特許第6284180号(P6284180)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284180
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】塗装装置、塗装キット及び塗装方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 17/00 20060101AFI20180215BHJP
   B05C 1/02 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   B05C17/00
   B05C1/02 101
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-268487(P2013-268487)
(22)【出願日】2013年12月26日
(65)【公開番号】特開2015-123392(P2015-123392A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】505307002
【氏名又は名称】株式会社壁紙革命
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】荻原 利男
【審査官】 鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第5299877(US,A)
【文献】 実開昭61−147194(JP,U)
【文献】 特開2002−11404(JP,A)
【文献】 実開昭62−17380(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 7/00−21/00
B05C 1/00− 1/16
B05D 1/00− 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面、及び、該第1の面に対向する第2の面を有する塗布部と、
塗料は、壁紙などの接着に用いられる接着剤、顔料や染料などを含むペンキ、又はワックスや光沢剤などのコーティング剤を含み、
該塗料を含む塗料容器の容器口部を着脱可能に受容する形状及び寸法に規定されたコネクタ口部を有するコネクタ部であって、前記塗布部の前記第2の面の側に突出して設けられた前記コネクタ部とを備え、
前記コネクタ部は、前記塗料容器を受容する方向に延びる中心軸を前記コネクタ口部内に規定され、該中心軸は、前記第1の面に対して鋭角で交わり、
前記第2の面に固着される基板を備え、前記コネクタ部は該基板に固着される、塗装装置において、
前記第1の面の長手方向に沿って、複数の凹部が設けられ、該凹部を通って前記塗布部に塗料をより均一に行きわたらせ、
前記塗布部の、前記第2の面の側又は前記基板の側に突出して設けられた把持部を有し、前記把持部は前記コネクタ部に隣接して設けられ、該把持部の長手軸は、前記基板又は前記塗布部の幅方向中央に位置付けられる、
ことを特徴とする塗装装置。
【請求項2】
第1の面、及び前記第1の面に対向する第2の面を有する塗布部と、前記塗布部の前記第2の面の側に突出して設けられた塗料を含む塗料容器と、前記塗布部の前記第2の面の側に突出して設けられ、前記塗料容器の容器口部を着脱可能に受容するコネクタ口部を有するコネクタ部とを備え、
前記コネクタ部は前記塗料容器を受容する方向に延びる中心軸を前記コネクタ口部内に規定し、前記中心軸は前記第1の面に対して鋭角で交わる前記塗装キットを供し、
前記第1の面が対象物の表面に対して傾斜するように、前記第1の面の端縁部L1を前記対象物に当接して、前記塗布部に塗料が供給されるのを防止し、
次に、前記塗装キットを移動させて、前記第1の面の略全面を前記対象物の所要表面に当接して、前記塗料容器から前記塗布部を介して前記対象物の前記所要表面に前記塗料が連続的に供給されて、塗膜を形成する塗装方法において、使用する塗装装置であって、
前記塗布部の、前記第2の面の側又は基板の側に突出して設けられた把持部を有し、前記把持部は前記コネクタ部に隣接して設けられ、該把持部の長手軸は、前記基板又は前記塗布部の幅方向中央に位置付けられる、
ことを特徴とする塗装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装装置、塗装キット及び塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗装装置として、ローラーまたはスポンジブラシなどの塗布部に、塗料タンクからチューブを通って、塗料を供給しながら、建物や車両の壁面などの対象物を塗装するものが知られている。例えば、特許文献1及び特許文献2に開示されている塗装装置は、塗料ポンプ圧送装置を用いて、塗料タンクからチューブを通って塗装装置の塗布部に塗料を圧送するものであり、塗布部を対象物に当接しながら塗布部を移動させることで、壁面に塗料を塗布するものであった。
【0003】
しかしながら、このような従来の塗装装置は、塗料ポンプ圧送装置などを含み、構造が複雑であった。このため、従来の塗装装置は、装置の製造にコストや時間がかかるものであり、装置の使用後の洗浄も困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−200720号公報
【特許文献2】特開2004−237277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、より簡単な構造で、使用や洗浄を容易に行うことができる塗装装置、塗装キット及びそれを用いた塗装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の一側面としての塗装装置は、第1の面、及び、該第1の面に対向する第2の面を有する塗布部と、
塗料は、壁紙などの接着に用いられる接着剤、顔料や染料などを含むペンキ、又はワックスや光沢剤などのコーティング剤を含み、
塗料を含む塗料容器の容器口部を着脱可能に受容する形状及び寸法に規定されたコネクタ口部を有するコネクタ部であって、前記塗布部の前記第2の面の側に突出して設けられた前記コネクタ部とを備え、
前記コネクタ部は、前記塗料容器を受容する方向に延びる中心軸を前記コネクタ口部内に規定され、該中心軸は、前記第1の面に対して鋭角で交わり、
前記第2の面に固着される基板を備え、前記コネクタ部は該基板に固着される、塗装装置において、
前記第1の面の長手方向に沿って、複数の凹部が設けられ、該凹部を通って前記塗布部に塗料をより均一に行きわたらせ、
前記塗布部の、前記第2の面の側又は前記基板の側に突出して設けられた把持部を有し、前記把持部は前記コネクタ部に隣接して設けられ、該把持部の長手軸は、前記基板又は前記塗布部の幅方向中央に位置付けられる、
ことを特徴とする。
【0007】
本発明の別の側面としての塗装装置は、第1の面、及び前記第1の面に対向する第2の面を有する塗布部と、前記塗布部の前記第2の面の側に突出して設けられた塗料を含む塗料容器と、前記塗布部の前記第2の面の側に突出して設けられ、前記塗料容器の容器口部を着脱可能に受容するコネクタ口部を有するコネクタ部とを備え、
前記コネクタ部は前記塗料容器を受容する方向に延びる中心軸を前記コネクタ口部内に規定し、前記中心軸は前記第1の面に対して鋭角で交わる前記塗装キットを供し、
前記第1の面が対象物の表面に対して傾斜するように、前記第1の面の端縁部L1を前記対象物に当接して、前記塗布部に塗料が供給されるのを防止し、
次に、前記塗装キットを移動させて、前記第1の面の略全面を前記対象物の所要表面に当接して、前記塗料容器から前記塗布部を介して前記対象物の前記所要表面に前記塗料が連続的に供給されて、塗膜を形成する塗装方法において、使用する塗装装置であって、
前記塗布部の、前記第2の面の側又は基板の側に突出して設けられた把持部を有し、該把持部は前記コネクタ部に隣接して設けられ、該把持部の長手軸は、前記基板又は前記塗布部の幅方向中央に位置付けられる、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の塗装装置及び塗装キットは、上記構成によって、塗装装置及び塗装キットの製造コストを抑えることができる。また、本発明の塗装装置、塗装キット及び塗装方法は、使用者の塗装技術が低くても、短時間に美しい塗膜形成を可能とする。さらにまた、本発明の塗装装置、塗装キットは、塗料容器を着脱可能であることから、多種の塗料容器及び塗料を選択可能であるため、多種の塗膜を対象物表面に形成でき、かつ、洗浄などの他機能を持たせることもできる。さらにまた、本発明の塗装キット及び塗装方法は、塗装キットの角度を変えるだけで、塗料の供給及びその中止を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る塗装装置、及び、塗装キットの部分である塗装装置の斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る塗装装置、及び、塗装キットの部分である塗装装置の側面図である。
図3】(a)本発明の実施形態に係る塗装装置、及び、塗装キットの部分である塗装装置の底面図である。(b)本発明の実施形態の変形例に係る塗装装置、及び、塗装キットの部分である塗装装置の底面図である。
図4】本発明の実施形態に係る塗装装置、及び、塗装キットの部分である塗装装置の上面図である。
図5図4のA−A’断面における断面図である。
図6図4のB−B’断面における断面図である。
図7】本発明の実施形態の変形例に係る塗装装置、及び、塗装キットの部分である塗装装置の図4のA−A’断面に対応する部分の断面図である。
図8】(a)本発明の実施形態に係る塗装装置又は塗装キットのコネクタ部口部の形状、塗料容器の容器口部の形状、及び、コネクタ部口部と容器口部との接続構造を説明する図である。(b)本発明の実施形態の変形例に係る塗装装置又は塗装キットのコネクタ部口部の形状、塗料容器の容器口部の形状、及び、コネクタ部口部と容器口部との接続構造を説明する図である。(c)本発明の実施形態の変形例に係る塗装装置又は塗装キットのコネクタ部口部の形状、塗料容器の容器口部の形状、及び、コネクタ部口部と容器口部との接続構造を説明する図である。
図9】本発明の実施形態の塗装キットの側面図である。
図10】本発明の実施形態の塗装キットを自立させた状態を示す説明図である。
図11】本発明の実施形態の塗装方法を説明する説明図である。
図12】本発明の実施形態の塗装方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1乃至図12を参照して本発明の塗装装置、塗装キットおよび塗装方法の好適な実施形態を詳細に説明する。図1乃至図8は、本発明の実施形態に係る塗装装置及び塗装キットの部分である塗装装置を説明する図であり、図9及び図10は、本発明の実施形態に係る塗装キットを説明する図である。図11及び図12は、本発明の実施形態に係る塗装方法を説明する図である。
【0015】
なお、これらの実施形態及びその変形例は例示として挙げるものであり、これにより本発明の内容を限定的に解釈すべきではない。なお、以下、本実施形態では、一例として、塗料を壁面に塗布する塗装装置、塗装キットおよび塗装方法を用いて説明する。本発明の実施形態に係る塗装装置、塗装キットおよび塗装方法は、壁面に限らず、建物内外の床面、車両の内装及び車両の外装その他塗装の対象物に使用することができる。本発明の実施形態に係る塗装装置、塗装キットおよび塗装方法は、特に、建物や車両の内外の側壁に塗料を塗布するのに好適に用いられる。
【0016】
まず、図1乃至図8を用いて、本発明の実施形態に係る塗装装置1及び塗装キット2の部分となる塗装装置1を説明する。図1に示すように、本発明の実施形態に係る塗装装置1及び塗装キット2の部分である塗装装置1は、第1の面S1及び第1の面S1に対向する第2の面S2を有する塗布部10と、塗布部10の第2の面S2の側に突出して設けられたコネクタ部30であって、塗料を含む塗料容器50の容器口部51を着脱可能に受容する形状及び寸法に規定されたコネクタ部30と、を備える。更に、本発明の実施形態に係る塗装装置1及び塗装キット2の部分である塗装装置1は、図1に示すように、塗布部10の第2の面S2に固着された基板20と、塗布部10の第2の面S2の側に突出して設けられた把持部40と、を備えてもよい。
【0017】
塗布部10は、第1の面S1が対象物に当接され、第1の面S1が対象物の表面に沿って移動されることで、塗料容器50からコネクタ部30を通って塗布部10に供給された塗料を対象物の表面に塗布するために用いられる。塗布部10は、第2の面S2が基板20に固着されている。
【0018】
塗布部10は、対向する第1の面S1及び第2の面S2が矩形形状であり、第1の面S1と第2の面との間に所定の厚みを有する。塗布部10は、基板20の表面と略同じ大きさ、又は、基板20よりも大きい。塗料容器50から第1の面S1に塗料を浸透させるために、塗布部10の厚みは、第1の面S1及び第2の面S2の幅よりも小さい。塗布部10の形状は、矩形形状に限らず、円形形状または楕円形形状であってもよい。塗布部10の形状が矩形形状であると、壁面などの端まで塗料を塗布しやすい。
【0019】
塗布部10の第1の面S1は、図5に示すように平面状であってもよいし、図7の塗布部10aに示すように凹凸部を有するものであってもよいし、湾曲していてもよい。塗布部10aの第1の表面S1が凹凸部を有する場合には、図7に示すとおり、第1の面S1は複数の凸部の各頂部を通る面と規定される。図7に示すように、第1の面S1の長手方向に沿って、第1の面S1の複数の凹部が設けられている場合、凹部を通って塗布部10aに塗料をより均一に行きわたらせることができる。
【0020】
塗料容器50から第1の面S1まで塗料を浸透させるために、塗布部10には、スポンジなどの多孔質材料、ブラシ、植毛又はそれらの組合せを用いることができる。多孔質材料を用いる場合、毛管現象によって塗布部10に塗料をより均一に行きわたらせることができる。塗布部10は、対象物にダメージを与えないように、弾性及び/又は柔軟性を有するものを用いることが好ましい。また、塗布部10は、基板20及びコネクタ部30の少なくとも一方に対して、着脱可能であってもよい。塗布部10が着脱可能である場合には、塗布部10に塗料や汚れなどが付着した際に、洗浄しづらい塗布部10のみを破棄することで、基板20及びコネクタ部30の少なくとも一方を再使用することができる。
【0021】
コネクタ部30は、塗布部10の第2の面S2の側に突出するように、すなわち、基板20のうち塗布部10の固着面と対向する面から突出するように、基板20に固着されている。コネクタ部30は、基板20又は塗布部10の幅方向中央に設けられる。コネクタ部30は、コネクタ口部31aとコネクタベース部31bとを含む。コネクタ部30は、コネクタベース部31bとコネクタ口部31aとの間にコネクタ中間部31cを有してもよい。コネクタベース部31bには、その内部に塗料が通るコネクタ通路32が規定される。コネクタ中間部31cがある場合、その内部に塗料が通るコネクタ通路32が規定される。このコネクタ通路32を通って、塗料容器50から塗布部10に塗料が供給される。図5に示すように、コネクタ通路32の内径D2は、コネクタ口部31aの内径D1よりも小さい。
【0022】
図3(a)及び図3(b)に示すとおり、塗布部10側から見ると、コネクタ通路32は、塗布部10に塗料を供給できるように、その通路出口32b,dが塗布部10の第2の面S2に接触または近接して位置づけられる。図3(a)に示すように、コネクタ通路32は、コネクタ口部31a側のコネクタ中間部31c又はコネクタベース部31bにおける通路入口32aが1つで、コネクタベース部31b側における通路出口32bも1つであってもよい。また、図3(b)に示すようにコネクタ口部31a側におけるコネクタ中間部31c又はコネクタベース部31bにおける通路入口32cが1つで、コネクタベース部31ba側における通路出口32dが複数になるように分岐していてもよい。各複数の通路出口32dは、隣接する通路出口32dと等距離だけ離間して配置されていてもよい。コネクタベース部31bは幅方向に細長の矩形形状であってもよい。対象物が側壁である場合に塗布部10に塗料が広がりやすいように、コネクタ通路32の通路出口32b,32dは、塗布部10の第2の面S2の中央よりも端部側に偏った位置上に配置されてもよい。
【0023】
コネクタ部30は、塗料を含む塗料容器50の容器口部51をコネクタ口部31aに着脱可能に受容して、塗料容器50を保持する。これによって、本実施形態の塗装装置、塗装キット及び塗装方法は、多種の塗料容器及び塗料を選択可能であるため、多種の塗膜を対象物表面に形成でき、かつ、洗浄などの他機能を持たせることができる。コネクタ口部31aは、断面が円形、楕円形または矩形の筒形状を呈する。コネクタベース部31bは、基板20及び塗布部10の少なくともいずれか一方にコネクタ部30を固着して保持する。コネクタベース部31bは、コネクタ口部31a及びコネクタ中間部31cの少なくともいずれか一方の端部からフランジ状に延びる平面形状を呈する。この平面形状の外形は、矩形、円形または楕円形であってもよい。コネクタ中間部31cは、コネクタ口部31aとコネクタベース部31bとの間を接続する。図6に示すように、コネクタ中間部31cは、コネクタ口部31a側の面がコネクタベース部31b側の面に対して傾斜した形状を呈する。コネクタ口部31aに容器口部51が受領されると、コネクタ中間部31cが容器口部51の端部のストッパとして機能する。コネクタ部30は、基板20と同じ材料で形成されていてもよいし、異なる材料で形成されていてもよい。コネクタ部30は、塗布部10よりも剛性が高く、樹脂や金属などの材料によって形成することができる。コネクタ中間部31cは、コネクタ口部31a側に凸環状部33を有してもよい。この場合、コネクタ口部31aの側面と凸環状部33により規定される溝34内に可撓性のシールリング35が配される。これにより、本実施形態の塗装装置1及び塗装キット2は塗料が外部に漏れにくくなる。
【0024】
コネクタ部30は、基板20及び塗布部10の少なくともいずれか一方に対して、ネジ止め、嵌合及び接着剤の少なくとも一つにより固着されてもよい。また、コネクタ部30は、基板20及び塗布部10の少なくともいずれか一方と一体成型されたものであってもよいし、別体であってもよい。一体成型の場合、基板20及び塗布部10の少なくともいずれか一方と、コネクタ部30と、は金型を用いてワンステップで射出成型される。コネクタ部30が別体である場合には、基板20及び塗布部10の少なくともいずれか一方に対して、コネクタ部30は着脱自在に固着されていてもよい。コネクタ部30を着脱できる場合には、供給される塗料の性質や形成される塗膜の性質によって、コネクタ通路32の内径D2を変化させることができるため、より美しく簡単に塗装できる。また、コネクタ部30を着脱できる場合には、コネクタ口部31aの形状や内径D1を変化させることができるため、様々な形状及び寸法の容器口部51を有する容器を用いることができる。
【0025】
図6に示すとおり、コネクタ部30は、塗料容器50の容器口部51を受領する方向に延びる中心軸Cをコネクタ口部31a内に規定する。中心軸Cは、コネクタ口部31aの内径の中心を通る軸である。より好ましくは、中心軸Cは、コネクタ口部31a及びコネクタ通路32の内径の中心を通る軸である。中心軸Cは、塗布部10の第1の面S1に対して傾斜するように、角度αで交わる。角度αは、0度より大きく90度よりも小さい、すなわち鋭角である。これによって、塗布部10の第1の面S1を対象物に当接すると、塗料容器50から塗料が塗布部10に送液され、塗装装置1の角度を変えるだけで、塗料の供給を中止できる。このため、本実施形態の塗装装置1及び塗装キット2は、スイッチ操作を必要とせず、また、対象物への接触面積が大きい平面を有する塗布部10の第1の面S1を対象物に当接しながら移動させるだけで、対象物に塗料を塗布することができる。従って、本実施形態の塗装装置及び塗装キットは、使用者の塗装技術が低くても、短時間に美しい塗膜形成を可能とする。
【0026】
図8の(a)乃至(c)は、本発明の実施形態及びその変形例に係る塗装装置1又は塗装キット2のコネクタ部30の形状、塗料容器50の容器口部51の形状、及び、コネクタ部30と容器口部51との接続構造を説明する図である。コネクタ部30と塗料容器50とは、図8(a)に示すように、容器口部51aの外形をねじ形状として、コネクタ部30aの内側にねじ孔36aを有することで、塗料容器50の容器口部51をコネクタ部30に螺合して固着してもよい。また、図8(b)に示すように、コネクタ部30と塗料容器50とは、容器口部51bの外側に円錐状の突部を形成し、この円錐状の突部を受領する寸法及び形状の溝36bをコネクタ部30bの内側に設けて、溝36bと突部とを嵌合することで、塗料容器50をコネクタ部30に固着してもよい。さらにまた、図8(c)に示すように、コネクタ部30と塗料容器50とは、容器口部51cの側壁内に格納可能な突部を容器口部51cの外側に形成し、コネクタ部30cの内面に溝36cを設け、溝36cと突部とを嵌合することで、塗料容器50をコネクタ部30に固着してもよい。
【0027】
基板20には、基板20の一の面に塗布部10が固着され、基板20の他の面にコネクタ部30が固着される。基板20は、塗装装置1又は塗装キット2に含まれなくともよく、基板20がない場合には、コネクタ部30は塗布部10に固着される。基板20は、矩形、円形または楕円形等の平板形状である。基板20は、コネクタ部30が配置される部分に、コネクタベース部31bを受領する形状の開口部または溝部を有してもよい。基板20は、塗布部10よりも剛性が高く、例えば樹脂や金属材料から構成される。これにより、基板20は、弾性及び/又は柔軟性の高い塗布部10を支持して、塗装装置1又は塗装キット2を操作しやすくできる。
【0028】
把持部40は、基板20又は塗布部10に固着されて設けられ、塗装装置1又は塗装キット2の使用の際に、使用者が把持する部分である。把持部40は、基板20又は塗布部10から、塗布部10の第2の面S2の側に突設されている。把持部40を設けることで、塗料は使用者の手に付着しづらくなる。なお、把持部40は塗装装置又は塗装キットに含まれなくともよく、把持部40がない場合には、使用者は塗布部10又は基板20を把持する。図4に示すように、把持部40の長手軸は、基板20又は塗布部10の幅方向中央に、その長手方向に沿って位置付けられる。把持部40と基板20とは、別体で設けられて、ネジや接着剤などによって固着されてもよいし、一体成型されてもよい。一体成型される場合は、把持部40と基板20とは、金型を用いた射出成型によってワンステップで形成される。
【0029】
図4に示すように、把持部40は、コネクタ部30に隣接、又は、近接して設けられる。これにより、本実施形態の塗装装置1又は塗装キット2は、塗料が入った重い塗料容器50をしっかりと支持することができる。塗装装置1又は塗装キット2は、コネクタベース部31bを挟んで、把持部40が設けられた側と把持部40が設けられていない側とを有する。この把持部40が設けられていない側に、コネクタ口部31aの開口側、すなわち、コネクタ通路32の通路入口側が向くように、コネクタ部30が配置されることが好ましい。これに対して、コネクタ通路32の通路出口側は、この把持部40が設けられた側に向くように配置される。この構成により、塗布部10への塗料の送液及び送液中止を制御しやすくなる。把持部40は、基板20又は塗布部10から立設する第1の立設部40aと、基板20又は塗布部10から立設し、第1の立設部40aから離間して配置される第2の立設部40bと、第1の立設部40aの端部と第2の立設部40bの端部との間の架橋部40cと、を備える。把持部40の形状は、アーチ形状であってもよい。把持部40は、基板20及びコネクタ部30の少なくとも一方と同じ材料で形成されてもよい。把持部40は、塗布部10よりも剛性が高いことが好ましい。
【0030】
次に、図9及び図10を用いて、本発明の実施形態に係る塗装キット2を説明する。本発明の実施形態に係る塗装キット2は、塗料容器50と塗料容器50を保持する上述の塗装装置1とを備える。塗料容器50は、塗料が入った容器本体部52と、容器本体部52に接続され、塗装装置1のコネクタ口部31aに受領される形状及び寸法を規定する容器口部51と、を有する。容器本体部52は、ペットボトルや缶などの樹脂又は金属などからなる硬質容器であってもよいし、外力を印加すると変形可能な袋やボトル形状の可撓性容器であってもよい。容器口部51は、塗装装置1のコネクタ口部31aと係合して、塗料容器50を傾斜した状態でしっかりと保持するために、容器本体部52よりも剛性が高いことが好ましい。塗料容器50は、蓋部を有してもよい。蓋部は、塗料容器50が塗装装置1から外されている際に、容器口部51に固着されて、塗料が外部に排出されないようにするものである。
【0031】
塗料容器50内の塗料は液体である。例えば、塗料は、壁紙などの接着に用いられる接着剤、顔料や染料などを含むペンキ、ワックスや光沢剤などのコーティング剤を含む。塗料は、粘性を有するものであってもよい。塗料容器50は、容器内の塗料を水や洗浄剤に置き換えることができ、この場合、塗装キット2を洗浄用に転用することができる。
【0032】
容器本体部52は、側面53及び底面54を有するものであってもよい。容器本体部52に側面53及び底面54を有すると、側面53又は底面54を接地して、塗装キットを自立させることができる。例えば、図10は、底面54を接地して自立させた塗装キットを示す。これにより、塗装キット2を使用しないときには、塗料容器50から塗布部10に塗料が供給されない、若しくは、供給されにくい。これにより、対象物以外のものに塗料を付着しにくくすることができる。
【0033】
次に、図11及び図12を用いて、上述の塗装キット2を用いた本発明の実施形態に係る塗装方法を説明する。まず、塗装キット2を供し、塗装キット2の塗装装置1の第1の面S1が対象物の表面に対して傾斜するように、第1の面S1の端縁部L1を壁面などの対象物に当接して配置する。これにより、塗装キット2の塗料容器50から塗布部10に塗料が供給されない、または、供給されにくい状態となっている。
【0034】
次に、塗装キット2を移動させて、第1の面S1の略全面を対象物の表面に当接する。これにより、塗料容器50から塗布部10を介して、対象物表面に塗料が供給される。この状態で対象物表面に沿って塗装キット2を移動させ、対象物表面に連続的に塗料を供給することで、対象物表面に塗膜を形成する。これにより、本実施形態の塗装方法は、使用者の塗装技術が低くても、短時間に美しい塗膜形成を可能とする。
【0035】
本発明の他の実施形態として、基板20とコネクタ部30と把持部40とは、金型を用いた射出成型によってワンステップで一体成型されていてもよい。
【0036】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0037】
1 塗装装置
2 塗装キット
10 塗布部
20 基板
30,30a,30b,30c コネクタ部
31a コネクタ口部
31b コネクタベース部
31c コネクタ中間部
32 コネクタ通路部
32a コネクタ通路部の通路入口
32b コネクタ通路部の通路出口
33 凸環状部
34 溝
35 シールリング
40 把持部
50 塗料容器
51,51a,51b,51c 容器口部
52 容器本体部
53 容器側面
54 容器底面
α 角度
C 中心軸
L1 塗布部10の下縁
S1 塗布部10の第1の面(塗工面)
S2 塗布部10の第2の面(第1の面の対向面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12