイン酸、ペンチル無水マレイン酸、ヘキシル無水マレイン酸、オクチル無水マレイン酸、デシル無水マレイン酸、ドデシル無水マレイン酸、2,3−ジクロロ無水マレイン酸、フェニル無水マレイン酸、2,3−ジフェニル無水マレイン酸等)等の無水物誘導体も利用できる。
【0044】
また、上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3,3'−ジメチロールヘプタン、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ポリオキシエチレングリコール(付加モル数10以下)、ポリオキシプロピレングリコール(付加モル数10以下)、プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール,トリシクロデカンジメタノール、シクロペンタジエンジメタノール、ダイマージオール等の脂肪族又は脂環式ジオール類;
【0045】
1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,2−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、4,4'−メチレンジフェノール、4,4'−(2−ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4'−ジヒドロキシビフェノール、o−,m−及びp−ジヒドロキシベンゼン、4,4'−イソプロピリデンフェノール、ビスフェノールにアルキレンオキサイドを付加させた付加型ビスフェノール等の芳香族ジオール類等を挙げることができる。
【0046】
付加型ビスフェノールの原料ビスフェノールとしては、ビスフェノールA、ビスフェノールF等が挙げられ、原料アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0047】
また、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの3つ以上の水酸基を含有するポリオールを一部使用しても良い。
【0048】
上記、多価アルコールのうち、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3,3'−ジメチロールヘプタン、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、などの、分岐したアルカンに水酸基が2つ以上導入されたものが、オリゴマーの、接着性、耐熱性等の点で好ましい。
【0049】
ポリエステルアクリレートは、まず、多塩基酸及び多価アルコールを公知の方法で重縮合してポリエステルを得る。このとき、カルボキシル基量と水酸基量のバランスで分子量や末端官能基が調整される。
【0050】
「多塩基酸に含まれるカルボキシル基量>多価アルコールに含まれる水酸基量」の場合、末端官能基はカルボキシル基となり、ここへ上記水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基を縮合反応させることで目的とするポリエステルアクリレートを得ることができる。
【0051】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、上記と同様のものが挙げられ、中でもトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一種を含むものが好ましい。
【0052】
また、ポリエステルアクリレートは、多塩基酸無水物と、水酸基含有(メタ)アクリレートとを反応させ、生成したカルボキシル基に、さらにエポキシ化合物を反応させることでも得ることができる。多塩基酸無水物としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物等のテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、フルオレン構造またはビフェニル構造を有するものが好ましい。エポキシ化合物としては、ビフェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、および4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0053】
<重合禁止剤>
上記、重量平均分子量700〜10000であるアクリレート樹脂は、重合禁止剤を含んで良い。重合禁止剤としてはヒドロキノン系の化合物が挙げられ、ヒドロキノン、メチルヒドロキノンが好ましい。なお、含有量としては、アクリレート樹脂に対して100〜500ppmであることが好ましい。
【0054】
上記(メタ)アクリレート基を6個以上有し、重量平均分子量700〜10000であるアクリレート樹脂の市販品としては、以下のものが例示できる。
東亜合成(株)製:アロニックスM−7100、アロニックスM−8030、アロニックスM−8060、化薬サートマー(株)製:CN986NS、CN9010NS、ダイセル・オルネクス(株)製:Ebecryl 220、Ebecryl 1290、Ebecryl 1830、新中村化学工業(株)製:NKオリゴ U6LPA、NKオリゴ U10PA、NKオリゴ U10HA、NKオリゴ UA−33H、NKオリゴ UA−53H、荒川化学工業(株)製:ビームセット371、ビームセット575、ビームセット577、根上工業(株)製:アートレジンUN−3320HA、アートレジンUN−3320HB、アートレジンUN−3320HC、アートレジンUN−3320HS、アートレジンUN−9000H、アートレジンUN−901T、アートレジンUN−904、アートレジンUN−905、アートレジンUN−952、アートレジンHDP、アートレジンHDP−3、アートレジン H61、日本合成化学工業(株)製:紫光UV−7600B、紫光UV−7610B、紫光UV−7620EA、紫光UV−7630B、紫光UV−1700B、紫光UV−6300B、紫光UV−7640B
共栄社化学(株)製:UA−306H、UA−306T、UA−306I。
【0055】
<その他のモノマー>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、5官能以下の(メタ)アクリレートモノマーを含有して良い。例えば、3〜4官能の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートが挙げられる。
【0056】
2官能の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジメチレンジ(メタ)アクリレート及び/または5−エチル−2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−5−(ヒドロキシメチル)−1,3−ジオキサジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)メタクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)メタクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジメタクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。好ましい具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロ−ルトリアクリレート、PO変性トリメチロールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリレートは単独で用いてもまたは2種以上を混合して用いてもよい。
【0057】
1官能の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0058】
上記金属酸化物、ペンタエリスリトールアクリレート系化合物、(メタ)アクリレート基を6個以上有し、重量平均分子量700〜10000である(メタ)アクリレート樹脂の配合量は、70/10/20〜10/50/40の比率で含有することが好ましく、組成物の固形分100質量%中、70〜100質量%含有することが好ましい。配合量がこの範囲であると、耐擦傷性に優れたインデックスマッチング層を得ることができる。
【0059】
<有機溶剤>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、液状媒体として有機溶剤を含んで良い。使用される有機溶剤としては、混合溶剤としての使用が好ましく、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンといったケトン系有機溶剤、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、エステル系有機溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、などのアルコール系有機溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコエーテル系有機溶剤など公知の有機溶剤を使用できる。特にグリコールエーテル系有機溶剤を含むことが好ましい。
【0060】
上記グリコールエーテル系有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ‐n‐プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールイソアミルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、メトキシエトキシエタノール、エチレングリコールモノアリルエーテル等のエチレングリコールエーテル類;
プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ブトキシプロパノール等のプロピレングリコールエーテル類;
が挙げられ、中でもメチルプロピレングリコール、3‐メトキシ−1−ブタノールが好ましい。
【0061】
<光重合開始剤>
活性エネルギー線硬化性組成物は、さらに、光重合開始剤を含むことができる。光重合開始剤としては、光励起によって活性エネルギー線硬化膜を形成するための(メタ)アクリロイル基のビニル重合を開始できる機能を有するものであれば特に限定はなく、例えばモノカルボニル化合物、ジカルボニル化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾインエーテル化合物、アシルホスフィンオキシド化合物、アミノカルボニル化合物などが使用できる。
【0062】
具体的には、モノカルボニル化合物としては、ベンゾフェノン、4−メチル−ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、4−(4−メチルフェニルチオ)フェニル−エタノン、3,3´−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4−(1,3−アクリロイル−1,3,3´−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4−(1,3−アクリロイル−1,4,7,10,13−ペンタオキソトリデシル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミン塩酸塩、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシエチル)メタアンモニウムシュウ酸塩、2−/4−イソ−プロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−ヒドロキ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9Hチオキサントン−2−イロキシ−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミン塩酸塩、ベンゾイルメチレン−3−メチルナフト(1,2−d)チアゾリン等が挙げられる。
【0063】
ジカルボニル化合物としては、1,2,2−トリメチル−ビシクロ[2.1.1]ヘプタン−2,3−ジオン、ベンザイル、2−エチルアントラキノン、9,10−フェナントレンキノン、メチル−α−オキソベンゼンアセテート、4−フェニルベンザイル等が挙げられる。
アセトフェノン化合物としては、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−ジ-2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−スチリルプロパン−1−オン重合物、ジエトキシアセトフェノン、ジブトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,2−ジエトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノ−プロパノニル)−9−ブチルカルバゾール等が挙げられる。
【0064】
ベンゾインエーテル化合物としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイゾブチルエーテル、ベンゾインノルマルブチルエーテル等が挙げられる。
アシルホスフィンオキシド化合物としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、4−n−プロピルフェニル−ジ(2,6−ジクロロベンゾイル)ホスフィンオキシド等が挙げられる。
【0065】
アミノカルボニル化合物としては、メチル−4−(ジメトキシアミノ)ベンゾエート、エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、イソアミル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、4,4’−ビス−4−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス−4−ジエチルアミノベンゾフェノン、2,5’−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン等が挙げられる。
光重合開始剤の市販品としてはIGM Resins製Omnirad73、481、659、248、264、4817、BDK、TPO、TPO-L、380、Omnipol910、BP、2702、Esacure One、1001M、A198、KIP150、等があげられる。
【0066】
光重合開始剤は、上記化合物に限定されず、光励起により重合を開始させる能力があれば、どのようなものでも構わない。これらの光重合開始剤は、一種類で用いられるほか、二種類以上を混合して用いてもよい。
光重合開始剤の使用量に関しては、特に制限はされないが、本発明におけるインデックスマッチング層を形成する活性エネルギー線硬化性組成物における、金属酸化物を除いた固形分100質量%に対して1〜20質量%の範囲内で使用することが好ましい。なお、増感剤として、公知の有機アミン等を加えることもできる。さらに、上記ラジカル重合用開始剤のほかに、カチオン重合用の開始剤を併用することもできる。
【0067】
<その他併用樹脂>
本発明における活性エネルギー線硬化性組成物は他の高分子材料を含有しても良く、以下に限定するものではないが、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、アルキッド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、石油樹脂、およびこれらの変性樹脂などを挙げることができる。これらの樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができ、その含有量は、活性エネルギー線硬化性組成物中の樹脂固形分100質量%中、1〜20質量%が好ましい。
【0068】
<添加剤>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、さらに様々な添加剤を、本発明の目的や効果を損なわない範囲において含むことができる。具体的には、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート系化合物および(メタ)アクリレート基を6個以上有し、重量平均分子量が700〜10000であるアクリレート樹脂以外の光硬化性化合物、重合禁止剤、光増感剤、レベリング剤、界面活性剤、抗菌剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、導電性ポリマー、導電性界面活性剤、無機充填剤、顔料、染料などが挙げられる。
【0069】
<活性エネルギー線硬化性組成物の製造>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、均一に撹拌混合できれば問題はなく、例えば活性エネルギー線硬化性組成物を構成する、金属酸化物、ペンタエリスリトール系化合物、アクリレート樹脂、有機溶剤等を、所定の攪拌機ディスパーやホモジナイザーなどを用いて均一に撹拌することにより製造することができる。酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛などの金属酸化物は、ペンタエリスリトールアクリレート系化合物や、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレートなどのアクリレート樹脂および有機溶剤とともに3本ロール、サンドミル、ガンマミル等を用いて分散したものを配合しても良いし、市販されている有機溶剤の分散体などを配合して使用しても良い。
【0070】
<インデックスマッチング層の製造>
次に、活性エネルギー線硬化性組成物を硬化してなるインデックスマッチング層の製造方法に関して説明する。
インデックスマッチング層の製造方法は、たとえば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を基材に塗布すること、および活性エネルギー線を照射して、基材上の活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させること、を含む。より具体的には、この活性エネルギー線硬化性組成物を基材に、乾燥後の膜厚が好ましくは0.02〜30μm、より好ましくは0.02〜20μmになるように塗工後、硬化処理することにより形成することができる。
【0071】
塗工方法としては、公知の方法を用いることができ、例えばロットまたはワイヤーバーなどを用いた方法や、マイクログラビア、グラビア、ダイ、カーテン、リップ、スロットまたはスピンなどの各種コーティング方法を用いることができる。
【0072】
硬化方法としては、公知の技術を用いて、例えば、紫外線、電子線、波長400〜500nmの可視光線等の活性エネルギー線を照射することにより行なうことができる。紫外線および波長400〜500nmの可視光線の線源(光源)には、例えば高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ガリウムランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ等を使用することができる。電子線源には、熱電子放射銃、電解放射銃等を使用することができる。照射する活性エネルギー線の積算光量は、工程上管理しやすい点から、50〜1000mJ/cmの範囲内であることが好ましい。これらの活性エネルギー線照射に、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱等による熱処理を併用することができる。
【0073】
インデックスマッチング層は、基材に活性エネルギー線硬化性組成物を塗工し、自然または強制乾燥させたあとに硬化処理を行なって形成しても良いし、塗工し硬化処理を行なったあとに自然または強制乾燥させても良いが、自然または強制乾燥させたあとに硬化処理を行なう方がより好ましい。特に、電子線で硬化させる場合は、水による硬化阻害または有機溶剤の残留による塗膜の強度低下を防ぐため、自然または強制乾燥させたあとに硬化処理を行なう方がより好ましい。硬化処理のタイミングは、塗工と同時でもよいし、塗工後でもよい。
【0074】
得られる硬化膜は、透明性、接着性に優れるため、光学材料として好適に利用することが出来る。硬化膜の厚みは、0.02〜30μmであることが好ましい。さらに、硬化膜の屈折率は、1.4〜2.0の範囲であることが好ましく、1.5〜1.9の範囲であることがより好ましい。
【0075】
<透明導電層>
透明導電層の材料としては、タッチパネルの電極に用いられる公知の材料を用いることができる。例えば酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、ITO(酸化インジウム錫)、ATO(酸化アンチモン錫)等の金属酸化物が挙げられる。これらの中でもITOが好ましく用いられる。
【0076】
透明導電層の厚みは、例えば表面抵抗値が10Ω/□以下の良好な導電性を確保するという観点から、10nm以上が好ましく、15nm以上がより好ましく、20nm以上が特に好ましい。一方、透明導電層の厚みが大きくなりすぎると透明性が低下するという不具合が生じることがあるため、透明導電層の厚みの上限は、60nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましく、40nm以下が特に好ましい。また、透明導電層の屈折率は1.81以上である。さらに透明導電層の屈折率は1.85以上が好ましく、1.90以上がより好ましい。上限は、2.20以下が好ましく、2.10以下がより好ましい。
【0077】
透明導電層の形成方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などのドライプロセスを用いることができる。
このようにして成膜した透明導電層を、透明導電フィルムが適用される用途に応じて、各種のパターンを形成することができる。なお、透明導電層のパターン化により、パターン部と非パターン部が形成されるが、パターン部の形状としては、例えば、ストライプ状、格子状などが挙げられる。透明導電層のパターン化は、一般的にはエッチングによって行われる。例えば、透明導電層上にパターン状のエッチングレジスト膜を、フォトリソグラフィ法、レーザー露光法、あるいは印刷法により形成した後エッチング処理することにより、透明導電層がパターン化される。エッチング液としては、従来公知のものが用いられる。例えば、塩化水素、臭化水素、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、酢酸等の有機酸、およびこれらの混合物、ならびにそれらの水溶液が用いられる。
【0078】
本発明の積層体は、基材と、活性エネルギー線硬化膜であるインデックスマッチング層と、透明導電層とを有し、基材とインデックスマッチング層が隣接していればよい。それ以外の層構成は任意であり、必要に応じて、基材またはインデックスマッチング層の片面に屈折率の異なる膜または粘着層などを設けることができる。
【0079】
本発明の積層体の好ましい構成例をいくつかを以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。なお、下記構成例において、透明導電層はパターン化された透明導電層である。透明導電層以外の他の層はパターン化されていない。
(I) 基材/インデックスマッチング層/透明導電層
(II) 基材/インデックスマッチング層/(M)/透明導電層
(III) (M)/基材/インデックスマッチング層/透明導電層
(IV) (M)/基材/インデックスマッチング層/(M)/透明導電層
(V) (M)/インデックスマッチング層/基材/インデックスマッチング層/透明導電層
(VI)インデックスマッチング層/基材/インデックスマッチング層/透明導電層
ただし、(M)は屈折率の異なる膜または粘着層のいずれか1層を表す。
【0080】
屈折率の異なる膜は、本発明のインデックスマッチング層が有する機能以外の機能を持つものである。その形成方法は特に限定されず、公知の方法で形成される。例えば蒸着、スパッタなどのドライコーティング法、ロット、ワイヤーバーを用いた方法や、マイクログラビア、グラビア、ダイ、カーテン、リップ、スロット、スピン等のウェットコーティング方法を用いることができる。用いる材料も限定は無く、必要に応じて、情報記録機能、防眩機能、ニュートンリング防止機能、粘着機能、特定波長の遮断、色調補正などの機能の1種類以上を積層体に付与することができる任意の材料を用いることができる。
【0081】
本発明の積層体は、その製造時にインデックスマッチング層や任意の層の硬化時や、透明導電層のパターン化の際に活性エネルギー線が照射される。この製造過程においてインデックスマッチング層に照射される活性エネルギー線の合計が積算光量として6500mJ/cm以上であっても、基材と活性エネルギー線硬化膜であるインデックスマッチング層の接着性に優れる。なお、前記積算光量とは、活性エネルギー線の光量の合計値であり、一度に照射した光量であっても良いし、数回に分けて照射した光量の合計であっても良い、なお、本発明においては、インデックスマッチング層を形成するための硬化時における積算光量も含まれる。なお、インデックスマッチング層の積算光量に対する耐久性としては6500mJ/cm以上であることが好ましく、8000mJ/cm以上であることがより好ましい。更には10000mJ/cm以上であることが好ましい。
【0082】
本発明の基材と、インデックスマッチング層と、透明導電層とを有する積層体の接着性はJIS K5600−5−6による付着性クロスカット法により評価される接着性が、単位面積当たりの剥離面積が15%未満であり、さらに透明性および耐擦傷性も非常に優れている。剥離面積は10%未満であることが好ましく、5%未満であることがより好ましい。
【実施例】
【0083】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における部および%は、特に注釈の無い場合、重量部および重量%を表わす。
【0084】
(平均粒子径)
日機装社製「ナノトラックUPA」を用いて動的光散乱法により測定し、D50の値を用いた。
【0085】
(比表面積)
JIS Z 8830:2001に記載の方法に従って求めた。
【0086】
(酸価の測定方法)
JIS K 0070の電位差滴定法に準拠し、測定した酸価(mgKOH/g)を固形分換算した。
【0087】
(重量平均分子量)
重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置(東ソー株式会社製HLC−8220)を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレンを標準物質に用いた換算分子量として求めた。下記に測定条件を示す。
カラム:下記カラムを直列に連結して使用した。
東ソー株式会社製 TSKgel SuperAW2500
東ソー株式会社製 TSKgel SuperAW3000
東ソー株式会社製 TSKgel SuperAW4000
東ソー株式会社製 TSKgel guardcolumn SuperAWH
検出器:RI(示差屈折計)
測定条件:カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
【0088】
(合成例1)<ウレタンアクリレートPU1>
攪拌翼、温度計、還流冷却器、ガス導入管を備えたフラスコに、酢酸プロピル150部、ヘキサメチレンジイソシアネート17部を仕込み、温度90℃で空気を吹き込みながら、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート60重量%とジペンタエリスリトールヘキサアクリレート40重量%との混合物(製品名:「アロニックスM403」東亞合成社製)182部と酢酸プロピル49部をよく混合した後に滴下し、滴下終了後10時間撹拌を維持した。なお、ヘキサメチレンジイソシアネート由来のイソシアネート基とジペンタエリスリトールペンタアクリレート由来の水酸基のモル比は、イソシアネート基:水酸基=1:1である。IRスペクトルでイソシアネート基由来のピークの消失を確認した後、室温に冷却し、ウレタンアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物PU1を得た。なおPU1は以下の性状である。
<PU1の性状>
・PU1中の、ウレタンアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの固形分重量比率は61:39である。
・PU1中のウレタンアクリレートはアクリロイル基を10個有する。
・PU1の重量平均分子量は1900である。
【0089】
(合成例2)<ウレタンアクリレートPU2>
合成例1において用いたヘキサメチレンジイソシアネート17部の代わりに、イソホロンジイソシアネートを22部用いた以外は合成例1と同様の操作を行い、ウレタンアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物PU2を得た。なおPU2は以下の性状である。
<PU2の性状>
・PU2中の、ウレタンアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの固形分重量比率は63:37である。
・PU2中のウレタンアクリレートはアクリロイル基を10個有する。
・PU2の重量平均分子量は2100である。
【0090】
(合成例3)<ウレタンアクリレートPU3>
合成例1において用いたヘキサメチレンジイソシアネート17部の代わりに、イソホロンジイソシアネートを22部用い、さらに合成例1において用いた「アロニックスM403」(ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが重量比60:40の混合物)182部の代わりに、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートが重量比70:30の混合物(製品名:「アロニックスM306」東亞合成社製)90重量部を用いた以外は合成例1と同様の操作を行い、ウレタンアクリレートとペンタエリスリトールトリアクリレートの混合物PU3を得た。なおPU3は以下の性状である。<PU3の性状>
・PU3中の、ウレタンアクリレートとペンタエリスリトールトリアクリレートの固形分重量比率は73:27である。
・PU3中のウレタンアクリレートはアクリロイル基を6個有する。
・PU2の重量平均分子量は1500である。
【0091】
(合成例4)<ポリエステルアクリレートPE1>
撹拌機、還流冷却管、ドライエアー導入管、温度計を備えた4口フラスコに3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物80.0部、水酸基価122mgKOH/gのペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬社製 ペンタエリスリトールトリアクリレート 製品名:KAYARAD PET−30、副生成物としてペンタエリスリトールテトラアクリレートを含む)250.0部、メチルヒドロキノン0.24部、シクロヘキサノン217.8部を仕込み、60℃まで昇温した。次いで触媒として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン1.65部を加え、90℃で8時間撹拌した。反応物のIR測定で酸無水物基のピーク、すなわち、1780cm−1および1850cm−1付近のピークが消滅していることを確認した後、冷却し、反応を停止させた。この時点で反応物の酸価を測定したところ、94mgKOH/gであった。
その後、メタクリルグリシジルエーテル78.3部、シクロヘキサノン54.0部を加え、次いで触媒として、ジメチルベンジルアミン2.65部を加え、100℃で6時間撹拌し、反応を継続しながら定期的に反応物の酸価を測定し、酸価が5.0mgKOH/g以下になったところで、室温まで冷却して反応を停止させた。得られた樹脂ワニスは淡黄色透明で、固形分60%、最終的な酸価は3.0mgKOH/gであった。酸価から換算して、ポリエステルアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物PE1を得た。
<PE1の性状>
・PE1中の、ポリエステルアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの固形分質量比が76:24である。
・PE1中のポリエステルアクリレートはアクリロイル基を8個有する。
・PE1の重量平均分子量は3500である。
【0092】
(合成例5)<ポリエステルアクリレートPE2>
撹拌機、還流冷却管、ドライエアー導入管、温度計を備えた4口フラスコに3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物80.0部、水酸基価85mgKOH/gのジペンタエリスリトールペンタアクリレート(新中村化学工業製、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート 製品名:A−9570W、副生成物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレートも含む)359.0部、メチルヒドロキノン0.29部、シクロヘキサノン290.1部を仕込み、60℃まで昇温した。次いで触媒として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン2.19部を加え、90℃で8時間撹拌した。反応物のIR測定で酸無水物基のピーク、すなわち、1780cm−1および1850cm−1付近のピークが消滅していることを確認した後、冷却し、反応を停止させた。この時点で反応物の酸価を測定したところ、74mgKOH/gであった。
その後、メタクリルグリシジルエーテル78.3部、シクロヘキサノン48.7部を加え、次いで触媒として、ジメチルベンジルアミン3.53部を加え、100℃で6時間撹拌し、反応を継続しながら定期的に反応物の酸価を測定し、酸価が5.0mgKOH/g以下になったところで、室温まで冷却して反応を停止させた。得られた樹脂ワニスは淡黄色透明で、固形分60%、最終的な酸価は3.0mgKOH/gであった。酸価から換算して、ポリエステルアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物PE2を得た。
<PE2の性状>
・PE2中の、ポリエステルアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの固形分質量比が69:31である。
・PE2中のポリエステルアクリレートはアクリロイル基を12個有する。
・PE2の重量平均分子量は4000である。
【0093】
(比較合成例1)<ウレタンアクリレートPU4>
合成例1において用いたヘキサメチレンジイソシアネート17部の代わりに、イソホロンジイソシアネート(NCO基:2個)を67部用い、さらに合成例1において用いた「アロニックスM403」(ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物)182部の代わりに、2−ヒドロキシエチルアクリレート139重量部を用いた以外は合成例3と同様の操作を行い、ウレタンアクリレートPU4を得た。なお、イソホロンジイソシアネート由来のイソシアネート基と2−ヒドロキシエチルアクリレート由来の水酸基のモル比は、イソシアネート基:水酸基(2-ヒドロキシエチルアクリレート由来)=1:1である。PU4の性状を以下に示す。
<PE4の性状>
・PU4には、ペンタエリスリトールアクリレート系化合物は含まれていない。
・PU4はアクリロイル基を2個有する。
・PU4の重量平均分子量は1000である。
【0094】
本明細書において、実施例5〜9および15〜16以外は参考例である。
(実施例1)<活性エネルギー線硬化性組成物S1の作成>
金属酸化物として、ZrO分散体(1):粒子濃度30重量%、平均粒子径4nm(堺化学社製 製品名:「SZR−K」)を用いてZrO固形分として47部と、TiO分散体(1):粒子濃度15重量%、平均粒子径36nm、比表面積45m/g ルチル型酸化チタン 球状粒子(CIKナノテック社製 製品名:「NanoTeck TiO2」)を用いて、TiO固形分として5部と、ペンタエリスリトールアクリレート系化合物として、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(東亜合成社製 製品名:「アロニックスM450」)44部を、混合し、さらに光重合開始剤としてESACURE
ONE(IGM Resins製 オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン])4部、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを固形分40%となるよう調整して、活性エネルギー線硬化性組成物S1を得た。
【0095】
(実施例2〜20)<活性エネルギー線硬化性組成物S2〜S20の作成>
表1に記載の原料および組成比率を用いた以外は実施例1と同様の手順で活性エネルギー線硬化性組成物S2〜S20を作成した。なお、表1中の略称は以下を示す。
ZrO分散体(2):粒子濃度30重量%、平均粒子径19nm 一次粒子径10nm以下 (アイテック社製 製品名:「Zirconeo−Ck」)
TiO分散体(2):粒子濃度20重量%、平均粒子径13nm 比表面積120m/g ルチル型酸化チタン(日揮触媒社製 製品名:「オプトレイク 6320Z」)
ZnO分散体:粒子濃度15重量%、平均粒子径34nm かさ密度0.36g/cm 比表面積30m/g(CIKナノテック社製 製品名:「NanoTeck ZnO」)
PET4A:ペンタエリスリトールテトラアクリレート(東亜合成(株)製、製品名:「アロニックスM450」)
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(サートマー社製、製品名:「DPHA」)
PET3A/PET4A=70/30:ペンタエリスリトールトリアクリレート/ペンタエリスリトールテトラアクリレート=70/30の混合物(東亜合成(株)製、製品名:「アロニックスM306」)
DPPA/DPHA=60/40:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート/ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート=60/40の混合物(東亜合成(株)製、製品名:「アロニックスM403」)
【0096】
(実施例21)<積層体R1の作成>
活性エネルギー線硬化性組成物S1を、125μm厚の易接着処理ポリエステル(PET)フィルム(東レ(株)製「ルミラーUH13」)に、バーコーターを用いて、乾燥後の膜厚が1.5μmになるように塗工した後、高圧水銀ランプで500mJ/cmの紫外線を照射し、インデックスマッチング層を形成した。更に得られたインデックスマッチング層の上に、透明導電層としてITO膜の厚みが30nmとなるようにスパッタリング法で積層後、透明導電層のみをストライプ状にパターン加工(エッチング処理)して、本発明の積層体R1を得た。
【0097】
(実施例22〜40)<積層体R2〜R20の作成>
表1に記載の活性エネルギー線硬化性組成物S2〜S20を用いた以外は実施例21と同様の手順で積層体R2〜R20を作成した。
【0098】
(比較例1〜10)<活性エネルギー線硬化性組成物SS1〜SS10の作成>
表2に記載の原料および組成比率を用いた以外は実施例1〜20と同様の手順で活性エネルギー線硬化性組成物SS1〜SS10を作成した。なお、表2中の略称は以下を示す。
Al分散体:粒子濃度15重量%、平均粒子径31nm 比表面積55m/g(製品名:「NanoTeck Al」、CIKナノテック(株)社製)
SiO分散体:粒子濃度15重量%、平均粒子径25nm 比表面積110m/g(製品名:「NanoTeck SiO2」、CIKナノテック(株)社製)
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート 新中村化学社製
DTMPTA:ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート 新中村化学社製
【0099】
(比較例11〜20)<積層体RR1〜RR10の作成>
表2に記載の活性エネルギー線硬化性組成物SS1〜SS10を用いた以外は実施例21と同様の手順で積層体RR1〜RR10を作成した。
【0100】
[評価]
上記にて得られた活性エネルギー硬化性組成物S1〜S20(実施例)およびSS1〜SS10(比較例)、積層体R1〜R20(実施例)、RR1〜RR10(比較例)を用いて、以下の評価を行った。なお評価結果を表3および表4に示した。
【0101】
<接着性>(基材/インデックスマッチング層間)
積層体R1〜R20(実施例)、RR1〜RR10(比較例)において、高圧水銀ランプにて積算光量で、6500、10500、14500mJ/cmの紫外線を照射したのち、積層体のITO層を積層していない部分について、JIS K5600−5−6に準拠し、付着性クロスカット法により基材/インデックスマッチング層間の接着性を評価した。なお、該JIS規格における0〜5の評価はそれぞれをA〜Fと置き換えて表記した。
<評価基準>
A:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にもはがれがない
B:カットの交差点における積層体の小さなはがれ。単位面積当たり5%未満のはがれ
C:積層体がカットの縁に沿って、および/又は交差点においてはがれている。単位面積当たり5%以上15%未満のはがれ
D:積層体がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大はがれが生じており、および/又は目のいろいろな部分が、部分的又は全面的にはがれている。単位面積当たり15%以上35%未満の剥がれ
E:積層体がカットの縁に沿って、部分的または全面的に大はがれが生じており、および/または数箇所の目が部分的または全面的にはがれている。単位面積当たりの35%未満の剥がれ
F:単位面積当たり35%以上の剥がれ。
なお、AおよびBは実用上問題ないレベルである。
【0102】
<接着性>(インデックスマッチング層/透明電極間)
積層体R1〜R20(実施例)、RR1〜RR10(比較例)において、高圧水銀ランプにて積算光量で、6500、10500、14500mJ/cmの紫外線を照射したのち、積層体のITO層を積層している部分について、JIS K5600−5−6に準拠し、付着性クロスカット法によりインデックスマッチング層/透明電極間の接着性を評価した。評価基準は上記の通りである。
【0103】
<透明性(Haze値)>
積層体R1〜R20(実施例)、RR1〜RR10(比較例)において、積層体のITO層を積層していない部分について、透明性(Haze値)を、Hazeメーター(スガ試験機社製)を用いて濁度を測定した。
A:Haze値が1.0%未満である。
B:Haze値が1.0%以上1.5%未満である。
C:Haze値が1.5%以上2.0%未満である。
D:Haze値が2.0%以上3.0%未満である。
E:Haze値が3.0%以上である。
なお、A、Bが実用上問題ないレベルである。
【0104】
<耐擦傷性>
積層体R1〜R20(実施例)、RR1〜RR10(比較例)それぞれを、学振試験機にセットし、スチールウールのNo.0000を用いて、荷重250gで10回擦り合わせた。取り出した積層体について、キズのつき具合を以下の5段階の目視評価に従って判断した。
A:キズが全くない
B:僅かにキズが付いている
C:キズは付いているが、基材は見えていない
D:キズが付き、一部硬化膜が剥がれている
E:硬化膜が剥がれてしまい、基材が剥き出しの状態
なお、AおよびBは実用上問題ないレベルである。
【0105】
表3及び表4の結果より、積層体R1〜R20(実施例)は、透明性、耐擦傷性と接着性のすべてにおいてがバランス良く、優れていることが判明した。また金属酸化物を活性エネルギー線硬化膜である樹脂層に含んでも、透明性と接着性がバランス良く優れている。
【0106】
これに対し、積層体RR1〜RR10(比較例)は、ポリエステル基材と活性エネルギー線硬化膜である樹脂層との接着性および活性エネルギー線硬化膜である樹脂層と透明導電層との接着性がおおむね不足していた。また、接着性が良好であった場合では、透明性もしくは耐擦傷性が劣化することが判明した。
【0107】
本発明により、過剰に活性エネルギー線を照射しても、透明性と耐擦傷性が良好であり、基材および透明導電層に対する接着性を保持することができるインデックスマッチング層を形成するための活性エネルギー線硬化性組成物を提供することができた。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【0110】
【表3】
【0111】
【表4】


【要約】
【課題】過剰に活性エネルギー線を照射しても、透明性と耐擦傷性が良好であり、基材および透明導電層に対する接着性を保持することができるインデックスマッチング層を形成するための活性エネルギー線硬化性組成物を提供すること。
【解決手段】
基材上にインデックスマッチング層および透明導電層を有する積層体におけるインデックスマッチング層を形成するための、金属酸化物を含む活性エネルギー線硬化性組成物であって、以下(1)および(2)を満たすことを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物。
(1)金属酸化物は、平均粒子径が4〜200nmであり、酸化ジルコニウムと、酸化チタンおよび/または酸化亜鉛と、を99/1〜30/70の質量比で含有する。
(2)活性エネルギー線硬化性組成物の固形分100質量%中、ペンタエリスリトールアクリレート系化合物を10〜80質量%含有する。
【選択図】なし