特許第6284090号(P6284090)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6284090冷却衣服用冷却装置と、それを装着した冷却衣服
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6284090
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】冷却衣服用冷却装置と、それを装着した冷却衣服
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/005 20060101AFI20180215BHJP
【FI】
   A41D13/005 103
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-186181(P2017-186181)
(22)【出願日】2017年9月27日
【審査請求日】2017年9月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000130732
【氏名又は名称】株式会社サンエス
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】橘高 薫
【審査官】 田中 尋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−145541(JP,A)
【文献】 特開2017−020140(JP,A)
【文献】 特表2017−508078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/00−13/12,20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却水供給部、冷却水分岐部が設けられた送水ホースと、
この送水ホースの前記冷却水供給部から前記冷却水分岐部側に冷却水を供給するポンプと、
前記送水ホースの冷却水分岐部に一端開口部が連結された複数の分水ホースと、を備え、
前記分水ホースの直径は、前記送水ホースの直径よりも小径とし、この分水ホースには、この分水ホースの一端開口部の開口面積よりも、開口面積の小さな複数の通水孔が、当該分水ホースの長手方向と直交する外周部分に形成された冷却衣服用冷却装置。
【請求項2】
複数の前記分水ホースの他端側は、分水ホースごとに分散配置可能に非拘束状態とした請求項1に記載の冷却衣服用冷却装置。
【請求項3】
前記冷却水供給部は、前記送水ホースの一端側、前記冷却水分岐部は、前記送水ホースの他端側に設けられた請求項1または2に記載の冷却衣服用冷却装置。
【請求項4】
前記分水ホースの他端側には、他端開口部を設けた請求項1から3のいずれか一つに記載の冷却衣服用冷却装置。
【請求項5】
前記分水ホースの一端側には、この分水ホースの一端側の前記通水孔の開口面積を、この分水ホースの他端側の前記通水孔の開口面積よりも小さくする開口面積抑制領域を設けた請求項1から4のいずれか一つに記載の冷却衣服用冷却装置。
【請求項6】
前記ポンプには、このポンプの運転制御を行う制御部を接続し、この制御部には、前記ポンプの運転制御指示を行う操作部を接続した請求項1から5のいずれか一つに記載の冷却衣服用冷却装置。
【請求項7】
前記分水ホースとして、中空糸膜を用いた請求項1から6のいずれか一つに記載の冷却衣服用冷却装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一つに記載の冷却衣服用冷却装置を装着した冷却衣服であって、前記冷却衣服用冷却装置の前記分水ホースを蛇行させて配置した冷却衣服。
【請求項9】
外気を服の内側に取り込む送風ファンを備えた送風機付き衣服を有し、この送風機付き衣服の内側に着用される請求項8に記載の冷却衣服。
【請求項10】
前記冷却水分岐部を、前記冷却衣服用冷却装置の前記送水ホースの前記冷却水供給部よりも上方に配置し、前記各分水ホースの他端側は、前記冷却水分岐部よりも下方に配置した請求項8または9に記載の冷却衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却衣服用冷却装置と、それを装着した冷却衣服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
着用者の発汗を前提とすることなく身体を冷却することができる冷却衣服が提案されている。具体的には、肩の上に貯水タンクを装着し、この貯水タンクに送水ホースの一端を接続し、次に、この送水ホースの中部を身体部分で蛇行させ、その後、この送水ホースの他端を前記貯水タンクに接続した構成となっている。また、送水ホースにはポンプが介在され、このポンプを駆動することで、前記貯水タンク内の冷却水を、貯水タンク、送水ホースの一端、中部、他端、貯水タンク内へと循環させる構成となっている(これに類似する先行文献としては、例えば下記特許文献1が存在する)。
【0003】
以上のような構成で、前記送水ホースには、一端側から他端側に向けて所定間隔で通水孔が形成されている。したがって、ポンプを駆動し、前記貯水タンク内の冷却水を、送水ホースの一端、中部、他端、貯水タンク内へと循環させている状態において、一部の冷却水が通水孔から流出し、服を濡らし、その部分に送風ファンからの風が通過すると、そこで気化熱が奪われ、その結果として身体冷却を行うことができるようになっている。つまり、送水ホースの通水孔から流出する冷却水を気化させ、この気化熱で、身体を冷却することができるので、着用者の発汗を前提とすることなく身体を冷却することができる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−20140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の構成では、貯水タンクに、その一端側と他端側を接続した送水ホースによる循環路(貯水タンク、送水ホースの一端、中部、他端、貯水タンク)を形成しているので、ポンプとしての負荷が大きく、電力消費が大きいものとなる。
【0006】
また、前記送水ホースの通水孔の開口面積を大きくすると、上記貯水タンク内の冷却水が、この送水ホースの通水孔から大量に流出し、その結果として、長時間の冷却運転が出来なくなるので、通水孔の開口面積を小さくすることになるのであるが、この様に小さな通水孔から循環水の一部を流出させるためにはポンプの圧力を高めなくてはならず、この点からもポンプの消費電力の大きさが問題となる。
【0007】
また、ポンプの圧力が高く、通水孔の開口面積が小さいと、通水孔から冷却水が、送水ホース外に勢いよく飛び出すことにもなり、好ましい冷却動作が行えなくなる。
【0008】
そこで、本発明は、ポンプの電力消費を抑制することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、この目的を達成するために本発明の冷却衣服用冷却装置は、冷却水供給部、冷却水分岐部が設けられた送水ホースと、この送水ホースの前記冷却水供給部から冷却水分岐部側に冷却水を供給するポンプと、前記送水ホースの冷却水分岐部に、その一端開口部が連結された複数の分水ホースとを備え、前記分水ホースの直径は、前記送水ホースの直径よりも小径とし、この分水ホースには、この分水ホースの一端開口部の開口面積よりも、開口面積の小さな複数の通水孔が、当該分水ホースの長手方向と直交する外周部分に形成された構成としたものである。
【0010】
本発明の冷却衣服用冷却装置は、複数の前記分水ホースの他端側は、分水ホースごとに分散配置可能に非拘束状態とした構成である。
【0011】
本発明の冷却衣服用冷却装置によれば、前記冷却水供給部は、前記送水ホースの一端側、前記冷却水分岐部は、前記送水ホースの他端側に設けられている。
【0012】
本発明の冷却衣服用冷却装置によれば、前記分水ホースの他端側には、他端開口部が設けられている。
【0013】
本発明の冷却衣服用冷却装置によれば、前記分水ホースの一端側には、この分水ホースの一端側の前記通水孔の開口面積を、この分水ホースの他端側の前記通水孔の開口面積よりも小さくする開口面積抑制領域が設けられている。
【0014】
本発明の冷却衣服用冷却装置によれば、前記ポンプには、このポンプの運転制御を行う制御部を接続し、この制御部には、前記ポンプの運転制御指示を行う操作部を接続してある。
【0015】
本発明の冷却衣服用冷却装置によれば、前記分水ホースとして、中空糸膜が用いられている。
【0016】
本発明に係る冷却衣服は、前記冷却衣服用冷却装置が装着され、前記分水ホースを蛇行させて配置してある。
【0017】
本発明に係る冷却衣服は、外気を服の内側に取り込む送風ファンを備えた送風機付き衣服を有し、この送風機付き衣服の内側に着用される。
【0018】
本発明に係る冷却衣服は、前記冷却水分岐部を、前記冷却衣服用冷却装置の前記送水ホースの前記冷却水供給部よりも上方に配置し、前記各分水ホースの他端側は、前記冷却水分岐部よりも下方に配置してある。
【発明の効果】
【0019】
以上の本発明によれば、ポンプとしては、冷却水を、送水ホースの冷却水供給部から冷却水分岐部まで単に送るだけでよいので、冷却水を循環させる必要が無く、電力消費を低減することができる。
【0020】
また、送水ホースの冷却水分岐部まで送付された冷却水は、この冷却水分岐部に連結された複数の分水ホースへと流れ込み、次に、各分水ホースの複数の通水孔から流出することになるのであるが、各分水ホースの他端側は、分水ホースごとに分散配置可能に非拘束状態としているので、分水ホースを分散させて配置すれば、身体の広いエリアに冷却水を適量供給することができ、その結果として、冷却効果の高いものとなる。
【0021】
つまり、本発明では、冷却水を、送水ホースの冷却水供給部から冷却水分岐部までポンプで送れば、その後は、大気に解放状態となっている分水ホースの通水孔から、冷却水自身の重力や、小さな通水孔が形成する毛細管現象も作用し、分水ホース外へと流出することになるので、ポンプとしての電力消費を抑制することが出来るのである。
【0022】
さらに、この分水ホースの直径は、前記送水ホースの直径よりも小径とし、この分水ホースには、その長手方向に直交する外周部分に、この分水ホースの一端開口部の開口面積よりも、開口面積の小さな、複数の通水孔が形成された構成としたものであるので、分水ホースから流出する冷却水は、広い範囲に、少量で、しかも、ジワリと滲み出る状態となるので、身体の一部での大きな水濡れ感が無く、快適な冷却が行えるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る冷却衣服の一部破断背面図
図2】同冷却衣服を示す正面図
図3】同冷却衣服を示す背面図
図4】同冷却衣服に装着された分水ホースの正面図
図5】同冷却衣服に装着された分水ホースの側面図
図6】同冷却衣服に装着された分水ホースの一部拡大正面図
図7】同冷却衣服に装着された送水ホースの冷却水分岐部の拡大断面図
図8】同冷却衣服に装着された送水ホースの冷却水分岐部の製造状態を示す拡大断面図
図9】同冷却衣服に装着された分水ホースを示す斜視図
図10】同冷却衣服に装着された分水ホースを示す斜視図
図11】同冷却衣服のポンプの駆動回路図
図12】同冷却衣服のポンプの駆動状態を示す波形図
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施の形態1)
以下本発明の一実施形態を、図面を用いて説明する。
【0025】
本発明による冷却衣服3の表面側には、図2図3に示すように、複数の分水ホース8が蛇行状態で配置されている。また、冷却衣服3の側部の表面側には、図3のように、送水ホース9が配置されている。
【0026】
この送水ホース9は合成樹脂製、またはゴム製のものであり、その一端開口部(冷却衣服3の下方側)に設定された冷却水供給部10には、ジョイント11を介してポンプ12が連結され、さらにポンプ12には蓋13を貫通した吸入口14が連結されている。つまり、前記吸入口14は、給水容器15内に差し込まれ、その状態で、蓋13が給水容器15の開口部16に着脱自在に装着される構成となっている。
【0027】
この送水ホース9の他端は、この図3に示すように冷却衣服3の側部の表面側を上方へと引き上げられ、次に左右への分岐部17を介して左右に分岐配置され、左右それぞれの端部開口部が冷却水分岐部18となっている。
【0028】
そして、この冷却水分岐部18には図7に示す管状結合具19が挿入、結合されるようになっているが、この管状結合具19には図8のように、事前に前記複数の分水ホース8の上端開口部が、集合した状態で挿入し接着固定され、次に、図7のように管状結合具19の送水ホース9内側端部で、分水ホース8の上端開口部が、切断された状態となっている。この結果、複数の分水ホース8の上端開口部は、それぞれ、送水ホース9の冷却水分岐部18において開口状態となり、送水ホース9の冷却水分岐部18からの冷却水が、複数の分水ホース8の上端開口部から流れ込むことになる。
【0029】
これらの説明でも理解されるように、分水ホース8の直径は、前記送水ホース9の直径よりも小径とし、この分水ホース8には、その長手方向に直交する外周部分に、図4図6に示すように、この分水ホース8の上端開口部(一端開口部)の開口面積よりも、開口面積の小さな、複数の通水孔20が形成されている。具体的には、前記分水ホース8は、中空糸膜といわれる外径が0.5mmのものを用いており、その外周面には、開口径が0.4μm以下の無数の通水孔20が設けられている。
【0030】
さらに詳しく説明すると、前記分水ホース8の外周部に設けた各通水孔20は、図6に示すように、この分水ホース8の長手方向と交差する外周方向に隣接して形成されている。したがって、通水孔20は、分水ホース8における任意の断面において、複数存在する。
【0031】
このように、一般的には液体のフィルターなどに用いられていた中空糸膜を分水ホース8として活用したことが本実施形態の特徴の一つである。以上のとおり、冷却衣服用冷却装置が構成されている。この冷却衣服用冷却装置は、冷却衣服3に取り付けられ、または、既存の衣服に取り付けられる。分水ホース8同士は、非拘束状態であるため、衣服に応じて、分水ホース8を任意の位置に分散して配置することが可能である。
【0032】
このように細い中空糸膜を分水ホース8として用い、各分水ホース8の他端は、分水ホース8ごとに分散配置可能に非拘束状態としているので、図2図3のように冷却衣服3の表裏面の表面側に、図2図3に示すように、各分水ホース8を所定間隔離して蛇行状態で配置することが出来る。そして、このように細い分水ホース8であれば、図2図3に示すように、各分水ホース8を所定間隔離して蛇行状態で配置した状態で、図9に示すように冷却衣服3にミシン糸21で簡単に固定することが出来る。蛇行させることにより、伸縮性の良い生地を使用した場合でも、中空糸膜が伸縮に追従することができる。
【0033】
なお、各分水ホース8の他端開口部(下端開口部)は、図9に示すようにそのまま開口状態としていても良いが、この開口部からの冷却水の流出量が多い場合には、図10に示すように折り曲げたり、開口部に接着剤(図示せず)を塗布したりすることで、閉口しても良い。
【0034】
以上のように本実施形態では、送水ホース9の一端開口部に冷却水供給部10を設け、これを冷却衣服3の下方に配置し、次に、送水ホース9の他端側に設けられた冷却水分岐部18は冷却衣服3の上方に配置している。また、冷却水分岐部18は冷却衣服3の上方の左右の肩近傍に配置され、ここに管状結合具19が挿入、固定され、これにより複数の分水ホース8が連結されている。
【0035】
前記ポンプ12は図11に示すような制御回路に接続されている。すなわち、正転用のスイッチ22(操作部の一例)を閉じれば、制御部23によってスイッチング素子24、25を介してポンプ12が正転し、逆に、逆転用のスイッチ26(操作部の一例)を閉じれば、制御部23によってスイッチング素子27、28を介してポンプ12が逆転するようになっている。また、正転、逆転の強さは、ボリューム29(操作部の一例)によって調整される。
【0036】
つまり、ボリューム29によって調整すれば、図12(a)(b)(c)のようにポンプ12への通電量を調整することができるので、それに合わせて正転、逆転の強さを調整することが出来る。
【0037】
なお、正転、逆転の強さは、図12(c)(b)(a)の順番となっており、図12(c)が正転、逆転を最も強くすることが出来る。
【0038】
また、本実施形態では、ポンプ12の間欠駆動でも、十分に分水ホース8の通水孔20から冷却水がジワリと滲み出る状態となるので、ポンプ12の電力消費を低減することができる。
【0039】
また、冷却衣服3の素材は身体にぴったりと密着するものが好ましく、伸縮性のニット生地が適している。
【0040】
以上の構成において動作説明を行う。
【0041】
先ず、使用者は、蓋13を貫通した吸入口14を、給水容器15内に差し込み、その状態で、蓋13を給水容器15の開口部16に装着し、蓋をする。そして、この状態で、正転用のスイッチ22を閉じ、制御部23によってスイッチング素子24、25を介してポンプ12を正転させる。すると、給水容器15内の冷却水がポンプ12によって、送水ホース9の一端開口部の冷却水供給部10、次に、送水ホース9の他端側に設けられた冷却水分岐部18、その後、複数の分水ホース8へと流入することになる。
【0042】
このとき、冷却水分岐部18は冷却衣服3の上方の左右の肩近傍に配置され、ここに管状結合具19が挿入、固定され、これにより複数の分水ホース8の上端が連結され、また、分水ホース8の下端は冷却衣服3の下方へと配置されている。
【0043】
このため、冷却水は分水ホース8の下方へと流れながら、途中の通水孔20からジワリと滲み出る状態となり、この滲み出した冷却水が冷却衣服3に染み込む。このため、汗をかいてはいないが、冷却衣服3により気化熱が奪われることで、使用者の身体を効果的に冷却できる。
【0044】
このように、本実施形態によれば、ポンプ12としては、冷却水を、送水ホース9の冷却水供給部11から冷却水分岐部18まで単に送るだけで良いので、電力消費を低減することができる。
【0045】
また、送水ホース9の冷却水分岐部18まで送付された冷却水は、この冷却水分岐部18に連結された複数の分水ホース8へと流れ込み、次に、各分水ホース8の複数の通水孔20から流出することになるのであるが、各分水ホース8の他端側は、分水ホース8ごとに分散配置可能に非拘束状態としているので、分水ホース8を分散させて配置すれば、身体の広いエリアに冷却水を適量供給することができ、その結果として、冷却効果の高いものとなる。
【0046】
つまり、本実施形態では、冷却水を、送水ホース9の冷却水供給部11から冷却水分岐部18までポンプ12で送れば、その後は、大気に解放状態となっている分水ホース8の通水孔20から冷却水自身の重力や、小さな通水孔20が形成する毛細管現象も作用し、分水ホース8外へと流出することになるので、ポンプ12としての電力消費を抑制することが出来るのである。一例として、本実施形態では、単3電池を2本直列にした3V電源使用でも、8時間以上の使用も可能となる。
【0047】
さらに、各分水ホース8の直径は、前記送水ホース9の直径よりも小径とし、この分水ホース8には、その長手方向に直交する外周部分に、この分水ホース8の一端開口部の開口面積よりも、開口面積の小さな、複数の通水孔20が形成された構成としたものであるので、分水ホース8から流出する冷却水は、広い範囲に、少量で、しかも、ジワリと滲み出る状態となるので、身体の一部での大きな水濡れ感が無く、快適な冷却が行えるものとなる。
【0048】
なお、分水ホース8から流出する冷却水の量は、小さな通水孔20から少量が滲み出る状態ではあるが、それでも冷却水分岐部18側の方が、下端開口部側よりも多く流出することになり、冷却衣服3の肩部分がべとべとと濡れることになる場合には、各分水ホース8の全長の1/3〜2/3を開口面積抑制領域として、塗装または接着剤により分水部17に近い部分は、例えば開口部の90%を塞ぎ、先端に行くにしたがって90%〜0%にグラデーション状に塞ぐ面積を縮小させて変化させ、流出する冷却水の量を均一化することができる。
【0049】
また、図7に示されているとおり、この分水ホース8の冷却水分岐部18側の接着固定領域30においては、分水ホース8は上述のごとく、細い中空糸膜を用いるので強度が弱く、しかも、冷却水分岐部18への結合部近傍では蛇行によるストレス軽減構成も採用しにくいので、この部分の強度が問題となる可能性もあるので、ここを接着剤によって分水ホース8を冷却衣服3に固定することで、この部分の強度も高めている。
【0050】
なお、使用環境にもよるが、本実施形態では、1時間で500ccの冷却水を使用する状態となっているので、給水容器15としては、市販の飲料水容器をそのまま、蓋13に結合するようにしている。そして、この冷却水がなくなれば、給水容器15内に水道水を入れることでも簡単に継続使用が行えることになる。
【0051】
なお、逆転用のスイッチ26は、分水ホース8内に、前回の冷却水が残り、また、空気も存在する状態となり、いわゆる空気かみ状態となった場合に、ポンプ12を逆転させ、分水ホース8内の空気かみ状態を解消するために用意している。
【0052】
(実施の形態2)
本実施形態の特徴は、送風機付き衣服2と、この送風機付き衣服2内に着用される冷却衣服3によって構成されていることである。
【0053】
図1において、送風機付き衣服2は、送風機付き衣服2内に着用される冷却衣服3をその内側に備えている。
【0054】
前記送風機付き衣服2は、通気性を抑えた材料で形成され、その背面側下方には、送風機付き衣服2外の空気を送風機付き衣服2内側に取り込む送風ファン4が装着されている。また、送風機付き衣服2の下方には、身体との隙間を抑制する締付部5が形成されている。つまり、送風ファン4を駆動すれば、送風機付き衣服2外の空気が、この送風ファン4部分から送風機付き衣服2内に取り込まれ、次に、冷却衣服3の表面に沿って上昇し、その後は、送風機付き衣服2の襟首開口部6や袖開口部7から送風機付き衣服2外へと流出する。
【0055】
このような送風機付き衣服2外の空気を送風ファン4によって送風機付き衣服2内に取り込み、身体を冷却するものは、既によく知られており、冷却衣服3の構成も、実施の形態1においてすでに説明しているので、説明の煩雑化を避けるために、これ以上の説明は省略する。
【0056】
以上の構成において動作説明を行う。
【0057】
先ず、使用者は、図1のように、内側に冷却衣服3、外側に送風機付き衣服2を装着する。次に、蓋13を貫通した吸入口14を、給水容器15内に差し込み、その状態で、蓋13を給水容器15の開口部16に装着し、蓋をする。その後、送風ファン4を駆動する。
【0058】
すると、送風機付き衣服2外の空気が、この送風ファン4部分から送風機付き衣服2内に取り込まれ、次に、冷却衣服3の表面に沿って上昇し、その後は、送風機付き衣服2の襟首開口部6や袖開口部7から送風機付き衣服2外へと流出する。冷却水は分水ホース8の下方へと流れながら、途中の通水孔20からジワリと滲み出る状態となり、この滲み出した冷却水が冷却衣服3に染み込み、冷却衣服3の表面を上方に流れる上記送風ファン4からの送風によって気化することになる。
【0059】
(実施の形態3)
本発明の冷却衣服3を、衣服の保温性測定などに使用するサーマルマネキンに使用することにより、人体の発汗を模擬した発汗サーマルマネキンとして活用することができる。つまり、衣服の保温性測定などに使用するサーマルマネキンに、冷却衣服3を装着すれば、人体の発汗を模擬した発汗サーマルマネキンとして活用することができる。
【0060】
また、上記実施形態では、胴体部分のみへの装着を例に説明したが、同じ原理で手足や頭部、あるいは下半身にも活用することができる。すなわち、全身の発汗を模擬する冷却対策を講じることができる。
【0061】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。本発明は、高温季において、野外活動や野外業務、あるいは高温環境下での屋内業務などにおいて有効な冷却衣服となる。
【符号の説明】
【0062】
2 送風機付き衣服
3 冷却衣服
4 送風ファン
5 締付部
6 襟首開口部
7 袖開口部
8 分水ホース
9 送水ホース
10 冷却水供給部
11 ジョイント
12 ポンプ
13 蓋
14 吸入口
15 給水容器
16 開口部
17 分岐部
18 冷却水分岐部
19 管状結合具
20 通水孔
21 ミシン糸
22 スイッチ
23 制御部
24、25 スイッチング素子
26 スイッチ
27、28 スイッチング素子
29 ボリューム
30 接着固定領域
【要約】
【課題】本発明は、冷却衣服に関するもので、ポンプの電力消費を抑制することを目的とする。
【解決手段】冷却水を、送水ホース9の冷却水供給部11から冷却水分岐部18までポンプ12で送れば、その後は、大気に解放状態となっている分水ホース8の通水孔から冷却水自身の重力や、小さな通水孔が形成する毛細管現象も作用し、分水ホース8外へと冷却水が流出することになるので、ポンプ12としての電力消費を抑制することが出来る。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12