特許第6284106号(P6284106)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6284106
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】研磨ガン装置
(51)【国際特許分類】
   B24C 5/02 20060101AFI20180215BHJP
   B24C 1/08 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   B24C5/02 A
   B24C1/08
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-177760(P2016-177760)
(22)【出願日】2016年9月12日
【審査請求日】2017年6月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000206934
【氏名又は名称】株式会社マルテー大塚
(73)【特許権者】
【識別番号】598009795
【氏名又は名称】株式会社千葉技工
(74)【代理人】
【識別番号】100076163
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋 宣之
(72)【発明者】
【氏名】武田 貞幸
(72)【発明者】
【氏名】青柳 真輔
【審査官】 須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】 実開平07−000649(JP,U)
【文献】 特開2014−136271(JP,A)
【文献】 実開平01−155165(JP,U)
【文献】 米国特許第05667430(US,A)
【文献】 特表平11−514938(JP,A)
【文献】 米国特許第02846822(US,A)
【文献】 実開平02−019465(JP,U)
【文献】 特開平11−207624(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3031304(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24C5/02;5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラスト材を噴出するノズルと、
このノズルに連続するディフューザーと、
このディフューザーの外側に設けたガン本体と、
このガン本体とディフューザーとの間に設けられた吸引用通路と、
上記ノズルから噴出された上記ブラスト材が導かれる筒状ブラシと
が備えられた研磨ガン装置であって、
上記ガン本体と上記筒状ブラシとが筒体を介して着脱可能に設けられ、
この筒体は、上記ガン本体と連結するガン本体連結部と、
上記筒状ブラシと連結するブラシ連結部と、
このガン本体連結部と上記ブラシ連結部との間に設けられた可撓性の可撓部とからなり、
上記可撓部には複数の環状凸部が形成されるとともに、全体的に蛇腹状にされ、
上記環状凸部間にリング状のスペーサが着脱自在に装着されており、
上記可撓部を撓ませながら上記ガン本体とともに、ノズル及びディフューザーの向きを全方向に向けられる構成にした研磨ガン装置。
【請求項2】
上記ディフューザーの開口側の内面に、周方向に連続する凸部が、ディフューザーの軸線方向に複数段設けられた請求項1に記載の研磨ガン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、既設の建造物に締結されたボルトやナット、リベット等の錆や塗膜等を研磨する研磨ガン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の研磨ガン装置として、図3,4に示したものが従来から知られている。
従来の研磨ガン装置は、図3に示すように、ブラスト材が加圧タンク1からブラストホース2を経て圧送されるとともに、このブラストホース2の先端に設けられたノズル3から上記ブラスト材が噴出され、建造物4に締結されたボルト等を研磨する。このように、上記ノズル3から噴出されたブラスト材が上記ボルト等に衝突するときの衝撃力で錆や塗膜等を削り取る。
【0003】
上記ボルト等や建造物4に当たって勢いを失ったブラスト材は、粉塵や研削された塗膜片等とともにバキュームホース5で吸引されて回収タンク6に送られる。この回収タンク6に送られたブラスト材は、粉塵や塗膜片等と分別され、上記加圧タンク1に回収され、上記粉塵や塗膜片等はダストコレクター7に捕集される。
【0004】
また、ブラスト材を噴出させる上記ノズル3は、図4に示すように、耐摩耗性の合成ゴムからなるガン本体8の一方の筒部8aにぴったりとはめられている。
このガン本体8は、上記一方の筒部8aとは反対側に他方の筒部8bを設けるとともに、この筒部8bの内径を、上記一方の筒部8aの内径よりも大きくしている。そして、上記ガン本体8は、一方の筒部8aと他方の筒部8bとのほぼ境界部分に吸引筒部8cを分岐させ、この吸引筒部8cを図3に示すようにバキュームホース5に接続している。
上記のようにしたガン本体8は、その剛性を維持するために、撓んだりしないようにしている。
【0005】
そして、図4に示すガン本体8には、金属製のディフューザー9が組み込まれる。このディフューザー9は、ガン本体8の一方の筒部8aにぴったりはまる外径を有する小径部9aと、この小径部9aよりも外径を大きくした大径部9bとを備えている。
また、ディフューザー9の大径部9bとガン本体8の他方の筒部8bとの間に隙間が形成され、この隙間を吸引用通路10としている。
上記ディフューザー9とノズル3との軸中心線は互いに一致させるとともに、それらの軸中心線をガン本体の軸中心線とも一致させている。つまり、ガン本体8の軸中心線に沿って、ノズル3及びディフューザー9のそれぞれが一直線上に組み込まれている。
【0006】
さらに、ガン本体8の他方の筒部8b側には、上記ノズル3やディフューザー9の軸中心と中心を一致させた筒状ブラシ11が設けられている。この筒状ブラシ11は、ブラスト材や、粉塵あるいは塗膜片等の飛散防止用として機能するとともに、吸引筒部8cからブラスト材を吸引するときのエア吸入口としての機能を果たしている。上記筒状ブラシ11の毛は、上記ブラスト材や塗膜片等を跳ね返すとともに、負圧で毛が内側に引き込まれない構造を維持するため、高強度で硬いものが使用される。
【0007】
そして、この筒状ブラシ11の先端開口は、図4のようにノズル3の軸線に直交する面を備えるとともに、使用時には建造物4に隙間なく圧接される。
したがって、筒状ブラシ11を建造物4の表面に圧接させれば、ノズル3、ディフューザー9及び筒状ブラシ11の軸中心線が建造物4の表面に対してほぼ直角になる。
【0008】
この研磨ガン装置は、主に橋梁等の既設の建造物4に用いられているボルト13の頭部あるいはナット12等を研磨する目的で用いられる。これらのボルト等は、少しでも磨き残しがあると、たとえその上から防錆用の塗料を塗っても、その磨き残した錆の部分から腐食が進んでしまう。そのため、上記ボルト等の全面は、もれなく研磨されなければならない。
【0009】
上記ボルト等の全面をもれなく研磨するため、上記ディフューザー9は、上記大径部9bの開口側の内周面に、周方向に連続する凸部9cを軸方向に複数段設けているが、この凸部9cは次のようにして機能する。
ノズル3から噴出されたブラスト材は、ノズル3及びディフューザー9の軸線に沿って噴出されるとともに、ナット12やボルト13の表面に衝突する。
【0010】
このようにしてナット12等の表面に衝突したブラスト材は、その入射方向である上記軸線方向に跳ね返されたり、周囲に飛散したりするもの、あるいは建造物4の表面に当たって跳ね返されて周囲に飛散するものがある。
特に、上記のように周囲に飛散したブラスト材が凸部9cに当たれば、それがボルト13等の方向に再び跳ね返される。このように凸部9cで再び跳ね返されたブラスト材が、ボルト13等の側面に当たり、その側面を研磨することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2014−136271号公報
【特許文献2】特開平11−207624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記のようにした従来の研磨ガン装置では、ノズル3から噴出されたブラスト材が、ノズル3やディフューザー9の軸中心線に沿って噴出され、ボルト13等や建造物4の表面に直角に当たるので、ブラスト材のほとんどがその入射方向に跳ね返されてしまい、凸部9cに当たるものが相対的に少なくなる。
このように凸部9cに当たるブラスト材が少なくなれば、その分、ボルト13等の側面に当たるブラスト材の量も少なくなってしまう。
ボルト13等の側面に当たるブラスト材の量が少なくなるので、その分、上記側面を研磨するために長時間を要するという問題があった。
【0013】
また、ブラスト材のうち、ナット12やボルト13、建造物4の表面に当たって、もっとも勢いよく跳ね返されるのは、上記軸中心線に沿った方向に跳ね返されるもので、その周囲に飛散したブラスト材の勢いは大きく減衰されたものとなる。
そのために、凸部9cに跳ね返されて再びボルト13等の側面に当たるブラスト材の勢いも弱くなる。
【0014】
上記のように、ボルト13等の側面に当たるブラスト材の量も少なく、しかもその勢いも弱いので、研磨作業に一層時間がかかるという問題があった。
特に、大きな建造物4、例えば橋梁などの場合には、何千〜何万本の上記ボルト等を研磨しなければならないので、一箇所の研磨時間が長くなると、工期にも影響を与えてしまう。
【0015】
一方、上記凸部9cを無視して、例えば、ディフューザー9の向きを傾けさせ、ノズル3から噴出されるブラスト材を、ボルト13等の側面に直接当てることも考えられる。
しかし、上記ディフューザー9の向きを傾ければ、ガン本体8及び筒状ブラシ11も一体的に傾くことになる。そして、筒状ブラシ11は上記したように硬い毛で構成されているので、筒状ブラシ11がノズル3とともに傾くようにすると、筒状ブラシ11は筒形状を維持したまま傾くことになる。
【0016】
このように筒状ブラシ11が筒形状を維持したまま傾ければ、傾けた方向とは反対側の筒状ブラシ11が建造物4から離れてしまう。そして、筒状ブラシ11が建造物4から離れた隙間からブラスト材や塗膜片等が飛びだしてしまうことになる。
【0017】
ブラスト材や塗膜片等が上記隙間から飛び出してしまうと、それが周囲に飛散してしまう。特に、橋梁などで使用されていた古い塗料の中には、長寿命化のために鉛やPCB(ポリ塩化ビフェニル)などの有害物質が含まれていることが多いので、それらを含んだ塗膜片等が周辺に飛散すると、環境汚染や作業者などの健康被害等を引き起こす原因になってしまう。
したがって、ディフューザー9の向きを傾かせて、ブラスト材を上記ボルト13等の側面に直接当てようとしても、公害などを発生させてしまうので、ディフューザー9の向きを傾かせて研磨作業をすることはほとんど不可能であった。
【0018】
この発明の目的は、既設の建造物に締結されたボルト等の全面を研磨しながら、その研磨時間を短縮させるとともに、環境にも配慮した研磨ガン装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この発明は、ブラスト材を噴出するノズルと、このノズルに連続するディフューザーと、このディフューザーの外側に設けたガン本体とを備えている。そして、このガン本体とディフューザーとの間には吸引用通路が設けられ、上記ノズルから噴出された上記ブラスト材が導かれる筒状ブラシとが備えられた研磨ガン装置を前提としている。
【0020】
第1の発明は、上記ガン本体と上記筒状ブラシとが筒体を介して着脱可能に設けられている。この筒体は、上記ガン本体と連結するガン本体連結部と、上記筒状ブラシと連結するブラシ連結部と、このガン本体連結部と上記ブラシ連結部との間に設けられた可撓性の可撓部とで構成されている。
【0021】
また、上記可撓部には複数の環状凸部が形成されるとともに、全体的に蛇腹状にされている。さらに、上記可撓部の外側の上記環状凸部間にリング状のスペーサが着脱自在に装着されている。そして、上記可撓部を撓ませながら上記ガン本体とともにディフューザーの向きを全方向に向けられた点に特徴を有する。
【0022】
なお、環状凸部の形態には、周方向に一条の凸部が切れ目なく連続するとともに、それら凸部を軸方向に複数間隔を保って連続する形態、あるいは一条の凸部が間隔を保って螺旋状に連続する形態のいずれも含まれる。
【0023】
このようにノズル及びディフューザーの向きを全方向に向けられるので、例えば、ブラスト材を、入射角を保ってボルト等や建造物の表面等に吹き付けることができる。しかも、上記入射角を保って、ノズルやディフューザーに首ふり運動をさせることができる。
上記のようにボルト等や建造物の表面等に対して、ブラスト材を、入射角を保って吹き付けられるので、衝突したブラスト材は、その入射角に対応した反射角を保って跳ね返される。
【0024】
このように入射角に対応した反射角を保ってブラスト材が跳ね返されるので、このブラスト材の多くを、十分な勢いを保ちながらディフューザーの内周面に直接向かわせることができる。
また、ノズル及びディフューザーの軸中心線をボルトやナット、建造物の表面に対して直角に保って、ブラスト材を噴出させることもできる。
【0025】
さらに、筒体に可撓部を設けたので、筒状ブラシと建造物の表面との間に隙間を作ることなく、ノズルやディフューザーの軸中心線を、簡単に全方向に向けることができる。つまり、ノズルやディフューザーに首ふり運動をさせても、筒状ブラシと建造物の表面との間に隙間ができたりしない。
【0026】
第2の発明は、上記ディフューザーの開口側の内周面に、周方向に連続する凸部が、ディフューザーの軸線方向に複数段設けられた点に特徴を有する。
上記のように入射角を保って吹き付けられたブラスト材は、ボルトやナット、建造物の表面等で跳ね返されるとともに、ディフューザーの凸部に勢いよく衝突する。
このようにして凸部に衝突したブラスト材は、再び跳ね返されてボルト等の側面等に衝突して、その側面を研磨することになる。
【発明の効果】
【0027】
第1の発明によれば、ボルト等の側面にも十分な量のブラスト材を勢いよく衝突させることができるので、その研磨作業の時間を短縮することができる。
また、ノズルやディフューザーに首ふり運動をさせても、筒状ブラシと建造物の表面との間に隙間ができたりしないので、従来のようにブラスト材や塗膜片が周囲に飛散することもなくなる。
【0028】
また、上記可撓部には複数の環状凸部が形成されるとともに、全体的に蛇腹状にされているので、ノズルやディフューザーに、簡単に首ふり運動をさせることができる。
さらに、環状凸部は、リブの役割を担うので、上記可撓部の周方向の形状が維持される。したがって、仮に上記可撓部に強い吸引力が働いても吸引用通路が確保されるので、ブラスト材や塗膜片等が円滑に回収される。
【0029】
特に、この研磨ガン装置の吸引用通路には、吸引時に負圧が生じる。上記可撓部は、可撓性がある材質からなるため、上記負圧に負けて上記可撓部の形状が維持できない場合が生じる。このように上記可撓部の形状が維持できないと、上記吸引用通路が閉ざされ、ブラスト材や塗膜片等が適切に回収できなくなる。しかし、この第1の発明は、上記可撓部の周方向の形状が維持されるので、上記吸引用通路が確保される。
【0030】
そして、このスペーサは、上記可撓部の軸方向の収縮を制限させ、上記ボルト等とディフューザーとの間の適切な距離を保てるので、ボルト等とディフューザーが干渉しあってディフューザーの首ふり運動を妨げることはない。
【0031】
第2の発明によれば、ボルトやナット、建造物の表面等に跳ね返されたブラスト材が、凸部に当たって再び跳ね返されて、ボルト等の側面を研磨することができる。特に、ブラスト材が当たる凸部の面の角度を調整することによって、凸部に当たって反射されるブラスト材の反射角を制御でき、ボルト等の側面に対して、ブラスト材を効率よく吹き付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】この発明の断面図である。
図2】この発明の可撓部を撓ませたときの断面図である。
図3】従来の研磨ガン装置のシステム図である。
図4】従来の研磨ガン装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1に示した実施形態は、ガン本体8と筒状ブラシ16との間に可撓性の筒体15を設けた点が、図4に示した従来の構成と大きく相違する点である。その他の構成は従来と同じなので、従来と同一の構成要素については、従来と同一符号を用いて説明する。
この実施形態においても、ノズル3をブラストホース2に接続して、加圧タンク1のブラスト材をノズル3に導くようにしている。
【0034】
また、ガン本体8の吸引筒部8cをバキュームホース5に接続し、この吸引筒部8cから吸い込んだブラスト材、粉塵あるいは塗膜片等を回収タンク6に導いている。この回収タンク6では、ブラスト材と、粉塵あるいは塗膜片等とを分別し、ブラスト材を加圧タンク1に再生させる一方、粉塵あるいは塗膜片等をダストコレクター7で捕集するようにしている。
【0035】
そして、上記ノズル3は、耐摩耗性の合成ゴムからなるガン本体8の一方の筒部8aにぴったりとはめている。この上記ガン本体8は、上記一方の筒部8aとは反対側に他方の筒部8bを設けるとともに、この他方の筒部8bの内径を、上記一方の筒部8aの内径よりも大きくしている。そして、一方の筒部8aと他方の筒部8bとのほぼ境界部分に吸引筒部8cを形成し、この吸引筒部8cを上記バキュームホース5に接続している。これらの構成は従来と同じである。
【0036】
また、ノズル3から噴出したブラスト材を広角に噴出させるディフューザー14は、ガン本体8の一方の筒部8aにぴったりはまる外径を有する小径部14aと、この小径部14aよりも外径を大きくした大径部14bとを備えている。
さらに、上記小径部14aをガン本体8の一方の筒部8aに挿入して、当該筒部8aの先端をノズル3につき合わせている。
【0037】
また、ディフューザー14の大径部14bは、上記ガン本体8の他方の筒部8b側における開口部8dから突出して設けられる。そして、ディフューザー14とガン本体8の他方の筒部8bとの間には、隙間が形成され、この隙間を吸引用通路10としている。
【0038】
上記のようにしたディフューザー14は、その大径部14bの開口側の内周面に、周方向に連続する凸部14cを、ディフューザー14の軸線方向すなわちノズル3の噴出方向に複数段設けている。
そして、この凸部14cは、周方向に切れ目なく連続する一条の凸部14cを軸線方向に複数段設けるとともに、各凸部14cは互いに平行にしている。
なお、このディフューザー14は、金属製にすることによって反発性を高め、ディフューザー14の内周面に衝突したブラスト材の流れの勢いが吸収されないようにしている。
【0039】
また、上記ガン本体8と後述する筒状ブラシ16との間には、可撓性の筒体15が着脱可能に設けられている。この筒体15は、上記ガン本体8と連結するガン本体連結部15aと、上記筒状ブラシ16と連結するブラシ連結部15bと、このガン本体連結部15aと上記ブラシ連結部15bとの間に設けられた可撓部15cとから構成される。
そして、上記筒体15のガン本体連結部15aは、上記ガン本体8の他方の筒部8b側における開口部8dの外側にはめ込まれ、その上からリング状の締付け金具17によって締付けられている。
【0040】
そして、上記ガン本体8から突出して設けられたディフューザー14は、筒体15の内部に挿入され、このディフューザー14の周囲と筒体15の内周との間には所定の間隔が保たれる。
この筒体15は、柔らかいゴム等の材質からなるため可撓性を備えるとともに、全方向に撓むようになっている。また、この筒体15は、上記可撓部15cの外側に複数の環状凸部Tが形成され、全体として蛇腹状にしている。この環状凸部Tは、周方向に一条の凸部が切れ目なく連続するとともに、それら凸部を軸方向に複数間隔を保って連続する形態になっている。
【0041】
この環状凸部Tは、リブの役割を担うので、負圧に対して周方向の形状を維持することができる。したがって、上記筒体15内に強い吸引力が働いても、この吸引力によって上記可撓部15cが内側に撓んでしまい、上記吸引用通路10を塞いでしまうようなことがない。このように、上記吸引用通路10が維持されるので、ブラスト材や塗膜片等を円滑に回収できる。
なお、この環状凸部Tは、周方向に一条の凸部が切れ目なく連続するとともに、それら凸部を軸方向に複数間隔を保って連続する形態になっているが、筒体15の周方向の形状が維持されればよいので、凸部が螺旋状に連続する形態であってもよい。
【0042】
他方、上記ガン本体連結部15aと反対側のブラシ連結部15bの外周には、上記筒状ブラシ16が取り外し可能にはめつけられている。この筒状ブラシ16の先端開口は、図1のように筒状ブラシ16の軸線に直交する面を備えるとともに、上記筒体15の外周に沿うように毛が設けられている。
【0043】
この筒状ブラシ16は、ブラスト材や、粉塵あるいは塗膜片の飛散防止用として機能するとともに、吸引筒部8cからブラスト材を吸引するときのエア吸入口としての機能を果たしている。このように機能させるため、上記筒状ブラシ16の毛は、高強度で硬いものが使用される。
【0044】
さらに、上記可撓部15cの上記環状凸部T間には、必要に応じて、金属やゴム等からなるリング状のスペーサ18がはめられている。
このように、上記環状凸部T間にリング状のスペーサ18がはめられることによって、上記可撓部15cの軸方向の収縮が制限されるので、上記ボルト等とディフューザーが干渉しあってディフューザー14の首ふり運動を妨げることはない。
【0045】
このような構成において、この実施形態は、上記筒体15の可撓部15cを全方向に撓ませることによって、上記ボルト等の軸線に対してディフューザー14を全方向に向かわせることができる。つまり、ノズル3やディフューザー14に、簡単に首ふり運動をさせることができる。
【0046】
次に、この実施形態の作業方法について説明をする。
この実施形態の研磨目的となるボルト等は、橋梁などの既存の建造物4に締結されているものである。
先ず、作業者は、上記ボルト等を筒状ブラシ16で囲うように上記ガン本体8を配置する。このとき、この筒状ブラシ16の先端開口は、上記ボルト等が締結された建造物4に隙間なく圧接される。
【0047】
そして、作業者は、上記可撓部15cを撓ませながら、上記ガン本体8を上記建造物4側に押し付けて、ディフューザー14の開口を上記ボルト等に近づける。このようにディフューザー14を上記ボルト等に近づけるのは、筒体15内では吸引力と噴出力とが同時に働くので、この2つの流れを分けるためである。つまり、吸引力でブラスト材の勢いが減衰されないように、ディフューザー14が壁となってブラスト材の流れをガイドしている。したがって、ディフューザー14の開口を上記ボルト等に近づければ近づけるほど、ブラスト材の勢いが強いまま上記ボルト等に上記ブラスト材を衝突させることができる。
【0048】
図1及び図2は、ディフューザー14の開口径と同程度の大きさの上記ボルト等を研磨するため、上記環状凸部T間にリング状のスペーサ18を設けた状態を示している。なお、図の二点鎖線は、研磨目的の上記ボルト等を示している。
このスペーサ18は、上記ボルト等にディフューザー14を近づけて傾けたときに、上記ディフューザー14の先端が上記ボルト等に当たることを防止している。ディフューザー14が上記ボルト等に当たってしまうと、全面の研磨作業ができなくなってしまう。そこで、上記スペーサ18は、上記ボルト等とディフューザー14との距離を、ディフューザー14の全方向に傾ける動きを妨げない距離に保っている。
【0049】
このように、このスペーサ18は、上記可撓部15cの軸方向の収縮を制限させ、上記ボルト等とディフューザー14との距離を保つので、ディフューザー14と干渉しない。さらに、上記ボルト等とディフューザー14との距離を、ディフューザー14の全方向に傾ける動きを妨げない最小の間隔に保つことによって、ブラスト材の流れの勢いが強いまま、上記ボルト等の側面にブラスト材を当てられる。
【0050】
また、上記スペーサ18は、上記ボルト等の形状や取付け状況が変わる場合に、このスペーサ18を状況に応じて着脱させることで、上記ボルト等とディフューザー14との距離を調整できる。例えば、ディフューザー14の内径よりも小さな上記ボルト等の場合は、スペーサ18を取り外して、ディフューザー14を上記ボルト等に近づけて作業を行う。このように、多様な現場の状況に対応できるので、汎用性が高くなる。
【0051】
続いて、作業者は、図示しないスイッチをオンにして、上記ノズル3からブラスト材を噴出させ、上記ボルト等及び建造物4に上記ブラスト材を衝突させる。そして、図2に示すように、上記筒状ブラシ16を上記建造物4に圧接させたまま、上記可撓部15cを撓ませ、上記ガン本体8のディフューザー14の向きを上記ボルト等の全面に向くように動かす。
【0052】
このような首ふり運動によって、上記ボルト等の側面には、ディフューザー14の凸部14cで跳ね返されたブラスト材が衝突する。また、作業者の操作によって、ノズル3の軸中心線に沿って直進するブラスト材が、上記ボルト等の全面に直接衝突する。この衝突する衝撃力で、上記ボルト等の錆や塗膜片等を削り取る。
【0053】
上記ボルト等は、少しでも磨き残しがあると、その磨き残した錆の部分から腐食が進んでしまう。そのため、上記ボルト等の全面は、もれなく研磨される。
そして、上記ボルト等や建造物4に当たって勢いを失ったブラスト材は、粉塵や研削された塗膜片等とともに、ディフューザー14と筒体15との間を通過し、吸引用通路10、吸引筒部8c及びバキュームホース5を通って回収タンク6に集められる。
【0054】
この実施形態によれば、このようにノズル3及びディフューザー14の向きを全方向に向けられるので、例えば、ブラスト材を、入射角を保って上記ボルト等や建造物4の表面等に吹き付けることができる。しかも、上記入射角を保って、ノズル3やディフューザー14に首ふり運動をさせることができる。
上記のように上記ボルト等や建造物4の表面等に対して、ブラスト材を、入射角を保って吹き付けられるので、衝突したブラスト材は、その入射角に対応した反射角を保って跳ね返される。
【0055】
このように入射角に対応した反射角を保ってブラスト材が跳ね返されるので、このブラスト材の多くを、十分な勢いを保ちながらディフューザー14の内周面に直接向かわせることができる。
そして、ディフューザー14の凸部14cに勢いよく衝突する。このようにして凸部14cに衝突したブラスト材は、再び跳ね返されて上記ボルト等の側面等に衝突して、その側面を研磨することになる。
【0056】
特に、ブラスト材が当たる凸部14cの面の角度を調整することによって、凸部14cに当たって反射されるブラスト材の反射角を制御でき、上記ボルト等の側面に対して、ブラスト材を効率よく吹き付けることができる。
また、ノズル3及びディフューザー14の軸中心線を上記ボルト等や建造物4の表面に対して直角に保って、ブラスト材を噴出させることもできる。
【0057】
さらに、筒体15に可撓部15cを設けたので、筒状ブラシ16と建造物4の表面との間に隙間を作ることなく、ノズル3やディフューザー14の軸中心線を、簡単に全方向に向けることができる。つまり、ノズル3やディフューザー14に首ふり運動をさせても、筒状ブラシ16と建造物4の表面との間に隙間ができたりしない。
【0058】
このように、本願発明は、上記ボルト等の側面にも十分な量のブラスト材を勢いよく衝突させることができるので、その研磨作業の時間を短縮することができる。
具体的には、従来の研磨時間の半分以下で研磨できるようになった。そのため、工期等も半分に短縮できる。
【0059】
また、ノズル3やディフューザー14に首ふり運動をさせても、筒状ブラシ16と建造物4の表面との間に隙間ができたりしないので、従来のようにブラスト材や塗膜片が周囲に飛散することもなくなる。
このように、上記塗膜片等を周囲に飛散させないので、環境汚染や作業者などの健康被害を引き起こすことが軽減される。
【0060】
なお、このディフューザー14は、その大径部14bの開口側の内周面に、周方向に連続する凸部14cを、ノズル3の噴出方向に複数段を設けているが、大径口14bの内周面に凸部14cなどの特別な加工を施していないディフューザーを利用できるのは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
既設の建造物に締結されたボルトやナット、リベット等の錆や塗膜を研磨する研磨作業に最適である。
【符号の説明】
【0062】
3…ノズル、4…建造物、8…ガン本体、9,14…ディフューザー、10…吸引用通路、11,16…筒状ブラシ、15…筒体、15c…可撓部、17…締付け金具、18…スペーサ、T…環状凸部
【要約】
【課題】 建造物の研磨作業において、作業時間を短縮させてボルト等の全面を研磨でき、環境にも配慮した研磨ガン装置を提供する。
【解決手段】 ブラスト材を噴出するノズル3に連続するディフューザー14の外側にガン本体8が設けられ、上記ノズル3から噴出された上記ブラスト材が導かれる筒状ブラシ16とが備えられた研磨ガン装置を前提とする。上記ガン本体8と上記筒状ブラシ16とは、筒体15を介して着脱可能に設けられるとともに、この筒体15には可撓部15cが備えられている。そして、この可撓部15cを撓ませながら上記ガン本体8とともにディフューザー14の向きを全方向に傾く構成にした。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4