(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284175
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/475 20060101AFI20180215BHJP
A61F 13/47 20060101ALI20180215BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20180215BHJP
A61F 13/494 20060101ALI20180215BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
A61F13/475 111
A61F13/475 112
A61F13/47 300
A61F13/53 200
A61F13/494 111
A61F13/49 100
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-75314(P2013-75314)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-198195(P2014-198195A)
(43)【公開日】2014年10月23日
【審査請求日】2016年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082647
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 義久
(72)【発明者】
【氏名】松村 貴史
【審査官】
▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−227149(JP,A)
【文献】
特開2012−105908(JP,A)
【文献】
特開2000−271167(JP,A)
【文献】
特開2000−262553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15−13/84
A61L15/16−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の肌に当接する表面シートと、前記表面シートの裏面側に設けられる体液吸収体と、前記吸収体の裏面側に設けられる体液の裏面への移行を阻止する防漏シートとを含み、
幅方向両側部において、少なくとも側縁部に弾性伸縮部材が前後方向に沿って設けられ、使用時に弾性伸縮部材の収縮力により使用面側に起立する立体ギャザーを有し、
前記吸収体の前後方向中間部における両側に、幅方向中心側へ向かって窪んだ窪み部を有し、かつ、この少なくとも窪み部で囲まれる領域においては、前記表面シートと裏面側のシート材料で形成され、前記吸収体より可撓性の易撓み部とされ、この易撓み部は前記立体ギャザーの起立と連動するように構成され、
前記窪み部、または前記窪み部の外側近傍が、前記易撓み部の他の部分よりも剛性が高く形成され、
前記立体ギャザーシートの起立根元側には、前記易撓み部とほぼ同じ前後方向長さ範囲で、中間弾性伸縮部材が固定されており、
前記中間弾性伸縮部材は、前記立体ギャザーを幅方向外側へ展開した状態の平面視で、幅方向外側へ膨らむ形態であり、
前記中間弾性伸縮部材は、前記立体ギャザーを幅方向内側へ倒した状態の平面視で、前記易撓み部と同じ位置に重なる前記立体ギャザーに固定されていることを特徴とする立体ギャザーを有する吸収性物品。
【請求項2】
前記剛性の高い部分が、ヒートシール、超音波、ヒートエンボスの群から選ばれるいずれかの手段により形成される請求項1記載の立体ギャザーを有する吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収性物品は、下半身用肌着もしくは紙おむつの使用面側に配置する吸収パッド、テープ式紙おむつまたはパンツ式紙おむつである請求項1または2に記載の立体ギャザーを有する吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿などの排泄物を吸収するために使用される吸収性物品に関するものである。より詳細には、下半身用肌着もしくは紙おむつの使用面側に配置する吸収パッド、テープ式紙おむつまたはパンツ式紙おむつなどの吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前記吸収性物品の一例である吸収パッドは、おむつ交換費用の低減や、トイレトレーニングを目的として、テープ式やパンツ式の使い捨ておむつの内面、あるいは下半身用肌着の内面に取り付けて使用される(例えば特許文献1または2参照)。
【0003】
一般的な吸収パッドは、表面シートと防漏シートとの間に、体液を吸収する吸収体が介在されてなる基本構造を有しており、製品によっては不織布等からなる外装シートが、防漏シートの裏面側を覆っている。
【0004】
また、吸収パッドの使用面側の幅方向両端に、前後方向に沿って立体ギャザーが配されている製品も存在する。このような製品を着用すると、この立体ギャザーが着用者の使用面側に向かって立ち上がり、その結果、吸収パッドからの排泄物の横漏れを防ぐことができる。
【0005】
さらに、吸収パッドは、シート状であって略矩形状を呈するものが一般的である。その他には、吸収体の股間部において、幅方向外側から中央側へ一対の窪み部を設け、吸収パッドの股間部の幅方向の幅を小さくすることにより、着用者の大腿部とのフィット性を向上させたものもある。
【0006】
前記の吸収パッドの一例として、側壁部に対して、本体部の長手方向と平行に弾性部材を配設した吸収性物品が開示されている(特許文献3)。この弾性部材が収縮することにより、吸収部の側方において、側壁部が収縮して着用者側に向かって立ち上がり、着用時に着用者の付け根近傍に当接する立体ギャザーが形成される。
【0007】
そのほか、吸収性物品の長手方向に沿うように伸長状態で第一弾性部材および第二弾性部材を配設した吸収性物品も開示されている(特許文献4)。この各弾性部材が収縮することにより、フィット性が良くなるとともに、経血等の排泄物の横漏れを確実に防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−287791号公報
【特許文献2】特開2003−210524号公報
【特許文献3】特許第4459753号公報
【特許文献4】特開2009−178274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献3および4記載のような従来の吸収性物品は、吸収性物品の幅方向両側に設けた立体ギャザーの立ち上がり起点が定まらず、立体ギャザーの立ち上がる高さがばらばらになりやすい。
【0010】
より詳細には、着用する前に吸収性物品を広げた段階で、立体ギャザーが窪み部から立ち上がらずに、フィットカット部分よりも幅方向外側の任意の部分から立ち上がることが多い。その結果、製品を着用する際に立体ギャザー部分に足がひっかかりやすくなるという問題がある。
【0011】
また、吸収性物品を着用した段階においては、着用者の脚圧によって、立体ギャザーの側壁同士が重なりあう等の状態になり、立体ギャザーの立ち上がる高さを十分に確保できない場合が多い。その結果、着用者の大腿部と立体ギャザーの密着性が弱くなり、漏れ防止の観点から問題がある。
【0012】
さらに、前記従来例のように、吸収パッドの長手方向と平行に弾性部材を配設すると、弾性部材が収縮したときに、つられて吸収体も収縮してしまう場合がある。特に、弾性部材と吸収体の間の距離が短いときに、このような問題が生じやすい。
【0013】
そこで、本発明の主たる目的は、吸収性物品に設けられた窪み部から立体ギャザーを立ち上げることにある。そして、着用者の大腿部と立体ギャザーの密着性を強くし、排泄物の横漏れを防ぐことにある。また、弾性部材が収縮した際に、それにつられて吸収体が収縮することを防ぐことにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
着用者の肌に当接する表面シートと、前記表面シートの裏面側に設けられる体液吸収体と、前記吸収体の裏面側に設けられる体液の裏面への移行を阻止する防漏シートとを含み、
幅方向両側部において、少なくとも側縁部に弾性伸縮部材が前後方向に沿って設けられ、使用時に弾性伸縮部材の収縮力により使用面側に起立する立体ギャザーを有し、
前記吸収体の前後方向中間部における両側に、幅方向中心側へ向かって窪んだ窪み部を有し、かつ、この少なくとも窪み部で囲まれる領域においては、前記表面シートと裏面側のシート材料で形成され、前記吸収体より可撓性の易撓み部とされ、この易撓み部は前記立体ギャザーの起立と連動するように構成され、
前記窪み部、または前記窪み部の外側近傍が、前記易撓み部の他の部分よりも剛性が高く形成され、
前記立体ギャザーシートの起立根元側には、前記易撓み部とほぼ同じ前後方向長さ範囲で、中間弾性伸縮部材が固定されており、
前記
中間弾性伸縮部材は、前記立体ギャザーを幅方向外側へ展開した状態の平面視で、幅方向外側へ膨らむ形態であり、
前記中間弾性伸縮部材は、前記立体ギャザーを幅方向内側へ倒した状態の平面視で、前記易撓み部と
同じ位置に重なる前記立体ギャザーに固定されていることを特徴とする立体ギャザーを有する吸収性物品。
【0015】
(作用効果)
前記窪み部や、窪み部の外側近傍に、剛性の高い部分を設けることにより、その剛性の高い部分を起立起点として、立体ギャザーを立ち上げることができる。その結果、吸収性物品を着用する際に、立体ギャザー部分に足がひっかかりにくくなる。また、吸収性物品を着用した段階において、着用者の脚圧によって、立体ギャザーの側壁同士が重なりあう状態を回避することができ、立体ギャザーの立ち上がる高さを十分に確保することができる。その結果、着用者の大腿部と立体ギャザーの密着性が強くなり、排泄物の横漏れを防ぐことができる。
また、前記のように中間弾性伸縮部材を設け、この中間弾性伸縮部材が収縮することにより、より一層、剛性の高い部分から立体ギャザーを立ち上げやすくなる。その結果、着用者の大腿部と立体ギャザーの密着性が強くなり、排泄物の横漏れを防ぐことができる。また、中間弾性伸縮部材を外側に向かって湾曲するように配置することで、吸収体の収縮を防ぐことができる。
【0016】
<請求項2記載の発明>
前記剛性の高い部分が、ヒートシール、超音波、ヒートエンボスの群から選ばれるいずれかの手段により形成される請求項1記載の立体ギャザーを有する吸収性物品。
【0017】
(作用効果)
ヒートシール、超音波、ヒートエンボスのいずれかの手段を用いることにより、前記剛性の高い部分を容易に形成することができる。その結果、吸収性物品の製造効率の低下を抑えることができる。製造スピードが速く、剛性が高くなりすぎないなどの理由により、特に超音波が好ましい。
【0018】
削除
【0019】
削除
【0020】
<請求項3記載の発明>
前記吸収性物品は、下半身用肌着もしくは紙おむつの使用面側に配置する吸収パッド、テープ式紙おむつまたはパンツ式紙おむつである請求項1または2に記載の立体ギャザーを有する吸収性物品。
【0021】
(作用効果)
本発明は、吸収パッドだけではなく、窪み部と立体ギャザーを有するテープ式紙おむつやパンツ式紙おむつにも適用することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上の通り本発明によれば、窪み部から立体ギャザーを立ち上げることができる。そして、着用者の大腿部と立体ギャザーの密着性を強くし、排泄物の横漏れを防ぐことができる。また、弾性部材が収縮した際に、それにつられて吸収体が収縮することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第一実施例(高剛性部あり、中間弾性伸縮部材なし)に係る吸収パッドの平面図である。
【
図2】本発明の第一実施例に係る吸収パッドであって、立体ギャザー部分を幅方向外側へ展開した状態を示した平面図である。
【
図4】
図1のA−A断面図であって、立体ギャザーが起立した状態を示した図である。
【
図7】本発明の第二実施例(高剛性部あり、中間弾性伸縮部材あり)に係る吸収パッドの平面図である。
【
図8】本発明の第二実施例に係る吸収パッドであって、立体ギャザー部分を幅方向外側へ展開した状態を示した平面図である。
【
図10】
図7のD−D断面図であって、立体ギャザーが起立した状態を示した図である。
【
図12】本発明の第二実施例に係る吸収パッドであって、立体ギャザーが起立した状態を示した斜視図である。
【
図13】本発明に係るパンツ式紙おむつの平面図である。
【
図14】本発明に係るテープ式紙おむつの平面図である。
【
図15】
図8に対応する平面図であり、高剛性部と中間弾性伸縮部材の形状のバリエーションを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。
(第1の形態)
図1〜7は、第1の形態の吸収パッド200を示している。この吸収パッド200は、前後方向中央部分C1及びそれに対して前側に延在する腹側(前側)部分F1及び後側に延在する背側(後側)部分B1を有するものである。各部の寸法は適宜定めることができ、例えば、物品全長(前後方向長さ)L1は400〜600mm程度、全幅W1は120〜200mm程度とすることができる。
【0025】
吸収パッド200は、表面シート22と防漏シート21の間に、吸収体23が介在された基本構造をしている。
【0026】
(表面シート)
表面シート22は、排泄物の水分を捕捉して吸収体23へ移動させる。表面シート22は透液性の材料、例えば、親水性繊維により形成された不織布が好ましい。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0027】
(吸収体)
排泄物の水分を吸収する吸収体23としては、パルプ繊維の積繊体、綿状パルプ、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。そして、必要に応じて、吸収体23はクレープ紙(図示せず)により包むことができる。また、吸収体23の形状は、例えば、前側から後側までの幅がほぼ同じである長方形状とすることができる。あるいは、相対的に前側の部分が後側の部分よりも幅広な台形状等、適宜の形状とすることもできる。吸収体23における繊維目付け及び吸収性ポリマーの目付けは適宜定めることができるが、繊維目付けは100〜600g/m
2程度とするのが好ましく、また吸収性ポリマーの目付け0〜400g/m
2程度とするのが好ましい。なお、この吸収体23は半剛性の性質を有し、弾性伸縮部材の収縮力や脚圧などによって、ある一定以上の力がかかると撓む性質を有する。また、この吸収体23がある箇所は、易撓み部28のような吸収体23がない箇所よりも、撓みにくいという性質を有する。
【0028】
(防漏シート)
吸収体23の裏面側には、排泄物の水分が裏面への移行することを阻止する防漏シート21が設けられている。防漏シート21としては、ポリエチレンフィルム等のほか、ムレ防止の観点から、遮水性を損なわずに透湿性を備えたシートも用いることができる。この遮水・透湿性シートは、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートを用いることができる。
【0029】
(外装シート)
防漏シート21の外面(裏面)を、外装シート25により覆うようにしてもよい。外装シート25としては各種の不織布を用いることができる。この不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0030】
吸収パッド200の幅方向両端部では、前記外装シート25が吸収体23の側縁よりも外側にそれぞれ延在され、この延在部が吸収パッド200の裏面側から使用面側へ折り返される。そして、この折り返された外装シート25の内面が、前記表面シート22の表面と貼り合わされる。この貼り合わせは、ホットメルト接着剤、ヒートシール、超音波シールなどの公知の手段により行うことができる。
【0031】
(ズレ止め部)
また、吸収パッド200の裏面に、粘着剤層からなるズレ止め部(図示しない)を設けてもよい。このズレ止め部としては、フック状突起を多数有するフックテープを用いることも可能である。フック状突起の形状としてはキノコ状の他、フック状、レ字状、J字状、T字状、ダブルJ字状(J字状のものを背合わせに結合した形状のもの)等が存在するが、いずれの形状であっても良い。なお、フックテープはホットメルト接着剤等により取り付けることができる。ズレ止め部は、剥離シートにより剥離可能に被覆しておき、使用時に剥離シートを剥離してズレ止め部を露出させるのが望ましい。
【0032】
(エンドフラップ)
また、吸収パッド200の前後方向両端部では、外装シート25、防漏シート21および表面シート22が、吸収体23の前後端よりも前後両側にそれぞれ延在されて貼り合わされ、吸収体23の存在しないエンドフラップ部EFが形成されている。この貼り合わせも、ホットメルト接着剤、ヒートシール、超音波シールなどの公知の手段により行うことができる。そして、これらエンドフラップ部EF以外の吸収体介在部分が、排泄物を保持する本体部BDを構成する。
【0033】
(立体ギャザー)
立体ギャザーを構成するギャザーシート24は、幅方向外側の部分が前後方向全体にわたり、吸収パッド200の使用面(図示形態では、表面シート22の表面および外装シート25の外面)に貼り合わされて固定される。それとともに、幅方向中央側の部分が、前後方向の両端部では吸収性物品の使用面(図示形態では、表面シート22の表面)に貼り合わされて固定され、かつ前後方向の両端部の間では、吸収性物品の使用面に固定されていない。なお、高剛性部29を設けた場合、立体ギャザー26の起立基端は、高剛性部29となる。また、高剛性部29を設けずに中間弾性部材30のみを設けた場合、立体ギャザー26の起立基端は、窪み部27となる。
【0034】
前記ギャザーシート24の素材としては、プラスチックシートやメルトブローン不織布を使用することもできるが、肌への感触性の点で、不織布にシリコンなどにより撥水処理をしたものが好適に使用される。
【0035】
そして、そのギャザーシート24の側縁部には、弾性伸縮部材31が前後方向に沿って伸張状態でホットメルト接着剤等により固定されている。この弾性伸縮部材31としては、糸状、紐状、帯状等に形成された、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等、通常使用される素材を用いることができる。
【0036】
(窪み部)
前記吸収体23の前後方向中央部分C1(以下、「股間部」という。)においては、幅方向外側から中心側へ向かって窪んだ窪み部27が設けられる。吸収体23にこのような窪み部27を設けることにより、着用者が吸収体23を装着した際に、股間部におけるごわつきを低減することができる。また、この窪み部27を設けていない製品と比べて、着用者の脚圧により股間部の吸収体23の潰れる量が少なくなるため、排泄物の漏れの防止効果を高めることができる。
【0037】
また、この窪み部27の形状は、
図15に例示するように、弧状、台形状等、任意の形状にすることができる。なお、装着者の大腿部と吸収体23の接触面積を増加させて、肌触りを良くするため、大腿部の肌の湾曲に沿った弧状とするのが好ましい。
【0038】
(易撓み部)
前記吸収体23の側縁の延長仮想線と窪み部27によって囲まれる領域は、吸収体23が存在しないのであるから、吸収体23の存在領域より柔らかく、可撓性に富んでいる。したがって、容易に撓む易撓み部28が形成されている。この易撓み部28は、表面シート22と、この表面シート22の裏面側にあるシートによって構成される。この裏面側のシートには、例えば防漏シート21や外装シート25が含まれ、吸収体23は含まれない。この易撓み部28は、前記立体ギャザー26が起立すると、連動して起立するように構成される。
【0039】
(高剛性部)
そして、本発明においては、窪み部27に沿って、あるいは窪み部27の外側の近接した位置において(好適には窪み部27に沿って)、ヒートエンボス等を施すことによって、易撓み部28あるいは窪み部27の剛性を高くした高剛性部29が形成されている。この高剛性部29の形状は、
図15に例示するように、弧状、台形状等、任意の形状にすることができる。なお、窪み部27の形状と高剛性部29の形状は、一致していているのが望ましいが、必ずしも一致していなくて良い。例えば、窪み部27の形状が台形状である場合であっても、装着者の大腿部に対する肌触りを良くすることを考慮すると、高剛性部29の形状を、大腿部の肌の湾曲に沿った弧状にするのが好ましい。
【0040】
また、前記高剛性部29は、表面シート22および裏面側のシートに対して、ヒートシール、超音波、ヒートエンボス等を施すことによって形成することができる。特に、製造スピードが速く、剛性が強くなりすぎない等の理由から、超音波によって形成することが好ましい。なお、この高剛性部29を形成する場合、表面シート22から裏面側のシートへ向けて、窪みを形成することが好ましい。そのため、例えばヒートエンボスを用いて高剛性部29を形成する場合、製造ロールの凸状部分を使用面側からのみ押し込むことや、使用面側及び裏面側の両面から押し込むことが好ましい。
【0041】
このように高剛性部29を形成することにより、立体ギャザー26の弾性伸縮部材31が収縮したときに、高剛性部29が起立起点となって、易撓み部28を立ち上げることができる。その結果、立体ギャザー26の立ち上がる高さが高くなるため、着用者の大腿部と立体ギャザー26の密着性が強くなり、排泄物の横漏れを防ぐことができる。
【0042】
なお、この高剛性部29は、易撓み部28と窪み部27との境界位置、または窪み部27の外側近傍に形成することが好ましい。高剛性部29を窪み部27の外側近傍に形成する場合は、
図15(C)に示すように、窪み部27と高剛性部29との間の距離Nが、30mm以下、より好ましくは10mm以下、さらに好ましくは5mm以下となるように形成することが好ましい。また、窪み部27と高剛性部29との間の距離が、場所によって異なる場合も生じ得る。
図15(C)の例においては、N1の長さがN2の長さよりも長く形成されている。このような距離の違いがある場合においては、N2の長さがN1の長さよりも長いか短いかに関わらず、窪み部27の前後方向中央側の長さN1を基準に考え、N1の長さを30mm以下、より好ましくは10mm以下、さらに好ましくは5mm以下となるように形成することが好ましい。窪み部27と高剛性部29の間の距離Nが30mmよりも長くなると、窪み部27から立体ギャザー26を立ち上げることができず、立体ギャザー26の立ち上がる高さが低くなるという不利益が生じる。
【0043】
(中間弾性伸縮部材)
立体ギャザーシートの起立端側には、中間弾性伸縮部材30を固定することができる。この中間弾性伸縮部材30は、前後方向の長さ及び固定位置を易撓み部28とほぼ同じにすることが好ましい。具体的には、中間弾性伸縮部材30の前後方向の長さと、易撓み部28の前後方向の長さとの差Mが、30mm以下の差の範囲内、より好ましくは10mm以下の範囲内、さらに好ましくは5mm以下の範囲内にすることが好ましい。また、この前後方向の長さの差Mが、場所によって異なる場合も生じ得る。
図15(B)の例においては、M2の長さがM1の長さよりも長く形成されている。このような距離の違いがある場合においては、差が大きいM2を基準に考え、M2の長さを30mm以下、より好ましくは10mm以下、さらに好ましくは5mm以下となるように形成することが好ましい。前後方向の長さの差Mが、30mmよりも長くなると、中間弾性伸縮部材30によって、窪み部27から立体ギャザー26を立ち上げる作用に支障が生じ、立体ギャザー26の立ち上がる高さが低くなるという不利益が生じる。
【0044】
また、易撓み部28の前端および後端の位置またはその近傍に、中間弾性伸縮部材30の両端を固定し、そこから前後方向中央側かつ幅方向外側へ膨らむ形態で固定するのが好ましい。また、この中間弾性伸縮部材30を固定する形状は、
図15に例示するように、弧状、台形状等、任意の形状にすることができる。なお、この中間弾性伸縮部材30の素材や、固定をする際の接着剤等については、前記弾性伸縮部材31と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0045】
このように中間弾性伸縮部材30を設け、それが収縮することにより、易撓み部28が立ち上がりやすくなる。その結果、立体ギャザー26の立ち上がる高さが高くなるため、着用者の大腿部と立体ギャザー26の密着性が強くなり、排泄物の横漏れを防ぐことができる。
【0046】
また、吸収パッド200を着用するとき、吸収体23が湾曲する。そのため、製造時に湾曲させて固定した中間弾性伸縮部材30は、着用時に収縮して直線状となる。
【0047】
また、この中間弾性伸縮部材30を、窪み部27に沿って配置した場合や、吸収体23の前後方向と平行に配置した場合は、中間弾性伸縮部材30の収縮につられて、吸収体23に皺が入り、股間部のごわつきが生じるとともに、排泄物の漏れが発生しやすい。そこで、本発明のように、中間弾性伸縮部材30を前後方向中央側かつ幅方向外側へ膨らむ形態で固定することにより、吸収体23に皺が入ること等を防ぐことができる。
【0048】
(変形例)
なお、前記の説明においては、高剛性部29および中間弾性伸縮部材30を、吸収性パッド200の両側にそれぞれ1つずつ設けた例を示したが、それに限られるものではなく、複数設けるようにしても良い。
【0049】
また、前記の説明においては、吸収パッド200に高剛性部29及び中間弾性伸縮部材30を設けた例を示したが、それらをテープ式紙おむつやパンツ式紙おむつに設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
12A…サイドシール部、15、19…ウエスト中間部弾性伸縮部材、16、18…ウエスト下部弾性伸縮部材、17…ウエスト上部部弾性伸縮部材、21…防漏シート、22…表面シート、23…吸収体、24…ギャザーシート、25…外装シート、26…立体ギャザー、27…窪み部、28…易撓み部、29…高剛性部、30…中間弾性伸縮部材、31…(立体ギャザーの)弾性伸縮部材、32…(平面ギャザーの)弾性伸縮部材、33…ターゲットテープ、34…クレープ紙、35…ファスニングテープ、36…面ファスナー、37…接合部分、40…中間シート、58…包装シート、67…前後固定部、200…吸収パッド、300…パンツ式紙おむつ、400…テープ式紙おむつ、L1…(吸収性物品の)全長、W1…(吸収性物品の)全幅、F1…(前後方向)腹側部分、C1…(前後方向)中央部分、B1…(前後方向)背側部分、×…接合部分、T…ウエスト縁部、U…ウエスト下部、W…ウエスト縁部、EF…エンドフラップ、SF…サイドフラップ