特許第6284124号(P6284124)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284124
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】電子部品用ソケット
(51)【国際特許分類】
   H01R 33/975 20060101AFI20180215BHJP
   H01R 33/74 20060101ALI20180215BHJP
   H01R 13/652 20060101ALN20180215BHJP
【FI】
   H01R33/975 D
   H01R33/74 B
   !H01R13/652
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-137100(P2014-137100)
(22)【出願日】2014年7月2日
(65)【公開番号】特開2016-15265(P2016-15265A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2017年1月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプス電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】千葉 茂智
(72)【発明者】
【氏名】村山 丈剛
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼岡 寛之
(72)【発明者】
【氏名】魚住 岳輝
(72)【発明者】
【氏名】奥田 伸幸
【審査官】 板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−258131(JP,A)
【文献】 特開2014−017133(JP,A)
【文献】 特開2013−004223(JP,A)
【文献】 特開2012−174616(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0038438(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 33/74
H01R 13/652
H01R 33/975
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に貫通し内壁面が上下に渡って導電性を有する複数の貫通孔が形成されてなるケースと、 複数の前記貫通孔の少なくとも1つに配置され、電子部品の電子部品側接点部と基板の基板側接点部とを電気的に接続するとともに前記貫通孔の内壁面に対して前記貫通孔の上端側および下端側で電気的に接続されるグランド用接点ユニットと、を備え、 前記グランド用接点ユニットは、前記貫通孔内に固定される保持部材と、前記保持部材に保持された導電部材と、を有してなり、 前記導電部材は弾性を有し、前記保持部材に保持される中間部および前記中間部から上側に延設される上側延設部および前記中間部から下側に延設される下側延設部を有する、電子部品用ソケットであって、 前記下側延設部は、前記貫通孔の内壁面に弾接して摺動可能な接地用延設部と前記基板側接点部に固着される固着部とを有するとともに、前記接地用延設部は、前記上下方向に直交する一の方向を横方向とした際の、前記貫通孔の前記横方向において対向して設けられた一対の内壁面に向かってそれぞれ延設される第1接地用延設部および第2接地用延設部と、からなり、 前記第1接地用延設部および前記第2接地用延設部がそれぞれ逆方向に向かって前記貫通孔の内壁面に弾接され、 前記第1接地用延設部は前記貫通孔の内壁面に沿って前記上下方向および前記横方向に直交する方向を縦方向とした際の前記縦方向に延設されるとともに、前記第2接地用延設部は前記貫通孔の内壁面に沿って前記縦方向に延設され、 前記第1接地用延設部の前記縦方向における一端および前記第2接地用延設部の前記縦方向における他端が前記貫通孔の内壁面に圧接されるように、前記保持部材を前記貫通孔内に固定され、前記固着部と前記中間部の間に湾曲形成されてなる衝撃吸収部を備えたことを特徴とする電子部品用ソケット。
【請求項2】
前記接地用延設部は、前記固着部の前記衝撃吸収部に繋がる位置とは異なる位置から前記貫通孔の内壁面に向かって延設されたことを特徴とする請求項1に記載の電子部品用ソケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品用ソケットに関し、特に、シールド性能の高い電子部品用ソケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
精密電子部品と配線基板との接続においては、精密電子部品を配線基板に直接はんだ付けせずに、接続用ソケット(電子部品用ソケット)を介して配線基板に接続する場合があり、電子部品用ソケットには精密電子部品を保護するためにシールド性能を備えたものが求められている。特にIC(Integrated Circuit、集積回路)のように、接続端子を多数備えた精密電子部品用の電子部品用ソケットとしては、下記の特許文献1に記載の電子部品用ソケットが知られている。
【0003】
以下、図13を用いて、特許文献1に記載の電子部品用ソケットについて説明する。図13は特許文献1に記載の電子部品用ソケット900を示す図であり、図13(a)は電子部品用ソケット900の外観を示す斜視図であり、図13(b)は初期状態における電子部品用ソケット900を示す模式図であり、図13(c)は移動部材902が電極端子TEMに押圧された状態における電子部品用ソケット900を示す模式図であり、図13(d)移動部材902が電極端子TEMに押圧された場合の移動部材902の動きを示す平面図である。
【0004】
特許文献1に記載の電子部品用ソケット900は、電子部品の各電極端子TEMを配線基板pbの配線と接続する電子部品用ソケットであって、配線基板pb上に導電性を有し複数の開口部を有するシールド体901を配置し、開口部901bに、移動部材902と弾性部材903とからなり、電子部品の電極端子TEMと配線基板pbの配線とを電気的に導通させる接点ユニットU910を配置し、接点ユニットU910はシールド体901と電気的に導通する接地接触部902aを有し、接点ユニットU910が接地用である場合には、接地接触部902aとシールド体901とが接触するとともに、接触部903dがシールド体901に半田付けなどの方法で接続し、電気的に導通することで接地する構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−258131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような電子部品用ソケットに搭載される精密電子部品のなかには、比較的重量の重いものもあり、重量の重い部品を搭載しているときに振動や衝撃を受けると、接地のために施した半田付け部に大きなストレスが加わり、破損する恐れがある。振動や衝撃を吸収する方法としては、接触部903dを湾曲形成させて弾性を持たせ、振動および衝撃を吸収させる方法がある。しかしながら、特許文献1に記載の電子部品用ソケット900において、接触部903dを湾曲形成すると、接地のための半田付けができなくなり、シールド性能が低下してしまうという問題があった。また、仮に湾曲形成した接触部903dに半田付けを行ったとしても、弾性が失われ振動や衝撃を吸収できないという問題があった。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決して、衝撃を吸収することができるとともにシールド性能を高めることができる電子部品用ソケットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電子部品用ソケットは、上下方向に貫通し内壁面が上下に渡って導電性を有する複数の貫通孔が形成されてなるケースと、 複数の前記貫通孔の少なくとも1つに配置され、電子部品の電子部品側接点部と基板の基板側接点部とを電気的に接続するとともに前記貫通孔の内壁面に対して前記貫通孔の上端側および下端側で電気的に接続されるグランド用接点ユニットと、を備え、 前記グランド用接点ユニットは、前記貫通孔内に固定される保持部材と、前記保持部材に保持された導電部材と、を有してなり、 前記導電部材は弾性を有し、前記保持部材に保持される中間部および前記中間部から上側に延設される上側延設部および前記中間部から下側に延設される下側延設部を有する、電子部品用ソケットであって、 前記下側延設部は、前記貫通孔の内壁面に弾接して摺動可能な接地用延設部と前記基板側接点部に固着される固着部とを有するとともに、前記接地用延設部は、前記上下方向に直交する一の方向を横方向とした際の、前記貫通孔の前記横方向において対向して設けられた一対の内壁面に向かってそれぞれ延設される第1接地用延設部および第2接地用延設部と、からなり、 前記第1接地用延設部および前記第2接地用延設部がそれぞれ逆方向に向かって前記貫通孔の内壁面に弾接され、 前記第1接地用延設部は前記貫通孔の内壁面に沿って前記上下方向および前記横方向に直交する方向を縦方向とした際の前記縦方向に延設されるとともに、前記第2接地用延設部は前記貫通孔の内壁面に沿って前記縦方向に延設され、 前記第1接地用延設部の前記縦方向における一端および前記第2接地用延設部の前記縦方向における他端が前記貫通孔の内壁面に圧接されるように、前記保持部材を前記貫通孔内に固定され、前記固着部と前記中間部の間に湾曲形成されてなる衝撃吸収部を備えたことを特徴とする。
【0009】
これにより、湾曲形成されてなる衝撃吸収部を下側延設部に設けるとともに、接地用延設部を貫通孔の内壁面に弾接して摺動可能に設けることで、電子部品用ソケットが衝撃を受けた場合に、衝撃吸収部が撓むことで衝撃を吸収し、接地用延設部は貫通孔の内壁面に沿って摺動することで電気的な接続を保持する。さらに第1接地用延設部および第2接地用延設部と貫通孔の内壁面とは、第1接地用延設部および第2接地用延設部の一部分で接触することとなる。第1接地用延設部および第2接地用延設部をこのように接触させることで、第1接地用延設部および第2接地用延設部の貫通孔の内壁面に対向する面の全面で貫通孔の内壁面に接触した場合に比べて、単位面積あたりの圧接力を大きくすることができる。したがって、弾接力が小さくても、第1接地用延設部および第2接地用延設部と貫通孔との接触信頼性を高めることができ、衝撃を吸収することができるとともにシールド性能を高めることができる。
【0010】
また、本発明の電子部品用ソケットは、前記接地用延設部は、前記固着部の前記衝撃吸収部に繋がる位置とは異なる位置から前記貫通孔の内壁面に向かって延設された、ことを特徴とする。
【0011】
これにより、接地用延設部を、固着部の衝撃吸収部に繋がる位置とは異なる位置から延設することで、接地用延設部および衝撃吸収部を幅狭に形成するなどの制約が少なくなり、接地用延設部および衝撃吸収部が十分な機能を発揮することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、衝撃を吸収することができるとともにシールド性能を高めることができる電子部品用ソケットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態における電子部品用ソケット100の構成を示す分解斜視図である。
図2】第1実施形態におけるケース1を示す図であり、図2(a)はケース1の外観の一例を示す斜視図であり、図2(b)は図2(a)に記載のA部を拡大して示した平面図である。
図3】第1実施形態における導電部材3が一体に形成された保持部材2を示す図であり、図3(a)は保持部材2の外観を示す斜視図であり、図3(b)は図3(a)に示すX2方向側から見た状態の保持部材2の外観を示す斜視図である。
図4図4は第1実施形態における導電部材3が一体に形成された保持部材2を示す図であり、図4(a)は図3(a)に示すZ1方向側から見た状態の保持部材2の外観を示す平面図であり、図4(b)は図3(a)に示すZ2方向側から見た状態の保持部材2の外観を示す平面図である。
図5】第1実施形態における導電部材3を示す図であり、図5(a)は導電部材3の外観を示す斜視図であり、図5(b)は図5(a)に記載のY1方向側から見た状態の導電部材3の外観を示す斜視図である。
図6】第1実施形態における移動部材4を示す図であり、図6(a)は導電用に用いられる場合の移動部材4の外観を示す斜視図であり、図6(b)は接地用に用いられる場合の移動部材4の外観を示す斜視図である。
図7】第1実施形態における移動部材4を示す図であり、図7(a)は図6(a)に記載のY2方向側から見た状態の移動部材4の外観を示す側面図であり、図7(b)は図6(a)に記載のZ2方向側から見た状態の移動部材4の外観を示す平面図である。
図8】第1実施形態における電子部品用ソケット100の構造を示す模式断面図である。なお、図8においては説明を容易にするために、貫通孔1aを1つのみ記載している。
図9】第1実施形態における保持部材2が貫通孔1aの内部に保持された状態を示す平面図である。なお、図9図8に記載のZ2方向側から見た状態である。
図10】第1実施形態における移動部材4が貫通孔1aに挿入される前の状態を示す模式断面図である。
図11】第1実施形態における移動部材4を貫通孔1aに挿入する方法を示す図であり、図11(a)は挿入開始時の移動部材4を示す平面図であり、図11(b)は挿入後の移動部材4を示す平面図である。なお、図11においては、貫通孔1aの開口形状は簡略な形状で示している。
図12】第1実施形態における電子部品用ソケット100が衝撃を受けた際の衝撃吸収部3fの撓み方および接地用延設部3dの摺動の仕方について示す図であり、図12(a)は衝撃吸収部3fの撓み方を示す模式側面図であり、図12(b)は衝撃吸収部3fの撓み方および接地用延設部3dの摺動の仕方を示す模式側面図である。なお、図12においては撓んだ状態および摺動した状態を破線で模式的示している。また、図12(a)においては第1接地用延設部3gは記載していない。
図13】特許文献1に記載の電子部品用ソケット900を示す図であり、図13(a)は電子部品用ソケット900の外観を示す斜視図であり、図13(b)は初期状態における電子部品用ソケット900を示す模式図であり、図13(c)は移動部材902が電極端子TEMに押圧された状態における電子部品用ソケット900を示す模式図であり、図13(d)移動部材902が電極端子TEMに押圧された場合の移動部材902の動きを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
以下に第1実施形態における電子部品用ソケット100について説明する。
【0019】
まず始めに第1実施形態における電子部品用ソケット100の構成について図1ないし図7を用いて説明する。図1は第1実施形態における電子部品用ソケット100の構成を示す分解斜視図である。図2は第1実施形態におけるケース1を示す図であり、図2(a)はケース1の外観の一例を示す斜視図であり、図2(b)は図2(a)に記載のA部を拡大して示した平面図である。図3は第1実施形態における導電部材3が一体に形成された保持部材2を示す図であり、図3(a)は保持部材2の外観を示す斜視図であり、図3(b)は図3(a)に示すX2方向側から見た状態の保持部材2の外観を示す斜視図である。図4は第1実施形態における導電部材3が一体に形成された保持部材2を示す図であり、図4(a)は図3(a)に示すZ1方向側から見た状態の保持部材2の外観を示す平面図であり、図4(b)は図3(a)に示すZ2方向側から見た状態の保持部材2の外観を示す平面図である。図5は第1実施形態における導電部材3を示す図であり、図5(a)は導電部材3の外観を示す斜視図であり、図5(b)は図5(a)に記載のY1方向側から見た状態の導電部材3の外観を示す斜視図である。図6は第1実施形態における移動部材4を示す図であり、図6(a)は導電用に用いられる場合の移動部材4の外観を示す斜視図であり、図6(b)は接地用に用いられる場合の移動部材4の外観を示す斜視図である。図7は第1実施形態における移動部材4を示す図であり、図7(a)は図6(a)に記載のY2方向側から見た状態の移動部材4の外観を示す側面図であり、図7(b)は図6(a)に記載のZ2方向側から見た状態の移動部材4の外観を示す平面図である。
【0020】
第1実施形態における電子部品用ソケット100は、図1に示すように、ケース1と、保持部材2、導電部材3および移動部材4からなるグランド用接点ユニットU10または導電用接点ユニットU30を有している。なお、グランド用接点ユニットU10は接地用に用いられるものであり、導電用接点ユニットU30は通常の導電用に用いられるものである。
【0021】
ケース1は表面が導電材料に覆われた樹脂成型品であり、例えば、図2に示すような直方体状に形成されている。ケース1には、上下方向(Z1−Z2方向)に貫通し内壁面が上下に渡って導電性を有する複数の貫通孔1aが形成されている。なお、第1実施形態においてはケース1全体にメッキを施すことで、貫通孔1aの内壁面に導電性を持たせている。また、貫通孔1aの上方側の開口形状は、図2(b)に示すように、長方形の四隅が貫通孔1aの内側へ食み出し六角形状に形成されている。また、貫通孔1aの内側へ食み出した部分をフック部1bとすると、フック部1bの下方側(Z2方向側)においては空間が設けられており、貫通孔1aの開口面が上方よりも下方の方が広く作られている。なお、ケース1を、導電性を有する金属板を複数枚用いて、金属板を組み合わせて貫通孔1aを形成するような金属板組立品として構成してもよい。
【0022】
保持部材2は合成樹脂材からなり、図3に示すように、ケース1の貫通孔1aに挿入可能な大きさの直方体状に形成されている。保持部材2は、第1側面SF1(X1方向側の側面)に第1突設部2aを有し、第1側面SF1の裏面である第2側面SF2(X2方向側の側面)に第2突設部2bを有している。第1突設部2aおよび第2突設部2bはそれぞれ上下方向(Z1−Z2方向)に延出したリブ状に形成され、保持部材2は、第1突設部2aおよび第2突設部2bをそれぞれ1つずつ有する。なお、上下方向に直交する一の方向、第1実施形態においてはX1−X2方向を横方向とし、上下方向および横方向に直交する方向、第1実施形態においてはY1−Y2方向を縦方向とした時、第1突設部2aは第1側面SF1の縦方向における一方側(Y2方向側)に設けられており、第2突設部2bは第2側面SF2の縦方向における他方側(Y1方向側)に設けられている。
【0023】
導電部材3は弾性および導電性を有した金属板からなり、図3および図4に示すように、保持部材2にインサート成型により一体に保持されている。また、導電部材3は、図5に示すように、保持部材2に保持される中間部3aおよび中間部3aから上側に延設される上側延設部3bおよび中間部3aから下側に延設される下側延設部3cを有している。中間部3aは平板状に形成されている。図4においては、上側延設部3bは、中間部3aの上端においてX1−X2方向に2分割されている。X1方向側に配置された上側延設部3b(第1上側延設部3k)の根本部はY1方向側へ折り曲げられてから上側に延設されている。また、X2方向側に配置された上側延設部3b(第2上側延設部3m)の根本部はY2方向側へ折り曲げられてから上側に延設されている。上側延設部3bの上側の先端部はそれぞれ曲面となるように曲げ加工が施されている。下側延設部3cは、接地用延設部3dと固着部3eとを有するとともに、固着部3eと中間部3aの間に湾曲形成されてなる衝撃吸収部3fを備えている。接地用延設部3dは、図4(b)に示すように、固着部3eの衝撃吸収部3fに繋がる位置とは異なる位置から延設されている。なお、第1実施形態においては、接地用延設部3dは、固着部3eを基準として、衝撃吸収部3fに繋がる位置がある方向に対して交差(直交)する方向である横方向(X1−X2方向)において対向した方向へそれぞれ延設される第1接地用延設部3gおよび第2接地用延設部3hと、からなる。なお、第1接地用延設部3gはX1方向に延出され、第2接地用延設部3hはX2方向に延出されている。第1接地用延設部3gのX1方向へ延出された先端部は、上方へ折り曲げ加工されるとともに、縦方向(Y1−Y2方向)に延設されている。また、第2接地用延設部3hのX2方向へ延出された先端部は、上方へ折り曲げ加工されるとともに、縦方向(Y1−Y2方向)に延設されている。
【0024】
移動部材4は、グランド用接点ユニットU10に用いられるものと、導電用接点ユニットU30に用いられるものの2種類がある。先ずはじめに、導電用接点ユニットU30に用いられる移動部材について説明する。移動部材4は、図6に示すように、略直方体形状に形成されている。移動部材4は、合成樹脂材からなり略直方体状に形成された台座部4aと、金属板からなり台座部4aにインサート成形された通電部材4bとを備えている。ここで、台座部4aを上方から平面視したときに上面を2等分する線を中心線CLとする。なお、第1実施形態においては、図7に示すように、X1−X2方向に2等分する線を中心線CLとする。台座部4aは、上方から平面視したときに、対角に位置する一対の角部、第1実施形態においてはX1方向側で且つY2方向側の角部と、X2方向側で且つY1方向側の角部と、に対応する下面(Z2方向側の面)の位置から下方へ向って延設された脚部4cを有する。脚部4cは対角に位置する一対の角部からそれぞれ中心線CLの位置まで延びた板状に形成されており、先端部には外方(X1またはX2方向)へ突出した突起部4dが形成されている。また、台座部4aは、脚部4cの根本位置から上方に向かって傾斜する傾斜面部4eを有している。なお、傾斜面部4eは、中心線CLを挟んで一方側において、脚部4cが設けられていない側の上方に向かって傾斜するように形成されている。すなわち、一方の傾斜面部4eはX1方向側で且つY2方向側に形成された脚部4cの根本位置からX2方向側で且つY2方向側の上方へ向って傾斜するように形成され、他方の傾斜面部4eはX2方向側で且つY1方向側に形成された脚部4cの根本位置からX1方向側で且つY1方向側の上方へ向って傾斜するように形成されている。接続部4hは、図6に示すように、その一部が台座部4aの上面に露出し、接点部4fを形成している。接点部4fの中心位置には上方へ突出した突出部4gが形成されている。また、接続部4hの一部は、図7に示すように、傾斜面部4eに露出し、傾斜面部4eに沿って延設された接続部4hを形成している。なお、接点部4fと接続部4hとは電気的接続されている。なお、グランド用接点ユニットU10に用いられる移動部材4は、図6(b)に示すように、接点部4fの一部が台座部4aの上面から側面に沿って脚部4cに向かって延設され、接地接触部4kが形成されている。
【0025】
グランド用接点ユニットU10および導電用接点ユニットU30は、導電部材3と一体に形成された保持部材2の上方に、導電部材3に接触するように重ねて移動部材4を配置することで形成される。
【0026】
次に電子部品用ソケット100の構造について図2図8ないし図11を用いて説明する。図8は第1実施形態における電子部品用ソケット100の構造を示す模式断面図である。なお、図8においては説明を容易にするために、貫通孔1aを1つのみ記載している。図9は第1実施形態における保持部材2が貫通孔1aの内部に保持された状態を示す平面図である。なお、図9図10に記載のZ2方向側から見た状態である。図10は第1実施形態における移動部材4が貫通孔1aに挿入される前の状態を示す模式断面図である。図11は第1実施形態における移動部材4を貫通孔1aに挿入する方法を示す図であり、図11(a)は挿入開始時の移動部材4を示す平面図であり、図11(b)は挿入後の移動部材4を示す平面図である。なお、図11においては、貫通孔1aの開口形状は簡略な形状で示している。
【0027】
電子部品用ソケット100は、図8に示すように、導電用の端子として用いられる場合には、ケース1の貫通孔1a内部に、導電用の移動部材4が貫通孔1aの上方から突出するように、導電用接点ユニットU30が配置されている。また、接地用の端子として用いられる場合には、ケース1の貫通孔1aの少なくとも1つの内部に、接地用の移動部材4が貫通孔1aの上方から突出するように、グランド用接点ユニットU10が配置されている。なお、グランド用接点ユニットU10および導電用接点ユニットU30は、導電部材3と一体に形成された保持部材2を下方側から貫通孔1aに挿入し、移動部材4を上方側から貫通孔1aに挿入される。
【0028】
このように、グランド用接点ユニットU10および導電用接点ユニットU30が貫通孔1aの内部に配置されることで、接地用延設部3d(第1接地用延設部3gおよび第2接地用延設部3h)は、図9に示すように、貫通孔1aの横方向(X1−X2方向)において対向して設けられた一対の内壁面に向かってそれぞれ延設される。また、第1接地用延設部3gは貫通孔1aの内壁面に沿って縦方向(Y1−Y2方向)に延設されるとともに、第2接地用延設部3hは貫通孔1aの内壁面に沿って縦方向に延設される。このように配置された接地用延設部3dは摺動可能に貫通孔1aの内壁面に弾接している。なお、貫通孔1aに挿入された保持部材2は、第1突設部2aおよび第2突設部2bが貫通孔1aの内壁面に接触し、上下方向(図8に記載のZ1−Z2方向)に平行な仮想軸を回転軸として回転するように挿入(圧入)され、貫通孔1a内に固定される。このように、保持部材2が回転するように貫通孔1aの内部に挿入されているため、導電部材3の下側延設部3cは保持部材2に対して捩じられたような状態で貫通孔1aの内部に配置されていることとなり、第1接地用延設部3gの縦方向における一端(Y2方向側の端部)および第2接地用延設部3hの縦方向における他端(Y1方向側の端部)が貫通孔1aの内壁面に圧接される。
【0029】
また、移動部材4は、図10に示すように、脚部4cを下方に向けた状態で貫通孔1aの上方側から挿入され、導電部材3の上側延設部3bに重ねるように配置される。移動部材4は、貫通孔1aの開口面積が大きくなるところに突起部4dが達するまで挿入される。なお、移動部材4を貫通孔に挿入する際には、図11に示すように、貫通孔1aに対して反時計回り方向へ回転させるようにして挿入される。このように挿入することで、突起部4dが貫通孔1aの上方側の開口部に引っかかることなく、移動部材4を貫通孔1aに挿入することができる。なお、図11においては脚部4c(図6参照)が貫通孔1aの上方側(Z1方向側)の開口部に接触しているように見えるが、脚部4cの角部は、下方側の一部に面取り加工が施されているため、接触していない。また、移動部材4が貫通孔1aに挿入される過程で、第1上側延設部3kおよび第2上側延設部3mは、図8に示すように、移動部材4の傾斜面部4eに接触して下方に撓む。また、下方に撓んだ第1上側延設部3kおよび第2上側延設部3mは、移動部材4を時計回り方向へ回転させる弾性力を発生する。そのため、移動部材4の挿入をやめる(下方への押圧をやめる)と、第1上側延設部3kおよび第2上側延設部3mは、移動部材4を時計回り方向へ回転させるとともに、移動部材4を上方へ押し上げる。このように移動部材4が押し上げられることで、突起部4dがフック部1b(図2参照)の段差に係合可能となり、移動部材4は上下方向へ移動可能であるとともに、脱落することなく貫通孔1a内に配置される。なお、第1上側延設部3kおよび第2上側延設部3mは、移動部材4の接続部4h(図7参照)に摺接可能に配置されており、移動部材4の突出部4gと導電部材3の固着部3eとは電気的に接続されている。
【0030】
次に電子部品用ソケット100の動作について図8を用いて説明する。
【0031】
電子部品用ソケット100は、実際に使用される場合には、図8に示すように、基板PBの上に配置され、半田SLにより固着部3eは基板PBの基板側接点部BTMに接続される。また、電子部品用ソケット100の上部には電子部品が配置される。電子部品は電子部品側接点部PTMを介して移動部材4を下方(Z2方向)へ押圧する。押圧された移動部材4は上側延設部3bを撓ませるため、移動部材4の接点部4f(突出部4g)が電子部品の電子部品側接点部PTMと圧接する。したがって、電子部品用ソケット100は、電子部品の電子部品側接点部PTMと基板PBの基板側接点部BTMとを電気的に接続する。また、電子部品用ソケット100上に配置された電子部品が外されると、上側延設部3bの弾性力により、移動部材4は突起部4dがフック部1bに接触する位置まで復帰する。
【0032】
また、対応する電子部品の電子部品側接点部PTMが接地用の端子である場合には、貫通孔1aにはグランド用接点ユニットU10が配置される。グランド用接点ユニットU10に用いられる接地用の移動部材4は接地接触部4kを備えている。図11(b)においては、貫通孔1aの開口形状を簡易な形状で示しているため、接地接触部4kは貫通孔1aの内壁面に接触していない。しかし、実際の貫通孔1aの上方側には、図2(b)に示すように、フック部1bが形成されているため、接地接触部4kはフック部1bに接触する。したがって、グランド用接点ユニットU10により、貫通孔1aの内壁面に対して貫通孔1aの上端側(接地接触部4k)および下端側(接地用延設部3d)で電気的に接続される。
【0033】
以下、第1実施形態としたことによる効果について説明する。なお、一部の説明においては図12を用いて説明する。図12は第1実施形態における電子部品用ソケット100が衝撃を受けた際の衝撃吸収部3fの撓み方および接地用延設部3dの摺動の仕方について示す図であり、図12(a)は衝撃吸収部3fの撓み方を示す模式側面図であり、図12(b)は衝撃吸収部3fの撓み方および接地用延設部3dの摺動の仕方を示す模式側面図である。なお、図12においては撓んだ状態および摺動した状態を破線で模式的示している。また、図12(a)においては第1接地用延設部3gは記載していない。
【0034】
第1実施形態の電子部品用ソケット100は、上下方向に貫通し内壁面が上下に渡って導電性を有する複数の貫通孔1aが形成されてなるケース1と、複数の貫通孔1aの少なくとも1つに配置され、電子部品の電子部品側接点部PTMと基板PBの基板側接点部BTMとを電気的に接続するとともに貫通孔1aの内壁面に対して貫通孔1aの上端側および下端側で電気的に接続されるグランド用接点ユニットU10と、を備え、グランド用接点ユニットU10は、貫通孔1a内に固定される保持部材2と、保持部材2に保持された導電部材3と、を有してなり、導電部材3は弾性を有し、保持部材2に保持される中間部3aおよび中間部3aから上側に延設される上側延設部3bおよび中間部3aから下側に延設される下側延設部3cを有する、電子部品用ソケットであって、下側延設部3cは、貫通孔1aの内壁面に弾接して摺動可能な接地用延設部3dと基板側接点部BTMに固着される固着部3eとを有するとともに、固着部3eと中間部3aの間に湾曲形成されてなる衝撃吸収部3fを備えた、ことを特徴とする。
【0035】
これにより、湾曲形成されてなる衝撃吸収部3fを下側延設部3cに設けるとともに、接地用延設部3dを貫通孔1aの内壁面に弾接して摺動可能に設けることで、電子部品用ソケット100が衝撃を受けてケース1が上下方向(Z1−Z2方向)に振動した場合に、図12に破線で示すように、衝撃吸収部3fが撓むことで衝撃を吸収し、接地用延設部3dは貫通孔1aの内壁面に沿って相対的に摺動することで電気的な接続を保持する。また、ケース1が縦方向(X1−X2方向)に振動した場合には、衝撃吸収部3fが縦方向に振動するとともに接地用延設部3dが縦方向に相対的に摺動することで衝撃を吸収する。また、ケース1が横方向(Y1−Y2方向)に振動した場合には、衝撃吸収部3fおよび接地用延設部3dが横方向に揺動することで衝撃を吸収する。したがって、衝撃を吸収することができるとともにシールド性能を高めることができる。
【0036】
また、第1実施形態の電子部品用ソケット100は、接地用延設部3dは、固着部3eの衝撃吸収部3fに繋がる位置とは異なる位置から貫通孔1aの内壁面に向かって延設された、ことを特徴とする。
【0037】
これにより、接地用延設部3dを、固着部3eの衝撃吸収部3fに繋がる位置とは異なる位置から延設することで、接地用延設部3dおよび衝撃吸収部3fを幅狭に形成するなどの制約が少なくなり、接地用延設部3dおよび衝撃吸収部3fが十分な機能を発揮することができる。
【0038】
また、第1実施形態の電子部品用ソケット100は、上下方向に直交する一の方向を横方向とし、接地用延設部3dは、貫通孔1aの横方向において対向して設けられた一対の内壁面に向かってそれぞれ延設される第1接地用延設部3gおよび第2接地用延設部3hと、からなり、第1接地用延設部3gおよび第2接地用延設部3hがそれぞれ逆方向に向かって貫通孔1aの内壁面に弾接する、ことを特徴とする。
【0039】
これにより、接地用延設部3dを、貫通孔1aの横方向(図12に示すX1−X2方向)に対向して設けられた一方の内壁面に向かって延設される第1接地用延設部3gと、他方の内壁面に向かって延設される第2接地用延設部3hと、を有する構造とし、第1接地用延設部3gおよび第2接地用延設部3hをそれぞれ逆方向に向かって貫通孔1aの内壁面に弾接させることで、横方向からの衝撃が加わった場合に、第1接地用延設部3gおよび第2接地用延設部3hで衝撃を吸収することができる。したがって、横方向からの衝撃により衝撃吸収部3fの変形および固定部の傾きを防止することができる。
【0040】
また、第1実施形態の電子部品用ソケット100は、上下方向および横方向に直交する方向を縦方向とし、第1接地用延設部3gは貫通孔1aの内壁面に沿って縦方向に延設されるとともに、第2接地用延設部3hは貫通孔1aの内壁面に沿って縦方向に延設され、第1接地用延設部3gの縦方向における一端および第2接地用延設部3hの縦方向における他端が貫通孔1aの内壁面に圧接されるように、保持部材2を貫通孔1a内に固定した、ことを特徴とする。
【0041】
これにより、第1接地用延設部3gおよび第2接地用延設部3hと貫通孔1aの内壁面とは、第1接地用延設部3gおよび第2接地用延設部3hの一部分で接触することとなる。第1接地用延設部3gおよび第2接地用延設部3hをこのように接触させることで、第1接地用延設部3gおよび第2接地用延設部3hの貫通孔1aの内壁面に対向する面の全面で貫通孔1aの内壁面に接触した場合に比べて、単位面積あたりの圧接力を大きくすることができる。したがって、弾接力が小さくても、第1接地用延設部3gおよび第2接地用延設部3hと貫通孔1aとの接触信頼性を高めることができる。
【0042】
以上のように、本発明の実施形態に係る電子部品用ソケットを具体的に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することが可能である。例えば次のように変形して実施することができ、これらの実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
【0043】
第1実施形態において、接地用延設部3dは互いに対向する位置に設けられた第1接地用延設部3gと第2接地用延設部3hとから形成されるが、形成する位置や大きさなどを変えることで、第1接地用延設部3gまたは第2接地用延設部3hのいずれか1つのみ形成する構成や、3つ目の第3接地用延設部を設ける構成などであってもよい。
【0044】
第1実施形態において、移動部材4を貫通孔1aに挿入する際に、移動部材4を回転させることで挿入可能な構成としたが、例えば、脚部4cに弾性を持たせ、脚部4cを撓ませながら挿入する構成(スナップイン)などであってもよい。なお、そのような構成とした場合の接地用に用いる移動部材4においては、接地接触部4kを移動部材4の側方へ突出するように設け、ケース1の上面と接地接触部4kとが接触可能とするなどの構造変更を行う必要がある。
【0045】
第1実施形態において、保持部材2が回転した状態で貫通孔1aの内部に保持されることで、接地用延設部3dの縦方向における一端部が圧接する構成とした。例えば、保持部材2を回転させないで挿入したとしても、接地用延設部3dの貫通孔1aの内壁面に対向する面が、貫通孔1aの内壁面に圧接する構成としてもよい。
【0046】
第1実施形態において、ケース1の一例を示したが、対応する必要のある電子部品の電子部品側接点部PTMにあわせて、貫通孔1aの配列や数量などを変更してもよい。同時に、外形形状なども変更してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 ケース
1a フック部
2 保持部材
2a 第1突設部
2b 第2突設部
3 導電部材
3a 中間部
3b 上側延設部
3c 下側延設部
3d 接地用延設部
3e 固着部
3f 衝撃吸収部
3g 第1接地用延設部
3h 第2接地用延設部
3k 第1上側延設部
3m 第2上側延設部
4 移動部材
4a 台座部
4b 通電部材
4c 脚部
4d 突起部
4e 傾斜面部
4f 接点部
4g 突出部
4h 接続部
4k 接地接触部
100 電子部品用ソケット
U10 グランド用接点ユニット
U30 導通用接点ユニット
BTM 基板側接点部
CL 中心線
PTM 電子部品側接点部
SL 半田
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13