【実施例1】
【0022】
まず、本発明であるタイル係止部材の固定金具について説明する。
図1は、タイル係止部材の固定金具を取り付けた押出成形セメント板による壁面を示す(a)正面図、(b)平面図及び(c)右側面図である。
図2は、タイル係止部材の固定金具を示す斜視図である。なお、正面側を前面とする。
【0023】
図1に示すように、タイル係止部材130は、壁面100を陶磁器や石製などのタイル140で仕上げる際に、その下地となる下地板に固定することで、タイル140を引っ掛けたり吊るしたりするために使用する金属や樹脂製の金具等である。また、固定金具200は、タイル係止部材130を下地板に固定するための金具等である。なお、タイル140は、複数が並置されたタイルパネルを含む。
【0024】
下地板としては、上下に貫通する中空部120が複数空けられた押出成形セメント板110を用いた例を示す。すなわち、押出成形セメント板110の前面に取り付けられるタイル係止部材130を固定するために固定金具200を使用する。なお、押出成形セメント板110の中空部120から前面までの部分を前板とする。
【0025】
固定金具200は、押出成形セメント板110の前面に沿って上下に渡され、タイル係止部材130は、押出成形セメント板110の前面に沿って左右に渡される。固定金具200は、タイル係止部材130を固定するのに必要な数だけ用意され、押出成形セメント板110に対して所定のピッチで横方向に並設されれば良い。そして、タイル係止部材130は、タイル140を係止するのに必要な数だけ用意され、所定のピッチで縦方向に並設されれば良い。
【0026】
図2に示すように、固定金具200は、タイル係止部材130を配置するための荷重受けフレーム400と、押出成形セメント板110の中空部120に嵌め込まれ、荷重受けフレーム400を押さえるための支持金具300と、支持金具300に荷重受けフレーム400を係止するための留金具500とを備える。
【0027】
荷重受けフレーム400は、押出成形セメント板110の前面に上下に渡すように配置される縦長の板状の部材であり、風圧などで動いたりしないように、押出成形セメント板110に必要最小限空けられた孔を利用して、押出成形セメント板110に留められる。荷重受けフレーム400には、タイル係止部材130に掛けられたタイル140の荷重が掛かるが、押出成形セメント板110に必要以上に孔を空けないことで、押出成形セメント板110の強度が保持される。
【0028】
支持金具300は、押出成形セメント板110に配置された荷重受けフレーム400に掛かる荷重を、押出成形セメント板110の上面で受けるために、押出成形セメント板110の中空部120から前面まで跨ぐように取り付けられる部材である。押出成形セメント板110のうち、上下方向における圧縮強度が非常に強い上面で、荷重受けフレーム400に掛かる荷重を受ける。
【0029】
留金具500は、荷重受けフレーム400と支持金具300を連結するための部材であり、板状にすることで、押出成形セメント板110とタイル係止部材130の間隔が広くなるのを抑制する。
【0030】
固定金具200は、荷重受けフレーム400と支持金具300を一体成形しても良い。また、既存の荷重受けフレーム400に対して、一部加工した上で支持金具300と留金具500で連結しても良い。なお、支持金具300は、押出成形セメント板110の中空部120の形状に合わせて成形すれば良い。
【0031】
次に、本発明であるタイル係止部材の固定金具の各部材の構造について説明する。
図3は、タイル係止部材の固定金具の支持金具を示す(a)前方斜視図及び(b)後方斜視図であり、
図4は、支持金具を示す(a)正面図、(b)平面図及び(c)右側面図である。
図5は、タイル係止部材の固定金具の荷重受けフレームを示す斜視図であり、
図6は、荷重受けフレームを示す(a)正面図、(b)平面図及び(c)右側面図である。
図7は、タイル係止部材の固定金具の留金具を示す(a)正面図、(b)平面図及び(c)側面図である。
【0032】
図3、4に示すように、支持金具300は、押出成形セメント板110の一の中空部120に嵌め込まれる差込部310、差込部310から押出成形セメント板110の前面まで跨ぐように連設された掛部320、及び掛部320から押出成形セメント板110の前面に沿って延設され左側端及び右側端が前方に突出するように折曲片340が連設された下垂部330を有する。
【0033】
差込部310は、押出成形セメント板110に複数空けられた中空部120のうち何れか一つに嵌め込まれる。すなわち、差込部310は、中空部120に嵌合するように、中空部120の内周面に沿って枠状に形成される。なお、差込部310は、環状になっても良いし、中空部120に嵌合して荷重が掛かっても抜けなれば、一部を欠いた形状でも良い。例えば、中空部120が角丸矩形であれば、角丸となっている四隅が押さえられる形状にすれば良い。
【0034】
掛部320は、差込部310と下垂部330を連結しており、押出成形セメント板110の前板の上面に掛けられる。すなわち、掛部320は、押出成形セメント板110の前板の幅で設けられれば良い。なお、間に荷重受けフレーム400も介すため、荷重受けフレーム400の厚さも考慮する。
【0035】
下垂部330は、差込部310とで押出成形セメント板110の前板を挟み込むように延ばせば良い。折曲片340は、下垂部330を荷重受けフレーム400に重ねるため、荷重受けフレーム400に合わせて折り曲げられれば良い。さらに、折曲片340は、留金具500を掛けるために、切欠き350が設けられる。
【0036】
なお、折曲片340は、下垂部330の左側端を折り曲げた左折曲片340aと、下垂部330の右側端を折り曲げた右折曲片340bとすれば良い。切欠き350は、左折曲片340aに溝を空けた左切欠き350aと、右折曲片340bに溝を空けた右切欠き350bとすれば良い。
【0037】
図5、6に示すように、荷重受けフレーム400は、押出成形セメント板110の前面に沿って縦方向に取り付けられる底部410、底部410の左側端及び右側端からそれぞれ前方に延設された垂立部420、及び垂立部420から側方にそれぞれ反対を向くように折り曲げられた縁部430を有する。
【0038】
荷重受けフレーム400は、板材を折り曲げることにより、底部410から垂立部420の分だけ高さを付けて、底部410と平行に縁部430を設けたものである。底部410は、押出成形セメント板110と接し、縁部430は、一部がタイル係止部材130と接する。
【0039】
底部410は、上部において押出成形セメント板110の前面と支持金具300の下垂部330の間に挟まれる。すなわち、支持金具300の掛部320は、差込部310から荷重受けフレーム400の底部410の前まで跨ぐように連設され、支持金具300の下垂部330は、底部410に沿って掛部320から延設されれば良い。
【0040】
垂立部420は、高さが押出成形セメント板110とタイル係止部材130の間隔となるように設けられる。そのため、支持金具300の折曲片340は、垂立部420に沿って、垂立部420の高さ以内で、下垂部330から連設されれば良い。さらに、垂立部420には、留金具500を通す位置に、通し溝440が空けられる。
【0041】
垂立部420は、底部410の左側端の左垂立部420aと、底部410の右側端の右垂立部420bとすれば良い。縁部430は、左垂立部420aから左側方に延ばした左縁部430aと、右垂立部420bから右側方に延ばした右縁部430bとすれば良い。また、通し溝440は、左垂立部420aに空けた左通し溝440aと、右垂立部420bに空けた右通し溝440bとすれば良い。
【0042】
図7に示すように、留金具500は、荷重受けフレーム400の垂立部420に空けた通し溝440に通すための閂板510、及び閂板510を通し溝440と通し溝440に合わせて支持金具300の折曲片340に空けた切欠き350に掛けるために閂板510に空けた凹部520を有する。
【0043】
閂板510は、荷重受けフレーム400の左通し溝440aから右通し溝440bまで通される。そして、閂板510は、支持金具300の左切欠き350aから右切欠き350bまで通される。このとき、左通し溝440aと左切欠き350aの空いた位置が合わされ、右通し溝440bと右切欠き350bの空いた位置が合わされる。
【0044】
凹部520は、荷重受けフレーム400の通し溝440と、支持金具300の切欠き350に掛けることで、荷重受けフレーム400を支持金具300に係止する。そのため、凹部520は、左垂立部420aから右垂立部420bまでの長さにすれば良い。また、閂板510で係止すれば良いので、荷重受けフレーム400の垂立部420は、閂板510を通すだけの高さがあれば良い。
【0045】
次に、本発明であるタイル係止部材の固定金具の取付けについて説明する。
図8は、タイル係止部材の固定金具の支持金具を押出成形セメント板に取り付ける状況を示す斜視図であり、
図9は、荷重受けフレームを押出成形セメント板に取り付ける状況を示す斜視図であり、
図10は、留金具を押出成形セメント板に取り付ける状況を示す斜視図である。
【0046】
図8に示すように、押出成形セメント板110の上方から中空部120に支持金具300の差込部310を嵌め込むと、支持金具300の掛部320が押出成形セメント板110の前板の上面に掛かり、支持金具300の下垂部330が押出成形セメント板110の前面に来る状態となる。
【0047】
図9に示すように、押出成形セメント板110の前面に荷重受けフレーム400を配置するに際して、支持金具300の下方から荷重受けフレーム400の上部を、底部410が押出成形セメント板110の前面と支持金具300の下垂部330の間に挟まるように差し込む。
【0048】
支持金具300の折曲片340は、荷重受けフレーム400の垂立部420の内側に沿うので、折曲片340の切欠き350と垂立部420の通し溝440の空きが合うように、荷重受けフレーム400の位置を調節する。
【0049】
図10に示すように、留金具500の閂板510を垂立部420の通し溝440と折曲片340の切欠き350に通し、留金具500の凹部520を折曲片340の切欠き350に掛けることで、荷重受けフレーム400が外れないように、支持金具300に係止される。
【0050】
荷重受けフレーム400は、下部が留められておらず配置が安定しないので、押出成形セメント板110に必要最小限の欠損で空けられた孔を利用して留めれば良い。荷重受けフレーム400に掛かるタイル係止部材130及びタイル140の荷重は、支持金具300によって押出成形セメント板110の上面で受けることになり、押出成形セメント板110の前面における負担は少なくなる。
【0051】
このように、中空部120を有する押出成形セメント板110に必要以上に孔を空けずにタイル係止部材130を固定するための固定金具200を提供することができる。固定金具200を中空部120に嵌め込んで、押出成形セメント板110において圧縮強度の強い上面で、タイル係止部材130に係止されたタイルパネル等の荷重を受けることにより、安定した強度を保持することができる。
【0052】
また、押出成形セメント板110に孔を空けることによる欠損部を最小限に抑えることで、割れなどによる強度低下を防ぐことができる。さらに、固定金具200を押出成形セメント板110に取り付けているので、板ごとの変形にも追従することができる。
【0053】
固定金具200は、各部材をボルトやナットで連結するのではなく、閂状に係止しているので、ボルトやナットの高さに影響されることなく、押出成形セメント板110とタイルパネル等を係止するタイル係止部材130との間隔を最小限にすることができる。
【0054】
以上、本発明の実施例を述べたが、これらに限定されるものではない。例えば、固定金具200は、支持金具300を取り付けてから荷重受けフレーム400を取り付けても良いし、荷重受けフレーム400を取り付けてから支持金具300を取り付けても良い。