(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
パウダー状のラメやアイシャドー等を塗布するために用いられる化粧用具として化粧用チップは知られている。そして、アイメイクの際には、目の上下のまぶた全体や二重の幅にチップを用いてアイシャドーを塗布したり、塗布されたアイシャドーをチップを使ってぼかしたり、グラデーションを作っている。
この際に使用する化粧用チップにはその形状においていくつもの例が挙げられる。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されたチップは、弾力性を有する板状の基板先端にウレタン等により略紡錘形の塗布部が形成されたものであり、先端には紡錘形状の凸部端部が形成された形状となっている。
特許文献2に記載された化粧用チップは、軸の周囲に弾力性を有する芯材を設け、その表面に表皮を設けてなる塗布部と、他端に塊状の塗布部が形成されたものである。
特許文献3に記載された化粧用綿棒は、基材に綿球を付け、先端部分に向かって扁平状となるように圧偏してなるものであり、その先端部は円弧状を形成してなるものである。
特許文献4に記載された化粧塗布具は、板状の塗布体取付部を袋状の塗布体に挿入してなる塗布具である。
このような化粧用チップの塗布面にアイシャドー等を付着させた後、それをまぶたや二重の幅部分に接触させて、アイシャドー等を塗布したり塗り拡げたりすることにより化粧を行っている。
【0004】
このような化粧に際しては、まぶたや二重の幅のように、細かい部位を丁寧に塗ることが要求されるが、特許文献1〜4に記載されたような化粧用チップは、化粧用チップの塗布部が板状等の形状を有する取付用部材に接続されているので、その板状の取付用部材が剛性を有するものであれば、化粧用チップも剛性を有するものであり、そのような物性を利用して化粧用チップを使用していた。
また、取付部材が弾性を有しており、その形状が板状であると、化粧用チップとした場合に、ある方向には特に弾性を十分に発揮できるものであり、使用者は、チップの性質を考慮して化粧料を塗布していた。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本発明の化粧用チップの構造)
本発明の化粧用チップは公知の化粧用チップと同様に支持具の一端に設けられるものである。
そして、多孔性部材からなる化粧料の塗布部1を有すると共に、その塗布部1は先端が紡錘形の弾性基材2の該先端に設けられている。
本発明は任意の方向に同じ程度の柔軟性を有する化粧用チップとするために、特に化粧料の塗布部を担持する弾性基材2の形態と物性に特徴を有するものであり、その形状は長さ方向に垂直な方向での切断面が円形であるものである。
【0012】
(塗布部)
本発明の化粧用チップについて、図面の記載を基にして以下に説明する。
図1は、塗布部1を示した図であり、該塗布部1はポリウレタン、ポリオレフィン樹脂等の合成樹脂や天然樹脂製の公知の多孔性部材、あるいは、植毛された樹脂製部材からなる。
該多孔性部材が連続気泡を有していても良く、また独立気泡を有していても良い。化粧用チップとした際には、化粧料を担持する表面を構成するので、粉体、あるいは液状の化粧料を必要量担持することが可能な程度の多孔性を有することが必要である。
同様に植毛された樹脂製部材からなる場合にも、化粧料を担持可能な程度に植毛されていることが求められる。
つまり、本発明の化粧用チップの塗布部1は、化粧料を含浸でき、又は担持できるように多孔性又は植毛されたものであることが望ましい。多孔性である場合の多孔度については、通常の化粧用チップと同程度でも良く、使用する化粧料の種類、粘度、使用する部位、塗布面の面積や厚さ等に応じて求められる適切な多孔度となるようにすることが、含浸量や担持量等の使用性の面からみて必要である。
塗布部1が植毛された層である場合にも、その密度や毛長を検討して、目的とする化粧料の含浸量や担持量等とすることができる。
この塗布部1自体の構造は多孔性部材が袋状を有しており、この内部に先端が紡錘形で断面が円形の弾性基材の該先端が挿入されることによって、化粧用チップの塗布部表面を形成することができる。
【0013】
そのため、塗布部1の大きさは挿入される該弾性基材の大きさにも依存し、袋状の内径及び長さは、該弾性基材の外径及び化粧用チップ先端に形成させたい塗布部の長さによって決定される。このため、袋状を有する塗布部1の内径は1〜35mm、好ましくは3〜20mm、さらに好ましくは5〜10mmであり、塗布部1の長さは、5〜40mm、好ましくは8〜30mm、より好ましくは10〜20mmである。
さらに、該塗布部1を形成する多孔性部材の厚さは0.2〜3mm、好ましくは1.0〜2.5mm、より好ましくは、1.5〜2.0mmである。
【0014】
また、塗布部1に使用される多孔性部材を得る具体的な方法としては、連続気泡のスポンジをスライス刃によりスライスして厚さが0.2〜3mm、より好ましくは1〜2.5mmにして、両面がスライスされてなるスライスシートを得る。スライスはスポンジ表面に存在する緻密な層、つまりスキン層を除去すること、及び厚さを調整することにより使用時の化粧料等の含浸量を調整することを目的として行う。スライスシートの厚さを0.2mm未満とすることは困難であり、スライスシートの厚さが3mm以上であると含浸量の調整に有用ではなく好ましくない。また、連続気泡でなければ、十分に化粧料等を含浸して保持することが困難になる。
【0015】
スライスシートの表面は、上記のように連続気泡のスポンジの気泡がスライス刃で切断される際に、該刃が気泡の壁面に引っかかるために生じる大きな凹凸を有しており、この凹凸はスポンジが有している気泡による凹凸よりも大きいものである。
そして、連続気泡スポンジをスライスしてなるスライスシートの一面が塗布面を形成し、該スライスシートの他面の、スライス刃により表面が荒れることで生じた凹部、及び該連続気泡スポンジが元々有する泡が切断されてなる凹部の2種の凹部が複合して形成された凹部にその内面形状通りに密着して被覆層が設けられたものでも良い。この場合には、弾性基材表面に該スライスシートの被覆層形成側の面を接着させる等して、該スライスシートの塗布面側が表面に向くようにする。
【0016】
該被覆層としては、上記のように、被覆層はスライスシート表面に存在する凹部形状に密着して機能する層であるから、該凹部に存在する被覆層は厚く、凸部に存在する被覆層は比較的薄く形成されている。被覆層の厚さは2〜50μm、より好ましくは2〜20μmであるが、この厚さは平均厚さであり、熱転写前の離型層を介して基材フィルム上に形成されていたときの厚さと同じ厚さである。
そして凹部形状に密着するように被覆層が形成されている結果、該凹部はスライスシートと連通する通路が埋められて、気泡とは連通した状態ではなくなる。そして、化粧用チップを使用する際に、スライスシートから形成された表面層に含浸してなる化粧料等が、該凹部までは到達しないので該凹部に滞留することがなく、スライスシートの厚さにより決まる含浸量及び予定の塗布量通りに正確に塗布することが可能となる。それと共に、化粧用チップに過剰な化粧料が吸収されること、使用時に音が発生すること、及び使用するにつれて塗布面の皺の発生を防止することが可能となる。
【0017】
そのような、離型層の上に設けた熱転写層とする皮膜の成分としては、凹凸に密着して不浸透皮膜となるものである。柔軟な樹脂被膜成分としては、引張破壊力45〜60MPa、引張破壊歪み500〜700%の範囲にあるポリエステルウレタン樹脂が好ましい。
より好ましい引張破壊力は48〜53MPa、より好ましい引張破壊歪みは550〜650%である。引張破壊力及び引張破壊歪みがこの範囲より小さいと皮膜が破れやすく、大きいと密着性が不良となりスライスシートの凹部に密着して被覆しきれないので、いずれにしても該凹部と連続気泡が連通しないようにすることができない。該ポリエステルウレタンからなる厚さ2〜50μmの熱転写層を形成するために該樹脂を溶剤に溶かして基材シート上の離型層表面に塗布する。
【0018】
(弾性基材)
図2は、本発明において使用される先端が紡錘形で断面が円形の弾性基材2の一例であり、NBR、NR、SBR、EPDM、ポリエチレン、ポリウレタン等のような弾性を有する多孔性樹脂材料、あるいはシリコンやTPUに代表されるエラストマー等の樹脂材料から形成されるものである。
この弾性基材2は、ある程度の範囲の硬さを必要とするが、硬すぎると弾性を十分に発揮することができず、使用時において化粧用チップがしなりにくくなるので、目的とした化粧が困難になる可能性がある。
また、弾性基材2が柔軟すぎると、いわゆるコシがなくなるために、使用時において、化粧用チップをたわませて、その反発力を使用して化粧用チップを皮膚表面に押しつけることによる塗布が困難になる。
弾性基材はその軸方向に垂直な面での断面が円形である理由は、例えば弾性基材が板状であると、弾性を利用して化粧用チップをたわませるにあたっても、たわませる方向によって、十分にたわんだり、そうでなかったりする方向性が出るので、そのような方向性が出ないようにするためにも、断面を円形とすることが必要である。
なお、使用時においてそのような方向性によるしなりの違いを感じない程度であっても良く、その場合には、断面が正多角形である弾性基材を使用することも可能である。
【0019】
弾性基材は上記のように、袋状の塗布部1内に挿入され、接着剤等により弾性基材2上に袋状の塗布部1を被覆し、接着剤によって固定が可能となるような大きさであることが求められる。よって、その大きさは上記の塗布部1の内径の大きさに依存することは明らかである。
また、その形状に関しても、袋状の塗布部1の内面の形状によって決定される。
【0020】
(化粧用チップ)
図3は、
図1及び2に示された塗布部1と弾性基材2が組み合わされてなる化粧用チップの図である。
袋状の塗布部1の内面に弾性基材2の先端の紡錘形部分を挿入し、接着剤等により固定することにより、
図3に示される化粧用チップとすることができる。
弾性基材2のなかでも塗布部1に挿入されておらず、外面に出ている部位aは、化粧用チップを支持して使用する際に、その部位に手持ち化粧用具の支持部を刺すか、あるいは、その部位を図示しない手持ち化粧用具の支持具によって把持することにより、化粧用チップを化粧に使用するための手持ち用具に固定することが可能となる部位である。
もちろん、部位aを形成しなくても良く、弾性基材の全てを袋状の塗布部によって覆っても良い。この場合には、手持ち化粧用具の支持部又は把持部が袋状の塗布部によって覆われた部分の、化粧用チップの先端からなるべく離れた部分を支持、あるいは把持することによって、手持ち化粧用具に本発明の化粧用チップを固定することができる。
【0021】
支持具はその一端に化粧用チップの塗布部を支持し、また直接、あるいはさらに支持する部材と接続した上で、指で持って化粧するための部材である。支持具の他端には、例えば化粧用ブラシ等の化粧時に用いる道具等を設けることが可能であるし、又は支持具の両端を塗布部としても良い。
支持具は弾性を有するものでも有しないものでも良いが、ある程度の弾性を有することにより塗布時に皮膚面に追従して塗布部1を密着させることができる点で好ましい。また支持具は吸液性がないものが好ましく、吸液性を有すると液体の化粧料を吸液して支持具自体の弾性等の性質が変化して、取り扱い性や、化粧料の塗布性が劣ることになる場合がある。
【0022】
本発明の化粧用チップはその先端部が直線や平面を形成していても良い。その場合には、化粧用チップは正面からみて先端である端縁部が平らないわゆる直線状を呈していても良い。
その先端の形状は
図4のAに示されるように直線であっても良く、塗布部1の形状もこれらの図に示されたものに限定されず各種の形状のものでも良い。
【0023】
図4のBは、
図4のAにて示す化粧用チップの側面図であり、化粧用チップ先端は、図示するような厚みに限定されず、より厚いものでも薄いものでも良い。薄いほうが目の際を塗布する際により細い線を描くことができるし、二重幅の目頭もよりピンポイントで塗布することが可能となる。
【0024】
また、一旦使用した化粧用チップには、使用時に付着した皮膚上の常在菌等が存在する。例えば化粧用チップに水性の化粧料等が付着している場合には、その常在菌等の繁殖により化粧用チップが臭気を発生することになる。また、使用後に洗浄されて水分を含有する化粧用チップは、この水分中に存在する水棲菌等が繁殖することによっても、同様に臭気を発生することになる。しかしながら、塗布部1に抗菌剤を含有させておくと、該抗菌剤が徐々に化粧用チップに拡散して常在菌や水棲菌等の繁殖を防止、又は殺菌することができるので、臭気の発生を防止することができる。
【0025】
このような用途に使用できる抗菌剤は、銀ゼオライト、銀含有ガラス等の銀系の抗菌剤や、化粧料用に使用できる抗菌剤等、公知の抗菌剤を任意に選択して使用することができる。中でも銀系の抗菌剤は、抗菌性と化学的安定性と皮膚を刺激しない等人体への安全性の観点から好ましい。
【0026】
このように、該塗布部1に抗菌剤を配合することが臭気の発生防止の点から必要である。
仮に塗布部1に抗菌剤を配合しようとすると、それらの材料が加硫発泡体である場合には、抗菌剤と硫黄化合物とが反応して抗菌性を失うことになり、また湿式方法により発泡体を得る方法において抗菌剤を配合しようとしても、液体中において泡を形成するために溶出される可溶性粒子と共に例えば銀含有の抗菌剤も溶出されることになるので、塗布部1には抗菌剤が残留しないために抗菌性を発揮できない。このため、加硫発泡体や湿式方法による発泡体でない発泡体を対象に抗菌剤を配合するのが好ましい。
【0027】
また、塗布部1には香料、着色剤、充填剤等の公知の樹脂用添加剤を必要によって選択して含有させることができ、着色剤を使用した場合には化粧料チップの面によって色を変えることや、化粧料チップ表面に模様等を描くことが可能となる。
【0028】
このような化粧用チップ1を用いて化粧を行うにあたり、
図5に示すようなハンドル付化粧用チップとすることができる。その際には、手持ち化粧用具のための把持部であるハンドル部3の一端に口金部4を接続し、この口金部4を介して化粧用チップを接続する。
該ハンドル部3の材料としては樹脂や金属が好ましく、ある程度の弾力を備えて少ししなる材料が好ましい。弾力を備えることにより、化粧時に化粧用チップが皮膚表面に一定の力にて接触されることになる。
【0029】
該口金部4は金属製の筒形形状であり、一端はハンドルの端部を内挿し、化粧用チップ1を固定するために、他端は
図3に示すような化粧用チップ1の部位aを内挿することができ、あるいは部位aを有しない
図1や
図2に示すような化粧用チップであればその根元部分を該口金部4に内挿することができる。
該口金部4は、変形することなく柔軟性に欠けるために、ある程度のしなりを生じるハンドル部3を手にとって化粧をする場合にも、該口金部4により確実に化粧用チップをハンドル部3に固定でき、それにより化粧時に化粧用チップが皮膚表面に一定の力にて接触させることができる。
【0030】
ハンドル3と口金部4との固定、口金部4と化粧用チップ1との固定はエポキシ樹脂等の接着剤によって行うことができる。あるいは口金部4の化粧用チップ1を内挿する側の端部にその端部を縮径及び拡径自在とする機構を設けることにより、化粧用チップ1を交換可能として任意に新品の化粧用チップを固定することもできる。この場合には接着剤を用いずに固定することになる。
【0031】
該ハンドル部3及び該口金部4の断面形状は手に持ちやすく、特定の方向にのみ曲がる等はないことが好ましい。上記の効果を発揮させるためにも、このため断面形状は円又は5角形や6角形である。ハンドル部3の長さは手指に馴染みやすい20〜70mm、口金部4の長さは5〜30mmとすることが必要である。
該ハンドル部3及び該口金部4の太さは指によりつまめる程度であって、通常の化粧用具の指で持つ部分の太さが適当である。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の化粧用チップを実施例を基に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0033】
多孔性部材である湿式方法により得られた連続気泡のポリウレタンスポンジの原反を厚さ2.5mmとなるようにスライスし、これを洗浄、乾燥した後に、打ち抜きによって略三角形となるように切断する。
この切断されたポリウレタンスポンジを2枚用意し、これらの縁部を互いに接着、溶着、縫合することによって化粧用チップの塗布部を形成させる。
一方、研磨され、紡錘形に整形された弾性基材であるNBRスポンジを用意し、この弾性基材表面に接着剤層を形成するか、塗布部内面に接着剤層を形成してなる該化粧用チップの塗布部を用意する。次いで、該弾性基材を該化粧用チップの塗布部に挿入しつつ、該接着剤によって該弾性基材の先端部に該化粧用チップの塗布部を固定させる。これを乾燥し、減菌処理を施して、化粧用チップを製造する。
【0034】
(チップしなり試験)
本発明及び比較例の化粧用チップに関して、それらのしなり性が方向によって異なるかどうかを試験した。
測定試料は、本発明のものが、先端が紡錘形で断面が円形(直径6.7mm)のNBRスポンジからなる弾性基材に、厚さが2.5mmのポリウレタンスポンジからなる多孔性部材を表面に設けてなる化粧用チップであり、比較例のものが、幅5mm、厚さ0.8mmのナイロンからなる弾性基材に、本発明と同様のポリウレタンスポンジからなる多孔性部材を表面に設けてなる化粧用チップである。
【0035】
しなり試験器を使用し、治具にチップを固定して、100mm/minの速度で上方に3mm治具を移動させた際のしなり強度を測定した。
【表1】
【0036】
上記の結果により、本発明のチップは既存の化粧用チップである比較例のチップに対して方向依存性がないことが明らかになった。この違いは本発明のチップは芯材として断面が円形のものを採用したのに対し、比較例のチップは芯材に板状のものを採用していることによる。このため、測定角度、つまり、測定時の試料のセットの仕方によって、両者のしなりの程度が異なる。このことは、使用時におけるチップの角度を意味するものであり、両者のしなりの程度が異なることによって塗布性も異なるものである。
【0037】
(チップ使用テスト)
パウダーアイシャドー(メインカラー)を本発明の化粧用チップ全体にピックアップした状態で、アイホール全体に塗布した。このチップは肌当たりが滑らかであり、アイホール、まぶた全体等の広い面を塗りやすく、チップの芯材の硬さを感じることがなく自由に動かせる。