(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
傾斜自在とした寝台を備えたX線撮影装置で胃部のX線撮影を行う際に、寝台上に腹臥した被験者の心窩部部分に配置して腹部を圧迫するために用いるX線撮影用補助具において、
流体が送給されることにより膨張する圧迫手段と、この圧迫手段に前記流体を送給する流体送給手段とを備え、
前記圧迫手段は、
前記流体の流入によって膨張するバルーンと、
このバルーンを内包する包装体と
を備え、
前記包装体は、
4つの前記バルーンを2行2列の格子状に配置させる下側包装体と、
この下側包装体の上面側であって4つの前記バルーンの中心位置に中心を位置させて前記バルーンを配置させる上側包装体と
で構成しているX線撮影用補助具。
それぞれのバルーンの収縮状態において、前記上側包装体内に配置されるバルーンの一部が、前記下側拘包装体に配置されるバルーンの中心と上下に重なっている請求項1または請求項2に記載のX線撮影用補助具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従前のX線撮影用補助具は、2つのバルーンを上下に重ねただけであるために、バルーンの膨張による胃部の圧迫方向が、寝台の上面から鉛直上向きの一方向だけであった。
【0006】
そのため、二重造影法と呼ばれる胃全体像の撮影のみを対象としており,詳細に胃壁ひだ像を撮影する精密検査を行う場合には、部分的には好適な撮影が可能であるが、胃の大きさと比較してバルーンで圧迫できる領域が小さく、胃壁の各所の撮影を行う際には、何回かに分けて撮影しなければならなかった。
【0007】
また、二重造影法による胃全体像の撮影と、精密な胃壁ひだ像の撮影のどちらの場合にもバルーンによる胃部の圧迫位置を調整するために、撮影の都度に被験者に体勢を調整してもらっており、オペレータが被験者に対して指示を出すことで体勢を調整しているが、オペレータの指示を被験者が誤解することがあり、被験者がオペレータの指示通りに体勢調整できないことで、撮影に手間取ってしまうという問題があった。
【0008】
本発明者らは、このような現状を鑑み、X線撮影用補助具において胃部の圧迫方向を調整可能とし、二重造影法による胃全体像の撮影と、精密な胃壁ひだ像の撮影の双方を容易に実現すべく研究開発を行って、本発明を成すに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のX線撮影用補助具は、傾斜自在とした寝台を備えたX線撮影装置で胃部のX線撮影を行う際に、寝台上に腹臥した被験者の心窩部部分に配置して腹部を圧迫するために用いるX線撮影用補助具において、流体が送給されることにより膨張する圧迫手段と、この圧迫手段に流体を送給する流体送給手段とを備え、圧迫手段は、流体の流入によって膨張するバルーンと、このバルーンを内包する包装体とを備え、包装体は、4つのバルーンを2行2列の格子状に配置させる下側包装体と、この下側包装体の上面側であって4つのバルーンの中心位置に中心を位置させてバルーンを配置させる上側包装体とで構成しているものである。
【0010】
さらに、本発明のX線撮影用補助具では、上側包装体内に配置されるバルーンを、下側包装体に配置されるバルーンよりも大容積としていること、さらには、それぞれのバルーンの収縮状態において、上側包装体内に配置されるバルーンの一部が、下側包装体内に配置されるバルーンの中心と上下に重なっていることにも特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、胃部の圧迫方向を、寝台の上面から鉛直上向きの方向だけでなく、斜め上方向とすることもでき、オペレータによる被験者への体勢調整の指示をできるだけ少なくすることができ、しかも被験者の負担を小さくしながら、円滑な胃部の撮影を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のX線撮影用補助具は、傾斜自在とした寝台を備えたX線撮影装置で胃部のX線撮影を行う際に用いるものであって、特に、X線撮影用補助具は、寝台上に腹臥した被験者の心窩部部分に配置して腹部を圧迫するために用いるものである。
【0014】
すなわち、
図1に示すように、X線撮影装置Aは、被験者が腹臥する寝台10と、この寝台10を適宜の傾斜状態とする傾斜機構を備えた機台20と、寝台10に腹臥した被験者にX線を照射する照射部(図示せず)とを備えている。
【0015】
寝台10の内部には、適宜の位置にX線ディテクタ(図示せず)を設けて、被験者を透過したX線に基づく映像化を行えることとしている。
【0016】
本発明のX線撮影用補助具は、流体が送給されることにより膨張する膨張体40と、この膨張体40に流体を送給する流体送給機構とを備えている。
【0017】
膨張体40は、寝台10上に腹臥した被験者の腹部を圧迫する圧迫手段であって、寝台10上に腹臥した被験者の心窩部部分に配置することとしている。
【0018】
流体送給機構は流体送給手段であって、本実施形態では、空気を圧送するコンプレッサ51と、このコンプレッサ51から送給された空気を所定の供給先に送給するための制御を行う制御部52と、この制御部52を遠隔操作するための操作部53とで構成している。
【0019】
なお、病院等の施設においては、圧縮空気の供給配管が備え付けられていることが多く、コンプレッサの替わりに圧縮空気の供給配管に接続してもよい。
【0020】
制御部52には、コンプレッサ51から送給された空気の圧力を調整するためのレギュレータ(図示せず)と、送給されてきた空気の送給先を切り替えるための複数の切替バルブ(図示せず)を設けている。すなわち、後述するように膨張体40には5つのバルーンを設けており、各バルーンにはそれぞれ送気管54の一方端を連通連結するとともに、送気管54の他方端には制御部52の切替バルブを接続して、操作部53からの操作信号に基づいて切替バルブを開状態とすることにより、送気管54を介してバルーンに空気を供給することとしている。
【0021】
操作部53は、上述したように切替バルブの開閉操作を行うための操作信号の入力を行っており、信号線55を介して制御部52に接続している。制御部52から離隔させて設けた操作部53は、X線撮影装置Aの操作を行う操作室内に設置して、X線の被曝のおそれのない状態で操作可能としている。
【0022】
本発明のX線撮影用補助具では、後述するように5つのバルーンの膨張・収縮を制御することで胃部を圧迫するようにしており、これら5つのバルーンのうち、4つのバルーンの膨張をジョイスティック53aの操作で調整し、残り1つのバルーンの膨張をジョイスティック53aの隣に設けた第1ボタン53bの操作で調整している。第1スイッチ53bのジョイスティック53aとは反対側の隣には、第2ボタン53cを設け、この第2ボタン53cの操作によって各バルーン内の空気を吸引して、急速に各バルーンを萎ませることとしている。
【0023】
本実施形態の流体送給機構では、膨張体40のバルーンを空気で膨張させることとしているが、水などのX線に影響を与えない流体を用いてもよい。
【0024】
以下において、本発明の要部である圧迫手段の膨張体40について詳説する。
【0025】
本実施形態の膨張体40は、空気を流入させることによってそれぞれ膨張する5つのバルーンと、この5つのバルーンをそれぞれ所定位置に内包する包装体とで構成している。
【0026】
なお、本発明の先願発明に当たる特開2013−230328号公報に記載のX線撮影用補助具では、バルーンを取り囲む布製の拘束体をバルーンに装着することで、バルーンが所定の体積以上に膨張することを禁止していたが、その後の研究の結果、包装体のみでも同様の効果が得られることが確認できた。したがって、本実施形態では、後述するように、拘束体が装着されていないバルーンを用いている。
【0027】
図2(a)に示すように、本実施形態のバルーン41は、互いに同じ大きさの矩形状とした前側シート41aと後側シート41bで構成している。前側シート41aと後側シート41bは互いに重ね合わせるとともに、前側シート41aと後側シート41bとの間には送気管54の一端を挿し入れ、この状態で
図2(b)に示すように、重ね合わせた各シート41a,41bの外周縁を熱融着させて一体化することにより、
図3(c)に示すようにバルーン41としている。
【0028】
前側シート41a及び後側シート41bには、本実施形態では、ポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、できるだけ第1シート41a及び第2シート41b自体が伸縮しないようにしている。フィルムは、厚さ100μmである。
【0029】
バルーン41を内包する包装体は、帆布で形成している。包装体を帆布で形成したことにより、一般的な布地の伸びが少なく、拘束体を設けなくても十分なバルーン41の過膨張抑制効果が得られているものと思われる。
【0030】
図3及び
図4に示すように、包装体は、4つのバルーンを2行2列の格子状に配置させる下側包装体42と、この下側包装体42の上面側であって4つのバルーンの中心位置に中心を位置させてバルーンを配置させる上側包装体43とで構成している。
【0031】
下側包装体42は、
図3及び
図4に示すように、本実施形態では平面視でそれぞれ略正方形状とした上面シート42aと下面シート42bとを縫い合わせて形成している。本実施形態では、内包したバルーンが膨張した際の形状変化を考慮して、略正方形状とした上面シート42aと下面シート42bのそれぞれの角部分を丸めている。なお、上面シート42a及び下面シート42bは、平面視で略正方形状に限定するものではなく、適宜の形状としてもよい。
【0032】
上面シート42aと下面シート42bとは、互いを重ね合わせ、外側縁を縫い合わせることで外側縫合部42cを形成して一体化している。ただし、外側縁の全てを縫い合わせるのではなく、部分的には縫い合わせない未縫合部42dを所定位置にそれぞれ設けている。
【0033】
さらに、上面シート42aと下面シート42bとは、縦方向の略中心を横切るように直線状に縫い合わせて横断縫合部42eを形成し、また、横方向の略中心を横切るように直線状に縫い合わせて縦断縫合部42fを形成している。この横断縫合部42eと縦断縫合部42fとで、下側包装体42を2行2列の格子状の4つの領域に区分している。
【0034】
横断縫合部42eと縦断縫合部42fとで分割された下側包装体42の各領域にそれぞれ1つずつ未縫合部42dを設けている。この未縫合部42dはバルーン41の挿入口であり、折りたたむことで小さくしたバルーン41を未縫合部42dから下側包装体42の内部に挿入可能としている。したがって、未縫合部42dからは、バルーン41に連通連結した送気管54が引き出された状態となっている。なお、未縫合部42dはバルーン41の挿入後に送気管54が閉塞しない程度に縫い合わせてもよい。
【0035】
横断縫合部42eと縦断縫合部42fとで分割された下側包装体42の各領域の大きさは、それぞれほぼ同じ大きさとしており、本実施形態では、各領域に、萎んだ状態において100mm×100mmの大きさとなっているバルーン41をそれぞれ挿入している。
【0036】
上側包装体43は、
図3に示すように、平面視で略正方形状としたカバーシート43aを下側包装体42の上面シート42aに縫い合わせて形成している。カバーシート43aは、内包したバルーンが膨張した際の形状変化を考慮して、角部分を丸めている。
図3及び
図5中、符号43bは縫合部を示している。
【0037】
平面視で略正方形状としたカバーシート43aは、縦方向及び横方向をそれぞれ下側包装体42の縦方向及び横方向とほぼ並行とし、かつ、カバーシート43aの中心が、下側包装体42の横断縫合部42eと縦断縫合部42fとの交差部分とできるだけ重なるように配置している。
【0038】
このように、下側包装体42の横断縫合部42eと縦断縫合部42fとの交差部分に、カバーシート43aの中心を重ね合わせることで、下側包装体42に配設される4つのバルーン41の中心位置に、上側包装体43に配設されるバルーン41の中心を位置させている。
【0039】
なお、カバーシート43aを上面シート42aに縫い合わせる場合には、はじめに、上面シート42aと下面シート42bとを横断縫合部42eと縦断縫合部42fとで縫い合わせておいて、上面シート42aの所定位置にカバーシート43aを重ね合わせ、カバーシート43aの外周縁に沿ってカバーシート43aを上面シート42aに縫い合わせている。その後、上面シート42a及び下面シート42bの外側縁を縫い合わせている。
【0040】
カバーシート43aを上面シート42aに縫い合わせる際にも、部分的には縫い合わせない上部未縫合部43dを設けている。この上部未縫合部43dから、上側包装体43の内部に折りたたむことで小さくしたバルーン41を挿入可能としている。
【0041】
上側包装体43の内部に挿入するバルーン41は、下側包装体42の各領域に挿入するバルーン41よりも一回り大きくして大容積としている。具体的には、上側包装体43の内部に挿入するバルーン41は、萎んだ収縮状態において約140mm×140mmの大きさとしている。
【0042】
このように、上側包装体43の内部に挿入するバルーン41を、下側包装体42の内部に挿入するバルーン41よりも大容積としておくことにより、従来のバルーンを二段重ねした場合と異なり、下段側のバルーンが膨張した際における寝台の上面から鉛直上向き方向の変化量の低下分を補うことができる。
【0043】
さらに、上側包装体43の内部に挿入するバルーン41は、萎んだ収縮状態において、同様に萎んだ収縮状態となっている下側拘包装体42の各バルーン41の中心に、一部を上下に重ならせている。
【0044】
すなわち、下側拘包装体42のバルーン41が膨張した場合に、寝台の上面から鉛直上向き方向の変化量が最も大きい部分が、上側包装体43のバルーン41と上下に重ならせておくことにより、下側拘包装体42のバルーン41の膨張による胃部の圧迫方向の調整を行いやすくすることができるだけでなく、圧迫方向を可能な限り大きく変更できる。
【0045】
本発明のX線撮影用補助具を使用する際には、寝台上に腹臥した被験者の心窩部部分に線撮影用補助具を配置し、
図5に示すように、まず、上側包装体43のバルーン41を膨張させる。このとき、X線撮影用補助具を操作するオペレータは、撮影画像を確認しながら操作部53の第1スイッチ53bによってバルーン41の膨張の程度を操作する。
【0046】
膨張したX線撮影用補助具によって、
図6(a)に示すように、胃部を圧迫して胃壁のひだが見える状態となったところで、オペレータは上側包装体43のバルーン41の膨張を停止する。
【0047】
次に、オペレータは、操作部53のジョイスティック53aを操作することで、下側包装体42の4つのバルーン41のうちのいずれか1つまたは2つを膨張させる。
図7は、下側包装体42の4つのバルーン41のうちの1つが膨張した状態を示しており、下側包装体42のバルーン41が膨張することで、胃部を圧迫している上側包装体43を傾倒させることができ、この上側包装体43の傾倒状態を調整することによって、上側包装体43による胃部の圧迫方向を調整できる。
【0048】
したがって、
図6(b)及び
図6(c)に示すように、胃壁のひだが見える領域を変更可能とすることができ、被験者に体勢を変更してもらうことなく、オペレータによる操作でひだ像の撮影が可能となり、速やかな撮影が可能となる。
【0049】
ジョイスティック53aによる操作では、ジョイスティック53aの傾倒方向に対応させて、下側包装体42の4つのバルーン41のうちのいずれか1つまたは2つを膨張させることとしており、特に、膨張させるバルーン41以外では、バルーン41内の空気の吸引することでバルーン41を速やかに収縮させている。したがって、ジョイスティック53aによる操作に対する応答性を向上させることができる。